説明

レーダ用アンテナ、及びレーダ装置

【課題】各アンテナの指向性が高く且つ広範な走査を実現するアレイ式のレーダ用アンテナ、及びレーダ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】移動体8に搭載されて周辺の特定範囲を電子的に走査するレーダ用アンテナ1であって、導波管スロットアンテナ6が複数並んだアンテナ本体2と、導波管スロットアンテナ6のスロット5を導波管スロットアンテナ6毎に囲むホーン3と、を備え、アンテナ本体2は、スロット5が特定範囲に向けて開口し且つ、移動体8の垂直方向に複数のスロット5を設けた導波管スロットアンテナ6が、移動体8の水平方向に複数並ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ用アンテナ、及びレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や船舶といった移動体の周辺をレーダ波で走査する技術として、例えば、送信波に指向性のあるアンテナを回転させて機械的に走査するもの(例えば、特許文献1〜4を参照)や、複数のアンテナを並べて各アンテナの位相を処理して電子的に走査するものがある。例えば自動車のように周囲の状況が時々刻々と変化するような場合、周辺の状況を瞬時に捉えるべく、高速な走査が可能な電子式のレーダ装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−1617号公報
【特許文献2】実開平7−11020号公報
【特許文献3】特開平5−209953号公報
【特許文献4】特開2007−221585号公報
【特許文献5】実用新案登録第2550551号公報
【特許文献6】再公表特許WO2003/44896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体の周辺を電子的に走査するレーダ用アンテナは、複数のアンテナを配列することによって構成される。このようなアンテナによる走査性能は、各アンテナの指向性やアンテナ間隔によって決まる。すなわち、各アンテナの指向性が高ければ誤検知の低減に寄与し、アンテナ間隔が狭ければ広範な走査が可能となる。アンテナの指向性は、各アンテナをアレイ化することで高くできる。
【0005】
ここで、各アンテナを構成するアレイ数を増やすと、不可避的にアンテナ間隔が広がる。一方、各アンテナのアレイ数を減らすと、各アンテナの指向性が低下する。すなわち、各アンテナの指向性とアンテナ間隔とはトレードオフの関係にあると言える。
【0006】
そこで、本発明は、各アンテナの指向性が高く且つ広範な走査を実現するレーダ用アンテナ、及びレーダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、複数並べた導波管スロットアンテナのそれぞれにホーンを設けた。
【0008】
詳細には、移動体に搭載されて周辺の特定範囲を電子的に走査するレーダ用アンテナであって、導波管スロットアンテナが複数並んだアンテナ本体と、前記導波管スロットアンテナのスロットをスロットアンテナ毎に囲むホーンと、を備え、前記アンテナ本体は、前記スロットが前記特定範囲に向けて開口し且つ、前記移動体の垂直方向に複数のスロットを設けた前記導波管スロットアンテナが、前記移動体の水平方向に複数並ぶ。
【0009】
このように構成されるレーダ用アンテナであれば、導波管スロットアンテナの各スロットから放射されるレーダ波は、拡散しないようホーンによって包囲された空間に遮蔽され、ホーンの開口部から放射される。ホーンを設けることで各導波管スロットアンテナの指
向性が高まるので、サイドローブを大きくすることなく導波管スロットアンテナ同士の間隔を狭くでき、広範な走査が実現できる。
【0010】
また、導波管スロットアンテナは、導波管の長手方向に対して垂直な方向に鋭い指向性があるため、導波管スロットアンテナが移動体に対して上記のような位置関係となるようにアンテナ本体を構成することで、移動体の周辺のうち有効な範囲の走査を効果的に実現できる。
【0011】
ここで、前記アンテナ本体は、前記スロットを設けた導波管が板状の部材に並んで埋設されており、前記ホーンは、前記スロットに隣接して前記アンテナ本体から突出する、各導波管に沿って延在する突出部によって、該スロットを導波管スロットアンテナ毎に囲むものであってもよい。
【0012】
導波管スロットアンテナは、導波管の長手方向に対して垂直な方向には鋭い指向性があるものの、水平な方向の指向性は劣るため、導波管に沿って延在する突出部でスロットを導波管スロットアンテナ毎に囲めば、各導波管スロットアンテナの指向性を効果的に高めることができる。
【0013】
ここで、前記レーダ用アンテナは、前記ホーンの開口端に当接して前記各導波管スロットアンテナを覆うレドームを更に備えるものであってもよい。
【0014】
ホーンは、隣接する導波管スロットアンテナとの間を遮る部材としても捉えることができる。そこで、レドームを用いる際、このレドームがホーンの開口端に接触するようにすれば、レドームで反射したレーダ波が、隣接する導波管スロットアンテナに入射されないようホーンで遮られるため、各導波管スロットアンテナ間のアイソレーション効果を高めることができる。
【0015】
また、本発明は、移動体に搭載されて周辺の特定範囲を電子的に走査するレーダ装置であって、送受信するレーダ波を処理する処理回路と、導波管スロットアンテナが複数並んだアンテナ本体と、該導波管スロットアンテナのスロットをスロットアンテナ毎に囲むホーンとを有するレーダ用アンテナと、を備え、前記アンテナ本体は、前記スロットが前記特定範囲に向けて開口し且つ、前記移動体の垂直方向に複数のスロットを設けた前記導波管スロットアンテナが、前記移動体の水平方向に複数並ぶものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
各アンテナの指向性が高く且つ広範な走査を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レーダ用アンテナの外観斜視図である。
【図2】レーダ用アンテナの走査範囲を示した図である。
【図3】アンテナの間隔と位相差との関係を示した図である。
【図4】アンテナの指向性を示した図である。
【図5】レーダ用アンテナを構成する部材を示した図である。
【図6】レドームの取り付け例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態であるレーダ用アンテナ1の外観斜視図である。このレーダ用アンテナ1は、車両に搭載されて該車両の周辺の特定範囲をレーダ波(ミリ波)で電子的に走査し、障害物等を検知するためのアンテナであり、図1に示すように、レーダ波を伝送する中空の導波管4が6本平行に並ぶ
ように埋設された板状のアンテナ本体部2と、アンテナ本体部2から立設されるホーン部3とを備える。アンテナ本体部2やホーン部3は、アルミニウムや銅等の導電性材料で構成される。なお、図1で矢印が示す方向は、レーダ用アンテナ1で車両の前方を監視する際のアンテナの取り付け方向を示している。
【0019】
近距離の走査に用いるミリ波帯のレーダ波は、雨や霧等の気象条件による影響を受けにくいため、車間距離制御や衝突防止制御等に好適である。レーダ用アンテナ1は、このようなシーンで用いられるものであり、送受信するレーダ波を処理する高周波回路や信号処理回路といった信号処理回路と組み合わされることでレーダ装置を構成することもできる。
【0020】
アンテナ本体部2には、図1に示すように、各導波管4内で伝送されるレーダ波を放射するスロット5が、各導波管4にそれぞれ多数設けられている。各導波管4は、高周波回路に繋がる。スロット5が各導波管4に設けられることで、6つの導波管スロットアンテナ6が形成される。スロット5は、細長い開口である。スロット5は、対向車両から送信されるレーダ波との干渉を避けるべく、導波管4の長手方向に対して45°に傾いた細長い開口となっている。スロット5がこのように開口していることで、レーダ用アンテナ1から45°偏波が放射され、対向車両から送信されるレーダ波と自身からの反射波とを区別できる。
【0021】
ホーン部3は、アンテナ本体部2から突出する細長い突出部7が、スロット5を囲むように各導波管4の長手方向と平行に並んでいる。この突出部7は、断面が山型であり、各導波管4の両脇で導波管4と平行に延在している。突出部7の頂角や高さは、各導波管4のスロット5から放射されるレーダ波の指向性が最も鋭くなるように適宜決定される。断面視山型の突出部7が各導波管4のスロット5を囲むことで、各スロット5から放射されるレーダ波は、拡散しないようホーン部3の突出部7によって包囲された空間に遮蔽され、開口端から放射される。このため、各導波管スロットアンテナ6の指向性が高まることになる。
【0022】
図2は、レーダ用アンテナ1の走査範囲を示したものである。車両8の正面を監視するレーダ装置の場合、図2に示すような範囲にある障害物等の有無を走査することが求められる。その走査角は、通常、水平方向が20〜30°であり、垂直方向が約4°程度である。
【0023】
ここで、各アンテナの間隔を狭くすると、図3に示すように、隣接するアンテナとの位相差が小さくなる。すなわち、アンテナの正面方向に対してθの角度からの反射波を2つのアンテナで受信すると、それぞれの受信信号間には位相差Δφ=(2π/波長)・アンテナ間隔・sinθが生じる。よって、アンテナの間隔を狭くすることにより、位相の折り返しが生じる方位角を広げることができ、レーダ用アンテナ1が走査可能な範囲θX-Y
を広げることができる。位相の折り返しが生ずると、一つの位相差Δφの値に対して複数の方位の値θが対応してしまい、誤検知の原因となる。
【0024】
アレイアンテナで走査角を広くするために各アンテナの間隔を狭くする場合には、各アンテナを構成するアレイ数を少なくする必要があり、図4(a)に示すようにビーム幅が大きく指向性が劣る。各アンテナの間隔を広げれば少ないアレイ数で指向性を高めることができるが、図4(b)に示すようにサイドローブが増加する。一方、本実施形態に係るレーダ用アンテナ1のように、ホーンを導波管スロットアンテナ6に組み合わせれば、アンテナ間隔の自由度が高いため、図4(c)に示すように低サイドローブで指向性を高くできる。
【0025】
なお、上記レーダ用アンテナ1は、導波管スロットアンテナ6を6つ備えていたが、如何なる個数であってもよい。また、各導波管スロットアンテナ6の長さについても、レーダ用アンテナ1の仕様に応じて適宜決定する。
【0026】
高周波回路によって生成され、各導波管スロットアンテナ6から放射されるレーダ波は、障害物にあたると反射して再び各導波管スロットアンテナ6に入射される。各導波管スロットアンテナ6に入射したレーダ波は、高周波回路で復調されたのちに信号処理回路へ送られ、フーリエ変換等の各種処理が施され、障害物の位置の検出処理に供される。
【0027】
ところで、上記レーダ用アンテナ1は、次のように構成されている。図5は、レーダ用アンテナ1を構成する部材を示している。レーダ用アンテナ1は、図5に示すように、アンテナ本体部2の上側やホーン部3を構成する上部部材9と、アンテナ本体部2の下側を構成する下部部材10とを組み合わせて構成する。図5に示すように、各導波管4は、中央で上部部材9と下部部材10とによって上下に分割されていることにより、導波管4の壁面を流れる電流が隙間から漏れるのを押さえることができる。
【0028】
なお、レーダ用アンテナ1をレドームで覆う場合は、例えば、図6に示すように、レドーム11が各突出部7の頭頂部に接触するようにしてもよい。レドーム11を各突出部7の頭頂部に接触させれば、各導波管スロットアンテナ6から放射されてレドーム11で反射するレーダ波が、隣接する導波管スロットアンテナ6に入射しなくなる。すなわち、ホーン部3を構成する突出部7を壁として利用することにより、各導波管スロットアンテナ6間のアイソレーション効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・レーダ用アンテナ
2・・アンテナ本体部
3・・ホーン部
4・・導波管
5・・スロット
6・・導波管スロットアンテナ
7・・突出部
8・・車両
9・・上部部材
10・・下部部材
11・・レドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されて周辺の特定範囲を電子的に走査するレーダ用アンテナであって、
導波管スロットアンテナが複数並んだアンテナ本体と、
前記導波管スロットアンテナのスロットをスロットアンテナ毎に囲むホーンと、を備え、
前記アンテナ本体は、前記スロットが前記特定範囲に向けて開口し且つ、前記移動体の垂直方向に複数のスロットを設けた前記導波管スロットアンテナが、前記移動体の水平方向に複数並ぶ、
レーダ用アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ本体は、前記スロットを設けた導波管が板状の部材に並んで埋設されており、
前記ホーンは、前記スロットに隣接して前記アンテナ本体から突出する、各導波管に沿って延在する突出部によって、該スロットを導波管スロットアンテナ毎に囲む、
請求項1に記載のレーダ用アンテナ。
【請求項3】
前記ホーンの開口端に当接して前記各導波管スロットアンテナを覆うレドームを更に備える、
請求項1または2に記載のレーダ用アンテナ。
【請求項4】
移動体に搭載されて周辺の特定範囲を電子的に走査するレーダ装置であって、
送受信するレーダ波を処理する処理回路と、
導波管スロットアンテナが複数並んだアンテナ本体と、該導波管スロットアンテナのスロットをスロットアンテナ毎に囲むホーンとを有するレーダ用アンテナと、を備え、
前記アンテナ本体は、前記スロットが前記特定範囲に向けて開口し且つ、前記移動体の垂直方向に複数のスロットを設けた前記導波管スロットアンテナが、前記移動体の水平方向に複数並ぶ、
レーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−4700(P2012−4700A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135881(P2010−135881)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】