レーザ溶接装置およびレーザ溶接システム
【課題】振動によるレーザ照射位置のずれを補正するレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工ヘッド3内に設けられた振動を検出するジャイロ21、22、23と、ジャイロ21、22、23が検出した振動からレーザの照射位置ずれと、その補正量を算出するプロセッサ25と、プロセッサ25からの補正量により反射鏡11を移動させるモータ16、17とを有する。
【解決手段】レーザ加工ヘッド3内に設けられた振動を検出するジャイロ21、22、23と、ジャイロ21、22、23が検出した振動からレーザの照射位置ずれと、その補正量を算出するプロセッサ25と、プロセッサ25からの補正量により反射鏡11を移動させるモータ16、17とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置およびレーザ溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを利用した溶接にもレーザ溶接が用いられるようになってきている。従来、このような溶接技術として、ロボットアーム先端に取り付けたレーザ溶接装置は溶接点から離して停止させた上で、レーザ溶接装置内部の反射鏡を回動させることでレーザを振り分け、複数の溶接点を溶接する技術がある(たとえば特許文献1参照)。このようなワークから離れたところからレーザにより溶接を行う技術をリモート溶接と呼んでいる。
【特許文献1】特許第3229834号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなリモート溶接においては、ロボットアームの先端に取り付けられたレーザ溶接装置が、これまでのスポット溶接に用いる溶接ガンなどと比較して軽いため、より速い移動が可能となる。
【0004】
しかしながら、レーザ溶接装置を移動開始させた際や、停止させた際には、レーザ溶接装置の慣性によって、定速になるまで、または完全に停止するまでに振動が生じる。このような振動は移動中においても起こることがある。
【0005】
そしてこのような振動は、レーザ溶接装置から射出されたレーザの照射位置(レーザが当る位置)を振るわせてしまい、溶接ビード形成時の熱の入り方が不均一になって溶接部位の品質低下を招くという問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、レーザ溶接装置の移動開始や停止時、また移動中の振動によって生じる溶接品質の低下を抑えることができるレーザ溶接装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、レーザを射出するレーザ射出手段と、前記レーザ射出手段の振動に伴い発生する前記レーザ射出手段から照射されたレーザ照射位置のずれを補正する補正手段と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ射出手段の移動に伴う振動によって生じるレーザ照射位置のずれを、補正手段により補正することとしたので、レーザ溶接の移動時、停止時、および移動中に伴う振動によって生じる溶接品質の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明を適用したレーザ溶接システムを説明するための概略斜視図、図2はレーザ加工ヘッド(レーザ溶接装置)を説明するための概略透視図である。
【0011】
なお、本実施形態におけるレーザ溶接装置は、ロボットのアーム先端に取り付けることを想定したものである。このため、レーザ溶接装置をレーザ加工ヘッドと称する。
【0012】
図示するレーザ溶接システムを用いた溶接は、これまでのスポット溶接などと比較して、溶接冶具が直接ワークと接触せずに、レーザを用いてワークから離れた場所から溶接するものである。このためこのような溶接をリモート溶接と称している。
【0013】
図示したレーザ溶接システムは、ロボット1と、このロボット1のアーム2先端に設けられ、レーザ100を射出するレーザ加工ヘッド3と、レーザ光源であるレーザ発振器5と、レーザ発振器5からレーザ加工ヘッド3までレーザを導く光ファイバーケーブル6とからなる。レーザ発振器5は、レーザを光ファイバーケーブル6によって導くためにYAGレーザ発振器を用いている。
【0014】
ロボット1は、一般的な多軸ロボット(多関節ロボットなどとも称されている)などであり、教示作業によって与えられた動作経路のデータに従い、その姿勢を変えてアーム2の先端、すなわちレーザ加工ヘッド3をさまざまな方向に移動させることができると共にレーザ加工ヘッド3の向きも変更可能となっている。
【0015】
ロボットアーム2へのレーザ加工ヘッド3の取り付けには、たとえば、ロボットアームからの振動が伝わるのを抑えるために振動を吸収する振動抑制部材を入れて取り付けてもよい。振動抑制部材としては、たとえば、制振鋼板、ダンパー、制振ゴムなどが使用可能であり、特に、レーザ加工ヘッド3に加わる振動に固有の周波数において振動吸収効果の高いものが好ましい。
【0016】
レーザ加工ヘッド3は、レーザ溶接装置である。このレーザ加工ヘッド3は、図2に示すように、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ100を、最終的に目的物方向へ射出する反射鏡11(反射手段)と、反射鏡11を回動させるモータ16および17(駆動手段)と、リアルタイムでこのレーザ加工ヘッドに加わる振動を検出するためのジャイロ(振動検出手段)21、22および23と、レーザ照射位置のずれをリアルタイムで補正するために必要な処理を行う補正処理装置(演算手段)25とを有する。
【0017】
反射鏡11は、鏡面を通る垂直な線をz軸として、このz軸と直行するx軸およびy軸をそれぞれ中心として独立に回動自在であり、回動することでレーザ100の射出方向を自在に振り分けることができる。このためにモータ16および17が設けられている。なお、モータには必要によりギア機構(不図示)が設けられていてもよい。
【0018】
このモータ16および17は、補正処理装置25からの信号によってレーザの照射方向を補正するために反射鏡11を回動させると共に、加工ヘッド制御装置(後述)からの信号によって溶接点方向へレーザを向けるために反射鏡11を回動させる。このようなモータ16および17は、たとえばサーボモータ、ステッピングモータなどを使用することができ、指示された回転角度に応じて回転動作するモータが好ましい。
【0019】
レンズ群12内には、光ファイバーケーブル6端部から射出されたレーザを平行光にするコリメートレンズ121と、平行光になったレーザを所定位置で集光させる集光レンズ122を有する。
【0020】
ジャイロ21、22および23は、たとえば、圧電ジャイロなどを使用することができ、加わった振動を角速度として検出している。このジャイロ21、22および23は、それぞれ互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸方向の振動現象をリアルタイムで検出している。これにより、レーザ加工ヘッド3に加わった振動量とその方向を知ることができる。検出した振動は補正処理装置25に送っている。
【0021】
補正処理装置25は、ジャイロ21、22、23から得られた3軸各方向の振動量からレーザ照射位置の補正を行うために補正量を算出し、モータ16および187を駆動して反射鏡11の向きを補正量に見合うだけ移動させている。この補正処理装置25は、たとえばマイクロプロセッサとメモリを中心としたマイクロコンピュータなどを利用する。特に本実施例1のようにリアルタイムで振動によるレーザ照射位置のずれを補正する場合、信号経路による遅延を防ぐためにもマイクロプロセッサをレーザ加工ヘッド3内部も受け、ジャイロおよびモータの近傍に設置し、信号経路を短くすることが好ましい。
【0022】
レーザ発振器5は、YAGレーザ発振器である。ここでは、レーザを光ファイバーケーブル6によって導くためにYAGレーザを用いている。なお、その他のレーザであってもレーザ溶接に使用でき、光ファイバーケーブル6で導くことができるものであれば限定されない。
【0023】
以下、このように構成されたリモート溶接システムの作用を説明する。
【0024】
本実施形態1においては、補正手段は補正処理装置25を中心に、ジャイロ21、22、23、モータ16、17、および反射鏡11によって構成される。
【0025】
基本的な補正動作は、まず、レーザ加工ヘッドに加わる振動現象をジャイロ21、22、および23によって検出する。補正処理装置25が検出された振動量からレーザ照射位置のずれ量を求めて、そのずれ量を補正するために必要な反射鏡の移動量を算出する。そして補正処理装置25は算出した補正量だけ反射鏡を移動させるためにモータ16および/または17へ動作指令を出すことになる。
【0026】
レーザ加工ヘッド3に加わる振動は2つ分けることができる。一つは、レーザ加工ヘッド3が傾く振動である。これを角度ずれと称する。他の一つは、レーザ加工ヘッド3が所定位置からずれる振動である。これを位置ずれと称する。
【0027】
図3は、角度ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【0028】
図3(a)に示すように、振動がない場合、レーザ100は、目的の溶接点P0に照射される。このときレーザ加工ヘッド3全体が傾くような振動が加わると、そのままでは図3(b)に示すように、レーザの照射位置がP0からP1にずれてしまう。そこで、ジャイロ21、22、および23から得られた振動量からこの角度のずれ角度θ1を算出して、このずれ角度を補正するために必要な反射鏡11の補正角度θ2を算出する。
【0029】
補正角度θ2は、θ2=θ1/2により算出する。この補正角度θ2だけ反射鏡11を傾きが生じた方向と逆方向へ回動させることで、図3(c)に示すように、レーザ照射位置は補正されて、P0=P1となる。
【0030】
特にこのような角度ずれは、本実施形態においては、振動をジャイロによって検出しているため、ジャイロにより検出された角度を1/2にすれば補正量として用いることができる。
【0031】
図4は、位置ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【0032】
図4(a)に示すように、振動がない場合、レーザ100は、目的の溶接点P0に照射される。このときレーザ加工ヘッド3全体が移動するような振動が加わると、そのままでは図4(b)に示すように、レーザの照射位置がP0からP2にずれてしまう。そこで、ジャイロ21、22、および23から得られた振動量からこの位置ずれ量xを算出して、これを補正するために必要な反射鏡11の補正角度θ3を算出する。
【0033】
補正角度θ3は、tan2θ=x/Lにより算出する。なお、ここでLは反射鏡11からレーザ照射位置(すなわち溶接点)までの距離である。
【0034】
補正処置装置25は、この補正角度θ3だけ反射鏡11を移動が生じた方向とは反対方向にレーザの照射方向が変わるように回動させる。これにより図4(c)に示すように、レーザ照射位置は補正されて、P0=P2となる。
【0035】
なお、これらのような角度ずれの補正と位置ずれの補正は、両方行うようにすることが好ましいが、いずれか一方だけでもよい。特に前述の角度ずれの補正の方がプロセッサによる処理が簡単であるため、これだけを行うようにしてもずれ補正の効果がある。
【0036】
次に、レーザ溶接システム全体の作用を説明する。
【0037】
図5は、このレーザ溶接システム全体の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【0038】
レーザ溶接システムの制御系は、レーザ発振器5におけるレーザ出力のオン、オフなどを制御するレーザコントローラ51と、ロボット1の動きを制御するロボット制御装置(ロボット制御手段)52と、レーザ加工ヘッド3の反射鏡11の動きを制御する加工ヘッド制御装置53からなる。
【0039】
レーザコントローラ51は、レーザ出力のオン、オフと、レーザの出力強度調整などを行っている。このレーザコントローラ51は、ロボット制御装置52からの制御信号によって、レーザ出力のオン、オフを行っている。
【0040】
ロボット制御装置52は、ロボット1の動き(姿勢)を制御すると共にレーザ出力のオン、オフなどの制御信号の出力も行っている。
【0041】
加工ヘッド制御装置53は、反射鏡11をモータ16および17によって動かしてレーザの射出方向を任意に変更する。この加工ヘッド制御装置53による反射鏡11の動作は、先に説明した補正動作による動きとは独立したものである。なお、ここでレーザの射出方向を任意に変更するとは、具体的には溶接点方向へレーザを向けるための動きである。
【0042】
なお、ロボット1の動きやレーザのオンオフ動作、およびレーザの射出方向を溶接点方向へ向けるための反射鏡の回動動作などは、すべてロボット1の動作教示のときに行われる。したがって、このロボット制御装置52は教示されたデータ(教示データと称する)をもとにロボット動作そのものと各種制御信号の出力を行う。
【0043】
このように構成されたレーザ溶接システムを用いたリモート溶接の方法を説明する。
【0044】
図6は、レーザ溶接におけるレーザ加工ヘッド3とレーザ射出方向の動きを説明するための説明図である。なお、ここでは理解を容易にするためにごく簡単な基本形を例に説明する。
【0045】
本実施形態では、図6に示すように、複数の溶接点201〜206がある場合に、目標とする一つの溶接点(たとえば201)へレーザ100を射出中にも、レーザ加工ヘッド3を、次の溶接点(たとえば202)へ向けて所定速度で移動させる。そして、同時にレーザ加工ヘッド3が移動しても現在溶接中の溶接点(たとえば201)の溶接が終了するまで、その溶接点(たとえば201)からレーザ100が外れないように反射鏡11を加工ヘッド制御装置53からの信号により回動させている。このとき、反射鏡11は加工ヘッド制御装置53からの信号による回動とは独立して、常に補正処理装置25からの信号により反射鏡11の向きが変更されて、レーザ100の振動によるずれを補正している。
【0046】
したがって、図示する場合には、レーザ加工ヘッド3は、その位置aからjまで一定の速度で移動しつつ、レーザの射出方向がそれぞれの溶接点へ向くように反射鏡11が回動されている。
【0047】
このときレーザ加工ヘッド3の位置移動はロボット姿勢の変更、すなわちロボットアーム2を動かすことで行っている。ロボット1の動きはロボット制御装置52によって制御されており、レーザ加工ヘッド3の位置が溶接中の溶接点から次の溶接点へ向けて一定速度で移動させている。したがって、図示する場合には、レーザ加工ヘッド3は、その位置aからjまで一定の速度で移動する。
【0048】
ここでレーザ加工ヘッド3の位置を一定速度で移動させるのは、補正処理装置25によるリアルタイムの補正を行っているものの、大きな振動は本質的にロボットの動きそのもので抑えることが重要である。ここでは、位置aからjまで常に一定速度に保つようにしている。
【0049】
一方、反射鏡11は、一つの溶接点を溶接中は、レーザ焦点位置が、レーザ加工ヘッド3の移動方向と相対的に逆方向で、かつ、レーザ焦点位置の移動速度がレーザ加工ヘッド3の移動速度とほぼ同じになるように回動させている。このときの反射鏡11の回動速度を溶接時の所定速度と称する。これにより、レーザ加工ヘッド3の移動と逆方向にほぼ同じ速度でレーザ焦点位置が移動することになるため、結果的に一つの溶接点の溶接中はレーザがその溶接点を外れることがなくなるのである。ここで、ほぼ同じ速度としているのは、溶接点のビード形成距離(ビードの大きさ)によっては、一つの溶接点においてレーザ照射位置(焦点位置)を移動させなければならないためである。すなわち、ビード形成距離に応じて、その分レーザ焦点位置の移動速度をレーザ加工ヘッド3の移動速度よりわずかに遅くなるようにして、レーザ加工ヘッド3の移動方向にビードが形成されるように調整することになる。
【0050】
また、このレーザ加工ヘッド3の移動速度は、溶接速度より速い必要がある。これは、一つの溶接点(たとえば201)の溶接が終了した時点で、次の溶接点(たとえば202)に対してレーザが届くようにするためである。
【0051】
通常、レーザ溶接の溶接速度は1〜5m/minである。これに対して、レーザ加工ヘッド3の移動速度(すなわちロボットアームを動作させる速度)は、ロボットによってさまざまであるが、たとえば最大10〜20m/min程度であり、また、反射鏡11によるレーザ焦点位置の移動速度は焦点位置が反射鏡11から1m程度の部分で最大100m/min程度が可能である。したがって、レーザ加工ヘッド3の移動速度を溶接速度より速くすることは十分可能である。
【0052】
なお、このようなそれぞれの速度から実際の移動速度を選択する際には、レーザ加工ヘッド3の振動を抑えるようにするために、レーザ加工ヘッド3の移動速度ができるだけ低速となるように、各速度を選択することが好ましい。
【0053】
一つの溶接点(たとえば201)の終了から、次の溶接点(たとえば202)へのレーザ焦点位置の移動も、反射鏡11の回動によって行う。このときの反射鏡11の回動は、可能な限り速く行うことが好ましい。このとき、レーザ出力は、停止せずにそのまま出力を続けるようにしてもよい。これは、上記のとおり、レーザ焦点位置の移動速度は溶接速度に対して桁違いに速いため、溶接点間の移動中に、溶接しない部分にレーザが照射されたとしても、その部分がレーザの焦点位置から外れていたり、焦点位置内にあったとしても一瞬レーザが当たるだけでほとんど影響がなく、レーザ100が当たった部分を傷つけることはないからである。なお、必要に応じてレーザコントローラ51にオフ信号を送りレーザ出力を一時停止することも可能である。
【0054】
このようにロボット1によるレーザ加工ヘッド3の移動および反射鏡11の向きを制御することで、ロボットアーム先端に設けられているレーザ加工ヘッド3の位置は、順次溶接を行う方向に、溶接点(たとえば201)の溶接開始時にはその溶接点(たとえば202)より前にあり(たとえば位置b)、その溶接点(たとえば202)の溶接終了時にはその溶接点(たとえば201)より先にある(たとえば位置d)ことになる。
【0055】
図7は、このリモート溶接における制御手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って最初の溶接開始位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて定速移動を開始すると共に、レーザ出力をオンにするようにレーザコントローラ51に指令する(S1)。同時に加工ヘッド制御装置53に対しても溶接時の所定速度で反射鏡11を回動させるように指令する(S2)。
【0057】
続いて、ロボット制御装置52は、教示データに従い、次の溶接点の溶接開始位置に到達したか否かを判断する(S3)。ここで教示データに従う次の溶接点の溶接開始位置は、その前の溶接点の溶接が終了した位置でもある。
【0058】
この段階で次の溶接点の溶接開始位置に到達していれば、反射鏡11を次の溶接点方向へ高速で回動するように加工ヘッド制御装置53に対して指令する(S4)。これにより、加工ヘッド制御装置53が次の目標となる溶接点方向へ反射鏡11を高速で回動させてレーザが次の溶接点方向へ向けて射出されるようになる。以降この動作を最終溶接点の溶接終了まで続けることになる。
【0059】
一方、ステップS3において、次の溶接点の溶接開始位置に到達していなければ、全溶接点の溶接終了か否かを判断する(S5)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。ここで、最終溶接点の溶接終了でなければ、現在溶接中の溶接作業自体が終了していないので、そのまま処理はステップS3へ戻る。これにより現在溶接中の溶接がそのまま継続されることになる。
【0060】
一方、ステップS5において、最終溶接点の溶接が終了していれば、教示データに従って、レーザ出力をオフにするようにレーザコントローラ51に指令し、レーザ加工ヘッドを待機位置(または作業終了位置など)に戻し(S6)、すべての作業を終了する。
【0061】
この動作を、図6の例を使って説明すれば、はじめにロボット制御装置52はレーザ加工ヘッド3を溶接点201の溶接開始位置aまで移動し、レーザ加工ヘッド3を一定速度で移動させつつレーザ出力を開始させ、同時に反射鏡11を溶接点201にレーザが照射されるように溶接時の所定速度で回動させる。
【0062】
続いて、位置bを経て、溶接点202の溶接開始位置cに到達した時点で(この時点で溶接点201の溶接が終了している)、ロボット制御装置52は、反射鏡11を教示されている最大速度で回動してレーザ射出方向を溶接点202方向に回動させる。そして溶接点202の溶接を継続して実行させる。以降溶接点206の溶接が終了するまでこれらの処理を繰り返し、溶接点206の溶接が終了した時点で、レーザ出力を停止させ、すべての溶接作業を終了する。
【0063】
なお、このように複数の溶接点を溶接する際には、反射鏡11から溶接点までの距離が焦点深度を超える場合には、適宜レンズ郡12を調節して焦点位置を調整することになる。このようなレンズ郡12の調節も溶接点とレーザ加工ヘッド3の位置(その間の距離)からロボット1の動作を教示する際にあらかじめ設定しておくことになる。なお、自動合焦機能が付いたレーザ加工ヘッド3の場合には、レンズ郡12による焦点調節の必要はなく自動合焦機能に任せることになる。
【0064】
図8は、他のレーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【0065】
この方法では、レーザ加工ヘッド3がAの位置に来た時点でレーザ加工ヘッド3を停止させ、そこから反射鏡11を回動させてレーザ照射可能範囲内に位置する溶接点301、302、および303に対して連続的に溶接を行う。溶接点303の溶接終了後は、レーザをいったん停止させて、レーザ加工ヘッド3をA位置からB位置に移動し、レーザ加工ヘッド3をB位置で停止させて、溶接点304、305、および306に対してレーザ加工ヘッド3を回動させることにより連続的に溶接を行う。
【0066】
このような溶接動作の場合、AおよびBの位置に来てレーザ加工ヘッド3を停止させたときに振動が発生する。これまでのレーザ加工ヘッド3の移動の際には、このような移動動作をさせた場合、レーザ加工ヘッド3における停止時の振動が完全に収まるのを待ってからレーザの射出動作に移ることになる。これに対し、本実施形態では、レーザ加工ヘッド3を停止させたときに生じた振動によるレーザ射出位置のずれは、補正処理手段によってリアルタイムで補正されるため、レーザ加工ヘッドの停止から即時にレーザ射出動作に移ることができる。
【0067】
図9は、このような他の方法による場合の制御手順を示すフローチャートである。
【0068】
まず、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って溶接位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて停止する(たとえばAの位置)(S11)。そして、レーザ出力をオンにするようにレーザコントローラ51に指令する(S12)。
【0069】
続いて、加工ヘッド制御装置53は、教示データに従い反射鏡11を回動させてレーザ照射可能範囲内に位置する溶接点(たとえば溶接点301、302、および303)に対して連続的に溶接を行う(S13)。
【0070】
次にその溶接位置での溶接点の溶接が終了したか否かを判断する(S14)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。その溶接位置での当右折が終了している場合は、レーザ出力を一時停止するようにレーザコントローララ51に指令してレーザ出力を停止する(S14)。
【0071】
次に全溶接点の溶接終了か否かを判断する(S15)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。ここで、最終溶接点の溶接終了でなければ、ステップS1へ戻り、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って次の溶接開始位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて停止する(たとえばBの位置)(S11)。以後、前溶接点の溶接が終了するまで、以降の処理を繰り返すことになる。
【0072】
一方、ステップS15において、最終溶接点の溶接が終了していれば、教示データに従ってレーザ加工ヘッドを待機位置(または作業終了位置など)に戻し(S16)、すべての作業を終了する。
【0073】
実際にAからBへの移動してそれぞれの位置で停止動作を伴うリモート溶接の場合、停止時におけるずれ量を測定したところ、反射鏡11から溶接点までの距離を800mmとしたとき、±1.5内(全振れ幅として約3mm)であった。また、このようなずれを生じさせたときの振動周波数は、5〜20Hzであった。
【0074】
このようなずれを補正するためには、反射鏡11を0.1°向きを変えればよいことになる。
【0075】
なお、現行ロボットの制御周期は、250Hz(4ms)が可能であるため、振動周期の10倍以上の制御周期が確保されるので、リアルタイムの補正も十分可能である。また、この現行ロボットの制御周期からすれば振動周期40Hz程度まで確実に補正を行うことができる。したがって、このような振動周波数であれば、ジャイロからの信号をいったんロボット制御装置に送って、そこから反射鏡の動きを制御することでも補正を行うことができる。また、補正処理装置として用いるプロセッサ(たとえばDSP)の制御周期を上げれば、さらに振動周期の速い場合でも対応できる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態1では、反射鏡11をあらかじめ決められた動きに、または任意に動かしてレーザ射出方向を変更すると共に、この反射鏡11を別に補正処理装置25によって制御することで、レーザ加工ヘッド3の振動に伴うレーザ射出位置のずれをリアルタイムで補正することとした。したがって、レーザ加工ヘッド3の動作経路や位置、移動開始や停止のタイミングに関わりなく、レーザ加工ヘッド3に加わった振動をリアルタイムで補正し、確実にレーザ照射位置を目的の位置に照射することができるようになる。このため、レーザ溶接における溶接部位においてレーザ照射位置の振れがなく均一なビードの形成が可能となり、溶接品質が向上する。
【0077】
なお、本実施形態1による補正動作は、すべて振動について可能な限りレーザの照射位置がずれないように補正を行うものである。しかし、振動が大きい場合、補正しきれない場合も生じる。このような場合、補正しきれずにレーザの照射位置が振れて溶接品質を低下させるおそれもある。そこで、ジャイロ21、22、または23のいずれかが検出した振動量に対して補正するか否かを決定するしきい値をあらかじめ記憶しておき、検出した振動量がこのしきい値を超えた場合には補正せずにレーザの射出を停止させるようにしてもよい。この場合、しきい値は、補正処理装置25内のメモリなどにあらかじめ記憶しておくことになる。このようにすることで、補正しきれないような大きな振動が加わり、溶接点からレーザが外れたり溶接品質を著しく低下させるような場合には、レーザの射出そのものを停止させ異常処理を行うことも可能となる。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態2は、レーザ加工ヘッド3内の反射鏡11が固定されている場合を例である。
【0079】
これは、レーザ加工ヘッド3は、ロボとアーム2に接続されているため、ロボット姿勢をかえることで、レーザ加工ヘッド3自体の向きを自在に変えることができる。したがって、レーザの射出方向を変更するためには、反射鏡11がレーザ加工ヘッド3内に固定されていたとして、さまざまな方向に変更することができる。
【0080】
図10は、このような反射鏡がレーザ加工ヘッド3内で固定されている場合の動作例を説明するための説明図である。
【0081】
図(a)〜(c)に示すように、ワーク300の形状に沿ってレーザ加工ヘッドそのものを動かすことで、連続的なレーザ溶接を行うことができる。
【0082】
このような場合、レーザ加工ヘッドの向きを変えたとき、すなわち図10(b)から(c)に移行する段階などで振動が発生する可能性がある。
【0083】
そこで、本実施形態2ではこのような反射鏡11がレーザ加工ヘッド内で固定されている場合でもずれを補正できるようにする。
【0084】
図11は、本実施形態2におけるレーザ加工ヘッド3内を示す概略透視図である。
【0085】
ここでは、レーザ加工ヘッド3内に載置された反射鏡11は、フレーム30によって所定角度に固定されている。固定角度はここでは入射されてレーザに対して90度方向にレーザを射出するような角度としている。もちろんこの反射鏡11の固定角度はレーザの入射方向および射出方向にあわせて適宜固定することになる。
【0086】
そして、本実施形態2では、フレーム30と反射鏡との間に圧電素子31、32を入れて、わずかではあるが瞬時に反射鏡11が移動するようにしている。圧電素子31および32の配置は、反射鏡11の反射面に直交する軸をz軸としてこのz軸と直交するx軸およびy軸方向に反射鏡11をわずかに動かすことのできる位置に設置する。
【0087】
現在のロボットは、その動作精度からして振動を発するとしても、その振動によるレーザ照射位置のずれ量は、数mm程度である。このため、これを補正するための反射鏡11の移動量はわずかでよい。したがって、圧電素子による移動でも十分にリアルタイムの補正が可能となる。なお、その他の構成は前述した実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0088】
具体例を挙げれば、たとえば、レーザの焦点距離(ここでは反射鏡から溶接点までの距離)を1mmとした場合、レーザ加工ヘッド3に加わる振動、主にロボットによる移動中、移動開始時、および停止時の振動によるレーザ照射位置のずれは、目的とする照射位置を原点とすると±2mm程度である。一方、反射鏡11の移動角度は、たとえば0.3度変えると、1000mm×tan0.3°=5.2mmとなり、±2mmの範囲を十分補正可能となる。さらに、反射鏡11の移動角度を0.6度にすると、10mm程度の範囲を補正可能となる。
【0089】
この程度の反射鏡11の移動量であれば、圧電素子31、32による変形量で十分反射鏡11を移動させることが可能となる。したがって、反射鏡11を移動させるためのモータのないレーザ加工ヘッド3であっても簡単に取り付けて、振動によるレーザ照射位置のずれをリアルタイムで補正することができるようになる。
【0090】
(実施形態3)
本実施形態3は、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定して、そのずれ分をロボットの動作経路の教示データ自体に組み入れて補正するものである。
【0091】
図12は、本実施形態3におけるロボット制御系を説明するためのブロック図である。
【0092】
本実施形態3におけるロボットの制御系は、レーザ発振器5におけるレーザ出力のオン、オフなどを制御するレーザコントローラ51と、ロボット1の動きを制御するロボット制御装置55と、レーザ加工ヘッド3の反射鏡11の動きを制御する加工ヘッド制御装置53からなる。
【0093】
ロボット制御装置55の基本機能は、既に、実施形態1のところで説明したロボット制御装置52(図5参照)と同様であり、あらかじめ教示されたデータをもとに各種制御信号の出力を行うことでロボット動作そのものと、反射鏡の動作およびレーザ出力のオン、オフを制御しているものである。なお、レーザコントローラ51、加工ヘッド制御装置53の機能も実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0094】
このような基本機能を実行するためにロボット制御装置55は、教示データを記憶した教示データ記憶部(記憶手段)501、教示データに従って各制御信号を出力する制御処理部(制御手段)502を有する。
【0095】
本実施形態3のロボット制御装置55は、この基本機能を実行する過程で補正手段として機能することになる。このため、教示データ記憶部501はレーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段として機能し、制御処理部502は記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量に応じてレーザ射出手段の移動に伴いレーザ射出手段から射出されるレーザの向きを補正するための制御手段として機能する。
【0096】
したがって、本実施形態3では、あらかじめレーザ照射位置の振動によるずれを補正した教示データを教示データ記憶部501に記憶させ、この教示データを再生して溶接作業を実行することで、振動によるレーザ照射位置ずれのないレーザ溶接を行うものである。
【0097】
このため、本実施形態3においては、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定する必要がある。
【0098】
図13は、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためのレーザ加工ヘッドの一例を示す図面である。
【0099】
事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためには、レーザ加工ヘッド3に動画カメラ61を取り付けたものを用いる。このレーザ加工ヘッド3自体は、反射鏡11と、反射鏡11を移動させるためのモータ16および17と、レンズ群12とを有する。その基本動作は、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ100を反射鏡11の動きによって、最終的に目的物方向へ射出する。なお、レーザの射出方向を変えるための反射鏡11の動きは、ロボット制御装置55によって指令された動きである。
【0100】
事前にレーザ照射位置のずれを測定するためには、この動画カメラ61を取り付けたレーザ加工ヘッド3を、溶接を行う動作経路に従って少なくとも一度移動させて、動画カメラ61により溶接点の撮影を行う。一方、ワーク上の溶接点(レーザ照射予定位置)は、たとえば、図14に示すように、撮影した映像からワーク300の溶接点の位置が正確に分かるようにマーク601を付しておく。なお、当然のことながら、事前にレーザ照射位置のずれを測定するときは、レーザの射出は行わないようにする。
【0101】
そして、撮影した動画像とロボット動作(レーザ加工ヘッド3の移動)とを対比することで、動画像内における溶接点位置(マーク601)の振れから振動により発生するレーザ照射位置のずれとその発生位置が判明する。この判明した動作経路中における動画像内の溶接点位置のずれとその発生位置に応じて教示データを補正し、補正後の教示データを最終的な溶接のための教示データとして教示データ記憶部501に記憶する。これにより、溶接時にはこの補正された教示データが再生されるため振動が発生した部分においても、教示データそのものによってレーザ加工ヘッド3および反射鏡がその振動によるレーザ照射位置のずれを補正されるように動いて、レーザの照射位置が狂うことなく溶接動作が実行されることになる。
【0102】
このように事前にレーザ照射位置のずれの発生を動画カメラにより撮影して、そのずれを教示データに反映させることでレーザ照射位置の補正ができる理由を説明する。
【0103】
通常、ロボットに取り付けたレーザ加工ヘッド3に生じる振動は、ロボット1(アーム2部分を含む可動部全体)およびレーザ加工ヘッド3の質量による慣性によって起こる。すなわち、移動開始時、停止時、または、移動方向の変転時などに振動が生じやすい。また、このような振動は慣性によるものであるため同じ動作を行えば、同じ方向に振動する。したがって、溶接作業を行うロボットおよびレーザ加工ヘッド3により、溶接作業を行う動作形路上を移動させることで、その移動に伴って発生する振動が現れる。そして、そのときに動画カメラで撮影した映像の中では、溶接点のマーク601が振動に応じて振るえて見えることになる。この動画映像における溶接点マーク601の振るえの幅および発生位置を計測すれば、それがすなわちレーザ照射位置のずれとなる。
【0104】
動画カメラ61は、取り付け取り外し自在とし、小型軽量のものが好ましくい。これは前記したように振動がロボットおよびレーザ加工ヘッド3の質量によって変わる可能性があるため、それに取り付ける動画カメラ61は軽いものがよいためである。たとえば、実際に市販されている動画カメラは、現在、数百g程度であり、中には半導体メモリを用いた100g前後のものまであり、これらの軽量なカメラであれば、レーザ溶接に用いるレーザ加工ヘッドに取り付けたとしてもその質量変化は全体としてごくわずかであり振動の再現性に影響を及ぼすようなことはない。
【0105】
したがって、本実施形態3では、今あるレーザ加工ヘッド3に小型の動画カメラを取り付けるだけで実施することも可能となる。
【0106】
なお、質量変化を起こさないためにカメラを取り付けた分、レンズや反射鏡などを取り去って実際に溶接を行うレーザ加工ヘッドと厳密に同じ質量として実施するようにしてもよい。
【0107】
このような事前のレーザ射出位置のずれを計測するためには、他に、実際にレーザを照射して溶接作業を行い、そのときのビードの大きさや形成状態から計測することも可能である。
【0108】
この場合、レーザ出力は、実際に溶接を行うときよりも弱くして、ワーク上に傷痕が残る程度としてもよい。また、その場合に用いるワークは、実施に溶接を行うワークではなくてもよい。このように実際にレーザを照射してそのビードから振動によるレーザ照射位置のずれを計測すれば、前記のような動画カメラは不要である。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0110】
たとえば、上述した実施形態では、レーザ加工ヘッド内にジャイロを設けてリアルタイムで振動によるレーザ照射位置の補正を行う実施形態1または2と、事前にレーザ照射位置のずれを計測しておいてそれを教示データによる補正する実施形態3とを別々な装置構成としてが、リアルタイム処理と教示データによる補正の両方を行うようにしてもよい。
【0111】
この場合、たとえば、教示データとジャイロから得られた振動とを比較するための解析手段を設けておいて、あとからジャイロによって得られた振動検出結果と教示データによる補正量が合わない場合には、さらに教示データを補正するようにしてもよい。また、ジャイロによって得られた振動検出結果と教示データによる補正量が合わない場合には、なんらかの異常振動が加わったものとして、経路の点検など以上処理を促すようにしてもよい。
【0112】
なお、解析手段はロボット制御装置内にあってもよいし別途パソコンなどに取り込むようにしてもよい。また、このようにリアルタイム処理と教示データによる補正を行う場合には、実際の溶接におけるレーザ照射位置のずれ補正は、リアルタイム処理で行ってもよいし、教示データによる補正だけであってもよい。
【0113】
また、上述した実施形態では、直線的に複数の溶接点が並んだ基本形を用いて説明したが、これは当然に、このような直線的な経路以外のさまざまな動作経路であっても本発明を適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、ロボットを使用したレーザ溶接に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明を適用したレーザ溶接システムを説明するための概略斜視図である。
【図2】レーザ加工ヘッド(レーザ溶接装置)を説明するための概略透視図である。
【図3】レーザ加工ヘッドが角度ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【図4】レーザ加工ヘッドが位置ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【図5】レーザ溶接システムの制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】レーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【図7】リモート溶接における制御手順を示すフローチャートである。
【図8】他のレーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【図9】他の方法による場合の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2における反射鏡がレーザ加工ヘッド内で固定されている場合の動作例を説明するための説明図である。
【図11】実施形態2におけるレーザ加工ヘッド3内を示す概略透視図である。
【図12】実施形態3におけるロボット制御系を説明するためのブロック図である。
【図13】事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためのレーザ加工ヘッドの一例を示す図面である。
【図14】ワーク上の溶接点(レーザ照射予定位置)に付したマークを説明するための図面である。
【符号の説明】
【0116】
1…ロボット、
2…アーム、
3…レーザ加工ヘッド、
5…レーザ発振器、
6…光ファイバーケーブル、
11…反射鏡、
13…保持機構、
14、15…エンコーダ、
16、17…モータ、
18…補正装置、
51…レーザコントローラ、
52…ロボット制御装置、
53…加工ヘッド制御装置、
61…動画カメラ、
501…教示データ記憶部、
502…制御処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置およびレーザ溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを利用した溶接にもレーザ溶接が用いられるようになってきている。従来、このような溶接技術として、ロボットアーム先端に取り付けたレーザ溶接装置は溶接点から離して停止させた上で、レーザ溶接装置内部の反射鏡を回動させることでレーザを振り分け、複数の溶接点を溶接する技術がある(たとえば特許文献1参照)。このようなワークから離れたところからレーザにより溶接を行う技術をリモート溶接と呼んでいる。
【特許文献1】特許第3229834号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなリモート溶接においては、ロボットアームの先端に取り付けられたレーザ溶接装置が、これまでのスポット溶接に用いる溶接ガンなどと比較して軽いため、より速い移動が可能となる。
【0004】
しかしながら、レーザ溶接装置を移動開始させた際や、停止させた際には、レーザ溶接装置の慣性によって、定速になるまで、または完全に停止するまでに振動が生じる。このような振動は移動中においても起こることがある。
【0005】
そしてこのような振動は、レーザ溶接装置から射出されたレーザの照射位置(レーザが当る位置)を振るわせてしまい、溶接ビード形成時の熱の入り方が不均一になって溶接部位の品質低下を招くという問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、レーザ溶接装置の移動開始や停止時、また移動中の振動によって生じる溶接品質の低下を抑えることができるレーザ溶接装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、レーザを射出するレーザ射出手段と、前記レーザ射出手段の振動に伴い発生する前記レーザ射出手段から照射されたレーザ照射位置のずれを補正する補正手段と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ射出手段の移動に伴う振動によって生じるレーザ照射位置のずれを、補正手段により補正することとしたので、レーザ溶接の移動時、停止時、および移動中に伴う振動によって生じる溶接品質の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明を適用したレーザ溶接システムを説明するための概略斜視図、図2はレーザ加工ヘッド(レーザ溶接装置)を説明するための概略透視図である。
【0011】
なお、本実施形態におけるレーザ溶接装置は、ロボットのアーム先端に取り付けることを想定したものである。このため、レーザ溶接装置をレーザ加工ヘッドと称する。
【0012】
図示するレーザ溶接システムを用いた溶接は、これまでのスポット溶接などと比較して、溶接冶具が直接ワークと接触せずに、レーザを用いてワークから離れた場所から溶接するものである。このためこのような溶接をリモート溶接と称している。
【0013】
図示したレーザ溶接システムは、ロボット1と、このロボット1のアーム2先端に設けられ、レーザ100を射出するレーザ加工ヘッド3と、レーザ光源であるレーザ発振器5と、レーザ発振器5からレーザ加工ヘッド3までレーザを導く光ファイバーケーブル6とからなる。レーザ発振器5は、レーザを光ファイバーケーブル6によって導くためにYAGレーザ発振器を用いている。
【0014】
ロボット1は、一般的な多軸ロボット(多関節ロボットなどとも称されている)などであり、教示作業によって与えられた動作経路のデータに従い、その姿勢を変えてアーム2の先端、すなわちレーザ加工ヘッド3をさまざまな方向に移動させることができると共にレーザ加工ヘッド3の向きも変更可能となっている。
【0015】
ロボットアーム2へのレーザ加工ヘッド3の取り付けには、たとえば、ロボットアームからの振動が伝わるのを抑えるために振動を吸収する振動抑制部材を入れて取り付けてもよい。振動抑制部材としては、たとえば、制振鋼板、ダンパー、制振ゴムなどが使用可能であり、特に、レーザ加工ヘッド3に加わる振動に固有の周波数において振動吸収効果の高いものが好ましい。
【0016】
レーザ加工ヘッド3は、レーザ溶接装置である。このレーザ加工ヘッド3は、図2に示すように、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ100を、最終的に目的物方向へ射出する反射鏡11(反射手段)と、反射鏡11を回動させるモータ16および17(駆動手段)と、リアルタイムでこのレーザ加工ヘッドに加わる振動を検出するためのジャイロ(振動検出手段)21、22および23と、レーザ照射位置のずれをリアルタイムで補正するために必要な処理を行う補正処理装置(演算手段)25とを有する。
【0017】
反射鏡11は、鏡面を通る垂直な線をz軸として、このz軸と直行するx軸およびy軸をそれぞれ中心として独立に回動自在であり、回動することでレーザ100の射出方向を自在に振り分けることができる。このためにモータ16および17が設けられている。なお、モータには必要によりギア機構(不図示)が設けられていてもよい。
【0018】
このモータ16および17は、補正処理装置25からの信号によってレーザの照射方向を補正するために反射鏡11を回動させると共に、加工ヘッド制御装置(後述)からの信号によって溶接点方向へレーザを向けるために反射鏡11を回動させる。このようなモータ16および17は、たとえばサーボモータ、ステッピングモータなどを使用することができ、指示された回転角度に応じて回転動作するモータが好ましい。
【0019】
レンズ群12内には、光ファイバーケーブル6端部から射出されたレーザを平行光にするコリメートレンズ121と、平行光になったレーザを所定位置で集光させる集光レンズ122を有する。
【0020】
ジャイロ21、22および23は、たとえば、圧電ジャイロなどを使用することができ、加わった振動を角速度として検出している。このジャイロ21、22および23は、それぞれ互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸方向の振動現象をリアルタイムで検出している。これにより、レーザ加工ヘッド3に加わった振動量とその方向を知ることができる。検出した振動は補正処理装置25に送っている。
【0021】
補正処理装置25は、ジャイロ21、22、23から得られた3軸各方向の振動量からレーザ照射位置の補正を行うために補正量を算出し、モータ16および187を駆動して反射鏡11の向きを補正量に見合うだけ移動させている。この補正処理装置25は、たとえばマイクロプロセッサとメモリを中心としたマイクロコンピュータなどを利用する。特に本実施例1のようにリアルタイムで振動によるレーザ照射位置のずれを補正する場合、信号経路による遅延を防ぐためにもマイクロプロセッサをレーザ加工ヘッド3内部も受け、ジャイロおよびモータの近傍に設置し、信号経路を短くすることが好ましい。
【0022】
レーザ発振器5は、YAGレーザ発振器である。ここでは、レーザを光ファイバーケーブル6によって導くためにYAGレーザを用いている。なお、その他のレーザであってもレーザ溶接に使用でき、光ファイバーケーブル6で導くことができるものであれば限定されない。
【0023】
以下、このように構成されたリモート溶接システムの作用を説明する。
【0024】
本実施形態1においては、補正手段は補正処理装置25を中心に、ジャイロ21、22、23、モータ16、17、および反射鏡11によって構成される。
【0025】
基本的な補正動作は、まず、レーザ加工ヘッドに加わる振動現象をジャイロ21、22、および23によって検出する。補正処理装置25が検出された振動量からレーザ照射位置のずれ量を求めて、そのずれ量を補正するために必要な反射鏡の移動量を算出する。そして補正処理装置25は算出した補正量だけ反射鏡を移動させるためにモータ16および/または17へ動作指令を出すことになる。
【0026】
レーザ加工ヘッド3に加わる振動は2つ分けることができる。一つは、レーザ加工ヘッド3が傾く振動である。これを角度ずれと称する。他の一つは、レーザ加工ヘッド3が所定位置からずれる振動である。これを位置ずれと称する。
【0027】
図3は、角度ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【0028】
図3(a)に示すように、振動がない場合、レーザ100は、目的の溶接点P0に照射される。このときレーザ加工ヘッド3全体が傾くような振動が加わると、そのままでは図3(b)に示すように、レーザの照射位置がP0からP1にずれてしまう。そこで、ジャイロ21、22、および23から得られた振動量からこの角度のずれ角度θ1を算出して、このずれ角度を補正するために必要な反射鏡11の補正角度θ2を算出する。
【0029】
補正角度θ2は、θ2=θ1/2により算出する。この補正角度θ2だけ反射鏡11を傾きが生じた方向と逆方向へ回動させることで、図3(c)に示すように、レーザ照射位置は補正されて、P0=P1となる。
【0030】
特にこのような角度ずれは、本実施形態においては、振動をジャイロによって検出しているため、ジャイロにより検出された角度を1/2にすれば補正量として用いることができる。
【0031】
図4は、位置ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【0032】
図4(a)に示すように、振動がない場合、レーザ100は、目的の溶接点P0に照射される。このときレーザ加工ヘッド3全体が移動するような振動が加わると、そのままでは図4(b)に示すように、レーザの照射位置がP0からP2にずれてしまう。そこで、ジャイロ21、22、および23から得られた振動量からこの位置ずれ量xを算出して、これを補正するために必要な反射鏡11の補正角度θ3を算出する。
【0033】
補正角度θ3は、tan2θ=x/Lにより算出する。なお、ここでLは反射鏡11からレーザ照射位置(すなわち溶接点)までの距離である。
【0034】
補正処置装置25は、この補正角度θ3だけ反射鏡11を移動が生じた方向とは反対方向にレーザの照射方向が変わるように回動させる。これにより図4(c)に示すように、レーザ照射位置は補正されて、P0=P2となる。
【0035】
なお、これらのような角度ずれの補正と位置ずれの補正は、両方行うようにすることが好ましいが、いずれか一方だけでもよい。特に前述の角度ずれの補正の方がプロセッサによる処理が簡単であるため、これだけを行うようにしてもずれ補正の効果がある。
【0036】
次に、レーザ溶接システム全体の作用を説明する。
【0037】
図5は、このレーザ溶接システム全体の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【0038】
レーザ溶接システムの制御系は、レーザ発振器5におけるレーザ出力のオン、オフなどを制御するレーザコントローラ51と、ロボット1の動きを制御するロボット制御装置(ロボット制御手段)52と、レーザ加工ヘッド3の反射鏡11の動きを制御する加工ヘッド制御装置53からなる。
【0039】
レーザコントローラ51は、レーザ出力のオン、オフと、レーザの出力強度調整などを行っている。このレーザコントローラ51は、ロボット制御装置52からの制御信号によって、レーザ出力のオン、オフを行っている。
【0040】
ロボット制御装置52は、ロボット1の動き(姿勢)を制御すると共にレーザ出力のオン、オフなどの制御信号の出力も行っている。
【0041】
加工ヘッド制御装置53は、反射鏡11をモータ16および17によって動かしてレーザの射出方向を任意に変更する。この加工ヘッド制御装置53による反射鏡11の動作は、先に説明した補正動作による動きとは独立したものである。なお、ここでレーザの射出方向を任意に変更するとは、具体的には溶接点方向へレーザを向けるための動きである。
【0042】
なお、ロボット1の動きやレーザのオンオフ動作、およびレーザの射出方向を溶接点方向へ向けるための反射鏡の回動動作などは、すべてロボット1の動作教示のときに行われる。したがって、このロボット制御装置52は教示されたデータ(教示データと称する)をもとにロボット動作そのものと各種制御信号の出力を行う。
【0043】
このように構成されたレーザ溶接システムを用いたリモート溶接の方法を説明する。
【0044】
図6は、レーザ溶接におけるレーザ加工ヘッド3とレーザ射出方向の動きを説明するための説明図である。なお、ここでは理解を容易にするためにごく簡単な基本形を例に説明する。
【0045】
本実施形態では、図6に示すように、複数の溶接点201〜206がある場合に、目標とする一つの溶接点(たとえば201)へレーザ100を射出中にも、レーザ加工ヘッド3を、次の溶接点(たとえば202)へ向けて所定速度で移動させる。そして、同時にレーザ加工ヘッド3が移動しても現在溶接中の溶接点(たとえば201)の溶接が終了するまで、その溶接点(たとえば201)からレーザ100が外れないように反射鏡11を加工ヘッド制御装置53からの信号により回動させている。このとき、反射鏡11は加工ヘッド制御装置53からの信号による回動とは独立して、常に補正処理装置25からの信号により反射鏡11の向きが変更されて、レーザ100の振動によるずれを補正している。
【0046】
したがって、図示する場合には、レーザ加工ヘッド3は、その位置aからjまで一定の速度で移動しつつ、レーザの射出方向がそれぞれの溶接点へ向くように反射鏡11が回動されている。
【0047】
このときレーザ加工ヘッド3の位置移動はロボット姿勢の変更、すなわちロボットアーム2を動かすことで行っている。ロボット1の動きはロボット制御装置52によって制御されており、レーザ加工ヘッド3の位置が溶接中の溶接点から次の溶接点へ向けて一定速度で移動させている。したがって、図示する場合には、レーザ加工ヘッド3は、その位置aからjまで一定の速度で移動する。
【0048】
ここでレーザ加工ヘッド3の位置を一定速度で移動させるのは、補正処理装置25によるリアルタイムの補正を行っているものの、大きな振動は本質的にロボットの動きそのもので抑えることが重要である。ここでは、位置aからjまで常に一定速度に保つようにしている。
【0049】
一方、反射鏡11は、一つの溶接点を溶接中は、レーザ焦点位置が、レーザ加工ヘッド3の移動方向と相対的に逆方向で、かつ、レーザ焦点位置の移動速度がレーザ加工ヘッド3の移動速度とほぼ同じになるように回動させている。このときの反射鏡11の回動速度を溶接時の所定速度と称する。これにより、レーザ加工ヘッド3の移動と逆方向にほぼ同じ速度でレーザ焦点位置が移動することになるため、結果的に一つの溶接点の溶接中はレーザがその溶接点を外れることがなくなるのである。ここで、ほぼ同じ速度としているのは、溶接点のビード形成距離(ビードの大きさ)によっては、一つの溶接点においてレーザ照射位置(焦点位置)を移動させなければならないためである。すなわち、ビード形成距離に応じて、その分レーザ焦点位置の移動速度をレーザ加工ヘッド3の移動速度よりわずかに遅くなるようにして、レーザ加工ヘッド3の移動方向にビードが形成されるように調整することになる。
【0050】
また、このレーザ加工ヘッド3の移動速度は、溶接速度より速い必要がある。これは、一つの溶接点(たとえば201)の溶接が終了した時点で、次の溶接点(たとえば202)に対してレーザが届くようにするためである。
【0051】
通常、レーザ溶接の溶接速度は1〜5m/minである。これに対して、レーザ加工ヘッド3の移動速度(すなわちロボットアームを動作させる速度)は、ロボットによってさまざまであるが、たとえば最大10〜20m/min程度であり、また、反射鏡11によるレーザ焦点位置の移動速度は焦点位置が反射鏡11から1m程度の部分で最大100m/min程度が可能である。したがって、レーザ加工ヘッド3の移動速度を溶接速度より速くすることは十分可能である。
【0052】
なお、このようなそれぞれの速度から実際の移動速度を選択する際には、レーザ加工ヘッド3の振動を抑えるようにするために、レーザ加工ヘッド3の移動速度ができるだけ低速となるように、各速度を選択することが好ましい。
【0053】
一つの溶接点(たとえば201)の終了から、次の溶接点(たとえば202)へのレーザ焦点位置の移動も、反射鏡11の回動によって行う。このときの反射鏡11の回動は、可能な限り速く行うことが好ましい。このとき、レーザ出力は、停止せずにそのまま出力を続けるようにしてもよい。これは、上記のとおり、レーザ焦点位置の移動速度は溶接速度に対して桁違いに速いため、溶接点間の移動中に、溶接しない部分にレーザが照射されたとしても、その部分がレーザの焦点位置から外れていたり、焦点位置内にあったとしても一瞬レーザが当たるだけでほとんど影響がなく、レーザ100が当たった部分を傷つけることはないからである。なお、必要に応じてレーザコントローラ51にオフ信号を送りレーザ出力を一時停止することも可能である。
【0054】
このようにロボット1によるレーザ加工ヘッド3の移動および反射鏡11の向きを制御することで、ロボットアーム先端に設けられているレーザ加工ヘッド3の位置は、順次溶接を行う方向に、溶接点(たとえば201)の溶接開始時にはその溶接点(たとえば202)より前にあり(たとえば位置b)、その溶接点(たとえば202)の溶接終了時にはその溶接点(たとえば201)より先にある(たとえば位置d)ことになる。
【0055】
図7は、このリモート溶接における制御手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って最初の溶接開始位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて定速移動を開始すると共に、レーザ出力をオンにするようにレーザコントローラ51に指令する(S1)。同時に加工ヘッド制御装置53に対しても溶接時の所定速度で反射鏡11を回動させるように指令する(S2)。
【0057】
続いて、ロボット制御装置52は、教示データに従い、次の溶接点の溶接開始位置に到達したか否かを判断する(S3)。ここで教示データに従う次の溶接点の溶接開始位置は、その前の溶接点の溶接が終了した位置でもある。
【0058】
この段階で次の溶接点の溶接開始位置に到達していれば、反射鏡11を次の溶接点方向へ高速で回動するように加工ヘッド制御装置53に対して指令する(S4)。これにより、加工ヘッド制御装置53が次の目標となる溶接点方向へ反射鏡11を高速で回動させてレーザが次の溶接点方向へ向けて射出されるようになる。以降この動作を最終溶接点の溶接終了まで続けることになる。
【0059】
一方、ステップS3において、次の溶接点の溶接開始位置に到達していなければ、全溶接点の溶接終了か否かを判断する(S5)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。ここで、最終溶接点の溶接終了でなければ、現在溶接中の溶接作業自体が終了していないので、そのまま処理はステップS3へ戻る。これにより現在溶接中の溶接がそのまま継続されることになる。
【0060】
一方、ステップS5において、最終溶接点の溶接が終了していれば、教示データに従って、レーザ出力をオフにするようにレーザコントローラ51に指令し、レーザ加工ヘッドを待機位置(または作業終了位置など)に戻し(S6)、すべての作業を終了する。
【0061】
この動作を、図6の例を使って説明すれば、はじめにロボット制御装置52はレーザ加工ヘッド3を溶接点201の溶接開始位置aまで移動し、レーザ加工ヘッド3を一定速度で移動させつつレーザ出力を開始させ、同時に反射鏡11を溶接点201にレーザが照射されるように溶接時の所定速度で回動させる。
【0062】
続いて、位置bを経て、溶接点202の溶接開始位置cに到達した時点で(この時点で溶接点201の溶接が終了している)、ロボット制御装置52は、反射鏡11を教示されている最大速度で回動してレーザ射出方向を溶接点202方向に回動させる。そして溶接点202の溶接を継続して実行させる。以降溶接点206の溶接が終了するまでこれらの処理を繰り返し、溶接点206の溶接が終了した時点で、レーザ出力を停止させ、すべての溶接作業を終了する。
【0063】
なお、このように複数の溶接点を溶接する際には、反射鏡11から溶接点までの距離が焦点深度を超える場合には、適宜レンズ郡12を調節して焦点位置を調整することになる。このようなレンズ郡12の調節も溶接点とレーザ加工ヘッド3の位置(その間の距離)からロボット1の動作を教示する際にあらかじめ設定しておくことになる。なお、自動合焦機能が付いたレーザ加工ヘッド3の場合には、レンズ郡12による焦点調節の必要はなく自動合焦機能に任せることになる。
【0064】
図8は、他のレーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【0065】
この方法では、レーザ加工ヘッド3がAの位置に来た時点でレーザ加工ヘッド3を停止させ、そこから反射鏡11を回動させてレーザ照射可能範囲内に位置する溶接点301、302、および303に対して連続的に溶接を行う。溶接点303の溶接終了後は、レーザをいったん停止させて、レーザ加工ヘッド3をA位置からB位置に移動し、レーザ加工ヘッド3をB位置で停止させて、溶接点304、305、および306に対してレーザ加工ヘッド3を回動させることにより連続的に溶接を行う。
【0066】
このような溶接動作の場合、AおよびBの位置に来てレーザ加工ヘッド3を停止させたときに振動が発生する。これまでのレーザ加工ヘッド3の移動の際には、このような移動動作をさせた場合、レーザ加工ヘッド3における停止時の振動が完全に収まるのを待ってからレーザの射出動作に移ることになる。これに対し、本実施形態では、レーザ加工ヘッド3を停止させたときに生じた振動によるレーザ射出位置のずれは、補正処理手段によってリアルタイムで補正されるため、レーザ加工ヘッドの停止から即時にレーザ射出動作に移ることができる。
【0067】
図9は、このような他の方法による場合の制御手順を示すフローチャートである。
【0068】
まず、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って溶接位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて停止する(たとえばAの位置)(S11)。そして、レーザ出力をオンにするようにレーザコントローラ51に指令する(S12)。
【0069】
続いて、加工ヘッド制御装置53は、教示データに従い反射鏡11を回動させてレーザ照射可能範囲内に位置する溶接点(たとえば溶接点301、302、および303)に対して連続的に溶接を行う(S13)。
【0070】
次にその溶接位置での溶接点の溶接が終了したか否かを判断する(S14)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。その溶接位置での当右折が終了している場合は、レーザ出力を一時停止するようにレーザコントローララ51に指令してレーザ出力を停止する(S14)。
【0071】
次に全溶接点の溶接終了か否かを判断する(S15)。この判断は教示データに従って最終溶接点の溶接が終了したことにより判断される。ここで、最終溶接点の溶接終了でなければ、ステップS1へ戻り、ロボット制御装置52は、あらかじめ教示された教示データに従って次の溶接開始位置にレーザ加工ヘッド3を移動させて停止する(たとえばBの位置)(S11)。以後、前溶接点の溶接が終了するまで、以降の処理を繰り返すことになる。
【0072】
一方、ステップS15において、最終溶接点の溶接が終了していれば、教示データに従ってレーザ加工ヘッドを待機位置(または作業終了位置など)に戻し(S16)、すべての作業を終了する。
【0073】
実際にAからBへの移動してそれぞれの位置で停止動作を伴うリモート溶接の場合、停止時におけるずれ量を測定したところ、反射鏡11から溶接点までの距離を800mmとしたとき、±1.5内(全振れ幅として約3mm)であった。また、このようなずれを生じさせたときの振動周波数は、5〜20Hzであった。
【0074】
このようなずれを補正するためには、反射鏡11を0.1°向きを変えればよいことになる。
【0075】
なお、現行ロボットの制御周期は、250Hz(4ms)が可能であるため、振動周期の10倍以上の制御周期が確保されるので、リアルタイムの補正も十分可能である。また、この現行ロボットの制御周期からすれば振動周期40Hz程度まで確実に補正を行うことができる。したがって、このような振動周波数であれば、ジャイロからの信号をいったんロボット制御装置に送って、そこから反射鏡の動きを制御することでも補正を行うことができる。また、補正処理装置として用いるプロセッサ(たとえばDSP)の制御周期を上げれば、さらに振動周期の速い場合でも対応できる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態1では、反射鏡11をあらかじめ決められた動きに、または任意に動かしてレーザ射出方向を変更すると共に、この反射鏡11を別に補正処理装置25によって制御することで、レーザ加工ヘッド3の振動に伴うレーザ射出位置のずれをリアルタイムで補正することとした。したがって、レーザ加工ヘッド3の動作経路や位置、移動開始や停止のタイミングに関わりなく、レーザ加工ヘッド3に加わった振動をリアルタイムで補正し、確実にレーザ照射位置を目的の位置に照射することができるようになる。このため、レーザ溶接における溶接部位においてレーザ照射位置の振れがなく均一なビードの形成が可能となり、溶接品質が向上する。
【0077】
なお、本実施形態1による補正動作は、すべて振動について可能な限りレーザの照射位置がずれないように補正を行うものである。しかし、振動が大きい場合、補正しきれない場合も生じる。このような場合、補正しきれずにレーザの照射位置が振れて溶接品質を低下させるおそれもある。そこで、ジャイロ21、22、または23のいずれかが検出した振動量に対して補正するか否かを決定するしきい値をあらかじめ記憶しておき、検出した振動量がこのしきい値を超えた場合には補正せずにレーザの射出を停止させるようにしてもよい。この場合、しきい値は、補正処理装置25内のメモリなどにあらかじめ記憶しておくことになる。このようにすることで、補正しきれないような大きな振動が加わり、溶接点からレーザが外れたり溶接品質を著しく低下させるような場合には、レーザの射出そのものを停止させ異常処理を行うことも可能となる。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態2は、レーザ加工ヘッド3内の反射鏡11が固定されている場合を例である。
【0079】
これは、レーザ加工ヘッド3は、ロボとアーム2に接続されているため、ロボット姿勢をかえることで、レーザ加工ヘッド3自体の向きを自在に変えることができる。したがって、レーザの射出方向を変更するためには、反射鏡11がレーザ加工ヘッド3内に固定されていたとして、さまざまな方向に変更することができる。
【0080】
図10は、このような反射鏡がレーザ加工ヘッド3内で固定されている場合の動作例を説明するための説明図である。
【0081】
図(a)〜(c)に示すように、ワーク300の形状に沿ってレーザ加工ヘッドそのものを動かすことで、連続的なレーザ溶接を行うことができる。
【0082】
このような場合、レーザ加工ヘッドの向きを変えたとき、すなわち図10(b)から(c)に移行する段階などで振動が発生する可能性がある。
【0083】
そこで、本実施形態2ではこのような反射鏡11がレーザ加工ヘッド内で固定されている場合でもずれを補正できるようにする。
【0084】
図11は、本実施形態2におけるレーザ加工ヘッド3内を示す概略透視図である。
【0085】
ここでは、レーザ加工ヘッド3内に載置された反射鏡11は、フレーム30によって所定角度に固定されている。固定角度はここでは入射されてレーザに対して90度方向にレーザを射出するような角度としている。もちろんこの反射鏡11の固定角度はレーザの入射方向および射出方向にあわせて適宜固定することになる。
【0086】
そして、本実施形態2では、フレーム30と反射鏡との間に圧電素子31、32を入れて、わずかではあるが瞬時に反射鏡11が移動するようにしている。圧電素子31および32の配置は、反射鏡11の反射面に直交する軸をz軸としてこのz軸と直交するx軸およびy軸方向に反射鏡11をわずかに動かすことのできる位置に設置する。
【0087】
現在のロボットは、その動作精度からして振動を発するとしても、その振動によるレーザ照射位置のずれ量は、数mm程度である。このため、これを補正するための反射鏡11の移動量はわずかでよい。したがって、圧電素子による移動でも十分にリアルタイムの補正が可能となる。なお、その他の構成は前述した実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0088】
具体例を挙げれば、たとえば、レーザの焦点距離(ここでは反射鏡から溶接点までの距離)を1mmとした場合、レーザ加工ヘッド3に加わる振動、主にロボットによる移動中、移動開始時、および停止時の振動によるレーザ照射位置のずれは、目的とする照射位置を原点とすると±2mm程度である。一方、反射鏡11の移動角度は、たとえば0.3度変えると、1000mm×tan0.3°=5.2mmとなり、±2mmの範囲を十分補正可能となる。さらに、反射鏡11の移動角度を0.6度にすると、10mm程度の範囲を補正可能となる。
【0089】
この程度の反射鏡11の移動量であれば、圧電素子31、32による変形量で十分反射鏡11を移動させることが可能となる。したがって、反射鏡11を移動させるためのモータのないレーザ加工ヘッド3であっても簡単に取り付けて、振動によるレーザ照射位置のずれをリアルタイムで補正することができるようになる。
【0090】
(実施形態3)
本実施形態3は、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定して、そのずれ分をロボットの動作経路の教示データ自体に組み入れて補正するものである。
【0091】
図12は、本実施形態3におけるロボット制御系を説明するためのブロック図である。
【0092】
本実施形態3におけるロボットの制御系は、レーザ発振器5におけるレーザ出力のオン、オフなどを制御するレーザコントローラ51と、ロボット1の動きを制御するロボット制御装置55と、レーザ加工ヘッド3の反射鏡11の動きを制御する加工ヘッド制御装置53からなる。
【0093】
ロボット制御装置55の基本機能は、既に、実施形態1のところで説明したロボット制御装置52(図5参照)と同様であり、あらかじめ教示されたデータをもとに各種制御信号の出力を行うことでロボット動作そのものと、反射鏡の動作およびレーザ出力のオン、オフを制御しているものである。なお、レーザコントローラ51、加工ヘッド制御装置53の機能も実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0094】
このような基本機能を実行するためにロボット制御装置55は、教示データを記憶した教示データ記憶部(記憶手段)501、教示データに従って各制御信号を出力する制御処理部(制御手段)502を有する。
【0095】
本実施形態3のロボット制御装置55は、この基本機能を実行する過程で補正手段として機能することになる。このため、教示データ記憶部501はレーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段として機能し、制御処理部502は記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量に応じてレーザ射出手段の移動に伴いレーザ射出手段から射出されるレーザの向きを補正するための制御手段として機能する。
【0096】
したがって、本実施形態3では、あらかじめレーザ照射位置の振動によるずれを補正した教示データを教示データ記憶部501に記憶させ、この教示データを再生して溶接作業を実行することで、振動によるレーザ照射位置ずれのないレーザ溶接を行うものである。
【0097】
このため、本実施形態3においては、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定する必要がある。
【0098】
図13は、事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためのレーザ加工ヘッドの一例を示す図面である。
【0099】
事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためには、レーザ加工ヘッド3に動画カメラ61を取り付けたものを用いる。このレーザ加工ヘッド3自体は、反射鏡11と、反射鏡11を移動させるためのモータ16および17と、レンズ群12とを有する。その基本動作は、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ100を反射鏡11の動きによって、最終的に目的物方向へ射出する。なお、レーザの射出方向を変えるための反射鏡11の動きは、ロボット制御装置55によって指令された動きである。
【0100】
事前にレーザ照射位置のずれを測定するためには、この動画カメラ61を取り付けたレーザ加工ヘッド3を、溶接を行う動作経路に従って少なくとも一度移動させて、動画カメラ61により溶接点の撮影を行う。一方、ワーク上の溶接点(レーザ照射予定位置)は、たとえば、図14に示すように、撮影した映像からワーク300の溶接点の位置が正確に分かるようにマーク601を付しておく。なお、当然のことながら、事前にレーザ照射位置のずれを測定するときは、レーザの射出は行わないようにする。
【0101】
そして、撮影した動画像とロボット動作(レーザ加工ヘッド3の移動)とを対比することで、動画像内における溶接点位置(マーク601)の振れから振動により発生するレーザ照射位置のずれとその発生位置が判明する。この判明した動作経路中における動画像内の溶接点位置のずれとその発生位置に応じて教示データを補正し、補正後の教示データを最終的な溶接のための教示データとして教示データ記憶部501に記憶する。これにより、溶接時にはこの補正された教示データが再生されるため振動が発生した部分においても、教示データそのものによってレーザ加工ヘッド3および反射鏡がその振動によるレーザ照射位置のずれを補正されるように動いて、レーザの照射位置が狂うことなく溶接動作が実行されることになる。
【0102】
このように事前にレーザ照射位置のずれの発生を動画カメラにより撮影して、そのずれを教示データに反映させることでレーザ照射位置の補正ができる理由を説明する。
【0103】
通常、ロボットに取り付けたレーザ加工ヘッド3に生じる振動は、ロボット1(アーム2部分を含む可動部全体)およびレーザ加工ヘッド3の質量による慣性によって起こる。すなわち、移動開始時、停止時、または、移動方向の変転時などに振動が生じやすい。また、このような振動は慣性によるものであるため同じ動作を行えば、同じ方向に振動する。したがって、溶接作業を行うロボットおよびレーザ加工ヘッド3により、溶接作業を行う動作形路上を移動させることで、その移動に伴って発生する振動が現れる。そして、そのときに動画カメラで撮影した映像の中では、溶接点のマーク601が振動に応じて振るえて見えることになる。この動画映像における溶接点マーク601の振るえの幅および発生位置を計測すれば、それがすなわちレーザ照射位置のずれとなる。
【0104】
動画カメラ61は、取り付け取り外し自在とし、小型軽量のものが好ましくい。これは前記したように振動がロボットおよびレーザ加工ヘッド3の質量によって変わる可能性があるため、それに取り付ける動画カメラ61は軽いものがよいためである。たとえば、実際に市販されている動画カメラは、現在、数百g程度であり、中には半導体メモリを用いた100g前後のものまであり、これらの軽量なカメラであれば、レーザ溶接に用いるレーザ加工ヘッドに取り付けたとしてもその質量変化は全体としてごくわずかであり振動の再現性に影響を及ぼすようなことはない。
【0105】
したがって、本実施形態3では、今あるレーザ加工ヘッド3に小型の動画カメラを取り付けるだけで実施することも可能となる。
【0106】
なお、質量変化を起こさないためにカメラを取り付けた分、レンズや反射鏡などを取り去って実際に溶接を行うレーザ加工ヘッドと厳密に同じ質量として実施するようにしてもよい。
【0107】
このような事前のレーザ射出位置のずれを計測するためには、他に、実際にレーザを照射して溶接作業を行い、そのときのビードの大きさや形成状態から計測することも可能である。
【0108】
この場合、レーザ出力は、実際に溶接を行うときよりも弱くして、ワーク上に傷痕が残る程度としてもよい。また、その場合に用いるワークは、実施に溶接を行うワークではなくてもよい。このように実際にレーザを照射してそのビードから振動によるレーザ照射位置のずれを計測すれば、前記のような動画カメラは不要である。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0110】
たとえば、上述した実施形態では、レーザ加工ヘッド内にジャイロを設けてリアルタイムで振動によるレーザ照射位置の補正を行う実施形態1または2と、事前にレーザ照射位置のずれを計測しておいてそれを教示データによる補正する実施形態3とを別々な装置構成としてが、リアルタイム処理と教示データによる補正の両方を行うようにしてもよい。
【0111】
この場合、たとえば、教示データとジャイロから得られた振動とを比較するための解析手段を設けておいて、あとからジャイロによって得られた振動検出結果と教示データによる補正量が合わない場合には、さらに教示データを補正するようにしてもよい。また、ジャイロによって得られた振動検出結果と教示データによる補正量が合わない場合には、なんらかの異常振動が加わったものとして、経路の点検など以上処理を促すようにしてもよい。
【0112】
なお、解析手段はロボット制御装置内にあってもよいし別途パソコンなどに取り込むようにしてもよい。また、このようにリアルタイム処理と教示データによる補正を行う場合には、実際の溶接におけるレーザ照射位置のずれ補正は、リアルタイム処理で行ってもよいし、教示データによる補正だけであってもよい。
【0113】
また、上述した実施形態では、直線的に複数の溶接点が並んだ基本形を用いて説明したが、これは当然に、このような直線的な経路以外のさまざまな動作経路であっても本発明を適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、ロボットを使用したレーザ溶接に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明を適用したレーザ溶接システムを説明するための概略斜視図である。
【図2】レーザ加工ヘッド(レーザ溶接装置)を説明するための概略透視図である。
【図3】レーザ加工ヘッドが角度ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【図4】レーザ加工ヘッドが位置ずれを起こした場合の補正を説明するための説明図である。
【図5】レーザ溶接システムの制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】レーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【図7】リモート溶接における制御手順を示すフローチャートである。
【図8】他のレーザ溶接の動作を説明するための説明図である。
【図9】他の方法による場合の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2における反射鏡がレーザ加工ヘッド内で固定されている場合の動作例を説明するための説明図である。
【図11】実施形態2におけるレーザ加工ヘッド3内を示す概略透視図である。
【図12】実施形態3におけるロボット制御系を説明するためのブロック図である。
【図13】事前にレーザ加工ヘッドの移動中に生じた振動によるレーザ照射位置のずれを測定するためのレーザ加工ヘッドの一例を示す図面である。
【図14】ワーク上の溶接点(レーザ照射予定位置)に付したマークを説明するための図面である。
【符号の説明】
【0116】
1…ロボット、
2…アーム、
3…レーザ加工ヘッド、
5…レーザ発振器、
6…光ファイバーケーブル、
11…反射鏡、
13…保持機構、
14、15…エンコーダ、
16、17…モータ、
18…補正装置、
51…レーザコントローラ、
52…ロボット制御装置、
53…加工ヘッド制御装置、
61…動画カメラ、
501…教示データ記憶部、
502…制御処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを射出するレーザ射出手段と、
前記レーザ射出手段の振動に伴い発生する前記レーザ射出手段から照射されたレーザ照射位置のずれを補正する補正手段と、
を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記レーザ射出手段は、前記レーザ射出手段まで導かれた前記レーザを反射させる反射手段を有し、
前記補正手段は、前記レーザ照射位置のずれに応じて前記反射手段を移動させて前記レーザ照射位置のずれを補正する駆動手段を有することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記レーザを目的物方向へ照射するために前記反射手段を移動させることを特徴とする請求項2記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段に加わる振動を検出するための振動検出手段と、
前記振動検出手段が検出した振動に応じて前記レーザ照射位置のずれ量を求めて、求めたずれ量に応じて前記駆動手段を制御する演算手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記振動検出手段が検出した振動量に対して補正するか否かを決定するしきい値を記憶し、前記振動量がしきい値を超えた場合には補正せずに前記レーザの射出を停止させることを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段の移動に伴い発生した前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段と、
前記振動検出手段が検出した振動発生位置および前記演算手段が求めた前記ずれ量と、前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量とを比較して、前記レーザ射出手段に発生する振動の解析を行う解析手段を有することを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段の移動に伴い発生した前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量に応じて、前記レーザ射出手段の移動に伴い前記レーザ射出手段から射出されるレーザの向きを補正するための制御手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段に発生する振動を検出するための振動検出手段を有し、
前記振動検出手段が検出した振動発生位置および前記演算手段が求めた前記ずれ量と、前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量とを比較して、前記レーザ射出手段に発生する振動の解析を行う解析手段を有することを特徴とする請求項7記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置とそのずれ量は、あらかじめ前記レーザ射出手段を前記レーザの射出を行うための経路上を移動させ、そのときの前記レーザ照射位置のずれが発生した位置とそのずれ量を計測したものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量の計測は、前記レーザ射出手段内または近傍に撮影手段を設置し、前記撮影手段に映ったレーザ照射予定位置のずれから計測することを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記撮影手段は、前記レーザ照射予定位置と前記レーザ射出手段との距離を計測する測距手段を有することを特徴とする請求項10記載のレーザ溶接装置。
【請求項12】
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置とそのずれ量は、あらかじめ前記レーザ射出手段を前記レーザの射出を行うための経路上を移動させつつ、実際に前記レーザをワークに対して射出させて、そのときのワーク上でのレーザ照射痕とレーザ照射予定位置とを比較して、ずれの発生位置とそのずれ量を計測したであることを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接装置。
【請求項13】
前記移動手段は、多軸ロボットであり、前記レーザ射出手段は、前記多軸ロボットに設けられていることを特徴とする請求項1〜12記載のレーザ溶接装置。
【請求項14】
前記多軸ロボットと前記レーザ射出手段との取り付け部には、振動抑制部材を有することを特徴とする請求項13記載のレーザ溶接装置。
【請求項15】
前記振動検出手段は角度の変化を検出するものであり、前記補正手段は検出された角度に基づいて前記レーザの射出角度を補正することを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置と、
前記レーザ溶接装置が取り付けられたロボットと、
前記レーザ溶接装置を移動させために前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段と、
を有することを特徴とするレーザ溶接システム。
【請求項1】
レーザを射出するレーザ射出手段と、
前記レーザ射出手段の振動に伴い発生する前記レーザ射出手段から照射されたレーザ照射位置のずれを補正する補正手段と、
を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記レーザ射出手段は、前記レーザ射出手段まで導かれた前記レーザを反射させる反射手段を有し、
前記補正手段は、前記レーザ照射位置のずれに応じて前記反射手段を移動させて前記レーザ照射位置のずれを補正する駆動手段を有することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記レーザを目的物方向へ照射するために前記反射手段を移動させることを特徴とする請求項2記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段に加わる振動を検出するための振動検出手段と、
前記振動検出手段が検出した振動に応じて前記レーザ照射位置のずれ量を求めて、求めたずれ量に応じて前記駆動手段を制御する演算手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記振動検出手段が検出した振動量に対して補正するか否かを決定するしきい値を記憶し、前記振動量がしきい値を超えた場合には補正せずに前記レーザの射出を停止させることを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段の移動に伴い発生した前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段と、
前記振動検出手段が検出した振動発生位置および前記演算手段が求めた前記ずれ量と、前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量とを比較して、前記レーザ射出手段に発生する振動の解析を行う解析手段を有することを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段の移動に伴い発生した前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量をあらかじめ記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量に応じて、前記レーザ射出手段の移動に伴い前記レーザ射出手段から射出されるレーザの向きを補正するための制御手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記レーザ射出手段に発生する振動を検出するための振動検出手段を有し、
前記振動検出手段が検出した振動発生位置および前記演算手段が求めた前記ずれ量と、前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置およびずれ量とを比較して、前記レーザ射出手段に発生する振動の解析を行う解析手段を有することを特徴とする請求項7記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置とそのずれ量は、あらかじめ前記レーザ射出手段を前記レーザの射出を行うための経路上を移動させ、そのときの前記レーザ照射位置のずれが発生した位置とそのずれ量を計測したものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記レーザ照射位置のずれ発生位置とそのずれ量の計測は、前記レーザ射出手段内または近傍に撮影手段を設置し、前記撮影手段に映ったレーザ照射予定位置のずれから計測することを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記撮影手段は、前記レーザ照射予定位置と前記レーザ射出手段との距離を計測する測距手段を有することを特徴とする請求項10記載のレーザ溶接装置。
【請求項12】
前記記憶手段に記憶されているずれ発生位置とそのずれ量は、あらかじめ前記レーザ射出手段を前記レーザの射出を行うための経路上を移動させつつ、実際に前記レーザをワークに対して射出させて、そのときのワーク上でのレーザ照射痕とレーザ照射予定位置とを比較して、ずれの発生位置とそのずれ量を計測したであることを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接装置。
【請求項13】
前記移動手段は、多軸ロボットであり、前記レーザ射出手段は、前記多軸ロボットに設けられていることを特徴とする請求項1〜12記載のレーザ溶接装置。
【請求項14】
前記多軸ロボットと前記レーザ射出手段との取り付け部には、振動抑制部材を有することを特徴とする請求項13記載のレーザ溶接装置。
【請求項15】
前記振動検出手段は角度の変化を検出するものであり、前記補正手段は検出された角度に基づいて前記レーザの射出角度を補正することを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置と、
前記レーザ溶接装置が取り付けられたロボットと、
前記レーザ溶接装置を移動させために前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段と、
を有することを特徴とするレーザ溶接システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−21551(P2007−21551A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209272(P2005−209272)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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