説明

レーダ装置

【課題】高精度にターゲットの位置を算出することができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】送受信兼用モジュール1および受信モジュール2と、送信波とターゲット5からの反射波とに基づいて、ターゲット5の位置を算出するターゲット位置算出部3とを備え、送受信兼用モジュール1は、パルス信号を発生するパルス発生器14と、送信パルスを送信波として送信し、反射波を第1受信パルスとして受信する送受信兼用アンテナ16と、パルス信号に対する第1受信パルスの時間遅れ(第1遅延時間τ0)を測定する第1遅延時間測定部20とを含み、受信モジュール2は、反射波を第2受信パルスとして受信する受信アンテナ21と、パルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れ(第2遅延時間τ1)を測定する第2遅延時間測定部26とを含み、ターゲット位置算出部3は、第1遅延時間τ0と第2遅延時間τ1とから、ターゲット5の位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両等の移動体に搭載され、対象物体(以下、「ターゲット」と称する)を検知してその位置を算出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置は、パルス状のレーダ波を送信してから、レーダ波を反射したターゲットからの反射波を受信するまでの往復時間に基づいて、ターゲットまでの距離及び方位を求める装置であって、レーダ波を送信するための送信アンテナを備えた送信モジュールと、送信モジュールの両側にそれぞれ配置され、反射波を受信するための受信アンテナを備えた複数の受信モジュールと、送信モジュールと送信モジュールに隣接する各受信モジュールとの間に配置され、送信アンテナからの直接波が受信アンテナにて受信されることを防止する遮蔽板とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来装置では、送信モジュールが送信アンテナを介してパルス状のレーダ波(電磁波)を送信し、複数の受信モジュールの受信アンテナが、ターゲットで反射した反射波をそれぞれ受信する。
続いて、各受信モジュールの時間差計測部は、レーダ波の送信から反射波の受信までの往復時間をそれぞれ計測する。
距離、角度演算部は、各受信モジュールで計測された往復時間に基づいて、各受信モジュールからターゲットまでの距離を算出し、算出した距離から、三角測量の原理に基づいてターゲットの位置を算出している。
【0004】
例えば、上記従来装置において、受信モジュールを2個(受信モジュールAおよび受信モジュールB)とした場合、受信モジュールAおよび受信モジュールBの時間差計測部でそれぞれ計測される往復時間t1およびt2は、送信モジュールからターゲットまでの距離をL0、ターゲットから受信モジュールAまでの距離をL1、ターゲットから受信モジュールBまでの距離をL2、レーダ波の速度をcとすると、それぞれ次式(1)および次式(2)で表される。
【0005】
t1=(L0+L1)/c・・・(1)
t2=(L0+L2)/c・・・(2)
【0006】
ここで、式(1)および式(2)において、二つの式に対して距離L0、L1、L2の三つの未知数が含まれている。
したがって、三角測量の原理に基づく式(1)および式(2)からなる連立方程式を解き、距離L0、L1、L2を算出することができないので、ターゲットの位置を算出することができないという問題点があった。
【0007】
上記の問題点を解決するために、距離L0と距離L1との平均値を次式(3)に示すように距離L01とみなし、距離L0と距離L2との平均値を次式(4)に示すように距離L02とみなして、距離L01および距離L02を用いて上記式(1)および上記式(2)を解くことにより、三角測量の原理からターゲットの位置を算出することが考えられる。
【0008】
L01=(L0+L1)/2・・・(3)
L02=(L0+L2)/2・・・(4)
【0009】
しかしながら、この場合には、ターゲットの位置によって送信モジュールからターゲットまでの距離L0の影響が大きくなり、誤差が拡大してターゲットの位置を正確に検出することができないという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】特開2003−279649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のレーダ装置では、前述のように、二つの式に対して距離L0、L1、L2の三つの未知数が含まれるので、ターゲットの位置を算出することができないという問題点があった。
また、距離L0と距離L1との平均値を距離L01とみなし、距離L0と距離L2との平均値を距離L02とみなして未知数を減らした場合であっても、ターゲットの位置によって誤差の影響が大きくなり、ターゲットの位置を正確に算出することができないという問題点があった。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、高精度にターゲットの位置を算出することができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るレーダ装置は、互いに所定の間隔をおいて設けられた送受信兼用モジュールおよび受信モジュールと、送受信兼用モジュールから送信される送信波と、対象物体で反射して送受信兼用モジュールおよび受信モジュールでそれぞれ受信される反射波とに基づいて、対象物体の位置を算出するターゲット位置算出手段とを備え、送受信兼用モジュールは、所定のタイミングでパルス信号を発生するパルス発生手段と、パルス信号に応じてパルス状に変調された送信パルスを、送信波として周辺に送信するとともに、対象物体からの反射波を第1受信パルスとして受信する送受信兼用アンテナと、パルス信号に対する第1受信パルスの時間遅れを、第1遅延時間として測定する第1遅延時間測定手段とを含み、受信モジュールは、対象物体で反射した送受信兼用モジュールからの送信波を第2受信パルスとして受信する受信アンテナと、パルス発生手段からのパルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れを、第2遅延時間として測定する第2遅延時間測定手段とを含み、ターゲット位置算出手段は、第1遅延時間と第2遅延時間とに基づいて、対象物体の位置を算出するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明のレーダ装置によれば、送受信兼用モジュールの送受信兼用アンテナは、パルス信号に応じてパルス状に変調された送信パルスを送信波として周辺に送信するとともに、ターゲット(対象物体)からの反射波を第1受信パルスとして受信する。
すなわち、送受信兼用アンテナからターゲットまでの送信波の経路と、ターゲットから送受信兼用アンテナまでの反射波の経路とを同経路として、距離を共通にすることにより、未知数を減らすことができる。
そのため、ターゲット位置算出手段は、第1遅延時間と第2遅延時間とに基づいて、ターゲットの位置を高精度に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。
図1において、レーダ装置は、互いに間隔d(所定の間隔)をおいて設けられた送受信兼用モジュール1および受信モジュール2と、送受信兼用モジュール1から送信される送信波と、ターゲット(後述する)で反射して送受信兼用モジュール1および受信モジュール2でそれぞれ受信される反射波とに基づいて、ターゲットの位置を算出するターゲット位置算出部3(ターゲット位置算出手段)と、送受信兼用モジュール1、受信モジュール2およびターゲット位置算出部3にそれぞれタイミング信号等の制御信号を出力して動作を制御する制御部4とを備えている。
【0017】
送受信兼用モジュール1は、発振器11と、分配回路12と、スイッチ13と、パルス発生器14(パルス発生手段)と、サーキュレータ15と、送受信兼用アンテナ16と、ミクサ17と、IFアンプ18と、検波器19と、第1遅延時間測定部20(第1遅延時間測定手段)とを含んでいる。
【0018】
また、受信モジュール2は、受信アンテナ21と、ミクサ22と、ローカル発振器23と、IFアンプ24と、検波器25と、第2遅延時間測定部26(第2遅延時間測定手段)とを含んでいる。
【0019】
発振器11は、制御部4からの制御信号により、一定周波数の高周波信号を発生し、分配回路12に出力する。
分配回路12は、発振器11から入力された高周波信号の一部をスイッチ13に出力し、高周波信号の残りをミクサ17に出力する。
パルス発生器14は、制御部4からの制御信号により、例えば一定周期の所定のタイミングでパルス信号を発生し、スイッチ13、第1遅延時間測定部20、および受信モジュール2の第2遅延時間測定部26に出力する。
【0020】
スイッチ13は、制御部4からの制御信号により、パルス発生器14からのパルス信号に同期してオンオフされ、分配回路12から入力された一定周波数の高周波信号をパルス状に振幅変調し、送信パルスとしてサーキュレータ15に出力する。
サーキュレータ15は、送信パルスの進行方向を切り替えて、送信パルスを送受信兼用アンテナ16に出力する。
送受信兼用アンテナ16は、サーキュレータ15から入力された送信パルスを送信波(電磁波)として周辺に送信する。
【0021】
送受信兼用アンテナ16から送信された送信波は、送信範囲内にターゲットが存在した場合にターゲットで反射し、ターゲットまでの距離に応じた第1遅延時間τ0をもって、第1受信パルスとして送受信兼用アンテナ16に受信されて、サーキュレータ15に出力される。
サーキュレータ15は、第1受信パルスの進行方向を切り替えて、第1受信パルスをミクサ17に出力する。
【0022】
ミクサ17は、分配回路12から入力された一定周波数の高周波信号と、サーキュレータ15から入力された第1受信パルスとをミキシングして中間周波数信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と略称する)を生成し、IFアンプ18に出力する。
IFアンプ18は、ミクサ17から入力されたIF信号を増幅して検波器19に出力する。
【0023】
検波器19は、IFアンプ18から入力されたIF信号から、振幅波形が送信パルスの振幅波形から第1遅延時間τ0だけ遅れた信号を取り出し、検波信号として第1遅延時間測定部20に出力する。
第1遅延時間測定部20は、制御部4からの制御信号により、検波器19から入力された検波信号と、パルス発生器14から入力されたパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する第1受信パルスの時間遅れを、第1遅延時間τ0として測定する。
ここで、送信パルスは、パルス信号に同期して生成されるので、パルス信号に対する第1受信パルスの時間遅れを測定することにより、送信パルスに対する第1受信パルスの時間遅れ(第1遅延時間τ0)を求めることができる。
【0024】
また、受信アンテナ21は、ターゲットで反射した送受信兼用アンテナ16からの送信波を、送受信兼用アンテナ16からターゲットまでの距離と、ターゲットから受信アンテナ21までの距離とに応じた第2遅延時間τ1をもって、第2受信パルスとして受信し、ミクサ22に出力する。
【0025】
ローカル発振器23は、制御部4からの制御信号により、発振器11から発生される高周波信号と同一周波数の高周波信号を発生し、ミクサ22に出力する。
ミクサ22は、ローカル発振器23から入力された高周波信号と、受信アンテナ21から入力された第2受信パルスとをミキシングしてIF信号を生成し、IFアンプ24に出力する。
IFアンプ24は、ミクサ22から入力されたIF信号を増幅して検波器25に出力する。
【0026】
検波器25は、IFアンプ24から入力されたIF信号から、振幅波形が送信パルスの振幅波形から第2遅延時間τ1だけ遅れた信号を取り出し、検波信号として第2遅延時間測定部26に出力する。
第2遅延時間測定部26は、制御部4からの制御信号により、検波器25から入力された検波信号と、パルス発生器14から入力されたパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れを、第2遅延時間τ1として測定する。
ここで、送信パルスは、パルス信号に同期して生成されるので、パルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れを測定することにより、送信パルスに対する第2受信パルスの時間遅れ(第2遅延時間τ1)を求めることができる。
【0027】
ターゲット位置算出部3は、制御部4からの制御信号により、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0と、第2遅延時間測定部26から出力された第2遅延時間τ1とに基づいて、ターゲットの位置を算出し、算出結果を表示装置等の外部装置(図示せず)に出力する。
ここで、第1遅延時間測定部20、第2遅延時間測定部26およびターゲット位置算出部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、あるいはCPUおよびDSP(Digital Signal Processor)で構成されている。
【0028】
以下、図1とともに、図2を参照しながら、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作について説明する。
図2は、この発明の実施の形態1による送受信兼用アンテナ16および受信アンテナ21と、ターゲット5との関係を示す説明図である。
図2において、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの距離をL0(破線参照)、ターゲット5から受信アンテナ21までの距離をL1(破線参照)とする。また、送受信兼用アンテナ16と受信アンテナ21とは、互いに間隔dをおいて設けられている。
【0029】
まず、制御部4からの制御信号により、発振器11から高周波信号が発生される。高周波信号は、スイッチ13の動作によってパルス状に振幅変調され、送信パルスとして出力される。送信パルスは、送受信兼用アンテナ16から送信波として周辺に送信される。
【0030】
続いて、送信波は、ターゲット5で反射し、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの距離L0に応じた第1遅延時間τ0をもって、第1受信パルスとして送受信兼用アンテナ16に受信される。
第1受信パルスは、ミクサ17で発振器11からの高周波信号とミキシングされ、IF信号が生成される。
【0031】
次に、検波器19でIF信号から検波信号が取り出される。
続いて、第1遅延時間測定部20において、検波器19からの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、第1遅延時間τ0が測定され、ターゲット位置算出部3に出力される。
【0032】
また、ターゲット5で反射した送受信兼用アンテナ16からの送信波は、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの距離L0と、ターゲット5から受信アンテナ21までの距離L1とに応じた第2遅延時間τ1をもって、第2受信パルスとして受信アンテナ21に受信される。
第2受信パルスは、ミクサ22でローカル発振器23からの高周波信号とミキシングされ、IF信号が生成される。
【0033】
次に、検波器25でIF信号から検波信号が取り出される。
続いて、第2遅延時間測定部26において、検波器25からの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、第2遅延時間τ1が測定され、ターゲット位置算出部3に出力される。
【0034】
ターゲット位置算出部3は、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0と、第2遅延時間測定部26から出力された第2遅延時間τ1とに基づいて、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの距離L0、およびターゲット5から受信アンテナ21までの距離L1を算出する。
ここで、送信波の速度をcとすると、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの距離L0、およびターゲット5から受信アンテナ21までの距離L1は、次式(5)および次式(6)で表される。
【0035】
L0=c×τ0/2・・・(5)
L1=c×τ1−L0・・・(6)
【0036】
ターゲット位置算出部3は、式(5)および式(6)からなる連立方程式を解き、算出した距離L0、L1から、図2に示すように、三角測量の原理(点線参照)に基づいてターゲット5の位置を算出する。
【0037】
この発明の実施の形態1に係るレーダ装置によれば、送受信兼用モジュール1の送受信兼用アンテナ16は、パルス状に振幅変調された送信パルスを送信波として周辺に送信するとともに、ターゲット5からの反射波を第1受信パルスとして受信する。
すなわち、送受信兼用アンテナ16からターゲット5までの送信波の経路と、ターゲット5から送受信兼用アンテナ16までの反射波の経路とを同経路として、距離L0を共通にすることにより、未知数を減らすことができる。
そのため、ターゲット位置算出部3は、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0と、第2遅延時間測定部26から出力された第2遅延時間τ1とに基づいて距離L0、L1を算出し、ターゲット5の位置を高精度に算出することができる。
【0038】
また、ターゲット位置算出部3は、1個の送受信兼用モジュール1と1個の受信モジュール2との二つの観測点でターゲット5までの距離を算出し、ターゲット5の位置を算出するので、構造を簡略化することができる。
【0039】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、1個の送受信兼用モジュール1と1個の受信モジュール2とを用いてターゲット5の位置を算出したが、これに限定されず、受信モジュール2は、複数個設けられてもよい。
図3は、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。なお、ここでは、受信モジュール2が2個設けられた場合について説明する。
【0040】
図3において、レーダ装置は、送受信兼用モジュール1と、送受信兼用モジュール1とそれぞれ間隔d/2(所定の間隔)をおいて異なる位置に設けられた2個の受信モジュール2A、2Bと、送受信兼用モジュール1から送信される送信波、およびターゲット(図示せず)で反射して送受信兼用モジュール1および受信モジュール2A、2Bでそれぞれ受信される反射波に基づいて、ターゲットの位置を算出するターゲット位置算出部3A(ターゲット位置算出手段)と、送受信兼用モジュール1、受信モジュール2A、2Bおよびターゲット位置算出部3Aにそれぞれタイミング信号等の制御信号を出力して動作を制御する制御部4Aとを備えている。
ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「A」および「B」を付して、詳述を省略する。
【0041】
受信モジュール2Aの第2遅延時間測定部26Aは、制御部4Aからの制御信号により、検波器25Aから入力された検波信号と、パルス発生器14から入力されたパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れを、第2遅延時間τ1として測定する。
また、受信モジュール2Bの第2遅延時間測定部26Bは、制御部4Aからの制御信号により、検波器25Bから入力された検波信号と、パルス発生器14から入力されたパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する第2受信パルスの時間遅れを、第2遅延時間τ2として測定する。
【0042】
ターゲット位置算出部3Aは、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0と、第2遅延時間測定部26Aから出力された第2遅延時間τ1と、第2遅延時間測定部26Bから出力された第2遅延時間τ2とに基づいて、ターゲットの位置を算出し、算出結果を表示装置等の外部装置(図示せず)に出力する。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0043】
以下、図3とともに、この発明の実施の形態2によるレーダ装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
ここで、ターゲットから受信アンテナ21Bまでの距離をL2とする。
【0044】
まず、ターゲットで反射した送受信兼用アンテナ16からの送信波は、送受信兼用アンテナ16からターゲットまでの距離L0と、ターゲットから受信アンテナ21Aまでの距離L1とに応じた第2遅延時間τ1をもって、第2受信パルスとして受信アンテナ21Aに受信される。
第2受信パルスは、ミクサ22Aでローカル発振器23Aからの高周波信号とミキシングされ、IF信号が生成される。
【0045】
次に、検波器25AでIF信号から検波信号が取り出される。
続いて、第2遅延時間測定部26Aにおいて、検波器25Aからの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、第2遅延時間τ1が測定され、ターゲット位置算出部3Aに出力される。
【0046】
また、ターゲットで反射した送受信兼用アンテナ16からの送信波は、送受信兼用アンテナ16からターゲットまでの距離L0と、ターゲットから受信アンテナ21Bまでの距離L2とに応じた第2遅延時間τ2をもって、第2受信パルスとして受信アンテナ21Bに受信される。
第2受信パルスは、ミクサ22Bでローカル発振器23Bからの高周波信号とミキシングされ、IF信号が生成される。
【0047】
次に、検波器25BでIF信号から検波信号が取り出される。
続いて、第2遅延時間測定部26Bにおいて、検波器25Bからの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、第2遅延時間τ2が測定され、ターゲット位置算出部3Aに出力される。
【0048】
次に、ターゲット位置算出部3Aは、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0と、第2遅延時間測定部26Aから出力された第2遅延時間τ1と、第2遅延時間測定部26Bから出力された第2遅延時間τ2とに基づいて、送受信兼用アンテナ16からターゲットまでの距離L0、ターゲットから受信アンテナ21Aまでの距離L1、およびターゲットから受信アンテナ21Bまでの距離L2を算出する。
ここで、ターゲットから受信アンテナ21Bまでの距離L2は、次式(7)で表される。
【0049】
L2=c×τ2−L0・・・(7)
【0050】
ターゲット位置算出部3Aは、前述した式(5)および式(6)と、上記式(7)とからなる連立方程式を解き、算出した距離L0、L1、L2から、三角測量の原理に基づいてターゲットの位置を算出する。
【0051】
この発明の実施の形態2に係るレーダ装置によれば、ターゲット位置算出部3Aは、1個の送受信兼用モジュール1と2個の受信モジュール2A、2Bとの三つの観測点でターゲットまでの距離を算出するので、ターゲットの位置をより高精度に算出することができる。
【0052】
なお、上記実施の形態2では、受信モジュール2が2個設けられた場合について説明したが、これに限定されず、受信モジュール2は、3個以上設けられてもよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0053】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、ターゲットが1個である場合について説明したが、これに限定されず、ターゲットは、複数個存在してもよい。
このとき、ターゲット位置算出部3Aは、複数個のターゲットの位置をそれぞれ算出する。
【0054】
なお、ターゲットが2個存在する場合、例えば、特開平5−256941号公報に記載されたFMレーダ装置では、二つのFMレーダ本体によって、各FMレーダ本体のアンテナから、2個のターゲットまでの距離のみがそれぞれ算出される。
すなわち、図5に示すように、アンテナ50Aからターゲット51A、51Bの何れかまでの距離L1_a、L1_b(破線参照)と、アンテナ50Bからターゲット51A、51Bの何れかまでの距離L2_a、L2_b(破線参照)とが算出される。
ここで、電磁波の受信強度等を用いて各距離の組合せ(例えば、点線で示すようにターゲット51Aは、距離L1_aと距離L2_aとの組合せ、またターゲット51Bは、距離L1_bと距離L2_bとの組合せ)を選択しない場合には、異なる距離どうしを組み合わせて、例えばターゲット52Aおよびターゲット52Bという、誤ったターゲットの位置を算出するという問題点があった。
【0055】
以下に、ターゲット位置算出部3Aが、複数個のターゲットの位置をそれぞれ算出する処理について説明する。なお、ここでは、ターゲットが2個存在する場合について説明する。
この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成は、前述の実施の形態2で示したものと同様であるので、詳述を省略する。
【0056】
なお、送受信兼用モジュール1の第1遅延時間測定部20は、2個のターゲットでそれぞれ反射して送受信兼用アンテナ16で受信された二つの第1受信パルスについて、第1遅延時間τ0_1、τ0_2をそれぞれ測定する。
また、受信モジュール2Aの第2遅延時間測定部26Aは、2個のターゲットでそれぞれ反射して受信アンテナ21Aで受信された二つの第2受信パルスについて、第2遅延時間τ1_1、τ1_2をそれぞれ測定する。
また、受信モジュール2Bの第2遅延時間測定部26Bは、2個のターゲットでそれぞれ反射して受信アンテナ21Bで受信された二つの第2受信パルスについて、第2遅延時間τ2_1、τ2_2をそれぞれ測定する。
【0057】
また、ターゲット位置算出部3Aは、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0_1、τ0_2と、第2遅延時間測定部26Aから出力された第2遅延時間τ1_1、τ1_2と、第2遅延時間測定部26Bから出力された第2遅延時間τ2_1、τ2_2とに基づいて、複数個のターゲットの位置をそれぞれ算出し、算出結果を表示装置等の外部装置(図示せず)に出力する。
【0058】
以下、図3とともに、図4を参照しながら、この発明の実施の形態3によるレーダ装置の動作について説明する。なお、実施の形態2と同様の動作については、説明を省略する。
図4は、この発明の実施の形態3による送受信兼用アンテナ16、受信アンテナ21Aおよび受信アンテナ21Bと、2個のターゲット5A、5Bとの関係を示す説明図である。
【0059】
図4において、送受信兼用アンテナ16からターゲット5Aおよびターゲット5Bまでの距離をそれぞれL0_aおよびL0_b(破線参照)、ターゲット5Aから受信アンテナ21Aおよび受信アンテナ21Bまでの距離をそれぞれL1_aおよびL2_a(破線参照)、ターゲット5Bから受信アンテナ21Aおよび受信アンテナ21Bまでの距離をそれぞれL1_bおよびL2_b(破線参照)とする。
また、送受信兼用アンテナ16と受信アンテナ21Aとは、互いに間隔d/2をおいて設けられ、送受信兼用アンテナ16と受信アンテナ21Bとは、互いに間隔d/2をおいて設けられ、三者は、受信アンテナ21A、送受信兼用アンテナ16、受信アンテナ21Bの順に、一直線上に配設されている。
【0060】
まず、第1遅延時間測定部20において、検波器19からの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する二つの第1受信パルスの第1遅延時間τ0_1、τ0_2が測定され、ターゲット位置算出部3Aに出力される。
続いて、第2遅延時間測定部26Aにおいて、検波器25Aからの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する二つの第2受信パルスの第2遅延時間τ1_1、τ1_2が測定され、ターゲット位置算出部3Aに出力される。
次に、第2遅延時間測定部26Bにおいて、検波器25Bからの検波信号と、パルス発生器14からのパルス信号とに基づいて、パルス信号に対する二つの第2受信パルスの第2遅延時間τ2_1、τ2_2が測定され、ターゲット位置算出部3Aに出力される。
【0061】
続いて、ターゲット位置算出部3Aは、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0_1、τ0_2に基づいて、送受信兼用アンテナ16からターゲット5A、5Bの何れかまでの距離L0_1、L0_2を算出する。
ここで、送受信兼用アンテナ16からターゲット5A、5Bの何れかまでの距離L0_1、L0_2は、次式(8)および次式(9)で表される。
【0062】
L0_1=c×τ0_1/2・・・(8)
L0_2=c×τ0_2/2・・・(9)
【0063】
次に、ターゲット位置算出部3Aは、第2遅延時間測定部26Aから出力された第2遅延時間τ1_1、τ1_2と、式(8)および式(9)から算出された距離L0_1、L0_2とに基づいて、ターゲット5A、5Bの何れかから、受信アンテナ21Aまでの距離L1_11、L1_12、L1_21、L1_22を算出する。
ここで、ターゲット5A、5Bの何れかから、受信アンテナ21Aまでの距離L1_11、L1_12、L1_21、L1_22は、次式(10)〜次式(13)で表される。
【0064】
L1_11=c×τ1_1−L0_1・・・(10)
L1_12=c×τ1_1−L0_2・・・(11)
L1_21=c×τ1_2−L0_1・・・(12)
L1_22=c×τ1_2−L0_2・・・(13)
【0065】
また、ターゲット位置算出部3Aは、第2遅延時間測定部26Bから出力された第2遅延時間τ2_1、τ2_2と、式(8)および式(9)から算出された距離L0_1、L0_2とに基づいて、ターゲット5A、5Bの何れかから、受信アンテナ21Bまでの距離L2_11、L2_12、L2_21、L2_22を算出する。
ここで、ターゲット5A、5Bの何れかから、受信アンテナ21Bまでの距離L2_11、L2_12、L2_21、L2_22は、次式(14)〜次式(17)で表される。
【0066】
L2_11=c×τ2_1−L0_1・・・(14)
L2_12=c×τ2_1−L0_2・・・(15)
L2_21=c×τ2_2−L0_1・・・(16)
L2_22=c×τ2_2−L0_2・・・(17)
【0067】
続いて、ターゲット位置算出部3Aは、式(8)〜式(17)から算出される距離L0_1、L0_2と、距離L1_11、L1_12、L1_21、L1_22と、距離L2_11、L2_12、L2_21、L2_22とから、図4に示す三角測量の原理(点線参照)に基づく連立方程式が成立する距離の組合せを選択して、ターゲット5A、5Bの位置をそれぞれ算出する。
【0068】
すなわち、まず、ターゲット位置算出部3Aは、距離L0_1、L0_2と、距離L1_11、L1_12、L1_21、L1_22と、距離L2_11、L2_12、L2_21、L2_22とについて、次式(18)が成立する距離の組合せ(L0_i、L1_ji、L2_ki:i、j、kはそれぞれ1または2)を選択する。
【0069】
L1_ji×L1_ji+L2_ki×L2_ki=2×L0_i×L0_i+d×d/2・・・(18)
【0070】
続いて、ターゲット位置算出部3Aは、距離L1_ji、L2_kiについて、三角測量の原理に基づいて連立方程式を解き、ターゲット5A、5Bの位置をそれぞれ算出する。
【0071】
この発明の実施の形態3に係るレーダ装置によれば、第1遅延時間測定部20は、2個のターゲット5A、5Bでそれぞれ反射して送受信兼用アンテナ16で受信された二つの第1受信パルスについて、第1遅延時間τ0_1、τ0_2をそれぞれ測定する。
また、第2遅延時間測定部26Aおよび第2遅延時間測定部26Bは、2個のターゲット5A、5Bでそれぞれ反射して受信アンテナ21Aおよび受信アンテナ21Bで受信された二つの第2受信パルスについて、第2遅延時間τ1_1、τ1_2および第2遅延時間τ2_1、τ2_2をそれぞれ測定する。
また、ターゲット位置算出部3Aは、第1遅延時間測定部20から出力された第1遅延時間τ0_1、τ0_2と、第2遅延時間測定部26Aから出力された第2遅延時間τ1_1、τ1_2と、第2遅延時間測定部26Bから出力された第2遅延時間τ2_1、τ2_2とに基づいて、ターゲット5A、5Bの位置をそれぞれ算出する。
そのため、ターゲットの数が2個であっても、誤検知を低減して、ターゲット5A、5Bの位置を高精度に算出することができる。
【0072】
なお、上記実施の形態3では、ターゲット5が2個存在する場合について説明したが、これに限定されず、ターゲット5は、3個以上存在してもよい。
この場合も、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による送受信兼用アンテナおよび受信アンテナと、ターゲットとの関係を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3による送受信兼用アンテナおよび2個の受信アンテナと、2個のターゲットとの関係を示す説明図である。
【図5】従来の2個のアンテナと、2個のターゲットとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 送受信兼用モジュール、2、2A、2B 受信モジュール、3、3A ターゲット位置算出部(ターゲット位置算出手段)、5、5A、5B ターゲット(対象物体)、14 パルス発生器(パルス発生手段)、16 送受信兼用アンテナ、20 第1遅延時間測定部(第1遅延時間測定手段)、21、21A、21B 受信アンテナ、26、26A、26B 第2遅延時間測定部(第2遅延時間測定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の間隔をおいて設けられた送受信兼用モジュールおよび受信モジュールと、
前記送受信兼用モジュールから送信される送信波と、対象物体で反射して前記送受信兼用モジュールおよび前記受信モジュールでそれぞれ受信される反射波とに基づいて、前記対象物体の位置を算出するターゲット位置算出手段とを備え、
前記送受信兼用モジュールは、
所定のタイミングでパルス信号を発生するパルス発生手段と、
前記パルス信号に応じてパルス状に変調された送信パルスを、前記送信波として周辺に送信するとともに、前記対象物体からの前記反射波を第1受信パルスとして受信する送受信兼用アンテナと、
前記パルス信号に対する前記第1受信パルスの時間遅れを、第1遅延時間として測定する第1遅延時間測定手段とを含み、
前記受信モジュールは、
前記対象物体で反射した前記送受信兼用モジュールからの前記送信波を第2受信パルスとして受信する受信アンテナと、
前記パルス発生手段からの前記パルス信号に対する前記第2受信パルスの時間遅れを、第2遅延時間として測定する第2遅延時間測定手段とを含み、
前記ターゲット位置算出手段は、前記第1遅延時間と前記第2遅延時間とに基づいて、前記対象物体の位置を算出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記受信モジュールは、複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記対象物体は、複数の対象物体からなり、
前記第1遅延時間測定手段は、前記複数の対象物体で反射して受信された複数の第1受信パルスについて複数の第1遅延時間を測定し、
前記第2遅延時間測定手段は、前記複数の対象物体で反射して受信された複数の第2受信パルスについて複数の第2遅延時間を測定し、
前記ターゲット位置算出手段は、前記複数の第1遅延時間および前記複数の第2遅延時間に基づいて、前記複数の対象物体の位置をそれぞれ算出することを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−122137(P2008−122137A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303855(P2006−303855)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】