説明

レーザ光源モジュールおよびそれを備えた走査型画像表示装置

【課題】
赤、緑、青の3色のレーザ光源からのビーム光を、1つの合成ビーム光軸上に整列するレーザ光源モジュールにおいて、温度上昇による熱変形に起因して発生する、3色のビームスポットの相対位置ずれを低減する。
【解決手段】
レーザチップがヒートシンク上に設置されたレーザと、前記レーザからの放射光をビーム光にするレンズからなるビーム光源を複数有し、前記複数のビーム光源から射出されるビーム光を、1つの合成ビーム光軸上に整列するビーム結合部を有するレーザ光源モジュールであって、前記複数のレーザ光源のうち少なくとも2つ以上において、前記レーザチップの発光点が、前記ヒートシンクから離れる方向に動いた際の、合成ビーム光軸上でのビーム光のずれ方向が同じになるように前記レーザを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーザ光源からのビーム光を1つの光軸上に整列して射出するレーザ光源モジュール、および、レーザ光源モジュールからの光ビームを走査ミラーにより2次元的に走査しスクリーンに画像を表示する走査型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手軽に持ち歩きでき、大きな画面で表示できる小型プロジェクタの開発が盛んである。ノートPCなどに接続できる小型のプロジェクタや、記録画像を投射できるプロジェクタを内蔵したビデオカメラなどが市販されており、携帯電話やスマートフォンに内蔵したものも今後登場すると思われる。
【0003】
プロジェクタの方式としては、光源にランプやLEDなどを用い、液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で表示した画像を投射するタイプが先行しているが、光源にレーザを用いて、1本のビーム光を可動ミラーにより走査して表示するレーザプロジェクタ(走査型画像表示装置)も開発が進められている。光源にレーザ光を用いるため、焦点合わせの必要がなく、外出先で手ごろな壁に投射するという用途に適していると考えられる。
【0004】
赤、青、緑の3色のレーザ光源を用い、3色のレーザビームを1本の軸に沿って進む合成ビームに結合するビーム結合部と、合成ビームの偏向方向を走査するビームスキャナを有し、カラー画像を表示できる走査型画像表示装置の構成について、特許文献1に記載がある。
【0005】
ビーム結合部の構成としては、3つの光源は並列していて、同一方向にビームが射出され、それぞれ対応したビーム結合ミラーに反射して、合成ビームに結合される。また、1つの光源を、初めから合成ビームの光軸に沿って射出し、ビーム結合ミラーを2つとした構成も記載があり、ミラーの数が減るためモジュールをより小型にできると考えられる。
【0006】
なお、従来は直接緑色光を放射するレーザがなかったため、特許文献1においても、赤外光をSHG(second harmonic generation)で波長変換して緑色光を得ているが、近年では直接緑色光を放射するレーザも入手できるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−533715号公報
【特許文献2】特開平6−314857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような走査型画像表示装置においては、3色のビーム光の光軸を精度よく一致させることが重要である。軸がずれてしまうと、スクリーン上での各色のスポットに相対位置ずれが発生し、画像がぼやけてしまう。モジュールの組立時には、3色の光軸が合うように調整して組み立てる必要がある。また、走査型画像表示装置の使用時には、レーザの発熱などにより温度が上がり熱変形が発生するため、熱変形時の光学部品の位置ずれによる光軸のずれも考慮する必要がある。
【0009】
光源に用いるレーザとしては、CANパッケージと呼ばれる円筒形の金属パッケージの製品が主流である。円筒形のベースの先に、半円筒形のヒートシンクを接続し、ヒートシンクの平らな面に、サブマウントを介してレーザチップを接合し、キャップで覆った構造となっている。
【0010】
こうしたレーザ光源では、特許文献2に記載されているように、温度上昇による変形により、発光点位置が変位する課題がある。ベースとヒートシンクの熱膨張係数の違い、あるいは、レーザチップおよびサブマウントとヒートシンクの熱膨張係数の違いが原因で、均一な熱変形とならないためである。レーザ光源からのビーム光の光軸方向は、レーザの発光点とレンズを結ぶ方向となるため、発光点の位置が変位すると、ビーム光の光軸がずれてしまう。特許文献2には、ヒートシンクのベースに接合する部分を円筒形にして、上記発光点の位置ずれを防ぐ構成が開示されているが、現在入手しやすいレーザ製品においては、こうした構成がとられておらず、発光点位置ずれの課題がある。
【0011】
本発明の目的は、温度上昇によりレーザの発光点の位置ずれが発生しても、スクリーン上でのスポット相対位置ずれを小さくできる、小型のレーザ光源モジュール、およびそれを備えた走査型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ光源モジュールは、次のように構成される。
【0013】
上記目的は、レーザチップがヒートシンク上に設置されたレーザと、このレーザからの放射光をビーム光に変換するレンズとを備えた複数のレーザ光源と、この複数のレーザ光源からの前記ビーム光を1つの合成ビーム光の軸上に整列させるためのビーム結合部を有するレーザ光源モジュールにおいて、前記複数のレーザ光源のうち少なくとも2つ以上にあっては、前記レーザチップの発光点が前記ヒートシンクから離れる方向に動いた際の、前記合成ビーム光の軸上でのビーム光のずれ方向が同じになるように前記レーザを設置したことにより達成される。
【0014】
また好ましくは、前記ビーム結合部は、前記ビーム光を波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つないし複数のミラーを有し、前記複数のレーザ光源のうち少なくとも2つ以上にあっては、前記レーザチップの発光点が前記ヒートシンクから離れる方向に動いた際のビーム光のずれ方向が反転するようなミラーでの反射が奇数回であるビーム光源と、偶数回ないし反射がないビーム光源とで、ビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になると良い。
【0015】
また好ましくは、前記ビーム結合部は、ビームを波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つまたは複数のミラーを有し、前記合成ビーム光軸を含む主要なビーム光路が形成される面を光路面とし、前記光路面内の方向に前記レーザチップと前記ヒートシンクが並ぶ向きに設置されている前記ビーム光源の内の少なくとも2つ以上にあっては、前記ビーム結合部を通過する間にビームがミラーに奇数回反射するビーム光源と、偶数回反射あるいは反射がないビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になると良い。
【0016】
また上記目的は、レーザチップがヒートシンク上に設置されたレーザと、前記レーザからの放射光をビーム光にするレンズとを備えた第1のビーム光源、第2のビーム光源、および第3のビーム光源を有し、各ビーム光源から射出されるビーム光を、1つの合成ビーム光軸上に整列するビーム結合部を有するレーザ光源モジュールにおいて、前記ビーム結合部は、ビームを波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つまたは複数のミラーを有し、前記合成ビーム光軸を含む主要なビーム光路が形成される面を光路面とし、前記光路面内の方向に前記レーザチップと前記ヒートシンクが並ぶ向きに設置されている前記ビーム光源の内の少なくとも2つ以上にあっては、前記ビーム結合部を通過する間にビームがミラーに奇数回反射するビーム光源と、偶数回反射あるいは反射がないビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていると達成される。
【0017】
また好ましくは、前記ビーム結合部は第1のミラーおよび第2のミラーを有し、前記第1のビーム光源のビーム光は前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第2のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーに反射した後、前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第3のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーおよび前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第1のビーム光源および前記第2のビーム光源と、前記第3のビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆であると良い。
【0018】
また好ましくは、前記ビーム結合部は第1のミラーおよび第2のミラーを有し、前記第1のビーム光源のビーム光は前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第2のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーに反射した後、前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第3のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーを透過した後、前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、前記第1のビーム光源および前記第2のビーム光源と、前記第3のビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆であると良い。
【0019】
また好ましくは、第1のビーム光源は青色で、第2のビーム光源は赤色で、第3のビーム光源は緑色であると良い。
【0020】
また好ましくは、こうしたレーザ光源モジュールを、前記合成ビーム光軸上に整列されたビーム光の反射方向を2軸方向に走査できるスキャンミラーとともに用い、前記レーザ光源の発光と、前記スキャンミラーの走査を同期して制御してスクリーン上に画像を表示する走査型画像表示装置を構成する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザの発熱などによりレーザ光源モジュールの温度が上昇した際にも、複数のレーザ光源に対して、レーザの熱変形に起因するレーザ光軸のずれ方向を、合成ビーム光軸上において一致させることができるので、スクリーン上のレーザスポットの相対位置ずれを小さくしたレーザ光源モジュールを備えた走査型画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる走査型画像表示装置の全体構成図である。
【図2】本発明に係わるレーザ光源モジュールの実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に用いられるレーザの概観を示す斜視図である。
【図4】本発明に係わるレーザ光源モジュールの第1の実施例を示す平面図である。
【図5】本発明に係わるレーザ光源モジュールの第2の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明に係る走査型画像表示装置の構成図である。
図1において、光モジュール部101は、緑(G)/赤(R)/青(B)の3色のレーザ光源と、各レーザ光源から発せられたビーム光を結合させるビーム結合部を有するレーザ光源モジュール100(詳細は後述する)と、結合したビーム光をスクリーン109へ投射する投射部と、投射するビーム光をスクリーン109上で2次元的に走査する走査部とを有する。投射部には偏光ビームスプリッタ(PBS)40、1/4波長板41、画角拡大素子42など、走査部には走査ミラー50などを含む。
【0025】
表示する画像信号は、電源等を含む制御回路2を経由してビデオ信号処理回路3に入力する。ビデオ信号処理回路3では画像信号に対し各種の処理を施すとともに、R/G/Bの3色信号に分離しレーザ光源駆動回路104に送る。レーザ光源駆動回路104では、R/G/Bの各信号の輝度値に応じて、レーザ光源モジュール100内の対応するレーザに対して発光用の駆動電流を供給する。その結果レーザは、表示タイミングに合わせてR/G/B信号の輝度値に応じた強度のビーム光を出射する。
【0026】
またビデオ信号処理回路103は、画像信号から同期信号を抽出して走査ミラー駆動回路105に送る。走査ミラー駆動回路5は、水平・垂直同期信号に合わせて光モジュール部101内の走査ミラー50に対しミラー面を2次元的に反復回転させる駆動信号を供給する。これにより走査ミラー50は、ミラー面を所定の角度だけ周期的に反復回転してビーム光を反射させ、スクリーン109上に水平方向および垂直方向に光ビームを走査して画像を表示する。
【0027】
フロントモニター信号検出回路106は、フロントモニター60からの信号を入力して、レーザから出射されるR/G/Bそれぞれの出力レベルを検出する。検出された出力レベルは、ビデオ信号処理回路103に入力され、所定の出力になるようレーザの出力が制御される。
走査ミラー50には、例えばMEMS(Micro electromechanical Systems)技術を用いて作成された2軸駆動ミラーを用いることができる。駆動方式としては、圧電、静電、電磁駆動のものなどがある。また、1軸駆動のスキャンミラーを2つ用意し、互いに直交する方向にビーム光を走査できるように配置してもよい。
【0028】
ところで、この種の走査型画像表示装置に使用されるレーザ光源は、上述したように熱変形によってレーザの発光点が位置ずれし、ビーム光の光軸方向がずれてしまう課題がある。ビーム光の光軸がずれると、スクリーン上でのスポット位置がずれる。3つのレーザ光源でスポット位置ずれが異なると、スポット位置が一致しなくなり、画像がぼやけてしまう。
【0029】
そこで本発明の発明者らは、複数のレーザ光源のスポット位置ずれを同じ方向とすることで、相対的な位置ずれ量を小さくできるように、前記レーザ光源モジュール100を構成することを考えた結果、以下のごとき実施例を得た。
【0030】
以下、本発明に係わるレーザ光源モジュール100について説明する。
図2は本発明の第1の実施例に係るレーザ光源モジュールを説明する斜視図である。
図2において、レーザ光源モジュール100は、第1レーザ1aおよび第1レンズ2aからなる第1レーザ光源3aと、第2レーザ1bおよび第2レンズ2bからなる第2レーザ光源3bと、第3レーザ1cおよび第3レンズ2cからなる第3レーザ光源3cと、第1ミラー4および第2ミラー5からなるビーム結合部6を有する。
【0031】
第1レーザ1a、第2レーザ1b、第3レーザ1cはそれぞれ赤色、緑色、青色(R,G,B)のレーザ光を放射する。第1レンズ2a、第2レンズ2b、第3レンズ2cはいわゆるコリメータであり、それぞれレーザ光源から放射されたレーザ光を略平行なビーム光にする。各光源からのビーム光は、ビーム結合部6において1本の合成ビーム光軸7上に整列されて、レーザ光源モジュール100の外部に放射される。
【0032】
第1レーザ光源3aからの青色のビーム光は、第1ミラー4に反射して、第2レーザ光源3bからの赤色のビーム光は、第2ミラー5に反射した後、第1ミラー4を透過して、第3レーザ光源3cからの緑色のビーム光は、第2ミラー5、第1ミラー4の順に透過して、それぞれ合成ビーム光軸7上に整列される。上記の光路を形成するため、第1ミラー4は青色の波長のビームを反射し、赤色および緑色の波長のビームを透過するように、また第2ミラー5は赤色の波長のビームを反射し、緑色の波長のビームを透過するように設計されたダイクロイックミラーである。
【0033】
図3(a)および図3(b)は第1レーザ1a、第2レーザ1bおよび第3レーザ1cに用いることのできるレーザの構造を示す斜視図である。
図3(a)において、レーザはステムベース10とステムカバー11、およびステムカバー11の先端に設置される透明な窓部12により保護された構造となっている。ステムベース10の背後にはレーザに給電するためのリード13が引き出されている。
【0034】
図3(b)は、レーザの内部構造を説明するため、ステムカバー11および窓部12を除去した状態を示している。
図3(b)において、円柱形のステムベース10に、円筒を切り取った形状のヒートシンク14が接合されており、その平坦面にサブマウント15を介してレーザチップ16が接合されている。レーザチップ16の先端にある発光点がレーザのほぼ中心線上に位置するように構成されている。リード13は、ステムベース10を貫通してステムカバー11の内部に突き出している。リード13とレーザチップ16とはワイヤ17を介して接続されている。リード13とステムベース10との間は絶縁性の封止材18で封止されている。
【0035】
これらの材質としては、例えばレーザチップ16はガリウムヒ素、サブマウント15は窒化アルミ、ヒートシンク14は銅、ステムベース10およびステムカバー11は鉄、窓部12はガラス、封止材18は低融点ガラスなどが用いられる。
【0036】
なお、図2においては、第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bのビームが射出される方向をX方向、第3レーザ光源3cのビームが射出される方向をY方向とし、XY平面を光路面19と呼ぶこととする。
【0037】
図4は、光路面19における、各レーザ、レンズ、およびミラーの配置を示す平面図である。
なお、各レーザは、ステムベース10、ヒートシンク14、サブマウント15、レーザチップ16のみを記載している。
【0038】
図4において、本発明の特徴としては、第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bでは、レーザ光の射出方向に向かって左側にヒートシンク14、右側にレーザチップ16が配置されているのに対し、第3レーザ光源3cではレーザ光の射出方向に向かって左側にレーザチップ16、右側にヒートシンク14が配置されており、ヒートシンク14とレーザチップ16の配置が逆になっている。
【0039】
このような構成により、レーザの発熱などでレーザ光源モジュール100の温度が上昇した場合でも、レーザの熱変形に起因するレーザ光の光軸ずれの方向を、第1レーザ光源3a、第2レーザ光源3bおよび第3レーザ光源3cについて、合成ビーム光軸7上で同じ方向にできる。これにより、ビーム光がスクリーンに投射された際の、各色のスポットの相対位置ずれを小さくすることができる。
【0040】
レーザは上記のように熱膨張係数の異なる部材が接合されて構成されており、温度上昇により熱変形を生じる。レーザチップ16およびサブマウント15に対して、ヒートシンク14の熱膨張係数が大きいため反りが発生し、レーザチップ16の発光点は、ヒートシンク14から遠ざかる方向に変位する。ビーム光はレーザチップ16の発光点とレンズ(2a〜2c)の中心とを結ぶ直線の方向に進むため、レーザチップ16の発光点に上記の変位が生じると、ビーム光の進行方向は初期よりもヒートシンク14の側にずれる。
【0041】
本実施例においては、X軸のプラス方向に進む第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bのビーム光は、進行方向に見て左側、すなわちY軸のプラス方向にずれる。一方、Y軸のプラス方向に進む第3レーザ光源3cのビーム光は、進行方向に見て右側、すなわちX軸のプラス方向にずれる。このずれ方向は、第1ミラー4または第2ミラー5で反射すると反転し、透過したときはそのままとなる。よって、第1レーザ光源3aのビーム光のずれ方向は、第1ミラーでの反射後は、進行方向に見て右側、すなわちX軸のプラス側になる。第2レーザ光源3bのビーム光のずれ方向は、第2ミラーでの反射後は、進行方向に見て右側、すなわちX方向のプラス側となり、第1ミラーの透過後はずれ方向は変わらない。第3レーザ光源3cのビーム光のずれ方向は、第2ミラー、第1ミラーの透過後も変わらない。
【0042】
このように、合成ビーム光軸7上での、第1レーザ光源3a、第2レーザ光源3bおよび第3レーザ光源3cからのビーム光のずれ方向は、全て進行方向に見て右側、すなわちX軸のプラス側となり、ずれの方向を同じにすることができる。
【0043】
ビーム光のずれ量は、各光源の、レーザの構造の違い、およびレーザチップ16の発光点とレンズの中心との距離の違いなどにより同じになるとは限らないが、ずれ方向が逆になる場合に比べて、全て同じ方向とすることができれば、相対的なスポット位置ずれは大幅に小さくすることができる。
【0044】
ビーム光のずれ方向を一致させることが目的であるので、全てのレーザについて、設置する向きを反対にしてもよい。すなわち、第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bではヒートシンク14が右側でレーザチップ16が左側に、第3レーザ光源3cはヒートシンク14が左側で、レーザチップ16が右側になるようにレーザを配置してもよい。
【0045】
上記のように、ミラーで反射することでビーム光の傾き方向が反転することから、ミラーで1回反射する第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bは進行方向に見て右側に、ミラーでの反射がない第3レーザ光源3cは進行方向に見て左側にビーム光の光軸がずれるようにレーザを設置することで、合成ビーム光軸7上でのビーム光のずれ方向を一致させることができた。
【0046】
第1の実施例の構成に限らず、同様の様々な構成において、合成ビーム光軸7に達するまでのミラーでの反射が奇数回であるビーム光源と、偶数回または反射がないビーム光源とで、ビーム光の進行方向に見たずれ方向を逆方向にする、すなわち、ヒートシンク14とレーザチップ16の配置を逆にすることで、相対スポット位置ずれを小さくする効果を得ることができる。
【実施例2】
【0047】
その例として、合成ビーム光軸7に至るまでの光路が第1の実施例と異なる第2の実施例を示す。
図5は第2の実施例のレーザ光源モジュール100の、光路面19上の構成を示す平面図である。
【0048】
図5において、第1レーザ光源3aからの青色のビーム光は、第1ミラー4を透過して、第2レーザ光源3bからの赤色のビーム光は、第2ミラー5に反射した後、第1ミラー4に反射して、第3レーザ光源3cからの緑色のビーム光は、第2ミラー5を透過した後、第1ミラー4に反射して、それぞれ合成ビーム光軸7上に整列される。上記の光路を形成するため、第1ミラー4は青色の波長のビームを透過し、赤色および緑色の波長のビームを反射するように設計されている。また、第2ミラー5は赤色の波長のビームを反射し、緑色の波長のビームを透過するように設計されている。
【0049】
本実施例においては、第1レーザ光源3aのビーム光はミラーでの反射がなく、第2レーザ光源3bは反射が2回、第3レーザ光源3cは反射が1回である。そこで、ミラーでの反射が奇数回の第3レーザ光源3cは進行方向に見て左側に、ミラーでの反射が偶数回または反射なしである第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bは進行方向に見て右側にビーム光がずれるようにレーザを配置した。すなわち、第3レーザ光源3cはヒートシンク14が左側でレーザチップ16が右側に、第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bではヒートシンク14が右側でレーザチップ16が左側になるようにレーザを配置した。これによりX軸のプラス方向に進む合成ビーム光軸7上においては、全てのビーム光が進行方向に見て右側、すなわちY軸のマイナス側にずれるようになり、ずれ方向を一致させることができた。
【0050】
本発明はビーム光のずれ方向を一致させることが目的であるので、全てのレーザの設置する向きを反対にしてもよい。すなわち、第3レーザ光源3cはヒートシンクが右側で、レーザチップが左側に、第1レーザ光源3aおよび第2レーザ光源3bではヒートシンクが左側でレーザチップが右側になるようにレーザを配置してもよい。
【0051】
なお、レーザチップ16とヒートシンク14が光路面19外の方向に配列するようにレーザが配置されることも考えられる。その場合は、レーザチップ16の発光点がヒートシンク14から離れる方向に変位したときのビーム光の光軸のずれは、光路面19外の方向になり、第1ミラー4あるいは第2ミラー5での反射によりずれ方向が反転することはない。レーザチップ16とヒートシンク14が光路面19外の方向に配列するように配置されたレーザ光源が含まれる場合においても、少なくともその他の、レーザチップ16とヒートシンク14が光路面19内の方向に配列されたレーザ光源について、合成ビーム光軸7上でのビーム光のずれ方向が一致するように上記のレーザの配置を適用することで、相対スポットずれを小さくすることができる。
【0052】
しかしながら、各色のレーザ光のスポット形状を一致させるためには、全てのレーザがレーザチップ16とヒートシンク14が光路面19内の方向に配列するように設置されることが望ましい。なぜなら、レーザチップ16から発せられたビーム光の、十分離れた位置での広がり形状(ファーフィールドパターン)は、レーザチップ16の厚み方向を長軸とする楕円形状になることが知られており、光路面19外方向に配列するレーザが含まれると、楕円形状のスポットの長軸方向が一致せず、画像のぼやけが発生しやすいためである。
【0053】
また、上記の実施例においては、第1レーザ光源3aを青色、第2レーザ光源3bを赤色、第3レーザ光源3cを緑色のビーム光源としたが、青、赤、緑の配置はこれに限ったものではなく、別の配置となった場合においても、本発明の構成を適用することで、相対スポットずれを低減できる。
【0054】
また、フルカラー表示をするために3つの光源を用いるのが一般的だが、アプリケーションによっては、光源を2つとしたり、また補助的な光源を追加して4つ以上とする場合も考えられる。そうした場合においても本発明の構成を適用することで相対スポットずれを低減できる。
【0055】
以上のごとく本発明によれば、赤、緑、青の3色のレーザ光源からのビーム光を、1つの合成ビーム光軸上に整列するレーザ光源モジュールにおいて、温度上昇による熱変形に起因して発生する3色のビームスポットの相対位置ずれを低減することができるものである。
【符号の説明】
【0056】
1a…第1レーザ、1b…第2レーザ、1c…第3レーザ、2a…第1レンズ、2b…第2レンズ、2c…第3レンズ、3a…第1光源、3b…第2光源、3c…第3光源、4…第1ミラー、5…第2ミラー、6…ビーム結合部、7…合成ビーム光軸、10…ステムベース、11…ステムカバー、12…リード、13…窓部、14…ヒートシンク、15…マウント、16…レーザチップ、17…リード、18…封止材、19…光路面、40…偏光ビームスプリッタ、41…1/4波長板、42…画角拡大素子、50…走査ミラー、60…フロントモニタ―、100…レーザ光源モジュール、101…光モジュール部、102…制御回路、103…ビデオ信号処理回路、104…レーザ光源駆動回路、105…走査ミラー駆動回路、106…フロントモニタ―信号検出回路、109…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザチップがヒートシンク上に設置されたレーザと、前記レーザからの放射光をビーム光に変換するレンズとを備えた複数のレーザ光源と、この複数のレーザ光源からの前記ビーム光を1つの合成ビーム光軸上に整列させるためのビーム結合部を有するレーザ光源モジュールにおいて、
前記複数のレーザ光源のうち少なくとも2つ以上にあっては、
前記レーザチップの発光点が前記ヒートシンクから離れる方向に動いた際の、前記合成ビーム光軸上でのビーム光のずれ方向が同じになるように前記レーザを設置したことを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ光源モジュールにおいて、
前記ビーム結合部は、前記ビーム光を波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つないし複数のミラーを有し、
前記複数のレーザ光源のうち少なくとも2つ以上にあっては、
前記レーザチップの発光点が前記ヒートシンクから離れる方向に動いた際のビーム光のずれ方向が反転するようなミラーでの反射が奇数回であるビーム光源と、偶数回ないし反射がないビーム光源とで、ビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項3】
請求項1記載のレーザ光源モジュールにおいて、
前記ビーム結合部は、ビームを波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つまたは複数のミラーを有し、
前記合成ビーム光軸を含む主要なビーム光路が形成される面を光路面とし、
前記光路面内の方向に前記レーザチップと前記ヒートシンクが並ぶ向きに設置されている前記ビーム光源の内の少なくとも2つ以上にあっては、
前記ビーム結合部を通過する間にビームがミラーに奇数回反射するビーム光源と、偶数回反射あるいは反射がないビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項4】
レーザチップがヒートシンク上に設置されたレーザと、前記レーザからの放射光をビーム光にするレンズとを備えた第1のビーム光源、第2のビーム光源、および第3のビーム光源を有し、各ビーム光源から射出されるビーム光を、1つの合成ビーム光軸上に整列するビーム結合部を有するレーザ光源モジュールにおいて、
前記ビーム結合部は、ビームを波長や偏波方向に応じて反射したり透過したりできる1つまたは複数のミラーを有し、
前記合成ビーム光軸を含む主要なビーム光路が形成される面を光路面とし、
前記光路面内の方向に前記レーザチップと前記ヒートシンクが並ぶ向きに設置されている前記ビーム光源の内の少なくとも2つ以上にあっては、
前記ビーム結合部を通過する間にビームがミラーに奇数回反射するビーム光源と、偶数回反射あるいは反射がないビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項5】
請求項4記載のレーザ光源モジュールにおいて、
前記ビーム結合部は第1のミラーおよび第2のミラーを有し、
前記第1のビーム光源のビーム光は前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第2のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーに反射した後、前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第3のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーおよび前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第1のビーム光源および前記第2のビーム光源と、前記第3のビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項6】
請求項4記載のレーザ光源モジュールにおいて、
前記ビーム結合部は第1のミラーおよび第2のミラーを有し、
前記第1のビーム光源のビーム光は前記第1のミラーを透過して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第2のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーに反射した後、前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第3のビーム光源のビーム光は前記第2のミラーを透過した後、前記第1のミラーに反射して前記合成ビーム光軸上に整列され、
前記第1のビーム光源および前記第2のビーム光源と、前記第3のビーム光源とで、前記光路面内でビーム射出方向に見たときの前記レーザチップと前記ヒートシンクの配置が逆になっていることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれかに記載のレーザ光源モジュールにおいて、
第1のビーム光源は青色で、第2のビーム光源は赤色で、第3のビーム光源は緑色であることを特徴とするレーザ光源モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のレーザ光源モジュールと、前記合成ビーム光軸上に整列されたビーム光の反射方向を2軸方向に走査できるスキャンミラーを有し、前記レーザ光源の発光と前記スキャンミラーの走査を同期して制御してスクリーン上に画像を表示することを特徴とする走査型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64910(P2013−64910A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204198(P2011−204198)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】