説明

レーザ加工装置、レーザ加工用治具およびレーザ加工方法

【課題】 時間をかけることなく加工処理を行うことができるようにする。
【解決手段】 レーザ光源2から収束レンズ6を通して加工対象物Aの加工領域A1に照射される光と補助ユニット4の金属面7による反射光が加工対象物Aの加工領域A1に照射される光とにより加工対象物Aの加工領域A1を加工する。これにより、加工対象物Aの加工領域A1に対して効率よく加工処理を施すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物をレーザ加工するレーザ加工装置、レーザ加工する際に使用される治具およびこのレーザ加工装置に使用されるレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザ加工装置により加工対象物を穿孔する場合、加工対象物は加工途中に比較して加工前の熱吸収率が悪いため、初期加工時においては加工途中の数倍程度のレーザ出力を加工対象物の表面に与えることにより加工初期段階に加工対象物の表面近傍に与える熱量を増大させる処理が行われることがある。
このようなレーザ加工装置の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1記載の構成によれば、初期加工時においてレーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に合わせて熱を集中させている。
【特許文献1】特許第2875626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、加工対象物の内部に焦点位置を合わせて初期加工を行う場合には、加工対象物の表面近傍に熱が与えられなくなってしまいこの状態で加工処理を行うと時間がかかってしまうため好ましくない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、時間をかけることなく加工処理を行うことができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載のレーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、このレーザ光源から出射されるレーザ光を収束する収束部と、加工対象物の加工領域の近傍に配設されると共に収束部により収束されたレーザ光の光路近傍に配設され当該レーザ光の加工対象物から反射した反射光を加工対象物の加工領域に反射する反射部とを備え、レーザ光源から収束部を通して加工対象物の加工領域に照射される光と反射部の反射光が前記加工対象物の加工領域に照射される光とにより加工対象物に所定の加工処理を行うことを特徴としている。
【0005】
このような構成によれば、レーザ光源から収束部を通して加工対象物の加工領域に照射される光と反射部により反射される反射光が加工対象物の加工領域に照射される光とにより加工対象物に所定の加工処理を行うため、特に加工対象物から反射した光を再度加工対象物の加工領域に反射させることにより熱を集中させて加工することができレーザ出力を必要以上に上げることなく効率良く加工処理を行うことができる。
【0006】
請求項2記載のレーザ加工装置は、反射部が収束部により収束されたレーザ光の光路を囲うように回転反射面により形成されているところに特徴を有している。
このような構成によれば、反射部がレーザ光の光路を囲うように回転反射面により構成されているため、レーザ光の光路(光軸)を中心として360度全方向に渡って加工対象物の加工領域に反射させることができ、前述発明に比較してさらに加工効率を向上できると共に、加工領域の加工品質を向上できるようになる。
【0007】
請求項3記載のレーザ加工装置は、回転反射面は、収束部により収束されたレーザ光の焦点位置を楕円の一方の焦点に一致させた回転楕円面に形成されているところに特徴を有している。
このような構成によれば、回転反射面を、レーザ光の焦点位置が楕円の焦点となる回転楕円面により構成しているため、レーザ光の光路(光軸)を中心として360度全方位に渡って回転楕円面により反射させる際に略全てのレーザ光を加工対象物の加工領域に集中して反射させることができ、前述発明に比較してより加工効率を向上することができ、さらに加工品質を向上させることができるようになる。
【0008】
請求項4記載のレーザ加工装置は、収束部により収束されたレーザ光の焦点位置を加工対象物の深さ方向に移動可能な焦点位置移動手段を備え、反射部は、加工初期段階における加工対象物の加工領域にレーザ光を反射するように構成されていることを特徴としている。
このような構成によれば、次のように作用する。すなわち、反射部は、加工初期段階における加工対象物の加工領域にレーザ光を反射するため、加工初期段階における加工対象物の加工領域にレーザ光を集光することができる。そして、焦点位置移動手段が収束部により収束されたレーザ光の焦点位置を加工対象物の深さ方向に移動させると、焦点位置が加工対象物の深さ方向に移動するに伴い反射部に反射される光が加工対象物の加工領域から外れるようになる。したがって、加工対象物の加工領域に対して加工初期段階に選択的に光を集光することができる。
【0009】
請求項5記載のレーザ加工用治具は、レーザ光源から出射されたレーザ光を収束して加工対象物の加工領域に照射することにより加工対象物に所定の加工処理を行うレーザ加工装置に使用されるものであって、加工対象物の加工領域の近傍,および収束されたレーザ光の光路近傍に配設可能に構成され当該レーザ光の加工対象物から反射した反射光を加工対象物の加工領域に反射する反射部を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項6記載のレーザ加工用治具は、反射部が収束されたレーザ光の光路を囲うように回転反射面により形成されていることを特徴としている。
請求項7記載のレーザ加工用治具は、回転反射面が、収束されたレーザ光の焦点位置を楕円の一方の焦点に一致させた回転楕円面に形成されていることを特徴としている。
請求項8記載のレーザ加工方法は、レーザ光源から出射されるレーザ光を収束して加工対象物の加工領域に照射することにより加工対象物に所定の加工処理を行う方法であって、加工対象物に照射され反射したレーザ光を加工対象物の加工領域に反射することにより加工対象物に所定の加工処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,5または8記載の発明によれば、特に加工対象物から反射した光を再度加工対象物の加工領域に反射させることにより熱を集中させて加工することができレーザ出力を必要以上に上げることなく効率良く加工処理を行うことができる。
請求項2または6記載の発明によれば、レーザ光の光路(光軸)を中心として360度全方向に渡って加工対象物の加工領域に反射させることができ、前述発明に比較してさらに加工効率を向上できると共に、加工領域の加工品質を向上できるようになる。
【0012】
請求項3または7記載の発明によれば、レーザ光の光路(光軸)を中心として360度全方位に渡って回転楕円面により反射させる際に略全てのレーザ光を加工対象物の加工領域に集中して反射させることができ、前述発明に比較してより加工効率を向上することができ、さらに加工品質を向上させることができるようになる。
請求項4記載の発明によれば、加工対象物の加工領域に対して加工初期段階に選択的に光を集光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1を参照しながら説明する。
図1(a)は、レーザ加工装置を斜視図により示しており、本実施形態に係る特徴部分を中心に示している。このレーザ加工装置1は、レーザ光源2と、レーザ光収束ユニット3と、補助ユニット4とを備え、例えば金属製やセラミック等の硬質材料により形成された加工対象物Aに対して所定の加工(例えば加工対象物Aの厚さ方向に貫く穿孔、もしくは所定の深さまで穴形成等)を行うようになっている。
【0014】
レーザ光源2は、例えばレーザ発振器からなっており、ある一定方向にレーザ光を出射する。レーザ光収束ユニット3は、反射ミラー5,および収束部としての収束レンズ6を備えており、レーザ光源2から出射されたレーザ光を反射し、収束し、加工対象物Aの加工領域A1に向けて照射する。
レーザ加工用治具として機能する補助ユニット4は、それぞれ金属面7(本発明の反射部に相当)を備えた2つ(複数個)の反射ユニット4aおよび4bを備えている。各反射ユニット4aおよび4bは、同一材料および同一形状であり、金属製のブロックにより成型されている。反射ユニット4aの形状を説明すると、図1(a)に示すように、反射ユニット4aは台形柱状に成型されている。また図1(a)に示すように、金属面7は台形柱状のうちの平斜面状に形成されており、反射ユニット4aおよび4bの底面部8に対して斜状に形成される。
【0015】
上記構成の作用について説明する。
作業者が、この反射ユニット4aおよび4bを使用する場合には、図1(b)に示すように、底面部8から反射ユニット4aの上面にかけて形成される金属面7が加工対象物Aの加工領域A1側に迫出すように加工対象物A上に反射ユニット4aおよび4bの底面部8を載置する。この場合、反射ユニット4aおよび4bの金属面7の斜面が下方向を向くように載置する。このとき、反射ユニット4aおよび4bを加工対象物Aの表面で且つ加工対象物Aの近傍に配設する。
【0016】
そして、焦点位置A2が加工対象物Aの厚さDの略中央に位置するようにレーザ光収束ユニット3の収束レンズ6による焦点位置を合わせる。加工対象物Aの深さ方向中央位置に焦点位置A2を合わせる理由は、加工対象物Aに対して効率良く穿孔するためである。すなわち、図1(b)に示すように、加工対象物Aの表面側の厚さD1とし裏面側の厚さをD2とするとD1=D2となる位置に焦点位置A2を合わせる。
【0017】
この後、レーザ光源2からレーザ光が出射されると、レーザ光収束ユニット3は、レーザ光源2から出射されたレーザ光を反射し収束する。収束されたレーザ光は、加工対象物Aの加工領域A1に向けて照射される。加工初期には、加工領域A1に照射されたレーザ光が加工対象物Aの表面で反射する。このとき、加工対象物Aの表面に反射した反射光は、加工対象物Aの表面側方向(例えば、加工対象物Aの表面に対して垂直方向)およびその周辺方向に向けて散乱、反射する。また、加工対象物Aに熱が加えられ加工対象物Aが少しでも溶融すると加工対象物Aに窪み(図示せず)が生じ、この影響によりレーザ光が加工対象物Aの表面でさらに散乱、反射する。
【0018】
このとき反射光が補助ユニット4に到達すると、この反射光が補助ユニット4の金属面7で全反射し、再度加工領域A1を含む領域に光が導かれるようになる。したがって、加工領域A1に熱を集中させて加工することができるため、レーザ光源のレーザ出力を必要以上に上げることなく効率よく加工処理できるようになる。
このような第1の実施形態によれば、レーザ光源2から収束レンズ6を通して加工対象物Aの加工領域A1に照射される光と補助ユニット4の金属面7による反射光が加工対象物Aの加工領域A1に照射される光とにより加工対象物Aの加工領域A1を加工することができるようになり、加工対象物Aの加工領域A1に対して効率よく加工処理を施すことができる。
【0019】
また、加工対象物Aを穿孔するため焦点位置A2の初期位置を加工対象物Aの深さ方向中央位置に合わせる必要があったとしても、補助ユニット4の金属面7による反射光が加工対象物Aの加工領域A1に照射されるため、補助ユニット4のない構成に比較して加工領域A1に集光することができ、効率よく加工処理を施すことができるようになる。尚、所定の深さまで穴形成する場合においても略同様な作用効果を奏する。
【0020】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態の説明図を示すもので、上述実施形態と異なるところは、金属面(反射部)が収束レンズ6により収束されたレーザ光の光路を囲うように回転反射面により形成されているところにある。以下、第1の実施形態と同一部分については同一符号を付して必要に応じて説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0021】
図2(a)は、反射ユニットの断面を示しており、図2(b)に反射ユニットの斜視図を示している。
図2(b)に示すように、補助ユニット4に代わる補助ユニット10(本発明の加工用治具に相当)は、1の金属製部材により構成され、その中央部にテーパ穴10a(通過孔)が形成されている。このテーパ穴10aは、図2(b)に示すように、上面および下面が略真円形状になっており、上面側の径よりも下面側の径が大きく穴形成されている。このテーパ穴10aの内表面は金属面12として回転反射面により形成され、光を反射するように構成されている。
【0022】
実際にこの補助ユニット10が配設される場合には、図2(a)に示すような加工対象物Aとの位置関係で配設される。すなわち、加工対象物Aの加工領域A1の中心軸Cがテーパ穴10aの中心軸Cに一致するように配設される。補助ユニット10は、加工対象物Aに対してテーパ穴10aの径の大きい下面側が加工対象物A側に位置するように配設される。したがって、金属面12は、加工対象物Aの加工領域A1側に当該金属面12に対する垂直軸が向かうように配設される。尚、図示しないが、加工対象物Aの加工時の溶融金属等のカスを除去するため、反射ユニット10と加工対象物Aとの間に隙間11を設けることが望ましい。この場合、隙間11にアシストガスを吹き付けることにより、加工対象物Aのカスを隙間11から除去できるようになる。
【0023】
レーザ光源2からレーザ光が出射されると、このレーザ光はテーパ穴10aを通過して加工対象物Aに到達する。そして、加工対象物Aに反射した光が金属面12に反射し加工領域A1に再度到達する。すると、加工領域A1に対して素早く穴形成できるようになる。図2(c)は、第1の実施形態に係る構成例による加工対象物Aの表面側の穿孔結果、図2(d)は本実施形態に係る構成例による加工対象物Aの表面側の穿孔結果を平面的に示している。すなわち、第1の実施形態に示すように、複数の反射ユニット4aおよび4bを加工領域A1周辺に載置して加工処理を施したとしても、図2(c)に示すように、加工対象物Aにおける加工領域A1の特に表面部分について平面的にある所定方向に延びる穴A2(図示点線参照)が形成されるため、本実施形態では加工領域A1を囲うように反射面12を形成し、また、加工対象物Aの加工領域A1の中心軸をテーパ穴10aの中心軸に略一致するように配設することにより表面加工品質の向上を図っている。
【0024】
すなわち、加工領域A1からの反射面12の距離が平面的に360度同一距離であるため、図2(d)に示すように平面的には360度略均一等方的に拡大する穴A3が形成され、第1の実施形態に比較して加工品質を向上することができる。また、第1の実施形態に比較して、金属面12が加工領域A1に対して反射する反射光量が多くなるため加工効率も向上する。
【0025】
以上説明したように本実施形態によれば、金属面12が当該レーザ光の光路を囲うように回転反射面状に形成されており、収束レンズ6により収束されたレーザ光がテーパ穴10aを通過し、金属面12によりレーザ光の光路を中心軸として360度全方向に渡り加工対象物Aの加工領域A1に反射させることができるため、加工品質を向上できるようになると共に加工効率を向上できる。
【0026】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態の説明図を示すもので、第2の実施形態と異なるところは、金属面7の回転反射面を収束レンズ6により収束されたレーザ光の焦点位置を楕円の一方の焦点に一致させた回転楕円面に形成したところにある。第1,第2の実施形態と同一部分については同一符号を付して必要に応じて説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0027】
図3(b)は、補助ユニット4に代わる補助ユニット13の斜視図を示している。この補助ユニット13(本発明の加工用治具に相当)は、1の金属製部材により形成されており、その中央上部に円筒面孔13aを備え、その下に通ずるようにその断面が回転楕円面の一部を構成する回転楕円面孔13bを備えている。この回転楕円面孔13bは湾曲面状の孔に形成されている。これらの円筒面孔13aおよび回転楕円面孔13bの面においては金属面13cが形成される。
【0028】
この補助ユニット13は、加工対象物Aとの間で図3(a)に示すような位置関係を保つように配設される。すなわち、加工対象物Aの深さ方向略中央部に一致するレーザ光の焦点位置A4を、回転楕円面孔13bの楕円の焦点位置に一致させる(図3(a)の点線に示す楕円参照)ように、補助ユニット13および加工対象物A間の距離を保って補助ユニット13を配設する。具体的には、回転楕円面孔13bの楕円の焦点は2つ存在するが、回転楕円面孔13bの近接側の焦点位置に焦点位置A4が一致するように補助ユニット13を配設することが望ましい。
【0029】
すると、レーザ光源2から出射されるレーザ光が収束レンズ6により収束され直接光が加工対象物Aの加工領域A1に照射されると、加工領域A1に照射された光は、回転楕円面孔13bの金属面13cに再度反射し、加工対象物Aの加工領域A1に再度導かれる。このとき、補助ユニット13は加工対象物Aとの間で前述したような位置関係を保つように配設されているため、レーザ光の光路を中心として360度全方位に渡って反射させることができると共に略全てのレーザ光を加工対象物Aの加工領域A1周辺に集中させて反射させることができるようになる。本実施形態によれば、前述実施形態に比較してより加工効率を向上することができ、さらに加工品質を向上させることができるようになる。
【0030】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、収束レンズ6により収束されたレーザ光の焦点位置を加工対象物Aの深さ方向に移動可能な焦点位置移動手段を備え、金属面13cを加工初期段階における加工対象物Aの加工領域A1にレーザ光を反射するように構成したところにある。第1,第2の実施形態と同一部分については同一符号を付してその説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0031】
図4はレーザ加工装置の断面を示している。このレーザ加工装置14は、筐体15、レーザ光源2、反射ミラー5、収束レンズ6、焦点位置移動手段16、および補助ユニット17を備えている。
筐体15には、レーザ光源2および反射ミラー5が固定設置されており、レーザ光源2から出射されるレーザ光を収束レンズ6を通じて出射するようになっている。焦点位置移動手段16は、この収束レンズ6を光軸に沿って移動させるように構成されている。収束レンズ6を通過するレーザ光は、出射口14aから出射されるように構成されている。この出射口14aの周辺に位置して補助ユニット17が配設されている。この補助ユニット17は、筐体15に対して螺子により固定設置されている。補助ユニット17には、前述実施形態中で説明した金属面12もしくは13cが形成されており(図中には符号13cを付している)、金属面13cは出射口14aから出射したレーザ光を反射して加工対象物Aの加工領域A1に反射するようになっている。
【0032】
すると、前述実施形態と同様に加工領域A1にレーザ光が集中するため加工領域A1の加工効率および加工品質が向上するが、このとき、加工初期段階における加工対象物Aの加工領域A1にレーザ光を反射するように金属面13cを配設すると良い。また、焦点位置移動手段16は、焦点位置を加工対象物Aの深さ方向に移動可能に構成されているため、例えば加工初期段階においては、加工対象物Aの表面に焦点位置を合わせるようにして加工を開始し、焦点位置移動手段16により焦点位置を徐々に加工対象物Aの内部に位置するように移動させるようにすると良い。
【0033】
この場合、加工初期段階における加工対象物Aの加工領域A1にレーザ光が反射するため、加工初期段階には加工領域A1に集光するようになるものの、焦点位置が加工対象物Aの深さ方向に徐々に移動するに従って金属面13cによるレーザ光の反射方向が変化し、加工対象物Aの加工領域A1に対して反射する光強度が弱くなり、やがて加工領域A1から外れるようになる。したがって、加工対象物Aの加工領域A1に対して加工初期段階に選択的に光を集光することができるようになる。
【0034】
本実施形態によれば、焦点位置移動手段16が収束レンズ6により収束されたレーザ光の焦点位置を加工対象物Aの深さ方向に移動させると、焦点位置が加工対象物Aの深さ方向に移動するに伴い金属面13aに反射される光が加工対象物Aの加工領域A1から外れるようになる。したがって、加工対象物Aの加工領域A1に対して加工初期段階に選択的に光を集光することができ、加工品質を向上することができる。
【0035】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形もしくは拡張が可能である。
レーザ光源2により加工対象物Aに対して穿孔する実施形態、すなわち、加工対象物Aの深さ方向(図4および図5のZ軸方向)のみ加工する実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、レーザ光源2が出射するレーザ光の光軸を加工対象物Aに対して深さ方向に直交する方向(図5のX軸方向または/およびY軸方向)に相対的に移動させて加工する構成にも適用することができる。
【0036】
すなわち、図5(a)に示すように、レーザ光収束ユニット3および反射ユニット10を加工対象物Aに対してXY軸方向に移動させる構造を適用することにより、レーザ光の光軸を加工対象物Aの表面XY方向に移動させ加工対象物AにXY方向の2次元的な加工を施すように構成することもできる。
また、図5(b)に示すように、レーザ光収束ユニット3および反射ユニット10を固定したまま加工対象物AをXYステージ(図示せず)により移動させる構造を適用することにより、レーザ光の光軸を加工対象物Aの表面XY方向に移動させ加工対象物AにXY方向の2次元的な加工を施すように構成することもできる。
【0037】
尚、レーザ光源2は、固体レーザ、液体レーザ、気体レーザ、半導体レーザ等、どのようなレーザ光源であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すレーザ加工装置の要部構成図((a)斜視図、(b)断面図)
【図2】本発明の第2の実施形態を示すレーザ加工用治具の構成図((a)断面図、(b)斜視図、(c)加工状態の説明図(その1)、(d)加工状態の説明図(その2))
【図3】本発明の第3の実施形態を示すレーザ加工用治具の構成図((a)断面図、(b)斜視図))
【図4】本発明の第4の実施形態を示す図1(b)相当図
【図5】本発明の変形例を示す図1(a)相当図
【符号の説明】
【0039】
図面中、1,14はレーザ加工装置、2はレーザ光源、3はレーザ光収束ユニット、4,13は補助ユニット、4a,4bは反射ユニット、5は反射ミラー、6は収束レンズ(収束部)、7,12,13cは金属面(反射部)、13aは円筒面孔、13bは回転楕円面孔、Aは加工対象物、A1は加工領域を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
このレーザ光源から出射されるレーザ光を収束する収束部と、
加工対象物の加工領域の近傍に配設されると共に前記収束部により収束されたレーザ光の光路近傍に配設され当該レーザ光の加工対象物から反射した反射光を前記加工対象物の加工領域に反射する反射部とを備え、
前記レーザ光源から前記収束部を通して前記加工対象物の加工領域に照射される光と前記反射部の反射光が前記加工対象物の加工領域に照射される光とにより前記加工対象物に所定の加工処理を行うことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記反射部は、前記収束部により収束されたレーザ光の光路を囲うように回転反射面により形成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記回転反射面は、前記収束部により収束されたレーザ光の焦点位置を楕円の一方の焦点に一致させた回転楕円面に形成されていることを特徴とする請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記収束部により収束されたレーザ光の焦点位置を加工対象物の深さ方向に移動可能な焦点位置移動手段を備え、
前記反射部は、加工初期段階における前記加工対象物の加工領域にレーザ光を反射するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
レーザ光源から出射されたレーザ光を収束して加工対象物の加工領域に照射することにより加工対象物に所定の加工処理を行うレーザ加工装置に使用されるレーザ加工用治具であって、
前記加工対象物の加工領域の近傍,および前記収束されたレーザ光の光路近傍に配設可能に構成され当該レーザ光の加工対象物から反射した反射光を前記加工対象物の加工領域に反射する反射部を備えたことを特徴とするレーザ加工用治具。
【請求項6】
前記反射部は、前記収束されたレーザ光の光路を囲うように回転反射面により形成されていることを特徴とする請求項5記載のレーザ加工用治具。
【請求項7】
前記回転反射面は、前記収束されたレーザ光の焦点位置を楕円の一方の焦点に一致させた回転楕円面に形成されていることを特徴とする請求項6記載のレーザ加工用治具。
【請求項8】
レーザ光源から出射されるレーザ光を収束して加工対象物の加工領域に照射することにより加工対象物に所定の加工処理を行うレーザ加工方法であって、
加工対象物に照射され反射したレーザ光を前記加工対象物の加工領域に反射することにより前記加工対象物に所定の加工処理を行うことを特徴とするレーザ加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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