説明

レーザ照明システム用のリターダー・ベース・スペックル除去デバイス

【課題】レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる方法および装置を提供する。
【解決手段】レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる方法および装置は、レーザ照明システム内のコヒーレント・レーザから放出された光に実質的に半波の奇整数倍のリターデーションを与える光リターダーを含むスペックル除去デバイスを使用する。近半波光リターダーは、実質的に一定のリターダンスおよび空間的に変えられる遅軸を有する。空間的に変えられる遅軸は、検出器上の解像度スポットに対して副解像度光位相変調を行う位相マスクを光ビームに課す。近半波光リターダーは、検出器の積分時間内で副解像度光位相変調を変えるように機械的または電気的に駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはスペックル低減に関し、特にレーザ照明システムにおけるスペックルを低減させるためのリターダー(retarder)をベースとする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ照明システムは、高パワーの照明および飽和色を得るために投射型ディスプレイで一般に使用される。しかし、レーザが明るい画像を良好な色彩で実現する一方で、画像品質がスペックルのために劣化することがある。
【0003】
スペックルは、コヒーレント光が粗い表面またはほこりをかぶった表面から反射されたとき、あるいは屈折率がランダムに変化する媒体中をコヒーレント光が伝搬するときに生じる。より詳細には、スペックルは、光の波長よりも遅延差が大きい多数のビームを含む反射光が検出器(例えば人間の眼、または二乗光検出器)において干渉するときに生じる。この干渉は、一般にスペックル・パターンと呼ばれる不均一でランダムな光強度の変動をもたらす。
【0004】
投射型ディスプレイでは、スペックルは一般に、レーザ光の波長の4分の1よりも大きい表面粗度を通常有するディスプレイ・スクリーンで光が反射するときに生じる。結果として起こる反射レーザ光のランダムな空間干渉により、画像の品質を著しく劣化させるスペックル・パターンが生成される(例えば、画像の粒子が粗く見えるようになり、かつ/または鮮明度が低下する)。さらに、所与の方向における相対的な位相遅れの特性がそれぞれ異なることにより、スペックル・パターンは視点によって変化し得る。この結果、見ている画像が視点とともに変化し、光学システムは高忠実度の画像を確実に再現することができなくなる。
【0005】
スペックルは通常、スペックル・コントラストによって定量化される。従来技術では、スペックルを低減させる、かつ/またはスペックル・コントラストを低減させる様々な技法が述べられている。例えば、1つの手法は、多数の波長によるスペックル・パターンが平均して平滑なプロファイルになるように、レーザの縦モードの数を増加させるものであった。別の手法は、空間的にインコヒーレント照明を実現するために、コヒーレント・レーザ・ダイオード(LD)のアレイをタイルのように並べるものであった。残念ながら、この手法は費用がかかり、また多くの小型プロジェクタでは、数十ルーメンの照度を出力するのに単一のLDチップに依拠しているので、必ずしも実際的ではない。さらに別の手法は、レーザ照明において偏光ダイバーシティを生成するものであった。例えば、1つのレーザ・ビームを2つの偏光に分割することができ、その第1の偏光は偏光ビーム・スプリッタ(PBS)を通ることができ、第2の偏光はレーザのコヒーレンス長よりも大きく遅延される(例えば、米国特許第3633999号および第4511220号を参照されたし)。一般に、この手法はかさばり、スペックル・コントラスト低減が限定的である。さらにこれは、レーザのコヒーレンス長が非常に長い場合には理想的ではない。
【0006】
レーザ・ビームの空間的および時間的干渉性を低減させるためにLD配列(空間的)を変更すること、またはレーザ・デバイス特性(偏光および縦モード)を操作することに加えて、別の手法は、強度の不均一性を低減させるための時間的平均化を可能にする(例えば人間の眼または光検出器によって)多くの変えられるボイリング・スペックル・パターンをつくり出すことであった。例えば、1つの手法はディスプレイ・スクリーンを振動させることである。残念ながら、大きな投射スクリーンでは、これはまったく実際的ではない。したがって、より一般的な手法は、拡散器(例えばJ.W.Goodman他、「Speckle reduction by a moving diffuser in laser projection displays」、Annual Meeting of the Optical Society of America、Rhode Island、2000年を参照されたし)、位相板(例えば米国特許第6323984号および第6747781号を参照されたし)、またはランダム回折光学素子(例えばL.Wang他、「Speckle reduction in laser projection systems by diffractive optical element」、Appl.Opt.37、177〜1775頁、1998年を参照されたし)などの外部光学素子を使用することであり、この素子を経時的に多数の位相遅れが生じるように振動または回転させる。別の手法では、干渉縞をずらすために超音波変調器が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3633999号
【特許文献2】米国特許第4511220号
【特許文献3】米国特許第6323984号
【特許文献4】米国特許第6747781号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.W.Goodman他、「Speckle reduction by a moving diffuser in laser projection displays」、Annual Meeting of the Optical Society of America、Rhode Island、2000年
【非特許文献2】L.Wang他、「Speckle reduction in laser projection systems by diffractive optical element」、Appl.Opt.37、177〜1775頁、1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
時間的平均化を行うための多くの変えられるボイリング・スペックル・パターンをつくり出す、より一般に使用される方法では、スペクトル・コントラストの低減にかなり成功したが、これらは一般に、従来技術の拡散器/位相板に表面パターンが物理的にエッチング/エンボス加工されることによって制約されてきた。例えば、高くされたこれらの表面パターンがレーザ・ビームの品質を著しく劣化させることが認められた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は可動波長板要素を用いて多くの変えられるボイリング・スペックル・パターンをつくり出す方法に関する。一実施形態では、ボイリング・スペックル・パターンは、光学素子の屈折率不均一性、および/または投射スクリーン粗さにより生じる静止/可変スペックル・パターンとともに、画像面において経時的に検出器(例えば人間の眼、光検出器)に提示される。これらの相関関係のない、または部分的に相関関係のあるスペックル・パターンは、検出器積分期間にわたってインコヒーレントに合計される(例えば、時間的に平均される)。この時間的に平均されたスペックル・パターンでは、必要とされる画像強度からのどの観測ピクセルの偏差もスペックルがない状態で低減させることによって、スペックル・コントラストが低減する。
【0011】
可動波長板要素は、近半波(near half−wave)光リターダーの機械的擾乱および/または電子的スイッチングによって発生させる可変位相変調を行うことで、変えられたスペックル・パターンを生じさせる。より詳細には、空間的に変えられる遅軸を有する近半波光リターダーの機械的擾乱および/または電子的スイッチングで、レーザ・ビームのそれぞれ異なる領域に幾何位相シフトを生じさせる。
【0012】
一実施形態によれば、可動波長板要素は、2段以上を含む波長板アセンブリである。第1段では、単層4分の1波長板(QWP)または多層色消し(A)QWPが、その光軸(また遅軸、SA)がレーザ源からの偏光された光出力に対して±π/4(45°)方位角オフセットで配向されるように、向けられる。この結果、レーザからの直線偏光された光出力が、第1の直線偏光から第1の旋光性の円偏光に変換される。第2段では、近半波長板(HWP)要素が、第1の円偏光(すなわち第1の旋光性を有する)を第2の円偏光(すなわち反対の第2の旋光性を有する)に変換する。近半波長板は、変えられる遅軸分布を有する(例えば遅軸方向が、所定またはランダムなパターンで光リターダーの面全体にわたって変わる)。任意選択の第3段では、第2のQWPまたはAQWPが第2の円偏光を第2の直線偏光に変換する。第1段と第3段のQWPのリターダー軸が平行に配向された場合には、第2の直線偏光は第1の直線偏光と平行になる。しかし、2つのQWP段が軸を交差して配向された場合には、第1と第2の直線偏光は直交する。第3段のQWPが省略された場合には、円偏光が出力され、適切な光変調器(例えば複数のマイクロミラーを有する)に渡される。注目すべきことに、この偏光変換では、ポアンカレ球上に閉ループ軌跡を形成して、第2段の近HWPの光軸方向に応じた幾何位相シフトを生じさせる。近HWPは変えられる光軸分布を含むので、この波長板アセンブリは、空間的および/または時間的に変えられる位相マスクをコヒーレント・レーザ・ビームに課すスペックル除去デバイスとして機能し、それによって、必要とされる出力偏光状態で高い入力パワーをなお維持しながら、知覚されるスペックルを低減させる。
【0013】
本発明の一態様によれば、光ビーム中にスペックル除去デバイスを挿入すること、ここで前記光ビームが、レーザ照明システム内のコヒーレント・レーザから放出された光を含み、前記スペックル除去デバイスが、前記コヒーレント・レーザから放出された前記光に実質的に半波の奇整数倍のリターデーション(retardation)を与えるための光リターダーを含み、前記光リターダーが、実質的に一定のリターダンス(retardance)、および空間的に変えられる遅軸を有し、前記空間的に変えられる遅軸が、前記光ビームに位相マスクを課すためのものであり、前記位相マスクが、検出器上の解像度スポットに対して副解像度(sub−resolution)光位相変調を行うためのものであり、および、前記副解像度光位相変調が前記検出器の積分時間内で変えられるように、かつ検出された1つの解像度スポットと別のものとの間の強度不均一性が低減されるように前記光リターダーを駆動することを含む、レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる方法が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、レーザ照明システム内のコヒーレント・レーザから放出される光に実質的に半波の奇整数倍のリターデーションを与えるための光リターダーを含み、前記光リターダーが、実質的に一定のリターダンス、および空間的に変えられる遅軸を有し、前記空間的に変えられる遅軸が、光ビームに位相マスクを課すためのものであり、前記光ビームが、前記コヒーレント・レーザから放出される光を含み、前記位相マスクが、検出器上の解像度スポットに対して副解像度光位相変調を行うためのものであるスペックル除去デバイスと、前記副解像度光位相変調が前記検出器の積分時間内で変えられるように、かつ検出された1つの解像度スポットと別のものとの間の強度不均一性が低減されるように前記光リターダーを駆動するアクチュエータとを備える、レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる装置が提供される。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スペックル除去デバイスを組み込んだ、レーザをベースとする投射型ディスプレイの概略図である。
【図2】変えられる位相値を有するセル区画を示す、検出器の解像度スポット領域内のセルの概略図である。
【図3】ベースライン投射システムの概略図である。
【図4(a)】3段階の変調での物体強度マップの例を示す図である。
【図4(b)】±πまでのランダムな位相変調によるスペックルが物体波面に加えられている検出強度画像の例を示す図である。
【図5】強度変化を平均するためのボイリング・スペックル・パターンの生成を示す概略図である。
【図6】3段のPancharatnam位相変調を示す概略図である。
【図7】Q/H/Qの波長板偏光変換によって得られたPancharatnam位相シフトを示す図である。
【図8】Q/H(θ)/Qの3段偏光変換システムを使用した多数の幾何学的位相シフトを示す図である。
【図9】図9AはPancharatnam位相シフトを誘導するための3段Q/H(θ)/Q偏光変換の概略的な配置を示す図である。図9BはPancharatnam位相シフトを誘導するための3段Q/H(θ)/Q偏光変換の概略的な配置を示す図である。
【図10(a)】460nm波長でのQ/H(θ)/Q波長板による偏光変換を示す図である。
【図10(b)】520nm波長でのQ/H(θ)/Q波長板による偏光変換を示す図である。
【図10(c)】635nm波長でのQ/H(θ)/Q波長板による偏光変換を示す図である。
【図11】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、3段Q/H(θ)/Qデバイスの多数のXY位置から導出した計算された幾何学的な位相シフトを示すグラフである。
【図12】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、3段Q/H(θ)/Qデバイスの多数のXY位置における、入力直線偏光(H偏光)に沿った計算強度比を示すグラフである。
【図13】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、3段Q/H(θ)/Qデバイスの多数のXY位置における、計算された楕円偏光の長軸角度および楕円率角度を示すグラフである。
【図14】垂直入射での二重層AQWP設計の計算された1回通過リターダンス特性を示すグラフである。
【図15】垂直入射での二重層AQWP設計の計算された2回通過リターダンス特性を示すグラフである。
【図16(a)】460nm波長でのH/Q/H(θ)/Q/H波長板による偏光変換を示す図である。
【図16(b)】520nm波長でのH/Q/H(θ)/Q/H波長板による偏光変換を示す図である。
【図16(c)】635nm波長でのH/Q/H(θ)/Q/H波長板による偏光変換を示す図である。
【図17】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、5段H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスの多数のXY位置から導出した計算された幾何学的な位相シフトを示すグラフである。
【図18】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、5段H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスの多数のXY位置における、入力直線偏光(H偏光)に沿った計算強度比を示すグラフである。
【図19】±πの間のHWP遅軸方向全体を範囲として、5段H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスの多数のXY位置における、計算された楕円偏光の長軸角度および楕円率角度を示すグラフである。
【図20(a)】電気的に切換え可能なHWPおよび2つのQWPを含む、本発明の一実施形態によるスペックル除去デバイスの概略図である。
【図20(b)】電気的に切換え可能なHWPおよび2つのQWPの遅軸方向を示す、図20(a)に示したスペックル除去デバイスの拡大図である(図を分かりやすくするために基板は省略)。
【図20(c)】電気的に切換え可能なHWPを含む、本発明の一実施形態によるスペックル除去デバイスの概略図である。
【図20(d)】電気的に切換え可能なHWPの遅軸方向を示す、図20(c)に示したスペックル除去デバイスの拡大図である(図を分かりやすくするために基板は省略)。
【図21(a)】空間的に変えられる固定遅軸および2つのQWPを有する近HWPを含む、本発明の一実施形態によるスペックル除去デバイスの概略図である。
【図21(b)】2つのQWPの遅軸方向を示す、図21(a)に示されたスペックル除去デバイスの拡大図である。
【図21(c)】図21(a)に示した近HWPが、検出器積分期間にわたって可変位相変調を生じさせるように回転する、本発明の一実施形態を示す概略図である。
【図21(d)】図21(a)に示した近HWPが、検出器積分期間にわたって可変位相変調を生じさせるように振動して1D(a)または2D(b)の直線並進移動(translation)を実現する、本発明の一実施形態を示す概略図である。
【図22】近HWPがLCPを含む場合に、第1、第2および第3段の波長板アセンブリの光学軸方向を示す概略図である。局所LCP部位のランダムな配向を示す図である。
【図23】ランダムに配向されたLCP半波長板の交差偏光子顕微鏡強度画像である。
【図24】m=+1とm=+1の渦が相互作用する場合のLCダイレクタ分布のモデルを示す図である。
【図25】m=−1とm=−1の渦が相互作用する場合のLCダイレクタ分布のモデルを示す図である。
【図26】m=−1とm=+1の渦が相互作用する場合のLCダイレクタ分布のモデルを示す図である。
【図27】タイプBプロセスを用いて製造されたLCPのHWPの減偏光スペクトルを示すグラフである。
【図28】図28(a)は粗い静止スクリーン・スペックルおよび静止スペックル除去を示す検出画像である。図28(b)は粗い静止スクリーン・スペックルと、スペックル除去デバイスによって設けられた10個のランダムな位相マスクから発生したスペックルとを示す検出画像である。図28(c)は粗い静止スクリーン・スペックルと、スペックル除去デバイスによって設けられた100個のランダムな位相マスクから発生したスペックルとを示す検出画像である。図28(d)は粗い静止スクリーン・スペックルと、スペックル除去デバイスによって設けられた160個のランダムな位相マスクから発生したスペックルとを示す検出画像である。
【図29】ボイリング・スペックル・パターン数の関数としてシミュレートしたスペックル・コントラストのグラフである。
【図30】各副解像度スポットの区画とディスプレイ・パネル・ピクセル・サイズとの関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面全体を通して、同様なものは同じ参照番号で識別されていることに留意されたい。
【0018】
図1にレーザをベースとするプロジェクタ(PJ)システムが示されている。このシステム100では、光源110からの出力光は、ディスプレイ・パネル150上に、必要とされるアスペクト比で均一な照度の長方形を形成するために、光学素子120によって均質化され成形される。この実施形態では、光源110は、共パッケージされた1つの赤、緑および青(RGB)レーザ・ダイオード(LD)モジュールを含む。別の実施形態では、光源は、個別に結合された3つのRGB LDを含む。ビーム成形光学部品120は、一実施形態では高性能光パイプ、コリメーション・レンズ、またはフライ・アイ・レンズを含み、また一般に、ディスプレイ・パネル150で偏光変調を用いる場合(例えば液晶をベースとするディスプレイ)では、偏光変換光学部品および/または偏光回復光学部品も含む。他の実施形態(例えば、空間が制約されたナノ/ピコ・プロジェクタ)では、ビーム成形光学部品120は、照明アーム内で長方形を均質化し成形するために使用される回折性/屈折性のフラット光学部品の組合せを含む。この実施形態では、ディスプレイ・パネル150は、透過形ディスプレイ・パネル(例えばツイステッド・ネマチック(TN)LCDパネル)として図示されている。他の実施形態では、ディスプレイ・パネル150は反射形である(例えば、デジタル・マイクロ・ミラー(DMD)または液晶オン・シリコン(LCoS)パネル)。反射形ディスプレイ・パネルを使用する実施形態では、偏光ビーム・スプリッタ(PBS)が通常、照明と投射光学縦列を分離するために設けられる。投射光学部品160は通常、変調光をディスプレイ・スクリーン170上に投射する投射レンズを含む。ディスプレイ・スクリーン170から反射された光は、検出器180で観測される。
【0019】
上述したように、光源110の固有の干渉性、様々な光学構成要素120の屈折率不均一性、および/またはディスプレイ・スクリーン170の粗さは、光干渉を引き起こすランダムな位相変動を誘起し、これは、明暗の画像スポットとして観測者に明らかに見える。このスポット間の強度ゆらぎ(例えばスペックル・パターン)は、検出器180の解像度スポットのサイズと同じ固有の粒径を有する。スペックル・パターンにより、画像品質がほとんどの画像応用例で許容できないものになる。
【0020】
したがって、スペックル除去デバイス140が、スペックル・ノイズを除去または低減するために光路に挿入される。この実施形態では、スペックル除去デバイス140は、スペックル除去デバイスの望ましくない散乱および/または減偏光により光学システムの変調伝達関数が低下しないように、ディスプレイ・システムの照明アーム内(例えば、光源110とディスプレイ・パネル150の間)に配置される。他の実施形態では、スペックル除去デバイス140は、ディスプレイ・システムの投射アーム内(例えば、ディスプレイ・パネル150と投射スクリーン170の間)に挿入される。
【0021】
スペックル除去デバイス140は、人間の眼または電子検出器180の1つの検出期間にわたって、様々な光学構成要素の屈折率不均一性、および/またはディスプレイ・スクリーンの粗さにより生じる静止スペックル・パターンと平均される多数のスペックル・パターンを生成することによって、スペックル・ノイズを低減させる。スペックル除去デバイス140は、レーザ光源の干渉性は低減させないが、スペックル・パターンの知覚される影響を低減させ、かつ/またはスペックル・コントラストを低減させる。
【0022】
スペックル・コントラストを低減させるために多数のスペックル・パターンを生成する方法は、テクスチャ表面を有した能動拡散器/可変位相板を使用する従来技術のスペックル除去デバイスのために検討されてきた。J.W.Goodman、「Some fundamental properties of speckles」、J.Opt.Soc.Amer.A、66、1145〜1150頁、1976年によれば、レーザ照明のスペックル・コントラスト比は、相関関係のないN個のスペックル・パターンを重畳することによって低減させることができる。スペックル・コントラスト比は、平均画像強度包絡線との比として、不均一な画像の二乗平均(rms)強度偏差と定義される。低減は、完全に相関関係のない組では√Nの因数になる。相関関係のないスペックル・パターンは、時間、空間、周波数(波長)および偏光から得ることができる。N組のスペックル・パターンが相関関係のないものではない場合には、低減係数は小さくなる。
【0023】
J.I.Trisnadi、「Speckle contrast reduction in laser projection displays」、Projection Displays VIII、Proc.SPIE 4657、M H Wu編集(Soc.Photo−Opt.Instru.Engrs.、Bellingham、WA、2002年)、131〜137頁によれば、スペックル・コントラストを低減させる1つの手法は、強度検出器(すなわち人間の眼または電子光検出器)の解像度スポットに対応するセルを多数のセル区画の中につくり、時間的位相変化をそのセル区画に加えることである。検出器の解像度スポット内セルの概略図が図2に示されている。
【0024】
米国特許第6747781号ではTrisnadiが、最適なスペックル・コントラスト低減には検出器における光場のコヒーレント加算のクロス項が除去されることが必要であると教示している。例えば、能動拡散器/位相板が、2×2個の区画に分割されたセルを含む場合、最初の変化していない検出強度は次式で与えられる。
【0025】
【数1】

ここでAijは、能動拡散器のあるセル内の個別セル区画の複素振幅透過または複素振幅反射である。能動拡散器の単一セルは、検出器解像度スポット・サイズに対応する。本明細書では、能動拡散器という用語は能動位相板と交換可能に使用される。能動拡散器は、その特性が検出器積分期間にわたって変化しなければならないという意味において能動的である。
【0026】
クロス項(すなわち2つ以上のセル区画の複素振幅の積)は、2×2個のセルがアダマール2×2行列として配列され、検出器積分時間の4つの副期間(sub−interval)を通して変換される場合に除去されることが示された。次に、所望の照度結果が次式で与えられる。
【0027】
【数2】

したがって、任意の粗い表面、または任意の屈折率変調光学構成要素に到達する検出可能な強度は、単に個々のセル区画強度のインコヒーレントな合計になる。スペックルをもたらすコヒーレント干渉は発生しない。
【0028】
上述の手法では、実質的に等しい伝達のアダマール行列と、副解像度スポット・レベルで0とπの位相変化とが用いられる。アダマール行列の次元が大きいほどスペックル・コントラスト低減の利得が高くなる。しかし、0とπの位相マスクを得るにはエッチングされた表面レリーフ構造に依拠しなければならないことで、セル区画の実現可能なサイズが制限される。加えて、解像度スポットのセグメントに対応する各位相区画の等しいサンプリング間隔を厳密に実行することは、小さな横方向並進移動要件により困難である。例えば、マイクロディスプレイ・パネルが約10μmのピクセル・ピッチを有する場合、1つの2×2区画は、各2.5×2.5μmの位相区画がマイクロディスプレイ・ピクセルのセグメント内へ検出器積分期間の1/4で正確に並進移動することを必要とする。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、スペックル除去デバイス140はリターダーをベースとする。リターダー・ベース・スペックル除去デバイス140は、時間領域および/または空間領域にわたって光場の振幅を一定に保ちながら、個々のセル区画(またはより一般的には、照明断面の各XY部位)で光位相シフトの量を変化させることによって検出器内のクロス項の寄与を低減させる。
【0030】
一般に、リターダー・ベース・スペックル除去デバイス140は、空間的に変えられる遅軸を有する光リターダーを使用して、可変量の光位相シフトを生成する。一実施形態では、空間的に変えられる遅軸を有する光リターダーは、各セル区画(またはより一般的には、照明断面の各XY部位)を通して伝達される波面を変えるように検出器積分時間にわたって動かされ(例えば振動または回転させる)、この結果、位相変調が検出器に副解像度スポットにおいて与えられるようになる。別の実施形態では、空間的に変えられる遅軸を有する光リターダーは、位相変調を行うように電子的に駆動される。これらの実施形態では、リターダー・ベース・スペックル除去デバイス140は、1つまたは複数の光リターダー(すなわち、空間的に変えられる遅軸方向を有する光リターダーを含む)によって行われる偏光変換を介して光位相シフトを行う。
【0031】
有利なことに、テクスチャ表面ではなく光リターダーによって光位相シフトが行われるので、レーザ・ビームの特性が維持される。さらに、光リターダーの空間的に変えられる軸方向が連続的に変えられる実施形態では、増加した数の位相マスクを検出器に与えることができ、それによって、疑似ランダム位相符号化が可能になる。この場合、スペックル除去デバイス140は、テクスチャ表面を有する従来技術の拡散器/位相板で経験された解像度スポット制限に対する位相区画配向により制約されない。
【0032】
ベースライン・プロジェクタ・システム105を示す図3参照して、リターダー・ベース・スペックル除去デバイスの機能を説明する。このベースライン・システムでは、ビーム成形光学部品が理想レンズ121として図示されているが、ディスプレイ・パネル150は、追加のピクセルごとの光変調が2D検出画像を複雑にするので、省略されている。
【0033】
レーザ光源110は、様々な角度の一連の光線を放出し、そのそれぞれがコヒーレントである(すなわち同相で同じ光周波数を有する)。レンズ121は、レーザ源110からフラット位相面145までで単一点光源を平行にする。より詳細には、レンズ121は、その位置の後のある所定距離を取ったところに焦点位置を合わせて、フラット位相面145に平行ビーム・ウェストをつくり出す。このフラット位相面全体にわたってすべての波面が互いに同相で到達する。スクリーン170上に投射されるのがこのフラット位相面からの照明であり、照明がスクリーン上でスクリーンの粗い表面によって変調される。したがって、観測者180には、それぞれ異なる光路長を取ってどれか所与の検出器ピクセル(ここで、検出器ピクセルは、眼の解像度スポットと交換可能に用いられている)に到達する多数の光線の干渉により、不均一な強度分布(例えばスペックル・パターン)が見える。
【0034】
図4(a)および図4(b)は、画像に対するスペックルの影響を示す。図4(a)は、3ゾーン(例えば0.1、0.5および1の単位)強度マップとして表された物体を示す。図4(b)は同じ物体の、シミュレートしたスペックル・パターンで劣化した画像を示す。シミュレーションで画像システムは、512×512の計算格子にわたって発生させた±πまでの正規分布ランダム位相分布を含むようにモデル化された。このモデルは、ランダム位相分布を生成する表面を通した伝達を想定している。この表面は、プロジェクタ・システム内のスペックルのすべての発生源を表すが、このスペックルの大部分は、ディスプレイ・スクリーンの表面粗さから発生する。物体波面およびスペックル発生源による波面は、複素振幅空間で増幅され前方に伝搬される。この伝搬された視野は次に、円形の開口によって増大されて、画像システムの射出瞳のところに視野がつくり出される。その画像平面分布は、射出瞳分布とのフーリエ変換対であり、数値的に計算される。検出器面に、多数の光路の建設的干渉および相殺的干渉による不均一画像が得られる。この計算で、50%を超えるスペックル比が得られたことに留意されたい。平均画像輝度よりも、検出器ピクセルの一部は非常に明るいが他の検出器ピクセルは非常に暗い。
【0035】
リターダー・ベース・スペックル除去デバイス140は、スペックル除去デバイスに対する一連の空間的および/または時間的変更によって、一連のスペックル・パターンを発生する。他の光学部品(すなわちスペックル除去デバイス以外)により生じたスペックル・パターンとは相関関係がないこれらのスペックル・パターンは、知覚されるスペックル量を低減させるために、1つの積分期間内に、他の光学部品によって発生したスペックル・パターンとともに検出器180まで伝達される。スペックル除去デバイス140によって発生させる一連のスペックル・パターンは、検出器180の積分期間にわたって一連の位相変調を行うモデルを用いてシミュレートすることができる。ディスプレイ・スクリーン170で、スペックル除去デバイス140の位相変調は、元のスペックルの位相マップによって増大される。次に、結果として生じた波面が検出器面まで伝搬される。こうすると、眼(または検出器)がその積分期間にわたって融合する一連のボイリング・スペックル・パターンがつくり出される。このシミュレーションでは、1:1の画像拡大倍率が想定されている。さらに、スペックル除去デバイスおよび投射スクリーンによる位相マスクは、生じる波面が2つの構成位相マップの合計になる位相変調を有するように、本質的に無損失(すなわち、1単位の複素振幅視野を与える純粋な位相変調)であると想定されている。
【0036】
過度に単純化した解析では、所与の解像度スポット内の瞬時検出強度は、検出器上に落ちるすべての複素振幅光線のコヒーレント合計になる。このコヒーレント合計は、各検出器ピクセルで瞬時画像強度を生じさせる。検出器積分期間にわたって、知覚される画像強度は、これらすべての画像のインコヒーレント平均になる。Δt期間にわたる平均強度は次式となる。
【0037】
【数3】

式(4)は(i、j)光流の瞬時複素振幅であり、定数Bが振幅、φijが瞬時位相項であり、位相項は一般に(x、y)に依存し、かつ/または経時的に変化させることができ、Δtが検出器積分時間である。人間の眼では、積分時間は約20ms(すなわち毎秒50フレーム)である。
【0038】
本質的に、検出器180には一連の強度画像が与えられる。この画像は、スペックル除去デバイス140によって設けられた位相マスクの複素振幅増倍、および投射スクリーン光路長変調から発生する。検出器積分時間内の各構成画像はスペックル・パターンである。これらは、図5に示されたように、観測者によって積分される。とりわけ、スペックル除去デバイスによって発生したスペックルが無相関画像に対応する場合には、不均一強度画像(例えばスペックル)は最も低減されたように見える。システム・スペックルの発生源(例えばディスプレイ・スクリーンから発生する)が静止しているので、スペックル除去デバイスがスペックル画像を検出器積分時間にわたって変化させることが好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、スペックル除去デバイス140は、光路幾何学変調を用い、一連の位相変調を生じさせて一連の無相関スペックル・パターンを発生させる。一般に、位相シフトは、光路長変調または光路幾何学変調を用いて生成することができる。前者はよく知られている技法であり、通常は光路長を変化させるために屈折率または物理的厚さを変えることを含む。後者は一般的ではない。これは、光路長は同一にして、しかし経路の形状は変えることに依拠する。幾何位相とは、量子状態がパラメタ空間または状態空間において閉鎖ループ断熱過程にかけられた場合に得られる位相シフトに与えられた総称である。光学では、この現象は少なくとも2つの重要な事例、すなわちらせん経路に沿った円偏光光子搬送のスピン方向変更位相シフトと、閉ループに沿った偏光変換のPancharatnam位相とに該当する。前者は1単位スピンのスピノルを用いるのに対して、後者は、1/2のスピン単位を有するポアンカレ球(PS)上に偏光変換を写像する。この結果、スピン方向変更では、囲まれた立体角の大きさに対応する幾何位相シフトを誘導し、閉ループ偏光変換では、囲まれた立体角の大きさの幾何位相シフトの半分だけを生じる。
【0040】
例えば、少なくとも2つの線形リターダー素子によって最後の偏光が再び水平になるように変換される直線水平偏光を考える(例えば、π/3および2π/3に配向された中間の直線偏光状態を含むシステム)。PS球上の3つの点に関して、球の表面に沿って最短経路をたどって点を結ぶことによって測地三辺形を形成することができる。その場合、この測地ループに対する立体角は2π(球の立体角4πの半分)になる。これを受けて、幾何位相シフトはπ(Pancharatnam位相の場合の立体角の半分)になる。直線水平偏光を有する参照光を、やはり水平に偏光されているが偏光変換によってπの位相シフトを得た別のビームと干渉させた場合、この2つのビームは相殺的な干渉を生じる。
【0041】
ここで採用する位相規約では、光場Eに対する時間的外乱は正の符号を有し、空間的外乱は負の符号を有する。
【0042】
【数4】

【0043】
上式は、等方性のみのフィルム上に光が直角で入射するという想定を含む。オフノーマルで複屈折の層をマトリクス法で処理することができる。位相規約を定義することを目的として、2つの直交する直線視野成分が次式で与えられる。
【0044】
【数5】

ここで振幅と位相差の比はそれぞれ次式となる。
【0045】
【数6】

これらの角度の範囲は次式となる。
【0046】
【数7】

【0047】
(β、α)の組合せにより、一般的な楕円偏光面波を記述することができる。陰な時間的および空間的位相依存性を除くことによって、偏光ベクトルをより簡潔な形で書くことができる。
【0048】
【数8】

【0049】
偏光楕円の主軸の方向角度γ、およびその楕円率角度χもまた、次式のジョーンズ・ベクトル(β、α)角度量から容易に得られる。
【0050】
【数9】

【0051】
式(11)から明らかなように、楕円率角度の符号は、単にsin(α)の符号によって決定される(例えば、常にsin(2β)≧0)。sin(α)>0(すなわち0<α<π)では楕円率は正になり、楕円は自然用語体系による左旋性を有する。sin(α)<0では楕円率は負になり、楕円は右旋性を有する。sin(α)=0(すなわちα=±π)では楕円率はゼロであり、光は直線に偏光される。
【0052】
上式で、(ωt−kz)は動的位相と呼ばれる。一連の複屈折構成要素を含むシステムを光線が横切るようにした場合、幾何位相は、偏光を変化させずに相対的な位相に影響を及ぼす。つまり、それがx成分およびy成分の電界ベクトルに対して同じ位相シフトを与える。したがって、下記の式(9)で出力電界が完全に記述される。
【0053】
【数10】

ここでΦは幾何位相シフトである。閉ループ経路になる個別偏光感応素子(例えば偏光子およびリターダー)を使用する一連の偏光変換では、幾何位相は一般にPancharatnam位相シフトと呼ばれる。この位相シフトは囲まれた立体角Φ=−Ψ/2の2分の1に等しい。1単位半径の球では、その立体角は曲面の面積に等しくΨ=Ωになることに注意されたい。ここでΨは立体角、Ωは表面積である。
【0054】
レーザをベースとする照明システムでは、LDの出力は直線偏光される。この直線偏光は、光学システムのXY幾何学的配置に対して、必要に応じ任意に配向することができる。したがって、位相差は0またはπになる。したがって、入力直線偏光は次式で示される。
【0055】
【数11】

【0056】
ここでAおよびAは実数である。直線偏光が閉ループまわりで変換された後、出力光場は追加の幾何位相Φを得る。
【0057】
【数12】

【0058】
Pancharatnamの解析から続いて、閉ループ偏光変換が、出力偏光を変えずに幾何位相を生じる。Pancharatnam位相シフトを発生させるために、少なくとも2つのリターダー構成要素が必要である。さらに、直線リターダー構成要素または円リターダー構成要素だけが使用される(すなわち楕円リターダーではない)場合には、偏光変換を行うのに少なくとも3つの構成要素が必要になる。直線リターダー縦続接続では、各リターダー素子がその部分厚さに対して一律の軸方向を有する。2つの連続する構成要素からの直線リターダー軸(速軸または遅軸)は、互いに平行に配向されるべきではない。
【0059】
図6は、Pancharatnam位相シフトを誘起するために使用された位相変調器デバイスを示す。位相変調器デバイス200は、第1の波長板アセンブリ(WP1)を使用してレーザ・ダイオードからの第1の直線偏光出力を第1の円偏光に変換し、第2の波長板アセンブリ(WP2)を使用して第1の円偏光を直交する第2の円偏光に変換し、第3の波長板(WP3)アセンブリを使用して第2の円偏光を第2の直線偏光に変換する。この3段波長板構成は、可変位相シフトを発生させるために提案された。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、スペックル除去デバイス140は、図6に示された位相変調器デバイスと類似の波長板アセンブリを使用する。特に、一実施形態では、スペックル除去デバイス140は、第1の直線偏光軸に対して±π/4に配向された有効光軸を有する第1の単層QWPまたは多層AQWPと、HWP上でそのXY位置の関数として変えられ、かつ/または照明断面の所与のXY部位で1つの検出器積分期間にわたって変えられる光軸分布を有するHWPと、第2の直線偏光軸に対して±π/4に配向された有効光軸を有する第2の単層QWPまたは多層AQWPとを含む。第1と第2のQWPアセンブリがそれらの光軸を平行にして配向される場合には、第1と第2の直線偏光もまた平行になることに留意されたい。反対に、光軸が垂直に配向される場合には、第1と第2の直線偏光は直交する。どちらの場合でも、第2のQWPアセンブリは、その光軸が所望の第2の直線偏光出力に対して±π/4に配向される。第2の直線偏光出力は、水平、垂直、またはその間の他の任意の直線状態とすることができる。第2の直線偏光は、第1の直線偏光と関係なく独立して得ることができる。しかし、前述のように、第1と第2の直線偏光状態が平行でなければ、開ループ偏光変換が得られる。実際の位相シフトは、幾何位相シフトと動的位相シフトの両方から影響を受ける。可変幾何位相シフトを含む上述の3段偏光変換波長板アセンブリは、Q/H(θ)/Q(すなわちQWP/HWP/QWP)デバイスと呼ばれ、ここでθは、基準角度に対する中間段波長板アセンブリの方位角である。
【0061】
このQ/H(θ)/Q変換の一例が図7のPSで示されている。図6も参照すると、点Aが、π/4にSAを有するQWPによって点B(「.」のプロット)でRHCに写像されている。θ−π/4にSA方向を有するHWPが点Bを点C(「o」のプロット)に写像して、2θ方向で赤道を横断する。最後に、π/4にSAを有する別のQWPを使用して点Cが点Aに再び写像される(「x」のプロット)。囲まれたPS球の切出し部は、角度広がりが2θラジアンである。したがって、囲まれた立体角は4θになる(すなわち2θ/2π×4π)。幾何位相は、Φ=−2θとして与えられる半分に等しい。HWPのSAは、±π/2の範囲内で一義的にしか定義されない。したがって、最大の幾何位相シフトは±πになり、全体で2πの範囲を与える。
【0062】
幾何位相シフトは限界がないと述べた。これは、偏光変換によってPS上の閉ループから引き出せる位相シフトの量に制限がないことを意味する。これは、可変SA方向を有する高次のHWPがQ/H(θ)/Qのようにして利用された場合に、全体の位相変調が2πよりも大きくなることを意味する。しかし、重要なのはHWP光軸変化に対する位相依存性である。
【0063】
上述のように、HWPの遅軸(SA)は、照明断面のそれぞれ異なるXY部位にわたって、および/またはそれぞれ異なる時間間隔にわたって変えられる。この結果、図8に示すように、一連の測地閉ループがPS上に、位相変調のそれぞれ異なる量に対応して生成される。開始点は直線水平偏光であり、PS上で赤道に位置する。2つの中間点が両極に位置し、HWPのSAに応じて、HWP偏光変換の軌跡が極から極までPSの表面に沿って縦線の1つをたどる。HWPがとる各経路(「o」、「x」および「+」のプロットで示す)は閉ループを囲う。その結果は、各往復偏光変換による囲まれた領域になる。3段光リターダーによるすべての変換は測地経路をたどる。幾何位相シフトは再び、囲まれた各立体角の2分の1で与えられる。
【0064】
第1と第2の直線偏光が平行であることを必要とする場合には、2つのQWPの光学軸もまた平行になる。この場合、入力直線偏光をまずRHCまたはLCHのどちらかに変換する選択肢があり、それぞれでQWP軸をπ/4オフセット(符号は異なる)で配向する必要がある。QWP配向の2つの事例が図9(a)および図9(b)に示されている。
【0065】
以下の計算では、青(B)、緑(G)および赤(R)のレーザのピーク放出の中心に対応するB、GおよびRの波長の組を用いた。例えば、GaN材料系を利用すると、そのBおよびGの中心波長はそれぞれ、約460nmおよび約520nmになる。GaAs/InGaAs材料系を利用する従来のRレーザ・ダイオードは、635nmの中心波長を有すると想定する。さらに、単層QWPの固有材料分散は、Δn(B)/Δn(G)が約1.057、Δn(R)/Δn(G)が約0.937の複屈折比を有すると想定する。これらの複屈折比は、LCをベースとする波長板を使用して容易に得られる。波長差の影響を含むことで、G波長でπ/2のリターデーションを有するQWPが、BおよびRの波長でそれぞれ約1.195×および約0.819×のリターデーションを生じる。B、GおよびR波長でのリターデーション値のこれらの入力を用い、HWPを−115°(θ=−70°)に固定し、QWPがπ/4に配向された遅軸を有するQ/H(θ)/Q波長板のシステムによるストークス・ベクトル展開が、B、GおよびRの波長それぞれについて図10(a)、(b)および(c)に示されている。
【0066】
図10(b)に示されたPS図から、2つのQWPがG設計波長で必要に応じて、直線偏光を円偏光に変換し、逆も同様であることが明らかである。HWPは、やはり設計波長でπのリターダンスを与えられて、1つの円偏光を直交する円偏光に変換する。したがって、G波長での閉ループ測地経路ABCAの幾何位相シフトは、−2θすなわち140°で与えられる。
【0067】
対照的に、図10(a)に示されたB波長の偏光軌跡はPS上の南極位置を行き過ぎるのに対して、R波長の偏光軌跡(例えば図10(c))は南極位置に到達していない。B波長で、QWPに必要なπ/2、およびHWPに必要なπよりも大きいリターダンスの結果として、第3の波長板変換を通って伝達された光の偏光は、点Aでループを閉じるのではなく、点Dで終わることになる。幾何位相シフトの理論から、位相因子はなお、意図された点Aに至る仮想測地経路でループを閉じることによって抽出することができる。偏光は保存されないので、動的位相ならびに幾何位相の両方が青色波出力の瞬時位相に寄与する。しかし、偏光をベースとするディスプレイでは、高い偏光純度を得るために照明が浄化されなければならないしたがって、偏光子が通常、その伝達軸を元のレーザ出力偏光(例えは図6の水平偏光)と平行にして挿入される。点Dで楕円偏光状態であると、水平偏光成分だけを取り込むことによって損失が生じる。次に点Dが、短縮した長さの電界ベクトルを有する点Eに変換される。水平偏光子は理想的なものであり、直交する直線偏光(例えば垂直偏光)を完全に阻止すると想定する。この偏光子はまた、共通伝達損失または相対的な位相差を生じさせない(すなわち複屈折ではない)とも想定する。同様の取扱いを635nm波長の偏光出力にも適用する。
【0068】
各計算波長での幾何位相依存性を抽出するために、下記の計算を実施する。まず、所与の波長およびHWP角度θでのジョーンズ・ベクトルが次式を用いて計算される。
【0069】
【数13】

【0070】
入力偏光は直線水平と想定する。QWPとHWPおよびГとГの各リターダンスは、必要とされる波長および遅軸方向で値が求められる。一般に、電界ベクトルVのXとYの両成分は、次式で与えられるいくつかの位相因子を得る。
【0071】
【数14】

【0072】
理想的な偏光子の想定で、ドット積がジョーンズ・ベクトル出力から取り込まれ、次式が得られる。
【0073】
【数15】

【0074】
したがって、PS上の任意の偏光変換軌跡からの幾何位相シフトは、PS上の囲まれた表面積の値を求める必要なしにジョーンズ計算法で得ることができる。ここで結果として得られた電気ベクトルは、1ではなくAの長さを有する。
【0075】
HWPが固定の空間的に変えられる遅軸を有する実施形態では、幾何位相シフトは、継続的に変えられる複数の方向について計算される。HWPを回転運動で特定の垂直軸まわりに回転させる場合にすべての可能なHWP遅軸方向を取り込むと、幾何位相シフト、したがってまた各局所XY部位でのレーザ・ビームの位相変調は、出力ジョーンズ・ベクトルの位相因子を抽出することによって計算される。これらの位相依存性の計算結果は図11に示されている。Gチャネル幾何位相は、計算波長においてQWPもHWPも理想的にπ/2およびπのリターダンスであるので、正確に−2θになる。B波長およびR波長もまた、位相変調対HWP遅軸でほぼ直線である。Q/H(θ)/Qデバイスでの幾何位相シフト効果による位相変調は、動作波長とほぼ無関係であるが、認識偏光子を介して伝達されるパワーの計算で、B波長およびR波長でのパワー損失が明らかになる。水平直線偏光状態で残っている光の計算強度は、図12に示されている。計算でHWPのSAは±πにわたって変えられる。グラフに示されたように、パワーは、HWPのSA方向の最初の±20°では1に近い。偏光子を適用する前に偏光が必ず直線水平に戻されるので、Gチャネル・パワーは維持される。極限のθ=π/2の方向で、Bチャネルは最大33%、Rチャネルは最大29%のパワー損失をまねき得る。
【0076】
HWPが電子的に駆動される(すなわち遅軸が切換え可能である)実施形態では、SA変化は一般に±π/4までに制限され、3チャネルすべてが約90%のパワー効率を保持すると予想される(Q/H(θ)/Qデバイス内のAR損失、吸収などは無視)。理想偏光子の前の楕円偏光出力の主軸をより詳細に見ると、出力偏光が長軸で入力偏光からわずかだけオフセットしているのが明らかになる。計算されたγ角度は、±π/2の間のθの範囲全体で±26°以内にある。したがって、出力偏光が入力偏光と直交し、その結果分析器によって阻止されるおそれはない。しかし、楕円角度は、極限のHWPのSAの方向で±35°に近づく。これらの結果は図13に示されている。
【0077】
QWP設計のスペクトル帯域幅を増大させる1つの方法は、2つ以上の複屈折層を使用することである。例えば、一実施形態では、2層色消しAQWP設計が、入力光側から順に、所与の軸に配向された第1のHWP層と、第2の角度に配向された第2のQWP層とを含む。結果として得られる波長板は、2つのリターダーの異種縦続接続になる。円リターダンスならびに直線リターダンスは、直線偏光を円偏光に変換し、逆も同様に変換するように必要な波長帯域にわたって最適化することができる。結果として得られる直線リターダー遅軸は、構成要素HWPおよびQWPの各遅軸をほぼ二等分する。偏光変換では、構成要素HWPおよびQWPの遅軸は、約±π/4から対称的にオフセットされる。例えば、一実施形態では、AQWPがHWPとQWPからλ=510nmで形成されるが、それらの光軸は58°の方位角でオフセットされて縦続されている。1回通過について計算された直線リターデーションの大きさ(a)、直線リターデーションの方向(b)、および円リターデーション(c)が図14に示されている。510nmの設計波長において、直線リターダンスは約107°であり、遅軸は約16°である。円リターダンスは、設計波長において約97°である。これらのリターダンス特性は、直線偏光(すなわち水平偏光または垂直偏光)を円偏光出力に変換する広帯域AQWPを得るために組み合わされる。異種リターダーの2回通過について計算された直線リターデーションの大きさ(a)、直線リターデーションの方向(b)、および円リターデーション(c)が図15に示されている。これらの結果から、2回通過での正味リターダンスは約180°であり、遅軸は約−45°であることが明らかである。円リターダンスはほぼゼロである。この組合せで、水平偏光の光を垂直偏光に変換し、逆も同様である。示された実効遅軸は、X軸が反転された反射RH−XYZ座標と関係づけられる。したがって、1回通過AQWPはまた、可視帯域全体にわたって直線偏光を円偏光に効率的に変換しなければならない。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、スペックル除去デバイス140は、図6に示された位相変調器デバイスと類似の波長板アセンブリを使用し、WP1およびWP3がAQWPであり、WP2がHWPであり、このHWPは、HWP全体にわたってそのXY位置の関数として変えられ、かつ/または照明断面の所与のXY部位で1つの検出器積分期間にわたって変えられる光軸分布を有する。2層AQWPの上述の設計に続いて、結果として得られる3段可変幾何位相変調デバイスがH/Q/H(θ)/Q/Hとして構成され、ここでHおよびQは、必要とされるB、GおよびRのレーザ波長で色消し直線−円偏光変換を行う設計波長において、一律の軸のHWPおよびQWPである。H遅軸およびQ遅軸は固定されている。空間的に変えられる遅軸H(θ)を有するHWPは、Gレーザ波長で、またはその近くで真のπリターダンスに合わせることができる。ストークス・ベクトル変換をPS球に適用し、可変軸HWPのSAを70°に定め(すなわち−π/4からθ=−70°のオフセット)、Q波長板およびH波長板の遅軸がπ/4軸から対称に±29°だけオフセットされるように構成すると、偏光変換は、B、GおよびRの波長でそれぞれ図16(a)、(b)および(c)で示される。まずGチャネル変換を参照すると、第1の固定H波長板は、点Aの水平直線偏光入力を赤道近くの点Bに写像し(「.」のプロット)、第1のQ波長板は、点Bを南極近くの点Cに写像し(「o」のプロット)、X軸に対して−115°のSA配向での可変H(θ)は、南極近くの点C(ほぼRHC)を北極近くの点D(ほぼLHC)に写像し(「x」のプロット)、第2のQ波長板は、点Dを赤道近くの点Eに写像し(「+」のプロット)、最後に、第2のH波長板は、点Eをほぼ最初の入力直線偏光である点Fに写像する(「□」のプロット)。したがって、5つのリターダー層を備える3段デバイスは、ABCDEFの偏光軌跡を形成する。点Fは、理想的には入力直線水平偏光と同じになる。
【0079】
偏光画像変調を利用するディスプレイ・システムでは、偏光子は、入力ビームと平行に偏光された光の成分を取り込む。したがって、点Fは、点Aと同じ偏光を有する点Gに変換されるが、短縮された長さの電界ベクトルを有する。3段デバイスに続く理想偏光子を想定することによって、閉ループ偏光変換が達成される。ここで、必要とされる各波長で、変えられる各HWP軸の幾何位相シフトを抽出するために、囲まれた表面積を計算することは簡単ではない。図16(a)および(c)で分かるように、BチャネルおよびRチャネルの入力偏光は、大きな楕円率と、理想的な直線水平偏光出力に対する主軸角度の大きな配向ずれとを伴う出力に変換される。
【0080】
再び、HWPを回転運動で特定の軸まわりに回転させる場合にすべての可能なH(θ)遅軸の方向を取り込むと、幾何位相シフト、したがってまた照明断面の各局所XY部位でのレーザ・ビームの位相変調は、出力ジョーンズ・ベクトルの位相因子を抽出することによって計算される。RGB各チャネルの位相依存性の計算結果は図17に示されている。
【0081】
WP3の1つの構成では、構成要素固定配向QWPおよびHWPの方位オフセットは、WP1内の対応するQWP層およびHWP層の負符号の角度オフセットにしてある。両方の波長板アセンブリが、HおよびVの偏光方向の同じ名目二等分線軸からオフセットされている。この場合、誘起された幾何位相は、AQWPの2つのスタックの一定位相シフトが相殺されている。総位相シフトは0で、θ=0である。0から±π/2まで変化するH(θ)軸では、総幾何位相シフトは再び±πである。
【0082】
WP1と同じ符号のHWP角度オフセットおよびQWP角度オフセットをWP3が有する代替AQWP構成では、全体の一定幾何位相シフトが、5つのリターダー層を有する3段デバイスに対して得られる(結果は図示せず)。HWP軸θ=0°では、Gチャネルに対し誘起した幾何位相は約−118度である。−π/4軸から±π/2のH(θ)軸変化を上回って、可変幾何位相は62°から−298°に及ぶ。可変位相シフトは正確に−2θであり、最大位相変調は、±π/2のθの範囲の最大値で±πになる。θ=0°での付加的な位相シフトは、幾何位相シフトの限界のない性質と、3段H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスにおける追加波長板の使用とに起因すると考えられる。代替構成でのB波長およびR波長もまた、位相変調対HWP遅軸がほぼ線形である。それらのθ=0での位相オフセットは、波長板の分散効果によりGチャネル位相オフセットからずれている。このことは再び、H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスにおける幾何位相シフト効果による位相変調が、動作波長とほぼ無関係であることを示す。
【0083】
H/Q/H(θ)/Q/Hデバイスを通過した後に水平直線偏光状態で残っている光の計算強度が図18に示されている。認識偏光子を介して伝達されたパワーは、B波長およびR波長での強度損失が非常に少ないことが明らかである。HWPのSAは、計算では±πにわたって変えられている。グラフに示されたように、Gチャネルでは、水平偏光された光で少なくとも99%の強度を保持するのに対して、BおよびRチャネルでは、水平偏光された光の入力強度の88%から94%が得られる。5つのリターダー層を有する3段デバイスは、大きなθ回転におけるパワーを改善する。5つのリターダー層を有する3段デバイスの設計では、理想偏光子の前の楕円偏光出力の主軸角度および楕円角度は、直線水平入力偏光の特性に近づけられる。計算されたγ角度は、±π/2の間のθの範囲全体、および3つすべてのチャネルで±20°以内である。楕円角度は、SAのすべての方向で±20°未満である。これらの計算結果は図19に示されている。
【0084】
図20(a)および図20(b)を参照すると、本発明の一実施形態によるスペックル除去デバイス300が示されている。この実施形態では、スペックル除去デバイス300は、能動LCリターダーでできた近HWP 310を含む。LCリターダー310は、2つの平行板314と316の間に挟まれた、平面配列ネマチックLCなどの面内スイッチング(IPS)材312を含む。デバイスの入力側で、第1のQW層(または多層AQWP)324が第1の平行板314に、その有効光軸325を入力レーザ光の直線偏光軸に対してπ/4に配向して結合される。デバイスの出力側で、第2のQW層(または多層AQWP)326が第2の平行板316に、その有効光軸327が入力レーザ光の直線偏光軸に対してやはりπ/4に配向されるように結合される。一実施形態では、外側QWPリターダー層324、326は、堆積技術を使用してLCセル基板314、316上にコーティングされる。別の実施形態では、外側QWPリターダー層324、326は、有機箔材料の積層によって設けられる。近半波リターダー310は、空間的および時間的に変えられる光軸を有するように可動である(例えば、光軸または遅軸は、リターダーおよび/または照明断面の全体にわたってXY位置の関数として変化する)。より詳細には、近半波リターダー310は、可変遅軸を与えるのに独立して制御される複数のセル区画すなわちピクセルを含む。複数のLCピクセルは、検出器および/または画像形成デバイス(図示せず)の解像度に関して、副解像度スポット区画を設けるためにパターン化されている。
【0085】
アクチュエータ320が、ランダムなまたは既定のパターンで各LCピクセルの遅軸を1つの検出器積分期間にわたって能動的に変えるために(例えば、光リターダーの平面内で遅軸の方向を切り換えるために)設けられる。一実施形態では、アクチュエータ320は、基板314およびカバー・ガラス316の上に配置された複数のITO電極に電圧を印加することによって、個々のLCピクセルを電子的に制御する。より詳細には、アクチュエータ320は、LCピクセルを画定するピクセル化透明電極構造を含む。例えば、一実施形態では、LCはフリンジ・フィールド・スイッチングによって切り換えられる。別の実施形態では、LCは強誘電性LC(FLC)である。これらの実施形態で、能動HWPの遅軸は−π/4と+π/4の間、または+π/4と3π/4の間で継続的に切り換えられる。π/2の範囲は、市販の面内スイッチングLC材料の現在の限界により引き合いに出している。例えば、CHISSO 2004などのFLCは、LCデバイスの面内でπ/2だけ回転させることができる。横方向電極によって切り換えられるネマチックIPSのLCは、同様にπ/2の回転角度に制限される。
【0086】
動作の際には、レーザ入力ビーム(例えば水平偏光)は、それが円偏光になる(例えば第1の旋光性を有する)第1のQW層324を通過し、旋光性が反対の方向に変化する(例えば第2の旋光性を有する)HWP 310を通過し、ビームが再び直線偏光(例えば、QWP遅軸が平行であるので水平偏光)になる第2のQW層326を通過する。HWP 310の各ピクセルは、すべての駆動状態で(例えば、それが−π/4に切り換えられるか+π/4に切り換えられるかにかかわらず)、閉ループ偏光変換を行うことに留意されたい。前述のように、この閉ループ偏光変換は、相関関係のないスペックル・パターンを発生させる位相変調を生じさせるのに使用される幾何位相シフトをもたらす。π/2に制限された切換え範囲で、電気的に切換え可能なHWP、および共動する2つのQWPによって得られる最大幾何位相変調度は、π(2θ=2×π/2が最大、すなわちπ)になる。
【0087】
図20(c)および図20(d)を参照すると、本発明の別の実施形態によるスペックル除去デバイス300aが示されている。この実施形態では、スペックル除去デバイス300aは、能動LCリターダーでできた近HWP 310aを含む。この能動LCリターダーは、2つの平行板314aと316aの間に挟まれた、平面配列ネマチックLCなどの面内スイッチング(IPS)材312aを含む。近半波リターダー310aは、XY位置の関数として変化する可変光軸分布を有するように可動である。より詳細には、近半波リターダー310aは、複数のセル区画すなわちピクセルを含み、その遅軸は独立して制御可能である。複数のLCピクセルは、検出器および/または画像形成デバイス(図示せず)の解像度に関して、副解像度スポット区画を設けるためにパターン化されている。
【0088】
アクチュエータ320aが、ランダムなまたは既定のパターンで各LCピクセルの遅軸を1つの検出器積分期間にわたって能動的に変えるために(例えば、光リターダーの平面内で遅軸の方向を切り換えるために)設けられる。一実施形態では、アクチュエータ320aは、基板314aおよびカバー・ガラス316aの上に配置された複数のITO電極に電圧を印加することによって、個々のLCピクセルを電子的に制御する。より詳細には、アクチュエータ320aは、LCピクセルを画定するピクセル化透明電極構造を含む。例えば、一実施形態では、LCはフリンジ・フィールド・スイッチングによって切り換えられる。別の実施形態では、LCは強誘電性LC(FLC)である。一般に、遅軸は(例えば、直線偏光された入力光を基準として)0とπの間、または0と−πの間で切り換えられる。
【0089】
動作の際には、レーザ入力ビーム(例えば水平偏光)がHWP 310aを通過する。LCピクセルがその遅軸を水平入力と平行にするように駆動される場合には、ピクセルを通過する光は180°回転する(例えば水平偏光)。LCピクセルがその遅軸を水平入力と垂直にするように駆動される場合には、ピクセルを通過する光は0°回転する(例えば水平偏光)。言い換えると、2値スイッチングLC軸が、同じ直線偏光出力を維持しながら0またはπの位相変調を行う。
【0090】
有利なことに、図20(a)および図20(c)に関して説明した実施形態では、可変HWPの機械的摂動を必要とせず、それによって、スペックル・コントラストを低減させるための低騒音で小型の(例えば、組込み式携帯デバイスの形でレーザをベースとするプロジェクタに非常に有用である)ソリューションが得られる。
【0091】
さらに有利なことに、上述のLCリターダー310、310aは面内スイッチング材を利用する。したがって、LCデバイスは、傾斜角をデバイス面から0°またはその近くに固定したままにしながら光軸の方位角を変調する。これは、方位角を固定したままにしながらLCの傾斜角を変調することで動作する、LCリターダー材を使用した位相変調だけの変調器とは異なる。上述の幾何位相シフトを行うことに加えて、面内スイッチングLCデバイスはまた、より高速のスイッチング時間も実現する。
【0092】
図21(a)および図21(b)を参照すると、本発明の別の実施形態によるスペックル除去デバイス400が示されている。この実施形態では、スペックル除去デバイス400は、機械的に摂動される近半波リターダー410を含む。より詳細には、スペックル除去デバイス400は、近半波リターダー410の入力側に配置され、入力レーザ光の直線偏光軸に対して有効光軸425がπ/4に配向された第1のQWP(または多層AQWP)424と、近半波リターダー410の出力側に配置され、入力レーザ光の直線偏光軸に対して有効光軸427がやはりπ/4に配向された第2のQWP(または多層AQWP)426とを含む。この実施形態では、近半波リターダー410は半波長板であり、あるいは実質的に半波の奇整数倍のリターデーション(例えば1HW、3HW、5HWなど)を対象の波長で与える多次半波長板である。近半波リターダー410は、空間的に変えられる遅軸を有し、これは一実施形態では、半波長板の面と平行な複数の遅軸方向を含む。より詳細には、近半波リターダーは、XY位置の関数として変化する遅軸分布を有する(例えば、遅軸方向は、既定またはランダムなパターンで光リターダーの面全体にわたって変化する)。一般に遅軸変化量は、スペックル除去面の対応する解像度スポットよりもずっと小さい近半波リターダーの副区画(sub−section)が局所的に一律のリターダー軸を示すように(例えば微視的レベルで)設計される。
【0093】
アクチュエータ420は、QWP 424、426を固定したままにしながら近半波長板410を機械的に摂動させる。一実施形態では、アクチュエータは、近半波長板を回転軸まわりに回転させるモータを含む。例えば、図21(c)に示された実施形態では、近HWP 410はビーム軸からオフセットされて取り付けられる。別の実施形態では、アクチュエータは、直線並進移動を実現するための圧電アクチュエータを含む(すなわち近半波長板を振動させる)。例えば、図21(d)を参照すると、アクチュエータ410は1次元(1D)または2次元(2D)の並進移動を実現することができる。有利なことに、1Dまたは2Dの直線並進移動するアクチュエータを含むスペックル除去デバイスは、回転変換を行うアクチュエータを含むスペックル除去デバイスほど大きな近HWPを必要としない。例えば、1Dまたは2Dの直線並進移動するアクチュエータを含むスペックル除去デバイスは、照明される領域よりもわずかに大きいだけの(例えば、従来の光パイプが使用される場合では約7×4.4mmである)近HWPを必要とするのに対し、回転変換を行うアクチュエータを使用するものでは2倍を超えるほどにも長くなる。
【0094】
動作の際には、レーザ入力ビーム(例えば水平偏光)は、それが円偏光になる(例えば第1の旋光性を有する)第1のQWP 424を通過し、次に、近HWP 410および第2のQWP 326を通過する。π/4または−π/4に近い局所的な遅軸方向を有する近HWP 410上の領域を光が通過する場合には(例えば図21(b)に示されたように)、円偏光されている光は旋光性を変え、πの位相シフトを有する直線偏光された光として第2のQWPから送出される(すなわち閉ループ偏光変換)。π/4または−π/4ではない局所的な遅軸方向を有する近HWP 410上の領域を光が通過する場合には、位相シフトはπ未満になる。言い換えると、位相シフトは局所的な遅軸方向によって決まる。複数の局所的な遅軸方向により(例えば、リターダーの表面と平行になっている)、静止したスペックル・パターンを生成する位相マスクが得られる。
【0095】
アクチュエータ420は、レーザ・ビームの断面の副区画(すなわちスペックル除去面の解像度スポットよりも小さい)が所与の時間期間にわって様々な遅軸方向をサンプリングするように近HWP 410を動かす。言い換えると、近HWP 410を動かす(例えば回転/振動させる)ことで、各副・ピクセル解像度スポットでの干渉状態が経時的に変化するように照明断面の各XY部位での位相シフトを経時的に変化させる。したがって、スペックル・パターンが経時的に、解像度スポットの上で変化する。この結果、1つの検出器積分期間内で検出されるスペックル・コントラストが低減されることになる。
【0096】
一実施形態では、近半波長板410は、図22(a)に概略的に示されたようなランダムな向きの遅軸分布を有する液晶ポリマー(LCP)を含む。また同じ図に示された(a)および(c)は、第1段および第3段の波長板光軸の一律の向きを表す図である。一般に、分布パターンは、レーザ照明システム内で入射光ビーム断面の各副区画(例えばXY部位)が、局所的に一律のリターダー軸(微視的レベルで)および実質的に均質なz軸をサンプリングするように設計される。
【0097】
図22(b)は、光ビームの一部によってサンプリングされた局所的に一律のリターダー軸を示す。より詳細には、図22(b)は、ディスプレイ・システムの解像度スポット・サイズよりも小さい局所的なLCP部位のLCダイレクタ図である。所与のXY位置で、局所的に配向されたLC分子は、所与のデバイスのXY座標系に対してθ(x、y)に向けられる。複数の近接局所LCP部位がディスプレイ・システムの解像度スポット・サイズを形成するので、近HWP 410は、可変量の幾何位相シフトを照明中に生じさせる。
【0098】
一実施形態では、近半波長板410は、下記のような光硬化LCP材料を用いて製造されるLCPを含む。ネマチック型LCP前駆物質(例えばROF−5151、Rolic Technologies、Basel、スイス)が透過性または反射性の基板(例えばガラス、ポリマー、単結晶など)の上にコーティングされる。任意選択で基板は、LCP前駆物質コーティングの接着性および/または濡れを促進するために、まず下塗り層でコーティングされる。任意選択の下塗り層が線状重合可能ポリマー(LPP)材料である場合には、この層は配向層として使用されない。言い換えると、ラビング配向処理工程または光配向処理工程は使用されない。あるいは、配向層を使用するランダム配向または疑似ランダム配向が使用される。LCP前駆物質膜を基板上にコーティングすると、LCP材料はネマチック相の液晶になる。巨視的レベルでは全体として選択される方向(すなわちダイレクタ方向)はないが、微視的レベルではLCP前駆物質膜は遅軸方向を示し、この方向は、配向層が使用されない場合にはランダムに、あるいは配向層が使用される場合には配向層のランダム配向または疑似ランダム配向に追従して、継続的に変化する。配向の空間的変化によりこのような小さな空間の範囲にわたって生じる多数の特異点(渦)を除いて、すべての空間位置に有限の配向がある。
【0099】
LCP前駆物質膜が液体状態にある間、特に配向層が設けられていない場合には、顕微鏡スケールで空間的に変えられる遅軸方向は絶えず経時的に変化する。膜を固体状態にするためにLCPは、通常では紫外線硬化処理によって架橋される。こうすると、上述の微視的に継続して変わる配向および渦が恒久不変になる。
【0100】
LCP膜内の配向変化のスケール(平均の空間の変化速度、または単位面積当たりの渦密度)を制御するために、2つの手法が使用されてきた。
【0101】
(タイプA)低い渦密度をつくり出すために、LCP前駆物質膜は比較的高い溶媒含有率を有するように作製され、そのネマチック−等方相転移に近いがそれよりも低い温度でアニールされる。これらの条件により、より広い同様な配向の領域が生じること、および一部の渦が互いに遭遇したときに合体することが可能になる。所望のアニーリング時間の後に、膜は急速に架橋され、または急速に冷却されてから架橋されて構造が固定する。次に任意選択で、硬化膜は、残留溶剤を除去するためにポスト・ベークされる。
【0102】
(タイプB)高い渦密度を生成するために、LCP前駆物質膜は比較的低い溶剤含有率を有するように作製され、次に、それが等方性になるそのネマチック−等方相転移より高い温度まで引き上げられる。次いで、膜は急速に周囲温度まで冷却される。それが等方−ネマチック相転移温度を経由して冷えるので、高い空間変化速度を有する配向が微視的レベルで急激に生じ、高密度の渦がある。この構造を恒久不変にするために、直ちに架橋処理が施される。次に、硬化膜は任意選択で、残留溶剤を除去するためにポスト・ベークされる。
【0103】
ランダムに配向され高い渦密度を有するLCPの近半波長板(すなわち無配向LCP)の画像が図23に示されている。画像は交差偏光顕微鏡の強度画像であり、レチクル・スケールが1単位=25ミクロンである。暗い粒子が、偏光子または交差軸分析器と平行に配向されたLCPダイレクタに該当する。暗い粒子の間の連続する陰影は連続的なLCPダイレクタ変化を表す。無配向HWPの空間的に変えられる遅軸が、検出器上の解像度スポットに対して副解像度光位相変調を行うことが明らかである(例えば、ディスプレイ・デバイスが約10ミクロンのピクセル幅を有する場合)。より詳細には、副解像度光位相変調は、検出器において副解像度強度変化(例えば、静止スペックル・パターン)を与える。
【0104】
膜内で観察される渦は、m=+1およびm=−1のタイプの渦であると記述できるが、一般には歪んでいる。渦のm=+/−1の性質は、各渦から出ている向かい合う2つの暗い干渉縞、および向かい合う2つの明るい干渉縞があるので明らかである。m=+1とm=−1の渦の分布は一般に同じで、よく分散している。高次の渦は観察されなかったが、考えられるところでは存在する可能性がある。試料を交差偏光子の間で回転したときに干渉縞がどちらの方向に回転するかを観察することによって、m=+1とm=−1を区別することができる。干渉縞の回転が、m=+1では試料の回転の反対方向になり、m=−1では試料の回転と同じ方向になる。
【0105】
2つの渦が相互作用する場合のLCPダイレクタの配向分布を示すために、いくつかの簡単な数学モデルを用いた。図24、25および26に計算結果が示されており、図はそれぞれ、近接する2つのm=+1の渦、近接する2つのm=−1の渦、および近接するm=−1とm=+1の渦のまわりで、LCPダイレクタ配向がどのようにふるまうかを大まかに示す。
【0106】
有利なことに、上述の無配向LCP製造技術では、空間的に変えられる遅軸を有するHWPを実現し、遅軸変化は離散的ではなく連続的である。したがって、このLCPのHWPは、透明なピクセル化電極構造を有する電子的にアドレス指定されるLC、および/またはテクスチャ表面を有する従来技術の拡散器と関連した個別ステップによって制限されない。さらに、LCPのHWPの連続的に変えられる遅軸がランダムに、または疑似ランダムに分布するので(例えばLCPは、硬化される前にランダムに配向された配向層、または無配向の配向層の上にコーティングされる)、その製造では特定の標的に一致させる必要がなく、この結果、LCPの近HWPは、従来技術の拡散器よりも製造するのが簡単になる。さらに、LCPのHWPは、テクスチャ表面を有する従来技術の拡散器よりも損失が少ない。
【0107】
さらに有利なことに、無配向LCP製造技術は、近HWPのXY面にある局所的な遅軸が、システムの1つの解像度スポット・サイズの等価物よりもずっと小さなスケールで(すなわちHWPが挿入されたところの近くで)変化することを可能にする。例えば、近半波長板がマイクロディスプレイ・パネルに接近して配置されている場合、1つの解像度スポット・サイズは、ほぼ1つのLCピクセル・サイズに相当する。SVGAおよび1080pのマイクロディスプレイ・パネルは、10ミクロン未満のピクセル・ピッチを有することがある。図23の1単位のレチクル・サイズの間に、−π/2からπ/2の相対的ダイレクタ配向の完全な発達が複数起こることに留意されたい。レチクル・サイズは、典型的なマイクロディスプレイ・パネルでは約2〜3個のピクセルの幅に相当する。これは、任意選択の直線−円偏光変換器と組み合わせて可変的に配向されるHWPによってかけられる位相可変変調が、このピクセル幅の非常に小さな部分で行われることを意味する。LCPのHWPによって実現される空間的に可変の位相マスクが、マイクロディスプレイ・ピクセルよりもずっと小さい粒子サイズを有するので、スペックル低減の改善が期待される。
【0108】
さらに有利なことに、LCPのHWPは入力直線偏光レーザ光を攪乱しないことが分かった。後者に関しては、高渦LCPのHWPのいくつかの例で特徴がミュラー行列旋光計を用いて調べられた。これらの実験では、約2mm幅の光ビームが垂直入射で試料に入射された。試料の完全なミュラー行列データが波長スペクトル全体にわたって収集された。
【0109】
図27を参照すると、波長の関数として減偏光率のグラフが示されている。減偏光率(Dep.Index)は次式で定義される。
【0110】
【数16】

ここでMは試料のミュラー行列であり、mijはMの(i行、j列)にある行列要素であり、iもjも0から3までの範囲にある。ここでの定義では、0の単位のDep(M)は非減偏光ミュラー行列に等しく、1の単位は理想偏光子に等しい。
【0111】
図27の他のグラフは、所与の入力偏光についての減偏光度(DOdP)の計算結果を示す。減偏光度は、所与のストークス・ベクトルSの偏光度の補数として定義される。
【0112】
【数17】

いくつかの周知の偏光での減偏光度を計算するために、測定された試料のミュラー行列に入力ストークス・ベクトルを乗算する。グラフ中の表示の「H」、「V」、「P」、「M」、「L」および「R」はそれぞれ、直線水平入力偏光、直線垂直入力偏光、直線π/4入力偏光、直線−π/4入力偏光、左旋円入力偏光、および右旋円入力偏光に対応する。この行列演算は、収集された資料データに次式を用いて適用される。
【0113】
【数18】

【0114】
図27に示された結果では、すべての偏光状態が入力ビーム中に存在するとすれば、減偏光率はほぼ減偏光度の平均になっている。空間的に変えられる遅軸を有して製造されたHWPが、設計波長での円偏光入力の両方の旋光性でほとんどまたはまったく減偏光を示さないことに注意されたい。この円偏光入力条件は、前段のQWP偏光変換によりスペックル除去デバイスにおいて満たされる。したがって、LCPのHWPは、1つの光線入力の閉ループ偏光変換に際して入力直線偏光を維持するだけでなく、直径が数ミリメートルの領域を照明する光線束によって入力偏光を攪乱することもないことが示された。
【0115】
空間的に変化するHWP光軸配向によってつくり出される一連の位相マスクが、知覚されるスペックル・ノイズを低減させるのに効果的であることを実証するために、一連の数値モデル化が実施された。スペックル除去デバイスおよび粗いスクリーンを含む基礎のシステムでは、スペックル除去デバイスによる照明変調がさらに、粗いスクリーン上で光路変調によって変調される。ディスプレイ・パネルをさらに含む全投射型システムでは、スペックル除去デバイスの位相マスクを載せる物体波面がさらに、ディスプレイ・パネル・ピクセルにおいて振幅、位相、偏光、またはこれらの組合せの変調を受ける。次に、この波面は、粗いスクリーンの位相パターンで変調される。正味変調パターンは検出器に投射される。マイクロディスプレイは、コヒーレント照明レーザ波長のいくつかの倍数のランダムな光路長変調の発生源になるとは考えられず、したがって、スペックルを発生させるとは考えられない。マイクロディスプレイは通常、ピクセル化構造により格子パターンを含み、この格子パターンは、コヒーレント・レーザ光源を利用するプロジェクタ・システムにおいて回折効果を引き起こす。この効果はここではモデル化されていない。
【0116】
前述のスペックル画像化モデルは、512×512の格子点からなる追加ランダム位相マスクを含むように変更された。このモデル化は、静的ではあるがランダムな位相マスクが、粗い投射スクリーンによって検出器積分期間にわたってもたらされると想定する。各計算期間において、別の位相マスクが生成されて、スペックル除去デバイスの機能を表す。これらの2つのマスクは互いに乗算されて、検出器のところで有効複素振幅光場が得られる。位相マスクは、複素振幅変調に変換され、3ゾーン・パネル変調と乗算される。積分期間にわたる検出画像は、スペックル除去デバイスにより積分期間にわたる160組までのXYランダム位相変調について図28(a)から図28(d)に示されている。図28(a)を参照すると、静止位相マスクは、スクリーンによる静止スペックル・パターンとのその相互作用の後では、どのようにしても知覚されるスペックルを低減させる助けにならないことが明らかである。図28(b)、(c)および(d)を参照すると、位相マスクの数がそれぞれ10から100、160へと増加されるにつれて、スペックル粒子が小さくなり、また平均検出強度からの偏差が縮小されることが明らかである。
【0117】
±πまでのランダム位相マスクを用いると(均一な分布、またはπの1σを有する正規(ガウス)分布を使用して)、結果として得られる各瞬間画像で約50%のスペックル・コントラスト比を生じる。多数のインコヒーレント画像を合計することによって、スペックル比は低下し始める。生成されるスペックル画像数へのスペックル・コントラスト比の依存性が図29に示されている。最初の10枚の画像では、統合される各追加画像ごとのスペックル・コントラストの低下が急峻である。50枚の画像の後に統合される追加の画像では、スペックル・コントラストは横ばいになり始める。この比を<10%および<8%に保つという典型的な要件では、100枚から160枚の完全に相関がないスペックル・パターンが必要であることをこのモデルは示唆することに留意されたい。位相変調が部分的にだけ相関がない場合には、試料の知覚されるスペックル比では位相マスクの数が増加する。
【0118】
上記の実施形態のそれぞれで、空間的に変えられる遅軸を有する近半波長リターダー(例えば310、310a、410)は、空間的に変えられる遅軸がそこを通過する光に位相マスクを課すように製造される。この位相マスクは、光ビームをインコヒーレント・スペックル・パターンに対応する空間干渉パターンでコード化するために使用されるが、通常は、検出器(例えば二乗検波器または人間の眼)の解像度スポットのサイズよりもずっと小さく、かつ/またはディスプレイ・パネル内のピクセルのサイズよりもずっと小さい位相セル・サイズ(すなわち、一定の位相または局所的に一律のリターダー軸を伴う別個の領域のサイズ)を有する。一般に、空間的に変えられる遅軸を有するHWPリターダーが電子的にアドレス指定可能である場合には、位相マスクはピクセル化されるのに対して、空間的に変えられる遅軸を有するHWPリターダーがLCPをベースとする場合には、位相マスク内の位相セルはランダムに分散され、かつ/または不規則に形づくられる。それぞれの場合で、位相マスクは、0とπの間で連続の位相シフトを与えることができ(例えば、スイッチング中に中間の位相シフトが起こる電子的にアドレス指定可能なHWPに対し、また空間的に変えられる遅軸LCPをベースとするHWPに対し)、あるいは0とπの位相シフトが優勢になるように与えることができる(例えば、スイッチング時間がエンドポイント状態でピクセルの休止時間よりもずっと短く、かつ周期的な時間間隔ですべてのピクセルが同時に任意選択でスイッチングする、電子的にアドレス指定可能なHWPで)。それぞれの場合で、スペックル・コントラストは、位相セル・サイズがレーザ照明システムの解像度スポットのサイズよりもずっと小さい(例えば、検出器の解像度スポットよりもずっと小さく、かつ/またはディスプレイ・パネル内のピクセルのサイズよりもずっと小さい)場合に最も低減される。
【0119】
検出器の解像度スポットを評価するために、スペックル除去デバイスがマイクロディスプレイ・パネルに近接して配置されると想定する。投射光学部品の倍率にかかわらず、観測者は通常、マイクロディスプレイによって変調された画像の画素を識別することができる。透過型でも反射形でも最も高い解像度のマイクロディスプレイ・パネルはLCをベースとするものであり、約5〜10ピクセル・ピッチが得られる。DMDをベースとするマイクロディスプレイは通常、各ピクセルにマイクロメカニカル・アクチュエータが必要であるために、より大きいピクセル・ピッチを持つ。
【0120】
図31を参照すると、スペックル除去デバイス140上の照明される領域のフットプリントが、マイクロディスプレイ・パネルの仮想の行×列の解像度に分割されている。照明の断面は仮想的なI行とJ列を有する。必要な位相区画を示すために1つのマイクロディスプレイ・ピクセルに対応する領域が拡大されている。ボイリング・スペックル・パターンを平均するために、各区画内の位相値は、検出器積分間隔にわたって高速で変えられなければならない。
【0121】
一般に、人間の眼の積分時間は約20msと50msの間である(例えば、人間の眼が変化を検出する時間は少なくとも20msである)。したがって、空間的に変えられる遅軸を有する近HWリターダーがLCをベースとするものである場合には、検出器積分期間にわたる高速位相変調は、電子スイッチングを適切な高い速度に選択することによって行われる。空間的に変えられる遅軸を有する近HWリターダーがLCPをベースとするものである場合には、検出器積分期間にわたる高速位相変調は、近HWPを適切な速度で並進移動させることによって行われる。
【0122】
例えば、図21(c)に示された近半波長板を回転させることを考える。一般に、入射コヒーレント光ビームは、最も近くで照明される縁部が回転軸から距離lになるように、また最も遠くで照明される縁部が回転軸から距離Lになるように、回転軸(例えば回転の中心)からオフセットされた近HWPの小さな領域を照明し、回転するHWPの有効経Kの半径はLよりも長くなっている。各ディスプレイ・ピクセル・ピッチdが10ミクロンに等しく、スペックル除去デバイス面の最大解像度スポットが10ミクロンであると想定すると、最小回転速度は次のように計算することができる。検出器が2倍速の120Hzの検出器積分期間を有し(例えば、Δtが1/120sすなわち8.33msに等しい)、160組の位相パターンが、<8%の知覚されるスペックル・コントラスト比を与えるように1つの積分期間内で平均される場合、各位相パターンの時間間隔Δtは約52μsになる。最小線速度vはv=d/Δtから計算され、したがって10μm/52μs、すなわち192mm/sに等しい。スピンドルからの最小直線距離lが6mmに等しいと想定すれば、最小角速度ω=v/lは192mm/s/6mm、すなわち32rad/sになる。毎秒回転数(rps)に換算して、これは約5rpsすなわち306rpmの角速度になる。この角速度は、照明される領域全体にわたって一定とすることができ、局所の線速度は、スピンドル位置からのその距離に比例することに留意されたい。照明される領域の最小距離が減少する場合には、検出される画像内で必要なスペックル比を維持するために、速度を増大させなければならない。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、上述のスペックル除去デバイスの1つ(例えば300、300a、400)は、有限の開口、および検出器180の有限の積分時間から生じるスペックル効果を低減させるために、図1に示されたスペックル除去デバイス140として使用される。一実施形態では、スペックル除去デバイス(例えば300、300a、400)は、照明アーム内に挿入される。別の実施形態では、スペックル除去デバイス(例えば300、300a、400)は、投射アーム内に挿入される。一般に、空間的に変えられる遅軸を有する近HWリターダー(例えば310、310a、410)であって、スペックル除去デバイスにおいてレーザ照明面の全体にわたって空間的に可変かつ/またはランダムな位相変調を生じさせる近HWリターダーは、スペックル除去デバイスが挿入された面に沿った解像度スポットの等価物よりもずっと小さい空間領域サイズで変化する遅軸変化を有する。スペックル除去デバイスがマイクロディスプレイ・パネル150の近傍に配置される場合には、位相変調面の解像度スポットは、マイクロディスプレイ・パネル150のピクセル・サイズとほぼ同じサイズであると想定することができる。この場合、空間的に変えられる遅軸を有する近HWリターダー(例えば310、310a、410)の粒子サイズ(すなわち1区画または1位相セル)は、マイクロディスプレイ・パネルのピクセル・サイズよりも小さくなる。
【0124】
図20(a)および図21(a)に関して説明した実施形態では、スペックル除去デバイス300、400は、入力レーザ光の直線偏光軸に対して有効光軸がπ/4に配向された第1のQWP(または多層AQWP)324、424と、入力レーザ光の直線偏光軸に対して有効光軸がやはりπ/4に配向された第2のQWP(または多層AQWP)326、426とを含み、その結果、出力光の偏光が入力光の偏光と平行になるように示されている。別の実施形態では、第2のQWP(または多層AQWP)の有効光軸は、出力光の偏光が入力光の偏光と垂直になるように、入力レーザ光の直線偏光軸に対して−π/4に配向される。別の実施形態では、第2のQWP(または多層AQWP)の有効光軸は、入力レーザ光の直線偏光軸に対して別のある角度に配向される。それぞれの場合で、第1および第2のQWPまたはAQWPは有利なことに、システムの直線偏光を維持し、したがって、偏光をベースとするディスプレイ・システムの輝度を増大させるのに非常に有用である。別の実施形態では、第2のQWPは省略される。実際のところ、ディスプレイ・パネルが偏光をベースとするもの(例えばLCDマイクロディスプレイ・パネル)である実施形態では、第2のQWPは有用であるが、ディスプレイ・パネルが偏光をベースとするものではない場合(例えば変形可能マイクロミラー・デバイス(DMD))では、その有用性が小さい。
【0125】
もちろん、上記の実施形態は例としてのみ提供した。様々な改変形態、代替構成、および/または等価物が本発明の範囲から逸脱することなく使用されることは、当業者には理解されよう。例えば上述の実施形態は、空間的に変えられる遅軸を有するLCベースの近HWP(例えば電子的に駆動されるもの、またはLCP)を含むとして説明したが、本発明の他の実施形態では、空間的に変えられる遅軸を有する近HWPは、他の複屈折材料をベースとする。例えば一実施形態では、空間的に変えられる遅軸を有する近HWPは、有機延伸ポリマー箔または不均一な配向結晶の波長板を含む。さらに、空間的に変えられる遅軸を有する近HWPを単一要素として説明したが、空間的に変えられる遅軸を有する近HWPが別の要素と結合されることもまた本発明の範囲内にある。例えば本発明の一実施形態では、近HWPおよび/またはQWPは、波長板の受光角を改善する(例えば、入射角の関数として変化する位相リターダンスを与える)構造性複屈折誘電体の薄形コーティングで覆われる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0126】
100 システム
105 ベースライン・プロジェクタ・システム
110 光源、レーザ源
120 ビーム成形光学部品
121 理想レンズ
140 スペックル除去デバイス
145 フラット位相面
150 ディスプレイ・パネル
160 投射光学部品
170 ディスプレイ・スクリーン
180 検出器、観測者
300 スペックル除去デバイス
300a スペックル除去デバイス
310 近半波リターダー、近HWP、LCリターダー
310a 近半波リターダー、近HWP、LCリターダー
312 面内スイッチング(IPS)材
312a 面内スイッチング(IPS)材
314 第1の平行板
314a 第1の平行板
316 第2の平行板
316a 第2の平行板
320 アクチュエータ
320a アクチュエータ
324 第1のQW層(または多層AQWP)
326 第2のQW層(または多層AQWP)
327 有効光軸
400 スペックル除去デバイス
410 近半波リターダー
424 第1のQWP(または多層AQWP)
425 有効光軸
426 第2のQWP(または多層AQWP)
427 有効光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる方法であって、
光ビーム中にスペックル除去デバイスを挿入すること、ここで前記光ビームが、レーザ照明システム内のコヒーレント・レーザから放出された光を含み、前記スペックル除去デバイスが、前記コヒーレント・レーザから放出された前記光に実質的に半波の奇整数倍のリターデーションを与えるための光リターダーを含み、前記光リターダーが、実質的に一定のリターダンス、および空間的に変えられる遅軸を有し、前記空間的に変えられる遅軸が、前記光ビームに位相マスクを課すためのものであり、前記位相マスクが、検出器上の解像度スポットに対して副解像度光位相変調を行うためのものであり、および
前記副解像度光位相変調が前記検出器の積分時間内で変えられるように、かつ検出された1つの解像度スポットと別のものとの間の強度不均一性が低減されるように前記光リターダーを駆動することを含む方法。
【請求項2】
前記光リターダーを駆動することが、前記検出器の前記積分時間内で前記光ビームの断面の副区画が前記位相マスクの複数の領域をサンプリングするように、前記光リターダーを回転させることおよび振動させることの一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光リターダーを駆動することが、液晶セル内の局所的な遅軸方向が前記検出器の前記積分時間内に前記セルの面内で回転するように、液晶セルを電子的に駆動することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
レーザ照明システムにおけるスペックルを低減させる装置であって、
レーザ照明システム内のコヒーレント・レーザから放出される光に実質的に半波の奇整数倍のリターデーションを与えるための光リターダーを含み、前記光リターダーが、実質的に一定のリターダンス、および空間的に変えられる遅軸を有し、前記空間的に変えられる遅軸が、光ビームに位相マスクを課すためのものであり、前記光ビームが、前記コヒーレント・レーザから放出される光を含み、前記位相マスクが、検出器上の解像度スポットに対して副解像度光位相変調を行うためのものであるスペックル除去デバイスと、
前記副解像度光位相変調が前記検出器の積分時間内で変えられるように、かつ検出された1つの解像度スポットと別のものとの間の強度不均一性が低減されるように前記光リターダーを駆動するアクチュエータとを備える装置。
【請求項5】
前記スペックル除去デバイスが、前記光ビームを、第1の偏光を有して直線偏光された光から第1の旋光性を有して円偏光された光に変換するために前記光リターダーの第1の側に配置された第1の4分の1波長板を含み、前記第1の4分の1波長板の軸が前記第1の偏光に対して実質的に±45°に向けられる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記スペックル除去デバイスが、反対の第2の旋光性を有して円偏光された光を、第2の偏光を有して直線偏光された光に変換するために前記光リターダーの反対側の第2の側に配置された第2の4分の1波長板を含み、前記第2の4分の1波長板の軸が前記第1の偏光に対して実質的に±45°に向けられ、前記第2の偏光が前記第1の偏光に対して垂直および平行のうちの一方であり、それによって、空間的に変えられる遅軸を有する前記光リターダーが、前記副解像度光位相変調が幾何位相変調になるように、前記光リターダーの局所的な遅軸の向きに従って、前記第1の旋光性を有して前記円偏光された光を前記第2の旋光性を有して前記円偏光された光に変換する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1および第2の4分の1波長板が色消し4分の1波長板である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記光リターダーが、第1と第2の板の間に配置された液晶を含み、前記アクチュエータが、前記液晶の領域の横方向全体にわたって電圧を印加するための複数のパターン化電極を含み、前記印加電圧が、前記液晶の局所的な遅軸方向をその面内で回転させるものであり、かつ変えられた前記副解像度光位相変調を提供するものである、請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記空間的に変えられる遅軸が固定され、前記光ビームの断面の副区画が前記位相マスクの複数の領域をサンプリングし、かつ変えられた前記副解像度光位相変調を提供するように、前記アクチュエータが光リターダーを動かすためのモータを含む、請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記モータが、前記光リターダーの直線並進移動および回転並進移動のうちの一方を実現する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記光リターダーが液晶ポリマーを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記液晶ポリマーが、無配向、ランダム配向、および疑似ランダム配向の配向層のうちの1つの上にコーティングされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記配向層が線状重合可能ポリマーを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記空間的に変えられる遅軸が複数の遅軸方向を含み、各遅軸方向が実質的に前記光リターダーの面と平行である、請求項4から7のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図16(c)】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20(a)】
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【図20(b)】
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【図20(c)】
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【図20(d)】
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【図21(a)】
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【図21(b)】
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【図21(c)】
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【図21(d)】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−258738(P2009−258738A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−98490(P2009−98490)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】