説明

レーダ装置

【課題】装置を大型化することなく、異なる複数の周波数により連続して送受信を行うことが可能なレーダ装置を提供する。
【解決手段】所定の切替周期で互いに異なる周波数の送受信信号を切り替えて送受信を行うレーダ装置において、送受信周波数の切替周期と局部発振器の周波数が安定するまでの安定化期間との関係に基づいて決定する個数の局部発振器が設けられる。周波数設定器1は、タイミング生成器4により入力されるタイミング信号にしたがって局部発振器21〜23により生成される局部発振信号の周波数を設定する。局部発振器21〜23で生成された局部発振信号は、タイミング生成器4によるタイミング信号にしたがって周波数選択器3により選択されたのち、分配器5により分配されて周波数変換器7,11にそれぞれ入力される。周波数変換器7,11は、入力された局部発振信号により送受信信号の周波数を変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、航空管制用の一次レーダに係わり、特に周期的に複数の周波数に切り替えて送受信を行うレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空港監視レーダ(Airport Surveillance Radar;ASR)は、空港周辺空域にある航空機の進入管制および出発管制を行うものである(非特許文献1を参照。)。航空管制用の一次レーダでは、目標を見やすくするために、周期的に複数の周波数に切り換えてパルスを送受信する。予め定められた固定した複数の周波数f1、f2、・・・fNを使用して送受信を行う一次レーダにおいて、1個のシンセサイザを内蔵する「局部発振器」を用いて周波数を設定する場合、周波数が安定するまでに一定の安定化期間が必要であるため、送信周波数の設定時間とこの安定時間の間は送受信を停止しなければならない。従来、この送受信停止期間を回避する場合には、切り替える周波数の個数分、すなわちN個の局部発振器を設ける必要があった。
【非特許文献1】改訂 レーダ技術、社団法人 電子情報通信学会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来、周期的に複数の周波数に切り替えて送受信を行う場合には、切り替える周波数の個数分の局部発振器を設ける必要があった。このため、局部発振器の数が増えて装置が大型化かつ複雑化し、コストの負担が増大するという課題があった。
【0004】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、装置を大型化することなく、異なる複数の周波数により連続して送受信を行うことが可能なレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明に係るレーダ装置は、所定の切替周期で互いに異なる周波数の送受信信号を切り替えて送受信を行うレーダ装置であって、局部発振信号をそれぞれ生成する複数の局部発振器と、前記複数の局部発振器により生成される局部発振信号の周波数を設定する設定手段と、前記複数の局部発振器によりそれぞれ生成された局部発振信号を選択する選択手段と、前記設定手段及び前記選択手段を前記切替周期で切り替えるタイミング信号を送出するタイミング生成手段と、前記選択手段により選択された局部発振信号により前記送受信信号の周波数を変換する変換手段とを具備し、前記切替周期と前記局部発振器の周波数が安定するまでの安定化期間との関係に基づいて前記局部発振器の個数を決定することを特徴とする。
【0006】
上記構成によるレーダ装置では、送受信周波数の種類の数に関わらず切替周期と安定化期間との関係に基づいて決まる個数の局部発振器を設けるようにしている。このようにすることで、局部発振器の個数を減らすことができるため、装置を大型化することなく、異なる複数の周波数により連続して送受信を行うことが可能なレーダ装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
したがってこの発明によれば、装置を大型化することなく、異なる複数の周波数により連続して送受信を行うことが可能なレーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係るレーダ装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
このレーダ装置は、周波数設定器1と、局部発振器21,22,23と、周波数選択器3と、タイミング生成器4と、分配器5と、DA変換器6と、送信用周波数変換器7と、送信機8と、サーキュレータ9と、空中線装置10と、受信用周波数変換器11と、AD変換器12とを備える。
【0009】
周波数設定器1は、タイミング生成器4から供給されるタイミング信号に基づいて局部発振器21〜23に周波数を設定する。局部発振器21〜23は、周波数設定器1によりそれぞれ設定された周波数の局部発振信号を生成する。周波数選択器3は、タイミング生成器4から供給されるタイミング信号に基づいて局部発振器21〜23で生成された局部発振信号のいずれかを選択して分配器5に入力する。分配器5は、周波数選択器3により選択された局部発振信号を分配し、送信用周波数変換器7と受信用周波数変換器11とにそれぞれ入力する。
【0010】
送信用周波数変換器7はDA変換器6により生成されるIF周波数信号を局部発振信号によりRF周波数に変換し送信機8へ出力する。送信機8で増幅されたRF信号はサーキュレータ9を経由し空中線装置10へ供給され、空間に放射される。一方、受信信号は空中線装置10で受信され、サーキュレータ9を経由し受信用周波数変換器11に入力される。受信用周波数変換器11でRF信号からIF信号に変換された信号はAD変換器12に入力される。
【0011】
次に、このように構成されたレーダ装置における動作について説明する。図2は、タイミング生成器4における周波数設定タイミングを説明する図である。このレーダ装置は、周波数f1〜fNまでの周波数により繰り返して送受信を行うものとする。
局部発振器21を用いて周波数f1で送受信している間に、周波数設定器1は、タイミング生成器4の生成するタイミング信号にしたがって局部発振器23に周波数f3を設定する。局部発振器23が周波数f3を安定するまでの安定化期間が切替周期に相当する場合、次の送信は局部発振器22により周波数f2で送受信する。以降、その送受信タイミングに合わせて局部発振器21〜23に対して順次繰り返して周波数fNまで設定する。
【0012】
一方、送受信は周波数選択器3において局部発振器21,22,23の順番で選択された局部発振信号を送信用周波数変換器7及び受信用周波数変換器11へ入力する。引き続き局部発振器21がf4の周波数を設定するようにし、周波数がN種ある場合、その数値に至るまで局部発振器21から局部発振器23を順次繰り返し使用する。
【0013】
ここで、局部発振器の個数は、安定化期間が切替周期のM(Mは自然数)周期分であるとき、M+1個の局部発振器を備えるようにする。例えば、図2において、周波数の設定から安定するまでの安定化期間が切替周期の2周期分に相当するので、3個の局部発振器を設ければよい。このようにすることで、周波数の種類Nに関わらず切替周期と安定化期間との関係に基づいて決まる個数の局部発振器で送受信を実現することが可能となる。
【0014】
通常、シンセサイザを用いて周波数を設定する場合、周波数が安定するまでに一定の安定時間が必要であるため、送信周波数を設定して安定するまでの安定化期間は送受信を停止しなければならない。この送受信停止期間を避けようとする場合、一般的には、局部発振器をN個用意し、個々にあらかじめ定められた周波数を設定して順次切り替える手法が用いられる。しかし、周波数の種類に対応する個数分の局部発振器を用意する必要が生じるため、装置が大型化かつ複雑化し、コストが増大してしまうという問題があった。
【0015】
これに対し、上記実施形態では、周波数の種類の数に関わらず切替周期と安定化期間との関係に基づいて決まる個数の局部発振器を設けるようにしている。具体的には、例えば、局部発振器の安定化期間が送受信繰り返し周期のM周期分にわたる場合において、M+1個の局部発振器を用いるようにし、個々の局部発振器の周波数を交互に変更し、安定化期間は他方の局部発振器により送信を行うようにする。このようにすることで、送受信周波数の種類の数によらず局部発振器の個数を限定することが可能となる。
【0016】
したがって上記実施形態によれば、局部発振器の個数を減らすことができるため、装置を大型化することなく、異なる複数の周波数により連続して送受信を行うことが可能なレーダ装置を提供することが可能となる。
【0017】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るレーダ装置の一実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1に示すレーダ装置の周波数設定切替タイミングを示す図。
【符号の説明】
【0019】
1…周波数設定器、21〜23…局部発振器、3…周波数選択器、4…タイミング生成器、5…分配器、6…DA変換器、7…送信用周波数変換器、8…送信機、9…サーキュレータ、10…空中線装置、11…受信用周波数変換器、12…AD変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の切替周期で互いに異なる周波数の送受信信号を切り替えて送受信を行うレーダ装置であって、
局部発振信号をそれぞれ生成する複数の局部発振器と、
前記複数の局部発振器により生成される局部発振信号の周波数を設定する設定手段と、
前記複数の局部発振器によりそれぞれ生成された局部発振信号を選択する選択手段と、
前記設定手段及び前記選択手段を前記切替周期で切り替えるタイミング信号を送出するタイミング生成手段と、
前記選択手段により選択された局部発振信号により前記送受信信号の周波数を変換する変換手段と
を具備し、
前記切替周期と前記局部発振器の周波数が安定するまでの安定化期間との関係に基づいて前記局部発振器の個数を決定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記安定化期間が前記切替周期のM周期分であるとき、M+1個の局部発振器を備えることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−14457(P2009−14457A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175566(P2007−175566)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】