説明

レーザ加工装置

【課題】保護カバーの表面の汚れを防いだり汚れを落とすことができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、レーザ光を出射可能なレーザ光源と、レーザ光源から出射されるレーザ光の方向を変更するためのガルバノミラーと、ガルバノミラーからのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズ14と、透光性を有して収束レンズ14からのレーザ光を通過させつつ収束レンズ14を保護するための保護レンズ21とを備える。保護レンズ21の出射側の表面には、二酸化チタンからなる光触媒層24aと、該光触媒層24aとは異なる屈折率の二酸化ケイ素からなる異屈折率層24bとを含む多層コーティング24がなされる。又、レーザ加工装置は、光触媒層24aに光触媒反応を起こさせるための紫外光を出射可能な紫外光出射ユニット31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を被加工対象物に出射して加工を施すレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工対象物にレーザ光を照射することで、その表面に文字、記号、図形等(以下、「文字等」)のマーキング加工を行うレーザ加工装置として特許文献1に開示されたものがある。このレーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、マーキング加工を行う所望の文字等に基づいてレーザ光源から出射されるレーザ光の方向を変更するためのガルバノミラーと、ガルバノミラーからのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズ等とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ加工装置としては、収束レンズからのレーザ光を出射する出射口に、該レーザ光を通過させつつ収束レンズを保護する保護カバー(保護ガラス)が設けられたものがある。このようなレーザ加工装置では、高精度で比較的高価な収束レンズが何らかの理由で汚れたり損傷するといったことが防止される。
【0005】
しかしながら、被加工対象物が例えばプラスチックに代表される樹脂部材等の場合、レーザ光が照射された際に樹脂が溶融しつつ煙が発生し、その煙に含まれる有機化合物が保護カバーの表面に達して付着してしまうという虞がある。
【0006】
そして、このように保護カバーの表面が汚れると(保護カバーに対する不純物が付着すると)、例えば、被加工対象物上に照射するレーザ光の出力が低下してしまうという虞がある。又、例えば、汚れで反射されたレーザ光が収束レンズで収束されつつガルバノミラー側に向かうことで、ガルバノミラー等の光学部品が損傷してしまうといった虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、保護カバーの表面の汚れを防いだり汚れを落とすことができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、レーザ光を出射可能なレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の方向を変更するための少なくとも1つのガルバノミラーと、前記ガルバノミラーからのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズと、透光性を有して前記収束レンズからのレーザ光を通過させつつ前記収束レンズを保護するための保護カバーとを備えたレーザ加工装置であって、前記保護カバーの出射側の表面には、光触媒の材料からなる光触媒層と、該光触媒層とは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層とを含む多層コーティングがなされ、前記光触媒層に光触媒反応を起こさせるための光を出射可能な光触媒反応光出射手段を備えたことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、保護カバーの出射側の表面には、光触媒の材料からなる光触媒層と、該光触媒層とは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層とを含む多層コーティングがなされる。そして、光触媒層に光触媒反応を起こさせるための光を出射可能な光触媒反応光出射手段を備えるため、保護カバーの出射側の表面(多層コーティング)に光を照射することで、強力な酸化力を発生させ、該表面の汚れ(保護カバーに対する不純物の付着)を防いだり、汚れ(付着した不純物)を落とすことができる。その結果、例えば、汚れにより被加工対象物上に照射するレーザ光の出力が低下してしまうことを低減することができる。又、例えば、汚れで反射されたレーザ光が収束レンズで収束されつつガルバノミラー側に向かうことで、ガルバノミラー等の光学部品が損傷してしまうといったことを低減することができる。しかも、保護カバーの出射側の表面には、光触媒層とは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層が設けられ、光の反射を防止することができる(所謂ARコートの効果を得ることができる)ことから、被加工対象物上に照射するレーザ光の出力が低下してしまうことを(光触媒を単層コーティングした場合に比べ)低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記保護カバーの出射側の表面に直接コーティングされる第1層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる前記異屈折率層とされたことを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、保護カバーの出射側の表面に直接コーティングされる第1層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる異屈折率層とされるため、金属酸化物を含む光触媒の材料からなる光触媒層とした場合に比べて、保護カバーとの親和性を高くすることができ、例えば保護カバーに対して剥がれ難くすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記保護カバーの出射側の表面から最も離れた最外層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる前記異屈折率層とされたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、保護カバーの出射側の表面から最も離れた最外層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる異屈折率層とされるため、金属酸化物を含む光触媒の材料からなる光触媒層とした場合に比べて、最外層の強度を強くすることができ、例えば、メンテナンスで払拭した際等に最外層が剥がれ難くなる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記光触媒は、二酸化チタンを含むことを要旨とする。
同構成によれば、光触媒は、二酸化チタンを含むため、より具体的な構成で請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記光触媒反応光出射手段は、紫外光を出射可能な紫外光出射手段であることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、光触媒反応光出射手段は、紫外光を出射可能な紫外光出射手段であり、対する光触媒は紫外光が照射されると光触媒反応を起こすものとなることから、一般的な波長の長いレーザ光は勿論のこと、作業者がレーザ光の照射位置を確認するための可視光であるガイド光についても光触媒に吸収されない構成とすることができる。詳しくは、光触媒反応光出射手段が可視光を出射し光触媒が可視光にて光触媒反応を起こすものでは、作業者がレーザ光の照射位置を確認するための可視光であるガイド光が光触媒に吸収される可能性が発生してしまうが、これを容易且つ確実に回避することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記ガルバノミラーの前段で、前記レーザ光源からのレーザ光と同軸上に可視光を出射可能な可視光源を備え、該可視光をガイド光として前記被加工対象物上に照射して前記レーザ光の照射位置を確認可能とされるレーザ加工装置であって、前記可視光源は、前記光触媒反応光出射手段を兼ねることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、レーザ光の照射位置を確認可能とするガイド光(可視光)を出射可能な可視光源は、光触媒反応光出射手段を兼ねるため、新たに(別途)光触媒反応光出射手段を設ける必要がなく、装置の小型化や低価格化を図ることが可能となる。又、光触媒反応光出射手段は可視光源であり、紫外光を用いないため、紫外光が外部に漏れるといったことがない。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載のレーザ加工装置において、前記可視光源から光触媒層に光触媒反応を起こさせるための可視光を出射する際、前記レーザ光による加工パターンと対応したガルバノミラーの駆動パターンと同じ駆動パターンで前記ガルバノミラーを駆動する制御部を備えたことを要旨とする。
【0020】
同構成によれば、可視光源から光触媒層に光触媒反応を起こさせるための可視光を出射する際、レーザ光による加工パターンと対応したガルバノミラーの駆動パターンと同じ駆動パターンでガルバノミラーを駆動する制御部を備えるため、特に保護カバーの汚れが防がれたり落とされる位置が、加工時にレーザ光が通る位置と一致することになる。よって、例えば、保護カバーの全体に可視光を出射する場合等に比べて、被加工対象物上に照射するレーザ光の出力が低下してしまうことを効率良く低減することができる。又、汚れで反射されたレーザ光が収束レンズで収束されつつガルバノミラー側に向かうことでガルバノミラー等の光学部品が損傷してしまうといったことを効率良く低減することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、少なくともレーザ光を出射しているタイミングで前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、少なくともレーザ光を出射しているタイミングで光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えるため、少なくとも加工中(例えば、マーキング中)に保護カバーの表面の汚れを防いだり、汚れを落とすことができる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、少なくともレーザ光の出射が終了した直後以降に前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、少なくともレーザ光の出射が終了した直後以降に光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えるため、レーザ光が照射された際に発生した煙が保護カバーの表面に到達する可能性の高いタイミングで保護カバーの表面の汚れ(保護カバーに対する不純物の付着)を防ぐことができる。
【0025】
請求項10に記載の発明では、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、少なくともレーザ光の出射の開始に先立ってレーザ光の出射が開始されるまでに前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを要旨とする。
【0026】
同構成によれば、少なくともレーザ光の出射の開始に先立ってレーザ光の出射が開始されるまでに光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えるため、レーザ光が出射される前に、保護カバーの表面の汚れ(使用していなかった間に付着した不純物等)を落とすことができる。
【0027】
請求項11に記載の発明では、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、光が前記保護カバー内部を全反射するように設けられたことを要旨とする。
【0028】
同構成によれば、光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、光が保護カバー内部を全反射するように設けられるため、出射部から出射された光が外部に漏れることが防止される。よって、特に請求項5に記載の構成にこの構成が適用されることで、紫外光が外部に漏れることが防止されるといった効果を得ることができる。
【0029】
請求項12に記載の発明では、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記保護カバーは円盤状に形成されたものであって、前記光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、前記保護カバーの平面と対向する側であって同保護カバーの軸中心からずれた位置に配設され、光触媒用光源と、該光触媒用光源から出射された光を発散するための発散レンズと、発散された光の外縁の通過を阻止すべく孔が形成されたフィルタ板とからなることを要旨とする。
【0030】
同構成によれば、光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、保護カバーの平面と対向する側であって同保護カバーの軸中心からずれた位置に配設される。そして、出射部は、光触媒用光源と、該光触媒用光源から出射された光を発散するための発散レンズと、発散された光の外縁(光の弱い部分)の通過を阻止すべく孔が形成されたフィルタ板とからなるため、むらの少ない(ほぼ一定の量の)光を保護カバーの広範囲に照射することが可能となる。よって、光触媒層の光触媒反応をほぼ均等に起こさせることができる。
【0031】
請求項13に記載の発明では、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記保護カバーの入射側の表面にも光触媒の材料からなる光触媒層を含むコーティングがなされたことを要旨とする。
【0032】
同構成によれば、保護カバーの(レーザ光の)入射側の表面にも光触媒の材料からなる光触媒層を含むコーティングがなされるため、保護カバーの入射側の表面についても、汚れを防いだり汚れを落とすことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、保護カバーの表面の汚れを防いだり汚れを落とすことができるレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態におけるレーザ加工装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)本実施の形態におけるレーザ加工装置の一部断面図。(b)同じく、保護レンズと多層コーティングの模式断面図。
【図3】本実施形態における紫外光出射ユニットの斜視図。
【図4】本実施形態における紫外光出射ユニットの断面図。
【図5】本実施の形態における制御部を説明するためのタイミングチャート。
【図6】(a)(b)別例における制御部を説明するためのタイミングチャート。
【図7】別例における制御部を説明するためのタイミングチャート。
【図8】別例におけるレーザ加工装置の一部断面図。
【図9】別例におけるレーザ加工装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置1は、被加工対象物としてのプラスチック等からなるワークWの上方(詳しくは、ワークWを搬送するラインの上方)に配置されるレーザマーカ2と、レーザマーカ2にケーブル等を介して接続されたコントローラ3と、コントローラ3にケーブル等を介して接続されたコンソール4とを備えている。
【0036】
レーザ加工装置1は、順次搬送される複数のワークWの表面に文字・記号・図形等のパターンをそれぞれマーキングするものである。レーザマーカ2は、そのハウジング5内にレーザ光源11、ビームエキスパンダ12、ガルバノスキャナ13、及び収束レンズ(fθレンズ)14(図2参照)を備えている。コントローラ3は、レーザ加工装置1を統括的に制御するための制御部15と、制御部15に接続されたメモリ16を備えている。
【0037】
レーザ光源11は、コントローラ3の制御部15にてその発振が制御され、マーキング用のレーザ光Lを出射可能に構成されている。尚、本実施の形態のレーザ光源11が出射するレーザ光Lは、その波長が1064nm程度のものとされている。レーザ光源11の後段に配置されたビームエキスパンダ12は、レーザ光源11から出射されたレーザ光Lのビーム径を所定の倍率で一旦拡大する。
【0038】
ビームエキスパンダ12の後段に配置されたガルバノスキャナ13は、ガルバノミラー13aと、そのガルバノミラー13aを駆動するためのガルバノモータ13bとを有している。ガルバノミラー13aは、ビームエキスパンダ12にて径が拡大されたレーザ光Lを反射してその照射方向を変更するものであり、例えば対をなすX軸ミラーとY軸ミラーとで構成されている。ガルバノミラー13aは、制御部15の制御に基づくガルバノモータ13bの駆動により角度制御され、予め設定された所望の加工パターンのデータに基づいて2次元的にレーザ光Lを走査する。
【0039】
ガルバノミラー13aの後段に配置された収束レンズ14は、ワークWの表面に照射されるレーザ光Lが所定のスポット径となるようにレーザ光Lを収束させてエネルギー密度をマーキングに適した値にまで高める。これにより、ワークWにマーキングが施されるようになっている。
【0040】
又、収束レンズ14の後段には、透光性を有してレーザ光Lを通過させつつ収束レンズ14を保護するための保護カバーとしての保護レンズ21が設けられている。
詳しくは、本実施の形態のハウジング5には、図2(a)に示すように、ユニット固定孔5aが形成され、そのユニット固定孔5aにはレンズユニット22が取付けられている。
【0041】
レンズユニット22は、その直径が下方に向かうほど大きくなるように3段階で変化する円筒状に形成されたレンズユニットハウジング23を有し、そのレンズユニットハウジング23の各直径の内周面に前記収束レンズ14を構成する3つの収束レンズ部材14a〜14cがそれぞれ固定されている。即ち、本実施の形態の収束レンズ14は具体的には3つの収束レンズ部材14a〜14cからなり、3段階でワークWの表面に照射されるレーザ光Lを所定のスポット径とするように設定されている。又、レンズユニットハウジング23の最下段であって、収束レンズ部材14cより下側(外側)の内周面には円盤状の前記保護レンズ21が固定されている。尚、本実施の形態では、レンズユニットハウジング23は、その軸方向中間部が前記ハウジング5に固定され、最下段部分(最も径の大きな部分)がハウジング5の下方に突出するように設けられている。そして、保護レンズ21の出射側(レーザ光Lの出射側であって、下側)の表面には、図2(b)に模式的に示すように、光触媒の材料からなる光触媒層24aと、該光触媒層24aとは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層24bとを含む多層コーティング24(図1及び図2中、各層24a,24bをまとめて太線にて図示する)がなされている。本実施の形態では、光触媒層24aと異屈折率層24bとが交互に設けられて多層コーティング24が構成されている。
【0042】
詳述すると、本実施の形態の光触媒層24aの材料は、二酸化チタンが用いられている。尚、この二酸化チタンは、波長が380nm程度の光、即ち紫外光の照射によって(そのエネルギーを吸収して)光触媒反応を起こすものである。又、異屈折率層24bの材料は、金属酸化物を含まない非光触媒材料である二酸化ケイ素が用いられている。そして、保護レンズ21の出射側の表面に直接コーティングされる第1層(最も入射側に近い側の層であって、図2(b)中、最も上側の層)は、異屈折率層24bとされている。又、保護レンズ21の出射側の表面から最も離れた最外層(図2(b)中、最も下側の層)は、異屈折率層24bとされている。具体的には、本実施の形態の多層コーティング24は、保護レンズ21の出射側の表面から異屈折率層24bと光触媒層24aとがこの順で交互に全部で11層(異屈折率層24bが6層で光触媒層24aが5層)設けられてなる。
【0043】
又、本実施の形態のハウジング5には、図2(a)に示すように、前記レンズユニット22(ユニットハウジング23)の下方に突出した部分に外嵌されるように光触媒反応光出射手段及び紫外光出射手段としての紫外光出射ユニット31が取付けられている。この紫外光出射ユニット31は、前記光触媒層24a(二酸化チタン)に光触媒反応を起こさせるための光(即ち本実施の形態では紫外光)を出射可能に構成される。
【0044】
詳しくは、紫外光出射ユニット31は、図2及び図3に示すように、円筒状に形成された紫外光ユニットハウジング32を有し、その上端(軸方向一端)に形成された係止爪32aが前記ハウジング5に形成された係止部5b(図2参照)に係止されることでハウジング5に取外し可能に取付けられている。そして、紫外光ユニットハウジング32において前記保護レンズ21の外周面と対向する位置には、径方向内側に向かって紫外光を出射可能な出射部33が設けられている。本実施の形態では、出射部33は、図4に示すように、保護レンズ21の径方向外側に等角度(120°)間隔に3つ配設されている。尚、前記レンズユニットハウジング23において、出射部33と対応した位置には出射部33からの紫外光を径方向内側に通過させるための窓23a(図2参照)が形成されている。又、本実施の形態の出射部33は、紫外光を出射可能な紫外光LED34と、紫外光LED34から出射された紫外光を軸方向から見て(図4参照)広角度に発散するための発散レンズ35とからなる。又、本実施の形態の出射部33は、紫外光が保護レンズ21内部を全反射するように設定されて設けられている。又、紫外光LED34は、紫外光ユニットハウジング32の上端に設けられた電極パッド36(図2及び図3参照)に電気的に接続され、紫外光ユニットハウジング32が前記ハウジング5に取付けられた状態で電極パッド36に接続される端子37(図2参照)を介して前記制御部15に電気的に接続されている。
【0045】
コントローラ3の制御部15は、コンソール4にて設定されたパターンのデータが入力されると、そのパターンのデータをメモリ16に記憶させ、同データに基づいて上記レーザマーカ2を駆動させる。
【0046】
ここで、制御部15が行う制御及びその作用の具体例を、図5を参照しつつ以下に記載する。
まずコンソール4によって、順次搬送される樹脂製のワークWの表面に「ABC」の文字群をそれぞれマーキングする操作がなされると、制御部15は、レーザ光源11及びガルバノミラー13a(ガルバノモータ13b)を制御して、ラインによって搬送されてくるワークWの表面に「ABC」の文字群をそれぞれマーキングさせる。即ち、制御部15は、図5に示すように、レーザマーカ2の下方にワークWが搬送されるとタイミングt1〜t2でレーザ光源11をオン制御しつつガルバノモータ13b(ガルバノミラー13a)を駆動制御してワークWの表面に「ABC」の文字群をマーキングさせるといった動作を繰り返す。
【0047】
そして、本実施の形態の制御部15は、少なくともレーザ光Lを出射しているタイミング(t1〜t2)で前記紫外光出射ユニット31の出射部33から紫外光を出射させる。又、本実施の形態の制御部15は、少なくともレーザ光Lの出射が終了した直後(t2)から予め設定した時間(t3)まで紫外光出射ユニット31の出射部33から紫外光を出射させる。具体的には、本実施の形態の制御部15は、「ABC」の文字群をマーキングする上でのレーザ光Lの出射の開始(t1)と同時に紫外光LED34をオン制御し、レーザ光Lの出射が終了した直後(t2)以降の予め設定した時間(t3)に紫外光LED34をオフ制御する。そして、その紫外光が出射されている間(前記t1〜t3)は、光触媒層24a(二酸化チタン)に紫外光が照射され、強力な酸化力が発生されて、保護レンズ21の表面の汚れ(保護レンズ21に対する不純物の付着)が防止されるとともに、汚れ(付着した不純物)が落ちることになる。
【0048】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)保護レンズ21の出射側の表面には、光触媒の材料からなる光触媒層24aと、該光触媒層24aとは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層24bとを含む多層コーティング24がなされ、光触媒層24a(二酸化チタン)に光触媒反応を起こさせるための光(紫外光)を出射可能な紫外光出射ユニット31を備える。よって、保護レンズ21の出射側の表面(多層コーティング24)に光(紫外光)を照射することで、強力な酸化力を発生させ、該表面の汚れ(保護レンズ21に対する不純物の付着)を防いだり、汚れ(付着した不純物)を落とすことができる。特に、本実施の形態のようにワークWが樹脂製の場合、レーザ光Lが照射された際に樹脂が溶融しつつ煙が発生し、その煙に含まれる有機化合物が保護レンズ21の表面に達して付着してしまうということが考えられるが、その汚れの発生を防いだり、その汚れを落とすことができる。その結果、例えば、汚れによりワークW上に照射するレーザ光Lの出力が低下してしまうことを低減することができる。又、例えば、汚れで反射されたレーザ光が収束レンズ14で収束されつつガルバノミラー13a側に向かうことで、ガルバノミラー13a等の光学部品が損傷してしまうといったことを低減することができる。しかも、保護レンズ21の出射側の表面には、光触媒層24aとは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層24bが設けられ、光の反射を防止することができる(所謂ARコートの効果を得ることができる)ことから、ワークW上に照射するレーザ光Lの出力が低下してしまうことを(光触媒を単層コーティングした場合に比べ)低減することができる。
【0049】
(2)保護レンズ21の出射側の表面に直接コーティングされる第1層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる異屈折率層24bとされるため、金属酸化物を含む光触媒の材料からなる光触媒層(24a)とした場合に比べて、保護レンズ21との親和性を高くすることができ、例えば保護レンズ21に対して剥がれ難くすることができる。
【0050】
(3)保護レンズ21の出射側の表面から最も離れた最外層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる異屈折率層24bとされるため、金属酸化物を含む光触媒の材料からなる光触媒層(24a)とした場合に比べて、最外層の強度を強くすることができ、例えば、メンテナンスで払拭した際等に最外層が剥がれ難くなる。
【0051】
(4)光触媒反応光出射手段として紫外光を出射可能な紫外光出射ユニット31(紫外光出射手段)を用い、対する光触媒層24aの光触媒として波長が380nm程度の光、即ち紫外光の照射によって(そのエネルギーを吸収して)光触媒反応を起こす二酸化チタンを用いた。このようにすると、一般的な波長の長いレーザ光Lは勿論のこと、作業者がレーザ光Lの照射位置を確認するための可視光であるガイド光についても光触媒層24a(二酸化チタン)に吸収され難い構成とすることができる。詳しくは、まず上記した本実施の形態では言及していないが、レーザ加工装置1から出射されるレーザ光Lは可視領域でない波長の長いレーザ光Lを用いるのが一般的であり、例えば本実施の形態では1064nm程度の波長のレーザ光Lを用いている。そのため、例えばワークWにレーザ光Lの照射位置を決定する場合などにおいて作業者によるレーザ光Lの視認が困難であり、正確なレーザ光Lの照射位置を決定するのが難しい。よって、このようなレーザ加工装置1には、一般的に、ワークWに対してレーザ光Lと同一位置に可視領域(450nm〜750nm程度であって、具体的には例えば450nm〜600nm程度)の波長を有するガイド光を照射するガイド光照射手段が備えられるものがある。それに対して、光触媒反応光出射手段が可視光を出射し光触媒が可視光にて光触媒反応を起こすものとすると、作業者がレーザ光Lの照射位置を確認するための可視光であるガイド光が光触媒に吸収され効率が低下する可能性が発生してしまうが、これを容易且つ確実に回避することができる。
【0052】
(5)制御部15は、レーザ光Lを出射しているタイミング(t1〜t2)で紫外光出射ユニット31の出射部33から紫外光を出射させるため、マーキング中に保護レンズ21の表面の汚れを防いだり、汚れを落とすことができる。
【0053】
(6)制御部15は、レーザ光Lの出射が終了した直後(t2)から予め設定した時間(t3)まで紫外光出射ユニット31の出射部33から紫外光を出射させるため、レーザ光Lが照射された際に発生した煙が保護レンズ21の表面に到達する可能性の高いタイミングで保護レンズ21の表面の汚れ(不純物の付着)を防ぐことができる。
【0054】
(7)紫外光出射ユニット31の紫外光を出射する出射部33は、紫外光が保護レンズ21内部を全反射するように設けられるため、出射部33から出射された紫外光が外部に漏れることが防止される。
【0055】
(8)出射部33は、円盤状の保護レンズ21の周方向外側に等角度(120°)間隔に3つ配設されるため、1つの出射部33から出射される紫外光の中心が他の2つの出射部33同士の中間位置となる。よって、少ない出射部33で、紫外光をバランス良く(位置によって照射される量の差を少なく)保護レンズ21の広範囲に照射させることができる。
【0056】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、制御部15は、「ABC」の文字群をマーキングする上でのレーザ光Lの出射の開始(t1)と同時に紫外光LED34をオン制御し、レーザ光Lの出射が終了した直後(t2)以降の予め設定した時間(t3)に紫外光LED34をオフ制御するとしたが、他のタイミングで紫外光を出射させるようにしてもよい。
【0057】
例えば、図6(a)に示すように、制御部15は、「ABC」の文字群をマーキングする上でのレーザ光Lの出射が終了した直後(t2)から次のワークWへのレーザ光Lの出射の開始時(次のt1)までの間でのみ紫外光出射ユニット31から紫外光を出射させるようにしてもよい。具体的には、この制御部15は、レーザ光Lの出射が終了した直後(終了と同時であってt2)に紫外光LED34をオン制御し、次のレーザ光Lの出射の開始(t1)と同時に紫外光LED34をオフ制御する。このようにしても、上記実施の形態の効果(4)と同様の効果を得ることができる。
【0058】
又、例えば、図6(b)に示すように、制御部15は、少なくともレーザ光Lの出射の開始(t1)に先立ったタイミングt0からレーザ光Lの出射が開始されるまで(t1)に紫外光出射ユニット31から紫外光を出射させるようにしてもよい。具体的には、この例の制御部15は、「ABC」の文字群をマーキングする上でのレーザ光Lの出射の開始(t1)に先立った(予め設定された時間だけ早い)タイミングt0に紫外光LED34をオン制御し、順次搬送されてくるワークWの全てへの加工(マーキング)が終了するまではオン制御したままとする。このように、レーザ光Lの出射の開始(t1)に先立ってレーザ光Lの出射が開始されるまでに紫外光出射ユニット31からの紫外光を出射させると、レーザ光Lが出射される前に、保護レンズ21の表面の汚れ(使用していなかった間に付着した不純物等)を落とすことができる。
【0059】
又、例えば、図7に示すように、制御部15は、「ABC」の文字群をマーキングする上での各文字「A」「B」「C」毎にレーザ光源11がオフ制御されることにも応じて紫外光LED34を制御するようにしてもよい。具体的には、例えば文字「A」をマーキングする上でのレーザ光Lの出射が終了した直後(t4)から次の文字「B」をマーキングする上でのレーザ光Lの出射の開始時(t5)までの間でのみ紫外光出射ユニット31から紫外光を出射させるようにしてもよい。即ち、この制御部15は、各文字に対するレーザ光Lの出射が終了した直後(終了と同時であってt4)に紫外光LED34をオン制御し、次の文字に対するレーザ光Lの出射の開始(t5)と同時に紫外光LED34をオフ制御する。このようにしても、上記実施の形態の効果(4)と同様の効果を得ることができる。尚、上記実施の形態及び別例(図5〜図7参照)において紫外光LED34は、それぞれの例で示した(オン)時間の範囲でオン状態(点灯)を続けるように図示したが、これに限定されず、それぞれの例で示した(オン)時間の範囲内で点滅するように制御(パルス制御)してもよい。
【0060】
・上記実施の形態では、紫外光出射ユニット31の紫外光を出射する出射部33は、紫外光が保護レンズ21内部を全反射するように設けられるとしたが、光触媒層24a(二酸化チタン)に光触媒反応を起こさせるための光(紫外光)を出射可能であれば、他の態様に変更してもよい。
【0061】
例えば、図8に示すように、変更してもよい。即ち、この例(図8参照)では、上記実施の形態の紫外光出射ユニット31に換えて、光触媒反応光出射手段及び紫外光出射手段を構成する出射部41が、保護レンズ21の平面と対向する側(ハウジング5の内部側)であって同保護レンズ21の軸中心からずれた(ガルバノミラー13aによる走査範囲の邪魔にならない)位置に配設されている。そして、この例の出射部41は、光触媒用光源としての紫外光LED42と、該紫外光LED42から出射された紫外光を発散するための発散レンズ43と、発散された紫外光の外縁(光の弱い部分)の通過を阻止すべく孔44aが形成されたフィルタ板44とからなる。
【0062】
このようにすると、場所によってむらの少ない(ほぼ一定の量の)紫外光を保護レンズ21の広範囲に照射することが可能となる。よって、保護レンズ21の表面にコーティングされた光触媒層24a(二酸化チタン)の光触媒反応をほぼ均等に起こさせることができる。尚、この例では、1つの出射部41が光触媒反応光出射手段及び紫外光出射手段を構成するとしたが、2つ以上の出射部41にて光触媒反応光出射手段及び紫外光出射手段を構成するようにしてもよい。又、この例では、出射部41が収束レンズ14の前段(上方)に配置される(図8参照)としたが、これに限定されず、例えば、収束レンズ14の後段(下方)であって、保護レンズ21の前段(上方)に配置してもよい。
【0063】
・上記実施の形態では、光触媒層24aを構成する光触媒を二酸化チタンとしたが、これに限定されず、例えば、二酸化チタンに炭素や窒素を添加した二酸化チタンを含む他の光触媒に変更してもよい。又、二酸化チタン以外の光触媒としてもよく、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニウム酸化物等の所謂金属酸化物半導体(材料)に変更してもよい。
【0064】
・上記実施の形態では、光触媒反応光出射手段として紫外光を出射可能な紫外光出射ユニット31(紫外光出射手段)を用い、対する光触媒(層)として紫外光の照射によって(そのエネルギーを吸収して)光触媒反応を起こす二酸化チタンを用いたが、これに限定されず、光触媒反応が起こる他の組み合わせに変更してもよい。例えば、光触媒反応光出射手段を、可視光(波長が450nm〜750nm程度の光であって、具体的には例えば450nm〜600nm程度の光)を出射可能なものとし、対する光触媒を、前記可視光の照射によって(そのエネルギーを吸収して)光触媒反応を起こすものとしてもよい。尚、この場合、上記波長帯(例えば450nm〜600nm程度)の光に対して光触媒反応を起こす(反応の良い)光触媒として、例えば、窒素原子含有酸化チタンや硫黄原子含有酸化チタン等を用いる。
【0065】
具体的な例として、図9に示すように変更して実施してもよい。
即ち、この例(図9参照)のレーザ加工装置51は、ワークWの上方(詳しくは、ワークWを搬送するラインの上方)に配置されるレーザマーカ52と、レーザマーカ52に光ファイバケーブル53等を介して接続されたレーザ光源コントローラ54と、レーザ光源コントローラ54にケーブル等を介して接続されたコンソール4とを備えている。
【0066】
この例では、レーザ光源11が、前記制御部15及びメモリ16と共にレーザ光源コントローラ54に設けられ、レーザ光源11から出射されたレーザ光Lは光ファイバケーブル53を介してレーザマーカ52に伝達される。
【0067】
又、この例のレーザマーカ52は、そのハウジング55内にコリメートレンズ56、ビームスプリッタ57、ダイクロイックミラー58、ガルバノスキャナ13、収束レンズ(fθレンズ)14(図8参照)、及び光触媒反応光出射手段としての可視光源59を備えている。尚、この例のレーザマーカ52は上記実施の形態のビームエキスパンダ12は備えていない例である。
【0068】
コリメートレンズ56は、光ファイバケーブル53を介して伝達されたレーザ光Lを発散光から平行光に変換し、その後段のビームスプリッタ57は、レーザ光Lの方向を後段のダイクロイックミラー58に向け、ダイクロイックミラー58は、レーザ光Lの方向を更に後段のガルバノミラー13aに向ける。このダイクロイックミラー58は、波長が1064nm程度であるレーザ光Lを反射するとともに、波長が450nm〜600nm程度の可視光Laを透過するものが用いられている。
【0069】
そして、ダイクロイックミラー58近傍には、前記レーザ光Lと同軸上に(光軸が合流されるように)可視光Laを出射可能な可視光源59が設けられている。言い換えると、可視光源59は、自身が出射する可視光Laがダイクロイックミラー58を透過して前記レーザ光Lと光軸が合流するように設けられている。
【0070】
これにより、例えば、レーザ加工(レーザ光Lの出射の開始)に先立って可視光Laをガイド光としてワークW上に照射することでレーザ光Lの照射位置を確認することが可能とされている。
【0071】
そして、このようなレーザ加工装置51において、保護レンズ21の出射側(レーザ光Lの出射側であって、下側)の表面には、光触媒の材料からなる光触媒層61aと、該光触媒層61aとは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層61bとを含む多層コーティング61(図9中、各層61a,61bをまとめて太線にて図示する)がなされている。そして、この光触媒層61aの材料としては、波長が450nm〜750nm程度の光、即ち可視光Laの照射によって(そのエネルギーを吸収して)光触媒反応を起こす例えば、窒素原子含有酸化チタンや硫黄原子含有酸化チタン等が用いられている。
【0072】
そして、レーザ光Lの照射位置を確認可能とするガイド光(可視光La)を出射可能な可視光源59は、光触媒層61aに光触媒反応を起こさせるための光(可視光La)を出射可能な光触媒反応光出射手段を兼ねている。このようにすると、新たに(別途)光触媒反応光出射手段(上記実施の形態の紫外光出射ユニット31や前記出射部41(図8参照))を設ける必要がなく、装置の小型化や低価格化を図ることが可能となる。又、光触媒反応光出射手段は可視光源59であり、紫外光を用いないため、紫外光が外部に漏れるといったことがない。
【0073】
又、この例(図9参照)の制御部15は、可視光源59から光触媒層61aに光触媒反応を起こさせるための可視光Laを出射する際、前記レーザ光Lによる加工パターンと対応したガルバノミラー13aの駆動パターンと同じ駆動パターンでガルバノミラー13aを駆動するようにしてもよい。このようにすると、特に保護レンズ21の汚れが防がれたり汚れが落とされる位置が、加工時にレーザ光Lが通る位置(走査される位置であって、例えば「ABC」の文字と対応した位置)と一致することになる。よって、例えば、保護レンズ21の全体に可視光Laを(走査させて)出射する場合等に比べて、ワークW上に照射するレーザ光Lの出力が低下してしまうことを効率良く低減することができる。又、汚れで反射されたレーザ光Lが収束レンズ14で収束されつつガルバノミラー13a側に向かうことでガルバノミラー13a等の光学部品が損傷してしまうといったことを効率良く低減することができる。尚、勿論、制御部15は、保護レンズ21の全体(全面)に可視光Laが走査されて照射されるようにガルバノミラー13aを駆動するようにしてもよい。又、ガイド光としての可視光Laは、一般的に、レーザ加工(レーザ光Lの出射の開始)に先立ってワークW上に照射することでレーザ光Lの照射位置を確認するためのものであるが、レーザ光Lと干渉しないようにすることができるため、レーザ光Lと同時に上記したようなタイミング(例えば、図5のt1〜t3等)で出射しても問題はない。
【0074】
・上記実施の形態では、異屈折率層24bの材料は、金属酸化物を含まない非光触媒材料である二酸化ケイ素が用いられているとしたが、これに限定されず、金属酸化物を含まない他の非光触媒材料を用いたものとしてもよいし、異なる屈折率の(他の)光触媒の材料を用いたものとしてもよい。
【0075】
・上記実施の形態では、多層コーティング24は、保護レンズ21の出射側の表面から異屈折率層24bと光触媒層24aとがこの順で交互に全部で11層(異屈折率層24bが6層で光触媒層24aが5層)設けられてなるとしたが、これに限定されず、他の構成としてもよい。例えば、保護レンズ21の出射側の表面から異屈折率層24bと光触媒層24aとがこの順で交互に全部で3層や7層等、他の数だけ設けられてなるものとしてもよい。特に、異屈折率層24bと光触媒層24aとが全部で3層以上の奇数層設けられた構成とすれば、上記実施の形態の効果(2)、(3)を同時に得ることができるので好ましい構成となる。又、例えば、前記光触媒層24a及び前記異屈折率層24bとは異なる材料や屈折率の層を含む(即ち、3種類以上の層を含む)多層コーティングとしてもよい。尚、これらの変更は、保護レンズ21(保護カバー)の材質や厚さやガルバノミラー13aの駆動時の最大傾斜角度(レーザ光Lの振り角)やレーザ光Lの波長等に基づいて最適化(レーザ光Lの出力低下が小さくなるように設定)することが好ましい。又、例えば、保護レンズ21の出射側の表面に直接コーティングされる第1層を、光触媒層としてもよい。又、例えば、保護レンズ21の出射側の表面から最も離れた最外層を、光触媒層としてもよい。
【0076】
・上記実施の形態では、紫外光出射手段としての紫外光出射ユニット31における出射部33(41)が紫外光を出射可能な紫外光LED34(42)を備えるとしたが、最終的に紫外光を出射可能な紫外光出射手段であれば、紫外光LED34(42)を備えない構成に変更してもよい。即ち、光源自体が紫外光を出射しなくても、波長変換技術によって最終的に紫外光を出射できれば、光源自体は赤色LDを用いる等、他の構成の紫外光出射手段に変更してもよい。又、例えば、紫外光を照射する際にガルバノミラー13aの前段に波長変換素子(非線形光学結晶)を配置するようにしてレーザ光Lを紫外光に変換し光触媒層24a(二酸化チタン)に照射する構成及び方法としてもよい。
【0077】
・上記実施の形態では、保護レンズ21の出射側(レーザ光Lの出射側であって、下側)の表面に多層コーティング24がなされているものとしたが、これに加えて、保護レンズ21の入射側(レーザ光Lの入射側であって、上側)の表面に光触媒の材料からなる光触媒層を含むコーティングがなされたものとしてもよい。
【0078】
・上記実施の形態では、保護レンズ21の出射側の表面の全面に多層コーティング24がなされているように図示(図2参照)したが、少なくともレーザ光Lが走査される範囲がコーティングされていれば、全面より小さな範囲をコーティングしたものとしてもよい。又、保護レンズ21の表面の全面に多層コーティング24がなされているか否かに関わらず、光触媒反応を起こさせるための光(紫外光等)は、少なくともレーザ光Lが走査される範囲に照射すればよく、全面より小さな範囲に照射する構成としてもよい。
【0079】
・上記実施の形態では、本発明をワークW上に文字等をマーキングするレーザ加工装置1に具体化したが、これに限定されず、レーザ光を被加工対象物に照射して加工を施すものであれば他のレーザ加工装置に具体化してもよい。
【0080】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項11に記載のレーザ加工装置において、前記保護カバーは円盤状に形成されたものであって、前記出射部は、前記保護カバーの径方向外側に等角度間隔に複数配設されたことを特徴とするレーザ加工装置。
【0081】
同構成によれば、出射部は、保護カバーの径方向外側に等角度間隔に複数配設されるため、光をバランス良く(位置によって照射される量の差を少なく)保護カバーの広範囲に照射させることが可能となる。
【0082】
(ロ)上記(イ)に記載のレーザ加工装置において、前記出射部は、奇数個配設されたことを特徴とするレーザ加工装置。
同構成によれば、出射部は、保護カバーの周方向外側に等角度間隔に奇数個配設されるため、1つの出射部から出射される光の中心を容易に対向側にある2つの出射部同士の中間位置とすることができる。よって、光をバランス良く(位置によって照射される量の差を少なく)保護カバーの広範囲に照射させることができる。
【符号の説明】
【0083】
11…レーザ光源、13a…ガルバノミラー、14…収束レンズ、15…制御部、21…保護レンズ(保護カバー)、24,61…多層コーティング、24a,61a…光触媒層、24b,61b…異屈折率層、31…紫外光出射ユニット(光触媒反応光出射手段及び紫外光出射手段)、33,41…出射部、42…紫外光LED(光触媒用光源)、43…発散レンズ、44…フィルタ板、44a…孔、59…可視光源(光触媒反応光出射手段)、L…レーザ光、La…可視光、W…ワーク(被加工対象物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射可能なレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光の方向を変更するための少なくとも1つのガルバノミラーと、
前記ガルバノミラーからのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズと、
透光性を有して前記収束レンズからのレーザ光を通過させつつ前記収束レンズを保護するための保護カバーと
を備えたレーザ加工装置であって、
前記保護カバーの出射側の表面には、光触媒の材料からなる光触媒層と、該光触媒層とは異なる屈折率の材料からなる異屈折率層とを含む多層コーティングがなされ、
前記光触媒層に光触媒反応を起こさせるための光を出射可能な光触媒反応光出射手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記保護カバーの出射側の表面に直接コーティングされる第1層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる前記異屈折率層とされたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記保護カバーの出射側の表面から最も離れた最外層は、金属酸化物を含まない非光触媒材料からなる前記異屈折率層とされたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記光触媒は、二酸化チタンを含むことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記光触媒反応光出射手段は、紫外光を出射可能な紫外光出射手段であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記ガルバノミラーの前段で、前記レーザ光源からのレーザ光と同軸上に可視光を出射可能な可視光源を備え、該可視光をガイド光として前記被加工対象物上に照射して前記レーザ光の照射位置を確認可能とされるレーザ加工装置であって、
前記可視光源は、前記光触媒反応光出射手段を兼ねることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工装置において、
前記可視光源から光触媒層に光触媒反応を起こさせるための可視光を出射する際、前記レーザ光による加工パターンと対応したガルバノミラーの駆動パターンと同じ駆動パターンで前記ガルバノミラーを駆動する制御部を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
少なくともレーザ光を出射しているタイミングで前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
少なくともレーザ光の出射が終了した直後以降に前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
少なくともレーザ光の出射の開始に先立ってレーザ光の出射が開始されるまでに前記光触媒反応光出射手段からの光を出射させる制御部を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、光が前記保護カバー内部を全反射するように設けられたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記保護カバーは円盤状に形成されたものであって、
前記光触媒反応光出射手段の光を出射する出射部は、前記保護カバーの平面と対向する側であって同保護カバーの軸中心からずれた位置に配設され、光触媒用光源と、該光触媒用光源から出射された光を発散するための発散レンズと、発散された光の外縁の通過を阻止すべく孔が形成されたフィルタ板とからなることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記保護カバーの入射側の表面にも光触媒の材料からなる光触媒層を含むコーティングがなされたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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