説明

レーザ焼結下板を有する基板

【課題】結合構造の製造に応じて、構成要素を取り付ける後続の処理のための基板が提供される。
【解決手段】開示の基板は、金属部分と、この金属部分にレーザ焼結された下板とを備える。金属部分は、下板の焼結温度より低い融点を有する。結合構造20は、金属マトリックス複合材中のアルミニウム金属などの金属部分を有する構造部材22を含む。下板である金属層24が、構造部材22上に配置される。金属層24は、構造部材22と、構造部材22が結合材料28を介して結合される別の構成要素26との間に位置する。すなわち、金属層24は、結合材料28に関して下板になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、剥離せずに高温処理条件に耐えることができる強固な接合面を有する結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に結合されるケイ素ダイなどの結合構造は一般に、ダイと基板とを一緒に結合し、ダイとパッケージとの間で熱を伝達させる複数の金属層を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような結合構造の製造業者は一般に、300℃を超えない処理温度でこの結合構造を作成する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の基板は、金属部分と、この金属部分にレーザ焼結された下板とを備える。金属部分は、下板の焼結温度より低い融点を有する。
【0005】
開示された実施例のさまざまな特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は以下に簡単に説明可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】焼結接合面を有する実施例の結合構造の概略図である。
【図2】焼結接合面を有する実施例の電子装置の概略図である。
【図3】焼結接合面を有する電子装置を処理する実施例の方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、特定の種類や用途に限定されない実施例の結合構造20を示す。結合構造20は、金属マトリックス複合材中のアルミニウム金属などの金属部分を有する構造部材22を含む。下板である金属層24が、構造部材22上に配置される。金属層24は、構造部材22と、構造部材22が結合材料28を介して結合される別の構成要素26との間に位置する。すなわち、金属層24は、結合材料28に関して下板になる。
【0008】
結合材料28は、特定の種類には限定されないが、はんだ材料、拡散接合材料(例えば、金およびスズ)、または構造部材22と構成要素26とを一緒に取り付けるのに適した他の材料とすることができる。結合構造20の製造に応じて、構造部材22および金属層24は、構成要素26を取り付ける後続の処理のための基板として提供可能である。
【0009】
金属層24は、構造部材22上に直接配置されており、構造部材22と構成要素26との間の強固な接合面の形成を容易にするのに役立つ焼結接合面30を有し、この強固な接合面は、剥離せずに350℃を超える後続の処理温度に耐えることができる。
【0010】
金属層24は、ニッケル金属、銅金属、または結合構造20の特定の用途に適した他の金属とすることができる。例えば、選択された金属は、構造部材22と構成要素26との間の熱伝導体として役立つこと、構造部材22と構成要素26との結合を容易にすること、および/または、結合構造20の別の所望の目的に役立つことができる。いずれにしろ、金属層24と構造部材22との連続的な接触によって、効率的な熱伝導および良好な結合強度が容易に得られる。
【0011】
図示された実施例では、焼結接合面30が、結合構造20の処理中に形成される。例えば、金属層24は、高エネルギービームを用いて構造部材22上に堆積される。高エネルギービームは、金属層24のために選択された金属のターゲット源に向けられるレーザまたは電子ビームとすることができる。高エネルギービームは、ターゲット源材料に照射され、ターゲット源材料は、加熱されて蒸発または昇華し、金属の高エネルギープルーム(plume)を形成し、この金属の高エネルギープルームは、構造部材22の表面に堆積して焼結接合面30を形成する。
【0012】
熱を適用し高エネルギープルーム中のターゲット源材料を堆積させることで、この材料の熱的な圧密(consolidation)によって金属層24の焼結接合面30が形成される。さらに、高エネルギービームとターゲット源材料を用いることで、高エネルギープルームを形成するのに必要とされる高い処理温度に構造部材22を曝さないですむ。この点では、金属層24として堆積される材料は、構造部材22の金属の融点より高い焼結温度を有することができる。例えば、構造部材中のアルミニウムは約1221°F(660℃)の融点を有するが、ニッケルなどの金属層24を堆積させるためにターゲット源材料が加熱される温度はかなり高い。金属層24をその場で焼結すると、他の方法では、構造部材22の金属部分を溶融させてしまうであろう。
【0013】
焼結接合面30は、上述した堆積方法を用いて形成される金属層24と構造部材22の表面領域との微細構造、金属層24と構造部材22との機械的接合面、あるいは、高エネルギービームを用いる金属層24の堆積に付随する焼結接合面30の別の物理特性、と見なすことができる。すなわち、焼結接合面30は、金属層24のレーザ適用の物理特性である。
【0014】
以下により詳細に説明するように、結合構造20の焼結接合面30は、強固であり、350℃以上の後続の処理温度に耐えることができる。この点では、焼結接合面30によって、フレーム溶射などの他の方法を用いて焼結接合面が堆積されたならば金属層24を損傷してしまうであろう他の方法での処理温度による熱応力に起因するふくれ(blistering)、割れおよび剥離が制限または防止される。従って金属層24は、350℃以上の熱履歴後でさえ、構造部材22と連続的に接触している。
【0015】
図2は、別の結合構造を示しており、この実施例では、結合構造は、電子装置120である。この開示では、同様の参照符号は、適切ならば同様の構成要素を示しており、100を追加した参照符号や参照符号を多重化したものが、対応する元の構成要素の同じ特徴および利点を具体化すると理解される修正された構成要素を示す。この実施例では、電子装置120は、AlSiCパッケージ122と、このAlSiCパッケージ122上に配置された金属層124とを備える。金属層124は、約1〜6μmの厚みを有することができるが、使用者は、特定の用途の必要性を満たす別の所望の厚みを選択することができる。AlSiCパッケージ122は、アルミニウム金属マトリックス122b中に分散した炭化ケイ素強化材122aを有する金属マトリックス複合材とすることができる。
【0016】
AlSiCパッケージ122は、ケイ素ダイまたは炭化ケイ素ダイなどのケイ素含有ダイ126に結合材料128によって結合される。この実施例では、ケイ素含有ダイ126は、任意選択的に層126a、126bを備える。層126a、126bはそれぞれ、AlSiCパッケージ122とケイ素含有ダイ126との間の結合および熱伝導を容易にするためにチタン金属およびニッケル金属とすることができる。層126a、126bは代替として、用途の特定の必要性に応じて他の種類の金属層とすることができることを理解されたい。
【0017】
上述したように、金属層124は、ニッケル金属、銅金属、または特定の用途に適した他の金属とすることができる。電子装置120は、金属層124とAlSiCパッケージ122との間に焼結接合面130を備える。上述したように、焼結接合面130は、金属層124をAlSiCパッケージ122上に堆積させるのに使用される高エネルギービーム堆積方法の物理特性となる。
【0018】
焼結接合面130は、強固であり、ふくれ、割れまたは剥離なしに電子装置120の後続の高温処理を可能とする。例えば、結合材料128は、AlSiCパッケージ122およびケイ素含有ダイ126を一緒に融合させるために350℃以上の温度で処理可能である。電子装置120の焼結接合面130は、金属層124およびAlSiCパッケージ122が350℃以上の熱履歴後に焼結接合面に亘って連続的に接触したままとなるように剥離なしにそのような温度で処理可能である。これによって、作動中にダイ接合部温度が低いままとなることができるように金属層124とAlSiCパッケージ122との間の良好な熱伝導が容易になる。さらに、金属層124とAlSiCパッケージ122との間の焼結接合面130はほぼ、フレーム溶射堆積などの他の技術を用いて堆積される同様の金属層に比較して熱疲労に関してより大きな強固さとなる程度の強固さである。
【0019】
図3は、図2の電子装置120などの電子装置を処理する実施例の方法160を示す。この実施例では、方法は、金属層124を堆積させる堆積ステップ162と、結合材料128を堆積させる堆積ステップ164と、接合面130の剥離なしにケイ素含有ダイ126とAlSiCパッケージ122とを一緒に融合させる加熱ステップ166とを含む。実施例では、金属層124が、レーザまたは電子ビームなどの高エネルギービームを用いてAlSiCパッケージ122上に堆積される。次の堆積ステップ164では、結合材料128が、ケイ素含有ダイ126とAlSiCパッケージ122との間に堆積される。例えば、結合材料128は、ケイ素含有ダイ126またはAlSiCパッケージ122、あるいはこれら両方の上に堆積されることができる。結合材料128は、後に加熱されて結合を形成する1つまたは複数の金属材料層を含むことができる。
【0020】
電子装置は、ケイ素含有ダイ126とAlSiCパッケージ122との間に結合を形成するように加熱ステップ166で加熱される。加熱温度は、350℃以上とすることができ、上述したように焼結接合面130の剥離を生じさせない。すなわち、焼結接合面130は、高温処理温度による熱応力に耐えるように十分強固である。
【0021】
いくつかの特徴の組み合わせを、例示の実施例において示したとはいえ、その全てを、本開示のさまざまな実施例の利点を実現するために組み合わせる必要はない。すなわち、本開示の実施例に従って設計されるシステムは必ずしも、図のいずれかに示された特徴の全てを、あるいは図に概略示された部分の全てを含むものではない。さらに、例示的な一実施例の選択された特徴が、例示的な他の実施例の選択された特徴と組み合わせ可能である。
【0022】
上述した説明は、本質的に限定ではなく例示である。本開示の本質から必ずしも逸脱しない、開示の実施例に対する変更および修正が、当業者には明らかとなり得る。本開示に与えられる法的保護範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部分と、
この金属部分にレーザ焼結された下板と、
を備える基板であって、
金属部分が、下板の焼結温度より低い融点を有することを特徴とする基板。
【請求項2】
金属部分は、アルミニウムであり、下板は、ニッケル金属であることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
金属部分は、複合材の金属マトリックスであることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項4】
複合材は、炭化ケイ素を含むことを特徴とする請求項3記載の基板。
【請求項5】
電子装置パッケージを備える電子装置であって、
電子装置パッケージは、金属層/パッケージ接合面が存在するように、電子装置パッケージの上に金属層を有しており、金属層/パッケージ接合面は、レーザ焼結されていることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
電子装置はさらに、金属層の上にケイ素含有ダイと結合材料とを備えており、結合材料は、電子装置パッケージとケイ素含有ダイとを一緒に結合し、電子装置パッケージは、アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)パッケージであることを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項7】
ケイ素含有ダイは、チタン金属層とニッケル金属層とを備えることを特徴とする請求項6記載の電子装置。
【請求項8】
金属層は、ニッケル金属および銅金属から成る群より選択されることを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項9】
金属層は、ニッケル金属であることを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項10】
金属層/パッケージ接合面は、350℃を超える処理温度で割れもふくれも生じないことを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項11】
電子装置パッケージは、アルミニウム金属マトリックス中に分散された炭化ケイ素強化材を有する金属マトリックス複合材であることを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項12】
金属層は、レーザ適用されることを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項13】
ケイ素含有ダイと、
アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)パッケージと、
結合材料と、
を備える電子装置であって、
AlSiCパッケージは、AlSiCパッケージの上にニッケル金属層を備え、
ニッケル金属層は、AlSiCパッケージとの焼結接合面を有し、
結合材料は、AlSiCパッケージ上のニッケル金属層とケイ素含有ダイとを一緒に結合することを特徴とする電子装置。
【請求項14】
アルミニウム金属を含む構造部材と、
構造部材上にあり、構造部材との焼結接合面を有する金属層と、
金属層上にあり、構造部材と別の構成要素とを一緒に結合するように作用する結合材料と、
を備える結合構造であって、金属層は、ニッケル金属および銅金属から成る群より選択されることを特徴とする結合構造。
【請求項15】
金属層は、ニッケル金属であることを特徴とする請求項14記載の結合構造。
【請求項16】
結合材料は、金およびスズを含むことを特徴とする請求項14記載の電子装置。
【請求項17】
レーザ焼結された金属層/アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)接合面が存在するようにエネルギービームを用いてアルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)パッケージ上に金属層を堆積させ、
金属層とケイ素含有ダイとの間に結合材料を堆積させ、
金属層/AlSiC接合面の剥離なしにケイ素含有ダイとAlSiCパッケージとを一緒に融合させるように結合材料を加熱する、
ことを含むことを特徴とする、電子装置を処理する方法。
【請求項18】
結合材料の加熱は、350℃を超える温度で行われることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
金属層は、ニッケル金属および銅金属から成る群より選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
金属層は、ニッケル金属であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
エネルギービームは、レーザであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項22】
エネルギービームは、電子ビームであることを特徴とする請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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