説明

レーザー加工装置

【課題】 固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきによる加工精度の低下を抑制することができ、平らな作業台に載置した際にがたつくのを防止することができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】 レーザー光Lを生成するレーザー発振器41と、レーザー光Lの照射位置を走査させるXYスキャナ47と、XYスキャナ47の下方に配置され、XYスキャナ47から入射するレーザー光Lの入射角にかかわらず、ワークWに向けて出射するレーザー光Lの出射角を一定にするテレセントリックレンズ48と、レーザー発振器41及びXYスキャナ47を収容する筐体フレーム60と、筐体フレーム60の下面よりも面積の小さな設置面を有し、テレセントリックレンズ48及びレーザー発振器41間の筐体フレーム60の下面を支持する支持部材650により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に係り、さらに詳しくは、レーザー光を照射して加工対象物の加工を行うレーザー加工装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーマーカは、レーザー光を照射することにより加工対象物(ワーク)を加工するレーザー加工装置であり、レーザー光の照射位置を走査させることにより、ワーク上に文字、記号、図形などを印字することができる。
【0003】
この種のレーザー加工装置は、金属などの遮光性部材からなる防塵構造のヘッド筐体を有し、レーザー光を出射させるための光学系を当該ヘッド筐体内に収容することにより、レーザー光の漏出を防止するとともに、粉塵などの影響による性能劣化を防止している。例えば、加工用のレーザー光を生成するレーザー発振器やレーザー光を走査させるスキャナが、ヘッド筐体内に収容されている。
【0004】
一般に、レーザー加工装置は、指定された加工条件に従って正しく加工を行うため、ヘッド筐体を作業台などに固定した状態で、レーザー光の照射位置の調整が行われる。例えば、ヘッド筐体の下面が平らな作業台に載置される(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載されたレーザー加工装置では、ヘッド筐体の下面が平らに加工され、必要な面精度(平面度)を確保することにより、作業台上に載置されたヘッド筐体ががたつくのを防止している。
【0005】
ここで、加工精度を向上させるために、ヘッド筐体内において、レーザー発振器、Zスキャナ及びXYスキャナを直線上に配置することが考えられる。この様な直線配置を採用することにより、レーザー光を固定ミラーで屈曲させる回数を減らし、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきの影響によってレーザー光の特性が劣化するのを防止することができる。
【0006】
この様なレーザー加工装置では、ヘッド筐体の下面に対し、従来よりも高い面精度が要求される。ところが、直線配置を採用することによってヘッド筐体が長くなり、ヘッド筐体の下面全体を均一に平面加工し、一定レベル以上の面精度を確保するのが難しくなる。つまり、ヘッド筐体を作業台上に載置した場合に、作業台が十分に平らであってもヘッド筐体ががたつき、加工精度を低下させてしまうという問題が生じる。
【0007】
なお、ヘッド筐体の4隅に突起を設け、突起を作業台に当接させることにより4点でヘッド筐体を支持させることが考えられるが、突起の設計誤差や高さのばらつきによってヘッド筐体のがたつきを解消するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−78280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、高精度のレーザー加工を行うことができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。特に、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきによる加工精度の低下を抑制することができるとともに、平らな作業台に載置した場合にがたつくのを防止することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、水平な床であっても設置することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。さらに、傾斜した作業台上であっても水平に設置することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明によるレーザー加工装置は、レーザー光を生成するレーザー発振器と、加工対象物上における上記レーザー光の照射位置を2次元方向に走査させるXYスキャナと、上記XYスキャナの下方に配置され、上記XYスキャナから入射する上記レーザー光の入射角にかかわらず、上記加工対象物に向けて出射する上記レーザー光の出射角を一定にするテレセントリックレンズと、上記レーザー発振器及び上記XYスキャナを収容する筐体と、上記筐体の下面よりも面積の小さな設置面を有し、上記テレセントリックレンズ及び上記レーザー発振器間の上記筐体下面を支持する支持部材とを備えて構成される。
【0012】
このレーザー加工装置は、レーザー光を加工対象物に向けて出射させる出射光学系として、テレセントリックレンズを採用することにより、XYスキャナがレーザー光を2次元走査させても、加工対象物に対し一定の角度でレーザー光を照射することができるので、レーザー加工の精度を向上させることができる。さらに、レーザー発振器及びXYスキャナを収容する筐体に対し、テレセントリックレンズとレーザー発振器との間の筐体下面を支持部材で支持することにより、支持部材を作業台に取り付けた場合に、支持部材の設置面が筐体の下面よりも面積が小さくてもバランス良く筐体を支持させることができる。しかも、筐体の下面全体を設置面とする場合に比べ、作業台に当接させる設置面の面精度を容易に確保することができ、平らな作業台に載置した場合にがたつくのを防止することができる。
【0013】
第2の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記レーザー光の焦点距離を制御するZスキャナを備え、上記筐体が、略直線上に整列した状態で、上記レーザー発振器、上記Zスキャナ及び上記XYスキャナを収容するように構成される。このレーザー加工装置は、レーザー発振器、Zスキャナ及びXYスキャナを略直線上に配置することにより、レーザー発振器及びXYスキャナ間にレーザー光の光路を屈曲させるための固定ミラーを配置することなく構成される。このため、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきによる加工精度の低下を抑制することができる。さらに、Zスキャナの存在によって筐体の長さがより長くなるが、テレセントリックレンズとレーザー発振器との間を支持部材で支持するので、容易にバランスをとることができる。
【0014】
第3の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記テレセントリックレンズが、レンズ鏡筒の一部が上記筐体下面から突出するように配置され、上記支持部材が、上記筐体下面から上記テレセントリックレンズの光軸方向に延びる複数の支持脚と、上記支持脚が固着される取付プレートとからなり、上記取付プレートが上記レンズ鏡筒の下端よりも下方に配置されているように構成される。
【0015】
このレーザー加工装置では、支持脚が固着される取付プレートがテレセントリックレンズのレンズ鏡筒の下端よりも下方に配置されるので、水平な床であっても安全に設置することができる。
【0016】
第4の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記支持部材が、3つの上記支持脚及び上記取付プレートからなるように構成される。この様な構成によれば、取付プレートを作業台に取り付けた際に、筐体をバランス良く支持させることができる。
【0017】
第5の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記取付プレートの下面が平面加工されているように構成される。この様な構成によれば、取付プレートを平らな作業台に取り付けた際に、取付プレートががたつくのを防止することができる。
【0018】
第6の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記支持部材が、長さを調整することができる上記支持脚を有するように構成される。この様な構成によれば、支持脚の長さを調整することにより、傾斜した作業台上であっても水平に設置することができる。
【0019】
第7の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記支持脚のいずれか1つが、長さが固定されているように構成される。この様な構成によれば、長さが固定されている支持脚を基準にして、他の支持脚の長さを調整することにより、筐体の傾きを容易に矯正することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるレーザー加工装置では、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきによる加工精度の低下を抑制することができる。また、レーザー光を加工対象物に向けて出射させる出射光学系として、テレセントリックレンズを採用することにより、XYスキャナがレーザー光を2次元走査させても、加工対象物に対し一定の角度でレーザー光を照射することができるので、レーザー加工の精度を向上させることができる。さらに、筐体の下面全体を設置面とする場合に比べ、作業台に当接させる設置面の面精度を容易に確保することができ、平らな作業台に載置した場合にがたつくのを防止することができる。
【0021】
また、本発明によるレーザー加工装置では、支持脚が固着される取付プレートがテレセントリックレンズのレンズ鏡筒の下端よりも下方に配置されるので、水平な床であっても安全に設置することができる。さらに、支持脚の長さを調整することにより、傾斜した作業台上であっても水平に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザーマーカ20を含むレーザーマーキングシステム1の概略構成の一例を示したシステム図である。
【図2】図1のレーザーマーカ20の詳細構成を示したブロック図である。
【図3】図2のテレセントリックレンズ48の作用の一例を示した説明図である。
【図4】図2の光学ユニット41〜48,51〜56の空間的配置を示した図である。
【図5】図1のマーカヘッド21の内部構造を示した斜視図である。
【図6】図5の筐体フレーム60の詳細構成を示した斜視図である。
【図7】図5の支持脚65の詳細構成を示した斜視図である。
【図8】図5のアタッチメントプレート66の詳細構成を示した斜視図である。
【図9】図7の支持脚65を図8のアタッチメントプレート66に取り付けて構成される支持部材650を示した斜視図である。
【図10】図6の筐体フレーム60の下面を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<レーザーマーキングシステム1>
図1は、本発明の実施の形態によるレーザー加工装置を含むレーザーマーキングシステム1の概略構成の一例を示したシステム図であり、レーザー加工装置の一例としてレーザーマーカ20が示されている。このレーザーマーキングシステム1は、レーザー光Lを照射してワークWを加工するレーザーマーカ20と、その加工条件を編集するための端末装置10とにより構成される。また、レーザーマーカ20は、レーザー光Lの生成及び走査を行うマーカヘッド21と、マーカヘッド21の動作制御を行うマーカコントローラ22とからなる。
【0024】
端末装置10は、レーザーマーカ20を制御するための装置であり、例えば、レーザーマーカ用のアプリケーションプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータを用いることができる。ユーザは、端末装置10を用いることにより、レーザーマーカ20の加工条件を規定する加工設定データを作成し、編集することができる。
【0025】
マーカコントローラ22は、端末装置10から受信した加工設定データに基づいて、マーカヘッド21の動作制御を行っている。また、レーザー発振用の励起光は、マーカコントローラ22において生成され、光ファイバー23を介してマーカヘッド21へ伝送される。
【0026】
マーカヘッド21は、マーカコントローラ22からの励起光に基づいて、レーザー光Lを生成し、ワークWへ照射する。このとき、マーカコントローラ22からの制御信号に基づいてレーザー光Lの出射軸を走査することにより、ワークW上に文字、記号、図形などのシンボルを印字することができる。また、マーカヘッド21内には、図示しない照明光源及びカメラが内蔵され、当該カメラにより撮影されたワークWの撮影画像が、マーカコントローラ22を介して端末装置10に転送され、ディスプレイ上に表示される。ユーザは、この撮影画像を閲覧することにより、ワークW上の加工位置の確認、調整などを行うことができる。
【0027】
<レーザーマーカ20>
図2は、図1のレーザーマーカ20の詳細構成を示したブロック図であり、マーカヘッド21及びマーカコントローラ22の内部構成の一例が示されている。このレーザーマーカ20は、テレセントリックレンズ48を介してレーザー光Lを照射することにより、高精度のレーザー加工を行うことができる。
【0028】
<マーカコントローラ22>
マーカコントローラ22は、電源30、励起光生成部31及び制御部32からなる。電源30は、商用電源を利用して、マーカヘッド21、励起光生成部31及び制御部32へ電力を供給する。励起光生成部31は、レーザー発振のための励起光を生成する。この励起光は、光ファイバー23を介してマーカヘッド21に伝送される。制御部32は、端末装置10から転送された加工設定データに基づいて励起光生成部31及びマーカヘッド21を制御し、レーザー光Lの出力制御及び走査制御を行う。
【0029】
<マーカヘッド21>
マーカヘッド21は、レーザー発振器41、ビームサンプラー42、発振器用シャッタ43、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏光ビームスプリッタ46、XYスキャナ47、テレセントリックレンズ48、パワーモニタ51、ガイド光源52、照明光源53、ハーフミラー54、カメラ用シャッタ55及びカメラ56により構成される。
【0030】
レーザー発振器41は、励起光を吸収してレーザービームからなるレーザー光Lを生成するレーザー生成器であり、レーザー媒質、共振器、Qスイッチなどによって構成される。ここでは、レーザー発振器41が、パルス発振する固体レーザー発振器、例えば、SHG型レーザー発振器であるものとする。SHG型レーザー発振器は、レーザー媒質として、Nd(ネオジム)がドープされたYVO(イットリウム・バナデート)結晶を用い、第2高調波を利用して波長532nmの緑色光を出力する。上記レーザー媒質を励起するための励起光には、波長808nmのレーザー光が用いられる。レーザー発振器41によって生成されたレーザー光Lは、ビームサンプラー42、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏光ビームスプリッタ46、XYスキャナ47及びテレセントリックレンズ48を順に経由してワークWに照射される。
【0031】
ビームサンプラー42は、レーザー発振器41から出力されるレーザー光Lのうち、一定割合をサンプリングビームとして分岐させる光学スプリッタである。例えば、透明基板の表面反射などを利用することにより、入射したレーザー光Lの全光量の約3%が分光され、サンプリングビームとしてパワーモニタ51へ入射される。パワーモニタ51は、レーザー発振器41の出力パワーを検出するための光強度検出手段であり、例えば、サーモパイルなどの感熱素子からなり、その検出結果はレーザー発振器41の出力制御に用いられる。
【0032】
発振器用シャッタ43は、レーザー光Lの出射経路を開閉可能に遮断し、レーザー光Lの漏出を防止する漏出防止用遮断手段であり、偏光ビームスプリッタ46よりも上流側に配置される。ここでは、ビームサンプラー42及びミキシングミラー44間に発振器用シャッタ43が設けられ、レーザー光Lの出力制御信号に基づいて、レーザー光Lの照射時を除き、レーザー光Lの出射経路を遮断している。このため、カメラ56によるワークWの撮影時には、レーザー光Lの出射経路が、発振用シャッタ43により遮断されている。
【0033】
ミキシングミラー44は、ガイド光の出射軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させる光混合用光学スプリッタであり、レーザー発振器41からのレーザー光Lを透過させ、ガイド光源52からのガイド光を反射させることにより、ともにZスキャナ45へ送り出している。ガイド光源52は、加工位置をワークW上に表示するガイド光を生成する光源装置であり、LD(レーザーダイオード)などの発光素子からなる。ガイド光の点灯制御と、ガイド光の出射軸の高速スキャンとによって、印字しようとするシンボルパターンを照射スポットの残像として視認させることができる。
【0034】
Zスキャナ45は、レーザー光Lのビーム径を調整するビーム径制御手段であり、ビーム径の拡大率を調整することにより、レーザー光Lの焦点距離を制御している。このZスキャナ45は、レーザー光Lの光軸上に配置された2枚のレンズからなり、これらのレンズの相対距離を変化させることにより、例えば、入射されるレーザー光Lのビーム径2mmφを最大8mmφまで拡大させることができる。レーザー光Lのビーム径を拡大すれば、焦点距離が長くなり、ワークW上のスポット径が拡大する。この様にしてレーザー光Lのスポット径を拡大させることにより、スポット内におけるエネルギー密度を低下させるデフォーカス制御を行うことができる。
【0035】
偏光ビームスプリッタ46は、レーザー光Lの出射経路上であって、XYスキャナ47よりも上流側に配置され、Zスキャナ45からのレーザー光Lを透過させる一方、カメラ56の受光軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させるカメラ用光学スプリッタである。すなわち、ワークWによる反射光のうち、テレセントリックレンズ48に入射してレーザー光Lの出射経路を遡る戻り光は、偏光ビームスプリッタ46で反射されることにより、レーザー光Lの出射軸から分離され、カメラ56の方へ向かう。また、偏光ビームスプリッタ46は、ハーフミラー54を介して入射される照明光をXYスキャナ47に向けて反射し、照明光の出射軸をレーザー光Lの出射軸と一致させている。例えば、レーザー発振器41により、P偏光のレーザー光Lが生成される場合、P偏光成分を選択的に透過させ、S偏光成分を反射させる偏光ビームスプリッタ46を用いることにより、レーザー光Lを通過させる一方、S偏光成分を含む戻り光及び照射光をそれぞれ反射させることができる。
【0036】
XYスキャナ47は、レーザー光Lの出射光軸を2次元走査させる走査装置であり、レーザー光Lを反射させる走査用ミラーなどの光学系と、走査用ミラーを回動させる駆動部からなる。走査用ミラーは、ガルバノミラーと呼ばれ、レーザー光Lの出射経路上に配置される。このXYスキャナ47は、マーカコントローラ22からの位置制御信号に基づいて、上記走査用ミラーを回動させる。XYスキャナ47により、ワークW上におけるレーザー光Lの照射位置がXY方向に走査される。
【0037】
テレセントリックレンズ48は、レーザー光LをワークWに向けて出射させる出射光学系であり、レーザー光Lの出射経路においてXYスキャナ47よりも下流側、すなわち、ワークW側に配置される。このテレセントリックレンズ48は、複数の光学レンズやカバーガラスによって構成され、ワークW側の画角が略0°となるオブジェクト側テレセントリック光学系からなる。つまり、テレセントリックレンズ48は、レーザー光Lの入射角度に関わらず、レーザー光の主光線がレンズ光軸と略平行となるように、ワークWに向けてレーザー光Lを出射させる。
【0038】
照明光源53は、ワークWを照明するための照明光を生成する光源装置であり、LED(発光ダイオード)などの発光素子からなる。この照明光源53は、少なくともレーザー光Lと略同一の波長を含む照明光を生成し、ハーフミラー54へ出射する。
【0039】
ハーフミラー54は、カメラ56の受光経路上に配置され、偏光ビームスプリッタ46からの戻り光を透過させる一方、照明光の出射軸をカメラ56の受光軸と略一致させる照明用光学スプリッタである。すなわち、偏光ビームスプリッタ46からの戻り光を透過させ、カメラ56に入射する一方、照明光源53からの照明光を偏光ビームスプリッタに向けて反射する。
【0040】
カメラ用シャッタ55は、カメラ56の受光経路を開閉可能に遮断し、レーザー光Lの照射時に戻り光がカメラ56に入射するのを防止するためのカメラ保護用遮断手段であり、偏光ビームスプリッタ46よりも上流側に配置される。ここでは、ハーフミラー54及びカメラ56間にカメラ用シャッタ55が設けられ、レーザー光Lの出力制御信号に基づいて開閉され、少なくともレーザー光Lの照射期間中は、カメラ56の受光経路を遮断している。このため、レーザー照射のタイミングと、カメラ撮影のタイミングを異ならせれば、レーザー光Lの戻り光によってカメラ56が損傷を受けるのを防止することができる。
【0041】
カメラ56は、ワークWを撮影し、撮影画像を生成するための撮像ユニットであり、マーカコントローラ22からの撮像制御信号に基づいて撮影を行い、得られた撮影画像をマーカコントローラ22へ出力する。ここでは、カメラ56が、レーザー光と略同一の波長を受光し、撮影画像を生成しているものとする。
【0042】
<テレセントリックレンズ48>
図3は、図2のテレセントリックレンズ48の作用の一例を示した説明図である。図中の(a)には、印字可能エリアの中央にレーザー光Lを照射する場合、(b)には、印字可能エリアの左端付近にレーザー光Lを照射する場合、(c)には、印字可能エリアの右端付近にレーザー光Lを照射する場合がそれぞれ示されている。
【0043】
このテレセントリックレンズ48は、レーザー光Lの入射角度にかかわらず、その主光線がテレセントリックレンズ48の光軸と略平行となるようにレーザー光Lを出射させる。このため、XYスキャナ47の走査角が深くなり、テレセントリックレンズ48への入射角が大きくなった場合であっても、ワークW上に形成されるレーザー光Lのスポット径は変化せず、高精度のレーザー加工を行うことができる。
【0044】
この様なレーザーマーカ2において、レーザー光Lの出射軸と略一致させた受光軸を有するカメラ56を用いてワークWを撮影すれば、歪みの少ない撮影画像を得ることができる。すなわち、XYスキャナ47の走査角が深くなり、テレセントリックレンズ48への入射角が大きくなった場合であっても、撮影画像が歪むことはない。さらに、XYスキャナ47の走査角にかかわらず、撮影画像内において周辺の画像が歪むこともなくなる。従って、歪みの少ない撮影画像に基づいて、加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことができる。
【0045】
<光学ユニットの空間的配置>
図4は、図2の光学ユニット41〜48,51〜56の空間的配置を示した図である。レーザー発振器41、ビームサンプラー42、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏向ビームスプリッタ46及びXYスキャナ47は、水平方向の略直線上に整列配置され、レーザー光Lは、レーザー発振器41からXYスキャナ47まで略直線の経路を通り、XYスキャナ47によって下方へ曲げられ、テレセントリックレンズ48に入射する。このような直線配置を採用することにより、従来のレーザー加工装置のように、レーザー発振器41及びXYスキャナ47間に固定ミラーを配置し、レーザー光の出射経路を屈曲させる必要がない。従って、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきにより、レーザー加工の精度が低下するのを防止することができる。
【0046】
レーザー発振器41は、T字型の形状からなり、右下の入力端子41Tから励起光が入力され、左上の出力筒41Bの先端に形成された出力窓41Wからレーザー光Lが出力される。
【0047】
ビームサンプラー42及びミキシングミラー44は、レーザー光Lの出射軸に対し、45°傾斜させて配置されている。
【0048】
偏向ビームスプリッタ46は、レーザー光Lの出射軸に対して約56.6°傾斜させて配置され、レーザー光Lの入射角をブリュースター角と略一致させている。このため、レーザー光Lを概ね100%透過させることができる。戻り光は、偏向ビームスプリッタ46で反射され、水平方向のレーザー光Lの出射軸に対し、約66.8°の角度をもって上に向かう。
【0049】
照明モジュール530は、紙面手前側に照明光源53が配置され、紙面奥側にハーフミラー54が配置されたモジュールであり、手前から奥に向けて照射された照明光は、ハーフミラー54で反射され、左下方向の偏向ビームスプリッタ46に入射する。また、偏向ビームスプリッタ46から入射する戻り光は、ハーフミラー54を透過して、右上方向のカメラモジュール560へ入射される。
【0050】
カメラモジュール560は、カメラ56及びレンズ鏡筒57により構成されるモジュールであり、カメラ56は、レンズ鏡筒57に対して交換可能に取り付けられている。
【0051】
<マーカヘッド21の内部構造>
図5は、図1のマーカヘッド21の内部構造を示した斜視図である。マーカヘッド21は、図2に示した光学ユニット41〜48,51〜56のうち、テレセントリックレンズ48及びカメラ56を除く各光学ユニットが、筐体フレーム60内に収容されている。また、筐体フレーム60の内部空間は、仕切り板61によって2つの収容部62,63に分割されている。この図は、右側がマーカヘッド21の後方であり、左側が前方である。
【0052】
右側(後方)の収容部62は、レーザー発振器41が収容されるとともに、光ファイバー23のケーブル接続部231が外壁に取り付けられ、光ファイバー23が壁面を貫通している。励起光は、光ファイバー23を介して、レーザー発振器41の右下部へ入射され、レーザー発振器41の左上部の出力窓41Wからレーザー光Lが出射される。この出力窓41Wは、仕切り板61を貫通するレーザー発振器41の出力筒の先端、つまり、左側(前方)の収容部63内に配置されている。
【0053】
左側の収容部63には、レーザー発振器41、テレセントリックレンズ48及びカメラ56を除く、各光学ユニットが収容されている。この収容部63は、防塵構造を有し、粉塵の影響によるレーザー加工の精度低下を防止している。
【0054】
レーザー光Lは、レーザー発振器41から水平方向に出射され、Zスキャナ45を介してXYスキャナ47に入射する。テレセントリックレンズ48は、XYスキャナ47の下方に配置され、XYスキャナ47を介して入射したレーザー光LをワークWに向けて出射させる。また、テレセントリックレンズ48は、レンズ鏡筒の入力部(入力面)が収容部63内に引き込まれ、出力部(出力面)が筐体フレーム60の下面から突出するように配置されている。
【0055】
右側の収容部62内には、マーカコントローラ22と通信するための通信回路や、マーカヘッド21内の光学ユニットを制御するための制御回路が形成されたメイン基板71が配置されている。各種制御信号は、信号伝送ケーブル70を介してメイン基板71に入力される。メイン基板71は、レーザー発振器41の出射光軸に平行な鉛直面と平行に配置されている。
【0056】
一方、左側の収容部63内には、中継基板72が配置されている。中継基板72は、Zスキャナ45やXYスキャナ47の制御基板と、メイン基板71とを中継する回路基板である。この中継基板72は、仕切り板61に固着されている。
【0057】
筐体フレーム60には、マーカヘッド21を支持するための支持部材650が取り付けられている。この支持部材650は、3本の長さ調整可能な支持脚65と、作業台に取り付けるためのアタッチメントプレート66からなる。各支持脚65は、テレセントリックレンズ48の光軸方向に延びる円柱状の支持部材であり、個別に長さを調整することができる。アタッチメントプレート66は、各支持脚65に共通の取付プレートであり、下面を設置面として作業台に取り付けられる。
【0058】
支持脚65は、その上端が筐体フレーム60に固着され、下端がアタッチメントプレート66に固着されている。また、各支持脚65及びアタッチメントプレート66は、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒とレーザー発振器41の下端部との間に配置され、アタッチメントプレート66の下面は、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒よりも下方に配置されている。言い換えると、支持部材650は、テレセントリックレンズ48よりも後方かつレーザー発振器41よりも前方に配置されている。マーカヘッド21は、平らで水平な作業台の上面にアタッチメントプレート66の下面を密着させることにより、がたつくことなく水平に支持される。その際、筐体フレーム60をテレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒及びレーザー発振器41の下端部間で支持することにより、マーカヘッド21を倒れることなく自立させることができる。また、支持脚65の長さを調整すれば、上面が傾斜した作業台上に設置する場合であっても、マーカヘッド21を水平に設置することができる。
【0059】
<筐体フレーム60>
図6は、図5の筐体フレーム60の詳細構成を示した斜視図である。この筐体フレーム60は、アルミニウムなどの金属からなる一体成形されたヘッド筐体であり、底板601と、底板601の外縁に沿って立設された側壁602と、収容部62,63を区分する仕切り板61からなり、砂型鋳造によって一体的に形成される。レーザー発振器41、Zスキャナ45及びXYスキャナ47は、略直線上に整列した状態で筐体フレーム60に固着される。
【0060】
仕切り板61は、筐体フレーム60の内部空間を収容部62,63に分割する隔壁であり、レーザー発振器41、Zスキャナ45及びXYスキャナ47の整列方向に交差するように配置されている。すなわち、仕切り板61は、レーザー発振器41の出射光軸に垂直な壁面からなり、底板601及び互いに対向する側壁602にそれぞれ連結され、筐体フレーム60の内部空間を分割するとともに、筐体フレーム60の剛性を向上させている。
【0061】
右側の収容部62は、右手の側壁602に光ファイバー引込孔62a及び配線引込孔62bが形成されている。光ファイバー引込孔62aは、光ファイバー23を外部から引き込むための貫通孔であり、配線引込孔62bは、信号伝送ケーブル70の接続部を取り付けられる貫通孔である。
【0062】
左側の収容部63は、下方の側壁602にレンズ鏡筒取付孔63aが形成され、上方の側壁602にレンズ鏡筒引出孔63bが形成され、底板601に配線引出孔63cが形成されている。レンズ鏡筒取付孔63aは、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒の上端を収容部63内に挿入するための円形状の貫通孔である。レンズ鏡筒引出孔63bは、カメラモジュール560のレンズ鏡筒57を収容部63から筐体フレーム60外に引き出すための矩形状の貫通孔である。配線引出孔63cは、XYスキャナ47を制御するための配線ケーブルを引き出すための矩形状の貫通孔である。
【0063】
仕切り板61には、レーザー発振器41の出力筒41Bを挿通させ、出力窓41Wを収容部63内に配置するための円形状の出力筒挿通孔61aと、配線ケーブルを貫通させる長孔からなる配線孔61bが形成されている。レーザー発振器41は、出力筒41Bを出力筒挿通孔61a内に挿入した状態で底板601に固定される。一方、Zスキャナ45は、底板601のZスキャナ配置領域631に固定され、XYスキャナ47は、XYスキャナ配置領域632に固定される。これらのスキャナ45,47は、その光軸をレーザー発振器41の出射光軸と略一致させて配置される。
【0064】
この筐体フレーム60は、一体成形された金属フレームからなるので、高剛性である。さらに、筐体フレーム60は、仕切り板61を底板601と互いに対向する側壁602とにそれぞれ連結することによって補強されているので、各光学ユニットの配置の誤差を低減することができ、高精度のレーザー加工を行うことができる。
【0065】
レンズ鏡筒取付孔63a、レンズ鏡筒引出孔63b、配線引出孔63c、出力筒挿通孔61a及び配線孔61bは、Oリングなどの所定のシール部材を用いて封止される。また、側壁602及び仕切り板61の端面には、Oリング用の溝が形成され、Oリング62c及び63dがそれぞれ収容部62,63を取り囲むように配置されている。このため、上板を筐体フレーム60に被せることにより、収容部62及び63をそれぞれ密封することができる。
【0066】
光ファイバー引込孔62aは、光ファイバー23のケーブル接続部231によって塞がれるが、密封しようとすると、光ファイバー23に過大なストレスをかけることになり、伝送ロスによるパワー低下や光学特性の劣化が生じてしまう。このため、収容部62は、光ファイバー引込孔62aを介して、外部から粉塵が流入するのを許容している。
【0067】
これに対し、収容部63は、仕切り板61を隔てて収容部62と分離され、収容部62よりも気密性の高い空間として形成される。このため、収容部62内の粉塵が、収容部63に侵入し、Zスキャナ45及びXYスキャナ47が故障するのを防止している。また、粉塵がレーザー光Lの光路上に侵入し、レーザー光Lの特性を劣化させ、加工精度を低下させるのを防止している。
【0068】
側壁602の外壁面には、支持脚65を取り付けるための3つの脚取付孔603が形成されている。各脚取付孔603は、支持脚65を固着するための係合孔であり、3つの支持脚65の重心が仕切り板61よりもテレセントリックレンズ48側となるように配置されている。
【0069】
<支持脚65>
図7は、図5の支持脚65の詳細構成を示した斜視図である。支持脚65は、上下方向を長尺方向とする円柱状の棒体であり、本体部651、長さ調整ナット652,655、フレーム係合部653、可動部654,657及びプレート係合部656からなる。
【0070】
長さ調整ナット652、可動部654及びフレーム係合部653は、本体部651の上端に取り付けられている。フレーム係合部653は、支持脚65を筐体フレーム60に固着させるための筐体取付部であり、筐体フレーム60の下面に形成された脚取付孔603に螺合させることにより、支持脚65が筐体フレーム60に対し固定される。
【0071】
長さ調整ナット652を回転させることにより、可動部654が本体部651に対して上下方向に進退し、支持脚65の長尺方向の長さを調整することができる。
【0072】
長さ調整ナット655、可動部657及びプレート係合部656は、本体部651の下端に取り付けられている。プレート係合部656は、支持脚65をアタッチメントプレート66に固着させるためのプレート取付部である。
【0073】
長さ調整ナット655を回転させることにより、可動部657が本体部651に対して上下方向に進退し、支持脚65の長尺方向の長さを調整することができる。
【0074】
<アタッチメントプレート66>
図8は、図5のアタッチメントプレート66の詳細構成を示した斜視図である。アタッチメントプレート66は、マーカヘッド21を水平で平らな作業台上に設置する場合に使用される取付プレートであり、支持脚65の先端が着脱可能に取り付けられる。
【0075】
このアタッチメントプレート66は、その下面が均一に平面加工され、当該下面を筐体フレーム60の下面よりも面積の小さな設置面とする矩形形状の平行平面板であり、アルミニウムなどの金属からなる。アタッチメントプレート66には、支持脚65のプレート係合部656を螺合させる3つの脚取付孔661や3つの作業台取付孔662、2つの肉抜き孔663が形成されている。
【0076】
作業台取付孔662は、アタッチメントプレート66を作業台に固定する場合に使用されるネジ孔である。肉抜き孔663は、軽量化のための貫通孔である。脚取付孔661及び作業台取付孔662は、アタッチメントプレート66の周縁部に交互に配置されている。すなわち、脚取付孔661は、アタッチメントプレート66の一方の長辺の両端と、他方の長辺の中央にそれぞれ配置され、また、作業台取付孔662は、アタッチメントプレート66の他方の長辺の両端と、一方の長辺の中央にそれぞれ配置されている。
【0077】
また、この例では、脚取付孔661及び作業台取付孔662が、アタッチメントプレート66の長辺を底辺とする二等辺三角形の各頂点にそれぞれ配置されている。この様に脚取付孔661を二等辺三角形の頂点に配置することにより、マーカヘッド21を支持脚65によって支持する際にバランス良く支持させることができる。また、作業台取付孔662を二等辺三角形の頂点に配置することにより、アタッチメントプレート66を作業台に取り付けてマーカヘッド21を作業台に固定する際にバランス良く固定させることができる。
【0078】
このアタッチメントプレート66は、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒の下端面よりも下方に配置され、これにより、マーカヘッド21を水平な床に設置する場合であっても、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒が床に衝突するのを防止している。
【0079】
<支持部材650>
図9は、図7の支持脚65を図8のアタッチメントプレート66に取り付けて構成される支持部材650を示した斜視図である。支持部材650は、3つの支持脚65をアタッチメントプレート66に固着させて構成される。
【0080】
各支持脚65の長さを調整すれば、マーカヘッド21の作業台に対する高さを調整することができる。支持脚65とアタッチメントプレート66とは、着脱可能であり、必要に応じてアタッチメントプレート66を交換することができる。
【0081】
アタッチメントプレート66は、筐体フレーム60の下面に対向させて配置され、アタッチメントプレート66の面積を筐体フレーム60の下面全体の面積よりも小さくすることにより、アタッチメントプレート66の下面全体を均一に平面加工することができる。
【0082】
各支持脚65はアタッチメントプレート66に対し二等辺三角形の各頂点に配置されるが、その底辺を筐体フレーム60の底板601側とすることにより、マーカヘッド21を支持する際の安定性を向上させている。
【0083】
<筐体フレーム下面の支持領域67>
図10は、図6の筐体フレーム60の下面を示した平面図である。筐体フレーム60には、略直線上に整列した状態でレーザー発振器41、Zスキャナ45及びXYスキャナ47が収容され、上板64を取り付けることにより、内部空間が密閉される。
【0084】
筐体フレーム60の下面には、支持脚65を取り付けるための3つの脚取付孔603が形成されている。各脚取付孔603は、筐体フレーム60の下面における所定の支持領域67に配置される。支持領域67は、テレセントリックレンズ48とレーザー発振器41との間に形成される脚取付領域である。この支持領域67は、テレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒を取り付けるためのレンズ鏡筒取付孔63aの内縁と、レーザー発振器41の重心との間に形成されている。
【0085】
脚取付孔603は、3つの支持脚65の重心が仕切り板61よりもテレセントリックレンズ48側となるように配置される。すなわち、3つの脚取付孔603のうち、2つの脚取付孔603は、仕切り板61よりもテレセントリックレンズ48に近い位置に配置され、他の1つの脚取付孔603は、仕切り板61よりもテレセントリックレンズ48から遠い位置に配置されている。この様に支持脚65を配置することにより、マーカヘッド21の長手方向の重心を考慮して、バランスを保持し安定した状態でマーカヘッド21を設置することができる。
【0086】
本実施の形態によれば、レーザー発振器41及びXYスキャナ47間にレーザー光Lの光路を屈曲させるための固定ミラーを配置することなく構成されるので、固定ミラーの光学特性の誤差やばらつきによる加工精度の低下を抑制することができる。また、レーザー光LをワークWに向けて出射させる出射光学系として、テレセントリックレンズ48を採用することにより、XYスキャナがレーザー光を2次元走査させても、加工対象物に対し一定の角度でレーザー光を照射することができるので、レーザー加工の精度を向上させることができる。さらに、レーザー発振器41、Zスキャナ45及びXYスキャナ47を収容する筐体フレーム60に対し、テレセントリックレンズ48とレーザー発振器41との間の筐体フレーム60の下面を支持部材650で支持することにより、支持部材650を作業台に取り付けた場合に、支持部材650の設置面が筐体フレーム60の下面よりも面積が小さくてもバランス良くマーカヘッド21を支持させることができる。しかも、筐体フレーム60の下面全体を設置面とする場合に比べ、作業台に当接させる設置面の面精度を容易に確保することができ、平らな作業台に載置した場合にがたつくのを防止することができる。
【0087】
また、支持脚65の先端が固着されるアタッチメントプレート66がテレセントリックレンズ48のレンズ鏡筒よりも下方に配置されるので、水平な床であっても安全に設置することができる。さらに、支持脚65の長さを調整することにより、傾斜した作業台上であっても水平に設置することができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、3つの支持脚65のいずれもが長さ調整可能である場合の例について説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、3本の支持脚65のうち、1本だけが長尺方向の長さが固定であっても良い。この様な構成を採用すれば、支持脚65の長さを調整することによってマーカヘッド21の傾きを調整する際に、ユーザが傾き調整をし易くすることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、レーザーマーカ20がSHG型レーザーマーキング装置である場合の例について説明したが、本発明によるレーザー加工装置はこれに限定されるものではない。例えば、ファイバーレーザー型のマーキング装置にも本発明は適用することができる。ファイバーレーザー型マーキング装置は、Yb(イッテルビウム)をドープしたファイバーを増幅器として用いるレーザーマーカである。
【符号の説明】
【0090】
20 レーザーマーカ
21 マーカヘッド
22 マーカコントローラ
23 光ファイバー
231 ケーブル接続部
41 レーザー発振器
41T 入力端子
41B 出力筒
41W 出力窓
42 ビームサンプラー
43 発振器用シャッタ
44 ミキシングミラー
45 Zスキャナ
46 偏光ビームスプリッタ
47 XYスキャナ
48 テレセントリックレンズ
56 カメラ
57 カメラ用のレンズ鏡筒
60 筐体フレーム
601 底板
602 側壁
603 脚取付孔
61 仕切り板
61a 出力筒挿通孔
61b 配線孔
62 右側の収容部
62a 光ファイバー引込孔
62b 配線引込孔
62c 発振器収容部シール用のOリング
63 左側の収容部
63a レンズ鏡筒取付孔
63b レンズ鏡筒引出孔
63c 配線引出孔
63d スキャナ収容部シール用のOリング
631 Zスキャナ配置領域
632 XYスキャナ配置領域
64 上板
650 支持部材
65 支持脚
651 本体部
652,655 長さ調整ナット
653 フレーム係合部
654,657 可動部
656 プレート係合部
66 アタッチメントプレート
661 脚取付孔
662 作業台取付孔
663 肉抜き孔
67 支持領域
L 加工用のレーザー光
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を生成するレーザー発振器と、
加工対象物上における上記レーザー光の照射位置を2次元方向に走査させるXYスキャナと、
上記XYスキャナの下方に配置され、上記XYスキャナから入射する上記レーザー光の入射角にかかわらず、上記加工対象物に向けて出射する上記レーザー光の出射角を一定にするテレセントリックレンズと、
上記レーザー発振器及び上記XYスキャナを収容する筐体と、
上記筐体の下面よりも面積の小さな設置面を有し、上記テレセントリックレンズ及び上記レーザー発振器間の上記筐体下面を支持する支持部材とを備えたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
上記レーザー光の焦点距離を制御するZスキャナを備え、
上記筐体は、略直線上に整列した状態で、上記レーザー発振器、上記Zスキャナ及び上記XYスキャナを収容することを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
上記テレセントリックレンズは、レンズ鏡筒の一部が上記筐体下面から突出するように配置され、
上記支持部材は、上記筐体下面から上記テレセントリックレンズの光軸方向に延びる複数の支持脚と、上記支持脚が固着される取付プレートとからなり、上記取付プレートが上記レンズ鏡筒の下端よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
上記支持部材は、3つの上記支持脚及び上記取付プレートからなることを特徴とする請求項3に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
上記取付プレートは、その下面が平面加工されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
上記支持部材は、長さを調整することができる上記支持脚を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
上記支持脚のいずれか1つは、長さが固定されていることを特徴とする請求項6に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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