説明

レール支持装置、回動許容建材切断機、レール傾斜支持台、レール傾斜支持台セット、塀壁建造工法及び壁体開口部形成工法

【課題】塀壁用建材を切断する際の手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能なレール支持装置、回動許容建材切断機、レール傾斜支持台、レール傾斜支持台セット、塀壁建造工法及び壁体開口部形成工法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るレール支持装置50では、コンクリートアングル90に固定可能な固定ベース51の内側に回動可能に収容されたインナーシャフト56とレール部材30を取り付け可能な可動帯板状部材58とが連結シャフト57によって一体回動可能に連結されている。そして、連結シャフト57にナット53を締め付けると、レール部材30が固定ベース51に対して任意の回動位置で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、塀壁用建材を直線状に切断するためのレール支持装置、回動許容建材切断機、レール傾斜支持台、レール傾斜支持台セット、塀壁建造工法及び壁体開口部形成工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の円形カッターの回転駆動源を直動可能に支持するレール部材は、帯状板に1対のレール本体部を平行に配置して固定した構造をなし、その帯状板の長手方向の複数位置には、取付孔が貫通形成されている。そして、塀壁用建材の表裏何れか一方の面である主平面に複数のアンカーボルトを打ち込み、それらアンカーボルトを帯状板の各取付孔に挿通して、レール部材を塀壁用建材の主平面に固定していた(例えば、特許文献1参照)。具体的には、規格サイズの複数の塀壁用建材を利用して所定形状の土地の縁部に塀を建てる場合、土地の角部では、塀壁用建材を切断して所定角度にして接合する作業が必要になる。この場合、規格サイズの塀壁用建材の一部を切除するために、塀壁用建材のうち切除される部分にアンカーを打ち込んでレール部材を取り付け、円形カッターにて塀壁用建材を切断する作業を行っていた。また、建造物の壁体に矩形枠形状のスリットを形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材を除去して、壁体に出入口又は窓用の開口部を形成する場合、除去対象建材にアンカーを打ち込んでレール部材を取り付け、円形カッターにて壁体にスリットを形成する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−53008号公報(図1,図2,図4、段落[0017]〜[0021])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のレール部材の支持構造では、塀壁用建材の切断面を主平面に対して90度の角度でしか形成することができなかった。このため、上記した塀を建てる作業において、90度以外の角度で塀が屈曲した部分では、塀壁用建材同士の接合部分に溝が生じ、そこにコンクリートを詰めるという手直し作業が別途必要になると共に、塀の見栄え低下するという問題が生じていた。また、上記した建造物の壁体に出入口又は窓用の開口部を形成する作業においては、除去対象建材が矩形枠形状のスリットの内側で傾いで抜き出し難い事態が生じ、その結果、スリットの回りを削るという手直し作業が別途必要になったり、開口部の見栄えが低下するという問題が生じ得た。即ち、上記した従来の従来のレール部材の支持構造及びそれを用いた施工方法では、塀壁用建材の切断面を主平面に対して90度以外の角度で形成することができないために手直し作業が必要になって作業性が悪く、建造物の見栄えが低下する事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、塀壁用建材を切断する際の手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能なレール支持装置、回動許容建材切断機、レール傾斜支持台、レール傾斜支持台セット、塀壁建造工法及び壁体開口部形成工法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るレール支持装置は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、塀壁用建材を直線状に切断可能な建材切断機のレール部材を、塀壁用建材に固定するためのレール支持装置であって、塀壁用建材にアンカーボルトにて固定可能な固定ベースと、レール部材の長手方向と平行な回転軸回りにレール部材を固定ベースに対して回動可能に連結するヒンジ機構と、レール部材を固定ベースに対して任意の回動位置で固定するための回動固定機構とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレール支持装置において、ヒンジ機構は、固定ベースに設けられかつレール部材の長手方向に延びた固定パイプと、固定パイプ内に回動可能に収容されたインナーシャフトと、固定パイプの軸方向の複数位置に配置されかつ固定パイプの周方向でインナーシャフトの回動許容範囲に亘って開口した複数の周面開口と、複数の周面開口を通してインナーシャフトから突出し、インナーシャフトとレール部材とを一体回転可能に連結するための複数の連結部材とから構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のレール支持装置において、固定パイプの軸方向に延びた可動帯板状部材を固定パイプと別体にして設けると共に、その可動帯板状部材にレール部材を固定可能とし、複数の連結部材の一端部に雄ネジ部を形成して、複数の連結部材の一端部を、可動帯板状部材に形成した連結孔に挿通して雄ネジ部にナットを締め付けることで、ナットと固定パイプとの間に可動帯板状部材を挟んで固定可能とし、雄ネジ部及びナットと、それらの締め付けによって互いに摩擦係合するインナーシャフト及び固定パイプとによって回動固定機構を構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のレール支持装置において、連結孔は、可動帯板状部材の幅方向の中央に配置され、可動帯板状部材のうち固定パイプとの対向面には、可動帯板状部材の幅方向の中央線に対する対称位置に、固定パイプの外周面に当接する1対の当接用突条が突出形成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れか1の請求項に記載のレール支持装置において、固定ベースは、固定パイプと、固定パイプの長手方向の複数位置に配置されて固定パイプの外周面に側方から宛がわれた状態に固定された複数の設置プレートとを備えてなり、それら各設置プレートのうち固定パイプを間に挟んだ両側部にそれぞれアンカー取付孔を形成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明に係る回動許容建材切断機は、請求項1乃至5の何れかに記載のレール支持装置と建材切断機とからなるところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の回動許容建材切断機において、レール部材に固定されかつその長手方向に延びたラックと、レール部材に直動可能に組み付けた補助回転駆動源と、補助回転駆動源にて回転駆動されかつラックに噛合したピニオンと、建材切断機を予め設定された速度でレール部材に沿って移動するように補助回転駆動源を制御する直動制御部とを備えたところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の回動許容建材切断機において、レール部材に直動可能に係合したスライダと、レール部材の長手方向及び円形カッターの回転軸方向に共に直交する補助軸方向でスライダに対して建材切断機を直動可能に案内する補助直動機構と、建材切断機を補助軸方向の任意の位置に保持するための補助固定機構とを備えたところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明に係るレール傾斜支持台は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、塀壁用建材を直線状に切断可能な建材切断機のレール部材と、塀壁用建材との間に配置されて、塀壁用建材におけるレール部材との対向面に対する円形カッターの回転軸の角度を所定の傾斜角に保持するためのレール傾斜支持台であって、レール部材の長手方向に延びた略三角柱の形状をなし、その略三角柱の第1の側面が塀壁用建材に重ねて配置される建材側当接面をなすと共に、略三角柱のうち第1の側面に対して鋭角に傾斜した第2の側面がレール部材に重ねて配置されるレール側当接面をなし、塀壁用建材建材にアンカーボルトにて固定するためのアンカー取付孔と、レール部材にボルト又はナットにて固定するためのレール固定部とを備えたところに特徴を有する。
【0015】
請求項10の発明に係るレール傾斜支持台セットは、建材側当接面とレール側当接面との間の傾斜角が互いに相違する複数種類の請求項9に係るレール傾斜支持台をセットにして備えたところに特徴を有する。
【0016】
請求項11の発明に係る塀壁建造工法は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して塀壁用建材を直線状に切断して、その切断面を他の塀壁用建材に接合し、建造物の壁体や塀を建造する塀壁建造工法において、レール部材の長手方向と平行な回転軸を中心にレール部材に対して回動し、任意の回動位置に固定可能な固定ベースを設けておき、固定ベースを塀壁用建材に固定すると共に、壁体又は塀のうち塀壁用建材同士の接合部分の屈曲角に応じた任意の角度に、レール部材と固定ベースとの間の角度を固定して塀壁用建材を切断するところに特徴を有する。
【0017】
請求項12の発明に係る壁体開口部形成工法は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、建造物の壁体に矩形枠形状のスリットを貫通形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材を除去して、壁体に出入口又は窓用の開口部を形成する壁体開口部形成工法において、レール部材の長手方向と平行な回転軸を中心にレール部材に対して回動し、任意の回動位置に固定可能な固定ベースを設けておき、除去対象建材の水平断面が台形になるように、固定ベースを建造物の壁体に固定すると共に、レール部材と固定ベースとの間の角度を固定して、建造物の壁体にスリットを貫通形成するところに特徴を有する。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12に記載の壁体開口部形成工法において、除去対象建材の鉛直断面が台形になるように、固定ベースを建造物の壁体に固定すると共に、レール部材と固定ベースとの間の角度を固定して、建造物の壁体にスリットを貫通形成するところに特徴を有する。
【0019】
請求項14の発明は、請求項12又は13に記載の壁体開口部形成工法において、矩形枠形状における上辺部分又は側辺部分より先に下辺部分のスリットを形成するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0020】
[請求項1の発明]
請求項1のレール支持装置では、固定ベースを塀壁用建材にアンカーボルトにて固定し、その固定ベースに対してレール部材を所望の回動位置まで回動して固定することができる。そして、そのレール部材を有した建材切断機により、塀壁用建材の切断面を任意の角度に形成することができる。これにより、従来必要とされた、塀壁用建材を斜めに切断する際の手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。
【0021】
[請求項2の発明]
請求項2のレール支持装置では、ヒンジ機構が、固定ベースに固定された固定パイプ内にインナーシャフトを収容した簡素な構造をなしているので、製造コストを抑えることができる。
【0022】
[請求項3の発明]
請求項3のレール支持装置では、固定ベースから可動帯板状部材及びレール部材を離脱させることができ、その離脱状態にすれば、固定ベースの塀壁用建材への固定作業を容易に行うことができる。
【0023】
[請求項4の発明]
請求項4のレール支持装置では、連結部材を可動帯板状部材の連結孔に挿通して、連結部材の先端の雄ネジ部にナットを締め付けていくと、可動帯板状部材に備えた1対の当接用突条が固定パイプに押し付けられ、可動帯板状部材が固定パイプに安定した状態に固定される。
【0024】
[請求項5の発明]
請求項5のレール支持装置では、固定ベースは、その固定ベースに備えた設置プレートのアンカー取付孔にアンカーボルトを通して塀壁用建材に固定される。ここで、設置プレートは固定パイプの長手方向の複数位置に設けられているので、本発明の構成によれば、固定パイプの全体を塀壁用建材に固定することができる。
【0025】
[請求項6の発明]
請求項6の回動許容建材切断機では、レール支持装置の固定ベースを塀壁用建材にアンカーボルトにて固定し、その固定ベースに対してレール部材を所望の回動位置まで回動して固定することができるので、塀壁用建材の切断面を任意の角度に形成することができる。これにより、塀壁用建材の切断面を主平面に対して90度の角度でしか形成することができなかった従来に比べ、塀壁用建材を切断する際の手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。
【0026】
[請求項7の発明]
請求項7の回動許容建材切断機は、補助回転駆動源によって、建材切断機を予め設定された速度でレール部材に沿って移動することができるので、レール部材の長手方向に沿う方向で均一な切断面を形成することができる。
【0027】
[請求項8の発明]
請求項8の回動許容建材切断機によれば、比較的厚い塀壁用建材の場合、塀壁用建材に対する円形カッターの位置を補助固定機構を用いて段階的に移動し、レール部材の長手方向に沿って円形カッターを複数回移動して、塀壁用建材を切断することができる。
【0028】
[請求項9の発明]
請求項9のレール傾斜支持台は、レール部材の塀壁用建材との間に配置して固定すれば、塀壁用建材のうちレール傾斜支持台の固定面に対する切断面の角度を、90度以外の所定の角度で形成することができる。これにより、壁体に出入口又は窓用の開口部を形成するために壁体に矩形枠形状のスリットを貫通形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材を除去する作業において、除去対象建材の水平断面及び/又は鉛直断面を台形することができ、その除去対象建材をスムーズに抜き取ることが可能になる。即ち、本発明のレール傾斜支持台によれば、従来のものに比べ、手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。
【0029】
[請求項10の発明]
請求項10のレール傾斜支持台セットでは、塀壁用建材におけるレール傾斜支持台の固定面に対する切断面の角度を90度以外の複数の角度の中から任意の角度を選んで設定することができ、塀壁用建材を利用して塀を建てる作業を容易に行うことが可能になる。
【0030】
[請求項11の発明]
請求項11の塀壁建造工法は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して塀壁用建材を直線状に切断して、その切断面を他の塀壁用建材に接合し、建造物の壁体や塀を建造する方法である。ここで、固定ベースを塀壁用建材に固定すると共に、壁体又は塀の屈曲角に応じた任意の角度で、レール部材と固定ベースとの間の角度を固定して塀壁用建材を切断することができるので、従来必要とされた、塀壁用建材を斜めに切断する際の手直し作業を低減させることができかつ壁体及び塀の見栄えをよくすることが可能になる。
【0031】
[請求項12,13の発明]
請求項12の壁体開口部形成工法は、レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、建造物の壁体に矩形枠形状のスリットを貫通形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材を除去して、壁体に開口部を形成する方法である。そして、本発明では、除去対象建材の水平断面が台形になるように、レール部材に対して固定ベースを任意の回動位置に固定して、建造物の壁体に前記スリットを貫通形成するので、除去対象建材をスムーズに抜き取ることが可能になる。即ち、本発明によれば、従来のものに比べ、手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。また、請求項13に示すように、除去対象建材の鉛直断面が台形となるようにすれば、水平方向だけでなく鉛直方向においても除去対象建材が傾ぐ事態が防げる。
【0032】
[請求項14の発明]
請求項14の壁体開口部形成工法は、矩形枠形状における上辺部分又は側辺部分より先に下辺部分のスリットを形成するので、円形カッターにて下辺部分のスリットを形成している間に、除去対象建材が壁体から切り離されて円形カッターを挟んでしまうような事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回動許容建材切断機の上側斜視図
【図2】回動許容建材切断機の正面側斜視図
【図3】レール支持装置の斜視図
【図4】レール支持装置とレール部材の斜視図
【図5】レール支持装置とレール部材の平断面図
【図6】レール支持装置とレール部材の平断面図
【図7】塀の施工図
【図8】コンクリートアングルの側断面図
【図9】第2実施形態に係る住居の壁に回動許容建材切断機を設置した状態の斜視図
【図10】(A)住居の壁の水平断面図,(B)住居の壁の鉛直断面図
【図11】第3実施形態に係る住居の壁にレール傾斜支持台を設置した状態の斜視図
【図12】第4実施形態に係るレール傾斜支持台セットの上面図
【図13】第5実施形態に係るレール支持装置の側面図
【図14】レール支持装置のA−A断面図
【図15】第6実施形態に係るレール支持装置の平断面図
【図16】変形例に係る斜視図
【図17】変形例に係る側面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1には、本実施形態の回動許容建材切断機10を、本発明の「塀壁用建材」としての塀建造用のコンクリートアングル90における鉛直プレート94(図8参照)に取り付けた状態が示されている。回動許容建材切断機10は、建材切断機11にレール支持装置50を組み付けた構成になっている。その建材切断機11は、図2の上下方向に延びたレール部材30(一般に「トラックレール」と呼ばれている)にスライドベース12を直動可能に係合して備え、スライドベース12に円形カッター19やそれを回転駆動するための回転駆動モータ20(本発明の「回転駆動源」に相当する)等が搭載されている。
【0035】
レール部材30は、図3に示すように、帯板状のセンターレールプレート32の両側縁部に、1対のサイドレールプレート33,33を重ねて固定した構造になっている。図4に示すように、サイドレールプレート33,33は、センターレールプレート32より幅狭な帯板状をなし、各サイドレールプレート33の幅方向の半分がセンターレールプレート32の両側縁部に重ねられて複数のボルト(図示せず)にて固定され、それらサイドレールプレート33,33における幅方向の残りの半分がセンターレールプレート32から両側方に張り出している。
【0036】
センターレールプレート32のうちサイドレールプレート33,33の間の中央には、長手方向に沿って複数の取付孔35が設けられている。各取付孔35は、センターレールプレート32の長手方向に延びた長孔形状をなし、各取付孔35の外縁部にはナットワッシャ受容凹部34が陥没形成されている。また、センターレールプレート32のうち一方のサイドレールプレート33とナットワッシャ受容凹部34群との間には、サイドレールプレート33と平行に延びたラック31が取り付けられている。
【0037】
図1に示すように、スライドベース12は、レール部材30を幅方向で受容可能な溝形構造をなし、その溝内の両側部には、複数対ずつのローラ13が備えられている。そして、各ローラ13で、レール部材30における各サイドレールプレート33,33のうちセンターレールプレート32から張り出した部分をそれぞれ板厚方向で挟持している。これにより、スライドベース12が、レール部材30の長手方向に直動可能にガイドされている。
【0038】
図2に示すように、スライドベース12のうち直動方向の一端面には、サブギヤボックス14が取り付けられている。そして、図1に示すように、サブギヤボックス14の出力部に備えたピニオン14Gがレール部材30のラック31(図4参照)に噛合し、サブギヤボックス14の入力部には直動駆動モータ15が接続されている。これにより、直動駆動モータ15にてピニオン14Gが回転駆動されて、スライドベース12がレール部材30に対して直動する。
【0039】
スライドベース12のうちレール部材30と対向面と反対側の面からは、1対のガイド支柱16,16がレール部材30から離れる方向に延びている。これらガイド支柱16,16は円柱状をなし、スライドベース12のうち直動方向の両端部に配置されて平行に延びている。そして、これらガイド支柱16,16が可動ベース17を貫通して直動可能に支持している。
【0040】
可動ベース17のうちガイド支柱16,16が貫通した部分の間にはメインギヤボックス18が備えられ、そのメインギヤボックス18の出力部に円形カッター19が連結される一方、メインギヤボックス18の入力部に回転駆動モータ20が連結されている。円形カッター19は円板状をなし、円形カッター19の回転軸は、ガイド支柱16の軸方向及びスライドベース12の直動方向の両方向と直交する方向を向いている。
【0041】
ガイド支柱16,16の先端部同士の間には、端部固定プレート21が差し渡され、その端部固定プレート21に螺旋孔21Aが貫通形成されている。そして、螺旋シャフト22の中間部が螺旋孔21Aに螺合し、螺旋シャフト22の一端部が可動ベース17の端面に回転可能に連結され、さらに、螺旋シャフト22の他端部に回転ハンドル23が固定されている。これにより、回転ハンドル23を回転操作すると、可動ベース17と共に円形カッター19がガイド支柱16の軸方向に移動する。
【0042】
図3に示すように、レール支持装置50は、コンクリートアングル90に固定される固定ベース51と、固定ベース51に対して回転しかつレール部材30に固定されるインナーシャフト56及び可動帯板状部材58とを備えている。
【0043】
図4に示すように、固定ベース51は、固定パイプ52に複数の設置プレート53を溶接して構成されている。それら複数の設置プレート53は、固定パイプ52の軸方向と直交方向に延びた帯板状をなし固定パイプ52の長手方向の複数位置に分散して配置されている。そして、図5に示すように、設置プレート53の長手方向の中央部分が、固定パイプ52の外面に側方から宛われた状態で溶接されている。
【0044】
各設置プレート53のうち固定ベース51と反対側の面は、複数の設置プレート53の間で互いに面一に配置されている。また、設置プレート53のうち固定パイプ52を間に挟んだ両端部には、それぞれアンカー取付孔54が貫通形成されている。そして、コンクリートアングル90に打ち込んだアンカーボルト91を各設置プレート53のアンカー取付孔54に挿通し、設置プレート53群をコンクリートアングル90の平坦面に面当接させた状態にして、アンカーボルト91にワッシャ91W、ナット91Nを取り付けることで、固定ベース51がコンクリートアングル90に固定される。
【0045】
図4に示すように、固定パイプ52には、設置プレート53群とは反対側には、複数の周面開口55が貫通形成されている。それら複数の周面開口55は、固定パイプ52の軸方向の複数位置に配置され、固定パイプ52の周方向に延びている。より具体的には、図5に示すように、固定パイプ52のうち設置プレート53との接合点と固定パイプ52の中心点とを結ぶ線を基準線K1とすると、周面開口55は、基準線K1が固定パイプ52のうち設置プレート53と反対側で交差する基準交差位置P1を挟んで左右両側に延びている。また、基準交差位置P1から周面開口55の一端部までの距離は、基準交差位置P1から周面開口55の他端部までの距離の2倍程度になっている。
【0046】
固定パイプ52の内部には、インナーシャフト56が収容されている。インナーシャフト56は、固定パイプ52内に遊嵌可能なパイプを固定パイプ52と同じ長さに切断してなる。また、インナーシャフト56のうち複数の周面開口55と対応する部分には複数の連結部材57が突設されている。これら複数の連結部材57は、ヘッド部を有しないボルトをインナーシャフト56に溶接してなり、互いに平行になってインナーシャフト56から延びている。なお、これら各連結部材57が各周面開口55に係止することで、インナーシャフト56は固定パイプ52内に抜け止めされている。
【0047】
連結部材57には、可動帯板状部材58がレール部材30と共に固定される。図5に示すように、可動帯板状部材58は、レール部材30のセンターレールプレート32より幅狭な帯板状をなし、その幅方向の中心には、連結部材57群と同じピッチで貫通孔58Aが形成されている。また、可動帯板状部材58の板厚方向を向いた一方の面には、1対の当接用突条59,59が可動帯板状部材58の長手方向に複数対、設けられている(図4参照)。各当接用突条59は、所定長に切断した線材で構成され、その軸方向が可動帯板状部材58の長手方向に平行に配置された状態で可動帯板状部材58に溶接されている。そして、これら当接用突条59,59の間に固定パイプ52が配置されて可動帯板状部材58の連結孔58Aに連結部材57が挿通されている。また、可動帯板状部材58にレール部材30のセンターレールプレート32が重ねられて、レール部材30の取付孔35に連結部材57を挿通した状態で、図6に示すように、ワッシャ30W、ナット30Nが連結部材57に締め付けられている。これにより、インナーシャフト56が固定パイプ52の内面に押し付けられて摩擦係合し、固定パイプ52に対してインナーシャフト56が回転不能に固定されている。この状態で、当接用突条59,59の間に固定パイプ52が押し込まれて若干当接用突条59,59間が広がり、その弾発力で当接用突条59,59が固定パイプ52の外面に押しつけられ、これにより、可動帯板状部材58が固定パイプ52に対して安定する共に、可動帯板状部材58及びレール部材30の幅方向における曲げ変形が防がれている。
【0048】
本実施形態の回動許容建材切断機10の構成に関する説明は以上である。次に、図7に示した略五角形の土地の縁部に沿って塀100を建てる塀建造方法(本発明の「塀壁建造工法」に相当する)について説明する。この塀建造方法では、図8に示した市販のコンクリートアングル90を複数使用する。コンクリートアングル90は、鉛直プレート94と水平プレート95とを直角に接合したL字形状をなし、水平プレート95を地面に敷設し、鉛直に起立させた状態で使用される。そして、複数のコンクリートアングル90におけるL字形側面を互いに接合した状態にして並べることで、コンクリートアングル90群の鉛直プレート94によって塀100を構成するものである。なお、塀100が完成した状態では、水平プレート95の上に土が盛られる。また、その水平プレート95上の土の過剰な水分を排除する鉛直プレート94には水抜き孔94Aが形成されている。
【0049】
本実施形態の塀建造方法では、まず、市販のコンクリートアングル90の横幅の規格寸法Wを参照して、図7に示すように、コンクリートアングル90の配置を示した塀100の施工図を作成する。その際、塀100の角部では、1対のコンクリートアングル90,90の一側部を斜めにカットして、その傾斜カット面同士が接合すると共に、塀100の直線部分の長さ調整のために一部のコンクリートアングル90Cを所定の長さにカットする。なお、カットされるコンクリートアングル90は、図7において符号90A〜90Hとして示されている。
【0050】
さて、コンクリートアングル90をカットするには、上記した回動許容建材切断機10を使用する。そのためにカット対象となる各コンクリートアングル90用に施工図を作成しておく。具体的には、図5に示すように、カット対象となるコンクリートアングル90において、コンクリートアングル90の幅方向の一端面から円形カッター19の押し付け位置P2までの距離S1と、円形カッター19の押し付け位置P2からアンカーボルト91までの距離S2と、アンカーボルト91,91同士の距離S3と、さらに、鉛直プレート94の主平面94S(鉛直プレート94のうち水平プレート95上の突出方向と反対側を向いた面)に対する切断面94Kの傾斜角θを示した施工図を作成しておく。ここで、レール支持装置50における連結部材57の中心軸と円形カッター19のうち連結部材57から離れた側の側面との間のオフセット量L1は、予め特定できるので、そのオフセット量L1と上記傾斜角θとに基づいて、円形カッター19の押し付け位置P2からアンカーボルト91までの距離S2を求めればよい。なお、アンカーボルト91は、コンクリートアングル90のうち切断後、廃棄される部分に配置することが好ましい。
【0051】
施工図を用いてコンクリートアングル90を回動許容建材切断機10にて切断する。その準備として、アンカーボルト91をコンクリートアングル90に打ち込んでおく。また、鉛直プレート94の主平面94Sにおいて、円形カッター19の押し付け位置P2にマークを付けておく。そして、レール支持装置50における固定ベース51のアンカー取付孔54にアンカーボルト91を通し、アンカーボルト91にワッシャ91Wを通してナット91Nを締め付けることで、固定ベース51をコンクリートアングル90に固定する。このとき、固定ベース51から可動帯板状部材58及びレール部材30を離脱させておけば、固定ベース51の取り付け作業を容易に行うことができる。また、固定ベース51に可動帯板状部材58及びレール部材30を取り付けた状態で、固定ベース51の取り付け作業を行ってもよい。
【0052】
次いで、固定ベース51に可動帯板状部材58及びレール部材30を取り付けるナット30Nを緩めた状態でレール支持装置50の角度調整を行う。このとき、例えば、上記した連結部材57と円形カッター19との間のオフセット量L1と同じ幅のゲージプレート(図示せず)の一方の側縁を連結部材57の中心に沿わせた状態にして他方の側縁が鉛直プレート94における円形カッター19の押し付け位置P2と一致するように配置して、かつ、ゲージプレート(図示せず)の側縁と鉛直プレート94の主平面94Sとの間の角度が、施工図通りの傾斜角θになるように配置して、ナット30Nを締め付けて固定ベース51にレール部材30を固定する。
【0053】
次いで、レール部材30に上端部から建材切断機11のスライドベース12を係合させる。次いで、円形カッター19を鉛直プレート94の上方に配置した状態で回転ハンドル23を操作して、鉛直プレート94に対する円形カッター19の切り込み量を調整する。そして、建材切断機11に電源を投入し、回転駆動モータ20にて円形カッター19を回転駆動すると共に、直動駆動モータ15にてピニオン14Gを駆動して、予め設定された一定速度で建材切断機11を降下させて、鉛直プレート94を切断していく。鉛直プレート94が厚くて一度に切断できない場合には、円形カッター19が鉛直プレート94の厚さ方向の一部を切断して通過したときに、回転ハンドル23を操作して更に深く切り込めるように設定して、建材切断機11を上昇させて鉛直プレート94の残りの部分を切断する。
【0054】
鉛直プレート94が切断されたら、レール支持装置50を鉛直プレート94から取り外す。このとき、水平プレート95上の一部にも鉛直プレート94の切断面に連続した切断面が形成されている。そこで、レール部材30をレール支持装置50から取り外して、直にレール部材30を水平プレート95上にアンカーボルト91にて固定する。そして、既存の切断面に沿って水平プレート95上の残りの部分を切断する。このようにして、コンクリートアングル90に2つに切断される。
【0055】
次いで、切断されたコンクリートアングル90を含むコンクリートアングル90群を、施工図の通りに並べて互いの側面(切断面を含む)同士を接合する。これにより、塀100が完成する。
【0056】
このように、本実施形態の塀建造方法では、固定ベース51を塀壁用建材であるコンクリートアングル90に固定すると共に、塀100の屈曲角に応じた任意の角度で、レール部材30と固定ベース51との間の角度を固定してコンクリートアングル90を切断することができるので、従来必要とされた、塀壁用建材を斜めに切断する際の手直し作業を低減させることができかつ塀100の見栄えをよくすることが可能になる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、図9及び図10に基づいて、住居の壁80に新たに出入口を形成するために、第1実施形態の回動許容建材切断機10を使用する壁体開口部形成工法の実施形態について説明する。この壁体開口部形成工法では、住居の壁80に縦長の矩形枠形状のスリット81を形成して、そのスリット81に囲まれた除去対象建材82を除去することで、壁80に出入口を形成する。そして、図10に示すように、除去対象建材82の水平断面(図10(A)参照)と鉛直断面(図10(B)参照)とが共に台形になるようにスリット81を形成するために、回動許容建材切断機10を使用する。
【0058】
具体的には、図9に示すように、レール支持装置50を除去対象建材82の側縁部に沿わせて除去対象建材82にアンカーボルトにて固定する。そして、レール支持装置50に結合させた建材切断機11により、矩形枠形状のスリット81における一方の側辺部81Bを形成し、これと同様にして矩形枠形状のスリット81の他方の側辺部81Bも形成する。このとき、両側辺部81B,81Bにおける円形カッター19による切断面が、除去対象建材82のうちレール支持装置50が取り付けられる表面80Sから、その反対側の裏面80Tに向かうに従って図10(A)に示すように互いに接近するように傾斜させて、除去対象建材82の水平断面を台形にする。なお、スリット81を形成する際に、壁80内の鉄筋80Kも切断する。
【0059】
次いで、レール支持装置50からレール部材30を離脱して、レール部材30を除去対象建材82の下側縁部に沿わせて固定し、建材切断機11により、矩形枠形状のスリット81における下辺部81Cを形成する。これにより、下辺部81Cにおける円形カッター19による切断面は、図10(B)に示すように水平に形成される。
【0060】
最後に、レール支持装置50を除去対象建材82の上側縁部に沿わせて固定し、建材切断機11により、矩形枠形状のスリット81における上辺部81Aを形成する。このとき、上辺部81Aにおける円形カッター19による切断面が、除去対象建材82の表面80Sから裏面80Tに向かうに従って図10(B)に示すように下るように傾斜させる。これにより、除去対象建材82の鉛直断面も台形にする。そして、壁80の裏面80Tから除去対象建材82を押圧すれば、除去対象建材82が壁80から離脱し、壁80に出入口が形成される。
【0061】
このように、本実施形態の壁体開口部形成工法では、除去対象建材82の水平断面及び鉛直断面が共に台形になるように、固定ベース51に対してレール部材30を任意の回動位置に固定して、建造物の壁体にスリット81を貫通形成するので、除去対象建材82を壁80からスムーズに抜き取ることが可能になる。即ち、本実施形態の壁体開口部形成工法によれば、従来のものに比べ、手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。
【0062】
[第3実施形態]
本実施形態のレール傾斜支持台70は、レール支持装置50の代わりに建材切断機11に装着されるものであって、図11に示すように、略三角柱の形状をなし、壁80に重ねて配置される第1側壁71と、第1側壁71の一端部に接合しかつレール部材30に重ねて配置される第2側壁72とを備えている。そして、第2側壁72のうちレール部材30に重ねられるレール側当接面72Tが、第1側壁71のうち壁80に重ねられる建材側当接面71Tに対して鋭角に傾斜している。第1側壁71のうち第2側壁72との接合部分と反対側部分には、長手方向に沿って複数のアンカー取付孔73が設けられている。また、第2側壁72の幅方向の中央位置には、長手方向に沿って複数のレール固定用ボルト74が突設されている。
【0063】
次に、レール傾斜支持台70の作用効果について説明する。レール傾斜支持台70は、第2実施形態で説明した壁体開口部形成工法において、レール支持装置50の代わりに用いられる。具体的には、矩形枠形状のスリット81の両側辺部81B,81B、上辺部81Aを形成する際に、壁80の表面80Sに第1側壁71の建材側当接面71Sを重ねて配置し、アンカーボルトにてレール傾斜支持台70を壁80に固定する。そして、レール部材30を第2側壁72にレール固定用ボルト74を介して取り付ける。すると、壁80のレール傾斜支持台70の固定面に対する切断面の角度を、90度以外の所定の角度で形成することができる。これにより、壁80に矩形枠形状のスリット81を貫通形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材82を除去する作業において、除去対象建材82の水平断面、鉛直断面を台形することができ、除去対象建材82をスムーズに抜き取ることが可能になる。
【0064】
このように、本実施形態のレール傾斜支持台70によれば、除去対象建材82をスムーズに抜き取ることができ、従来のものに比べ、手直し作業を低減させることができかつ建造物の見栄えをよくすることが可能になる。また、前記実施形態のレール支持装置50と比較して構造が簡素なので安価に製造することができる。
【0065】
[第4実施形態]
本実施形態のレール傾斜支持台セット120は、図12に示すように、前記第3実施形態のレール傾斜支持台70と同様の構成のレール傾斜支持台121,122,123をセットにしたものである。各レール傾斜支持台121,122,123は、建材側当接面124,126,128とレール側当接面125,127,129との間の傾斜角が、例えば、30度、45度、60度というように互いに異なっている。
【0066】
本実施形態によれば、コンクリートアングルにおけるレール傾斜支持台の固定面に対する切断面の角度を90度以外の複数の角度の中から任意の角度を選んで設定することができ、コンクリートアングルを利用して塀を建てる作業を容易に行うことが可能になる。また、前記第1実施形態のレール支持装置50に比べて、切断面の角度のばらつきを抑えることができる。
【0067】
[第5実施形態]
本実施形態のレール支持装置50Vは、図13,14に示されている。図13に示すように、コンクリートアングル90に取り付けられる固定プレート110に複数のブロック111が突出して設けられ、それら複数のブロック111同士がシャフト112で連絡されている。また、レール部材30を取り付け可能なレール固定プレート114にも複数のブロック115が突出形成されている。図14に示すように、ブロック115は、シャフト112を嵌合する円筒の側部が固定プレート114に連結した構成をなし、その円筒の周方向に沿った開口部115Kを備えている。そして、シャフト112の外面から突出したボルト部112Aが開口部115Kを貫通している。そして、シャフト112のボルト部112Aをナットで締め付けることで、レール固定プレート114の固定プレート110に対する回動位置が固定される。本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
[第6実施形態]
本実施形態のレール支持装置50Wは、図15に示すように、第1実施形態のレール支持装置50を変形したものである。具体的には、固定パイプ52Wの外周面に溶接された可動帯板状部材58Wにレール部材30が固定され、固定パイプ52Wの外周面のうち可動帯板状部材58Wとの固定部分と反対側部分に周面開口55Wが形成されている。また、固定パイプ52Wの内側には、インナーシャフト56Wが回動可能に収容され、インナーシャフト56Wの外面に突設された連結部材57Wが周面開口55Wを貫通してコンクリートアングル90に重ねて固定される設置プレート53Wに固定されている。インナーシャフト56W及び固定パイプ52Wの外周面には、位置決め貫通孔117,118が周方向に沿って複数設けられ、それら位置決め貫通孔117,118に係止ピン116を挿通させることによりインナーシャフト56Wが固定パイプ52Wに対して任意の回動位置に固定される。
【0069】
本実施形態の構成によれば、可動帯板状部材58W及びレール部材30を固定パイプ52Wに着脱する手間を省くことができる。また、位置決め貫通孔117,118に係止ピン116を挿通させるだけでレール部材30の回動位置を固定することができる。
【0070】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0071】
(1)前記第2実施形態では、スリット81の上辺部81Aが共に水平面に対して傾斜していたが、水平面と平行であってもよい。
【0072】
(2)前記第4実施形態のレール傾斜支持台セット120では、レール傾斜支持台の種類が3つであったが、2つであっても4つ以上であってもよい。
【0073】
(3)前記第1実施形態では、固定パイプ52に対するインナーシャフト56の固定機構が、連結シャフト57にナット30Nを締め付ける構成であったが、図16に示すように、インナーシャフト56Xを固定パイプ52Xより上方に突出させ、固定パイプ52Xの上面に複数設けた固定用フック130をバックル132を備えた締付リング131で締めつける構成であってもよい。
【0074】
(4)また、図17に示すように、インナーシャフト56Yと固定パイプ52Yとの間で、トグル機構を適用した突っ張り棒133を複数突っ張らせる構成であってもよい。なお、図17の右側には、突っ張り状態の突っ張り棒133が示されており、左側には、突っ張り状態が解除された突っ張り棒133が示されている。
【符号の説明】
【0075】
10 回動許容建材切断機
11 建材切断機
12 スライドベース
14G ピニオン
15 直動駆動モータ
19 円形カッター
30 レール部材
30N ナット
31 ラック
50,50V,50W レール支持装置
51,51W 固定ベース
52,52W,52X,52Y 固定パイプ
53,53W 設置プレート
54 アンカー取付孔
55,55W 周面開口
56,56W,56X,56Y インナーシャフト
57,57W 連結部材
58,58W 可動帯板状部材
59 当接用突条
70,121,122,123 レール傾斜支持台
71 第1側壁
71T 建材側当接面
72 第2側壁
72T レール側当接面
80 壁
81 スリット
82 除去対象建材
90 コンクリートアングル
100 塀
120 レール傾斜支持台セット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、塀壁用建材を直線状に切断可能な建材切断機の前記レール部材を、前記塀壁用建材に固定するためのレール支持装置であって、
前記塀壁用建材にアンカーにて固定可能な固定ベースと、
前記レール部材の長手方向と平行な回転軸回りに前記レール部材を前記固定ベースに対して回動可能に連結するヒンジ機構と、
前記レール部材を前記固定ベースに対して任意の回動位置で固定するための回動固定機構とを備えたことを特徴とするレール支持装置。
【請求項2】
前記ヒンジ機構は、前記固定ベースに設けられかつ前記レール部材の長手方向に延びた固定パイプと、
前記固定パイプ内に回動可能に収容されたインナーシャフトと、
前記固定パイプの軸方向の複数位置に配置されかつ前記固定パイプの周方向で前記インナーシャフトの回動許容範囲に亘って開口した複数の周面開口と、
前記複数の周面開口を通して前記インナーシャフトから突出し、前記インナーシャフトと前記レール部材とを一体回転可能に連結するための複数の連結部材とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載のレール支持装置。
【請求項3】
前記固定パイプの軸方向に延びた可動帯板状部材を前記固定パイプと別体にして設けると共に、その可動帯板状部材に前記レール部材を固定可能とし、
前記複数の連結部材の一端部に雄ネジ部を形成して、前記複数の連結部材の一端部を、前記可動帯板状部材に形成した連結孔に挿通して前記雄ネジ部にナットを締め付けることで、前記ナットと前記固定パイプとの間に前記可動帯板状部材を挟んで固定可能とし、
前記雄ネジ部及び前記ナットと、それらの締め付けによって互いに摩擦係合する前記インナーシャフト及び前記固定パイプとによって前記回動固定機構を構成したことを特徴とする請求項2に記載のレール支持装置。
【請求項4】
前記連結孔は、前記可動帯板状部材の幅方向の中央に配置され、
前記可動帯板状部材のうち前記固定パイプとの対向面には、前記可動帯板状部材の幅方向の中央線に対する対称位置に、前記固定パイプの外周面に当接する1対の当接用突条が突出形成されたことを特徴とする請求項3に記載のレール支持装置。
【請求項5】
前記固定ベースは、前記固定パイプと、前記固定パイプの長手方向の複数位置に配置されて前記固定パイプの外周面に側方から宛がわれた状態に固定された複数の設置プレートとを備えてなり、それら各設置プレートのうち前記固定パイプを間に挟んだ両側部にそれぞれアンカー取付孔を形成したことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1の請求項に記載のレール支持装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れかに記載のレール支持装置と前記建材切断機とからなることを特徴とする回動許容建材切断機。
【請求項7】
前記レール部材に固定されかつその長手方向に延びたラックと、前記レール部材に直動可能に組み付けた補助回転駆動源と、前記補助回転駆動源にて回転駆動されかつ前記ラックに噛合したピニオンと、前記建材切断機を予め設定された速度で前記レール部材に沿って移動するように前記補助回転駆動源を制御する直動制御部とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の回動許容建材切断機。
【請求項8】
前記レール部材に直動可能に係合したスライダと、前記レール部材の長手方向及び前記円形カッターの回転軸方向に共に直交する補助軸方向で前記スライダに対して前記建材切断機を直動可能に案内する補助直動機構と、前記建材切断機を補助軸方向の任意の位置に保持するための補助固定機構とを備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の回動許容建材切断機。
【請求項9】
レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、塀壁用建材を直線状に切断可能な建材切断機の前記レール部材と、前記塀壁用建材との間に配置されて、前記塀壁用建材における前記レール部材との対向面に対する前記円形カッターの回転軸の角度を所定の傾斜角に保持するためのレール傾斜支持台であって、
前記レール部材の長手方向に延びた略三角柱の形状をなし、その略三角柱の第1の側面が前記塀壁用建材に重ねて配置される建材側当接面をなすと共に、前記略三角柱のうち前記第1の側面に対して鋭角に傾斜した第2の側面が前記レール部材に重ねて配置されるレール側当接面をなし、前記塀壁用建材建材にアンカーにて固定するためのアンカー取付孔と、前記レール部材にボルト又はナットにて固定するためのレール固定部とを備えたことを特徴とするレール傾斜支持台。
【請求項10】
前記建材側当接面と前記レール側当接面との間の傾斜角が互いに相違する複数種類の請求項9に係るレール傾斜支持台をセットにして備えたことを特徴とするレール傾斜支持台セット。
【請求項11】
レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して塀壁用建材を直線状に切断して、その切断面を他の塀壁用建材に接合し、建造物の壁体や塀を建造する塀壁建造工法において、
前記レール部材の長手方向と平行な回転軸を中心に前記レール部材に対して回動し、任意の回動位置に固定可能な固定ベースを設けておき、
前記固定ベースを前記塀壁用建材に固定すると共に、前記壁体又は塀のうち前記塀壁用建材同士の接合部分の屈曲角に応じた任意の角度に、前記レール部材と前記固定ベースとの間の角度を固定して前記塀壁用建材を切断することを特徴とする塀壁建造工法。
【請求項12】
レール部材に直動可能に支持された回転駆動源で円形カッターを回転駆動して、建造物の壁体に矩形枠形状のスリットを貫通形成し、そのスリットに囲まれた除去対象建材を除去して、前記壁体に出入口又は窓用の開口部を形成する壁体開口部形成工法において、
前記レール部材の長手方向と平行な回転軸を中心に前記レール部材に対して回動し、任意の回動位置に固定可能な固定ベースを設けておき、
前記除去対象建材の水平断面が台形になるように、前記固定ベースを前記建造物の壁体に固定すると共に、前記レール部材と前記固定ベースとの間の角度を固定して、前記建造物の壁体に前記スリットを貫通形成することを特徴とする壁体開口部形成工法。
【請求項13】
前記除去対象建材の鉛直断面が台形になるように、前記固定ベースを前記建造物の壁体に固定すると共に、前記レール部材と前記固定ベースとの間の角度を固定して、前記建造物の壁体に前記スリットを貫通形成することを特徴とする請求項12に記載の壁体開口部形成工法。
【請求項14】
前記矩形枠形状における上辺部分又は側辺部分より先に下辺部分の前記スリットを形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の壁体開口部形成工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−126144(P2011−126144A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287112(P2009−287112)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(309031260)株式会社さつま工業 (2)
【Fターム(参考)】