説明

レーダ情報処理装置

【課題】複数の航空機に対する情報ラベルをレーダ画面中に表示する場合であっても、情報ラベル中の情報を常に確認しやすい状態にする。
【解決手段】レーダ情報処理装置14の制御部20は、入力装置33から入力される指示に応じて、情報ラベルにおける文字の文字サイズを設定する。ラベル表示制御部28は、設定された文字サイズに応じて、情報ラベルの表示画面中におけるサイズを設定し、この設定された複数の情報ラベルが表示画面中で重なるか否かを判定する。ラベル表示制御部28は、情報ラベルが重なると判定された場合に、情報ラベルの位置を所定の条件に従って重なりを回避することができるように変更して制御部20に通知する。制御部20は、変更された位置に情報ラベルをレーダ画面に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ情報に基づいて航空機等の位置表示を行うレーダ情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空交通制御システムでは、レーダ装置により取得される航空機等の位置に関するデータをもとに、レーダ画面中に航空機の位置を表示している。この際、航空機に関する情報(例えば識別情報)を表示するために、航空機の位置を示すマークなどの近傍に情報ラベルを付加して表示している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたターミナル管制用管制卓における航空機運航の管理方法では、航空機の識別符号(コールサイン)、識別コード(ビーコンコード)、高度、速度を表す文字を、航空機の位置を示す△マークの近傍に航空機位置タグとして表示している。
【特許文献1】特開平10−2956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように航空交通制御システムでは、レーダ画面中に航空機の位置を示すマークと共に情報ラベル(航空機位置タグ)を表示している。通常、情報ラベルにおいて表示される文字サイズは規定のサイズにより表示されていた。
【0005】
情報ラベルにおいて表示される情報を確認する場合には、例えば特許文献1のターミナル管制用管制卓では、入力装置(トラックボール)の操作により航空機を選択することにより、この航空機に対応するタグの内容を別の形式に表示するより内容を確認することができる。従って、例えばタグ内の文字が小さいために内容を確認しようとする場合には、その都度、航空機を選択して別の形式の表示を指示する操作をしなければならなかった。
【0006】
また、レーダ画面中において航空機の位置を示すマークの近傍に情報ラベル(タグ)を付加しているが、複数の航空機についての表示をする場合に、ラベル情報が重なり合い、情報ラベル中の情報の確認が困難になる場合があった。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、複数の航空機に対する情報ラベルをレーダ画面中に表示する場合であっても、情報ラベル中の情報を常に確認しやすい状態にすることができるレーダ情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、レーダ装置により測定された航空機の位置に関するデータをもとに、航空機の位置を表すマークと同マークの近傍に航空機に関する文字による情報を表示するための情報ラベルをレーダ画面に表示するレーダ情報処理装置において、前記情報ラベルにおける文字の文字サイズを設定する文字サイズ設定手段と、前記文字サイズ設定手段によって設定された文字サイズに応じて、前記情報ラベルの表示画面中におけるサイズを設定する情報ラベルサイズ設定手段と、前記情報ラベルサイズ設定手段により設定された複数の情報ラベルが表示画面中で重なるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により重なると判定された場合に、前記情報ラベルの位置を所定の条件に従って重なりを回避することができるように変更する情報ラベル位置変更手段とを具備するようにしたものである。
【0009】
また、前記判定手段は、前記レーダ画面により表示される画像と同じ座標系を有する記憶手段と、前記記憶手段に前記情報ラベルを表示する位置を表すデータを展開し、複数の情報ラベルのデータが同じ位置に展開されているか否かを判定する位置判定手段とを含み、前記位置判定手段により複数の情報ラベルのデータが同じ位置に展開されていると判定されている場合に情報ラベルが重なると判定することを特徴とする。
【0010】
また、前記情報ラベル位置変更手段は、前記情報ラベルの形状を変更して重なりを回避することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
したがって本発明によれば、レーダ画面中において航空機の位置を表すマークの近傍に付加される情報ラベルの文字を変更することができ、この文字サイズの変更に伴って情報ラベルのサイズが変更され、その結果、複数の情報ラベルが重なり合う場合には、重なりを回避するように位置が変更されるので、情報ラベル中の情報を常に確認しやすい状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態における航空交通制御システムの構成を示す図である。図1に示すように、航空交通制御システムには、レーダ装置10(航空管制レーダシステム)、及びレーダ情報処理装置14が含まれている。
【0013】
レーダ装置10は、航空機の位置を測定し、この航空機の位置に関するレーダ情報を出力する。レーダ装置10は、例えば複数のレーダシステムを含むものとし、ネットワークによりレーダ情報処理装置14と接続されている。
【0014】
レーダ情報処理装置14は、コンピュータシステムにより実現されるもので、レーダ装置10から航空機の位置に関するレーダ情報を入力して、このレーダ情報をもとにした追尾処理により求められる位置情報、所定時間後(n秒後)の予測位置、航空機のスピードなどを用いた衝突監視アルゴリズムを用いた処理により航空管制を行い、衝突の可能性があると判定された場合にレーダ情報処理装置14を通じて警報出力を行う。
【0015】
レーダ情報処理装置14は、レーダ装置10により取得したレーダ情報をもとに、表示装置32におけるレーダ画面中に航空機の位置を示す表示を行う。このレーダ画面中では、航空機の位置を示すマークなどの近傍に、それぞれの航空機に関する情報を表示するための情報ラベルが付加される。
【0016】
図1に示すように、レーダ情報処理装置14には、制御部20、レーダ情報取得部21、レーダ情報記憶部22、ラベル判定処理部24、表示制御部30、表示メモリ31、表示装置32、及び入力装置33が含まれる。
【0017】
制御部20は、レーダ情報処理装置14全体の制御を司るもので、記憶媒体(メモリ、ハードディスク等)に記憶されたプログラムをCPUにより実行することで実現される。制御部20は、レーダ情報取得部21により取得されるレーダ情報をもとに、表示制御部30を通じて航空機の位置を示すレーダ画面の表示制御を実行する。
【0018】
レーダ情報取得部21は、レーダ装置10から出力されるレーダ情報をネットワークを通じて取得する。
【0019】
レーダ情報記憶部22は、レーダ情報取得部21により取得されたレーダ情報を記憶する。
【0020】
ラベル判定処理部24は、制御部20のもとて表示されるレーダ画面中の情報ラベルの常に確認し易い状態にあるかを判定する処理、すなわち複数の航空機についての情報ラベルが重なり合う状態にあるか否かを判定する。
【0021】
ラベル判定処理部24には、文字サイズデータ記憶部27、ラベル表示制御部28、及びラベル位置ビットマップ29が設けられている。
【0022】
文字サイズデータ記憶部27は、情報ラベル中において表示する文字の文字サイズを示す文字サイズデータを記憶するもので、入力装置33を通じて入力される指示に応じて制御部20により記憶される。
【0023】
ラベル表示制御部28は、文字サイズデータ記憶部27に記憶された文字サイズデータをもとに情報ラベルのレーダ画面中のサイズを設定し、ラベル位置ビットマップ29を用いて複数の情報ラベルがレーダ画面中で重なるかを判定する。
【0024】
ラベル位置ビットマップ29は、例えば表示メモリ31と同じ座標空間を有している。ラベル位置ビットマップ29には、制御部20の制御のもとで表示装置32において表示される情報ラベルの位置を表すデータが展開記憶される。ラベル表示制御部28は、ラベル位置ビットマップ29において、複数の情報ラベルのデータが同じ位置に展開されていると判定されている場合に情報ラベルが重なると判定する。
【0025】
表示制御部30は、制御部20の制御のもとで表示制御を行うもので、表示メモリ31に記憶された表示データに応じた画像を表示装置32において表示させる。
【0026】
表示メモリ31は、表示装置32により表示される画像の表示データが記憶される。
【0027】
表示装置32は、CRT(cathode-ray tube)あるいはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成されるもので、表示制御部30の制御のもとで表示メモリ31に記憶された表示データに応じた画像を表示する。
【0028】
入力装置33は、キーボードやポインティングデバイスなどであり、各種の入力操作が行われる。入力装置33からは、例えばレーダ画面中の情報ラベルにおいて用いられる文字のサイズ変更を指示が入力される。
【0029】
次に、本実施形態における航空交通制御システムの動作について説明する。
【0030】
図2は、レーダ情報処理装置14によるレーダ画面中の情報ラベル表示を制御する処理を説明するためのフローチャートである。
レーダ情報処理装置14は、レーダ装置10からレーダ情報を取得して、衝突監視アルゴリズムに従い衝突予測を行い、衝突の可能があると判定された場合に衝突警報を出力する。通常では、レーダ装置10により測定された各航空機等に対するレーダ情報をもとに、表示装置32において各航空機の位置を所定のマークなどによりレーダ画面において表示させている。
【0031】
図3には、レーダ画面中の表示例を示している。図3に示す例では、2機の航空機の位置をそれぞれ○マークにより表示している。また、各マークに対して情報ラベルが付加されている。
【0032】
図3に示すレーダ画面の例では、マークに対して所定の方向に、マークと所定の距離を離間させて情報ラベルを配置している。本実施形態では、図4に示すように、マークに対して8方向に情報ラベルを配置することができるものとする。なお、図4に示すラベル方向は一例であって、任意に決めることも可能である。
【0033】
基本的に情報ラベルは、マークに対して所定の方向(図3では(NE方向))に配置されるものとする。マークに対して決められた方向に情報ラベルを配置することで、航空機の位置を表すマークと情報ラベルとの対応関係を容易に把握することができ、マークが表す航空機に対する情報を確実に確認できる。
【0034】
本実施形態におけるレーダ情報処理装置は、レーダ画面中の情報ラベルにおいて表示される文字のサイズを任意に指定することができる。制御部20は、入力装置33が操作されることで、文字サイズの変更指示が入力されると、この変更後の文字サイズを示す文字サイズデータを文字サイズデータ記憶部27に記憶させる。
【0035】
ラベル判定処理部24のラベル表示制御部28は、文字サイズデータ記憶部27に記憶されている文字サイズデータを読み出し(ステップA1)、このデータが示す文字サイズに応じた情報ラベルのサイズを設定する(ステップA2)。すなわち、文字サイズを大きくする変更指示があった場合には、図5に示すように、サイズが大きくなった文字による情報の全体を元の情報ラベルと同様に表示することができるように情報ラベルサイズを大きくする。
【0036】
ラベル表示制御部28は、文字サイズデータに応じて設定した情報ラベルが表示される位置に合わせて、情報ラベルを表すデータをラベル位置ビットマップ29に展開記憶させる。
【0037】
図6(a)には、図3に示す2つの情報ラベルが文字サイズの変更(文字サイズを大きくする)に伴って、それぞれサイズが大きくなった状態を示している。
【0038】
図7は、ラベル位置ビットマップ29に記憶されるデータを概念的に示す図である。例えば、ラベル表示制御部28は、2つの情報ラベルの表示位置と一致させて、ラベル位置ビットマップ29に所定のデータとして“1”を記憶させる(図7中のハッチングで示す範囲)。
【0039】
ラベル表示制御部28は、ラベル位置ビットマップ29に記憶されたデータについて、所定のデータ(“1”)が同じ位置に展開されているかを判定する(ステップA4)。すなわち、複数の情報ラベルの位置が重なるか否かを判定する。
【0040】
ラベル位置ビットマップ29には、表示メモリ31にレーダ画面を表示する際の表示データと同様のデータが展開記憶されることから、表示装置32において表示対象としている情報ラベルの位置が重なるか否かを判定することになる。
【0041】
この判定の結果、2つの情報ラベルの位置を示す所定のデータとが重なり合わない場合(ステップA5、No)、ラベル表示制御部28は、情報ラベルの位置の変更が不要であると判定する。この場合、制御部20は、文字サイズの変更に伴ったサイズが変更された情報ラベルをレーダ画面において表示させる。
【0042】
一方、図7に示す例では、2つの情報ラベルの位置を示す所定のデータが重なり合っているため(ステップA5、Yes)、ラベル表示制御部28は、情報ラベルの優先順位に従って情報ラベルの移動位置を判定する(ステップA6)。
【0043】
例えば、2つの情報ラベルが重なり合う場合、到達予定時刻が早い航空機に対応する情報ラベルの位置を固定とし、他方の情報ラベルの位置を、図4に示す8方向について所定の順番で変更していき重なり合わない位置を判定する。例えば、初期状態では航空機の位置を表すマークに対してNE方向に情報ラベルが設定されているので、時計回りに方向を変更していく。
【0044】
ラベル表示制御部28は、情報ラベルが重なり合わない位置を求めると、この位置を制御部20に通知する。制御部20は、ラベル表示制御部28からの通知に応じた位置に情報ラベルを表示させる。
【0045】
図6(b)は、図6(a)に示す一方の情報ラベル(B1)の表示位置を変更した例を示している。図6(b)では、航空機の位置を示すマークに対してSE方向に情報ラベル(B2)の表示位置を変更している例である。
【0046】
なお、前述した説明では、説明を簡単にするために、2つの情報ラベルが重なり合う場合を例にしているが、2つ以上の情報ラベルが重なり合う場合についても、所定の優先順位に従って重なりを回避するように移動位置を求めて表示を変更すれば良い。
【0047】
また、前述した説明では、情報ラベルの形状は一定としているが、情報ラベルの形状を変更して重なりを回避するようにしても良い。例えば、ラベル判定処理部24において、複数の志保ラベルの形状に関するデータを用意しておき、他の情報ラベルと重なることが判定された場合に、複数の他の形状の情報ラベルを用いた場合の重なりを同様にして判定する。そして、重ならないと判定された場合に、当該形状の情報ラベルを用いて制御部20によりレーダ画面を表示させる。
【0048】
このようにして、本実施形態におけるレーダ情報処理装置14では、レーダ画面中に表示される情報ラベルで用いられる文字サイズを任意に変更することができ、この文字サイズの変更に伴って情報ラベルのサイズも変更することができる。従って、情報ラベル中の文字が小さいために内容が困難である場合であっても、文字サイズを変更することで内容確認を容易にすることができる。また、文字サイズの変更に伴って情報ラベルのサイズ大きくなり、他の情報ラベルとの重なりが生じる場合には、重なりを回避するように情報ラベルの位置が変更されるので、各情報ラベル内の情報を常に確認することができる。
【0049】
要するに本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態における航空交通制御システムの構成を示す図。
【図2】本実施形態におけるレーダ情報処理装置14によるレーダ画面中の情報ラベル表示を制御する処理を説明するためのフローチャート。
【図3】レーダ画面中の表示例を示す図。
【図4】本実施形態におけるマークに対して情報ラベルを配置することができる方向例を示す図。
【図5】本実施形態における情報ラベルのサイズ変更について説明するための図。
【図6】図3に示す2つの情報ラベルが文字サイズの変更に伴って、それぞれサイズが大きくなった状態を示す図。
【図7】本実施形態におけるラベル位置ビットマップ29に記憶されるデータを概念的に示す図。
【符号の説明】
【0051】
10…レーダ装置、14…レーダ情報処理装置、20…制御部、21…レーダ情報取得部、22…レーダ情報記憶部、24…ラベル判定処理部、27…文字サイズデータ記憶部、28…ラベル表示制御部、29…ラベル位置ビットマップ、30…表示制御部、31…表示メモリ、32…表示装置、33…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置により測定された航空機の位置に関するデータをもとに、航空機の位置を表すマークと同マークの近傍に航空機に関する文字による情報を表示するための情報ラベルをレーダ画面に表示するレーダ情報処理装置において、
前記情報ラベルにおける文字の文字サイズを設定する文字サイズ設定手段と、
前記文字サイズ設定手段によって設定された文字サイズに応じて、前記情報ラベルの表示画面中におけるサイズを設定する情報ラベルサイズ設定手段と、
前記情報ラベルサイズ設定手段により設定された複数の情報ラベルが表示画面中で重なるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により重なると判定された場合に、前記情報ラベルの位置を所定の条件に従って重なりを回避することができるように変更する情報ラベル位置変更手段と
を具備したことを特徴とするレーダ情報処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記レーダ画面により表示される画像と同じ座標系を有する記憶手段と、
前記記憶手段に前記情報ラベルを表示する位置を表すデータを展開し、複数の情報ラベルのデータが同じ位置に展開されているか否かを判定する位置判定手段とを含み、
前記位置判定手段により複数の情報ラベルのデータが同じ位置に展開されていると判定されている場合に情報ラベルが重なると判定することを特徴とする請求項1記載のレーダ情報処理装置。
【請求項3】
前記情報ラベル位置変更手段は、前記情報ラベルの形状を変更して重なりを回避することを特徴とする請求項1記載のレーダ情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−78522(P2007−78522A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266941(P2005−266941)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】