説明

レーザ加工機

【課題】 レーザ加工機を停止した場合であってもミラー及び集光レンズを収容した光路部内への塵埃混入を抑制し、ミラー及び集光レンズへの塵埃の付着を防止して、レーザ加工機を一旦停止した後の再稼動時においても被加工材を精度良く、かつ効率的に加工できるレーザ加工機を提供する。
【解決手段】 レーザ発振器2と、レーザ発振器2から発振されたレーザ光を反射するミラー12、14,16及びレーザ光を集光する集光レンズ18を有する光路部3と、レーザ発振器2と光路部3とを接続する入射部4とを具備したレーザ加工機1であって、光路部3には、光路部3の内部圧力を外気圧よりも高圧に保持する加圧手段19が具備されるとともに、入射部4には、開閉自在なゲート20が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被加工材にレーザ光を照射して切断や溶接等の加工を行うレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属材料などの被加工材を切断等するレーザ加工機として、レーザ発振器と、このレーザ発振器から出射されたレーザ光を反射するミラー及びレーザ光を集光する集光レンズを備えた光路部とを有するものが提供されている(特許文献1参照)。
このようなレーザ加工機においては、前記ミラー及び前記集光レンズに塵埃等が付着した場合にレーザ光の伝送が妨げられてしまい、レーザ光による加工を精度良く、かつ効率的に行うことができなくなってしまう。そこで、従来、集光レンズ及びミラーを外気から遮断するように光路部内に収容し、この光路部とレーザ発振器とを入射部によって接続したレーザ加工機が提供されている。
【0003】
ところが、前述のように集光レンズ及びミラーを光路部内に収容した場合でも、入射部から光路部内に塵埃が混入して集光レンズ及びミラーに付着することがあった。また、1μm以下の塵埃は、光路部の隙間部分から混入することがあり、これらの塵埃の混入を防止するために光路部の気密性を向上させた場合には、このレーザ加工機の製作コストが高くなってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2では、この光路部内に気体を送気して光路部内の圧力を外気圧より高圧に保持する加圧手段を備えるとともに、送気された気体を入射部から排気するレーザ加工機が提案されている。
この構成のレーザ加工機では、送気された気体が入射部から排気されているので、入射部からの塵埃の混入が防止される。また、光路部内の圧力が外気圧よりも高く保持されているので、光路部の隙間から塵埃が光路部内に混入することが防止される。したがって、光路部内に収容された集光レンズやミラーに塵埃が付着することがなく、レーザ光による加工を精度良く、かつ効率的に行うことができるものである。
【特許文献1】特許第3115648号公報
【特許文献2】特許第3248771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されているレーザ加工機では、前記加圧手段を停止して光路部内への送気を中止した場合には、光路部内の圧力が外気圧と同等となるため、光路部内に塵埃が混入するおそれがあった。
また、レーザ発振器を停止してレーザ発振器周辺の温度が低下した際に、レーザ発振器のカバー内部のガスが収縮して、塵埃が外気とともにカバー内に侵入することになる。レーザ発振器のカバー内に侵入した塵埃は、入射部を通じて光路部内に混入してミラー及び集光レンズに付着してしまうことがあった。
【0006】
レーザ加工機を停止した場合でも前記加圧手段を稼動させておくことにより光路部内への塵埃混入を防止できるが、省エネルギーの観点から問題があった。
このように、レーザ加工機を一旦停止した後に再稼動させた場合に、集光レンズ及びミラーに塵埃が付着してレーザ光の伝送が阻害され、このレーザ加工機による加工を精度良く、かつ効率的に行うことができなくなってしまうことがあった。
【0007】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、レーザ加工機を停止した場合であってもミラー及び集光レンズを収容した光路部内への塵埃混入を抑制し、ミラー及び集光レンズへの塵埃の付着を防止して、レーザ加工機を一旦停止した後の再稼動時においても被加工材を精度良く、かつ効率的に加工できるレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、レーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射するミラー及び前記レーザ光を集光する集光レンズを有する光路部と、前記レーザ発振器及び前記光路部を接続する入射部とを具備したレーザ加工機であって、 前記光路部には、該光路部の内部圧力を外気圧よりも高圧に保持する加圧手段が具備されるとともに、前記入射部には、開閉自在なゲートが設けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成のレーザ加工機においては、集光レンズ及びミラーが光路部内に収容され、この光路部内の圧力を外気圧よりも高くするための加圧手段が備えられるともに、入射部に開閉自在なゲートが設けられているので、加圧手段を停止する際にゲートを閉止することで、加圧手段停止後における入射部から光路部内への塵埃混入を抑制でき、光路部内に収容された集光レンズ及びミラーに塵埃が付着することを防止できる。したがって、加圧手段を停止した後にこのレーザ加工機を再稼動した場合でも、このレーザ加工機によって被加工材を精度良く、かつ効率的に加工することができる。
【0010】
ここで、前記ゲートに、ゲート開口部を閉止する閉止部材を具備するとともに、前記ゲート開口部の外周縁に、シール部材を配置することにより、ゲート開口部を、シール部材と閉止部材とを密着させることで密封することができ、塵埃の混入を確実に防止することができる。
【0011】
また、前記光路部内の圧力を外気圧よりも高圧とした状態で、前記ゲートを閉止することにより、前記加圧手段を停止しても光路部内の圧力を外気圧よりも高い状態に保持できるので、光路部内への塵埃の混入をさらに確実に防止することができる。
【0012】
また、前記ゲートを単動シリンダによって開閉し、前記単動シリンダに前記加圧手段を接続して、前記加圧手段を停止した際に前記ゲートが閉止されるように構成することにより、加圧手段の停止動作に連動してゲートが閉止されるので、加圧手段の停止した際に確実にゲートが閉止され、ゲートの閉め忘れによる塵埃の混入を防止できる。
【0013】
また、前記ゲートを、前記シール部材に向けて前記閉止部材を前記ゲート開口部の形成された面に垂直な方向から押圧することによって閉止することにより、ゲートを確実に閉止できるとともに、シール部材と閉止部材とが強く押圧された状態で摺動することがなくなるので、シール部材の寿命延長を図ることができる。
【0014】
また、前記閉止部材に、前記ゲート開口部を閉止する際には、前記シール部材を前記ゲート開口部の形成された面に垂直な方向から押圧し、前記ゲート開口部を開放する際には、前記閉止部材を前記シール部材から漸次離間する開閉手段を設けることにより、シール部材の劣化を防止することができる。なお、シール部材と閉止部材とが離間する場合には、シール部材に閉止部材が強く押圧されていないため、漸次離間するようにしてもシール部材が早期に劣化するおそれがない。
【0015】
ここで、前述した開閉手段として、対向配置されて互いに回転して摺動する第1の摺動部材と第2の摺動部材とからなり、これら第1及び第2の摺動部材の互いに対向する面には、第1環状摺動部と、該第1環状摺動部と同心円状に配置された第2環状摺動部とが形成され、前記第1の摺動部材に形成された前記第1環状摺動部と前記第2環状摺動部とは周方向に相対移動可能とされており、これら第1又は第2の摺動部材に形成された一方の前記第1環状摺動部に、対向する側に向かって広がるように傾斜した傾斜壁面を有する第1凹部が形成されるとともに、他方の前記第1環状摺動部に、前記傾斜壁面と摺動可能な傾斜面を有する第1凸部が形成され、前記第1又は前記第2の摺動部材に形成された一方の前記第2環状摺動部に、前記第1凹部の開口部がなす円弧の中心角よりも小さな中心角の円弧状とされた開口部を有する第2凹部が形成されるとともに、他方の前記第2環状摺動部に、前記第2凹部に収容可能な第2凸部が形成され、前記閉止部材を閉止方向に回転した際には、前記第2凹部と前記第2凸部とが嵌合することにより、これら第1及び第2の摺動部材が互いに近接し、前記閉止部材を開放方向に回転した際には、前記第1凹部の前記傾斜壁面及び前記第1凸部の前記傾斜面とが摺動することにより、これら第1及び第2の摺動部材が漸次離間するように構成したものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、レーザ加工機を停止した場合であってもミラー及び集光レンズを収容した光路部内への塵埃混入を抑制し、ミラー及び集光レンズへの塵埃の付着を防止して、停止後の再稼動時においても被加工材を精度良く、かつ効率的に加工できるレーザ加工機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1に本発明の実施形態であるレーザ加工機を示す。
レーザ加工機1は、レーザ光を発振するレーザ発振器2と、レーザ光を反射する複数のミラー12、14,16及びレーザ光を集光する集光レンズ18を備えた光路部3と、レーザ発振器2及び光路部3を接続する入射部4とを有している。
【0018】
レーザ発振器2は、レーザ光を一定方向に向けて発振するものであり、本実施形態においては、図1に示すX方向に向けてレーザ光を発振できるようにされている。
入射部4は、レーザ発振器2から発振されるレーザ光の光軸に平行に延びる断面概略長方形筒状に形成されており、光路部3の一端の側面に接続されている。
【0019】
光路部3は、入射部4に対して直角に延びる断面概略長方形筒状に形成された光路部本体10を有しており、光路部本体10の一端側の入射部4が接続された部分には固定ミラーブロック11が固定されている。この固定ミラーブロック11には固定ミラー12が収容されており、入射部4から入射されたレーザ光を光路部本体10の長手方向に向けて略90°回転させるものである。
また、光路部本体10の他端側には、反転ミラーブロック13が光路部本体10の長手方向に移動可能に配置されており、この反転ミラーブロック13には、固定ミラーブロック11からのレーザ光を略180°反転させる反転ミラー14が収容されている。
【0020】
これら固定ミラーブロック11と反転ミラーブロック13の間には、導入ミラーブロック15が光路部本体10の長手方向に移動可能に配置されており、この導入ミラーブロック15には、光路部本体10の長手方向に垂直でかつ下方に向けて延びる加工ヘッド17が備えられており、反転ミラーブロック13からのレーザ光を加工ヘッド17へと導入する導入ミラー16が収容されている。
加工ヘッド17には、集光レンズ18が収容されており、導入ミラー16からのレーザ光を集光してレーザ光を被加工材に照射する構成とされている。
【0021】
また、このレーザ加工機1には加圧手段としてコンプレッサ19が備えられており、このコンプレッサ19から、流量弁を介して、前述した固定ミラーブロック11、反転ミラーブロック13及び導入ミラーブロック15にパージガスが供給される構成とされている。なお、本実施形態においては、パージガスとして塵埃等を除去した清浄空気を使用している。
【0022】
そして、入射部4には、開閉可能なゲート部20が形成されている。図1から図3に示すように、このゲート部20は、断面円形でレーザ発振器2から発振されるレーザ光の光軸(図1に示すX方向)に対して垂直に延びる壁面に設けられたゲート開口部21と、このゲート開口部21を閉止する閉止部材22と、この閉止部材22を開閉させる動作手段としての単動シリンダ23とを有している。
【0023】
閉止部材22を開閉させる単動シリンダ23は、この単動シリンダ23のロッド24が突出された際にゲート部20が開放され、ロッド24が収容された際にゲート部20が閉止されるように構成されている。
この単動シリンダ23は、ロッド24が接続されたシリンダブロック25を下方に向けて、つまりロッド24を収容する方向に向けて付勢するバネ材26と、このシリンダブロック25の下方に設けられたエア室27とを有している。このエア室27には、前述したコンプレッサ19に接続されたエア配管28が設けられており、コンプレッサ19からパージエアがエア室27に供給されるように構成されている。
【0024】
また、このゲート開口部21の外周縁には、シール部材としてゴムパッキン29が配置されている。閉止部材22には回転部材30が備えられており、単動シリンダ23のロッド24の進退によって回転部材が回転される構成とされている。
ゲート開口部21を閉止部材22で閉止する際には、単動シリンダ23のロッド24を後退させることにより、前記回転部材を閉止方向(図2に図示するA方向)に回転させ、閉止部材22がゴムパッキン29をレーザ発振器2から発振されるレーザ光の光軸方向(図1に示すX方向)から押圧する。一方、このゲート開口部21を開放する際には、単動シリンダ23のロッド24を進出させることにより、前記回転部材を開放方向(図3に図示するB方向)に回転させ、閉止部材22がゴムパッキン29から漸次離間していき、ゲート開口部21が開放される。
【0025】
回転部材30の詳細を図4及び図5に示す。この回転部材30は、互いに摺動する一対のリング部材31を有しており、一方のリング部材31Aは、ゲート開口部21が設けられた壁面に固定され、他方のリング部材31Bは、閉止部材22に固定されており、他方のリング部材31Bの一方のリング部材31A側の反対側には、この他方のリング部材31Bを一方のリング部材31A側へ付勢するスプリング32が配置されている。これら一方のリング部材31A及び他方のリング部材31Bには軸部33が挿通されており、一方のリング部材31Aと他方のリング部材31Bとが回転可能に接続されている。
【0026】
一方のリング部材31Aには他方のリング部材31B側に向けて突出した第1環状摺動部34Aが形成されており、この第1環状摺動部34Aには、他方のリング部材31B側の反対側に向けて凹んだ第1凹部35が形成されており、この第1凹部35の一方の壁面は第1環状摺動部34Aの端面(摺動面)に対して垂直に延びる垂直壁面とされ、他方の壁面は前記端面に近づくに従い漸次広がるように傾斜した傾斜壁面36とされている。
【0027】
また、この第1環状摺動部34Aの外周側には、第1環状摺動部34Aと同心円状に配置された第2環状摺動部37Aが形成されている。この第2環状摺動部37Aには、他方のリング部材31B側の反対側に向けて凹んだ第2凹部38が形成されており、この第2凹部38の二つの壁面は第2環状摺動部37Aの端面(摺動面)に対して垂直に延びる垂直壁面とされている。この第2凹部38の端面開口部がなす円弧の中心角は、第1凹部35の端面開口部がなす円弧の中心角よりも小さくされている。
この第2環状摺動部37Aは、第1環状摺動部34Aに対して周方向に移動可能とされており、第2環状摺動部37Aの側面にガイド孔39が形成され、このガイド孔39にピン40が挿通され、第2環状摺動部37Aの移動が規制されるとともに、第2環状摺動部37Aを初期の位置に戻すための戻りバネ41が具備されている。
【0028】
他方のリング部材31Bには、一方のリング部材31Aに設けられた第1環状摺動部34Aと第2環状摺動部37Aとに対応するように、第1環状摺動部34Bと第2環状摺動部37Bとが形成されている。この第1環状摺動部34Bには、第1凹部35の傾斜壁面36と摺動可能な傾斜面43を有して第1凹部35に嵌合可能な第1凸部42が形成されており、第2環状摺動部37Bには、第2凹部38と嵌合可能な第2凸部44が形成されている。また、これら他方のリング部材31Bに形成された第1環状摺動部34Bと第2環状摺動部37Bとは周方向に相対移動しないように固定されている。
【0029】
この回転部材30の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
まず、この回転部材30を回動させて、閉止部材22をゲート開口部21に押圧してゲートを閉止する際の回転部材30の動作について説明する。
他方のリング部材31Bに形成された第1凸部42が、一方のリング部材31Aの第1環状摺動部34Aの端面上に配置されており、一方のリング部材31Aと他方のリング部材31Bとが離間した状態でA方向に向けて回転される(図6(a)、(b))。第1凸部42が第1凹部35に差し掛かった時点で他方のリング部材31Bが僅かに一方のリング部材31A側に移動するが、他方のリング部材31Bに形成された第2凸部44が、一方のリング部材31Aの第2環状摺動部37Aの端面上に当接される(図6(c))。さらに回転を継続していき、第2凸部44が第2凹部38に入り込むように移動して、第2凸部44と第2凹部38とが嵌合されることにより、一方のリング部材31Aと他方のリング部材31Bとが密着することになる(図6(d))。
【0030】
次に、閉止部材22をゲート開口部21から漸次離間するようにして、ゲートを開放する際の回転部材30の動作について説明する。
他方のリング部材31Bを図7のB方向に向けて回転すると、一方のリング部材31Aに形成された第2環状摺動部37Aが、第2凸部44と第2凹部38とが嵌合された状態で第1環状摺動部34Aに対して相対移動されるとともに、第1凸部42の傾斜面43と第1凹部35の傾斜壁面36とが摺動することにより、他方のリング部材31Bが一方のリング部材31Aより漸次離間されていくことになる。
ここで、他方のリング部材31Bと一方のリング部材31Aとが離間した際に、第2凸部44が第2凹部38から外れ、戻りバネ41によって一方のリング部材31Aに形成された第2環状摺動部37Aが初期の位置に戻される。
【0031】
本実施形態であるレーザ加工機1は、レーザ発振器2から入射部4に向けてレーザ光を発振し、このレーザ光を固定ミラー12で光路部本体10の長手方向に反射させ、反転ミラー14によって180°回転させ、反転ミラー14によって反射されたレーザ光を、導入ミラー16によって加工ヘッド17へと伝送し、集光レンズ18によって集光したレーザ光を加工ヘッド17から被加工材に向けて照射し、被加工材の切断や溶接等を行うものである。
【0032】
ここで、加工ヘッド17を備えた導入ミラーブロック15は、光路部本体10の長手方向に移動可能とされており、被加工材を固定した状態で加工することができるものである。また、反転ミラーブロック13は、導入ミラーブロック15の移動に同期して導入ミラーブロック15の移動量の1/2移動する構成とされており、レーザ光の光路長が一定に保持されている。
【0033】
次に、本実施形態であるレーザ加工機1の稼動方法及び停止方法について説明する。
レーザ加工機1を稼動する際には、まず、コンプレッサ19を稼動させてパージガスを光路部3内へ供給する。光路部3内の圧力Pが外気圧Pよりも高圧のPとなった時点でゲート部20の開口を開始して、光路部3内の圧力PがP(P>P)となった時点で完全に開口され、レーザ発振器2から発振されたレーザ光が光路部3内に入射可能とされる。
【0034】
レーザ加工機1を停止する際には、コンプレッサ19を停止させ、光路部3内の圧力Pが低下していき、光路部3内の圧力PがPとなった時点でゲート部20の閉止を開始して、光路部3内の圧力PがPとなった時点で完全に閉止する。このようにして、コンプレッサ19停止後も光路部3内の圧力Pを外気圧Pよりも高圧のPで保持することができる。
このようなゲート部20の動作は、前述した単動シリンダ23の設定により調整可能である。詳述すると、単動シリンダ23に備えられたバネ材26のバネ定数K、シリンダストロークL、シリンダ受圧面積Sを、K×L=S×Pの関係を満たすように設定することで、前述の開閉動作が可能となるのである。
【0035】
この構成のレーザ加工機1においては、集光レンズ18及びミラーが光路部3内に収容され、この光路部3内を外気圧よりも高圧とするためのコンプレッサ19が備えられるともに、入射部4に開閉自在なゲート部20が設けられているので、コンプレッサ19を停止する際にゲート部20を閉止することで、コンプレッサ19停止後の入射部4から光路部3内への塵埃混入を抑制でき、光路部3内に収容された集光レンズ18及びミラーに塵埃が付着することを防止できる。したがって、コンプレッサ19を停止した後にこのレーザ加工機1を再稼動した場合でも、このレーザ加工機1によって被加工材を精度良く効率的に加工することができる。
【0036】
ここで、閉止部材22の開閉手段として、単動シリンダ23が配置されており、この単動シリンダ23に、閉止部材22を閉止方向に回転させるように付勢するバネ材26と、閉止部材22を開放方向に回転させるように押圧するエア室27とを設けており、このエア室27に、コンプレッサ19からパージガスが供給されているので、コンプレッサ19稼動時にはゲート部20を開放しておき、コンプレッサ19停止時には、ゲート部20が自動的に閉止される構成とされている。したがって、コンプレッサ19停止時に確実にゲート部20が閉止され、ゲート部20の閉め忘れによる塵埃の混入を防止できる。
【0037】
また、光路部3内の圧力Pが外気圧Pまで低下する前にゲート部20を閉止することとなるので、コンプレッサ19を停止しても光路部3内の圧力Pを外気圧Pよりも高圧に保持され、光路部3内への塵埃の混入を確実に防止することができる。
さらに、開閉手段が単動シリンダ23によって構成されており、この開閉手段の制御を簡単に行うことができる。
【0038】
また、ゲート開口部21の外周縁にゴムパッキン29が配置されているので、閉止部材22によってゴムパッキン29を押圧することにより、光路部3を密封することができ、塵埃の混入を確実に防止できる。
ここで、本実施形態では前述した回転部材30を採用しているので、ゲート開口部21を閉止する際には、閉止部材22がゲート開口部21の周縁部に配置されたゴムパッキン29と接触することなく、ゲート開口部21を遮断する位置まで回転された後に、閉止部材22がゲート開口部21側へ近接してゴムパッキン29を押圧することになり、ゴムパッキン29をゲート開口部21が形成された面に垂直な方向から閉止部材22で押圧することができる。また、ゲート開口部21を開放する際には、閉止部材22が回転されるとともに、ゲート開口部21から漸次離間することになる。したがって、ゴムパッキン29と閉止部材22とが強く押圧された状態で摺動することがなく、ゴムパッキン29の早期劣化を防止して寿命延長を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、レーザ発振器2からのレーザ光が通過される入射部4と光路部本体10とが略90°に交差するように配置されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、光路部本体10と入射部4とがなす角度は任意のものとすることができる。
【0040】
また、ゲート開口部21の外周縁にゴムパッキン29を配置したもので説明したが、他のシール部材を採用してもよいし、シール部材を必ず配置する必要はない。ただし、ゴムパッキン29などのシール部材を配置することにより、ゲート部20を密封することができるので好ましい。
【0041】
また、光路部3内の圧力PがPとなった時点でゲート部20の閉止を開始して、光路部3内の圧力PがPとなった時点で完全に閉止するように単動シリンダ23を設定したもので説明したが、これに限定されることはなく、例えば、ピストンを両側から加圧してロッドを作動させるシリンダを使用しても良い。
ただし、本実施形態のような構成とすることにより、コンプレッサ19と連動して閉止部材22を閉止できるとともに、光路部3内の圧力Pを適正範囲内で調整でき、光路部3内が過度に高圧になってミラー及び集光レンズ18等が破損することを防止できるので、単動シリンダ23を使用することが好ましい。
【0042】
また、閉止部材22の回転部材30として、用いて説明したが、これに限定されることはなく、他の回転部材30を使用してもよい。また、閉止部材22を回転移動させるものに限定されることはなく、例えば、閉止部材22が垂直移動してゲート開口部21を閉止するものであってもよい。
【0043】
また、本実施形態であるレーザ加工機1に、ゲート部20の開閉動作の異常を検知して通報する警報手段を備えてもよい。この警報手段を備えることにより、ゲート部20が閉止した状態でレーザ光を発振したり、ゲート部20が解放されたままでコンプレッサ19が停止して光路部3内の圧力Pが外気圧Pと同じになったりすることを防止できるので好ましい。
さらに、ゲート部20が閉止された状態では、レーザ光の発振を無効とする制御手段を備えてもよい。この制御手段を備えることにより、ゲート部20を閉止した状態でレーザ光が発振され、閉止部材22にレーザ光が照射されて閉止部材22が変形するトラブルを防止することができるため好ましい。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の効果を確認するために行った測定実験結果について説明する。
本発明例として、前記実施形態に示した構成のレーザ加工機を、比較例として、ゲート部を有しておらず他の構成については前記実施形態と同一としたレーザ加工機を試験に供した。
そして、コンプレッサ停止(OFF)後の光路部内の塵埃個数の変化を測定した。図8に、サイズ1.0μmの塵埃の個数を測定した結果を示す。図9に、サイズ0.3μmの塵埃の個数を測定した結果を示す。なお、図8及び図9には、参考として大気中の塵埃個数についても記載した。
【0045】
図8に示すように、サイズ1.0μmの塵埃については、比較例では、コンプレッサ停止から10分経過で約30個が確認されたが、本発明例では、1000分経過後でも確認されなかった。
また、図9に示すように、サイズ0.3μmの塵埃については、比較例では、コンプレッサ停止から10分経過で約3000個が確認されたが、本発明例では、1000分経過後でも8個が確認されたのみであった。
【0046】
このように本発明に係るレーザ加工機によれば、コンプレッサ停止後においても、光路部内への塵埃の混入を確実に防止でき、光路部内に収容されたミラー及び集光レンズへの塵埃の付着を防止して、被加工材を精度良く効率的に加工することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態であるレーザ加工機の斜視図である。
【図2】図1に示すレーザ加工機に備えられたゲート開口部の閉止状態を示す説明図である。
【図3】図1に示すレーザ加工機に備えられたゲート開口部の開放状態を示す説明図である。
【図4】図1に示すレーザ加工機に備えられた閉止部材を回転移動させる回転部材の断面図である。
【図5】図1に示すレーザ加工機に備えられた閉止部材を回転移動させる回転部材に備えられた第1リング部材の上面図である。
【図6】図4及び図5に示す開閉部材を閉止方向に回動した場合の動作を示す説明図である。
【図7】図4及び図5に示す開閉部材を開放方向に回動した場合の動作を示す説明図である。
【図8】測定実験結果を示す図である(塵埃サイズ1.0μm)。
【図9】測定実験結果を示す図である(塵埃サイズ0.3μm)。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザ加工機
2 レーザ発振器
3 光路部
4 入射部
19 コンプレッサ(加圧手段)
20 ゲート部(ゲート)
21 ゲート開口部
22 閉止部材
23 単動シリンダ
29 ゴムパッキン(シール部材)
30 回転部材(開閉手段)
31 リング部材(摺動部材)
34A、34B 第1環状摺動部
35 第1凹部
36 傾斜壁面
37A、37B 第2環状摺動部
38 第2凹部
42 第1凸部
43 傾斜面
44 第2凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射するミラー及び前記レーザ光を集光する集光レンズを有する光路部と、前記レーザ発振器及び前記光路部を接続する入射部とを具備したレーザ加工機であって、
前記光路部には、該光路部の内部圧力を外気圧よりも高圧に保持する加圧手段が具備されるとともに、前記入射部には、開閉自在なゲートが設けられていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工機であって、
前記ゲートには、ゲート開口部を閉止する閉止部材が具備されるとともに、前記ゲート開口部の外周縁に、シール部材が配置されていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレーザ加工機であって、
前記光路部内の圧力を外気圧よりも高圧とした状態で、前記ゲートを閉止することを特徴とするレーザ加工機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のレーザ加工機であって、
前記ゲートは、単動シリンダによって開閉され、前記単動シリンダは、前記加圧手段に接続されており、前記加圧手段を停止することにより、前記ゲートが閉止される構成とされていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載のレーザ加工機であって、
前記閉止部材が、前記シール部材を前記ゲート開口部の形成された面に垂直な方向から押圧することにより、前記ゲート開口部が閉止されることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工機であって、
前記閉止部材に、前記ゲート開口部を閉止する際には、前記シール部材を前記ゲート開口部の形成された面に垂直な方向から押圧し、前記ゲート開口部を開放する際には、前記閉止部材を、前記シール部材から漸次離間する開閉手段が設けられていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工機であって、
前記開閉手段は、対向配置されて互いに回転して摺動する第1の摺動部材と第2の摺動部材とからなり、これら第1及び第2の摺動部材の互いに対向する面には、第1環状摺動部と、該第1環状摺動部と同心円状に配置された第2環状摺動部とが形成され、
前記第1の摺動部材に形成された前記第1環状摺動部と前記第2環状摺動部とは周方向に相対移動可能とされており、
これら第1又は第2の摺動部材に形成された一方の前記第1環状摺動部に、対向する側に向かって広がるように傾斜した傾斜壁面を有する第1凹部が形成されるとともに、他方の前記第1環状摺動部に、前記傾斜壁面と摺動可能な傾斜面を有する第1凸部が形成され、
前記第1又は前記第2の摺動部材に形成された一方の前記第2環状摺動部に、前記第1凹部の開口部がなす円弧の中心角よりも小さな中心角の円弧状とされた開口部を有する第2凹部が形成されるとともに、他方の前記第2環状摺動部に、前記第2凹部に収容可能な第2凸部が形成され、
前記閉止部材を閉止方向に回転した際には、前記第2凹部と前記第2凸部とが嵌合することにより、これら第1及び第2の摺動部材が互いに近接し、
前記閉止部材を開放方向に回転した際には、前記第1凹部の前記傾斜壁面及び前記第1凸部の前記傾斜面とが摺動することにより、これら第1及び第2の摺動部材が漸次離間するように構成されていることを特徴とするレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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