説明

レーザ伝送路、レーザ治療器具、並びにレーザ治療システム

【課題】レーザ光の伝送効率を低減させることなく、レーザ光及びアシストガスを導通させることのできるレーザ伝送路、レーザ治療器具及びレーザ治療システムを提供することを目的とする。
【解決手段】内部中空の長尺状に形成され、治療用レーザ光57aを導光する中空導波路80と、中空導波路80の挿通を許容する外装チューブ71とで構成するレーザ伝送路70において、中空導波路80と、外装チューブ71の外周面71aとの間に、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガス59aの導通を許容するアシストガス導通路77を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレーザ治療を行うためのレーザ治療システム、このレーザ治療システムに用いるレーザ治療器具、並びに、このレーザ治療器具に挿通するレーザ伝送路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者への負担が少なく治療できる治療方法として、内視鏡を用いる治療方法が実施されている。この内視鏡を用いた治療は、内視鏡チューブを口腔等から体内に挿入し、この内視鏡チューブの先端構成部を用いて撮像や施術を行うものである。
【0003】
撮像は、先端構成部から照明光を照射し、この照明光の体内組織による反射光を前記先端構成部に設けられたレンズで受け取って内視鏡チューブから内視鏡本体装置に伝送し、内視鏡本体装置が画像化して表示装置に表示することで実行される。あるいは、撮像は、内視鏡チューブの先端構成部に設けたCCDセンサ等の撮像素子によって実行され、先端構成部で構成された画像信号が、内視鏡チューブで内視鏡本体装置まで伝送され、画像が表示装置に表示される。
【0004】
施術は、チャンネルと呼ばれる鉗子挿入口から適宜の鉗子が挿入され、先端構成部の鉗子出口から出てくる鉗子先端により実施される。鉗子としては、握持鉗子やナイフ等の様々な器具が用いられる。
【0005】
この鉗子挿入口から挿入されて施術に用いられる器具として、治療用のレーザ光を照射するレーザ伝送路を用いるものが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1のレーザ伝送路は、内部が中空の管状導波路(以下において、中空導波路という)に、COレーザとともに、二酸化炭素等の気体を導通することが記載されている。
この中空導波路を導通する気体は、レーザ光によって加熱された中空導波路を冷却する冷却流体として機能するとされている。
【0006】
また、レーザ治療器具として、レーザ光を照射するレーザ照射プローブのファイバ周囲に、アシストガスの通過を許容する気体通路を設けたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
治療用レーザによる焼灼手術、殊に、粘膜下層切開剥離術(ESD)や粘膜切除術(EMR)では、施術対象空間を広げるとともに、蒸散物や煙を除去することで視野を確保するため、上述のアシストガスを噴射することが求められる。
【0008】
その反面、生体吸収性の低いアシストガスを用いた場合、施術対象部分で長時間に亘って残存するため、施術対象部位に充満するアシストガスによって、術後の膨満感や苦痛が発生するおそれがある。また、生体吸収性の低い空気をアシストガスとして用いた場合において、もし空気が血管に入って空気泡が留まってしまうと、血管の塞栓症(Air Embolism)を引き起こすおそれがあった。したがって、アシストガスとしては、生体吸収性を有する気体を用いることが好ましい。
【0009】
このような、生体吸収性を有する気体をアシストガスとして用いるとともに、レーザ光によって施術対象部位を施術する場合において、アシストガスとレーザ光を、特許文献1に記載されたレーザ治療器具における中空導波路に導通させることが想定できる。
【0010】
しかし、この場合、アシストガスとレーザ光とは、同じ中空導波路内部を導通するため、アシストガスの種類とレーザ光の種類及び波長によっては、レーザ光がアシストガスに吸収され、つまりレーザ光の伝送効率が低減し、所望の出力のレーザ光を施術対象部位に照射することができないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−533374号公報
【特許文献2】特開2001−309926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、上述した問題に鑑み、レーザ光の伝送効率を低減させることなく、レーザ光及びアシストガスを導通させることのできるレーザ伝送路、レーザ治療器具、及びレーザ治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、内部中空の長尺状に形成され、レーザ光を導光する中空導波路と、該中空導波路の挿通を許容する外装チューブとで構成するレーザ伝送路において、前記中空導波路と、前記外装チューブとの間に、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガスの導通を許容するガス導通路を形成したレーザ伝送路であることを特徴とする。
【0014】
上記レーザ光は、炭酸ガスレーザ等適宜のレーザ光を用いることができる。
上記中空導波路は、例えばガラスなど表面が円滑な材質で管状部材を形成し、その管状部材の内壁に銀などによる反射膜を形成し、さらにその反射膜の内面に環状オレフィンポリマーやポリイミドなどの伝送効率の高い素材による誘電体薄膜を形成する管路とすることができる。
上記レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガスは、例えば、空気に比べて体内での吸収性の高い炭酸ガス等適宜の気体とすることができる。
【0015】
この発明により、レーザ伝送路は、レーザ光の伝送効率を低減させることなく、レーザ光及びアシストガスを導通させ、アシストガスを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射することができる。これにより、施術者は、治療空間の拡張による視野の確保、及び煙の除去による視野の確保等を図りながら、レーザ光で施術対象部位を確実に治療することができる。
【0016】
詳しくは、中空導波路の内部にレーザ光を導通させ、中空導波路の外側における外装チューブとの間のガス導通路にアシストガスを導通させる、つまり、それぞれ別々の導通路に、レーザ光及びアシストガスを導通させる。このため、例えば、同じ導通路にレーザ光及びアシストガスを導通させた場合に、レーザ光がアシストガスに吸収されて、所望の出力のレーザ光を施術対象部位に照射できないというようなレーザ光の伝送効率の低減を防止することができる。つまり、アシストガスとレーザ光との組み合わせの自由度が高まるため、利便性が向上する。
【0017】
また、中空導波路の外側における外装チューブとの間のガス導通路にアシストガスを導通させるため、内部を導通するレーザ光によって加熱された中空導波路をアシストガスによって外部から効率良く冷却することができる。詳しくは、冷却媒体であるアシストガスを、加熱媒体であるレーザ光とともに中空導波路内部に導通させる場合と比較して、加熱された中空導波路をアシストガスによって外部から、より効率良く冷却することができる。
【0018】
さらに、中空導波路の外側のガス導通路を導通し、先端から噴射するアシストガスによって、中空導波路の内部に、蒸散物や血液などの異物が混入することを防止できる。
【0019】
このように、中空導波路の内部にレーザ光を導通させ、中空導波路と外装チューブとの間に形成したガス導通路にアシストガスを導通させることにより、アシストガスを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射して、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路への異物の混入防止等を図りながら、レーザ光で施術対象部位を確実に治療することができる。
【0020】
この発明の態様として、前記アシストガスとは異なるサブアシストガスを、前記中空導波路の内部に導通させるとともに、前記レーザ光及び前記サブアシストガスの通過を許容する中央貫通孔を正面視中央に備え、前記アシストガスの通過を許容する外周貫通孔を外周部に備えた出射部を、前記外装チューブ先端に設けることができる。
【0021】
詳述すると、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガスに対して、サブアシストガスは、レーザ光吸収性も生体吸収性も有しない。レーザ光吸収性が無く、生体吸収性を有する気体(ガス)であれば、中空導波路内を問題なく大量に導通させることができる。しかし、実際には、このような気体(ガス)とレーザ光との組み合わせを得ることは困難である。
【0022】
従って、この発明では、ある程度の量の供給が必要なアシストガスは、アシストガスの有するレーザ光吸収性を考慮し、中空導波路の外側のガス導通路を導通させ、供給量が微量で事足りるサブアシストガスは、レーザ光吸収性を有さないため中空導波路内を導通させるという構成としている。
【0023】
よって、アシストガスとサブアシストガスの双方を食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射することによる蒸散物等の中空導波路への侵入をさらに確実に防止し、より確実、且つ効率的にレーザ光で施術対象部位を治療することができる。
【0024】
またこの発明は、上述のレーザ伝送路を、内視鏡外部ホースに挿通するとともに、前記レーザ伝送路の先端部を、前記内視鏡外部ホースの先端開口部近傍に配置するレーザ治療器具であることを特徴とする。
この発明により、レーザ治療器具は、アシストガスを噴射するとともに、レーザ光を照射するレーザ伝送路の先端部分を、確実に施術対象部位まで導通することができる。
【0025】
詳しくは、通常、内視鏡外部ホースには複数のチャンネルを備え、そのひとつのチャンネルにイメージファイバを装備し、イメージファイバの本体側端部にCCDカメラを装備している、あるいは、チャンネルの患部側先端にCCDカメラを装備しているため、CCDカメラで撮像された画像を確認しながら、内視鏡外部ホースの先端を施術対象部位まで到達させることができる。
【0026】
したがって、内視鏡外部ホースに挿通させるとともに、内視鏡外部ホースの先端開口部近傍に配置したレーザ伝送路の先端部を、施術対象部位の直近まで確実に導通することができる。そのため、アシストガスを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射して、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路への異物の混入防止等を図りながら、レーザ光で施術対象部位をより確実に治療することができる。
【0027】
この発明の態様として、内視鏡外部ホースの先端側に、湾曲動作可能な湾曲動作部を設けるとともに、前記レーザ出射端側の中空導波路の先端における前記湾曲動作部に対応する箇所に、レーザ光の誤照射防止部材を備えることができる。
【0028】
上記誤照射防止部材は、湾曲動作部における中空導波路の万一の破損に備えて、レーザ光を吸収する部材、あるいは金属部材などレーザ光を反射する部材であり、例えば、ニッケルチタンなどの超弾性合金や形状記憶合金などで構成することができる。
【0029】
上述の前記レーザ出射端側の中空導波路の先端における前記湾曲動作部に対応する箇所は、中空導波路における湾曲動作部内部に挿通した部分であって、その挿通部分の外周側あるいは内周側とすることができる。又は、中空導波路を湾曲動作部までとして、中空導波路の先端に接続し、湾曲動作部に挿通した部分とすることができる。
【0030】
この発明により、湾曲動作部を自由に湾曲動作させて、施術者は良好な作業環境でレーザ治療を、安全性且つ信頼性高く行うことができる。
詳しくは、誤照射防止部材は、自由に湾曲動作できる湾曲動作部における湾曲動作による中空導波路からのレーザ光の漏出を防止できる。すなわち、万が一に、中空導波路が破損し、あるいは反射膜のコーティングが剥離することで、レーザ光が中空導波路から漏出した場合であっても、漏出したレーザ光、つまり誤照射されたレーザ光を吸収又は反射することができる。つまり、誤照射防止部材は、湾曲動作部における湾曲動作がもたらす中空導波路の破損によって生じうる中空導波路からのレーザ光の漏出(誤照射)を防止することができる。これにより、このレーザ光の誤照射による外装チューブや内視鏡外部ホース、あるいは内視鏡の光学系の損傷の発生を防止できる。したがって、安全性及び信頼性の高いレーザ治療器具を構成することができる。
【0031】
またこの発明は、前記レーザ光を発振するレーザ発振器、及び前記アシストガスを発生するアシストガス発生器を備えた装置本体と、前記レーザ発振器より発振されたレーザ光と前記アシストガス発生器より発生されたアシストガスとを施術対象部位へ導くための上述のレーザ伝送路と、前記レーザ発振器による前記レーザ光の発振及び前記アシストガス発生器による前記アシストガスの発生を操作する操作部と、前記操作部からの信号に基づいて、前記レーザ発振器によるレーザ光の発振及び前記アシストガス発生器によるアシストガスの発生を制御する制御部とを備えたレーザ治療システムであることを特徴とする。
施術対象部位は、食道や胃など、人間を含む生体の適宜の部位とすることができる。
【0032】
この発明により、レーザ光の伝送効率を低減させることなく、レーザ光及びアシストガスを導通させ、アシストガスを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射することで、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路への異物の混入防止等を図りながら、治療に応じた制御によって発振及び発生させたレーザ光及びアシストガスによって、施術対象部位を確実に治療することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明により、レーザ光の伝送効率を低減させることなく、レーザ光及びアシストガスを導通させることのできるレーザ伝送路、レーザ治療器具、及びレーザ治療システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】内視鏡装置とレーザ治療装置によるレーザ治療システムの概略構成図。
【図2】内視鏡装置とレーザ治療装置の構成を示すブロック図。
【図3】術者操作ユニットの構成について説明するための斜視図による説明図。
【図4】レーザ伝送路の構成について説明するための斜視図による説明図。
【図5】レーザ伝送路の断面図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、内視鏡装置10とレーザ治療装置50とで構成されるレーザ治療システム1の概略構成を示す構成図であり、図2は、内視鏡装置10とレーザ治療装置50の構成を示すブロック図である。
【0036】
内視鏡装置10は、図1に示すように装置本体1aに対して接続ケーブル11により術者操作ユニット12が接続されている。
術者操作ユニット12は、主に操作部13と内視鏡チューブ21とで構成している。
【0037】
操作部13は、接眼部15、上下アングルノブ16、左右アングルノブ17、操作ボタン18、および鉗子挿入口20等を設けている。
操作ボタン18は、送水、吸引、ズーム、あるいは、後述するアシストガスやサブアシストガスの送気などの操作入力を受け付ける。
【0038】
内視鏡チューブ21は、基部から先端へ向かって可撓管部22、湾曲管部23、及び先端構成部30がこの順に設けられている。また、内視鏡チューブ21の内部には、鉗子挿入口20から先端構成部30の鉗子出口36まで連通する鉗子挿入路19を設けている。この鉗子挿入路19は、鉗子やレーザ伝送路70といった治療用デバイスを挿入する治療用デバイス挿入路として機能する。
【0039】
なお、図1では可撓管部22の途中から湾曲管部23の先端にかけて拡径しているように図示しているが、これは先端構成部30の構成を分かり易く描画するためであって、実際には、食道、胃、腸といった生体内に挿通させることに適した、一定の径を保った形状で形成している。
【0040】
可撓管部22は、適度に湾曲する円筒形状を有しており、鉗子挿入口20から挿入された適宜の鉗子などの治療用デバイスを先端構成部30まで挿通できる。この実施例では、治療用デバイスとしてレーザ治療装置50のレーザ伝送路70が挿通されている。
【0041】
湾曲管部23は、上下アングルノブ16の操作によって上下方向に湾曲操作され、左右アングルノブ17によって左右方向に湾曲操作される。
詳述すると、湾曲管部23は、内視鏡チューブ21内に挿通されているワイヤ(図示省略)によって上下アングルノブ16および左右アングルノブ17に接続されている。このため、上下アングルノブ16や左右アングルノブ17の回転操作がワイヤによって湾曲管部23に伝達され、湾曲管部23が上下左右に湾曲する。これにより、任意の方向へ任意の角度に湾曲管部23を湾曲させることができ、先端構成部30を施術対象部位に向かって適切な方向へ向けることができる。
【0042】
先端構成部30には、ライトガイド31,35、副送水口32、レンズ33、ノズル34、及び鉗子出口36を設けている。
ライトガイド31,35は、撮像のための照明となる光を照射する照明部位である。これにより、光の届かない体内を照らして施術者が観察、及び施術できるようにする。
【0043】
副送水口32は、染色液等の液体を放出する送水口である。
レンズ33は、ライトガイド31,35等の照明による生体の反射光を集光し、撮像画像を取得するためのレンズである。この集光した情報を適宜加工することで撮像画像を得ることができ、施術者が状態を確認できる。光を電気信号に変換する撮像素子は、先端構成部30の近傍に設けて、内視鏡装置10へ導電線で接続してもよいし、内視鏡装置10内に設けて、イメージファイバによってレンズで集光した光を伝送してもよい。
【0044】
ノズル34は、レンズ33を洗浄するための洗浄液等をレンズ33へ向かって放出する部位である。
鉗子出口36は、レーザ治療装置50のレーザ伝送路70等の治療用デバイスの出口である。
このレーザ伝送路70は、内視鏡チューブ21の全長でもある鉗子挿入路長よりも長く形成されている。このレーザ伝送路70の詳細については後述する。
【0045】
図2に示すように、レーザ治療装置50は、操作部・表示部51、電源部52、信号処理部53、中央制御部54、検出部55、ガイド光発光部56、レーザ発振部57、サブアシストガス噴射部58(以下において、SAG噴射部58とする)、及びアシストガス噴射部59を備えている。
【0046】
操作部・表示部51は、レーザの出力設定や動作モードの変更などの操作入力を受け付けて入力信号を中央制御部54に伝達し、中央制御部54からレーザの出力条件や装置の動作状況などの表示信号を受け取って適宜の情報の表示を行う。
電源部52は、中央制御部54など各部に動作電力を供給する。
【0047】
信号処理部53は、検出部55で検出した信号を処理して中央制御部54に伝達する。この実施例では、信号処理部53と検出部55とでOCT(Optical Coherence Tomography)装置を構成している。
【0048】
検出部55は、ガイド光発光部56から照射される低コヒーレンス性のガイド光56aが、施術対象部位で反射されて得られた反射ガイド光55a(信号光)と、ガイド光発光部56から伝送される参照光とを受光して、干渉光を得る。このとき受光する光は、いずれも800nm〜1μm付近の近赤外光である。
【0049】
検出部55は、反射ガイド光55a(信号光)と参照光との干渉により発生するビート信号の光強度を検出する。信号処理部53は、検出部55から受け取った光強度から施術対象部位の所定の面で反射された信号光の強度を求めるヘテロダイン検出を行い、光干渉断層情報を取得する。
【0050】
これを、検出する施術対象部位を変えながら実行することで、各施術対象部位の光干渉断層情報を得ることができる。これにより、表面からある程度の深さの組織プロファイルも含めた光干渉断層情報が得られ、表面の粘膜層だけでなく、粘膜下層や筋層までの組織プロファイルが得られる。この光干渉断層情報は、画像化処理を行う前の情報である。そして、信号処理部53は、この光干渉断層情報を中央制御部54に伝達する。
【0051】
中央制御部54は、各部に対して各種制御動作を実行する。この中央制御部54は、レーザ出力制御部54aと記憶部54bとを有している。
レーザ出力制御部54aは、操作部・表示部51で設定された出力や動作モードに応じてレーザ発振部57による治療用レーザ光57aの出力値を制御する。
記憶部54bは、出力の設定や動作モードの設定内容などの制御データの他に適宜のデータを記憶している。
【0052】
検出部55は、上述したように反射ガイド光55a(信号光)と参照光とを受光して干渉光から発生するビート信号の光強度を検出する。
ガイド光発光部56は、波長が800nm〜1μm付近の低コヒーレンス性の近赤外光を発光する。このガイド光は、治療用の治療用レーザ光57aが照射される位置を示すためのものである。また、近赤外光は不可視光であるが、撮像素子によって検出し、画像化することが可能であるため、後述する内視鏡装置10の撮像部46によって画像信号へ変換され、画像表示部48に表示され、治療用の治療用レーザ光57aが照射される位置を確認することができる。
【0053】
レーザ発振部57は、施術に用いる治療用レーザ光57aを発振する。この実施例では、治療用レーザ光57aとして、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザ(以下において、COレーザという)を用いる。COレーザの照射強度の設定や照射の開始停止といった操作は、操作部・表示部51による手動操作と、中央制御部54による制御によって行われる。なお、手動操作の一部又は全部を、レーザ治療装置50に対して通信・制御可能に設けたフートコントローラ(不図示)を用いた足踏み操作に替えることもできる。
【0054】
SAG噴射部58は、空気をサブアシストガス58a(以下においてSAG58aという)として噴射する。なお、SAG噴射部58が噴射するSAG58aの噴射圧力は、適宜の圧力取得手段によって把握されることが望ましいが、基本的には、治療用レーザ光57aとともに導通する中空導波路80の導通空間82が陽圧となる適宜の圧力で噴射している。
【0055】
上述したガイド光発光部56が照射するガイド光56a、レーザ発振部57が発振する治療用レーザ光57a、SAG噴射部58が噴射するSAG58a、及び検出部55が検出する反射ガイド光55aは、全て1つの中空導波路80によって伝送される。したがって、これらは全て同軸で伝送され、施術対象に対して作用を及ぼす部位、及び検知する部位が施術対象部位として一致する。
【0056】
アシストガス噴射部59は、二酸化炭素をアシストガス59aとして噴射する。なお、後述するレーザ伝送路70のアシストガス導通路77を通過して、レーザ伝送路70の先端から施術対象部位に噴出されるアシストガス59aの噴射圧力は、適宜の圧力取得手段によって把握されることが望ましい。
【0057】
内視鏡装置10は、操作部41、電源部42、中央制御部43、患部ガス吸入部44、照明部45、撮像部46、水噴射部47、及び画像表示部48を設けている。
【0058】
操作部41は、操作部13(図1参照)による操作入力を中央制御部43に伝達する。すなわち、上下アングルノブ16や左右アングルノブ17の操作による湾曲管部23の湾曲動作、操作ボタン18による押下操作などを伝達する。またあるいは、操作ユニット12のものとは別個に、例えば内視鏡装置10の制御器本体(不図示)に操作部を設け、照明の光量、静止画の撮影記憶等の操作を中央制御部43に伝達する。
【0059】
電源部42は、中央制御部43など各部に動作電力を供給する。
中央制御部43は、各部に対して各種制御動作を実行する。
患部ガス吸入部44は、後述するレーザ伝送路70と、内視鏡チューブ21の鉗子挿入路19との間に形成される吸入用導通路19bを通じて、患部に充満する患部ガス44aを吸入する。
照明部45は、ライトガイド31,35(図1参照)からの照明を実行する。
【0060】
撮像部46は、レンズ33(図1参照)から伝送される画像を撮像し、施術に必要な撮像画像を得る。この撮像画像を連続してリアルタイムに取得することで、施術者が円滑に施術を行えるようにしている。なお、撮像部46が、先端構成部30の近傍に設けてあってもよいし、内視鏡装置10の制御器本体(不図示)内に設けてあってもよいのは、前述のとおりである。
水噴射部47は、副送水口32からの液体の噴射を実行する。また、ノズル34からの液体の噴射も実行する。
【0061】
画像表示部48は、中央制御部43から伝達される信号に基づいて画像を表示する。この画像には、撮像部46で取得した撮像画像も含まれる。したがって、施術者は、この画像表示部48にリアルタイムに表示される撮像画像を確認しながら施術を行うことができる。また、術前の画像を静止画として、例えば中央制御部43内や通信可能な外部の記憶装置等に記憶しておき、施術の後で術前の画像を呼び出し表示し、施術の前後の画像を比較することもできる。
【0062】
続いて、レーザ伝送路70について、図3乃至図5とともに説明する。なお、図3は、術者操作ユニット12の構成について説明するための斜視図による説明図である。詳しくは、図3(a)は湾曲管部23の斜視図を示し、図3(b)は、図3(a)におけるa部の拡大図を示している。
【0063】
また、図4はレーザ伝送路70の構成について説明するための斜視図による説明図であり、図4(a)は外装チューブ71を透過した状態のレーザ伝送路70の斜視図を示し、図4(b)はレーザ伝送路70を構成要素で分解した分解斜視図を示している。
【0064】
さらに、図5はレーザ伝送路70の断面図による説明図であり、図5(a)は、内視鏡チューブ21の鉗子挿入路19に装着した状態のレーザ伝送路70の縦断面図を示し、図5(b)は、図5(a)におけるA−A矢視における断面図を示している。
【0065】
レーザ伝送路70は、図3、及び図4に示すように、外装チューブ71、先端噴射口72、防護金属管76、及び中空導波路80で構成し、上述したように、内視鏡チューブ21より長く形成している。
【0066】
外装チューブ71は、図5に示すように、可撓性のある樹脂チューブであり、内視鏡チューブ21の鉗子挿入路19より一回り小さな径で形成している。そして、内視鏡チューブ21に挿着した状態において、外装チューブ71の外周面71aと、鉗子挿入路19の内周面19aとの間にできる隙間によって吸入用導通路19bを形成している。
【0067】
なお、吸入用導通路19bは、上述したように、内視鏡装置10の患部ガス吸入部44に接続されている。そして、上述の患部ガス44aは、吸入用導通路19bを介して、患部ガス吸入部44に吸入されることとなる。
【0068】
先端噴射口72は、図4、及び図5に示すように、後方の挿入筍部75を外装チューブ71の先端部に圧入する略円筒体であり、正面視中央に、軸方向つまり先端噴射口72の長さ方向に貫通する中央照射孔73を有している。さらに、先端噴射口72の外周部の周方向において、軸方向のアシストガス噴射溝74を等間隔に4か所に形成している。また、先端噴射口72の後方には、外装チューブ71の先端部に圧入可能な挿入筍部75を2段設けている。
【0069】
防護金属管76は、図4、及び図5に示すように、中央照射孔73と同径の外周を有する筒状体に形成している。また、防護金属管76は、柔軟性に富むとともに、湾曲しても自身の弾性力で復元する素材であって、内周面で治療用レーザ光57aを反射することのできるニッケルチタンなどの超弾性合金や形状記憶合金で形成している。
【0070】
なお、防護金属管76は、先端を中央照射孔73に挿通可能な同径で形成しているため、外装チューブ71の内周面71bと、防護金属管76の外周面76aとの間には、隙間D1が形成される。
【0071】
中空導波路80は、図5(a)の縦断面図に示すように、先端を防護金属管76に挿通可能で、防護金属管76の内周と同径の外周と、外装チューブ71と略同じ長さを有する内部中空の円筒形の筒状体に形成している。なお、中空導波路80は、ガラス管など表面が円滑で、銀などの反射膜、及び誘電体薄膜の形成に適した素材により長尺状に形成されている。また、中空導波路80の内周面は、誘電体薄膜81で被覆している。この誘電体薄膜81は、COP(環状オレフィンポリマー)やポリイミドなど、レーザ光を効率よく反射伝送する適宜の素材で形成している。
【0072】
このように、中空導波路80の内周面を銀などの反射膜、及び誘電体薄膜81で被覆しているため、中空導波路80の内部の導通空間82を導通する治療用レーザ光57a、ガイド光56a、あるいは反射ガイド光55aが高い伝送効率で導通することができる。
【0073】
なお、中空導波路80は、上述のように、防護金属管76の内周と同径の外周を有する筒状体で形成しているため、外装チューブ71の内周面71bと、中空導波路80の外周面80aとの間には、隙間D2が形成される。
【0074】
このように、外装チューブ71の内周面71bと、防護金属管76の外周面76a、及び中空導波路80の外周面80aとの間に形成された隙間D1,D2によって、アシストガス59aの導通を許容するアシストガス導通路77を形成している。
【0075】
このアシストガス導通路77の先端側は外装チューブ71の先端に装着された先端噴射口72のアシストガス噴射溝74と連通し、アシストガス導通路77の基部はレーザ治療装置50のアシストガス噴射部59に接続されている。したがって、アシストガス導通路77には、アシストガス噴射部59によって噴射されたアシストガス59aが基端側から先端に向けて導通し、先端噴射口72のアシストガス噴射溝74から前方に噴射することができる。
【0076】
次に、レーザ治療システム1を用いた粘膜下層切開剥離術(ESD)での使用方法について説明する。
上述したように、レーザ治療システム1を用いた粘膜下層切開剥離術(ESD)では、鉗子挿入路19にレーザ伝送路70を挿通させた術者操作ユニット12の内視鏡チューブ21を体内に挿入し、画像表示部48で表示する撮像部46で撮像した先端構成部30の前方画像に基づいて、術者操作ユニット12の先端構成部30が施術対象部位に到達するまで挿通する。なお、施術対象部位は、食道や胃などの管腔であり、人間を含む生体の適宜の部位である。
【0077】
その後、アシストガス噴射部59を稼働させて、アシストガス導通路77及び先端噴射口72のアシストガス噴射溝74を介してアシストガス59aを噴出させて施術対象部位である管腔を拡大させ施術しやすい状態とする。そして、施術者は、画像表示部48の画像を確認しながら、中空導波路80の導通空間82を導通するガイド光56a、治療用レーザ光57a、及びSAG58aを先端噴射口72の中央照射孔73から照射・噴出させて、治療用レーザ光57aで施術対象部位を治療する。
【0078】
このとき、治療用レーザ光57aで施術対象部位を切開・剥離するため、施術対象部位である管腔内には、煙が充満する。そこで、アシストガス59aを噴射するとともに、患部ガス吸入部44を稼働することにより、管腔内の煙を含む患部ガス44aは、吸入用導通路19bを通じて患部ガス吸入部44で吸収することができる。したがって、施術対象部位である管腔内をクリアに保つことができる。
【0079】
また、中空導波路80の導通空間82に、治療用レーザ光57aとともにSAG58aを噴射しているため、治療用レーザ光57aによる施術対象部位の切開・剥離によって生じる蒸散物の中央照射孔73や導通空間82への侵入を防止することができる。
【0080】
そして、治療完了後、術者操作ユニット12の内視鏡チューブ21を体内から挿出して、粘膜下層切開剥離術(ESD)は完了する。なお、粘膜切除術(EMR)であっても同様の使用方法で行うことができる。
【0081】
このような使用方法で用いられるレーザ治療システム1を、上述の構成としたことにより、治療用レーザ光57aの伝送効率を低減させることなく、治療用レーザ光57a、及びアシストガス59aをレーザ伝送路70の先端まで導通させることができる。そして、レーザ治療システム1は、アシストガス59aをレーザ伝送路70の先端噴射口72から体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射することで、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路の冷却等を図りながら、治療に応じた制御によって発振させた治療用レーザ光57aによって、施術対象部位を確実に治療することができる。
【0082】
詳しくは、術者操作ユニット12に装着するレーザ伝送路70を、内部中空の長尺状に形成され、治療用レーザ光57aを導光する中空導波路80と、中空導波路80の挿通を許容する外装チューブ71とで構成し、中空導波路80と、外装チューブ71との間に、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガス59aの導通を許容するアシストガス導通路77を形成したことにより、中空導波路80の導通空間82に治療用レーザ光57aを導通させ、中空導波路80の外側における外装チューブ71との間のアシストガス導通路77にアシストガス59aを導通させる、つまり、それぞれ別々の導通路に治療用レーザ光57a及びアシストガス59aを導通させることとなる。
【0083】
したがって、例えば、治療用レーザ光57a及びアシストガス59aが同じ導通路を導通する場合に、治療用レーザ光57aがアシストガス59aに吸収されて、所望の出力の治療用レーザ光57aを施術対象部位に照射できないというような治療用レーザ光57aの伝送効率の低減を防止することができる。
【0084】
また、空気に比べて、200倍程度の高い生体吸収性を有するCOガスをアシストガス59aとして用いているため、術後の施術対象部位に充満するアシストガス59aが速やかに吸収され、術後の膨満感や苦痛の発生を抑制することができる。また、万一、アシストガス59aが血管に混入した場合であっても、アシストガス59aの生体吸収性から、血管の塞栓症(Air Embolism)を引き起こすおそれはない。
【0085】
さらにまた、中空導波路80の外側における外装チューブ71との間のアシストガス導通路77にアシストガス59aを導通させるため、中空導波路80の導通空間82を導通する治療用レーザ光57aによって加熱された中空導波路80を外部から効率良く冷却することができる。詳しくは、冷却媒体であるアシストガス59aを、加熱媒体である治療用レーザ光57aとともに中空導波路80の導通空間82に導通させる場合と比較して、アシストガス59aで、加熱された中空導波路80を、外部からより効率良く冷却することができる。
【0086】
このように、中空導波路80に治療用レーザ光57aを導通させ、中空導波路80と外装チューブ71との間に形成したアシストガス導通路77にアシストガス59aを導通させることにより、アシストガス59aを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射して、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路への異物の混入防止等を図りながら、治療用レーザ光57aで施術対象部位を確実に治療することができる。
【0087】
また、生体吸収性の高いCOガスであるアシストガス59aとは異なる空気によるSAG58aを、中空導波路80の導通空間82に導通させるとともに、治療用レーザ光57a及びSAG58aの通過を許容する中央照射孔73を正面視中央に備え、アシストガス59aの通過を許容するアシストガス噴射溝74を外周部に備えた先端噴射口72を、外装チューブ71先端に設けたことにより、アシストガス59aの食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射することによる蒸散物の中空導波路80への侵入をより確実に防止し、より確実に治療用レーザ光57aで施術対象部位を治療することができる。
【0088】
なお、アシストガス59aとして用いるCOガスに比べて生体吸収性の低い空気をSAG58aとして用いているが、SAG58aは、中空導波路80の導通空間82を陽圧にするとともに、レーザ伝送路70の中央照射孔73への蒸散物の侵入を防止する程度の噴射量、及び噴射圧力であるため、術後の膨満感や苦痛の発生には影響しない。さらには、SAG58aは、上述の噴射量及び噴射圧力であるため、空気が血管に入って空気泡が留まってしまうことによる血管の塞栓症(Air Embolism)を引き起こすおそれもなく、安全である。
【0089】
さらにまた、複数の鉗子挿入路19を備えた術者操作ユニット12において、レーザ伝送路70をひとつの鉗子挿入路19に挿通するとともに、レーザ伝送路70の先端部を、内視鏡チューブ21の先端構成部30に配置し、鉗子挿入路19とは別に照明部45を含む光学系を装備しているため、施術者は、照明部45で撮像された画像を確認しながら、術者操作ユニット12の内視鏡チューブ21の先端構成部30を施術対象部位の直近まで確実に到達させることができる。
【0090】
よって、アシストガス59aを体内の食道壁、胃壁等の施術対象部位に噴射して、治療空間の拡張による視野の確保、煙の除去による視野の確保、及び中空導波路への異物の混入防止等を図るとともに、施術者は、撮像された画像を確認しながら、治療用レーザ光57aで施術対象部位をより確実に治療することができる。
【0091】
また、術者操作ユニット12の内視鏡チューブ21の先端部分に、湾曲動作可能な湾曲管部23を設けるとともに、レーザ出射端側のレーザ伝送路70の先端における湾曲管部23に対応する箇所に、治療用レーザ光57aの防護金属管76を備えたことにより、湾曲管部23を自由に湾曲動作させて、施術者は良好な作業環境でレーザ治療を、安全性且つ信頼性高く行うことができる。
【0092】
詳しくは、自由に湾曲動作できる湾曲管部23における湾曲動作によって中空導波路80が破損したとしても、防護金属管76は、中空導波路80から漏出した治療用レーザ光57a、つまり誤照射された治療用レーザ光57aを反射することができる。つまり、湾曲管部23における湾曲動作がもたらす中空導波路80の破損によって生じうる中空導波路80からの治療用レーザ光57aの漏出(誤照射)を防止することができる。これにより、この治療用レーザ光57aの誤照射による外装チューブ71や術者操作ユニット12の内視鏡チューブ21の損傷の発生を防止できる。したがって、安全性及び信頼性の高い術者操作ユニット12を構成することができる。
【0093】
なお、上述の説明では、治療用レーザ光57aとしてCOレーザを用いたが、その他の適宜の治療用レーザ光を用いてもよい。
また、アシストガス59aとしてCOガスを用いたが、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有する適宜のガスを用いてもよい。さらにまた、SAG58aとして空気を用いたが、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有しない窒素などの適宜のガスを用いてもよい。
【0094】
さらにまた、上述の説明では、湾曲管部23において、中空導波路80を防護金属管76に挿通し、中空導波路80の外側を防護金属管76で囲繞したが、中空導波路80の内部に防護金属管76を挿通しても同様の効果を得ることができる。
【0095】
さらには、中空導波路80を湾曲管部23までの可撓管部22の長さで形成し、中空導波路80の先端に防護金属管76を接続して、防護金属管76のみを湾曲管部23に挿通しても、同様の効果を得ることができる。
【0096】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のレーザ光は、治療用レーザ光57aに対応し、
以下同様に、
サブアシストガスは、SAG58aに対応し、
中央貫通孔は、中央照射孔73に対応し、
外周貫通孔は、アシストガス噴射溝74に対応し、
出射部は、先端噴射口72に対応し、
内視鏡外部ホースは、内視鏡チューブ21に対応し、
先端開口部近傍は、先端構成部30に対応し、
レーザ治療器具は、術者操作ユニット12に対応し、
湾曲動作部は、湾曲管部23に対応し、
誤照射防止部材は、防護金属管76に対応し、
レーザ発振器は、レーザ発振部57に対応し、
アシストガス発生器は、アシストガス噴射部59に対応し、
装置本体は、レーザ治療装置50に対応し、
制御部は、中央制御部43に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0097】
例えば、上述の説明では、先端噴射口72の外周に軸方向のアシストガス噴射溝74を複数備えたが、アシストガス噴射溝74の構成はこれに限定されず、先端噴射口72の外周面に沿って、螺旋状に形成した複数本のアシストガス噴射溝74であってもよい。あるいは、中央照射孔73の外周側に同心円状に複数配置し、先端噴射口72の壁内をあたかも蓮根のように、軸方向に貫通する貫通孔で構成するアシストガス噴射溝74であってもよい。さらには、先端噴射口72自体を、正面視鼓形状やD形状に形成し、鼓形状やD形状の直線部分と外装チューブ71の内周面71bとの間の隙間でアシストガス噴射溝74を構成してもよい。
【0098】
また、SAG58a、及びアシストガス59aの噴射量や噴出圧力を検出し、異常な検出結果に基づいて、レーザ治療システム1の稼働を停止する構成であってもよい。詳しくは、SAG58a、及びアシストガス59aの噴射量や噴出圧力を、それぞれ独立に検出、あるいは相対的に検出することによって、アシストガス59aが通過するアシストガス導通路77、及びアシストガス噴射溝74、あるいはSAG58aが通過する導通空間82、及び中央照射孔73の閉塞や破損等を検出することができる。この場合、正確な施術を実行することができなくなるおそれがあるので、直ちにレーザ治療システム1の稼働を停止する停止制御をおこなう。これにより、安全性及び信頼性の高いレーザ治療システム1を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
この発明は、レーザ光を用いて生体を治療するような様々な装置に用いることができる。特に、内視鏡のように限られた空間内でレーザ光を伝送して治療・施術するような装置に利用できる。
【符号の説明】
【0100】
1…レーザ治療システム
12…術者操作ユニット
21…内視鏡チューブ
23…湾曲管部
30…先端構成部
41…操作部
43…中央制御部
50…レーザ治療装置
57…レーザ発振部
57a…治療用レーザ光
58a…SAG
59…アシストガス噴射部
59a…COアシストガス
70…レーザ伝送路
71…外装チューブ
72…先端噴射口
73…中央照射孔
74…アシストガス噴射溝
76…防護金属管
77…アシストガス導通路
80…中空導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部中空の長尺状に形成され、レーザ光を導光する中空導波路と、該中空導波路の挿通を許容する外装チューブとで構成するレーザ伝送路において、
前記中空導波路と、前記外装チューブとの間に、レーザ光吸収性及び生体吸収性を有するアシストガスの導通を許容するガス導通路を形成した
レーザ伝送路。
【請求項2】
前記アシストガスとは異なるサブアシストガスを、前記中空導波路の内部に導通させるとともに、
前記レーザ光及び前記サブアシストガスの通過を許容する中央貫通孔を正面視中央に備え、前記アシストガスの通過を許容する外周貫通孔を外周部に備えた出射部を、前記外装チューブ先端に設けた
請求項1に記載のレーザ伝送路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記レーザ伝送路を、内視鏡外部ホースに挿通するとともに、
前記レーザ伝送路の先端部を、前記内視鏡外部ホースの先端開口部近傍に配置する
レーザ治療器具。
【請求項4】
内視鏡外部ホースの先端側に、湾曲動作可能な湾曲動作部を設けるとともに、
前記レーザ出射端側の中空導波路の先端における前記湾曲動作部に対応する箇所に、レーザ光の誤照射防止部材を備えた
請求項3に記載のレーザ治療器具。
【請求項5】
前記レーザ光を発振するレーザ発振器、及び前記アシストガスを発生するアシストガス発生器を備えた装置本体と、
前記レーザ発振器より発振されたレーザ光と前記アシストガス発生器より発生されたアシストガスとを施術対象部位へ導くための請求項1又は2に記載のレーザ伝送路と、
前記レーザ発振器による前記レーザ光の発振及び前記アシストガス発生器による前記アシストガスの発生を操作する操作部と、
前記操作部からの信号に基づいて、前記レーザ発振器によるレーザ光の発振及び前記アシストガス発生器によるアシストガスの発生を制御する制御部とを備えた
レーザ治療システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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