説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】 加工期間中に、加工対象物上のビーム条件を高精度に測定することができない。
【解決手段】 レーザ光源がレーザビームを出射する。保持台が、レーザ光源から出射されたレーザビームの経路と交差する位置に加工対象物を保持する。保持台に、レーザビームを透過させる透過窓が設けられている。移動機構が、レーザ光源から出射したレーザビームの経路と、保持台との一方を他方に対して移動させる。移動中に、加工対象物にレーザビームが入射し、透過窓がレーザビームの経路を横切る。透過窓を透過したレーザビームが入射する位置にビーム計測器が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物をレーザビームで走査して加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハに注入した不純物の活性化、結晶欠陥の回復、アモルファス膜の多結晶化等にレーザアニールが適用される。半導体ウエハをレーザビームで走査することにより、ウエハのほぼ全面をアニールすることができる。レーザビームを導光させる光学系内に配置された反射鏡を透過した一部のレーザ光の強度が光強度検出器で検出される。加工対象物を保持する保持台の上にパワーメータが取り付けられている。パワーメータにレーザビームを入射させることにより、レーザパワーを測定することができる。
【0003】
光強度検出器の測定結果のみからでは、レーザパワーの時間変動はわかるが、光強度の絶対値を高精度に算出することは困難である。パワーメータの測定結果と、光強度検出器の測定結果とを対比することにより、光強度検出器による測定結果から、光強度の絶対値を算出することができる。光強度検出器の測定結果から算出された光強度に基づいて、レーザビーム照射の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−255744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光強度検出器の測定結果が、加工対象物上における光強度に換算される。この換算時に用いる情報は、事前に測定されたパワーメータの測定結果に依存している。光学部品の劣化等により、光強度検出器の測定結果と、パワーメータの測定結果との関係が変動する。両者の関係が変動すると、光強度検出器の測定結果から算出される光強度の換算値が、加工対象物上における現時点の光強度からずれてしまう。このため、高品質のレーザ加工を行うことが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
レーザビームを出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザビームの経路と交差する位置に加工対象物を保持すると共に、前記経路に対して移動可能であり、移動時に前記経路と交差する透過窓が設けられている保持台と、
前記透過窓を透過した前記レーザビームが入射する位置に配置されたビーム計測器と
を有するレーザ加工装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
レーザビームを透過させる透過窓が設けられた保持台に、前記透過窓と重ならないように加工対象物を保持し、前記保持台を移動させることによって、前記加工対象物を前記レーザビームで走査する工程と、
前記加工対象物のレーザビームによる走査開始時点よりも後で、かつ走査終了時点よりも前に、前記透過窓が前記経路と交差するように前記保持台を移動させる工程と、
前記透過窓が前記経路と交差している期間に、前記透過窓を透過したレーザビームを検出する工程と
を有するレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
加工対象物の表面で検出する場合とほぼ同等の条件で、レーザビームの検出を行うことができる。検出結果をレーザ加工にフィードバックすることにより、高品質の加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例によるレーザ加工装置の概略図である
【図2】(2A)は、基台及び保持台の平面図であり、(2B)は、その断面図である。
【図3】パルスレーザビームで加工を行う場合の前方経路及び後方経路を伝播するビームのタイミングチャートである。
【図4】CWレーザビームで加工を行う場合の前方経路及び後方経路を伝播するビームのタイミングチャートである。
【図5】他の実施例によるレーザ加工装置の保持台の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。レーザ光源10がパルスレーザビームを出射する。レーザ光源10には、例えばNd:YAGレーザ等の固体レーザ、エキシマレーザ等が用いられる。レーザ光源10から出射したレーザビームが、パワー調整器11、折返しミラー12、レンズ13を経由して、加工対象物30に入射する。
【0011】
パワー調整器11は、例えばズーミングレンズと、貫通孔が形成されたマスクとを含む。ズーミングレンズで、マスクの位置におけるビーム径を変化させることにより、貫通孔を通過したレーザビームのパワーを変化させることができる。レンズ13は、パワー調整器11のマスクの貫通孔を、加工対象物30の表面に結像させる。
【0012】
基台20の上に直動ステージ21が配置され、その上に回転ステージ(保持台)22が配置されている。基台20はレーザビームの経路に対して固定されている。直動ステージ21は、基台20に対して、1次元方向に移動する。保持台22は、直動ステージ21に対して、その移動方向に垂直な回転軸を中心として回転する。直動ステージ21の移動方向をx軸、保持台22の回転軸の方向をz軸とするxyz直交座標系を定義する。一般的には、xy面が水平になり、z軸が鉛直方向と平行になる姿勢が維持される。保持台22は、レーザビームの経路及び基台20に対してx方向に移動すると共に、z軸に平行な回転軸を中心として回転可能である。
【0013】
保持台22の下方のレーザビームの経路上に、ビーム測定器23が配置されている。ビーム測定器23は、基台20に固定される。すなわち、ビーム測定器23は、レーザビームの経路に対して、相対位置が固定されている。後述するように、保持台22に透過窓が設けられており、この透過窓を透過したレーザビームがビーム測定器23に入射する。ビーム測定器23には、例えばレーザビームのパルスエネルギを測定するパワーメータが用いられる。なお、この機能を持つ測定器は、ジュールメータと呼ばれる場合もある。ビーム測定器23が保持台22と共に回転しないため、ビーム測定器23と、制御装置25とを、容易に信号線で接続することができる。
【0014】
ビーム測定器23の測定結果が制御装置25に入力される。制御装置25は、ビーム測定器23の測定結果に基づいて、パルスエネルギが目標値に近づくように、パワー調整器11を制御する。
【0015】
図2Aに、基台20及び保持台22の平面図を示す。保持台22の保持面に、例えば6枚の加工対象物30が保持されている。加工対象物30は、例えば半導体ウエハである。加工対象物30は、保持台30の回転軸を中心として、6回回転対称になる位置に配置される。加工対象物30をn枚配置する場合には、例えばn回回転対称になる位置に配置すればよい。
【0016】
保持台22に透過窓24が形成されている。透過窓24は、xy面内において、加工対象物30と重ならない位置に配置されている。ただし、保持台22を回転させたとき、加工対象物30の軌跡と、透過窓24の軌跡とが、少なくとも一部において重なるように、透過窓24が配置される。透過窓24は、保持台22を貫通する開口により形成される。なお、この開口を、レーザビームの波長域において透明な材料で塞いでもよい。保持台22を回転させたときの加工対象物30の軌跡及び透過窓24の軌跡と重なる位置に、レーザビームの経路31及びビーム測定器23が配置されている。
【0017】
図2Bに、図2Aの一点鎖線2B−2Bにおける概略断面図を示す。直動ステージ21が、直動機構27によって、基台20に支持されている。直動機構27は、直動ステージ21を基台20に対してx方向に移動させる。保持台22が、回転機構28によって直動ステージ21に支持されている。回転機構28は、直動ステージ21に対して保持台22をz軸に平行な回転軸を中心として回転させる。
【0018】
ビーム測定器23が、レーザビームの経路31上であって、基台20と保持台22との間に配置されている。ビーム測定器23は基台20に固定されている。
【0019】
レーザビームを出射させた状態で、保持台22を回転させながらx方向に移動させることにより、加工対象物30の表面をレーザビームで走査することができる。パルスレーザビームのパルスの繰り返し周波数、ビームスポットの大きさ、及び保持台22の回転速度は、レーザパルスが入射する領域が部分的に重なりながら加工対象物30の表面を移動するように設定されている。
【0020】
加工対象物30の走査開始時点から、走査終了時点までの間に、透過窓24がレーザビームの経路31を複数回横切る。透過窓24がレーザビームの経路31と交差している期間、レーザビームがビーム測定器23に入射する。レーザビーム経路31のうち、光源に向かって保持台22よりも前方の部分を、前方経路Lfと呼び、保持台22よりも後方の部分を、後方経路Lbと呼ぶこととする。
【0021】
図3Aに、前方経路Lfを伝播するレーザビームのタイミングチャートを示し、図3Bに、後方経路Lbを伝播するレーザビームのタイミングチャートを示す。期間Ttの間は、保持台22の透過窓24以外の領域が、レーザビームの経路と交差する。期間Twの間は、透過窓24が、レーザビームの経路と交差する。このため、期間Twの間のみ、後方経路Lbまでレーザビームが伝播し、ビーム測定器23(図2B)にレーザビームが入射する。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。ビーム測定器23は、レーザパルスごとにエネルギを測定し、測定結果を制御装置25に入力する。加工対象物30の走査開始時点から走査終了時点までの間に、レーザビームのパルスエネルギを測定することができる。ビーム測定器23の位置は、加工対象物30が配置される位置に比べると、光源に向かってやや後方である。ただし、ビームスポットが、ビーム測定器23の受光領域の範囲に含まれる場合には、ビーム測定器23で測定されるパルスエネルギは、加工対象物30の表面におけるパルスエネルギと同一である。このため、実際に加工対象物30に入射するレーザビームのパルスエネルギを、加工の途中段階で、高精度に測定することができる。
【0023】
実施例によるレーザ加工装置では、従来、保持台22で遮られていたレーザパルスが、ビーム測定器23に導かれる。このため、測定のための余分なレーザパルスを出射する必要がない。
【0024】
制御装置25は、パルスエネルギの測定結果に基づいて、パルスエネルギが目標値に近づくように、パワー調整器11を制御する。パワー調整器11の制御は、現時点で保持台22に保持されている加工対象物30の走査が終了した時点で行ってもよいし、走査の途中段階で行ってもよい。また、パルスエネルギの測定値が目標値から大幅に外れた場合には、その時点で加工を中断してもよい。
【0025】
図4A及び図4Bに、連続発振のレーザビームで加工を行う場合のタイミングチャートを示す。図4A及び図4Bは、それぞれ前方経路Lf及び後方経路Lbを伝播するレーザビームのタイミングチャートを示す。前方経路Lfを伝播するレーザビームは連続波(CW)である。透過窓24がレーザビームの経路31と交差している期間Twのみ、後方経路Lbまでレーザビームが伝播し、ビーム測定器23に入射する。
【0026】
ビーム測定器23は、透過窓24がレーザビームの経路31を横切る間に入射したレーザビームのエネルギを測定する。透過窓24が長方形であり、保持台22の回転速度がx方向の位置に依らず一定である場合には、期間Twの長さが、保持台22のx方向の位置によって変動する。例えば、レーザビームの経路31が保持台22の内周に近づくにしたがって、期間Twが長くなる。ビーム測定器23の測定値の許容範囲を、保持台22のx方向の位置によって変えておくことにより、レーザビームのパワーの適否を判定することができる。
【0027】
ビーム測定器23として、フォトディテクタを用い、レーザビームの波高値を検出してもよい。波高値は、透過窓24がレーザビームの経路31を横切る時間に依存しない。このため、保持台22のx方向の位置に依存せず、波高値の許容範囲を設定しておくことができる。
【0028】
図5に、他の実施例によるレーザ加工装置の保持台の平面図を示す。保持台22の上に加工対象物30が保持されている。図1〜図4に示した実施例では、保持台22を回転させたが、図5の実施例では、保持台22をx方向及びy方向に直線的に移動させる。例えば、x方向を主走査方向とし、y方向を副走査方向とするラスタスキャン方式により、加工対象物30の表面が走査される。
【0029】
ビームスポットの中心の軌跡35は、加工対象物30の表面上において、x方向に平行な直線になる。ビームスポットの中心位置は、加工対象物30の外側において、y方向に移動する。
【0030】
加工対象物30の外周線よりもやや外側に、透過窓24が形成されている。透過窓24は、加工対象物30の外周線の形状を反映した平面形状を有する。加工対象物30の外周線が円周状である場合には、透過窓24は、円弧に沿う平面形状を有する。
【0031】
主走査する長さを、加工対象物30の表面を走査するのに必要な長さよりもやや長くし、ビームスポットが透過窓24内に位置するまで、余分の走査を行う。ビームスポットが透過窓24内に位置するときに、ビーム測定器23(図1)にレーザビームが入射する。この期間に、レーザビームのパルスエネルギを測定することができる。
【0032】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0033】
10 レーザ光源
11 パワー調整器
12 折返しミラー
13 レンズ
20 基台
21 直動ステージ
22 保持台
23 ビーム測定器
24 透過窓
25 制御装置
27 直動機構
30 加工対象物
31 レーザビームの経路
35 ビームスポットの中心の軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ光源と、
レーザビームを透過させる透過窓が設けられており、前記レーザ光源から出射されたレーザビームの経路と交差する位置に加工対象物を保持する保持台と、
前記レーザ光源から出射したレーザビームの経路と、前記保持台との一方を他方に対して移動させる移動機構であって、移動中に、前記加工対象物に前記レーザビームが入射し、前記透過窓が前記レーザビームの経路を横切るように移動させる前記移動機構と、
前記透過窓を透過した前記レーザビームが入射する位置に配置されたビーム計測器と
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記保持台は、前記経路から外れた位置を中心として回転することにより、前記加工対象物を、前記保持台の回転中心の周りに公転させ、前記透過窓は、前記加工対象物と重ならない位置に配置されている請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記ビーム測定器は、前記経路に対して、相対位置が固定されている請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
レーザビームを透過させる透過窓が設けられた保持台に、前記透過窓と重ならないように加工対象物を保持し、前記保持台を移動させることによって、前記加工対象物を前記レーザビームで走査する工程と、
前記加工対象物のレーザビームによる走査開始時点よりも後で、かつ走査終了時点よりも前に、前記透過窓が前記経路と交差するように前記保持台を移動させる工程と、
前記透過窓が前記経路と交差している期間に、前記透過窓を透過したレーザビームを検出する工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項5】
さらに、前記レーザビームを検出した結果に基づいて、前記レーザビームのパワーを制御する工程を有する請求項4に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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