説明

レーザー装置

【課題】電流が注入されたときにレーザー光の放射を可能とする有機レーザー装置を提供する。
【解決手段】有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有する有機レーザー装置である。第1の電極は反射鏡として機能し、第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、レーザー光を放射することができる。レーザー装置に用いる有機化合物層は、レーザー光の放射を可能とするために、その波長を考慮して積層構造と各層の膜厚が決定される。有機化合物層は、一対の電極間に挟まれるように形成されるものであり、好ましくはキャリア輸送特性、発光波長の異なる複数の層を用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料を用いたレーザー装置に関し、特に電流励起型の有機レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体レーザーは高出力、高効率、高いエネルギー蓄積性、広い波長可変特性、小型であるなどの特徴を有しており、このため応用分野の広いレーザーである。なかでも半導体レーザーは小型、軽量であり、かつ閾値が小さいなどが大きな特徴である。すでに無機半導体を用いた半導体レーザーが開発されており、多方面で実用化されている。
【0003】
一方、有機化合物を用いてレーザー発振が実現されれば、無機半導体レーザーでは得られない特性をレーザーに付与することができる。例えば材料の柔軟性に基づいてフレキシブルなレーザーが作製できること、製造プロセスの簡素化やコスト削減が可能であること、製造プロセスが多様である(蒸着、スピンコート法、印刷法、ディップコーティングなどが適用できるなど)などが挙げられる。有機化合物を用いたレーザーに関しては非特許文献1に総説としてまとめられている。
【0004】
有機化合物の光励起によるレーザー発振は、これまでにも多くの例があげられている。高い量子収率を持つ蛍光材料を用い、窒素レーザーなどの光励起用のレーザーを照射することで、比較的容易にレーザー発振が可能である。しかし、レーザー発振するために必要なエネルギーは極めて大きく、数μJ/cm〜数百μJ/cmのエネルギー密度が必要であるとされている。この値は、数十W/cm〜数千W/cmのエネルギー密度であり、仮に1cm四方の素子の場合、数十Vの電圧で10A〜1000A程度の電流を流す必要がある。
【0005】
有機材料を発光させる代表的な発光素子として、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子が知られている。この素子は、一対の電極間に有機材料を用いて、ホール輸送層、発光層、電子輸送層と呼ばれる各層を積層することで形成されている。そして、電極間に電圧を印加して発光層に電子、ホールを注入することにより発光させるものである。この発光は、発光層に用いる材料または添加するゲスト材料の種類により、発光の波長帯域を変えることができるが、いずれにしても波長帯域が比較的広く(色純度が悪く)、しかも指向性がないことから、レーザー光として用いることができなかった。さらに、従来の有機EL素子では、レーザー発振するために必要とされる高密度の電流を流すことができないとされている。
【非特許文献1】Nir Tessler、”Lasers Based on Semiconducting Organic Materials”、Adv. Mater.、 1999、11、p.363−370
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、有機材料をレーザー媒体として用い、電流励起可能なレーザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電流が注入されたときにレーザー光を放射する有機化合物を包含する有機レーザー装置である。本発明において、一対の電極間に形成される有機化合物を主成分とする薄膜を総称して有機化合物層と呼ぶこととする。本発明のレーザー装置に用いる有機化合物層は、レーザー光の放射を可能とするために、その波長を考慮して積層構造と各層の膜厚が決定される。有機化合物層は、一対の電極間に挟まれるように形成されるものであり、好ましくはキャリア輸送特性、発光波長の異なる複数の層を用いて形成される。また、反射体を介して一対の電極が形成された、所謂共振器構造とすることは望ましい形態となる。
【0008】
本発明の有機レーザー装置は、一対の電極間に形成された有機化合物層に電流を流すことによりレーザー光を放射可能とするように、有機化合物層において発光可能な複数の層が接して形成されているものである。
【0009】
この有機レーザー装置において、一対の電極間において、その有機化合物層の両方または一方の面には、反射体が備えられ、所謂共振器構造としておくことは好ましい形態となる。すなわち、一対の電極間において、有機化合物層で発光した特定波長の光に対して定在波を形成するように有機化合物層の少なくとも一方の面には反射体が備えられていることは好ましい形態となる。さらに有機化合物層の厚さは、レーザー光の波長の1/2倍(半波長)、またはその整数倍とすることが望ましい。なおここで、物質中の光速は真空中のそれとは異なることが知られており、物質中の光速は真空中の光速に物質の屈折率を乗じたものである。したがって実際には、有機化合物中の膜厚に屈折率を乗じた膜厚(以下、光学膜厚と定義する。すなわち、光学膜厚=膜厚×屈折率)を、レーザー光の半波長の整数倍にしなければならない。以下、膜厚とは単に物質の膜厚を指し、光学膜厚とは物質の膜の膜厚にその屈折率を乗じたものである。
【0010】
本発明は、複数の発光ピークを有し、少なくとも一つの発光ピークの半値幅が10nm以下である光を放射する有機化合物層が、一対の電極間に備えられている有機レーザー装置である。
【0011】
本発明に適用される有機化合物層は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを適宣組み合わせた構造となっている。この分類において、ホール移動度などホール輸送性に適した層をホール注入層、ホール輸送層と呼び、電子移動度など電子輸送性に適した層を電子輸送層、電子注入層と呼ぶ。なお、ホール注入層とホール輸送層とを区別して表記しているが、これらはホール輸送性が特に重要な特性である意味において同じである。便宜上区別するために、ホール注入層は陽極に接する側の層であり、発光層に接する側の層はホール輸送層と呼んでいる。また、陰極に接する側の層を電子注入層と呼び、発光層に接する側の層を電子輸送層と呼んでいる。発光層は電子輸送層を兼ねる場合もあり、発光性電子輸送層と呼ぶこともできる。また、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層なども、発光層と兼用することができる。また、発光層には、発光色を変化させるために金属錯体や、もしくは有機色素材料、各種誘導体などを含ませたものが適用可能である。
【0012】
このような有機化合物層の積層構造を適用した場合、陰極から注入された電子と、陽極から注入されたホールが発光層で再結合して励起子を形成し、その励起子が基底状態に戻る時に光を放出する、所謂エレクトロルミネセンスにより発光が得られる。本発明では、電流注入により発光層で発光する光の波長帯域よりも短波長側であって、ピーク波長の半値幅が10nm以下である光を放射するように、発光層に接してホール輸送層を形成することにより、レーザー光を発現させることも可能としている。
【0013】
本発明は、電流注入によりピーク波長の半値幅が10nm以下である光を放射する有機化合物層が一対の電極間に備えられ、電流密度に対する発光ピークでの発光強度の変化が、傾きの異なる二つの線形領域で区分可能であり、傾きの大きい領域は、傾きの小さい領域に対して高電流密度側にある有機レーザー装置である。特に、本発明では、傾きの異なる二つの線形領域が接する電流密度(以下、閾値と記す)が、5mA/cm〜20mA/cmの間にあることを特徴としている。また、有機化合物層に注入する電流の電流密度が閾値に達するまでに、発光ピークの半値幅が20%以上変化することを特徴としているものである。
【0014】
上記した本発明の構成により、有機材料をレーザー媒体として用い、電流励起可能なレーザー装置を得ることができる。
【0015】
ここで、有機化合物層の第1の層を構成する物質としては、正孔移動度が10−6cm/V・sec以上のもの、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下、α−NPBと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下、TPDと示す)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(以下、TCTAと示す)などが好ましい。但し、ここに列挙した以外の物質でも構わない。
【0016】
また、第2の層を構成する物質としては、電子移動度が10−8cm/V・sec以上のもの、例えばトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(以下、Alq3と記す)に代表されるような、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体やその混合配位子錯体などが好ましい。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、PBDと示す)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以下、OXD−7と示す)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZと示す)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、p−EtTAZと示す)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(以下、BPhenと示す)、バソキュプロイン(以下、BCPと示す)などのフェナントロリン誘導体、4,4’−(N−カルバゾリル)ビフェニル(以下、CBPと記す)を用いることができる。但し、ここに列挙した以外の物質でも構わない。
【0017】
なお、第1の層と第2の層とは、いずれか一方または両方が無機化合物を含む層であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、有機材料をレーザ媒体として用いて、電流励起によってレーザ発振を行うことが可能になる。すなわち、電流励起可能な有機レーザ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは、これまで報告されている光励起有機レーザーの研究において、閾値の測定方法に問題があると考えた。従来、光励起による有機固体レーザーでは、薄膜状の有機化合物に強いレーザー光を照射し、得られる蛍光を測定している。ここでは、レーザー光の入射エネルギーを変化させながら、蛍光スペクトルを測定しており、半値幅の狭い発光ピーク強度をモニターする。測定上の問題点とは、入射エネルギーは全て膜中の有機化合物によって吸収されているという仮定に基づいている点である。実際には、薄膜中の有機化合物に吸収されずに透過するレーザー光や、膜によって反射されるレーザー光は考慮していない。従って、レーザー発振するために必要なエネルギー密度は、これまで報告されている値よりもかなり小さいものであると考えられる。
【0020】
有機EL素子では、有機化合物の薄膜に対して多量のキャリアが供給される。大まかな見積りを行うと、通電中に有機EL素子に存在するキャリア数と素子中の分子数とはほぼ同等、あるいは前者が多い。従って、キャリアを持たない分子、すなわち基底状態の分子の数は、キャリアを持った分子よりも少ない可能性がある。この状態でキャリアの再結合が起こって励起状態が生成すると、励起状態の分子数は基底状態の分子数よりも相対的に多い状態を作り出すことができる可能性がある。すなわち、低電流量の通電でも十分に反転分布を作り出せるものと予想できる。ここで素子に共振器構造を付与してやれば良い。すなわち、共振器として機能する有機化合物の薄膜の光学膜厚を半波長の整数倍にすることで、反転分布状態から生じる誘導放射と共振によって、光が増幅することでレーザーの発振が可能になるものと期待される。
【0021】
そこで、本発明者らは、有機EL素子からのレーザー発振の可能性を探ることを目的として、低電流領域での電流密度と発光強度との相関関係を詳細に検討した。その結果、電流密度に対する発光強度の相関関係の全て、あるいは一部が、傾きの異なる二つの直線で表され、かつ傾きの大きい領域は、傾きの小さい領域に対して高電流密度側に位置することが分かった。そして前記二つの領域が接する電流密度(閾値)は数mA/cmから数十mA/cmという、極めて小さな値であることを見出した。同時に、この閾値前後で発光スペクトルの半値幅が20%程度減少することを明らかにした。すなわち、ある特定の複数の有機化合物の層を接して形成することにより、有機化合物を媒体とした電流励起型のレーザー装置であっても、所謂固体レーザーと同様の挙動を示すことを確認することができた。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【実施の形態1】
【0023】
本実施の形態では、基板上に電極と有機化合物層を積層したレーザー装置において、基板側(陽極側)からレーザー光を取り出すことのできる構造について説明する。図1に、基板11上に複数の層が積層形成されて構成される本実施の形態のレーザー装置を示す。本実施の形態では、基板側11からレーザー光を取り出すので、レーザー光に対して透光性を有する基板であればよい。具体的には、ガラス、石英、透明プラスチックなどを用いることができる。12は陽極であり、金属、合金、電気導電性化合物、あるいはこれらの混合物を用いることが可能であり、仕事関数は考慮する必要性は特にない。これは陽極12の上に形成される導電性反射体13が有機化合物層へのホール注入を担うため、陽極12は導電性反射体13とオーミック接触すれば良いためである。ただし、この構造では基板11側にレーザー光を出力させるので、陽極12はできるだけ透光性を有することが好ましい。したがって陽極12の材料が金属や合金の場合には、可視光領域における吸収が小さい金属を用い、それを薄膜として形成することが好ましい。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO(Zinc Oxide)などの透光性導電性酸化物、またはTiN(Titanium Nitride)などの透光性導電性窒化物を用いることができる。しかし、これらの材料もある程度は光を吸収するので、陽極12は膜厚を100nm程度あるいはそれ以下の薄膜とするのが好ましい。
【0024】
導電性反射体13は有機化合物層へホールを注入するための電極としての機能を有し、かつ発光層16で生じる光を閉じ込めて定在波を形成するための反射鏡としての機能も有している。従って、反射鏡として、導電性反射体13には可視光の吸収が少なく、反射率が高く、かつ導電性を有する材料を使用することが好ましい。また、ここでは有機化合物層にホールを注入する必要があるため、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料を選択する必要がある。これらの条件を満たすものとしては、例えばAgやPtなどが挙げられる。なお、この反射鏡として機能する導電性反射体13を通してレーザー光を取り出すため、反射率は50%から95%程度にするのが好ましい。
【0025】
有機化合物層には、陽極からのホール注入に優れるホール注入層14、ホール注入層14から発光層16へホールを効率よく輸送するためのホール輸送層15、陰極19からの電子注入障壁を軽減する機能を有する電子注入層18、注入された電子を発光層16へ効率よく輸送するための電子輸送層17が含まれている。そして注入されたキャリア(ホールと電子)は発光層16で再結合する。これらのキャリア注入、輸送、再結合から発光に至る機構は、通常の有機EL素子と同様である。したがって、通常の有機EL素子で用いることができる材料を上述した各機能層で用いることができる。なお、本実施の形態では、有機化合物層として5つの機能層を用いることとしているが、本発明はこれに限定されず、複数の機能を同一の層で担うことにより、層の数を減らすことも可能である。
【0026】
ホール注入層14を形成するホール注入材料としては、イオン化ポテンシャルの小さな材料が用いられ、大別すると金属酸化物、低分子有機化合物、および高分子系化合物に分けられる。金属酸化物の例としては、酸化バナジウムや酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどを用いることができる。低分子有機化合物の例としては、m−MTDATAに代表されるスターバースト型アミンや金属フタロシアニンなどが挙げられる。一方高分子系化合物の一例としては、ポリアニリンやポリチオフェン誘導体などの共役高分子を用いることができる。これらの材料をホール注入層14として用いることにより、ホール注入障壁が低減し、効率よくホールが注入される。
【0027】
ホール輸送層15としても公知の材料を用いることができ、芳香族アミンが良い例である。例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下、α−NPBと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)などを用いることができる。また、高分子材料としては良好なホール輸送性を示すポリ(ビニルカルバゾール)などを用いてもよい。
【0028】
発光層16でも既知の材料が使用可能である。例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alqと示す)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Almqと示す)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[η]−キノリナト)ベリリウム(以下、BeBqと示す)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(4−ヒドロキシ−ビフェニリル)−アルミニウム(以下、BAlqと示す)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(以下、Zn(BOX)と示す)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(以下、Zn(BTZ)と示す)などの金属錯体の他、各種蛍光色素が有効である。また、白金オクタエチルポルフィリン錯体やトリス(フェニルピリジン)イリジウム錯体、トリス(ベンジリデンアセトナート)フェナントレンユーロピウム錯体などのりん光材料も有効である。特にりん光材料は蛍光材料と比較して励起寿命が長いため、レーザー発振に不可欠な、反転分布、すなわち、基底状態にある分子数よりも励起状態にある分子数が多い状態を作り出すことが容易になる。
【0029】
なお、上述した発光層では、発光材料をドーパントとして用いても構わない。すなわち、発光材料よりもイオン化ポテンシャルが大きく、かつバンドギャップの大きな材料をホストとし、これに上述した発光材料を少量(0.001%から30%程度)混合しても構わない。
【0030】
電子輸送層17も公知材料を使用することが可能である。具体的には、Alqに代表されるような、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体やその混合配位子錯体などが好ましい。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、PBDと示す)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以下、OXD−7と示す)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZと示す)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、p−EtTAZと示す)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(以下、BPhenと示す)、バソキュプロイン(以下、BCPと示す)などのフェナントロリン誘導体を用いることができる。
【0031】
電子注入層18では、フッ化リチウム、臭化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩を使用すればよい。電子注入層18の上に陰極19が形成される。陰極19は通常のEL素子で用いられるような仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いればよい。具体的には、1族または2族の典型元素、すなわちLiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg/Ag、Al/Li)の他、希土類金属を含む遷移金属を用いて形成することができるが、Al、Ag、ITO等の金属(合金を含む)との積層により形成することもできる。ただし、本実施の形態では発光層から得られる発光を陰極19と、陽極12上の反射鏡として機能する導電性反射体13との間で共振器構造を形成する必要がある。したがって、陰極材料としては可視光の吸収が小さく、反射率の大きな金属が好ましい。具体的にはAlやMg、あるいはこれらの合金が好ましい。また、この陰極では反射率が限りなく100%に近いことが好ましいので、可視光が透過しない程度の膜厚は必要である。
【0032】
なお、上述した有機材料は、湿式、乾式、いずれの方法を適用して形成しても構わない。高分子材料の場合では、スピンコート法やインクジェット法、ディップコート法、印刷法などが適している。一方低分子材料であれば、ディップコート法やスピンコート法だけでなく、真空蒸着などによっても成膜される。陽極材料及び陰極材料は、蒸着法、スパッタリング法等によって形成される。
【0033】
ここで最も重要なことは、陽極12上の反射鏡として機能する導電性反射体13と陰極19の間隔である。定在波を形成して光を増幅させるためには、半波長の整数倍の間隔が必要である。したがって、導電性反射体13と陰極19の間に設置された有機材料の膜厚とその屈折率を乗じた膜厚、すなわち、光学膜厚がレーザー光の半波長の整数倍となるように、導電性反射体13と陰極19の間隔を設定する必要がある。
【0034】
例えば400nmの光を増幅させるためには、光学膜厚は少なくとも200nm必要であり、したがって導電性反射体13と陰極19の間隔は、200nmを有機材料の屈折率で除した長さとなる。同様に、800nmの光を増幅させるためには、有機層は少なくとも400nmの光学膜厚が必要である。したがって、導電性反射体13と陰極19の間隔は、400nmを有機材料の屈折率で除した長さとなる。上述した有機発光材料の発光波長は、主として可視光領域に存在する。したがって、400nmから800nmと定義される可視光を増幅させるためには、導電性反射体13と陰極19の間隔、すなわち機能層の光学膜厚を200nm以上にする必要がある。
【0035】
図1に示した有機レーザー装置の電極間に通電することにより、陰極19から注入された電子と陽極12から注入されたホールが主として発光層16で再結合して発光する。ここで得られた発光の一部は反射鏡として機能する導電性反射体13と陰極の間で増幅される。したがって、閾値以上の電流密度で電流を流すことによって反転分布が形成され、レーザーが発振する。なお、レーザー光は陽極12側から取り出される。レーザー光は、発光層16から放射されるスペクトルの内、共振器構造内で増幅が許容される波長を中心となり、比較的シャープな発光スペクトルとして観測することができる。
【実施の形態2】
【0036】
本実施の形態では、陽極を反射鏡として用いるレーザー装置の構成を示す。図2において、基板21は実施の形態1で示す材料と同様なものを用いることができる。基板21の上に陽極22が形成される。陽極22は同時に反射鏡としての機能を果たす。したがって、陽極22は可視光の吸収が少なく、反射率が高く、かつ導電性を有する材料を使用して形成する。また、有機化合物層にホールを注入する必要があるため、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料を選択する必要がある。これらの条件を満たすものとしては、例えばAgやPt、あるいはAuなどが用いることが可能である。なお、この反射鏡として機能する陽極22を通してレーザー光を取り出すため、反射率は50%から90%程度にするのが好ましい。
【0037】
陽極22の上に形成する有機化合物層は、実施の形態1と同様であり、ホール注入層23、ホール輸送層24、発光層25、電子輸送層26、電子注入層27などを適宜積層して形成する。
【0038】
同様に、陰極28も実施の形態1で示す材料を用いることができる。また、陽極22と陰極28との間隔(すなわち、有機化合物層の光学膜厚)についても、実施の形態1で示すような条件を満たすように作製する必要がある。図2に示した有機レーザー装置の電極間に通電することにより、陰極28から注入された電子と陽極22から注入されたホールが主として発光層25で再結合して発光する。ここで得られた発光の一部は陽極22と陰極28の間で増幅される。したがって、閾値以上の電流密度で電流を流すことによって反転分布が形成され、レーザーが発振される。なお、レーザー光は陽極22側から取り出される。レーザー光は、発光層25から放射されるスペクトルの内、共振器構造内で増幅が許容される波長が中心とする、比較的シャープな発光スペクトルとして観測される。
【実施の形態3】
【0039】
実施の形態1と2では、陽極、あるいは陽極上の反射鏡として機能する導電性反射体と、陰極との間で共振器構造を形成し、光の増幅と、あわせて電流による反転分布の形成に基づく誘導放射が起こり、レーザーが発振する構成を示している。この場合、電極間、あるいは導電製反射体と陰極との間で光増幅するため、有機化合物層の膜厚は必然的に厚くなってしまう。これは駆動電圧の増大に直接結びつくため、レーザーを発振するための電圧が上昇する。そこで本実施の形態では、透明性電極の下に反射鏡を取り付け、透明性電極自身を共振器の一部に取り込むことによって有機化合物層の膜厚を小さくできるレーザー装置の構成について示す。
【0040】
図3では、基板31側からレーザー光を取り出す構造のため、基板31は発振するレーザー光に対して透光性が高い方が望ましい。具体的には、実施の形態1、2で示したような材料を用いればよい。
【0041】
32は基板上に形成される反射鏡である。反射鏡32としては、可視光に対する吸収が小さく、反射率の高い材料を用いることが好ましい。具体的には、AlやAg,Ptなどの金属や合金がよい。あるいはAlとSiの合金を形成した後にさらにTiを成膜してもよい。あるいは誘電体の多層膜を用いることもできる。例えば酸化ケイ素と酸化チタンを交互に蒸着した誘電体多層膜などが挙げられる。この誘電体多層膜は真空蒸着、あるいはスパッタリングなどによって形成される。なお、この場合、酸化ケイ素と酸化チタンの膜厚は、共振させる光の波長によって決定され、また、光の反射率も層の数によって制御すればよい。本実施の形態のレーザー装置では、この反射鏡32が光の取り出し口、すなわち出力鏡でもあるので、反射率は50%〜95%に設定するのが好ましい。
【0042】
このようにして得られた反射鏡32の上に、透明電極33が形成される。透明電極33としては、ITOやZnO、などの透明性導電性酸化物、あるいはTiNなどの透明性導電性窒化物を用いることができる。ただし、有機化合物層へホール注入を行う必要があるため、仕事関数の大きいもの、例えばITOやTiNなどが好ましい。有機化合物層はホール注入層34、ホール輸送層35、発光層36、電子輸送層37、電子注入層38などであり、電流を流すことによって発光に至らしめる有機EL素子の積層構造と同様であり、実施の形態1で示すような方法、材料を適用することによって作製される。
【0043】
この透明電極33の膜厚は、以下のように考慮して決定すればよい。いま、機能層の平均屈折率をnorg、膜厚をdorg、透明電極の屈折率と膜厚をそれぞれnele、deleとし、発振させる光の波長をλとする。光学膜厚dは式(1)で与えられる。
【数1】

・・・(1)
この光学膜厚dが半波長(λ/2)の整数(q)倍である必要があるので、式(2)の関係がある。
【数2】

・・・(2)
したがって、透明電極の膜厚は、式(3)のように与えられる。
【数3】

・・・(3)
【0044】
例えば500nmの光を発振し、有機化合物層の平均屈折率を1.7、透明電極の屈折率を2、有機化合物層の膜厚が標準的な有機EL素子の100nmとした場合、透明電極の膜厚は40nmあるいは160nmとする。
【0045】
このような設計指針で構築された素子上に陰極39を形成する。陰極39としては実施の形態1で示すような材料を用いることができる。なお、この陰極39は反射鏡として用い、出力鏡としては用いない。したがって、発光した光が透過しない程度以上の膜厚で形成すればよい。
【0046】
図3に示した構成において、電極間に通電することにより、陰極39から注入された電子と透明電極33すなわち陽極から注入されたホールが主として発光層36で再結合し発光に至る。ここで得られた発光の一部は反射鏡32と陰極39の間で増幅される。したがって、閾値以上の電流密度で電流を流すことによって反転分布が形成され、レーザーが発振される。なお、レーザー光は陽極33側から取り出される。レーザー光は、発光層36から放射されるスペクトルの内、共振器構造内で増幅が許容される波長が中心となり、比較的シャープな発光スペクトルのピークとして観測される。
【実施の形態4】
【0047】
実施の形態1から3では、基板側、すなわち陽極側からレーザー光を取り出す構成について示したが、本実施の形態では基板に対して陽極よりも上側、すなわち陰極側(素子上面)からレーザー光を取り出すレーザー装置の構成について示す。図4において、41は基板であり、特に材料は選ばない。ガラスや石英、プラスチックのみならず、紙や布などの柔軟な基板でも用いることができる。もちろん、透明である必要はない。
【0048】
42は陽極である。これは有機化合物層にホールを注入するため、ならびに反射鏡として機能する。したがって、可視光の吸収が少なく、反射率が高く、かつ仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)材料を選択する必要がある。これらの条件を満たすものとしては、例えばAgやPt、あるいはAuなどが用いることが可能である。なお、この陽極は反射鏡として用いるため、可視光を透過しない程度以上の膜厚が必要である。具体的には、数十nmから数百nmとすればよい。
【0049】
陽極42の上には電流を流すことによって発光に至らしめる有機EL素子と同様の構造を用いることができる。つまり、ホール注入層43、ホール輸送層44、発光層45、電子輸送層46を設ける。これらは実施の形態1で示されるような公知の材料を用いればよい。電子輸送層46の上には通常電子注入層47を設ける。電子注入層47の材料として、LiやCeなどのアルカリ金属がドープされた有機化合物を使用するのが好ましい。有機化合物としては、実施の形態1に示した電子輸送材料を併用することができる。この後、陰極48を形成する。陰極48としては実施の形態1で示したような公知材料を用いればよい。あるいは、電子注入層47を設けず、電子注入性に優れたMgAg合金を直接積層して陰極48としてもよい。なお、この構造では上面からレーザー光を取り出すので、陰極は出力鏡として機能する。したがって、発振するレーザー光に対して透過率が50%〜95%となるように陰極を形成する。例えばMgとAgとの合金を材料とする場合は、陰極48の膜厚は5nm〜20nm程度となる。
【0050】
このようにして形成された本実施の形態のレーザー装置に通電することにより有機化合物層から発光した光が、誘導放射によって増幅され陰極と陽極の間で共振し、レーザー光として陰極側(素子上面)から取り出すことができる。
【実施の形態5】
【0051】
本実施の形態では、透明性電極の下に反射鏡を取り付け、透明性電極自身を共振器の一部に取り込むことによって有機化合物層の膜厚を小さくし、かつ基板の上面(一対の電極のうち、基板からより離れた方の電極側)からレーザー光を発振できるレーザー装置の構造を示す。
【0052】
図5では、51は基板であり、材質は特に限定されない。ガラス、石英、プラスチックのみならず、紙や布などの柔軟な基板でも用いることができる。もちろん、透明である必要はない。この基板51の上に反射鏡52を設ける。反射鏡52としては、反射率が高く、可視光の吸収率が低い材料を選ぶ。具体的には、Al、Agなどの金属やこれらの金属を主成分とする合金、あるいはSiOやTiOなどの誘電体の積層膜などがある。誘電体の積層膜では、発振させる波長を持った光を選択的に反射するように各層の膜厚を設計する。また、光を全反射させるに必要な層数だけ積層する。反射鏡52の上に電極53を設ける。この電極53は有機化合物層にホールが注入でき、かつ透明性が高いことが要求される。そこでITOやTiNなどの透明性電極を用いることが好ましい。
【0053】
電極53の上には電流を流すことによって発光に至らしめる有機EL素子と同様の構造を設ける。つまり、ホール注入層54、ホール輸送層55、発光層56、電子輸送層57を形成する。これらは実施の形態1で示されるような公知の材料を用いればよい。なお、ホール注入層54ないし電子輸送層57の内、発光を担う層以外は省略することも可能である。電子輸送層57の上には通常電子注入層58を設ける。電子注入層58の材料として、LiやCeなどのアルカリ金属がドープされた有機化合物を使用するのが好ましい。有機化合物としては、実施の形態1に示した電子輸送材料を併用することができる。この後、陰極59を形成する。陰極59としては実施の形態1で示したような公知材料を用いればよい。あるいは、電子注入層58を設けず、電子注入性に優れたMgAg合金を直接積層し陰極59としてもよい。なお、この構造では上面からレーザー光を取り出すので、陰極59は出力鏡として機能する。したがって、発振するレーザー光に対して透過率が50%〜95%となるように陰極を形成する。例えばMg/Ag合金を材料とする場合、陰極59の膜厚は5nm〜20nm程度となる。
【0054】
このようにして形成された本実施の形態のレーザー装置に通電することにより、有機化合物層から誘導放射によって増幅された光の一部が陰極59と電極53すなわち陽極の間で共振し定在波が形成される。この際、透明性電極も共振器に含まれているので、その分有機化合物層の膜厚を小さくすることができる。すなわち、低い電圧で発光が可能であり、従って、低い電圧でレーザー発振が可能となる。
【実施の形態6】
【0055】
本実施の形態では発光素子の端面(エッジ部分)、すなわち有機化合物層の側面からレーザー光を取り出すことが可能なレーザー装置の構造を記述する。
【0056】
図6において、61は基板であり、材質は特に限定されない。実施の形態5に示したような材料を用いることができる。基板61の上に電極62が形成される。ここでは、共振による光の増幅は膜面に対して平行な発光成分のみに着目する。すなわち、縦モードのみに着目し、実施の形態1〜5で示したような横モードの共振は無視することができる。従って、電極の透明性や反射率は無視することができるので、仕事関数を主たるパラメータとして電極の材料を選択すればよい。具体的には、AgやPt、Auなどの大きな仕事関数を有する金属、あるいは合金を用いればよい。もちろん、仕事関数の大きな透明性電極であるITOやZnOも用いても良いが、面方向に出る光の回り込みを考慮すると、透明性のない電極が好ましい。
【0057】
電極62の上には、電流を流すことによって発光に至らしめる有機EL素子と同様な構造を採用する。つまり、ホール注入層63、ホール輸送層64、発光層65、電子輸送層66、ならびに電子注入層67が設けられ、これらは実施の形態1で示すような方法、材料を選択することによって作製される。なお、これらの有機化合物層、ならびに前記電極の膜厚は、効率よく発光するに適切な膜厚を選択すればよい。電子注入層67の上には電極が68設けられる。材料としては透明性や反射率を考慮する必要はなく、主として仕事関数をパラメータとして選択すればよい。具体的には、実施の形態1で示したような材料を用いればよい。
【0058】
なお、本実施の形態では有機化合物層の端面からレーザー発振する。従って、その幅は小さくても良く、通常幅数μm、長さ数百μmで十分である。ここで重要なことは、複数の縦モードの制御である。有機化合物層の横方向から発振する場合、通常有機化合物層の長さよりも波長の方が短いので、多くの縦モードが生じ、その結果、スペクトル形状曲線の幅の中に何本もの縦モードが入る。そこで図6に示すように、発光層付近に回折格子69を作製する。例えば図6では、ホール輸送層の上面は平坦とせず、縞状にして回折格子を形成する。すると、発光層内で発生した光はこの回折格子の格子間隔によって周期的に反射されて共振・増幅され、単色性の高い光を増幅することができる。ここで有機化合物層の屈折率をn、発振させる波長をλとすると、(λ/2n)の格子間隔で回折格子を作製すれば良い。
【0059】
このようにすることで、単一の縦モードが実現でき、単色性の良いレーザー光を有機化合物層の側面から得ることができる。
【実施の形態7】
【0060】
本実施の形態では、発光素子の端面(エッジ部分)からレーザ光を取り出すことのできるような構造を有する発光素子について図14を用いて説明する。
【0061】
図14において、121は素子を支持するための基板である。基板121の材質として特に限定されるものはない。ガラス、石英、プラスチックのみならず、紙や布などの柔軟な基板でも用いることができる。
【0062】
基板121の上には第1の電極122が形成されている。第1の電極122は陽極として機能すると共に、発光した光を反射するための反射体としても機能する。本実施の形態に示す発光素子において第1の電極122は二層(122a、122b)で構成されている。第1の電極122aは導電性の高いもので形成されていればよく、特に限定されるものはない。第1の電極122bは第1の層123と接し、第1の層123へ正孔を注入すると共に反射体としても機能するものである。従って、正孔を注入することを考慮すれば、第1の電極122bは、ITOやZnOのような仕事関数が高い金属酸化物、或いはAgやPt、Au等の金属または合金などを用いて形成することが好ましい。また、反射体としても機能することを考慮すれば、Agのような可視光の吸収率が低く反射率の高いものを用いて形成することが好ましい。また膜厚については、反射体として機能できるような膜厚に制御されている。なお、第1の電極122bが仕事関数の高い材料で形成されることから、第1の電極122aは仕事関数については特に制限されない。また、第1の電極122は、必ずしも二層で構成される必要はなく、単層或いは三層以上の積層構造であってもよい。
【0063】
第1の電極122bの上に形成されている第1の層123は、正孔を輸送するための層であると共に、発光する層である。なお本実施の形態の発光素子では、第1の層123は、電子よりも正孔の輸送性が高く、また正孔注入性にも優れ、エネルギーバンドギャップの大きいもので形成することが好ましい。また、第1の層123は発光する層でもあるため、発光の量子収率の大きな材料で形成することが好ましい。例えば、芳香族アミンが好ましい。具体的には、α−NPBや、TDATA、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(以下、TPDと示す)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(以下、TCTAと示す)などを用いることができる。また、良好なホール輸送性を示すポリ(ビニルカルバゾール)などの高分子材料を用いてもよい。なお、トリフェニルアミン誘導体を用いることは特に好ましい。なお、第1の層123は、単層のみでなく、上記に示したような物質からなる二層以上の積層構造を有する層であってもよい。
【0064】
第1の層123の上には第2の層124が形成されている。第2の層は、電子を輸送するための層である。第2の層124は、正孔よりも電子の輸送性が高く、また電子注入性にも優れ、イオン化ポテンシャルの大きいものを用いて形成することが好ましい。例えば、Alq3に代表されるような、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体やその混合配位子錯体などを用いることが好ましい。さらに、金属錯体以外にも、PBD、OXD−7などのオキサジアゾール誘導体、TAZ、p−EtTAZなどのトリアゾール誘導体、BPhen、BCPなどのフェナントロリン誘導体、4,4’−(N−カルバゾリル)ビフェニル(以下、CBPと記す)を用いることができる。なお、第2の層124を構成する物質は第1の層123を構成する物質よりもバンドギャップが大きく、かつイオン化ポテンシャルがより大きいものを用いることが好ましい。具体的には、CBPやBCPなどのフェナントロリン誘導体やカルバゾール誘導体などである。なお、第2の層124は、単層のみでなく、上記に示したような物質からなる二層以上の積層構造を有する層であってもよい。
【0065】
第2の層124の上に第2の電極125が形成される。第2の電極125は陰極として機能すると共に、発光した光を反射するための反射体としても機能する。本実施の形態に示す発光素子において第2の電極125は二層(125a、125b)で構成されている。第2の電極125aは第2の層124と接し、第2の層124へ電子を注入するものである。従って、第2の電極125aは、1族または2族の典型元素、すなわちLiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg/Ag、Al/Li)の他、希土類金属を含む遷移金属のような仕事関数の低いもので形成することが好ましい。また、第2の電極125bは、反射体として機能する。従って、Ag,AlやMg、またはこれらの合金のような可視光の吸収が小さく、反射率の大きな金属を用いて形成することが好ましい。また膜厚については、反射体として機能できるような膜厚に制御されている。なお、第2の電極125aが仕事関数の低い材料で形成されることから、第2の電極125bは仕事関数については特に制限されない。また、第2の電極125は、必ずしも二層で構成される必要はなく、単層或いは三層以上の積層構造であってもよい。
【0066】
なお、第1の層123や第2の層124は、湿式、乾式、いずれの方法を適用して形成しても構わない。高分子材料の場合では、スピンコート法やインクジェット法、ディップコート法、印刷法などが適している。一方低分子材料であれば、ディップコート法やスピンコート法だけでなく、真空蒸着などによっても成膜される。第1の電極122、第2の電極125についても形成方法は特に限定されず、蒸着法、スパッタリング法等によって形成される。
【0067】
反射体として機能する第1の電極122と第2の電極125との間には、第一の層123と第2の層124が設置されており、この二つの層において発光した光が共振、増幅される。したがって、この二つの層の光学膜厚の合計が、発光した光の半波長の整数倍である必要がある。つまり、第一の電極122と第2の電極125との間隔は、第一の層123と第2の層124の光学膜厚を屈折率で除した値となる。
【0068】
なお、本実施の形態では第1の電極122と第2の電極125との間に設けられた層は、第1の層123と第2の層124との二層で構成されているが、これに限らず、その他の機能層を設けた三層以上の構成のものとしてもよい。例えば、電子注入層や正孔注入層、正孔阻止層などの機能を設けても構わない。
【0069】
上記発光素子では、電流密度に対する発光強度の変化において、誘導放出の閾値を電流密度200mA/cm以下の範囲に有するものである。つまり、この閾値以上の電流密度となるように電流を流した場合に反転分布状態が形成される。なお、閾値は、発光素子の耐久性を考慮すれば2mA/cm〜50mA/cmにあることが好ましい。当該状態が形成された領域において各々の電極から注入された電子と正孔が再結合し、発光した光の一部は反射体(本実施の形態においては第1の電極および第2の電極)の間で共振・増幅される。なお、該発光の発光スペクトルは、上記発光素子内で共振し得る発光波長を主とし、比較的鋭いピークをもつものである。上記発光素子は、例えばレーザー発振器、即ちレーザー装置として用いることができる。
【実施例1】
【0070】
以下、本発明の実施例について説明する。
図8は本実施例で作製する試料の素子構造を示す。電極や発光層などの被膜を形成するための基板として、ガラス基板(例えば、コーニング社の#1737ガラス)を用いる。その上に、陽極101としてITO膜をスパッタリング法で100nmの膜厚で形成した。
【0071】
陽極101上に、ホール輸送層102としてホール輸送材料であるα−NPBを真空蒸着により135nmの膜厚で成膜した。続いて、ホール輸送層102上に、発光層103としてホスト材料である4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(以下、CBPと記す)と三重項発光材料であるイリジウム錯体Ir(tpy)(acac)を共蒸着して、30nmの膜厚で形成した。CBPとイリジウム錯体は重量比で10:1である。これらの膜上に阻止層兼電子輸送層104としてBCP、電子注入層105として電子注入材料であるフッ化カルシウム(CaF)、ならびに陰極106としてAlを蒸着によって成膜してサンドイッチ構造とした。なお素子の大きさは適宜決定すれば良いが、本実施例では2mm×2mmとした。
【0072】
有機材料で形成する各層の膜厚は、発生した光を有機化合物層中で増幅する事を目的として設定している。すなわち、CBP層中に添加されたIr錯体、または4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下、α−NPBと記す)層から発光した光が、ITOと有機化合物層が接する界面と、BCP層とCaF層が接する界面、あるいはCaF層とAl層とが接する界面で、反射を繰り返しながら定在波を形成するように膜厚を設定することが好ましい。
【0073】
本実施例で用いた有機材料のうち、発光可能なものはIr錯体とα−NPBである。これらは可視光領域(400nm〜800nm)に発光を示す。定在波を形成するためには、反射面の間隔が定在波の半波長を有機材料の屈折率で除した数値の整数倍であることが必要条件である。例えば、400nmの光の定在波を形成するためには、反射面の間隔は200nmを有機材料の屈折率で除した値の整数倍の長さにすることが必要である。したがって、有機材料の屈折率を1.7と仮定すると、200を1.7で除した値、つまり、120nmの整数倍となる。つまり、α−NPB層、CBP層、BCP層の膜厚の合計が120nmの整数倍になることが必要になる。同様に、800nmの光の定在波を形成させるためには、α−NPB、CBP層、BCP層の光学膜厚の合計が、400nm、800nm、1200nmというように、400nmの整数倍であることが必須条件である。屈折率を1.7と仮定すると、膜厚の合計は240、480、720nmというように、240nmの整数倍が必須条件であり、反射面の間隔、すなわちα−NPB、CBP層、BCP層の膜厚の合計は、240nm、480nm、720nmというように、240nmの整数倍となる。
【0074】
本実施例では上述したことを鑑み、図8で示す有機EL素子では有機化合物層の光学膜厚は270nmと、有機ELとしては敢えて厚い膜厚に設定しているが、本発明において有機EL素子の膜厚はこれに限定されない。図8で示す有機EL素子の場合、有機化合物の屈折率を1.7と仮定すると、定在波を形成できる光の波長は920nmを整数で割った波長であり可視光領域では460nmとなる。
【0075】
図9は、図8で示した有機EL素子を基板面より観測した発光スペクトルを示す。ITOを陽極としAlを陰極となるように直流電圧を印加して電流を流すことにより発光を得ている。図10(A)は電圧対電流密度特性であり、20V程度印加することによって数mAの電流が流れることが分かる。素子の発光面積は0.04cmであるので、電流密度は100mA/cm程度となる。図10(B)は電圧対発光強度特性である。なお、発光強度は、発光取り出し面(ITO側)から観測している。6V付近から発光が始まり、24V印加することによって数万カンデラ(Cd)の発光が得られている。
【0076】
図11(A)(B)に、図8で示した有機EL素子の発光スペクトルを示す。両スペクトルに於いて、発光強度は最大値で規格化している。図11(A)は、ITO側から観測した面発光のスペクトルである。一方、図11(B)は素子の横方向から観測した側面発光のスペクトルである。
【0077】
図11(A)では、475nm〜650nmの波長帯域に強い発光が観測される。この発光はIr錯体からの発光に基づくものである。また、400nm〜475nm付近には別の発光が観測される。この発光はα−NPB層からの発光に基づくものである。この結果は、キャリア(ホールと電子)は主としてCBP層中で再結合してIrからの発光に寄与するが、一部のキャリアはα−NPB層の中でも再結合していると考察される。この面発光では、発光強度は電流密度の変化に比例して変化する。したがって、いずれの電流密度においても、スペクトルは全く同一の形状となり、強度だけが電流密度の増大に比例して直線的に増大する。
【0078】
図11(A)のスペクトルに対し、素子の側面から得られる発光スペクトルは図11(B)で示すように二つの特徴を有する。まず一つは、475nm〜650nmの波長帯域における発光スペクトルの波形が異なる点である。もう一点は460nm付近に鋭い発光スペクトルが観測されることである。前者の原因は明らかでないが、後者の発光スペクトルは素子の有機化合物層で定在波が形成され、この波長の光のみが増幅されているためと考えられる。実際、上述したように、この素子の膜厚で定在波が許容される波長は460nmである。最も特徴的なことは、475nm〜650nmの波長帯域における発光は、電流密度の増大に比例して強度が変化するのに対し、460nm付近にピークのある別の発光スペクトルは電流密度の増大よりもさらに大きく発光強度が増大する事である。したがって、規格化された図11(B)では、460nmの発光のみが相対的に増大することになる。
【0079】
以上のことから、図8で示した有機EL素子内で460nmの波長を持つ光は定在波を形成しているものと考えられる。すなわち、この素子が460nmの光の共振器として働き、光を増幅させていると言える。さらに電流密度を増大させ120mA/cmとすると、面発光のスペクトル形状は全く変化しないのに対し、460nmの発光はさらに強度が増大し、鋭い発光シグナルを与える(図12)。
【0080】
図13は、460nmの波長を持つ光の発光強度を電流密度に対してプロットした図であり、図13(A)は図8で示した有機EL素子の面側から、図13(B)は素子の側面側から放射される光を測定したものである。いずれの特性においても、電流密度の増大に伴って発光強度は直線的に増大する。しかしながら、それは単調な増加ではなく、いずれの発光に於いても、電流密度が5mA/cm〜10mA/cm付近でその傾きが変化する閾値があることが示されている。このとき、電流密度が閾値よりも低い場合には自然放出による発光であり、高い場合には誘導放出により発光しているということができる。
【0081】
図13(B)では、発光ピークが460nmでの発光スペクトルの半値幅を電流密度に対してプロットした図も示している。閾値に達するまでの間、半値幅は急激に減少し、閾値以上の電流密度では徐々に半値幅が減少する。図7は、素子の側面から観察される発光スペクトルの測定角度依存性について調べた結果であり、それぞれの角度における発光スペクトルから正面から観測される発光スペクトルを引いたものである。同図に示すように素子の側面からの発光を、角度を0度から61度の範囲で変化させて測定したが、発光波長と半値幅に大きな変化がなかった。このことは、半値幅の減少は、屈折率が波長に依存するためではないと考察することができる。換言すると、発光のごく一部の波長のみを選択的に絞って観測したために発光スペクトルが見かけ上シャープになっているのではないと言える。
【0082】
一方、面側からの発光および側面側からの発光のいずれの場合においても、475nm〜650nmの発光には閾値を見出すことはできなかった。この波長帯域の発光は、電流密度の増大に伴って直線的に強度が増大し、高電流領域に至ると発光の増大率が低下する現象を示していた。これは通常の有機EL素子の典型的な挙動と同じである。なお、素子のITO側から観測される460nmの発光はいずれの電流密度でもブロードなスペクトルを与えるため、半値幅を求めることができなかった。
【0083】
表1は本実施例で作製した試料(素子)のレーザー発振特性を示している。これは、3個の同一の試料について測定した結果を示しているが、いずれの場合もピーク波長は462nm〜464nm、半値幅は10nm以下であり、閾値は10mA/cm〜12.5mA/cmとなっている。なお、この特性は室温において測定された値である。
【表1】



【0084】
以上の結果から、以下のような結論を導き出すことができる。本実施例の素子では、460nm付近の発光に対して共振器構造を有しており、この波長の光の定在波が形成される。また、460nmの発光は電流密度に対して閾値を示す。こうした挙動は、所謂固体レーザーと同様の挙動である。この閾値が、所謂反転分布が始まった閾値であるとすると、これよりも大きな電流密度ではレーザー光が発振していることになる。
【実施例2】
【0085】
本発明の発光素子、並びにその発光素子の諸特性について説明する。
本実施例で示す発光素子の構造を図15を用いて説明する。ガラス基板130上にITOを成膜して電極131とする。電極131上に、第1の層132としてα−NPBを真空蒸着によって成膜した後、さらに第1の層132の上に第2の層133(133a、133b)として、CBPおよびBCPを順に成膜した。第2の層133の上に第3の層134としてフッ化カルシウムを成膜した後、さらに電極135としてアルミニウムを成膜し、発光素子とした。なお、第1の層132、第2の層133a、133bの膜厚はそれぞれ、100nm、30nm、130nmでありこれらの合計膜厚は260nmである。これは、上記発光素子において電極131、第3の層134がそれぞれ反射体として機能する。このように本実施例における発光素子は発光した光を共振できるような構成となっている。
【0086】
図15で示した構成を有する発光素子の発光スペクトルを図16(A)に示す。図16(A)から、465nmに半値幅の狭いピークを有する発光が得られていることが分かる。また、電流密度に対する発光強度の変化を図17に示す。図17から、電流密度の増加に応じて直線的に発光強度が増大するが、電流密度が12mA/cmを屈曲点(つまり閾値)としてその傾きが大きくなることが分かる。これは12mA/cmよりも小さい電流密度の領域では自然放射が支配的であるのに対し、12mA/cmよりも大きい電流密度の領域では誘導放射が起こっていることを示しているものと考えられる。
【比較例】
【0087】
図15で示した構成を有する発光素子に対する比較例について説明する。
図18に示すように、ガラス基板140上にITOを成膜して電極141とする。電極141上に、第1の層142としてα−NPBを真空蒸着によって成膜した後、さらに第1の層142の上に第2の層143としてBCPを成膜した。第2の層143の上に第3の層144としてフッ化カルシウムを成膜した後、さらに電極145としてアルミニウムを成膜し、発光素子とした。なお、第1の層142、第2の層143の膜厚はそれぞれ、100、160nmでありこれらの合計膜厚は260nmである。なお、上記発光素子において電極141、第3の層144がそれぞれ反射体として機能する。このような本比較例における発光素子は発光した光を共振できるような構成となっている。
【0088】
図18で示した構成を有する発光素子の発光スペクトルを図16(B)に示す。図16(B)から、460nmに半値幅の狭いピークを有する発光が得られていることが分かる。しかし、電流密度に対する発光強度の依存性(図17)では、電流密度の増加に応じて直線的に発光強度が増大するが、本発明の図15で示した構成を有する発光素子においてみられていたような、屈曲点は有していないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、実施の形態1で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図2】図2は、実施の形態2で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図3】図3は、実施の形態3で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図4】図4は、実施の形態4で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図5】図5は、実施の形態5で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図6】図6は、実施の形態6で示すレーザー装置の構造を説明する断面図である。
【図7】図7は、実施例1で作製した素子の発光特性であり、検出器の角度を変えて発光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1で作製した素子の構造を説明する図である。
【図9】図9は、実施例1で作製した素子の発光スペクトルを示すグラフである。
【図10】図10は、実施例1で作製した素子の(A)電圧対電流特性と、(B)電圧対発光強度特性を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例1で作製した素子の発光スペクトルの電流密度依存性を示し、発光強度の最大値で規格化したグラフである。
【図12】図12は、実施例1で作製した素子の、電流密度120mA/cmにおける発光スペクトルを示すグラフである。
【図13】図13は、実施例1で作製した素子の発光特性であり、460nmの発光ピークの半値幅を電流密度に対してプロットしたグラフである。
【図14】図14は、実施の形態7で示す発光素子の構造を説明する図である。
【図15】図15は、実施例2で作製した発光素子の構造を説明する図である。
【図16】図16は、実施例2で作製した発光素子の発光スペクトルを示すグラフである。
【図17】図17は、実施例2で作製した発光素子および比較例の発光素子における発光スペクトル強度の電流密度依存性について示す図である。
【図18】図18は、比較例の発光素子の積層構造について説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項2】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が放射される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項3】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が放射され、
前記有機化合物層の光学膜厚は、前記有機化合物層から放射される光の発光波長、又は当該波長の半分の整数倍であり、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項4】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項5】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が放射される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項6】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が放射され、
前記有機化合物層の光学膜厚は、前記有機化合物層から放射される光の発光波長、又は当該波長の半分の整数倍であり、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項7】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項8】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が、前記電流の注入の方向とは交差する方向から放射される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項9】
有機化合物層と、前記有機化合物層の上面に設けられた第1の電極と、前記有機化合物層の下面に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は反射鏡として機能し、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成され、且つ前記有機化合物層から半値幅が10nm以下の発光波長を有する光が、前記電流の注入の方向とは交差する方向から放射され、
前記有機化合物層の光学膜厚は、前記有機化合物層から放射される光の発光波長、又は当該波長の半分の整数倍であり、
前記第1の電極と前記第2の電極間に閾値以上の電流を流すことによって、前記有機化合物層内に反転分布が形成される
ことを特徴とするレーザー装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記閾値は、電流密度に対する発光強度を示す第1の線と、第2の線との交点によって定まることを特徴とするレーザー装置。
【請求項11】
請求項10において、前記交点は、電流密度5mA/cm〜20mA/cmの範囲にあることを特徴とするレーザー装置。
【請求項12】
請求項10において、前記交点は、電流密度10mA/cm〜12.5mA/cmの範囲にあることを特徴とするレーザー装置。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のいずれか一において、
前記有機化合物層に注入される電流の電流密度が、前記交点に達するまでに、前記半値幅が20%以上変化することを特徴とするレーザー装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一において、
前記有機化合物層は、発光層と、前記発光層に接するホール注入層を有し、
前記ホール注入層は、金属酸化物からなることを特徴とするレーザー装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記有機化合物層は、発光層と、前記発光層に接するホール注入層を有し、
前記ホール注入層は、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び酸化アルミニウムのいずれかを有することを特徴とするレーザー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−339671(P2006−339671A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225583(P2006−225583)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【分割の表示】特願2005−511024(P2005−511024)の分割
【原出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】