説明

レーザ加工機

【課題】加工能率を向上させることができるレーザ加工機を提供する。
【解決手段】テーブル2表面に内部の空間部と連通する穴を備え、空間部を負圧源に接続することによりテーブル表面にワークを吸着するようにしたレーザ加工機において、これらテーブル内部の空間部を大気圧または負圧源1に接続する圧力切り替え装置6を設け、この圧力切り替え装置6をテーブルに配置する。圧力切り替え装置6は、負圧源に接続された空間部R1と、テーブル内部の空間部と連通した空間部R21,R22と、これら空間部R1及びR21,R22間に設けられた圧力切替室R3,R4を有し、シャッタ25a,25bによって圧力切替室R3,R4を、空間部R1もしくは大気のどちらか一方に選択的に連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル表面に内部の空間部と連通する穴を備え、前記空間部を負圧源に接続することによりテーブル表面にワークを吸着するようにしたレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板(以下、「ワーク」という)に穴を加工するレーザ加工機は、ワークをテーブル上に吸着させることにより固定する。これらレーザ穴あけ加工されるワークの大きさは様々であるので、従来、例えばテーブル本体の内部を仕切り部材で仕切り、ワークに合わせてワーク吸着領域を変更できるようにしたレーザ加工機が案出されている(特許文献1参照)。このようにすると、ワークをテーブルに対して確実に吸着できるだけでなく、真空源を効率よく動作させることができる。
【0003】
また、1台のレーザ加工機に複数のレーザ照射部を設けると共に、テーブル上に複数のワークを配置しておき、複数のワークをほぼ同時に加工するようにして加工能率を向上させたレーザ加工機もある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−334593号公報
【特許文献2】特開2000−263271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した真空源を用いてワークを固定するレーザ加工機の場合、ワークをテーブルから取り外すためには、テーブル内部の空間部の圧力(負圧)を大気圧に近い値にする必要があるが、上記特許文献1及び2記載のレーザ加工機は電磁弁を設け、この電磁弁を作動させてテーブル内部の空間部を大気と接続することによって、ワークをテーブルから取り外している。
【0006】
上記電磁弁は、テーブル内部の空間部と大気とを断接することによって、ワークをテーブルに固定したり、取り外したり可能にしているが、テーブルから離れた位置に配設され、ホースによってテーブル内部の空間部と接続されている。このホースは、電磁弁毎に少なくも1本は必要であり、テーブルが移動及び停止する際に振動してしまう。
【0007】
そのため、テーブルが加工位置で停止したとしても、ホースの振動はすぐには収まらず、この振動の収まる前に加工を開始すると、ホースの振動がテーブルに伝わって加工精度が低下する。一方、ホースの振動が収束するまで待機すると加工能率が低下する。
【0008】
特にホースの口径が大きいと、その剛性及び質量が大きいため、テーブルに伝わる振動が大きくなり、加工精度及への影響も大きくなる。また、その収束までの時間も長くなり、加工能率も低下する。
【0009】
そこで、本発明は、加工能率及び加工精度を向上させることが可能なレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ワークを載置するテーブル(2)表面に内部の空間部(2A,2B)と連通する穴(2b)を備え、前記空間部(2A,2B)を負圧源(1)に接続することにより前記テーブル(2)表面にワークを吸着するようにしたレーザ加工機において、
前記空間部(2A,2B)を大気または前記負圧源(1)に接続する圧力切り替え装置(6)を設け、この圧力切り替え装置(6)を前記テーブル(2)に配置したことを特徴とするレーザ加工機にある。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記圧力切り替え装置(6)は、前記負圧源(1)に接続された負圧室(R1)と、前記テーブル(2)内部の空間部(2A,2B)に連通していると共に、前記負圧室(R1)及び大気に接続する圧力切替室(R3,R4)と、前記圧力切替室(R3,R4)を前記負圧室(R1)もしくは大気のどちらか一方に選択的に接続させるシャッタ部材(25a,25b)と、前記シャッタ部材(25a,25b)を駆動させるシャッタ部材駆動手段(7a,7b)と、前記シャッタ部材(25a,25b)の駆動を制御するシャッタ部材制御手段(6a)と、を有してなる、
請求項1記載のレーザ加工機にある。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記圧力切替室(R3,R4)は、前記シャッタ部材(25a,25b)を内装すると共に、前記負圧室(R1)に接続する第1の貫通穴(30a,30c)と、前記大気に接続する第2の貫通穴(31a,31b)とを有し、
前記シャッタ部材(25a,25b)を、前記第1の貫通穴(30a,30c)を開放させると共に、前記第2の貫通穴(31a,31b)を閉鎖する開位置と、前記第1の貫通穴(30a,30c)を閉鎖すると共に、前記第2の貫通穴(31a,31b)を開放させる閉位置とに切替自在に構成した、
請求項2記載のレーザ加工機にある。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記レーザ加工機は複数の前記テーブル(2)内部の空間部(2A,2B)を有すると共に、前記圧力切り替え装置(6)は、1つの前記負圧室(R1)と、これら複数のテーブル(2)内部の空間部(2A,2B)に対応した数の前記圧力切替室(R3,R4)及び前記シャッタ部材(25a,25b)とを有してなる、
請求項2又は3記載のレーザ加工機にある。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記圧力切り替え装置(6)は、前記テーブル(2)の下面に取付けられてなる、
請求項1乃至4記載のレーザ加工機にある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、圧力切り替え装置をテーブルに直接配設したので、圧力切替のためのホースを不必要とすることができ、それにより、テーブルが加工位置に停止してすぐにワークに穴あけ加工を始めて加工能率を向上させることができる。また、ホースの振動がテーブルに伝わらないため加工精度も向上させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、電磁弁に比して大口径のシャッタ部材によりテーブル内部の空間部の圧力を切り替えたことによって、テーブル内部の空間部の圧力を速やかに切り替えることができるため、加工能率が向上した。
【0017】
請求項3に係る発明によると、シャッタを圧力切替室に内装し、このシャッタ部材を移動させて負圧室に接続する第1の貫通穴と、大気に接続する第2の貫通穴とのどちらか一方を選択的に閉鎖し、テーブル内部の空間の圧力を切り替えることによって、圧力切り替え装置を簡単な構成とすることができた。
【0018】
請求項4に係る発明によると、レーザ加工機が複数のテーブル内部の空間部を有していても、圧力切り替えのためのホースを不必要とすることができ、特許文献1記載のような各テーブル内部の空間部ごとに複数のホースが必要なレーザ加工機のように、いちいちホースを取り纏める必要がないと共に、これら複数のホースの振動によって加工能率及び加工精度が低下することもない。
【0019】
請求項5に係る発明によると、圧力切り替え装置をテーブルの下面に配設することによって、シンプルな構造になると共に、例えばワークの取り付け、取り外しを阻害したり、作業の邪魔になったりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図面に基づいて本願発明に係るレーザ加工機の実施の形態について説明をする。図1は本発明に係るレーザ加工機の空気配管図である。テーブル2は、XY方向に移動自在に構成されていると共に、仕切り2aにより内部に2つに区分けされた空間部2A、2Bを有している。テーブル2の表面には、これら空間部2A、2Bに連通する複数の貫通穴2b・・・が設けられており、空間部2A、2Bを負圧にすることで2つのワークを固定可能である。空間部2A、2Bは圧力切り替え装置6及びホース15を介して負圧源1に接続されている。圧力切り替え装置6はテーブル2の下面に直接取付けられている。圧力計5a〜5cは空間部2A、2Bおよびホース15内部の圧力を表示する。なお、本実施形態では、仕切り2aによってテーブル内部の空間部2A,2Bを2つに分割したが、この空間部は更に細分化されてもよく、また、内部に空間部を有した複数のテーブルをつなげた構成としてもよい。
【0021】
次に、圧力切り替え装置6について説明する。図2は本発明に係るレーザ加工機のテーブルの下側から見た圧力切り替え装置6付近の平面断面図であり、図3は図2におけるA−A断面図、図4は図2におけるB−B断面図である。
【0022】
図2に示すように、圧力切り替え装置6の内部は空間部(負圧室)R1と、上記テーブル2内部の空間部2A,2Bに連通した予備室としての空間部R21及び空間部R22とに分割されている。空間部R1と空間部R21との間には隔壁20a、20bと、テーブル2内部の空間部2Aの圧力を切り替える圧力切替室である隔壁20a、20b間の間隙R3と、この間隙R3に内装されたシャッタ(シャッタ部材)25aとが配置されている。また、空間部R1と空間部R22との間には隔壁20c、20dと、テーブル2内部の空間部2Aの圧力を切り替える圧力切替室である隔壁20c、20d間の間隙R4と、この間隙R4に内装されたシャッタ(シャッタ部材)25bとが配置されている。上記隔壁20a、20bとシャッタ25aとの間隔および隔壁20c、20dとシャッタ25bとの間隔はほとんど0である。
【0023】
隔壁20aと隔壁20bには、互いに対向する位置に貫通穴30a,30bがそれぞれ形成されており、貫通穴30aが、負圧室である空間部R1と、圧力切替室である間隙R3とを接続する第1の貫通穴となっている。隔壁20cと隔壁20dには、互いに対向する位置に貫通穴30c,30dがそれぞれ形成されており、貫通穴30cも、負圧室である空間部R1と、圧力切替室である間隙R4とを接続する第1の貫通穴となっている。
【0024】
また、隔壁20bにはシャッタ25aが収納される隔壁20a,20b間の間隙R3の後方側R3に連通した貫通穴21bが形成されており、この隔壁20a,20b間の間隙の後方側R3には大気と接続する貫通穴31aが形成されている。そのため、貫通穴31aは、圧力切替室である間隙R3と大気とを接続する第2の貫通穴となっている。
【0025】
同様に、隔壁20dにはシャッタ25bが収納される隔壁20c,20d間の間隙の後方側R4に連通した貫通穴21dが形成されており、この隔壁20c,20d間の間隙の後方側R4(図2のシャッタ25bが格納されている部分)には大気と接続する貫通穴31bが形成されている。そのため、貫通穴21dも、圧力切替室である間隙R4と大気とを接続する第2の貫通穴となっている。
【0026】
シリンダ(シャッタ部材駆動手段)7a,7bは、シャッタ部材制御手段6a(図1参照)からの信号を受けてそれぞれシャッタ25a,25bを動作させ、空間部R1はホース15を介して負圧源1に接続されている。空間部R21は貫通穴35によってテーブル2の空間部2Aに連通している。また、空間部R22は貫通穴36によってテーブル2の空間部2Bに連通している。
【0027】
上記シャッタ25a,25bは、第1の貫通穴30a,30cを開放させ、第2の貫通穴31a,31bを閉鎖する開位置(例えば図2のシャッタ25bの位置)と、第1の貫通穴30a,30cを閉鎖すると共に、第2の貫通穴31a,31bを開放させる閉位置(例えば図2のシャッタ25aの位置)とにそれぞれ独立して切替自在に構成されている。
【0028】
シャッタ25bが開位置の場合、図2及び図3に示すように、シャッタ25bの先端側とケース22との間(隔壁20c,20d間の間隙の前方側)R4には空隙が形成され、第1の貫通穴30cが開放される。
【0029】
また、シャッタ25aが閉位置の場合、図2及び図4に示すように、シャッタ25aの後端側(シリンダ7a側)とケース22との間(隔壁20a,20b間の間隙の後方側)R3には空隙が形成され、第2の貫通穴31aが開放される。
【0030】
なお、これらシャッタ25a,25bは、同様の動作をするため、シャッタ25aが開位置の場合、シャッタ25aの先端側とケース22との間(隔壁20a,20b間の間隙の前方側)R3に空隙が形成され、シャッタ25bが閉位置の場合、シャッタ25bの後端側(シリンダ7b側)とケース22との間(隔壁20c,20d間の間隙の後方側)R4に空隙が形成される。
【0031】
また、圧力切替室R4(R3)は、シャッタ25b(25a)が開位置の場合は、貫通穴30d(30b)が予備室R22(R21)と連通し、この予備室R22(R21)及び貫通孔36(35)を介してテーブル内部の空間2B(2A)と連通している。更に、圧力切替室R3(R4)は、シャッタ25a(25b)が開位置の場合は、貫通穴21b(21d)が予備室R21(R22)と連通し、この予備室R21(R22)及び貫通孔35(36)を介してテーブル内部の空間2A(2B)と連通している。そのため、圧力切替室R3,R4は、シャッタ25a,25bが開位置であろうと、閉位置であろうと常にテーブル2内部の空間2A,2Bとその空隙部が連通している。
【0032】
圧力切替え装置6は、このように1つの負圧室R1と、テーブル2が内部に有する空間部2A,2Bに対応した数の圧力切替室R3,R4及びシャッタ25a,25bとを有しており、コンパクトな構成となっている。
【0033】
次に、本実施形態に係るレーザ加工機の作用について説明をする。作業者は負圧源1のスイッチを入れると、テーブル2上にワークを載置する。テーブル2上にワークが載置されると、作業者は、例えば操作ボタンなどによってシャッタ部材制御手段6aからシリンダ7a,7bへと制御信号を出し、ワークが載置されている側のシャッタ25a,25bを開位置へと移動させる。例えば図3に示すように、シャッタ25bが開位置に移動すると、ケース22に設けられた大気と連通する貫通穴(第2の貫通孔)31b及び貫通穴21dはシャッタ25bにより閉鎖される。一方、空間部R1は貫通穴30c、間隙R4及び貫通穴30dを介して空間部R22に接続される。空間部R22は空間部2Bに接続されているので、空間部2Bが負圧源1に接続され、ワークが固定される。
【0034】
ワークが固定されると、テーブル2は任意の加工位置まで移動し、テーブル2が加工位置で停止するとレーザ加工機は穴あけ加工を開始する。ワークの加工が終了すると、作業者はシャッタ25a,25bを閉位置へと移動させる。
【0035】
一方、例えば図4に示すように、シャッタ25aが閉位置に移動すると、貫通穴(第
1の貫通孔)30aはシャッタ25aにより閉鎖される。この結果、空間部2Aは負圧源1から切断される。また、シャッタ25aが移動することによりケース22に設けられた貫通穴31aは隔壁20a,20b間の間隙の後方側R3に接続される。この間隙R3は貫通穴21bを介して空間部R21に接続される。この結果、空間部2Aは大気に接続され、ワークの固定が解かれ、作業者は加工済みのワークを取り外す。
【0036】
以上の構成であるから、ワークをテーブル2に吸着させる際にはシャッタ25a,25bを開き、ワークをテーブル2から取り外す際にはシャッタ25a,25bを閉じればよい。
【0037】
なお、シャッタ25a,25bの開閉動作は実質的に同じであり、このシャッタ25a,25bの開閉動作に関する重複した説明は、省略する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るレーザ加工機の空気配管図である。
【図2】本発明に係るレーザ加工機の圧力切り替え装置付近の平面断面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図2におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 負圧源
2 テーブル
2A 空間部
2B 空間部
2b テーブル表面の穴
6 圧力切り替え装置
6a シャッタ部材制御手段
7a,7b シリンダ(シャッタ部材駆動手段)
25a,25b シャッタ(シャッタ部材)
30a,30c 第1の貫通穴
31a,31b 第2の貫通穴
R1 空間部(負圧室)
R3,R4 間隙(圧力切替室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するテーブル表面に内部の空間部と連通する穴を備え、前記空間部を負圧源に接続することにより前記テーブル表面にワークを吸着するようにしたレーザ加工機において、
前記空間部を大気または前記負圧源に接続する圧力切り替え装置を設け、この圧力切り替え装置を前記テーブルに配置したことを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記圧力切り替え装置は、前記負圧源に接続された負圧室と、前記テーブル内部の空間部に連通していると共に、前記負圧室及び大気に接続する圧力切替室と、前記圧力切替室を前記負圧室もしくは大気のどちらか一方に選択的に接続させるシャッタ部材と、前記シャッタ部材を駆動させるシャッタ部材駆動手段と、前記シャッタ部材の駆動を制御するシャッタ部材制御手段と、を有してなる、
請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記圧力切替室は、前記シャッタ部材を内装すると共に、前記負圧室に接続する第1の貫通穴と、前記大気に接続する第2の貫通穴とを有し、
前記シャッタ部材を、前記第1の貫通穴を開放させると共に、前記第2の貫通穴を閉鎖する開位置と、前記第1の貫通穴を閉鎖すると共に、前記第2の貫通穴を開放させる閉位置とに切替自在に構成した、
請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記レーザ加工機は複数の前記テーブル内部の空間部を有すると共に、前記圧力切り替え装置は、1つの前記負圧室と、これら複数のテーブル内部の空間部に対応した数の前記圧力切替室及び前記シャッタ部材とを有してなる、
請求項2又は3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記圧力切り替え装置は、前記テーブルの下面に取付けられてなる、
請求項1乃至4記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95885(P2009−95885A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215188(P2008−215188)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】