説明

レーザ加工方法とその装置

【課題】レーザによる加工精度を維持しつつ加工時間を短くして、基板への熱的影響を抑制し得るようにする。
【解決手段】基板1にベッセルビーム4を照射して基板1の端面部1aをレーザ加工する。レーザビーム5を照射するレーザ発振器と、このレーザ発振器より照射されたレーザビーム5をベッセルビーム4に形成する例えばプリズム3と、基板1の側面から照射した、プリズム3により形成されたベッセルビーム4と、基板1の上下面側の位置を検出するCCDカメラ6a、6bと、このCCDカメラ6a、6bにより検出したベッセルビーム4と、基板1の上下面側の位置に基づき、位置制御装置8で、基板1又はプリズム3の位置を制御して加工位置の補正を行う。
【効果】加工精度を維持しつつ効率良く加工することができる。また、加工時間が短くなって、基板への熱的影響が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池における周縁部の導電膜を除去するような、基板の端面部の加工を、ベッセルビームにより行う方法、及びその方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の多くの電気製品の基板に対し、回路等のパターンが形成されている。このような回路等のパターン形成の方法としては、例えばレーザとXYテーブルスキャニングミラーを同期させる方法が用いられている。
【0003】
また、これら基板上に形成された導電性薄膜の端面部の除去等においても、レーザによる加工が同様に行われている。
【0004】
これらレーザを用いた加工として、例えば図6に示すように、円形または矩形状の加工スポット2を所定の重ね合せ率をもって移動させる方法が知られている(例えば特許文献1)。なお、図6中の1は基板、1aは基板1の端面部を示す。
【0005】
しかしながら、前記レーザ加工においては、微小な円形または矩形状の加工スポットを所定の重ね合せ率をもって移動させるので、加工に時間を要し、作業効率が悪いという問題がある。特に液晶パネルや太陽電池等の大型基板になると、前記問題は顕著である。
【0006】
また、加工に時間を要するので、基板にレーザを長時間照射することになるため、基板上の加工範囲以外の部分にも熱的な影響(劣化)を与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−305601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の微小な加工スポットを重ね合せて移動させる方法では、加工に時間を要して作業効率が悪く、また、加工に時間を要するので、基板上の加工範囲以外の部分にも熱的な影響を与えるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ加工方法は、
レーザによる加工精度を維持しつつ加工時間を短くして、基板への熱的影響を抑制し得るようにするために、
基板にベッセルビームを照射して基板の端面部をレーザ加工する方法であって、
ベッセルビームの照射を前記基板の側面から行い、かつ、照射したベッセルビームと基板の加工位置との相対位置関係を検出しながら加工位置の補正を行いつつ、前記端面部の加工を行うことを最も主要な特徴としている。
【0010】
前記本発明のレーザ加工方法は、
レーザビームを照射するレーザ発振器と、
このレーザ発振器より照射されたレーザビームをベッセルビームに形成する光学部材と、
基板側面から照射した、前記光学部材により形成されたベッセルビームと、基板の加工位置を検出する検出器と、
基板の傾きを検出する検出器と、
これら検出器により検出したベッセルビームと、基板の加工位置及び基板の傾きに基づき、基板、光学部材の少なくとも何れか一つの位置を制御してベッセルビームによる加工位置の補正を行う位置制御装置を備えた、本発明のレーザ加工装置を用いて実施することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、基板の側面からベッセルビームを照射し、かつ、照射したベッセルビームと基板の加工位置と基板との相対位置関係を検出しながら加工位置の補正を行いつつ端面部の加工を行うので、加工精度を維持しつつ効率良く加工することができる。また、加工時間が短くなって、基板への熱的影響が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のレーザ加工に使用するベッセルビームを説明する図である。
【図2】本発明のレーザ加工方法におけるベッセルビームの基板に対する照射状況を説明する図である。
【図3】本発明のレーザ加工装置を使用した本発明のレーザ加工方法を説明する図で、(a)は基板の側面から見た図、(b)は基板の上面から見た端面部の図である。
【図4】本発明のレーザ加工装置を構成するCCDカメラによるベッセルビームの基板上下面側の位置を示した画像を示した図で、(a)は上側に設置したCCDカメラによる画像、(b)は下側に設置したCCDカメラによる画像である。
【図5】本発明のレーザ加工方法の実施時における集塵ノズルによる集塵状態を説明する図である。
【図6】円形の加工スポットを所定の重ね合せ率をもって移動させるレーザ加工方法により、基板の端部を加工する場合を説明した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、加工精度を維持しつつ、加工時間を短くして基板への熱的影響を抑制するという目的を、基板の側面からベッセルビームを照射することで実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明について、図1〜図5を用いて詳細に説明する。
図1、図2は本発明のレーザ加工に使用するベッセルビームとベッセルビームの基板に対する照射状況を説明する図である。
【0015】
レーザビームを照射する際、図1に示すように、プリズム3等の光学部材を用いて形成することができるベッセルビーム4は、焦点深度が深いことが特徴で、基板に対して垂直に照射することで、加工する基板がぶれた場合も精度良く加工できることが知られている。
【0016】
このベッセルビーム4を、図2に示すように、基板1の側面から照射すると、焦点深度が深いことから加工面に対して線状の加工が可能となり、通常のピンポイントによる照射に比べて、加工効率が高く、基板1へのレーザビーム5の照射時間が抑えられる。従って、熱的な負担が低減できる。
【0017】
しかしながら、基板1の側面からベッセルビーム4を照射した場合、ベッセルビーム4の加工位置の裕度が小さいため、ハンドリングが困難となる。
【0018】
そこで、本発明では、レーザ発振器(図示省略)より照射されたレーザビーム5を、例えばプリズム3によりベッセルビーム4に形成して基板1の側面から照射する際に、図3に示すように、例えば基板1の上下位置にCCDカメラ6a、6bを設置するのと共に、例えば基板1の下方位置に傾きセンサー7を設置し、基板1の傾きを検出するのである。
【0019】
このCCDカメラ6a、6bは、図4に示すように、前記照射したベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置を映し出すことができるので、ベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置を検出することができる。
【0020】
レーザ加工時は、プリズム3の位置、CCDカメラ6a、6bの相対位置関係は変化しない。従って、前記検出したベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置により、レーザビーム5とプリズム3との位置決め(プリズム3の中心とレーザビーム5の中心を一致させる)を行い、さらに、基板1の上下面側の位置と、基板1の傾きに基づき、位置制御装置8で例えば基板1を動かし、ベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置を移動させて加工位置の補正を行いつつ、基板1の端面部1aの加工を行うのである。
【0021】
このように、本発明では、ベッセルビーム4を基板1の側面から照射するので、加工面に対して線状の加工が可能となって、通常のピンポイントによる照射に比べて、加工効率が高くなり、基板1へのビームの照射時間を抑えて、熱的な負担が低減できる。
【0022】
そして、その際、ベッセルビーム4の基板1の上面側・下面側の位置と、基板1の位置関係を随時検出して加工位置を補正するので、ベッセルビーム4を基板1の側面から照射する際に、加工位置の裕度が小さいことにより、加工されない部分や加工むらの発生を防止することができる。
【0023】
また、本発明では、図5に示すように、レーザ加工時に集塵装置9を基板1の表面近傍まで近づけて配置することができるので、パーティクル10の除去を効率よく行うことができるという利点もある。
【0024】
上記本発明では、ベッセルビーム4の特性上、ビームが透過しない基板1には適用することができない。よって、ガラス樹脂や樹脂基板(シート・フィルム)など透明なものに限定されることは言うまでもない。
【0025】
具体的には、本発明の適用対象としては、例えば太陽電池や液晶パネルを把持もしくは封止するために、基板の端部の導電性部材を除去するものが考えられる。
【0026】
また、ベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置をCCDカメラ6a、6bで検出する場合、CCDカメラ6a、6bに到達するビーム出力が大きい場合は、CCDカメラ6a、6bが損傷しないような手段を講じる必要がある。
【0027】
例えば、ビーム出力を減衰するフィルター(減衰フィルター)をCCDカメラ6a、6bの直前に設けたり、また、CCDカメラ6a、6bの直前に感光フィルム(ビーム照射位置のみ色が変わる)を設置し、この感光フィルムを撮像する等すれば良い。
【0028】
本発明は、上記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇において、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0029】
例えば上記の例では、ベッセルビーム4の基板1の上下面側の位置を、2台のCCDカメラ6a、6bで検出しているが、1台のCCDカメラで基板1の加工側のみを検出するものでも良い。
【0030】
また、ベッセルビーム4の位置の検出は、CCDカメラ以外でも可能である。ベッセルビーム4の位置検出部におけるビームの大きさは、加工条件にもよるが5mm程度であるので、光センサーや熱センサーを単数又は複数設置し、所定位置にベッセルビーム4が存在するか否かを検出することでベッセルビーム4の位置の検出を行うものでも良い。
【0031】
また、上記の例では基板1を動かし、ベッセルビーム4を移動させて加工位置の補正を行うものを示したが、プリズム3を移動させても良い。また、ベッセルビーム4を形成できる光学部材であれば、プリズム3に限らず、円錐レンズ(アキシコンレンズ)等、公知のものが使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、導電性部材の除去だけでなく、被加工物の端面部にビームを照射する必要のある加工であれば、微細加工等、どのようなレーザ加工にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
1a 端面部
3 プリズム
4 ベッセルビーム
5 レーザビーム
6a、6b CCDカメラ
7 傾き検出センサー
8 位置制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にベッセルビームを照射して基板の端面部をレーザ加工する方法であって、
ベッセルビームの照射を前記基板の側面から行い、かつ、照射したベッセルビームと基板の加工位置との相対位置関係を検出しながら加工位置の補正を行いつつ、前記端面部の加工を行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
基板にベッセルビームを照射して基板の端面部をレーザ加工する装置であって、
レーザビームを照射するレーザ発振器と、
このレーザ発振器より照射されたレーザビームをベッセルビームに形成する光学部材と、
基板側面から照射した、前記光学部材により形成されたベッセルビームと、基板の加工位置を検出する検出器と、
基板の傾きを検出する検出器と、
これら検出器により検出したベッセルビームと、基板の加工位置及び基板の傾きに基づき、基板、光学部材の少なくとも何れか一つの位置を制御してベッセルビームによる加工位置の補正を行う位置制御装置を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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