説明

レーザ加工ヘッド

【課題】レーザ加工機1のビームガイドに対応配置されたハウジング領域17と、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域18とを備えている形式のレーザ加工ヘッド4特にレーザ切断ヘッドを改良して、ビームガイドをレーザ加工領域からできるだけ簡単に構造的に分離することができ、10kW以上のレーザ出力において使用することができるようなものを提供する。
【解決手段】レーザビーム23のための開口絞り25が、2つのハウジング領域17,18間の分離装置として設けられており、ビームガイドに対応配置されたハウジング領域17内に、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域18内と比較してやや高い超過圧力が形成されていて、それによってビームガイドのための掃気ガスが得られるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッド特にレーザ切断ヘッドであって、レーザ加工機のビームガイドに対応配置されたハウジング領域と、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域とを備えている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工ヘッドに使用されている、このような形式の一般的に公知であるレンズ・切断光学系においては、レンズが、ビームガイドと加工室とを互いに分離するようになっている。レーザ切断機においては、ビームガイドが純粋なガスによって掃気され、それによって周囲からの汚れ粒子(例えば切断煤煙)及び不都合な不純物を取り除くようになっている。切断プロセスは、加工ガス(大抵の場合酸素又は窒素)によって、機械的及び化学的に補助される。加工中に、加工ガス室内には数ミリバールの圧力が形成される。
【0003】
COレーザ溶接装置においては、ここ20年以上に亘って集束ミラー若しくは集光ミラーが使用されており、このような集光ミラーは、透過性のレンズと比較して汚れにくい。勿論、複数のミラーを使用することによって、加工側とビームガイド側とを分離することは避けられる。従って偏向光学系はビームガイド内において非常に早期に、例えば加工時の溶接煤煙によって汚されることになる。
【0004】
より頑丈なミラー光学系を用いることは、レーザ切断においても望まれているが、ビームガイド室と加工側との間の圧力差が非常に大きいので実現が困難である。
【0005】
集光ミラーの前に、フラットな窓又はZnSe窓を付加的に設けることによって、密閉した分離を形成することは公知である。この窓は、切断ガスのための圧力を増大させ、それによってビームガイドと加工側との間の分離も行う。いずれの場合も、透過性部材は汚れ易い。ZnSe窓は、温度に基づく屈折率による弱点を有している。このような屈折率による弱点によって、ミラー光学系の使用可能性は、レンズの使用可能性と同様に限定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のレーザ加工ヘッド特にレーザ切断ヘッドを改良して、ビームガイドをレーザ加工領域からできるだけ簡単に構造的に分離することができ、10kW以上のレーザ出力において使用することができるようなものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明によれば、レーザ加工ヘッド特にレーザ切断ヘッドであって、レーザ加工機のビームガイドに対応配置されたハウジング領域と、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域とを備えている形式のものにおいて、レーザビームのための開口絞りが、2つのハウジング領域間の分離装置として設けられており、ビームガイドに対応配置されたハウジング領域内に、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域内と比較してやや高い超過圧力が形成されていて、それによってビームガイドのための掃気ガスが得られるようになっていることによって解決された。
【発明の効果】
【0008】
開口絞りは、例えば切断ガス、周囲の雰囲気及び切断塵等に対してビームガイドを保護し、かつシールするために使用される。開口絞りは、僅かなガス損失において、ビームガイド内の過圧を可能にし、それによってビームガイド室を、周囲からの流入に対して能動的に保護する。本発明は、レーザ切断ヘッド及びレーザ溶接ヘッドにおいて用いることができる。
【0009】
レーザビームを偏向させるための、及びレーザビームの中間焦点を生ぜしめるための、第1のミラー及び第2のミラーが設けられていて、開口絞りが中間焦点内に若しくは中間焦点の近傍に配置されていれば、開口絞りの開口を小さく維持することができる。
【0010】
中間焦点を生ぜしめるために、第1のミラーが放物面鏡であって、第2のミラーが楕円面鏡であってよい。
【0011】
場合によっては、開口絞りに入射するレーザパワーが開口絞りを加熱することがある。従って、直接又は間接的に開口絞りを冷却するようにすれば有利である。
【0012】
開口絞りに圧力センサが配置されていれば、発生した体積流量を監視することができる。
【0013】
加工絞りと切断ノズルとの間の構造スペース内における相応の過圧に基づいて、レーザ加工領域からビームガイド内にガス流が侵入するのを避けるために、環状キャップノズルと開口絞りとの間に負荷軽減開口が設けられている。これによって加工機(例えば穿孔機)から粒子がビームガイド内に達することはない。これによって、切断ガスとして酸素が使用される場合、ビームガイドの雰囲気内に集中することは避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例が図面に概略的に示されていて、以下に詳しく説明されている。
【0015】
図1には、レーザ発生器2と、このレーザ発生器2に対して相対的に矢印3で示した方向に移動可能なレーザ加工ヘッド4とを有するレーザ加工機1が示されている。レーザ発生器2によって発生されたレーザビーム5は、レーザ発生器2から、純粋なガスによって洗浄されたビームガイド室6を通って加工ヘッド4に向かってガイドされ、この加工ヘッド4において、加工しようとする金属薄板としてのワーク(工作物)7に向けて偏向せしめられる。このワーク7はレーザ加工機1のワークサポート8上に載せられている。
【0016】
レーザビーム6は、純粋なガス例えば窒素によって満たされている。ビームガイド室6は、折り畳みベローズ10又はその他の密閉した閉鎖体(パイプ、テレスコープパイプその他)によって制限される。折り畳みベローズ10はガス室壁を形成していて、互いに接し合っているフレキシブルな折り目11より成っている。
【0017】
図2によれば、レーザ加工ヘッド4は2軸式、つまり矢印3の方向、並びにこの矢印3に対して垂直な矢印12の方向で移動可能である。レーザビーム5は、レーザ発生器から第1のビーム偏向装置13並びに第2のビーム偏向装置14を介してレーザ加工ヘッド4にガイドされ、ここでワーク7に向かって偏向される。
【0018】
レーザ加工ヘッド4のハウジング15は図3に示されている。ハウジング15は、レーザ加工機1に連結され、必要な接続部も有している。
【0019】
レーザビーム5は、ハウジング15内で偏向され、集束され、この集束されたレーザビーム16はワークに向けられる。ミラーによる集束及びハウジング15内の開口絞りによって、ビームガイドに対応配置されたハウジング領域17が、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域18から分離される。ビームガイドは、やや高い超過圧力の純粋なガスによって掃気される。ハウジング領域17はまだガスで満たされていて、これに対してハウジング領域18内ではガス掃気はもはや行われない。
【0020】
加工ガス側とビームガイド雰囲気とを互いに分離することができるように、レーザビーム5は中間焦点を通ってガイドされる。このために使用される、レーザ加工ヘッド4の構成部分は、集束を実施する放物面鏡19及び楕円面鏡20によって形成されている。ビームガイドから方向21に集束されるレーザビーム5は、放物面鏡19によって方向22に偏向され、集束される。楕円面鏡20は、焦点から発散するレーザビーム23を、方向24における作業焦点に結像し、それによってレーザ加工に使用される集束されたレーザビーム16が発生する。レーザ加工ヘッド4の基本原理は図4に示されている。2つの光学系19,20間の中間焦点28内に開口絞り25が設けられており、この開口絞り25を通ってレーザビーム23が放出される。開口絞り(aperture)25の直径は、レーザビーム23がその縁部を擦過しない程度に大きく、かつビームガイドの掃気ガスの漏れ損失が少ない程度に小さく選定されている。漏れガスを監視するために(例えば差圧評価によって)、開口絞り25に圧力センサ(図示されていないが、ハウジング位置26に設けられている)が配置される。開口絞り25を冷却するために冷却媒体接続部(図示されていないが、ハウジング位置27に設けられている)が設けられている。
【0021】
ミラー20は、焦点28から発散したレーザビーム23を作業焦点上に結像し、それによって、レーザ加工のために使用される集束されたレーザビーム16が発生する。2つのミラー19,20は、ミラー19及び20を冷却するために、冷却媒体接続部29若しくは30を備えている。ハウジング領域17内では、ビームガイドの掃気ガスによって僅かな超過圧力(ハウジング領域18と比較して)が存在する。レーザ加工ヘッド4によってレーザ切断することができるようにするために、環状ギャップノズル31によって作業焦点において切断ガスの圧力形成が行われる。このような構造のノズルは逆流を有していてもよいので、開口絞り25と環状ギャップノズル31との間の十分に大きい開口32によって流出させることができる。開口32は、ハウジング15内において、ビームガイド内におけるよりも大きい静圧が発生する程度の寸法に設計されている。
【0022】
本発明による基本原理を完全なレーザ加工ヘッド4に転用した状態が図5に示されている。レーザビームは、第1のミラーによって偏向され、集束(焦点28)される。レーザビーム通過方向に関連して回転対称に構成された開口絞り25内に、挿入された冷却体33が設けられており、この冷却体33は、レーザビーム23の熱を吸収して冷却する。ビームガイド内の超過圧力が例えば1.5mbar(ミリバール)である場合、2.5mmの開口を有する開口絞り25を通過する体積流量34は毎分3.5リットルである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーザ加工機の概略的な側面図である。
【図2】レーザ加工機の概略的な平面図である。
【図3】レーザ加工ヘッドの等尺の斜視図である。
【図4】レーザ加工ヘッドの縦断面図である。
【図5】レーザ加工ヘッドの開口絞りの縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 レーザ加工機、 2 レーザ発生器、 3 矢印、 4 レーザ加工ヘッド、 5 レーザビーム、 6 ビームガイド室、 7 ワーク(工作物)、 8 ワークサポート、 10 ベローズ、 11 折り目、 12 矢印、 13,14 ビーム偏向装置、 15 矢印、ハウジング、 16 レーザビーム、 17,18 ハウジング領域、 19 光学系、放物面鏡、 20 光学系、楕円面鏡、 21,22 方向、 23 レーザビーム、 24 方向、 25 開口絞り、口径、鏡径、 26 圧力センサ、 27 クーラント接続部、 28 焦点、 29,30 クーラント接続部、 31 環状ギャップノズル、 32 開口、 33 冷却体、 34 体積流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工ヘッド(4)であって、レーザ加工機(1)のビームガイドに対応配置されたハウジング領域(17)と、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域(18)とを備えている形式のものにおいて、
レーザビーム(23)のための開口絞り(25)が、2つのハウジング領域(17,18)間の分離装置として設けられており、ビームガイドに対応配置されたハウジング領域(17)内に、レーザ加工部に対応配置されたハウジング領域(18)内と比較してやや高い超過圧力が形成されていて、それによってビームガイドのための掃気ガスが得られるようになっていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド。
【請求項2】
レーザビーム(23)を偏向させるための、及びレーザビーム(23)の中間焦点(28)を生ぜしめるための、第1のミラー(19)及び第2のミラー(20)が設けられていて、開口絞り(25)が中間焦点(28)内に若しくは中間焦点(28)の近傍に配置されている、請求項1記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
第1のミラーが放物面鏡(19)であって、第2のミラーが楕円面鏡(20)である、請求項1記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
開口絞り(25)が冷却可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
冷却体(33)が開口絞り(25)内に挿入されている、請求項4記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
開口絞り(25)に圧力センサが配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項7】
前記ミラー(19,20)が冷却可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項8】
環状ギャップノズル(31)と開口絞り(25)との間に開口(32)が形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のレーザ加工ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−43775(P2006−43775A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228603(P2005−228603)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(502300646)トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (76)
【Fターム(参考)】