説明

レール移動型案内機構

【課題】レール移動型案内機構を軽量化する。
【解決手段】固定部材30と、固定部材30に対して移動することによって固定部材30との相対的な位置をかえるスライダ32とを備える。固定部材30には、ガイドブロック34が設けられ、スライダ32にはスライダ32の移動軸方向に沿ってガイドブロック34より長く延設され、ガイドブロック34と摺動するように係合するガイドレール36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール移動型案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元測定装置や輪郭測定装置等のプローブを使用して測定を行う装置において、プローブやステージを移動させるための案内機構が用いられている。
【0003】
図5に、三次元測定装置の基本構成を示す。三次元測定装置は、三次元測定機100と制御装置200とから構成される。三次元測定機100は、ベース10、測定手段12とから構成される。ベース10は、被測定物を設置するために精密平坦加工された面を備える。測定手段12は、プローブ12aと、プローブ12aをX軸,Y軸,Z軸に移動させる相対移動機構12bを備える。
【0004】
相対移動機構12bは、Y軸スライド機構14と、X軸スライド機構16と、Z軸スライド機構18とを備える。Y軸スライド機構14は、ベース10上でY方向に設けられたY軸ガイドレール14aと、Y軸ガイドレール14aに沿って移動可能に設けられたY軸スライダ14bとを有する。Y軸スライダ14bには、Y軸ガイドレール14aに嵌め合って機能するエアベアリングが設けられている。また、X軸スライド機構16は、Y軸スライド機構14に設けられた部材上でX方向に設けられたX軸ガイドレール16aと、X軸ガイドレール16aに沿って移動可能に設けられたX軸スライダ16bとを有する。X軸スライダ16bには、X軸ガイドレール16aに嵌め合って機能するエアベアリングが設けられている。
【0005】
Z軸スライド機構18は、X軸スライダ16bに取り付けられた固定部材18aと、固定部材18aに沿って移動可能に設けられたZ軸スライダ18bとを有する。Z軸スライダ18bには、図6に示すように、ボールベアリング18cが設けられる。また、固定部材18aにはZ軸ガイドレール18dが設けられる。ボールベアリング18cがZ軸ガイドレール18dに嵌め合わされる。ボールベアリング18cがZ軸ガイドレール18dに沿って摺動することによって、ベース10に対してZ軸スライダ18bをZ方向に相対的に移動させる。
【0006】
Y軸スライド機構14、X軸スライド機構16、Z軸スライド機構18にはそれぞれ駆動モータ(図示しない)と、ベース10との相対的位置を検出する位置センサ(図示しない)がそれぞれ設けられる。駆動モータ及び位置センサは制御装置200に接続される。
【0007】
Z軸スライダ18bには、プローブ12aが取り付けられる。プローブ12aの先端には接触センサが設けられる。接触センサは制御装置200に接続される。制御装置200は、接触センサからの信号に基づいてプローブ12aの先端をベース10上に置かれた被測定物の表面に接触させた状態を維持するように駆動モータを用いてY軸スライド機構14、X軸スライド機構16及びZ軸スライド機構18を駆動し、そのときのリニアエンコーダの位置データを受信してサンプリングして内蔵メモリ(図示しない)に保存する。これにより、被測定物の外形状を求めることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−85387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、Z軸スライド機構18のZ軸ガイドレール18dと、Z軸ガイドレール18dが固定される固定部材18aとを異なる材料で構成すると、温度変化に応じて固定部材18aとZ軸ガイドレール18dとの間にバイメタル効果が生じ、測定誤差の原因となる。一般的に固定部材18aは鉄(Fe)系の材料で形成されるので、バイメタル効果を抑制するために一般的にZ軸ガイドレール18dも鉄系材料で形成される。
【0010】
一方、固定部材18a及びZ軸ガイドレール18dを比重が大きい鉄系材料で形成した場合、それを支えるX軸スライド機構16、さらにはX軸スライド機構16を支えるY軸スライド機構14も頑丈に重く作る必要があり、三次元測定機100のサイズが大きくなり及び重量も重くなってしまうという問題を生ずる。
【0011】
さらに、X軸スライド機構16、Y軸スライド機構14の重量が重くなると、それを駆動する駆動モータ20y、20xの容量も大きくする必要があり、三次元測定機100の重量がさらに重くなってしまうと共に、装置の製造コストも増大してしまうという問題も生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、固定部材と、前記固定部材に対して移動することによって前記固定部材との相対的な位置をかえるスライダと、を備え、前記固定部材には、ガイドブロックが設けられ、前記スライダには、前記スライダの移動軸方向に沿って前記ガイドブロックより長く延設され、前記ガイドブロックと摺動するように係合するガイドレールが設けられていることを特徴とするレール移動型案内機構である。
【0013】
ここで、前記ガイドレールは、前記固定部材と異なる材質で形成されていることが好適である。より具体的には、前記ガイドレールは、前記固定部材より比重が大きい材質で形成されていることが好適である。例えば、前記固定部材はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、前記ガイドレールは鉄系材料で形成されていることが好適である。
【0014】
また、前記固定部材は、前記スライダの移動軸方向とは異なる移動軸を有するスライド機構に固定されていることが好適である。
【0015】
例えば、前記レール移動型案内機構と、前記スライダとは異なる移動軸を有すると共に、互いに異なる移動軸を有する複数のスライド機構と、を備え、前記レール移動型案内機構と、前記複数のスライド機構と、の組み合わせによって、プローブを被測定対象物に対して相対的に移動させることで前記被測定対象物の形状を測定する三次元測定装置に適用することが好適である。
【0016】
特に、前記レール移動型案内機構の移動軸が垂直方向であることを特徴とする三次元測定装置において本発明の効果は顕著となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レール移動型案内機構を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態におけるレール移動型案内機構300は、図1に示すように、固定部材30及びスライダ32を含んで構成される。詳細は後述するが、固定部材30はスライダ32に組み合わされて、X軸スライダ16bの摺動方向(X軸方向、すなわち、図の左右方向)と直交する方向に摺動する構成となっている。レール移動型案内機構300は、例えば、三次元測定機や輪郭測定装置のスライド機構として用いられる。本実施の形態では、三次元測定機のZ軸スライド機構として用いる例で説明する。
【0019】
固定部材30は、他の部材に固定される部材である。例えば、レール移動型案内機構300を三次元測定機のZ軸スライド機構に適用した場合、固定部材30はX軸スライド機構16のX軸スライダ16bに固定される。スライダ32は、固定部材30に対してZ方向に相対的な位置を変える部材である。
【0020】
固定部材30には、図2に示すように、ガイドブロック34が設けられる。本実施の形態では、固定部材30のスライダ32に対する摺動方向に沿って固定部材30の表面の端部に、所定の間隔を有して2つずつガイドブロック34を設けている。なお、端部に設けられるガイドブロック34の個数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよく、また、1つであってもよい。
【0021】
また、スライダ32には、図3に示すように、ガイドレール36が設けられる。本実施の形態では、ガイドレール36は、固定部材30と向き合うスライダ32の表面の端部に、固定部材30に設けられたガイドブロック34に対向するようにして、スライダ32の固定部材30に対する摺動方向に沿って延設される。
【0022】
本実施の形態では、固定部材30の摺動方向(Z軸方向)のサイズは、スライダ32の摺動方向のサイズの略半分程度とされている。このような構成とすることによって、スライダ32に設けられたガイドレール36は、固定部材30に設けられたガイドブロック34よりも長く延設されることになる。また、固定部材30の摺動方向のサイズを、スライダ32の摺動方向のサイズと同程度とした場合と比較して、本実施の形態の固定部材30は、重量が低減される。
【0023】
なお、本実施の形態では、固定部材30の摺動方向(Z軸方向)のサイズを、スライダ32の摺動方向のサイズの略半分程度であるとして説明したが、固定部材30とスライダ32のサイズの関係は、上記形態に限定されるものではなく、例えば、固定部材30の摺動方向のサイズが、スライダ32の摺動方向の3分の2程度とされていたり、半分より小さくされていたりしてもよい。
【0024】
ガイドブロック34は、ガイドレール36に組み合わされ、ガイドレール36が取り付けられたスライダ32を固定部材30に対してガイドレール36の延設方向に沿って相対的に移動可能とする構成を有する。例えば、図4の断面図に示すように、ガイドブロック34とガイドレール36との間にボール38を配したボールベアリングの構成とし、ガイドレール36をガイドブロック34に嵌め合わせて、ガイドブロック34とガイドレール36とをガイドレール36の延設方向に沿って相対的に移動可能とすることができる。
【0025】
また、レール移動型案内機構300には、駆動モータ(図示しない)が設けられる。駆動モータの本体を固定部材30に固定し、駆動モータの駆動軸の回転によりスライダ32を摺動させる。さらに、レール移動型案内機構300には、固定部材30とスライダ32との相対的な位置をモニタする位置センサを設けることが好適である。位置センサからの信号を制御装置(図示しない)へ入力し、その信号に応じて駆動モータを駆動させることによってスライダ32を固定部材30に対してガイドレール36の延設方向に沿って所望の位置まで相対的に移動させることができる。
【0026】
本実施の形態における固定部材30及びガイドブロック34は、鉄(Fe)系材料より軽量な(比重が小さい)アルミニウム系等(アルミニウム又はアルミニウム合金)の材料で構成することができる。すなわち、上記のように、従来のZ軸スライド機構では一般的に鉄(Fe)系材料で構成されるガイドレールと、ガイドレールが固定される固定部材(X軸スライダ)とを異なる材料で構成すると、温度変化に応じて固定部材とガイドレールとの間にバイメタル効果が生じ、その影響による構造的な歪み等から測定誤差が生ずる可能性があった。しかしながら、本実施の形態におけるレール移動型案内機構300では、鉄(Fe)系材料で構成されるガイドレール36を固定部材30側に設けず、スライダ32側に設けた構成とすることによって、固定部材30及びガイドブロック34を鉄(Fe)系材料より軽量なアルミニウム等の材料で構成することを可能としている。
【0027】
このような軽量化に伴って、レール移動型案内機構300を支えるX軸スライダ16bも鉄(Fe)系材料より軽量なアルミニウム等の材料で構成することができ、さらには、そのX軸スライダ16bを支えるX軸ガイドレール16aやY軸スライド機構等も軽量部材で構成することができる。したがって、X軸スライド機構、Y軸スライド機構の重量を軽くでき、それを駆動する駆動モータの容量も小さくすることができる。これに伴って、消費電力を抑えられるので、モータの発熱量を減らすことができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、ガイドレール36を鉄(Fe)系材料で形成し、固定部材30をアルミニウム系等の材料で形成する構成としているが、ガイドレール36及び固定部材30は必ずしも上記材料で形成する必要はない。例えば、ガイドレール36を鉄(Fe)以外の鉄(Fe)と同じような剛性を有する材料で形成し、固定部材30を、アルミニウム系等以外の、鉄(Fe)よりも比重が小さい材料で形成してもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、ガイドレール36を固定部材30と異なる材質で形成する構成としているが、必ずしも、この構成に限定する必要はない。つまり、ガイドレール36をスライダ32に設ける構成とすることで、固定部材30のサイズを小さく構成することが可能となるので、ガイドレール36を固定部材30と同じ材質で形成しても、固定部材30側(レール移動型案内機構300)の重量が軽減される。
【0030】
さらに、本発明の実施の形態ではレール移動型案内機構300を三次元測定機のZ軸スライド機構に適用する例で説明したが、輪郭測定装置等の他の装置においても同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態におけるレール移動型案内機構の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるレール移動型案内機構の固定部材の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるレール移動型案内機構のスライダの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるガイドブロックとガイドレールとの間の摺動手段の例を示す図である。
【図5】従来の三次元測定機の構成を示す図である。
【図6】従来のスライド機構の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ベース、12 測定手段、12a プローブ、12b 相対移動機構、14 Y軸スライド機構、14a Y軸ガイドレール、14b Y軸スライダ、16 X軸スライド機構、16a X軸ガイドレール、16b X軸スライダ、18 Z軸スライド機構、18a 固定部材、18b Z軸スライダ、18c ボールベアリング、18d Z軸ガイドレール、30 固定部材、32 スライダ、34 ガイドブロック、36 ガイドレール、38 ボール、100 三次元測定機、200 制御装置、300 レール移動型案内機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、前記固定部材に対して移動することによって前記固定部材との相対的な位置をかえるスライダと、を備え、
前記固定部材には、ガイドブロックが設けられ、
前記スライダには、前記スライダの移動軸方向に沿って前記ガイドブロックより長く延設され、前記ガイドブロックと摺動するように係合するガイドレールが設けられていることを特徴とするレール移動型案内機構。
【請求項2】
請求項1に記載のレール移動型案内機構であって、
前記ガイドレールは、前記固定部材と異なる材質で形成されていることを特徴とするレール移動型案内機構。
【請求項3】
請求項2に記載のレール移動型案内機構であって、
前記ガイドレールは、前記固定部材より比重が大きい材質で形成されていることを特徴とするレール移動型案内機構。
【請求項4】
請求項2に記載のレール移動型案内機構であって、
前記固定部材はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、
前記ガイドレールは鉄系材料で形成されていることを特徴とするレール移動型案内機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のレール移動型案内機構であって、
前記固定部材は、前記スライダの移動軸方向とは異なる移動軸を有するスライド機構に固定されていることを特徴とするレール移動型案内機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のレール移動型案内機構と、
前記スライダとは異なる移動軸を有すると共に、互いに異なる移動軸を有する複数のスライド機構と、を備え、
前記レール移動型案内機構と、前記複数のスライド機構と、の組み合わせによって、プローブを被測定対象物に対して相対的に移動させることで前記被測定対象物の形状を測定する三次元測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の三次元測定装置であって、
前記レール移動型案内機構の移動軸が垂直方向であることを特徴とする三次元測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate