説明

レーザ脱離およびマルチプルリアクションモニタリングを用いる小分子のハイスループット定量のための方法およびシステム

【課題】質量分光測定法に関し、小分子のハイスループット定量を行う方法を提供する。
【解決手段】質量分析定量技術は、三連四重極質量分析部30に結合されたレーザ脱離(例えば、MALDI)イオンソース20を用いて小分子のハイスループット定量を可能にする。イオンソースから生成されたイオンを、衝突ダンピング/クーリングし、次いで、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードで操作される三連四重極分析部を用いて定量的に分析する。約500Hz以上の高いパルスレートでレーザパルスをイオンソースに付与することによって有意に向上した測定感度が得られる。これにより、データ取得が迅速に行われることが可能になり、イオンソースターゲット36上の各サンプルポイントに対して約1秒のスピードが達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2002年3月28日に出願された米国仮出願第60/368,195号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、質量分光測定法に関し、より詳細には、小分子のハイスループット定量を行う方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
薬物および代謝産物等の薬学的および生物学的に重要な化合物の定量分析は、質量分光学の重要な用途である。伝統的に、エレクトロスプレー(ESI)イオン化および大気圧化学イオン化(APCI)に基づくイオンソースが三連四重極質量分光計(Triple-quadrupole mass spectrometers)と組み合わせて用いられて、定量分析を提供する。この組み合わせは、高感度および高い特異性の両方を提供する。ESIおよびAPCIの両方は、流れる液体流からイオンを生成し、したがって、分析される化合物を含む有機および水性溶媒流をソースを介してポンピングすることによって用いられる。液体クロマトグラフィーは、一般に、質量分光計の前のオンライン分離技術として用いられる。このため、サンプルは、サンプルを含む既知容量を液流に注入することによって導入され得、そして、質量分光計を用いて、既知の前駆および生成フラグメントイオンに対応するイオンの質量/電荷値の特定の組み合わせを、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードとして知られる走査モードを用いてモニタリングする。走査の間、サンプルは、オートサンプラーの制限ならびに溶出ピークの自然幅(natural width)によって課された制限に起因して、10秒ごとに1のオーダーのレートで連続して注入される。一旦、サンプルがイオンソースを通過すると、サンプルはイオン化され、ソース内に放散され、サンプルから生成されたイオンの小さいフラクションのみが質量分光計システムに実際にサンプリングされる。
【0004】
マトリクス支援レーザ脱離/飛行時間(MALDI/TOF)は、異なるタイプの質量分光計技術であり、ここでは、サンプルは、UV吸収化合物(マトリクス)と混合され、表面上に沈積され、次いで、速いレーザパルスでイオン化される。イオンの短いバーストまたはプルームがレーザによって質量分光計のイオンソース内で生成され、このイオンのプルームが飛行時間型質量分光計を用いて、固定された距離を通る飛行時間を測定する(イオン形成パルスで開始する)ことによって分析される。この技術は、本質的に、(飛行時間型質量分光計に要求される)パルス化されたイオン化技術およびバッチ処理技術である。その理由は、サンプルが、連続的な流れる液体流中のイオンソースよりもむしろ、(プレート上の小さなスポットに位置するサンプルの)バッチ内のイオンソースに導入されるからである。MALDI/TOFは、ペプチドおよびたんぱく質等のバイオポリマーの分析にほとんど独占的に使用されている。この技術は、これら挙げられたもの等の脆弱な分子に敏感であり、よく作用し、TOF法は、高質量(high−mass)化合物の分析に特に適している。しかしながら、最近まで、この種の器具を用いる真のMS/MSを行う実現性のある方法がなかった。それよりも、ポストソース分解(PSD)法がある種のフラグメント化情報を提供するために用いられている。この技術では、前駆イオンがイオンゲートを有する飛行チューブ内で選択され、次いで、(ソースから持ち去られた過剰なエネルギーに起因して)イオンミラーの前でフラグメント化したこれらのイオンが、質量分解され得る。この技術は、比較的乏しい感度および質量精度を提供し、高性能MS/MS技術であるとは考えられない。MALDI技術はまた、質量精度および分解能が非常に高くあり得る(低質量で30,000分解能まで、数パーツ・パー・ミリオンの精度)が、これらの重要な特徴は、達成するのが困難であるという事実を欠点として有する。なぜならば、それらは、サンプル表面の微細構造(粗さ)、レーザフルエンス(fluence)、および制御することが困難であり得る他の器具の特徴に依存するからである。良好な質量精度は、典型的には、較正化合物が実際のサンプル自体に近接したサンプル表面上に置かれることを要求する。MALDI/TOF技術は、主として、スペクトル分析のために用いられる。いくつかの従来の試みが、定量分析にMALDIを使用するためになされたが、それらは、MALDI/TOFで得られる乏しい精度のため制限された成功を経験している。
【0005】
最近、MALDIを直交TOFと組み合わせる方法がManitoba大学のグループによって導入された。この技術(米国特許第6,331,702号(Manitoba大学に譲渡された)に記載されるように、Orthogonal MALDI、あるいは「oMALDI(TM)」(Applied Biosystems/MDS SCIEX Instruments,Concord,Ontario,Canadaの商標)と呼ばれている)は、ソースから分光計をより完全に分離し、より小さい角度および速度の広がりを有するより連続したイオンビームを提供するように、MALDIソース等のパルスソースが種々の分光計装置に結合されることを可能にする装置および方法である。この技術では、MALDIソースからプルームとして生成されたイオン(典型的には、20Hz未満のレートで、レーザパルスから数ナノ秒のパルス幅を有する)が、RFイオンガイド内のダンピングガスを含む比較的高圧領域で衝突冷却される。ダンピングガスとの衝突は、プルームを擬連続ビームに変える。次いで、この擬連続ビームは、直交飛行時間で分析される。ここでは、イオンは、TOFの軸に対して直交して入り、横方向からパルス化される。
【0006】
従来のMALDI/TOFからは入手可能でないこの組み合わせには、いくつかの利点がある。TOF分解能および質量精度は、レーザフルエンス(fluence)およびサンプル形態学等のソース条件から分離される。イオンは、熱エネルギー近傍に減速される。この熱エネルギー近傍から、イオンは、衝突セル内での衝突活性化分解(CAD)のために数十電子ボルトに都合よく再加速され得る(時間内に引き伸ばされたビームを有することにより)ビーム内のイオン流量が十分低いので、時間デジタル変換器(TDC)がイオン検出のために用いられ得る。結果として、高質量精度および分解能が広範囲の操作条件下で達成され得る。加えて、質量分解能四重極および衝突セルが、MS/MS配置を提供するために、TOF分析部の前に配置され得る。MALDIソースからの前駆イオンは、衝突クーリングされ、次いで、四重極マスフィルタによって選択され、衝突セル内でフラグメント化され、フラグメント質量がTOFによって分析される。これは、MALDIイオンのMS/MSに対して高い分解能および感度を提供する。これは、従来は入手可能でなかった。このMS/MS配置は、QqTOFと呼ばれる。ここで、Qはマスフィルタ四重極と呼ばれ、qは、RF−専用衝突セルと呼ばれる。
【0007】
Manitobaグループは、oMALDI(TM)技術により、MALDIソースがイオンビームのほぼ連続的な性質のために、四重極質量分光計システムに効率的に結合されることが可能であることを認識した。しかしながら、これがサンプル濃度を定量的に測定するための改良された能力を呈示し得ることの認識はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の要旨)
前述の観点から、本発明は、三連四重極質量分析部と結合したレーザ脱離(例えば、MALDI)イオンソースを用いて小分子のハイスループット定量を可能にする質量分析定量技術を提供する。本明細書において用いられるように、用語「小分子」は、本質的には全くポリマーでなく、繰り返しサブユニットクラスの化合物から構成されない化合物であることを意味している。小分子は、生物学的巨大分子またはポリマー(これらは、(アミノ酸サブユニットから構成される)たんぱく質およびペプチド、(核酸サブユニットから構成される)DNAおよびRNAまたは(糖サブユニットから構成される)セルロース等の繰り返しサブユニットエンティティ(entities)から構成される)の範囲の外側に分けられる。
【0009】
本発明によると、小分子のサンプル物質のレーザ脱離によって生成されたイオンは、衝突ダンピング/クーリングされ、次いで、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードでの三連四重極(triple−quad)操作を用いて定量的に分析される。本発明の特徴によると、有意に改善された測定感度が、高パルスレート、好適には、約500Hz以上でレーザパルスをイオンソースに付与することによって得られる。これにより、データ取得が迅速に行われることが可能になり、イオンソースターゲット上の各サンプルポイントに対して1秒程度のスピードが達成される。
【0010】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
小分子を定量的に検出する方法であって、
当該方法は、
検出されるべき小分子のタイプを含むサンプル物質を担持するターゲット表面を有するイオンソースを提供するステップを有し、
レーザを操作して、ターゲットソース上の選択されたエリアに複数のレーザパルスを付与するステップを有し、各レーザパルスは、該ターゲット表面上の該サンプル物質から被分析試料イオンのプルームを生成しており、
該プルーム内の該被分析試料イオンをダンピングガスと衝突ダンピングするステップを有し、
衝突ダンピングされた被分析試料イオンを三連四重極質量分析部に通すステップを有し、該三連四重極質量分析部は、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、検出されるタイプの小分子から引き出された前駆タイプのイオンおよび該前駆タイプのイオンをフラグメント化することによって生成された生成タイプのイオンを選択しており、
該三連四重極質量分析部によって選択された該生成タイプのイオンをカウントするステップを有すること、
を特徴とする前記方法。
(項目2)
前記操作する工程は、約500Hz以上のパルスレートでレーザを操作する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記レーザのパルスレートは、約500Hzと1500Hzとの間である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記レーザのパルスレートは、約1000Hzと1500Hzとの間である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記マルチプルリアクションモニタリングモードでの測定のための較正曲線を生成する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記ダンピングガスは、被分析試料イオンに制限を提供するように操作される無線周波数イオンガイド内で提供される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記操作する工程は、約1秒内で前記ターゲット表面の選択されたエリア内で前記サンプル物質を涸渇させるように選択されたパルスレートでレーザを操作する、項目1に記載の方法。
(項目8)
サンプル物質を定量的に分析する方法であって、
当該方法は、
サンプル物質を担持するターゲット表面を有するイオンソースを提供するステップを有し、
約500Hz以上のパルスレートでレーザを操作して、該ターゲットソース上の選択されたエリアに複数のレーザパルスを付与するステップを有し、各レーザパルスは、該ターゲット表面上の該サンプル物質から被分析試料イオンのプルームを生成しており、
該プルーム内の被分析試料イオンをダンピングガスで衝突ダンピングするステップを有し、
衝突ダンピングされた被分析試料イオンを三連四重極質量分析部に通すステップを有し、該三連四重極質量分析部は、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、検出されるタイプの小分子から引き出された前駆タイプのイオンおよび該前駆タイプのイオンをフラグメント化することによって生成された生成タイプのイオンを選択しており、
三連四重極質量分析部によって選択された生成タイプのイオンをカウントするステップを有すること、
を特徴とする前記方法。
(項目9)
前記レーザのパルスレートは、約500Hzと1500Hzとの間である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記レーザのパルスレートは、約1000Hzと1500Hzとの間である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記マルチプルリアクションモニタリングモードでの測定のための較正曲線を生成する工程をさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記ダンピングガスは、被分析試料イオンに制限を提供するように操作される無線周波数イオンガイド内で提供される、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記パルスレートは、約1秒内で前記ターゲット表面の選択されたエリア内で前記サンプル物質を涸渇させるように選択される、項目8に記載の方法。
(項目14)
サンプル物質を担持するターゲット表面と、
該ターゲット表面に向けられたレーザパルスを生成するためのレーザであって、該レーザは、約500Hz以上のパルスレートで照射するように制御され、各レーザパルスは、該ターゲット表面上のサンプル物質から被分析試料イオンのプルームを生成する、レーザと、
該プルーム内の被分析試料イオンを衝突ダンピングするために該被分析試料イオンのプルームのイオンパス内に提供されるダンピングガスと、
ダンピングガス後のイオンパス内に配置され、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、前駆タイプの被分析試料イオンおよび該前駆タイプのイオンをフラグメント化することよって生成された生成タイプのイオンから選択する三連四重極質量分析部と、
該三連四重極質量分析部によって選択された生成タイプのイオンをカウントする手段と
を有するサンプル物質の定量分析のためのシステム。
(項目15)
前記レーザは、約500Hzと1500Hzとの間のパルスレートで操作される、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記レーザのパルスレートは、約1000Hzと1500Hzとの間である、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記ダンピングガスが提供される無線周波数イオンガイドをさらに含み、該RFイオンガイドは、前記被分析試料イオンの制限を提供するように操作される、項目14に記載のシステム。
(項目18)
前記サンプル物質は小分子のタイプである、項目14に記載のシステム。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による質量分光計システムの実施の形態の概略図であり、小分子のハイスループット定量のためのMRMモードで操作される、MALDIイオンソースおよび三連四重極質量分析部を含む。
【図2】図2は、図1の質量分光計システムのMALDIイオンソースの概略拡大図である。
【図3】図3は、代替的配置の概略図であり、この配置では、MALDIイオンソースが異なるようにポンピングされた真空チャンバ内にある。
【図4】図4は、別の代替的実施形態の概略図であり、この実施形態では、MALDIイオンソースが大気圧の状態である。
【図5】図5は、本発明のハイスループット定量技術を用いて得られた例示のMRMデータを示すグラフである。
【図6】図6は、例示の較正曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、図6に類似するが、より低い濃度範囲の例示の較正曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、従来のMALDI/TOF質量分光計に典型的に用いられる低レーザパルスレートを用いて得られた例示のデータを示すグラフである。
【図9】図9は、MRMピークの幅に対するレーザパルスレートの効果を示すグラフである。
【図10】図10は、図9のグラフの部分の拡大図を示すグラフである。
【図11】図11は、プラゾシンのM+H強度に対するフラグメントイオン強度の比率の例示を示すグラフである。
【図12】図12は、レーザパルスレートの関数としてのMRMピークエリアの例示を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
ここで、図面を参照すると(ここで、同様の参照符号は、同様の要素を参照する)、
図1は、イオンソースおよび質量分析部を含む質量分光計システムの実施の形態を示す。本発明によると、イオンソースは、衝突ダンピングセットアップ22に結合されたマトリクス支援レーザ脱離イオン(MALDI)ソース20であり、質量分析部は、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードで操作される三連四重極デバイス30である。MALDIイオンソースを活性化するために、レーザ40によって生成されたレーザパルスは、MALDIイオンソース20のサンプルターゲット36上に向けられる。以下により詳細に記載されるように、レーザは、約500Hz以上等の比較的高レートのパルスレートで照射することが可能であるタイプである。
【0013】
質量分光計は、データ取得システム50に接続されている。このデータ取得システム50は、データ収集のためのデータ取得エレクトロニクス52と、システムの操作を制御して質量分析研究を行うようにプログラミングされたコンピュータ56とを含む。特に、コンピュータ56は、レーザ40のパルスレートを制御し、データ取得エレクトロニクス52へのインターフェースを介して、三連四重極質量分析部(「三連四重極(triple−quad)」)30の操作を制御して、MRM研究を実行する。
【0014】
図2に示されるように、好適な実施形態では、分析されるイオンは、真空チャンバ60の内部のMALDIソースのターゲット36から生成される。レーザ40によって生成される紫外(UV)光62は、UVレンズ66を通して真空チャンバ60に送られ、MALDIサンプルターゲット36の表面上に向けられる。各レーザパルスは、サンプルターゲット36からイオンのプルーム70を生成する。このプルーム70は、真空チャンバ内のガスによって衝突クーリングされ、サンプルターゲット36に隣接して配置された四重極セットQ0によって閉じ込められる。
【0015】
図3は、代替の実施形態を示しており、この実施形態では、サンプルターゲット36が、四重極セットQ0が位置する真空領域60から仕切り76によって分離された真空領域72内に配置される。この配列によって、サンプルターゲット36から来るプルーム70が第二真空領域60内の圧力より高い圧力で衝突ダンピングガスに曝されることが可能になる。
【0016】
図4は、別の代替の実施形態を示しており、この実施形態では、サンプルターゲット36が、真空領域72の外側の大気中に配置されている。その結果として、イオンのプルーム70が大気圧中に形成される。次いで、イオンのプルーム70は、異なるようにポンピングされた真空領域72を通り、四重極セットQ0の真空領域60に入る。
【0017】
図1に戻ると、図示された実施形態では、三連四重極30は、Q1、Q2、およびQ3で表された3セットの四重極ロッドを含む。三連四重極30が、MRMモードで操作される場合、第一四重極ロッドセットQ1は、MALDIソース20によって生成されたイオンのプルーム70から「前駆」イオンを選択するように操作される。第二四重極ロッドセットQ2は、第一四重極セットQ1によって選択された前駆イオンのフラグメント化を、ロッドQ2によって閉じ込められた空間内のガスとの衝突によって引き起こすように操作される。次いで、第三四重極ロッドセットQ3は、前駆イオンをフラグメント化することによって生成されたイオンから特定の「生成」イオンを選択するように操作される。四重極ロッドQ3によって選択された生成イオンはアパチャー80を通過し、当業者に既知のCHANNELTRON(TM)電子増倍器デバイス等の電気的パルス生成デバイス82によって集められる。パルス生成デバイス82によって生成されたパルスは、データ取得エレクトロニクス52によって検出される。データ取得エレクトロニクス52は、典型的にはパルス検出デバイスおよびカウンタ等を含む。データ取得エレクトロニクス52によって集められたデータは、格納、表示、および分析のためにコンピュータ56に送られる。MRMモード検出の目的のために、パルス生成デバイス82によって生成されたパルスは、集められ、レーザパルスによってサンプルターゲットが除去される持続時間の関数としてカウントされる。
【0018】
本発明は、小分子のハイスループット定量が、MRMモードで操作する三連四重極質量分析部を、約500Hz以上、好ましくは、約500Hzと1500Hzとの間等の高反復レートでのレーザパルスで活性化されたMALDIソースと組み合わせること、および、レーザパルスによって生成されたイオンプルームを衝突ダンピングすることによって達成され得るという予想外の結果に基づいている。結果が予想外であるのは、この発見の前には、MALDIソースの使用によって小分子の定量分析が可能となるかどうか、もし可能となるのであれば、どのような感度であるか、感度の妥協を受け入れるのに十分な分析速度があるかどうかが未知であったからである。本発明者らは、高いレーザパルスレートの使用が、増大した感度、伝統的MALDIで典型的なレーザパルスレートを用いたハイスループット条件下では十分に検出され得ないある種の化合物に関して非常に高いスループット定量測定をなす能力、および非常に良好なシグナル再現性を提供することを発見した。質量分光計シグナルを弱めることなく比較的高いレーザフルエンスを使用する能力は、イオンパス内のダンピングガスの存在に起因すると考えられる。このダンピングガスは、衝突を介してイオンを冷却する。衝突クーリングはまた、パルス化されたイオンビームを擬連続的イオンビームに変える。この擬連続的イオンビームは、MRM動作モードを用いる三連四重極質量分光計を用いて効果的に分析され得る。レーザパルスレートが大きくなるほど、イオンビームはより連続的になる。
【0019】
本発明の定量技術の高い感度およびスループットに起因して、測定は、高速度で行われ得る。約1000−1500Hzのレーザパルスレートによって、スループットレートは、1秒あたり1サンプルよりずっと下であることが可能であることが示される。ハイスループット定量が目的であるので、サンプルスポット上の周りを「探し回ってつつくこと」は望みではなく、サンプルスポット「に」狙い撃ちし、定量定性データをとることを開始することが望みである。マトリクスの選択、およびそれ故に、サンプルスポット形成がこの要求によって影響され得る。多くのマトリクス物質が試みられ、感度およびスポット毎および日毎の再現性の最良の混合を提供するマトリクス物質は、α−シアノ(α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸)(HCCAとしても知られている)である。HCCAはまた、典型的に、ペプチドおよびたんぱく質のMALDI/TOF分析に用いられる。
【0020】
操作中、分析されるサンプルは、96〜384またはそれ以上のサンプルスポット位置を典型的に含み得るサンプルターゲットプレート上に置かれる。この定量技術の主要な適用領域の一つは、薬学化合物およびその代謝物または反応生成物の定量である。興味のある物質を含む溶液は、典型的には、血液または尿または血漿等の生物学的サンプルから、あるいは、サンプルと反応させるために用いられた酵素を含むバッファ溶液から抽出される。いくつかの簡単なクリーンアップ手順が所望でない塩またはたんぱく質の大部分を除去するために用いられ得る。次いで、少量(通常1マイクロリッター未満)が、マトリクス溶液と混合される。マトリクス溶液は、レーザの波長(例えば、335ナノメータ)で紫外光を効率的に吸収するように選択される。サンプル溶液およびマトリクスの混合物は、サンプルプレート上に置かれ、プレート上で乾燥させておき、興味のあるサンプルを含む結晶化された物質のスポットを形成する。プレートは、質量分光計のイオンソースに挿入される。一つの構成では、プレートは、ステッパモータによって移動させるホルダに挿入され、その結果、興味のあるサンプルのスポットは、質量分光計のイオン光学系の前面にある。サンプルプレート周りのOリングは、真空シールを提供する。レーザがサンプルスポットに繰り返し照射されて、サンプルを脱離させかつイオン化する。興味のイオン(内部標準のものおよび被分析試料(analyte)のものの両方)が、レーザパルスレートに応じて、数ミリ秒から数百ミリ秒の範囲の休止時間を用いて質量分光計によってモニタリングされる。以下により詳細に記載されるように、本発明によると、レーザは、約500Hzから例えば約1500Hzまでの高レートで照射される。一方法では、プレートは、レーザが一定期間(例えば1秒)照射される間静置されたままであり、イオンシグナル強度は、消費されたサンプルの量の測定を提供するために、この期間の間積算される。別の方法では、レーザは、イオンシグナルが低レベルに低減されて、サンプルがこの領域において完全に枯渇したことを示すまで照射される。別の方法では、サンプルプレートを小さいパターンで移動させて、イオンシグナルが測定されるようにサンプルの新しい領域をレーザ光のパスに持っていく。これは、サンプルが不均一に分散された場合に、より多くの代表的なシグナルを提供し得るが、より多くの時間が、各サンプルを処理するために要求される。第二の方法は、以下の例によってより詳細に記載される。
【0021】
分析のためのサンプルが、被分析試料濃度を元の濃度の半分に低減する1:1比等の所定比でHCCA MALDIマトリクス溶液と混合される。サンプルが、手動ピペットまたは0.1〜2μlの範囲の容量を正確に送ることが可能な任意の他の液体操作デバイスを用いてターゲットプレート上に置かれる。ターゲットプレートがMALDIソースに置かれる前に、ターゲットプレート上の液滴を十分に乾燥させて結晶化させる。
【0022】
本発明によるハイスループット定量プロセスの例は、以下に記載される。サンプルスポットの新鮮な部分は、データ取得の間レーザの前面に呈示される。定量MRM分析のために、内部標準がサンプル内に含まれ、したがって、サンプルスポット内に存在する。レーザ光がサンプルスポットに当たらないようにしつつ、クロマトグラフィー(時間の関数としてのシグナル)データの取得が(被分析試料および内部標準の両方に対して)開始される。レーザ光は、サンプルスポットに当たってそのサンプルスポット上の同一の位置からサンプルを除去することが可能とされる(すなわち、除去の間サンプルを移動させない)。これにより、イオンシグナルは、バックグランドレベルから有意に増加し、ピークに達し、次いで、サンプルが完全に取り除かれると減少してバックグランドレベルに戻る。一旦、イオンシグナルがバックグランドレベルに戻ると、レーザ光がサンプルスポットに当たることを停止させる。次いで、レーザを、サンプルターゲット上のデータがとられる次の位置上に移動させる。次の位置は、同一のサンプルスポット内の別の位置であるか、または、完全に異なるサンプルスポットであり得る。
【0023】
基準を提供するために、1:1等の所定比でマトリクスおよびサンプル溶媒のみを含むサンプルスポットから「マトリクスブランク」について同一のイオンペアに対してデータが取られる。時間の関数としてイオンシグナルを呈示するデータ(これはLC/MSフロー注入ピークによく類似する)から、被分析試料および内部標準ピークに対するピークエリアが計算され、そして、各ピークについての内部標準エリアに対する被分析試料エリアの比が取られ、それに従って結果がプロットされる。
【0024】
図5は、この技術を用いて取得されたMRMデータのタイプの例を与える。この場合には、レーザは、5つのサンプルスポットのそれぞれの上の2つの別位置に照射された。被分析試料は、25pg/μlのハロペリドール(市販の化合物)であった。データは、20msの休止時間を用いて、376.0/165.1m/zイオン対をモニタリングして取得された。レーザは、1400Hzで、かつ、パルスあたり〜6μJで操作された。このようなMRM定量分析のために、0.2〜1μlのサンプルが、ターゲットプレート上に置かれる(上記データは、0.2μlスポットからであった)。全ケースにおいてピークあたり少なくとも10のデータポイントがある。平均ピーク幅は、130msecの半値全幅(FWHM)によって与えられる。これは、前述のESIおよびAPCIソース等の質量分光計で用いられる典型的な大気圧イオン化ソースからは達成できない速度でのルーチンの分析的スループットの可能性を提示する。
【0025】
この方法を用いて、市販の化合物であるLidoflazineについて図6に示されるもののような較正曲線が生成され得る。5pg/μlのプラゾシンの濃度が、サンプル標本(preparation)に含まれ、内部標準として用いられた。全MRM濃度データポイントが、被分析試料イオン対について10msecの休止時間および内部標準について10msecの休止時間をもちいて3回で取得された。モニタリングされたイオン対は、Lidoflazineに対して386.2/122.0であり、内部標準であるプラゾシンに対して384.2/247.0であった。較正曲線は、ピークエリアを用い、被分析試料ピークエリアは、内部標準ピークエリアに対する比で表され、重み付けのない線形フィットが用いられた。較正曲線は、0.5pg/μl〜2000pg/μlの広範囲をカバーし、ブランクを含む。該較正曲線は、非常に線形的であり、r=0.9979を有する。図7は、図6と同一のデータを示すが、ここでは、0.5pg/μl〜100pg/μlの範囲にわたってのみ分析されており、ここには、はるかに大きな分析的な興味がある。このより小さい濃度範囲では、データは、再分析されており、較正曲線は、再度、非常に線形的であり、r=0.9957である。
【0026】
上記のように、レーザパルスレートは、可能な分析速度に関して、かつ、それ故、サンプルのスループットに関して非常に有意な影響を有している。対照を提供するために、図8は、40Hzおよびパルスあたり〜18μJのパルスエネルギーで動作する窒素レーザを用いて取られたMRMデータを示す。このパルスレートは、本発明の技術に用いられるレーザパルスレートよりはるかに小さいが、従来のMALDI使用のためには実際には「高い」。この場合、レーザは、5つのサンプルスポットのそれぞれの上の2つの別々の位置に照射された。被分析試料は、25pg/μlのジルチアゼム(市販の化合物)であり、0.2μlのサンプルスポットが用いられた。データは500msの休止時間を用いて、414.9/178.1m/zイオン対をモニタリングして取得された。平均ピークは、4.51秒の半値全幅(FWHM)によって与えられる。このFWHMは、図5における1400Hzデータの130m秒の値よりはるかに大きい(約34倍程度)。一般に、より低い周波数に対して、より高いパルスエネルギーの使用により、サンプルは、より迅速に除去され、狭いピークおよびそのために、同一のより低い周波数での低いパルスエネルギーに対するよりも高いスループットの可能性を産する。しかしながら、より高いレーザパルスエネルギーは、イオンソース領域内での増加された分子フラグメント化およびその結果としてのMS/MS感度の減少を引き起こし得る。より高いパルスレートによって提供されるはるかにより狭いピークは、一層はるかに高いスループット方法でデータを取得する能力を提示する。
【0027】
図9は、ハロペリドールのMRMピークの幅に対するレーザパルスレートの効果を示す。レーザパルスエネルギーは、レーザパルスレートを変動させる間、固定維持され、FWHMが各周波数に対して測定された。図10は、図7に示されたデータの拡大である。パルス幅は、レーザパルスレート10Hzでの〜17秒から1400Hzのレーザパルスレートでの〜0.1秒まで減少した。これは〜155倍の減少であり、はるかにより高いサンプルスループットを可能にする。
より高いレーザパルスレートは、他の利点も同様に提供する。より低いエネルギーでのより高いパルスレートは、イオンソース領域内でより小さい分子フラグメント化を引き起こし、その結果、より多くの前駆イオン(これに対してMS/MSを行う)が生じる。レーザパルスレートを変動させてシングルMS Q1スペクトルが決定される実験が行われた。分子イオン(M+H)の強度およびM+Hに対応する主要なフラグメントイオンの強度が、測定された。図11は、プラゾシンのM+H強度に対するフラグメントイオン強度の比率を示す。
【0028】
レーザパルス周波数を変動するにつれて、異なる周波数で取られたデータに対して同数のレーザショットが発生されるようにMS走査速度が調整された。分子フラグメンテーションは、レーザパルスレートが40Hzから1400Hzに増加すると、約2分の1だけ低減された。より高いレーザパルスレートがイオンソース内でより少ない分子フラグメンテーションを引き起こすので、MRM等のMS/MS実験を行うために無傷で残される分子イオンが多い。図12は、ハロペリドールおよびプラゾシンについてのレーザパルスレートの関数としてのMRMピークエリアを示す。レーザパルスレートが10Hzから1400Hzに増加すると、MRMピークエリアにおいて60%〜100%の増加があることが分かる。
【0029】
本発明の定量技術は、従来のMALDI/TOFおよび直交MALDI/TOF(またはMALDI QqTOF)の両方に対していくつかの利点を提示する。第一に、QqTOFの感度に比較して、MRMモードにおける三連四重極の高感度のために、感度がMALDI QqTOFに対して有意に改善される。QqTOFでは、イオンビームの一部のみサンプリングする直交TOF法のデューティーサイクル制限に起因して、重大なイオン損失になる(高質量よりも低質量で効率がより低くなる)。経験は、絶対感度または効率が三連四重極でのMRMによる場合には、QqTOFについての同等の実験による場合よりも10〜50倍良好であることを示す。
【0030】
第二の利点は、MS/MSが非常に特異的な検出技術であり、ここではケミカルノイズバックグランドが通常非常に小さい、という事実によって提供される。このことは、特定の前駆/生成イオンの組み合わせのみがモニタリングされることによる。MALDI/TOF(ここでは、効率的なMS/MS能力はない)では、ケミカルノイズは特に低質量では通常高い。このケミカルノイズは、マトリクス関連イオン(これは、豊富に存在し、低質量被分析試料イオンからのシグナルを不明確にし得る)に起因する。したがって、三連四重極のMS/MS能力は、マトリクス関連イオンよりはるかにより低い強度で存在する低質量イオンでさえ敏感な検出を許容し得る。さらに、MALDI/TOFは、過渡レコーダ検出システムが用いられなければならないような大きいイオン流を有する。これは、多少ノイズが多いという不利益点を有し、その結果、単一イオンの発生(event)が検出されないこともある。本発明の技術を用いれば、パルスは、時間内に引き伸ばされ、その結果、パルスあたり同一数のイオンが受け取られたとしても、イオン流ははるかにより低くなる。その結果、時間デジタル変換器がパルスカウンティングのために用いられ得る。ノイズレベルが非常に低いので、これは、MS/MSのために有益である。
【0031】
第三に、質量分光計性能(この場合、三連四重極)がレーザフルエンスおよびサンプル形態とは無関係であるという事実は、サンプルが分析され得るレートを向上させるために、表面からサンプルを迅速に脱離させる可能性を許容する。例えば、MALDI/MSでは、レーザフルエンスは、質量分解能および質量精度が有意に影響されないように、イオン化閾値近くに、低く維持されなければならない。しかしながら、イオンビームの衝突クーリングのため、レーザエネルギーは、サンプルが熱的に分解するポイントが発生するすぐ下に増加され得る。これは、サンプルのより迅速な脱離を許容し得、したがって、より多くのサンプルが短期間内に処理されることを許容し得る。さらに、質量分光計の分析性能がサンプル形態と無関係であるという事実は、より大きな直径のレーザビームを用いることによって、サンプルのより大きな領域が一度にイオン化され得ることを意味する。サンプル内の不均一性は、MALDI/TOFに伴う状況とは対照的に、質量分光計性能(質量分解能または質量位置)に対して何ら影響を持たない。さらに、イオンビームの擬連続的な性質は、パルスカウンティング法の使用を許容する(イオン流が依然としてどちらかと言えば弱いので)。パルスカウンティングは、本来的には、MS/MSの最もノイズがない検出方法であり、最良の信号対ノイズ比を可能にする。
【0032】
したがって、衝突冷却されたMALDIイオンソースの、MRMモードでの三連四重極と高いレーザパルスレートとの組み合わせは、小分子の生物学的および薬学的サンプルの定量分析に非常に敏感で迅速な技術を提供する。サンプルをオフラインで調製し、次いで、それらをサンプルプレート上に沈積する能力は、並行なサンプル処理の方法が、複数のサンプルをオフラインで抽出し、浄化するために用いられ得ることを意味する。概して、質量分光計は、分析システムの最も高価な部分であるので、バッチモードでの分析のためにサンプルを調製する能力は、処理効率を有意に向上させる。
【0033】
この発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図面に関して本明細書に記載された実施形態が、例示のみであることを意味することが認識されるべきであり、本発明の範囲を制限するように解釈されるべきでない。したがって、本発明は、本明細書に記載されたように、以下の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入り得る全ての実施形態を企図する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小分子を定量的に検出する方法であって、
該方法は、
検出されるべき小分子の被分析試料分子を含むサンプル物質を担持するターゲット表面を有するイオンソースを提供するステップであって、小分子は、本質的には全くポリマーでなく、繰り返しサブユニットクラスの化合物から構成されない化合物である、ステップ;
該ターゲット表面上の選択されたエリアに複数のレーザパルスを付与するようにレーザを操作するステップであって、各レーザパルスは、該ターゲット表面上のサンプル物質中の該被分析試料分子から被分析試料イオンのプルームを生成する、ステップ;
該プルーム内の該被分析試料イオンをダンピングガスと衝突ダンピングするステップ;
衝突ダンピングされた被分析試料イオンを三連四重極質量分析部に通すステップであって該三連四重極質量分析部は、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、検出される該小分子から引き出された前駆イオンおよび該前駆イオンをフラグメント化することによって生成された生成イオンを選択する、ステップ;ならびに
該三連四重極質量分析部によって選択された該生成イオンをカウントするステップ
を包含する、方法。
【請求項2】
前記操作するステップは、500Hz以上のパルスレートでレーザを操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザのパルスレートは、500Hzと1500Hzとの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザのパルスレートは、1000Hzと1500Hzとの間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチプルリアクションモニタリングモードでの測定のための較正曲線を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダンピングガスは、被分析試料イオンに制限を提供するように操作される無線周波数イオンガイド内で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記操作するステップは、1秒内で前記ターゲット表面の選択されたエリア内で前記被分析試料分子を涸渇させるように選択されたパルスレートでレーザを操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サンプル物質を定量的に分析する方法であって、
該方法は、
サンプル物質を担持するターゲット表面を有するイオンソースを提供するステップであって、該サンプル物質は検出されるべき小分子の被分析試料分子を含み、小分子は、本質的には全くポリマーでなく、繰り返しサブユニットクラスの化合物から構成されない化合物である、ステップ;
500Hz以上のパルスレートでレーザを操作して、該ターゲット表面上の選択されたエリアに複数のレーザパルスを付与するステップであって、各レーザパルスは、該ターゲット表面上の該サンプル物質中の被分析試料分子から被分析試料イオンのプルームを生成する、ステップ;
該プルーム内の被分析試料イオンをダンピングガスで衝突ダンピングするステップ;
衝突ダンピングされた被分析試料イオンを三連四重極質量分析部に通すステップを有し、該三連四重極質量分析部は、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、前駆イオンおよび該前駆イオンをフラグメント化することによって生成された生成イオンを選択する、ステップ;ならびに
三連四重極質量分析部によって選択された生成イオンをカウントするステップを包含する、方法。
【請求項9】
前記レーザのパルスレートは、500Hzと1500Hzとの間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザのパルスレートは、1000Hzと1500Hzとの間である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記マルチプルリアクションモニタリングモードでの測定のための較正曲線を生成するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ダンピングガスは、被分析試料イオンに制限を提供するように操作される無線周波数イオンガイド内で提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記パルスレートは、1秒内で前記ターゲット表面の選択されたエリア内で前記サンプル物質を涸渇させるように選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
サンプル物質を担持するターゲット表面であって、該サンプル物質は検出されるべき小分子の被分析試料分子を含み、小分子は、本質的には全くポリマーでなく、繰り返しサブユニットクラスの化合物から構成されない化合物である、ターゲット表面と、
該ターゲット表面に向けられたレーザパルスを生成するためのレーザであって、該レーザは、500Hz以上のパルスレートで照射するように制御され、各レーザパルスは、該ターゲット表面上のサンプル物質中の被分析試料分子から被分析試料イオンのプルームを生成する、レーザと、
該プルーム内の被分析試料イオンを衝突ダンピングするために該被分析試料イオンのプルームのイオンパス内に提供されるダンピングガスと、
ダンピングガス後のイオンパス内に配置され、マルチプルリアクションモニタリングモードで操作されて、該被分析試料から、前駆イオンおよび該前駆イオンをフラグメント化することよって生成された生成イオンを選択する三連四重極質量分析部と、
該三連四重極質量分析部によって選択された生成イオンをカウントする手段と
を有するサンプル物質の定量分析のためのシステム。
【請求項15】
前記レーザは、500Hzと1500Hzとの間のパルスレートで操作される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記レーザのパルスレートは、1000Hzと1500Hzとの間である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ダンピングガスが提供される無線周波数イオンガイドをさらに含み、該無線周波数イオンガイドは、前記被分析試料イオンの制限を提供するように操作される、請求項14に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−282038(P2009−282038A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170646(P2009−170646)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2003−580837(P2003−580837)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(504361816)
【Fターム(参考)】