レール検査装置
【課題】 レール表層の磁気的、電気的変化を測定することにより、シェリング(表面剥離)の発生を未然に防止することができる。
【解決手段】レール検査装置において、レール1の表面の上方に配置される高感度磁気センサ2を有する測定器本体3と、この測定器本体3の近傍に配置され、前記レール1に微弱な磁場を付与する着磁装置4と、この着磁装置4の近傍に配置され、前記レール1の残留磁気を除去する消磁装置5とを具備する。
【解決手段】レール検査装置において、レール1の表面の上方に配置される高感度磁気センサ2を有する測定器本体3と、この測定器本体3の近傍に配置され、前記レール1に微弱な磁場を付与する着磁装置4と、この着磁装置4の近傍に配置され、前記レール1の残留磁気を除去する消磁装置5とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの疲労度合を検査するレール検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12〜図14はレール頭頂面の疲労損傷形態を示す写真であり、図12には、レールの転がり接触疲労状態が示され、図13には車輪空転やブレーキによる白色層(熱変態相)が形成された状態が示され、図14には図12や図13を経て微小亀裂が発生した状態が示されている(下記非特許文献1参照)。
【0003】
このように、微小亀裂の発生が進展して、シェリング(表面剥離)の発生へと移行する。
【0004】
従来レールの疲労度合は、レールの目視によっており、50μm以上の微小亀裂を検査するようにしており、熟練が要求されるものであった。
【0005】
また、磁粉探傷用磁粉液を用意し、被探傷材としてのレールを磁化させながらその磁粉探傷用磁粉液を塗布し、磁粉模様に基づいてレールの探傷を行うようにしたもの(下記特許文献1)が開示されている。
【0006】
なお、レール検査は、超音波測定が一般的である。
【特許文献1】特開2001−21540号公報
【非特許文献1】鉄道総研報告 Vol.19,No.9,2005.9 pp.17−22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した検査方法では、熟練を有するとともに、その検査に個人差が生じる。また、磁粉探傷によるものは、検査が面倒であり、効率が落ちるといった問題があった。
【0008】
また、超音波測定によるレール検査では、疲労状態を確認することは困難である。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、レール表層の磁気的、電気的変化を測定することにより、シェリング(表面剥離)の発生を未然に防止することができるレール検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、この測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、この着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とする。
【0011】
〔2〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを具備する測定器本体と、この測定器本体の回りに配置され、交番磁界を発生させることにより、前記レールに渦電流を生成させる信号発信用コイルとを具備することを特徴とする。
【0012】
〔3〕上記〔2〕記載のレール検査装置において、前記測定器本体と信号発信用コイルとの近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とする。
【0013】
〔4〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、前記レールに直流電流を供給する直流電源とを具備することを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔1〕、〔2〕又は〔4〕記載のレール検査装置において、前記高感度磁気センサとして、高温超電導体を用いた超電導量子干渉素子(SQUID)を用いることを特徴とする。
【0015】
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、検測車の下部に配置されることを特徴とする。
【0016】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、手押車の下部に配置されることを特徴とする。
【0017】
〔8〕上記〔6〕又は〔7〕記載のレール検査装置において、前記手押車の車輪が非磁性体からなることを特徴とする。
【0018】
〔9〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、支持脚を有する定点測定装置であることを特徴とする。
【0019】
〔10〕上記〔9〕記載のレール検査装置において、前記支持脚が非磁性体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄道用レール表層の磁気的、電気的変化を測定することにより、レールのシェリング(表面剥離)の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のレール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、この測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、この着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示すレール検査装置の模式図、図2は図1に示すレール検査装置の右側面図である。
【0024】
この図において、1はレール、1Aはレール表層、3は高感度磁気センサ2を有する測定器本体、4はこの測定器本体3の下部のレール1に微弱な磁場を付与する着磁装置、5は着磁装置4の下部のレール1の残留磁気を除去する消磁装置である。このレール検査装置は、検測車6の下部に配置することができる。また、7は検測車6の車輪である。なお、検測車は手押車としてもよい、その際には、車輪は磁気的影響を受けない、非磁性体からなるものにするのが好適である。
【0025】
なお、このレール検査装置は、図11に示すように、支持脚を有する定点測定装置として構成するようにしてもよい。
【0026】
レールは疲労するとレール組織の磁気的性質が変化する。その磁気的性質の微小変化を高感度磁気センサ2で捉える。その場合、レール材料は、レール1への通電などにより磁気を帯びているため、これを消磁装置5により消磁する。
【0027】
その後、着磁装置4にて新たな微弱な磁場を付与する。そこで、その着磁した磁場分布を高感度磁気センサ2にて測定する。
【0028】
その測定により、レールの疲労した部分の磁場はレールが疲労していない周囲とは異なるため、レールの疲労部分の検知が可能である。
【0029】
図3は本発明の第2実施例を示すレール検査装置の模式図、図4は図3に示すレール検査装置の右側面図である。
【0030】
この図において、11はレール、11Aはレール表層、13は高感度磁気センサ12を有する測定器本体、14はその測定器本体13の回りに配置される信号発信用コイルである。なお、このレール検査装置は、検測車15の下部に配置することができる。また、16は検測車15の車輪である。
【0031】
このレール検査装置は、検測車15の下部に配置することができる。また、16は検測車15の車輪である。なお、検測車は手押車としてもよく、その際には、車輪は磁気的影響を受けない、非磁性体から成るものにするのが好適である。
【0032】
勿論、このレール検査装置は、図11に示すように、支持脚を有する定点測定装置として構成するようにしてもよい。
【0033】
上記したように、レール11が疲労するとレール組織の電気的性質が変化するが、その電気的性質の微小変化を磁気的変化に変換し、高感度磁気センサ12で捉える。
【0034】
具体的には、信号発信用コイル14にて、交番磁界を発生させる。信号発信用コイル14による交番磁界により、レール表層に渦電流が発生する。この渦電流の作る磁界の大きさを高感度磁気センサ12にて測定する。
【0035】
なお、勿論、第2実施例においても、残留磁界の影響を除去するため、第1実施例と同様に、消磁装置を配置するようにしてもよい。
【0036】
この渦電流法を用いたレール試料の測定例について説明する。
【0037】
図5はレール試料の断面図、図6はその頭頂部の拡大部断面図、図7は疲労していない未使用のレール試料による疲労検査結果を示す図、図8は経年使用の実使用レール試料による疲労検査結果を示す図である。
【0038】
これらの図において、21はレールの脚部、22はレールの頭頂部であり、そのレールの頭頂部22は、例えば、頭頂平坦部22C(20mm〜50mm)と、R部分(10〜20mm)22Bと、エッジ部分(0〜10mm)22Aとを有している。
【0039】
図7においては、未使用レール試料を長手方向に40mm、横断方向に34mmの2次元的に走査した。端部付近(図左側)の数箇所に誘導磁場の大きな部分(0.5〜0.183nT程度)があるが、これはエッジ効果によるものと思われる。それ以外のエリアでは誘導磁場分布は平坦であり、試料に異常のないことがわかる。
【0040】
図8においては、実使用レール試料についてレール長さ18mm、横断方向に50mmの2次元的走査を行った。
【0041】
図7における未使用レールとの走査方向は異なっている。つまり、図8では実使用レールの横断方向に走査した。これによれば、レールのR部分でエッジの影響が出ており、上下のライン(低いnT)に対応している。実使用レールでは、車輪が集中して通過するラインがあり、誘導磁場分布も対応したライン(幅方向40.40mm近傍に特に高いnTの誘導磁場が見受けられる。
【0042】
なお、勿論、第2実施例においても、図9に示すように、残留磁界の影響を除去するため、第1実施例と同様に、消磁装置17を配置するようにしてもよい。
【0043】
このように構成すると、第2実施例に加えて、更にレールに流れている電流による磁界を除去することができる。
【0044】
図10は本発明の第3実施例を示すレール検査装置の模式図、図11は図10に示すレール検査装置の右側面図である。
【0045】
この図において、31はレール、31Aはレール表層、33は高感度磁気センサ32を有する測定器本体、34はレール31の表面に直流電流を通電するための直流電源である。
【0046】
この実施例では、直流電源を接続する必要があるので、図11に示すように、このレール検査装置の両側には支持脚35を設けて、定点測定を行うことが望ましい。当然、非磁性体からなる車輪付きの手押車として構成してももよい。
【0047】
上記したように、レール31が疲労するとレール組織の電気的性質が変化するが、その電気的性質の微小変化を磁気的変化に変換し、高感度磁気センサ32で捉える。
【0048】
より具体的には、レール31の表面に直接電流Iを通電する。その通電電流Iによる磁界がレール31の表層に発生する。この通電電流Iによって生成される磁界を高感度磁気センサ32にて測定する。
【0049】
ここで、電気的に変化している部分の電流パスは健全部と異なるため、異常部を発見することが出来る。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のレール検査装置は、簡単に誰でも使用できるレールの疲労度の検査装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図2】図1に示すレール検査装置の右側面図である。
【図3】本発明の第2実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図4】図3に示すレール検査装置の右側面図である。
【図5】レール試料の断面図である。
【図6】レール試料の頭頂部の拡大部断面図である。
【図7】疲労していない未使用のレール試料による疲労検査結果を示す図である。
【図8】経年使用の実使用レール試料による疲労検査結果を示す図である。
【図9】本発明の第2実施例の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図11】図10に示すレール検査装置の右側面図である。
【図12】レールの転がり接触疲労状態を示めす図面代用としての写真である。
【図13】車輪空転やブレーキによる白色層(熱変態相)が形成された状態を示めす図面代用としての写真である。
【図14】図12や図13を経て微小亀裂が発生した状態を示めす図面代用としての写真である。
【符号の説明】
【0053】
1,11,31 レール
1A,11A,31A レール表層
2,12,32 高感度磁気センサ
3,13,33 測定器本体
4 着磁装置
5,17 消磁装置
6,15 検測車
7,16 車輪
14 信号発信用コイル
21 レールの脚部
22 レールの頭頂部
22A エッジ部分
22B R部分
22C 頭頂平坦部
34 直流電源
35 支持脚
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの疲労度合を検査するレール検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12〜図14はレール頭頂面の疲労損傷形態を示す写真であり、図12には、レールの転がり接触疲労状態が示され、図13には車輪空転やブレーキによる白色層(熱変態相)が形成された状態が示され、図14には図12や図13を経て微小亀裂が発生した状態が示されている(下記非特許文献1参照)。
【0003】
このように、微小亀裂の発生が進展して、シェリング(表面剥離)の発生へと移行する。
【0004】
従来レールの疲労度合は、レールの目視によっており、50μm以上の微小亀裂を検査するようにしており、熟練が要求されるものであった。
【0005】
また、磁粉探傷用磁粉液を用意し、被探傷材としてのレールを磁化させながらその磁粉探傷用磁粉液を塗布し、磁粉模様に基づいてレールの探傷を行うようにしたもの(下記特許文献1)が開示されている。
【0006】
なお、レール検査は、超音波測定が一般的である。
【特許文献1】特開2001−21540号公報
【非特許文献1】鉄道総研報告 Vol.19,No.9,2005.9 pp.17−22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した検査方法では、熟練を有するとともに、その検査に個人差が生じる。また、磁粉探傷によるものは、検査が面倒であり、効率が落ちるといった問題があった。
【0008】
また、超音波測定によるレール検査では、疲労状態を確認することは困難である。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、レール表層の磁気的、電気的変化を測定することにより、シェリング(表面剥離)の発生を未然に防止することができるレール検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、この測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、この着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とする。
【0011】
〔2〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを具備する測定器本体と、この測定器本体の回りに配置され、交番磁界を発生させることにより、前記レールに渦電流を生成させる信号発信用コイルとを具備することを特徴とする。
【0012】
〔3〕上記〔2〕記載のレール検査装置において、前記測定器本体と信号発信用コイルとの近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とする。
【0013】
〔4〕レール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、前記レールに直流電流を供給する直流電源とを具備することを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔1〕、〔2〕又は〔4〕記載のレール検査装置において、前記高感度磁気センサとして、高温超電導体を用いた超電導量子干渉素子(SQUID)を用いることを特徴とする。
【0015】
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、検測車の下部に配置されることを特徴とする。
【0016】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、手押車の下部に配置されることを特徴とする。
【0017】
〔8〕上記〔6〕又は〔7〕記載のレール検査装置において、前記手押車の車輪が非磁性体からなることを特徴とする。
【0018】
〔9〕上記〔1〕から〔5〕の何れか1項記載のレール検査装置が、支持脚を有する定点測定装置であることを特徴とする。
【0019】
〔10〕上記〔9〕記載のレール検査装置において、前記支持脚が非磁性体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄道用レール表層の磁気的、電気的変化を測定することにより、レールのシェリング(表面剥離)の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のレール検査装置において、レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、この測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、この着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示すレール検査装置の模式図、図2は図1に示すレール検査装置の右側面図である。
【0024】
この図において、1はレール、1Aはレール表層、3は高感度磁気センサ2を有する測定器本体、4はこの測定器本体3の下部のレール1に微弱な磁場を付与する着磁装置、5は着磁装置4の下部のレール1の残留磁気を除去する消磁装置である。このレール検査装置は、検測車6の下部に配置することができる。また、7は検測車6の車輪である。なお、検測車は手押車としてもよい、その際には、車輪は磁気的影響を受けない、非磁性体からなるものにするのが好適である。
【0025】
なお、このレール検査装置は、図11に示すように、支持脚を有する定点測定装置として構成するようにしてもよい。
【0026】
レールは疲労するとレール組織の磁気的性質が変化する。その磁気的性質の微小変化を高感度磁気センサ2で捉える。その場合、レール材料は、レール1への通電などにより磁気を帯びているため、これを消磁装置5により消磁する。
【0027】
その後、着磁装置4にて新たな微弱な磁場を付与する。そこで、その着磁した磁場分布を高感度磁気センサ2にて測定する。
【0028】
その測定により、レールの疲労した部分の磁場はレールが疲労していない周囲とは異なるため、レールの疲労部分の検知が可能である。
【0029】
図3は本発明の第2実施例を示すレール検査装置の模式図、図4は図3に示すレール検査装置の右側面図である。
【0030】
この図において、11はレール、11Aはレール表層、13は高感度磁気センサ12を有する測定器本体、14はその測定器本体13の回りに配置される信号発信用コイルである。なお、このレール検査装置は、検測車15の下部に配置することができる。また、16は検測車15の車輪である。
【0031】
このレール検査装置は、検測車15の下部に配置することができる。また、16は検測車15の車輪である。なお、検測車は手押車としてもよく、その際には、車輪は磁気的影響を受けない、非磁性体から成るものにするのが好適である。
【0032】
勿論、このレール検査装置は、図11に示すように、支持脚を有する定点測定装置として構成するようにしてもよい。
【0033】
上記したように、レール11が疲労するとレール組織の電気的性質が変化するが、その電気的性質の微小変化を磁気的変化に変換し、高感度磁気センサ12で捉える。
【0034】
具体的には、信号発信用コイル14にて、交番磁界を発生させる。信号発信用コイル14による交番磁界により、レール表層に渦電流が発生する。この渦電流の作る磁界の大きさを高感度磁気センサ12にて測定する。
【0035】
なお、勿論、第2実施例においても、残留磁界の影響を除去するため、第1実施例と同様に、消磁装置を配置するようにしてもよい。
【0036】
この渦電流法を用いたレール試料の測定例について説明する。
【0037】
図5はレール試料の断面図、図6はその頭頂部の拡大部断面図、図7は疲労していない未使用のレール試料による疲労検査結果を示す図、図8は経年使用の実使用レール試料による疲労検査結果を示す図である。
【0038】
これらの図において、21はレールの脚部、22はレールの頭頂部であり、そのレールの頭頂部22は、例えば、頭頂平坦部22C(20mm〜50mm)と、R部分(10〜20mm)22Bと、エッジ部分(0〜10mm)22Aとを有している。
【0039】
図7においては、未使用レール試料を長手方向に40mm、横断方向に34mmの2次元的に走査した。端部付近(図左側)の数箇所に誘導磁場の大きな部分(0.5〜0.183nT程度)があるが、これはエッジ効果によるものと思われる。それ以外のエリアでは誘導磁場分布は平坦であり、試料に異常のないことがわかる。
【0040】
図8においては、実使用レール試料についてレール長さ18mm、横断方向に50mmの2次元的走査を行った。
【0041】
図7における未使用レールとの走査方向は異なっている。つまり、図8では実使用レールの横断方向に走査した。これによれば、レールのR部分でエッジの影響が出ており、上下のライン(低いnT)に対応している。実使用レールでは、車輪が集中して通過するラインがあり、誘導磁場分布も対応したライン(幅方向40.40mm近傍に特に高いnTの誘導磁場が見受けられる。
【0042】
なお、勿論、第2実施例においても、図9に示すように、残留磁界の影響を除去するため、第1実施例と同様に、消磁装置17を配置するようにしてもよい。
【0043】
このように構成すると、第2実施例に加えて、更にレールに流れている電流による磁界を除去することができる。
【0044】
図10は本発明の第3実施例を示すレール検査装置の模式図、図11は図10に示すレール検査装置の右側面図である。
【0045】
この図において、31はレール、31Aはレール表層、33は高感度磁気センサ32を有する測定器本体、34はレール31の表面に直流電流を通電するための直流電源である。
【0046】
この実施例では、直流電源を接続する必要があるので、図11に示すように、このレール検査装置の両側には支持脚35を設けて、定点測定を行うことが望ましい。当然、非磁性体からなる車輪付きの手押車として構成してももよい。
【0047】
上記したように、レール31が疲労するとレール組織の電気的性質が変化するが、その電気的性質の微小変化を磁気的変化に変換し、高感度磁気センサ32で捉える。
【0048】
より具体的には、レール31の表面に直接電流Iを通電する。その通電電流Iによる磁界がレール31の表層に発生する。この通電電流Iによって生成される磁界を高感度磁気センサ32にて測定する。
【0049】
ここで、電気的に変化している部分の電流パスは健全部と異なるため、異常部を発見することが出来る。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のレール検査装置は、簡単に誰でも使用できるレールの疲労度の検査装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図2】図1に示すレール検査装置の右側面図である。
【図3】本発明の第2実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図4】図3に示すレール検査装置の右側面図である。
【図5】レール試料の断面図である。
【図6】レール試料の頭頂部の拡大部断面図である。
【図7】疲労していない未使用のレール試料による疲労検査結果を示す図である。
【図8】経年使用の実使用レール試料による疲労検査結果を示す図である。
【図9】本発明の第2実施例の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示すレール検査装置の模式図である。
【図11】図10に示すレール検査装置の右側面図である。
【図12】レールの転がり接触疲労状態を示めす図面代用としての写真である。
【図13】車輪空転やブレーキによる白色層(熱変態相)が形成された状態を示めす図面代用としての写真である。
【図14】図12や図13を経て微小亀裂が発生した状態を示めす図面代用としての写真である。
【符号の説明】
【0053】
1,11,31 レール
1A,11A,31A レール表層
2,12,32 高感度磁気センサ
3,13,33 測定器本体
4 着磁装置
5,17 消磁装置
6,15 検測車
7,16 車輪
14 信号発信用コイル
21 レールの脚部
22 レールの頭頂部
22A エッジ部分
22B R部分
22C 頭頂平坦部
34 直流電源
35 支持脚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、
(b)該測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、
(c)該着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項2】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを具備する測定器本体と、
(b)該測定器本体の回りに配置され、交番磁界を発生させることにより、前記レールに渦電流を生成させる信号発信用コイルとを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項3】
請求項2記載のレール検査装置において、前記測定器本体と信号発信用コイルとの近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項4】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、
(b)前記レールに直流電流を供給する直流電源とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項5】
請求項1、2又は4記載のレール検査装置において、前記高感度磁気センサとして、高温超電導体を用いた超電導量子干渉素子(SQUID)を用いることを特徴とするレール検査装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、検測車の下部に配置されることを特徴とするレール検査装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、手押車の下部に配置されることを特徴とするレール検査装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のレール検査装置において、前記手押車の車輪が非磁性体からなることを特徴とするレール検査装置。
【請求項9】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、支持脚を有する定点測定装置であることを特徴とするレール検査装置。
【請求項10】
請求項9記載のレール検査装置において、前記支持脚が非磁性体からなることを特徴とするレール検査装置。
【請求項1】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、
(b)該測定器本体の近傍に配置され、前記レールに微弱な磁場を付与する着磁装置と、
(c)該着磁装置の近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項2】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを具備する測定器本体と、
(b)該測定器本体の回りに配置され、交番磁界を発生させることにより、前記レールに渦電流を生成させる信号発信用コイルとを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項3】
請求項2記載のレール検査装置において、前記測定器本体と信号発信用コイルとの近傍に配置され、前記レールの残留磁気を除去する消磁装置とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項4】
(a)レールの表面の上方に配置される高感度磁気センサを有する測定器本体と、
(b)前記レールに直流電流を供給する直流電源とを具備することを特徴とするレール検査装置。
【請求項5】
請求項1、2又は4記載のレール検査装置において、前記高感度磁気センサとして、高温超電導体を用いた超電導量子干渉素子(SQUID)を用いることを特徴とするレール検査装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、検測車の下部に配置されることを特徴とするレール検査装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、手押車の下部に配置されることを特徴とするレール検査装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のレール検査装置において、前記手押車の車輪が非磁性体からなることを特徴とするレール検査装置。
【請求項9】
請求項1から5の何れか1項記載のレール検査装置が、支持脚を有する定点測定装置であることを特徴とするレール検査装置。
【請求項10】
請求項9記載のレール検査装置において、前記支持脚が非磁性体からなることを特徴とするレール検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−111753(P2008−111753A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295650(P2006−295650)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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