レーダ装置
【課題】演算リソースを大幅に増やすことなく、一つのレーダで、正面付近の狭角な範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右に広角な覆域を確保する。
【解決手段】送信信号を生成する発振部2と、分配部3と、送信アンテナ部4と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部5と、送受ミキシング部6と、上記送受ミキシング信号をデジタル量に変換するA/D変換部7と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部9と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段20と、メモリ8と、覆域におけるターゲットを検出する信号検出部12a、12bと、検出したターゲットの位置や速度情報を得るターゲット情報算出部13を備えたレーダ装置であって、複素演算により覆域を形成する手段20は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成する。
【解決手段】送信信号を生成する発振部2と、分配部3と、送信アンテナ部4と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部5と、送受ミキシング部6と、上記送受ミキシング信号をデジタル量に変換するA/D変換部7と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部9と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段20と、メモリ8と、覆域におけるターゲットを検出する信号検出部12a、12bと、検出したターゲットの位置や速度情報を得るターゲット情報算出部13を備えたレーダ装置であって、複素演算により覆域を形成する手段20は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象となる物体(以下ターゲット)を検出して、その位置や速度を検出するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダは、特定の空間領域に対して、ある強度の電磁波を放射(送信)し、空間領域内にあるターゲットで反射された電磁波を受信し、受信強度の大きさによってターゲットを検出し、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得る。この受信強度の大きさとして、一般的には、雑音強度に対するターゲット信号強度の比であるSNR(Signal to Noise Ratio)が使用される。また、ターゲットの反射強度が既定であれば、SNRの値からそのターゲットの検出可能距離は算出可能である。
【0003】
ターゲットから反射してくる電磁波に対して、その到来角度方向における受信強度特性を制御する技術として、特許文献1、2に開示されているDBF(Digital Beam Forming)がある。例えば、複数のアンテナが空間的に異なる位置に設けられ、各アンテナの受信信号がデジタル(数値)データとして得られるなら、このデジタルデータに対して特定の演算を実施するDBFにより、角度方向における受信強度特性及びSNR特性を制御することができる。
【0004】
ここで、角度方向におけるSNR特性が分かり、またターゲットの反射強度が既定であれば、上記した通り、角度方向における検出可能距離が算出できるので、検出可能な空間領域を得ることができる。本明細書においては、反射強度が既定のターゲットについて、角度方向におけるSNR特性から算出した検出可能領域を、覆域と定義する。例えば、図9(a)、(b)のように、所望とする領域900を確保するためには、一つの覆域901、あるいは、複数の覆域902〜904が必要になる。
【0005】
車両等に搭載されるレーダでは、水平面内において、図10に示すように、正面付近の狭角な範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右に広角な領域1000でターゲットの検出が望まれる。
【0006】
特許文献2に開示された技術においては、覆域が異なる二つのレーダを使用して、図10の所望領域1000を確保している。
【特許文献1】特開平11−133142
【特許文献2】特開2006−10410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示されているDBFにより、一つのレーダで、左右に広角な覆域を得るには、以下の二通りの手段があるが、それぞれ次のような問題があった。一つは、図11の所望の領域1100を確保するため、正面付近遠方までの領域に対応する覆域1101に加え、左右広角方向の領域用に覆域1102、1103を追加形成する手段である。このとき、追加覆域の形成に必要な演算、特に複素数の乗算回数が増加するので、実時間処理を実現するには、演算用ハードウェアの追加や並列化、動作クロックの高速化など、演算リソースを大幅に増やさなければならなかった。
【0008】
もう一つの問題は、図12の所望の領域1200を確保するため、アンテナ隣接間隔の狭小化により、覆域形状を覆域1201のように変更する手段である。ただし、アンテナ隣接間隔は使用する電磁波の波長に対する比として扱われるため、車両等へ搭載するレーダで使用している波長の短いミリ波などの電磁波では、物理的な制限により隣接間隔を狭小化することは困難であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示された技術では、二つのレーダを使用するため、車両側搭載スペースの拡大、もしくは各レーダ装置サイズの小型化が必要であり、また、二つのレーダを含むシステム全体が複雑化する、という問題があった。
【0010】
この発明は上記の問題点を解消するためになされたもので、また、演算リソースを大幅に増やすことなく広角な覆域を形成することにより、一つのレーダで、しかもアンテナ隣接間隔を狭小化することなく、正面付近の狭角な範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右に広角な覆域を確保できるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るレーダ装置は、送信信号を生成する発振部と、送信信号を分配する分配部と、上記分配部の出力である送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部と、上記分配部から出力される送信信号と受信アンテナ部から出力される受信信号を入力して送受ミキシング信号を生成する送受ミキシング部と、アナログ量である上記送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換するアナログ−デジタル変換部と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段と、上記送受ミキシングデータ及び上記複素スペクトルを書き込み及び読み出すためのメモリと、形成した覆域におけるターゲットを検出する検出部と、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得るターゲット情報算出部とを備えたレーダ装置であって、上記複素演算により覆域を形成する手段は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るレーダ装置によれば、演算リソースを大幅に増大することなく、左右広角方向に覆域を確保できる。また、一つのレーダで実現できるため、車両側搭載スペースの増大が必要なく、また、レーダを含むシステム全体が複雑化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1はこの発明の実施の形態であるレーダ装置のブロック構成図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1に係るレーダ装置は、送信系統として、制御部1により制御される発振部2と、分配部3と、送信アンテナ部4を有する。受信系統として、受信アンテナ部5と、送受ミキシング部6と、アナログ−デジタル変換部7を有する。また、信号処理系統として、メモリ8と、複素スペクトル生成部9と、複素加算部10及び複素加減算部11を含み、複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20と、信号検出部12a、12bと、ターゲット情報算出部13を有する。
【0015】
制御部1は、例えば、専用のロジック回路、あるいは汎用のDSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)内のプログラムで構成され、以下で述べる各構成要素の動作タイミングなどを制御する。発振部2は、例えば,変調用電圧波形発生回路と、電圧制御発振器から成り、制御部1によって動作タイミングが制御された変調電圧波形発生回路から必要な電圧が電圧制御発振器に印加され、高周波の送信信号を出力する。分配部3は、例えば、方向性結合器から成り、発振部2からの送信信号を入力して、送信アンテナ部4と、送受ミキシング部6の双方へ出力する。送信アンテナ部4は、例えば、一つのアンテナから成り、入力された送信信号を送信電磁波として空中に放射する。なお、送信アンテナ部4は、複数の送信用アンテナで構成してもよく、その場合、分配部3は、方向性結合器に加え、制御部1からの制御により接続先の送信用アンテナを切替えるスイッチから構成される。
【0016】
空中に放射された送信電磁波は、図示しないターゲットに照射されると、ターゲットで反射し、その反射強度に応じた受信電磁波として、受信アンテナ部5に入力される。受信アンテナ部5は、空間的に異なる位置に配置された2n+m(nは正の整数、mは0か1の任意整数)個の受信用アンテナから成り、各受信用アンテナが受信電磁波を入力し、受信電磁波に応じた受信信号を出力する。
【0017】
送受ミキシング部6は、例えばミキサとアンプから成り、ミキサは、分配部3から出力される送信信号と、受信アンテナ部5から出力された受信信号を入力して、受信信号の強度情報などを含む送受ミキシング信号を生成し、アンプは、送受ミキシング信号を増幅する。なお、ミキサとアンプは、受信用アンテナと一対一に対応するよう受信用アンテナと同数(2n+m組)併設してもよいし、制御部1からの制御により接続先の受信用アンテナが切替わるスイッチと、このスイッチ出力を受ける一組だけで構成してもよい。ただし、ミキサを複数併設する場合には、分配部3から入力した送信信号をさらにミキサの数だけ分配するための方向性結合器などを加えた構成とする。また、アンプの後段には、必要な周波数成分だけを濾波したり、不必要な周波数成分を抑圧する周波数フィルタを付加してもよい。
【0018】
アナログ−デジタル変換部7は、A/D変換器から成り、制御部1により予め定められたタイミングで、アナログ量である送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換して出力する。なお、A/D変換器は、上記した送受ミキシング部6のアンプと同数で構成される。デジタル化された送受ミキシングデータは、制御部1からの制御によりメモリ8の所定アドレスに書き込まれる。
【0019】
複素スペクトル生成部9は、制御部1からの制御により、メモリ8から上記送受ミキシングデータを読み出し、各受信用アンテナk(kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部で2n+m個の場合1〜2n+mの整数)毎に、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)によって、周波数i・△f(△fはFFT後の最小離散周波数幅、iは整数)に関する複素スペクトルデータS(k,i・△f)を生成する。複素スペクトルデータは、制御部1からの制御によりメモリ8の所定アドレスに書き込まれる。
【0020】
複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の内、複素加算部10は、例えばm=0の場合、制御部1からの制御により、図2に示すように、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(1)による複素加算結果の複素データA(i・△f)を信号検出部12aへ出力する。
【0021】
【数5】
【0022】
複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の内、複素加減算部11は、複素加算部10と同様、例えばm=0の場合、制御部1からの制御により、図3に示すように、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(2)による複素加算結果の複素データB(i・△f)を信号検出部12bへ出力する。
【0023】
【数6】
【0024】
ここで、複素加算部10、及び複素加減算部11の結果と、DBFの関係について、一般的なDBFにおける演算を説明する。図4に示すように、N個の受信用アンテナ#1〜#Nが等間隔dで配置され、各受信用アンテナでの受信信号から得た複素スペクトルがS(K,i・△f)(Kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部でN個の場合1〜Nの整数)のとき、DBFの演算は原理的に次式(3)となる。
【0025】
【数7】
ただし、
【0026】
【数8】
ただし、θはDBF後に受信強度が最大になる角度、λはレーダ使用電磁波の波長、dは受信用アンテナの隣接間隔である。
【0027】
ここで、DBF後に受信強度が最大になる角度θを0deg(0度)にした場合、各複素データS(K,i・△f)に乗じるべき複素係数C(θ,K)は、実部が1で虚部が0、すなわち実数として1であり、実際に必要な演算は式(1)に等しく、複素数の乗算を行うことなく図5の覆域501が得られる。一方、同様に複素数の乗算を行うことなく、式(2)の演算を行った場合、正面付近では距離方向覆域がほとんど無いかわりに、左右広角側に覆域を有する図5の覆域502が得られる。この覆域501と、覆域502の両者を併せることで、正面付近の狭角をなす範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右の広角な範囲までの領域500を確保できる。またこのとき、形成する覆域の数は2つであり、また、その両者とも複素数乗算の必要がないので、演算リソースを大幅に増やすことなく実現できる。
【0028】
信号検出部12a、12bは、どちらも、入力される周波数に関する複素データA(i・△f)あるいはB(i・△f)に対して、その絶対値、あるいは絶対値の二乗値を算出した後、データ値が予め定められた方法で設定したしきい値より大きく、かつ、周波数に関していわゆる極大であれば、ターゲットに対応する信号が検出されたとする。このとき、しきい値としては、例えば、全周波数のデータ値における平均値に、特定の係数を乗じるなどして設定する。信号が検出された場合、その周波数i・△fが検出周波数として出力される。
【0029】
ターゲット情報算出部13は、検出周波数を入力して、その周波数自体からターゲットの情報を算出したり、その周波数に対応する受信データや、複素スペクトルをメモリ8から読み出してターゲットの情報を算出する。例えば、発振部2で変調用電圧波形が三角波状であるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダとすれば、検出周波数から、ターゲットの距離と相対速度が算出される。また、例えば、検出周波数に対応する複素スペクトルデータS(k,i・△f){ただし、k=1〜2n+m}から、位相モノパルス処理や、MUSIC(MUltiple Signal Classification)のような超分解能処理により、ターゲットの角度が算出される。
【0030】
なお、複素スペクトル生成部9、複素加算部10、複素加減算部11、信号検出部12a、12b、ターゲット情報算出部13は、例えば、専用のロジック回路や、汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成され、全ての構成部を専用ロジック回路、または汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成してもよいし、一部を専用ロジック回路とし、残りを汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成してもよい。
【0031】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について図を参照して説明する。図6はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置のブロック構成図である。
【0032】
図6においては、図1の受信アンテナ部5の代わりに第2の受信アンテナ部14を用いる。また、図1の複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の代わりに第2の手段30を用いる。また、図1の複素加算部10の代わりに第2の複素加算部15を用いる。同様に、図1の複素加減算部11の代わりに第2の複素加減算部16を用いる。上記以外の構成は図1と同じなので、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
第2の受信アンテナ部14は、4p+q(pは正の整数、qは0〜3の任意整数)個の受信用アンテナから成り、各受信用アンテナが受信波を入力し、受信波に応じた信号を出力する。
【0034】
第2の複素加算部15は、図1における複素加算部10と同様に、制御部1からの制御により、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(4)による複素加算結果の複素データA2(i・△f)を信号検出部12aへ出力する。
【0035】
【数9】
【0036】
第2の複素加減算部16は、図7に示すように、制御部1からの制御により、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、2p個分の受信用アンテナのデータセットとして読み出し、次式(5)による複素加算結果の複素データB2(i・△f)を信号検出部12bへ出力する。
【0037】
【数10】
ただし、hは1〜2p+q+1の任意整数である。
【0038】
式(4)の演算結果による覆域は、図8の覆域801であり、図5の覆域501に等しい。一方、式(5)の演算結果による覆域は、図8の覆域802のように、左右の広角付近において、距離方向は近くまでとなる代わりに広角側に拡大され、近い距離では図5の領域500より広角な領域800を確保できる。
【0039】
実施の形態2では、DBFにおいて、複素加減算の際に使用する受信用アンテナの数を少なくして、より広角な覆域を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るレーダ装置における複素加算部の説明図である。
【図3】実施の形態1に係るレーダ装置における複素加減算部の説明図である。
【図4】一般的なDBFにおける演算の説明図である。
【図5】実施の形態1に係る覆域の説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2に係るレーダ装置における複素加減算部の説明図である。
【図8】実施の形態2に係る覆域の説明図である。
【図9】一般的な覆域の説明図である。
【図10】従来のレーダ装置における所望領域の説明図である。
【図11】従来のレーダ装置における所望領域と覆域の説明図である。
【図12】従来のレーダ装置における所望領域と覆域の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 制御部、2 発振部、3 分配部、4 送信アンテナ部、5 受信アンテナ部、
6 送受ミキシング部、7 アナログ−デジタル変換部、8 メモリ、
9 複素スペクトル生成部、10 複素加算部、11 複素加減算部、
12a、12b 信号検出部、13 ターゲット情報算出部、
14 第2の受信アンテナ部、15 第2の複素加算部、16 第2の複素加減算部、
20 覆域形成手段、30 第2の覆域形成手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象となる物体(以下ターゲット)を検出して、その位置や速度を検出するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダは、特定の空間領域に対して、ある強度の電磁波を放射(送信)し、空間領域内にあるターゲットで反射された電磁波を受信し、受信強度の大きさによってターゲットを検出し、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得る。この受信強度の大きさとして、一般的には、雑音強度に対するターゲット信号強度の比であるSNR(Signal to Noise Ratio)が使用される。また、ターゲットの反射強度が既定であれば、SNRの値からそのターゲットの検出可能距離は算出可能である。
【0003】
ターゲットから反射してくる電磁波に対して、その到来角度方向における受信強度特性を制御する技術として、特許文献1、2に開示されているDBF(Digital Beam Forming)がある。例えば、複数のアンテナが空間的に異なる位置に設けられ、各アンテナの受信信号がデジタル(数値)データとして得られるなら、このデジタルデータに対して特定の演算を実施するDBFにより、角度方向における受信強度特性及びSNR特性を制御することができる。
【0004】
ここで、角度方向におけるSNR特性が分かり、またターゲットの反射強度が既定であれば、上記した通り、角度方向における検出可能距離が算出できるので、検出可能な空間領域を得ることができる。本明細書においては、反射強度が既定のターゲットについて、角度方向におけるSNR特性から算出した検出可能領域を、覆域と定義する。例えば、図9(a)、(b)のように、所望とする領域900を確保するためには、一つの覆域901、あるいは、複数の覆域902〜904が必要になる。
【0005】
車両等に搭載されるレーダでは、水平面内において、図10に示すように、正面付近の狭角な範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右に広角な領域1000でターゲットの検出が望まれる。
【0006】
特許文献2に開示された技術においては、覆域が異なる二つのレーダを使用して、図10の所望領域1000を確保している。
【特許文献1】特開平11−133142
【特許文献2】特開2006−10410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示されているDBFにより、一つのレーダで、左右に広角な覆域を得るには、以下の二通りの手段があるが、それぞれ次のような問題があった。一つは、図11の所望の領域1100を確保するため、正面付近遠方までの領域に対応する覆域1101に加え、左右広角方向の領域用に覆域1102、1103を追加形成する手段である。このとき、追加覆域の形成に必要な演算、特に複素数の乗算回数が増加するので、実時間処理を実現するには、演算用ハードウェアの追加や並列化、動作クロックの高速化など、演算リソースを大幅に増やさなければならなかった。
【0008】
もう一つの問題は、図12の所望の領域1200を確保するため、アンテナ隣接間隔の狭小化により、覆域形状を覆域1201のように変更する手段である。ただし、アンテナ隣接間隔は使用する電磁波の波長に対する比として扱われるため、車両等へ搭載するレーダで使用している波長の短いミリ波などの電磁波では、物理的な制限により隣接間隔を狭小化することは困難であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示された技術では、二つのレーダを使用するため、車両側搭載スペースの拡大、もしくは各レーダ装置サイズの小型化が必要であり、また、二つのレーダを含むシステム全体が複雑化する、という問題があった。
【0010】
この発明は上記の問題点を解消するためになされたもので、また、演算リソースを大幅に増やすことなく広角な覆域を形成することにより、一つのレーダで、しかもアンテナ隣接間隔を狭小化することなく、正面付近の狭角な範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右に広角な覆域を確保できるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るレーダ装置は、送信信号を生成する発振部と、送信信号を分配する分配部と、上記分配部の出力である送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部と、上記分配部から出力される送信信号と受信アンテナ部から出力される受信信号を入力して送受ミキシング信号を生成する送受ミキシング部と、アナログ量である上記送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換するアナログ−デジタル変換部と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段と、上記送受ミキシングデータ及び上記複素スペクトルを書き込み及び読み出すためのメモリと、形成した覆域におけるターゲットを検出する検出部と、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得るターゲット情報算出部とを備えたレーダ装置であって、上記複素演算により覆域を形成する手段は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るレーダ装置によれば、演算リソースを大幅に増大することなく、左右広角方向に覆域を確保できる。また、一つのレーダで実現できるため、車両側搭載スペースの増大が必要なく、また、レーダを含むシステム全体が複雑化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1はこの発明の実施の形態であるレーダ装置のブロック構成図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1に係るレーダ装置は、送信系統として、制御部1により制御される発振部2と、分配部3と、送信アンテナ部4を有する。受信系統として、受信アンテナ部5と、送受ミキシング部6と、アナログ−デジタル変換部7を有する。また、信号処理系統として、メモリ8と、複素スペクトル生成部9と、複素加算部10及び複素加減算部11を含み、複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20と、信号検出部12a、12bと、ターゲット情報算出部13を有する。
【0015】
制御部1は、例えば、専用のロジック回路、あるいは汎用のDSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)内のプログラムで構成され、以下で述べる各構成要素の動作タイミングなどを制御する。発振部2は、例えば,変調用電圧波形発生回路と、電圧制御発振器から成り、制御部1によって動作タイミングが制御された変調電圧波形発生回路から必要な電圧が電圧制御発振器に印加され、高周波の送信信号を出力する。分配部3は、例えば、方向性結合器から成り、発振部2からの送信信号を入力して、送信アンテナ部4と、送受ミキシング部6の双方へ出力する。送信アンテナ部4は、例えば、一つのアンテナから成り、入力された送信信号を送信電磁波として空中に放射する。なお、送信アンテナ部4は、複数の送信用アンテナで構成してもよく、その場合、分配部3は、方向性結合器に加え、制御部1からの制御により接続先の送信用アンテナを切替えるスイッチから構成される。
【0016】
空中に放射された送信電磁波は、図示しないターゲットに照射されると、ターゲットで反射し、その反射強度に応じた受信電磁波として、受信アンテナ部5に入力される。受信アンテナ部5は、空間的に異なる位置に配置された2n+m(nは正の整数、mは0か1の任意整数)個の受信用アンテナから成り、各受信用アンテナが受信電磁波を入力し、受信電磁波に応じた受信信号を出力する。
【0017】
送受ミキシング部6は、例えばミキサとアンプから成り、ミキサは、分配部3から出力される送信信号と、受信アンテナ部5から出力された受信信号を入力して、受信信号の強度情報などを含む送受ミキシング信号を生成し、アンプは、送受ミキシング信号を増幅する。なお、ミキサとアンプは、受信用アンテナと一対一に対応するよう受信用アンテナと同数(2n+m組)併設してもよいし、制御部1からの制御により接続先の受信用アンテナが切替わるスイッチと、このスイッチ出力を受ける一組だけで構成してもよい。ただし、ミキサを複数併設する場合には、分配部3から入力した送信信号をさらにミキサの数だけ分配するための方向性結合器などを加えた構成とする。また、アンプの後段には、必要な周波数成分だけを濾波したり、不必要な周波数成分を抑圧する周波数フィルタを付加してもよい。
【0018】
アナログ−デジタル変換部7は、A/D変換器から成り、制御部1により予め定められたタイミングで、アナログ量である送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換して出力する。なお、A/D変換器は、上記した送受ミキシング部6のアンプと同数で構成される。デジタル化された送受ミキシングデータは、制御部1からの制御によりメモリ8の所定アドレスに書き込まれる。
【0019】
複素スペクトル生成部9は、制御部1からの制御により、メモリ8から上記送受ミキシングデータを読み出し、各受信用アンテナk(kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部で2n+m個の場合1〜2n+mの整数)毎に、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)によって、周波数i・△f(△fはFFT後の最小離散周波数幅、iは整数)に関する複素スペクトルデータS(k,i・△f)を生成する。複素スペクトルデータは、制御部1からの制御によりメモリ8の所定アドレスに書き込まれる。
【0020】
複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の内、複素加算部10は、例えばm=0の場合、制御部1からの制御により、図2に示すように、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(1)による複素加算結果の複素データA(i・△f)を信号検出部12aへ出力する。
【0021】
【数5】
【0022】
複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の内、複素加減算部11は、複素加算部10と同様、例えばm=0の場合、制御部1からの制御により、図3に示すように、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(2)による複素加算結果の複素データB(i・△f)を信号検出部12bへ出力する。
【0023】
【数6】
【0024】
ここで、複素加算部10、及び複素加減算部11の結果と、DBFの関係について、一般的なDBFにおける演算を説明する。図4に示すように、N個の受信用アンテナ#1〜#Nが等間隔dで配置され、各受信用アンテナでの受信信号から得た複素スペクトルがS(K,i・△f)(Kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部でN個の場合1〜Nの整数)のとき、DBFの演算は原理的に次式(3)となる。
【0025】
【数7】
ただし、
【0026】
【数8】
ただし、θはDBF後に受信強度が最大になる角度、λはレーダ使用電磁波の波長、dは受信用アンテナの隣接間隔である。
【0027】
ここで、DBF後に受信強度が最大になる角度θを0deg(0度)にした場合、各複素データS(K,i・△f)に乗じるべき複素係数C(θ,K)は、実部が1で虚部が0、すなわち実数として1であり、実際に必要な演算は式(1)に等しく、複素数の乗算を行うことなく図5の覆域501が得られる。一方、同様に複素数の乗算を行うことなく、式(2)の演算を行った場合、正面付近では距離方向覆域がほとんど無いかわりに、左右広角側に覆域を有する図5の覆域502が得られる。この覆域501と、覆域502の両者を併せることで、正面付近の狭角をなす範囲では遠方まで、かつ、近距離では左右の広角な範囲までの領域500を確保できる。またこのとき、形成する覆域の数は2つであり、また、その両者とも複素数乗算の必要がないので、演算リソースを大幅に増やすことなく実現できる。
【0028】
信号検出部12a、12bは、どちらも、入力される周波数に関する複素データA(i・△f)あるいはB(i・△f)に対して、その絶対値、あるいは絶対値の二乗値を算出した後、データ値が予め定められた方法で設定したしきい値より大きく、かつ、周波数に関していわゆる極大であれば、ターゲットに対応する信号が検出されたとする。このとき、しきい値としては、例えば、全周波数のデータ値における平均値に、特定の係数を乗じるなどして設定する。信号が検出された場合、その周波数i・△fが検出周波数として出力される。
【0029】
ターゲット情報算出部13は、検出周波数を入力して、その周波数自体からターゲットの情報を算出したり、その周波数に対応する受信データや、複素スペクトルをメモリ8から読み出してターゲットの情報を算出する。例えば、発振部2で変調用電圧波形が三角波状であるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダとすれば、検出周波数から、ターゲットの距離と相対速度が算出される。また、例えば、検出周波数に対応する複素スペクトルデータS(k,i・△f){ただし、k=1〜2n+m}から、位相モノパルス処理や、MUSIC(MUltiple Signal Classification)のような超分解能処理により、ターゲットの角度が算出される。
【0030】
なお、複素スペクトル生成部9、複素加算部10、複素加減算部11、信号検出部12a、12b、ターゲット情報算出部13は、例えば、専用のロジック回路や、汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成され、全ての構成部を専用ロジック回路、または汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成してもよいし、一部を専用ロジック回路とし、残りを汎用のDSPやCPU内のプログラムで構成してもよい。
【0031】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について図を参照して説明する。図6はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置のブロック構成図である。
【0032】
図6においては、図1の受信アンテナ部5の代わりに第2の受信アンテナ部14を用いる。また、図1の複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能とする領域である覆域を形成する手段20の代わりに第2の手段30を用いる。また、図1の複素加算部10の代わりに第2の複素加算部15を用いる。同様に、図1の複素加減算部11の代わりに第2の複素加減算部16を用いる。上記以外の構成は図1と同じなので、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
第2の受信アンテナ部14は、4p+q(pは正の整数、qは0〜3の任意整数)個の受信用アンテナから成り、各受信用アンテナが受信波を入力し、受信波に応じた信号を出力する。
【0034】
第2の複素加算部15は、図1における複素加算部10と同様に、制御部1からの制御により、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、全受信用アンテナ分のデータセットとして読み出し、次式(4)による複素加算結果の複素データA2(i・△f)を信号検出部12aへ出力する。
【0035】
【数9】
【0036】
第2の複素加減算部16は、図7に示すように、制御部1からの制御により、メモリ8から上記複素スペクトルデータS(k,i・△f)を、2p個分の受信用アンテナのデータセットとして読み出し、次式(5)による複素加算結果の複素データB2(i・△f)を信号検出部12bへ出力する。
【0037】
【数10】
ただし、hは1〜2p+q+1の任意整数である。
【0038】
式(4)の演算結果による覆域は、図8の覆域801であり、図5の覆域501に等しい。一方、式(5)の演算結果による覆域は、図8の覆域802のように、左右の広角付近において、距離方向は近くまでとなる代わりに広角側に拡大され、近い距離では図5の領域500より広角な領域800を確保できる。
【0039】
実施の形態2では、DBFにおいて、複素加減算の際に使用する受信用アンテナの数を少なくして、より広角な覆域を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るレーダ装置における複素加算部の説明図である。
【図3】実施の形態1に係るレーダ装置における複素加減算部の説明図である。
【図4】一般的なDBFにおける演算の説明図である。
【図5】実施の形態1に係る覆域の説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2に係るレーダ装置における複素加減算部の説明図である。
【図8】実施の形態2に係る覆域の説明図である。
【図9】一般的な覆域の説明図である。
【図10】従来のレーダ装置における所望領域の説明図である。
【図11】従来のレーダ装置における所望領域と覆域の説明図である。
【図12】従来のレーダ装置における所望領域と覆域の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 制御部、2 発振部、3 分配部、4 送信アンテナ部、5 受信アンテナ部、
6 送受ミキシング部、7 アナログ−デジタル変換部、8 メモリ、
9 複素スペクトル生成部、10 複素加算部、11 複素加減算部、
12a、12b 信号検出部、13 ターゲット情報算出部、
14 第2の受信アンテナ部、15 第2の複素加算部、16 第2の複素加減算部、
20 覆域形成手段、30 第2の覆域形成手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を生成する発振部と、送信信号を分配する分配部と、上記分配部の出力である送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部と、上記分配部から出力される送信信号と受信アンテナ部から出力される受信信号を入力して送受ミキシング信号を生成する送受ミキシング部と、アナログ量である上記送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換するアナログ−デジタル変換部と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段と、上記送受ミキシングデータ及び上記複素スペクトルを書き込み及び読み出すためのメモリと、形成した覆域におけるターゲットを検出する信号検出部と、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得るターゲット情報算出部とを備えたレーダ装置であって、上記複素演算により覆域を形成する手段は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
上記請求項1に記載のレーダ装置において、上記受信アンテナ部は、空間的に異なる位置に配置された2n+m(nは正の整数、mは0か1の任意整数)個の受信用アンテナから成り、上記複素加算部は、複素スペクトルデータS(k)(kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部で2n+m個の場合1〜2n+mの整数)から次式の結果を算出し、
【数1】
また、上記複素加減算部は、複素スペクトルデータS(k)から次式の結果を算出するものであることを特徴とするレーダ装置。
【数2】
(ただし、h=m+1、すなわち、1か2の整数)
【請求項3】
上記請求項2に記載のレーダ装置において、上記受信アンテナ部の代わりに、空間的に異なる位置に配置された4p+q(pは正の整数、qは0〜3の任意整数)個の受信用アンテナから成る第2の受信アンテナ部を備え、上記複素加算部の代わりに、複素スペクトルデータS(k)(kは受信用アンテナの番号)から次式の結果を算出する第2の複素加算部を備え、
【数3】
また、上記複素加減算部の代わりに、複素スペクトルデータS(k)から次式の結果を
算出する第2の複素加減算部を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【数4】
(ただし、hは1〜2p+q+1の任意整数)
【請求項1】
送信信号を生成する発振部と、送信信号を分配する分配部と、上記分配部の出力である送信信号を空間へ放射する送信アンテナ部と、ターゲットから反射してくる電磁波を受信する受信アンテナ部と、上記分配部から出力される送信信号と受信アンテナ部から出力される受信信号を入力して送受ミキシング信号を生成する送受ミキシング部と、アナログ量である上記送受ミキシング信号をデジタル量の送受ミキシングデータに変換するアナログ−デジタル変換部と、上記送受ミキシングデータの複素スペクトルを得る複素スペクトル生成部と、上記複素スペクトルに複素演算を実施してターゲットを検知可能な領域である覆域を形成する手段と、上記送受ミキシングデータ及び上記複素スペクトルを書き込み及び読み出すためのメモリと、形成した覆域におけるターゲットを検出する信号検出部と、検出したターゲットについて位置や速度といった情報を得るターゲット情報算出部とを備えたレーダ装置であって、上記複素演算により覆域を形成する手段は、複素乗算を用いず、複素加算或いは複素加減算により覆域を形成することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
上記請求項1に記載のレーダ装置において、上記受信アンテナ部は、空間的に異なる位置に配置された2n+m(nは正の整数、mは0か1の任意整数)個の受信用アンテナから成り、上記複素加算部は、複素スペクトルデータS(k)(kは受信用アンテナの番号、受信用アンテナが全部で2n+m個の場合1〜2n+mの整数)から次式の結果を算出し、
【数1】
また、上記複素加減算部は、複素スペクトルデータS(k)から次式の結果を算出するものであることを特徴とするレーダ装置。
【数2】
(ただし、h=m+1、すなわち、1か2の整数)
【請求項3】
上記請求項2に記載のレーダ装置において、上記受信アンテナ部の代わりに、空間的に異なる位置に配置された4p+q(pは正の整数、qは0〜3の任意整数)個の受信用アンテナから成る第2の受信アンテナ部を備え、上記複素加算部の代わりに、複素スペクトルデータS(k)(kは受信用アンテナの番号)から次式の結果を算出する第2の複素加算部を備え、
【数3】
また、上記複素加減算部の代わりに、複素スペクトルデータS(k)から次式の結果を
算出する第2の複素加減算部を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【数4】
(ただし、hは1〜2p+q+1の任意整数)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−250834(P2009−250834A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100425(P2008−100425)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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