説明

ロジック弁、複合弁および油圧システム

【課題】 油量調整回路の組立工数を削減できるとともに、小型化の要請に応えることができる、ロジック弁、複合弁および油圧システムを提供する。
【解決手段】 第1ロジック弁22は、排出油路36dを開閉する第1ポペット48と、第1ポペット48の背面に内圧を作用させ得るように構成された第1油室52とを有しており、第1ポペット48の内部には、第1油室52の内圧で作動する第1ピストンロッド50が配置されている。一方、第2ロジック弁24は、吸入油路36eを開閉する第2ポペット80と第2ポペット80の背面に内圧を作用させ得るように構成された第2油室84とを有しており、第2ポペット80の内部には、第2油室84の内圧で作動する第2ピストンロッド82が配置されている。そして、第1ピストンロッド50によって第2ロジック弁24が開操作され、第2ピストンロッド82によって第1ロジック弁22が開操作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉回路内の圧油の過不足を調整する油量調整回路を構成するロジック弁および複合弁ならびに油量調整回路を備える油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダを構成するシリンダの内部は、ピストンロッドによって加圧室と復帰室とに分けられており、ピストンロッドのロッド部が収容された復帰室の容量は加圧室の容量よりも小さいのが通常である。そのため、2方向型油圧ポンプを用いて油圧シリンダを操作する閉回路の油圧システムでは、加圧操作時に加圧室に供給される圧油の量が復帰操作時に復帰室に供給される圧油の量より多くなり、閉回路内において圧油の過不足が生じるという問題があった。つまり、加圧操作時には、復帰室からポンプへ戻される圧油が不足し、復帰操作時には、加圧室からポンプへ戻される圧油が過剰となるため、ポンプの吸入側と吐出側との間に圧力差が生じ、この圧力差によってポンプが破損されるのみならず、油圧回路が成り立たなくなるおそれがあった。
【0003】
そこで、従来では、シャトル弁、パイロットチェック弁、チェック弁およびリリーフ弁等の既存の部品を組み合わせることによって、圧油の過不足を調整する油量調整回路(液量補償回路)を閉回路内に構成していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−139003号公報(公報の図14〜図17参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来(特許文献1)では、既存の部品を組み合わせることによって油量調整回路(液量補償回路)を構成していたので、部品どうしを配管または回路構成板(マニホールド)で接続しなければならず、多大な工数と設置スペースとを要していた。また、シャトル弁、パイロットチェック弁、チェック弁およびリリーフ弁等は、必要油量が多くなればなるほど大きくなるため、油圧システムの小型化の要請に応えることができなかった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、油量調整回路の組立工数を削減できるとともに小型化の要請に応えることができる、ロジック弁、複合弁および油圧システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「油路36d,36eを開閉するポペット48,80と、ポペット48,80の背面に内圧を作用させ得るように構成された油室52,84とを有するロジック弁22,24において、ポペット48,80の内部には、油室52,84の内圧を受けるピストンロッド50,82が配置されており、ピストンロッド50,82を構成するロッド部50b,82bがポペット48,80の先端部から外部へ突出されていることを特徴とする、ロジック弁22,24」である。
【0007】
本発明において、油室52,84の内圧が上昇すると、ポペット48,80の内部に配置されたピストンロッド50,82が押圧され、そのロッド部50b,82bがポペット48,80の先端部から押し出される。したがって、ロッド部50b,82bの先方に他の弁24,22のポペット80,48が配置されていると、ロッド部50b,82bによって他の弁24,22のポペット80,48を開方向へ押圧することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、「油路36dを開閉する第1ポペット48と第1ポペット48の背面に内圧を作用させ得るように構成された第1油室52とを有する第1弁22と、油路36eを開閉する第2ポペット80を有し、第1弁22に対向して配置された第2弁24とを備える複合弁10であって、第1ポペット48の内部には、第1油室52の内圧を受ける第1ピストンロッド50が配置されており、第1ピストンロッド50を構成する第1ロッド部50bによって第2ポペット80が開方向へ押圧される、複合弁10」である。
【0009】
本発明において、第1弁22における第1油室52の内圧が上昇すると、第1ポペット48の内部に配置された第1ピストンロッド50が押圧され、第1ポペット48の先端部から第1ロッド部50bが押し出される。そして、第1ロッド部50bで第2ポペット80が直接的または間接的に押圧されることによって第2弁24が開操作される。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した「複合弁10」において、「第2弁24は、第2ポペット80の背面に内圧を作用させ得るように構成された第2油室84を有しており、第2ポペット80の内部には、第2油室84の内圧を受ける第2ピストンロッド82が配置されており、第2ピストンロッド82を構成する第2ロッド部82bによって第1ポペット48が開方向へ押圧される」ことを特徴とする。
【0011】
本発明では、第1弁22を構成する第1ピストンロッド50の第1ロッド部50bによって第2弁24が開操作され、また、第2弁24を構成する第2ピストンロッド82の第2ロッド部82bによって第1弁22が開操作される。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項2または3に記載した「複合弁10」において、「一端が油圧シリンダ16の加圧室32aに連通され、他端が2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aに連通される加圧側油路36aと、一端が油圧シリンダ16の復帰室32bに連通され、他端が2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bに連通される復帰側油路36bと、圧油タンク18に連通される吸排油路36cと、加圧側油路36aと吸排油路36cとを連通する排出油路36dと、復帰側油路36bと吸排油路36cとを連通する吸入油路36eとを有する本体部26を備えており、本体部26の内部に第1弁22および第2弁24が組み込まれており、排出油路36dが第1ポペット48によって開閉され、吸入油路36eが第2ポペット80によって開閉される」ことを特徴とする。
【0013】
本発明において、第2弁24が開操作されると、吸入油路36eが開かれ、油圧シリンダ16の復帰室32bから2方向型油圧ポンプ14へ戻される圧油の不足分が圧油タンク18から吸排油路36cおよび吸入油路36eを通して2方向型油圧ポンプ14の吸入側に補充される。一方、第1弁22が開操作されると、排出油路36dが開かれ、油圧シリンダ16の加圧室32aから2方向型油圧ポンプ14へ戻される圧油の過剰分が排出油路36dおよび吸排油路36cを通して圧油タンク18へ排出される。
【0014】
請求項5に記載した発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載した「複合弁10」において、「本体部26は、第1弁22の第1油室52と2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aとを連通する第1パイロット油路68と、第2弁24の第2油室84と2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bとを連通する第2パイロット油路90とを有する」ことを特徴とする。
【0015】
本発明において、油圧シリンダ16を加圧操作する際には、2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aから吐出された圧油が、加圧側油路36aを通して油圧シリンダ16の加圧室32aに供給されるとともに第1パイロット油路68を通して第1弁22の第1油室52に供給され、第1ピストンロッド50の第1ロッド部50bで第2弁24が開操作されることによって圧油の不足分が圧油タンク18から補充される。一方、油圧シリンダ16を復帰操作する際には、2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bから吐出された圧油が、復帰側油路36bを通して油圧シリンダ16の復帰室32bに供給されるとともに第2パイロット油路90を通して第2弁24の第2油室84に供給され、第2ピストンロッド82の第2ロッド部82bで第1弁22が開操作されることによって圧油の過剰分が圧油タンク18へ排出される。
【0016】
請求項6に記載した発明は、請求項4または5に記載した「複合弁10」において、「第1油室52および/または第2油室84には、内圧を逃がすためのリリーフ弁28,30が設けられている」ことを特徴とする。
【0017】
本発明において、油室52,84の内圧をリリーフ弁28,30から逃がすと、ポペット48,80の背面に作用する圧力が先端面に作用する圧力よりも小さくなり、この圧力差でポペット48,80が開方向へ移動されることによって排出油路36dまたは吸入油路36eが開かれる。これにより、加圧側油路36aまたは復帰側油路36bの内圧が圧油タンク18へ逃がされ、閉回路の内圧の異常上昇が抑止される。
【0018】
請求項7に記載した発明は、請求項2ないし6のいずれかに記載した「複合弁10」において、「本体部26は板状に形成されており、加圧側油路36aおよび復帰側油路36bは、本体部26を厚み方向へ貫通して形成されており、加圧側油路36aおよび復帰側油路36bの両端に形成されたポートA1,A2,B1,B2は互いに対向している」ことを特徴とする。
【0019】
本発明では、加圧側油路36aのポートA1,A2が互いに対向しており、また、復帰側油路36bのポートB1,B2が互いに対向しているので、加圧側油路36aおよび復帰側油路36bをほぼ真直ぐに構成することができる。したがって、圧油の流通抵抗が極めて小さくなり、大量の圧油を必要とする大型の油圧システム12に適する。
【0020】
請求項8に記載した発明は、「油圧シリンダ16と、油圧シリンダ16へ圧油を供給する2方向型油圧ポンプ14と、圧油の不足分を圧油タンク18から補充するとともに、圧油の過剰分を圧油タンク18へ排出する油量調整回路20とを備える閉回路の油圧システム12であって、油量調整回路20は、圧油タンク18から補充される圧油を通す吸入油路36eと、圧油タンク18へ排出される圧油を通す排出油路36dと、排出油路36dを開閉する第1ポペット48を有する第1弁22と、吸入油路36eを開閉する第2ポペット80を有する第2弁24とを備えており、第1ポペット48の内部には、第2弁を開操作する第1ピストンロッド50が配置されており、第2ポペット80の内部には、第1弁22を開操作する第2ピストンロッド82が配置されている、油圧システム12」である。
【0021】
本発明では、第1弁22を構成する第1ピストンロッド50で第2弁24が開操作されることによって、吸入油路36eが開かれる。また、第2弁24を構成する第2ピストンロッド82で第1弁22が開操作されることによって、排出油路36dが開かれる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜8に記載した発明によれば、ポペットの先端部から外部へ突出したロッド部によって他の弁を開操作することができるので、他の弁を開操作するための機構を別途設ける必要はない。したがって、これらの発明を油量調整回路に適用した場合には、組立工数を削減できるととともに、小型化の要請に応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明(請求項2〜7)が適用された複合弁10の具体的構成を示す平面図(A)および断面図(B)であり、図2は、複合弁10の構造を簡明に示した簡略図であり、図3は、ポペット48と加圧側油路36aとの位置関係を示す断面図であり、図4は、複合弁10の機構を記号で示した回路図である。また、図5は、本発明(請求項8)が適用された油圧システム12を示す平面図(A)および正面図(B)であり、図6は、油圧システム12の構造を簡明に示した簡略図であり、図7は、油圧システム12の機構を記号で示した回路図である。
【0024】
ここで、油圧システム12(図5〜図7)は、2方向型油圧ポンプ14から供給される圧油で油圧シリンダ16を駆動する閉回路システムであり、油圧システム12には、閉回路内の圧油の不足分を圧油タンク18から補充するとともに、圧油の過剰分を圧油タンク18へ排出する油量調整回路20(図7)が組み込まれている。そして、本発明(請求項2〜7)が適用された複合弁10が、油量調整回路20の主要部品として用いられており、本発明(請求項1)が適用された第1ロジック弁22および第2ロジック弁24が、複合弁10の構成部分として用いられている。
【0025】
複合弁10は、図1〜図4に示すように、本体部26と、本体部26に組み込まれた第1ロジック弁22および第2ロジック弁24と、第1ロジック弁22および第2ロジック弁24の背方に配設された第1リリーフ弁28および第2リリーフ弁30とによって構成されている。
【0026】
本体部26は、加圧側油路36a,復帰側油路36b,吸排油路36c,排出油路36dおよび吸入油路36eを有する略四角形の板状部材であり、加圧側油路36aと吸排油路36cとが排出油路36dを介して連通されており、復帰側油路36bと吸排油路36cとが吸入油路36eを介して連通されている。より詳述すると、吸排油路36cは、本体部26を厚み方向へ貫通して形成されており、加圧側油路36aおよび復帰側油路36bは、吸排油路36cを挟む位置において、本体部26を厚み方向へ貫通して形成されている。また、排出油路36dは、加圧側油路36aと吸排油路36cとを連通するように、これらに対して垂直に形成されており、吸入油路36eは、復帰側油路36bと吸排油路36cとを連通するように、これらに対して垂直に形成されている。
【0027】
そして、加圧側油路36aの一端には、油圧シリンダ16の加圧室32aに形成された加圧ポートaに連通されるポートA1が形成されており、加圧側油路36aの他端には、2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aに連通されるポートA2がポートA1と対向して形成されている。また、復帰側油路36bの一端には、油圧シリンダ16の復帰室32bに形成された復帰ポートbに連通されるポートB1が形成されており、復帰側油路36bの他端には、2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bに連通されるポートB2がポートB1と対向して形成されている。さらに、吸排油路36cの一端には、圧油タンク18に連通されるポートTが形成されており、吸排油路36cの他端には、2方向型油圧ポンプ14のドレンポート14cに連通されるポートDrがポートTと対向して形成されている。したがって、加圧側油路36a,復帰側油路36bおよび吸排油路36cは、本体部26を厚み方向へほぼ真直ぐに貫通することになり、圧油の流通抵抗が極めて小さく抑えられている。
【0028】
また、本体部26の内部において、加圧側油路36aを挟んで排出油路36dと対向する位置には、第1ロジック弁22を構成する第1ロジック弁室38が形成されており、復帰側油路36bを挟んで吸入油路36eと対向する位置には、第2ロジック弁24を構成する第2ロジック弁室40が形成されている。
【0029】
そして、第1ロジック弁室38の背方には、第1リリーフ弁28を構成する第1リリーフ弁室42が形成されており、第2ロジック弁室40の背方には、第2リリーフ弁30を構成する第2リリーフ弁室44が形成されている。さらに、本体部26の隅部には、油圧システム12(図5)を構成する他の構成部品と複合弁10とを接続するためのボルト(図示省略)を通す接続孔46(図1(A))が形成されている。
【0030】
第1ロジック弁22は、第1ロジック弁室38内に摺動自在に配置された第1ポペット48と、第1ポペット48の内部に配置された第1ピストンロッド50と、第1ロジック弁室38の内部における第1ポペット48の背方に確保された第1油室52と、第1ポペット48を閉方向へ押圧するコイルバネ54とによって構成されている。
【0031】
第1ポペット48は、第1ロジック弁室38の内面に沿う外面を有する中空円筒部材であり、第1ポペット48の先端外周部は、排出油路36dの内周縁(すなわち弁座)に当接し得るようにテーパー状に形成されている。そして、この先端外周部には、排出油路36dと第1ポペット48の内部空間Sとを連通する通油路56が形成されており、先端中央部には、第1ピストンロッド50の第1ロッド部50bが挿通される貫通孔58が形成されている。さらに、第1ポペット48の後端開口部には、中央部に貫通孔60aを有する蓋体60が固着されている。したがって、第1油室52に圧油を充填すると、蓋体60すなわち第1ポペット48の背面に第1油室52の内圧が作用することになる。
【0032】
第1ピストンロッド50は、第1ポペット48の内部を摺動する第1ピストン部50aと、第1ピストン部50aから延びる第1ロッド部50bとを有しており、第1ピストン部50aの外周面には、シールリング62が装着されている。そして、第1ロッド部50bが第1ポペット48の先端中央部に形成された貫通孔58から外部へ突出されており、第1ポペット48の内部における第1ロッド部50bの周囲には、第1ピストンロッド50を第1油室52の内圧に抗して押し戻すためのコイルバネ64が配置されている。
【0033】
第1油室52は、第1ポペット48の背面に内圧を作用させ得るように構成されており、第1油室52の底部には、第1油室52と第1リリーフ弁室42とを連通する通油路66が形成されており、第1油室52の側部には、第1油室52と2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aとを連通する第1パイロット油路68が形成されている。そして、通油路66および第1パイロット油路68には、それらの孔径を調整するためのオリフィス70aおよび70bが装着されている。
【0034】
第1リリーフ弁28は、第1リリーフ弁室42内において通油路66を開閉する第1ポペット72と、第1ポペット72を閉方向へ押圧するコイルバネ74と、コイルバネ74の押圧力を調整する押圧力調整ボルト76とによって構成されており、第1リリーフ弁室42の側部には、第1リリーフ弁室42と吸排油路36cとを連通する油路78が形成されている。
【0035】
第1リリーフ弁28は、加圧側油路36aの内圧が異常上昇した際に、第1油室52の内圧を逃がすことによって第1ロジック弁22を開操作し、加圧側油路36aの圧力を圧油タンク18へ逃がす機能を有している。この機能を有効に発揮させるために、通油路66に装着されたオリフィス70aの孔径は、第1パイロット油路68に装着されたオリフィス70bの孔径よりも大きく設定されている。なお、第1リリーフ弁28の機能については後述する。
【0036】
第2ロジック弁24は、吸入油路36eを開閉し得るように本体部26の内部において第1ロジック弁22に対向して配設されており、第2ロジック弁24の具体的構成は、第1ロジック弁22と同様である。すなわち、第2ロジック弁24は、第2ロジック弁室40内に摺動自在に配置された第2ポペット80と、第2ポペット80の内部に配置された第2ピストンロッド82と、第2ロジック弁室40の内部における第2ポペット80の背方に確保された第2油室84と、第2ポペット80を閉方向へ押圧するコイルバネ86とによって構成されている。そして、第2油室84の底部には、第2油室84と第2リリーフ弁室44とを連通する通油路88が形成されており、第2油室84の側部には、第2油室84と2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bとを連通する第2パイロット油路90が形成されており、通油路88および第2パイロット油路90には、それらの孔径を調整するためのオリフィス92aおよび92bが装着されている。
【0037】
上述した第1ロジック弁22と第2ロジック弁24とは、第1ピストンロッド50および第2ピストンロッド82によって互いに開操作し得るように構成されており、第1ロジック弁22および第2ロジック弁24を閉じた状態において、第1ロッド部50bと第2ロッド部82bとの間には、相互の干渉を防止するために隙間が確保されている(図1(B),図2)。
【0038】
第2リリーフ弁30は、復帰側油路36bの圧力を圧油タンク18へ逃がす機能を有するものであり、第2リリーフ弁30の具体的構成は、第1リリーフ弁28と同様である。すなわち、第2リリーフ弁30は、第2リリーフ弁室44内において通油路88を開閉する第2ポペット94と、第2ポペット94を閉方向へ押圧するコイルバネ96と、コイルバネ96の押圧力を調整する押圧力調整ボルト98とによって構成されており、第2リリーフ弁室44の側部には、第2リリーフ弁室44と吸排油路36cとを連通する油路100が形成されている。
【0039】
複合弁10を用いて油圧システム12(図5〜図7)を構成する際には、図6および図7に示すように、油圧シリンダ16の加圧室32aに形成された加圧ポートaが加圧側油路36aのポートA1に連通され、油圧シリンダ16の復帰室32bに形成された復帰ポートbが復帰側油路36bのポートB1に連通される。また、2方向型油圧ポンプ14の一方のポート34aが加圧側油路36aのポートA1および第1パイロット油路68のポートPPAに連通され、2方向型油圧ポンプ14の他方のポート34bが復帰側油路36bのポートB2および第2パイロット油路90のポートPPBに連通される。さらに、2方向型油圧ポンプ14のドレンポート34cが吸排油路36cのポートDrに連通され、圧油タンク18が吸排油路36cのポートTに連通される。
【0040】
油圧システム12において、油圧シリンダ16を加圧操作する際には、図8に示すように、2方向型油圧ポンプ14から吐出された圧油が加圧側油路36aを通して油圧シリンダ16の加圧室32aへ供給され、一方、油圧シリンダ16の復帰室32bから排出された圧油が復帰側油路36bを通して2方向型油圧ポンプ14へ戻される。このとき、2方向型油圧ポンプ14から吐出された圧油は、第1パイロット油路68を通して第1油室52にも供給され、第1油室52の内圧が高められる。したがって、第1ロジック弁22においては、第1油室52の内圧によって第1ポペット48および第1ピストンロッド50が押圧され、第1ポペット48によって排出油路36dが閉じられるとともに、第1ピストンロッド50によって第2ロジック弁24が開操作される。つまり、第1ピストンロッド50によって第2ロジック弁24の第2ピストンロッド82が押圧され、それに伴って第2ポペット80が開方向へ移動される。第2ロジック弁24が開操作されると、吸入油路36eが開かれるので、圧油タンク18からの圧油が吸排油路36cおよび吸入油路36eを通して復帰側油路36bに供給され、閉回路内における圧油の不足分が補充される。
【0041】
油圧シリンダ16を加圧操作している最中に、加圧側油路36aの内圧が異常上昇すると、図9に示すように、第1ロジック弁22が開操作されることによって加圧側油路36aの内圧が2方向型油圧ポンプ14の吸入側へ逃がされる。つまり、加圧側油路36aの内圧が異常上昇した際には、第1油室52の内圧も異常上昇するため、第1リリーフ弁28が開操作されて通油路66が開かれる。すると、通油路66に装着されたオリフィス70aの孔径が第1パイロット油路68に装着されたオリフィス70bの孔径よりも大きいことから、通油路66から排出される圧油の量が第1パイロット油路68から取り込まれる圧油の量より大きくなり、第1油室52の内圧が急激に低下する。したがって、第1油室52の内圧(低圧)と加圧側油路36aの内圧(高圧)との間に圧力差が生じ、この圧力差によって第1ポペット48が開方向へ移動され、排出油路36dが開かれて加圧側油路36aの内圧が逃がされる。これにより、加圧側油路36aの内圧は瞬時に平常圧に戻されることとなり、油圧システム12の回路全体が保護される。
【0042】
油圧シリンダ16を復帰操作する際には、2方向型油圧ポンプ14が逆回転され、図10に示すように、2方向型油圧ポンプ14から吐出された圧油が復帰側油路36bを通して油圧シリンダ16の復帰室32bへ供給され、一方、油圧シリンダ16の加圧室32aから排出された圧油が加圧側油路36aを通して2方向型油圧ポンプ14へ戻される。このとき、2方向型油圧ポンプ14から吐出された圧油は、第2パイロット油路90を通して第2油室84にも供給され、第2油室84の内圧が高められる。したがって、第2ロジック弁24においては、第2油室84の内圧によって第2ポペット80および第2ピストンロッド82が押圧され、第2ポペット80によって吸入油路36eが閉じられるとともに、第2ピストンロッド82によって第1ロジック弁22が開操作される。つまり、第2ピストンロッド82によって第1ロジック弁22の第1ピストンロッド50が押圧され、それに伴って第1ポペット48が開方向へ移動される。第1ロジック弁22が開操作されると、排出油路36dが開かれるので、閉回路内の圧油の過剰分が排出油路36dおよび吸排油路36cを通して圧油タンク18へ排出される。
【0043】
油圧シリンダ16を復帰操作している最中に、復帰側油路36bの内圧が異常上昇すると、図11に示すように、第2ロジック弁24が開操作されることによって復帰側油路36bの内圧が圧油タンク18または2方向型油圧ポンプ14の吸入側へ逃がされる。つまり、復帰側油路36bの内圧が異常上昇した際には、第2油室84の内圧も異常上昇するため、第2リリーフ弁30が開操作されて通油路88が開かれる。すると、通油路88に装着されたオリフィス92aの孔径が第2パイロット油路90に装着されたオリフィス92bの孔径よりも大きいことから、通油路88から排出される圧油の量が第2パイロット油路90から取り込まれる圧油の量より大きくなり、第2油室84の内圧が急激に低下する。したがって、第2油室84の内圧(低圧)と復帰側油路36bの内圧(高圧)との間に圧力差が生じ、この圧力差によって第2ポペット80が開方向へ移動され、吸入油路36eが開かれて復帰側油路36bの内圧が逃がされる。これにより、復帰側油路36bの内圧は瞬時に平常圧に戻されることとなり、油圧システム12の回路全体が保護される。
【0044】
なお、上述の実施例では、第1ロジック弁22、第2ロジック弁24、第1リリーフ弁28および第2リリーフ弁30を本体部26に一体的に組み込んでいるが、図12に示すように、第1ロジック弁22および第2ロジック弁24を本体部26に組み込み、第1リリーフ弁28および第2リリーフ弁30は既存の部品を用いて独立に構成してもよい。
【0045】
また、上述の実施例では、第1ピストンロッド50の第1ロッド部50bと第2ピストンロッド82の第2ロッド部82bとを突き合わせるようにしているが、図13に示すように、第1ロッド部50bを第2ポペット80に当接させるとともに、第2ロッド部82bを第1ポペット48に当接させるようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の「複合弁」は、油圧システム12の油量調整回路20(図7)以外の用途に適用してもよい。その場合、対向する2つの弁の一方は、図14に示すような通常型のロジック弁102であってもよいし、図15に示すようなロジック弁とは異なる弁104であってもよい。これらの場合でも、ピストンロッド106を備えるロジック弁108によって対向する弁102または104を開操作することができるので、開操作の機構を別途設ける場合に比べて、油圧システムの全体を小型化することができる。
【0047】
さらに、本発明の「ロジック弁」は、複合弁以外の用途に適用してもよい。つまり、本発明の「ロジック弁」は、他のシステム要素を操作するピストンロッドを備える点に特徴があり、この点に着目すれば、ピストンロッドで弁以外のシステム要素(感圧スイッチ等)を操作することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】複合弁の具体的構成を示す平面図(A)および断面図(B)
【図2】複合弁の構造を簡明に示した簡略図
【図3】ポペットと加圧側油路との位置関係を示す断面図
【図4】複合弁の機構を記号で示した回路図
【図5】複合弁が用いられた油圧システムを示す平面図(A)および正面図(B)
【図6】油圧システムの構造を簡明に示した簡略図
【図7】油圧システムの機構を記号で示した回路図
【図8】加圧操作時における油圧システムの動作を示す図
【図9】加圧操作時における圧力開放動作を示す図
【図10】復帰操作時における油圧システムの動作を示す図
【図11】復帰操作時における圧力開放動作を示す図
【図12】リリーフ弁を独立させた複合弁を示す簡略図
【図13】ロッド部をポペットに当接させるようにした複合弁を示す簡略図
【図14】対向する弁の一方に通常型のロジック弁を用いた複合弁を示す簡略図
【図15】対向する弁の一方にロジック弁以外の弁を用いた複合弁を示す簡略図
【符号の説明】
【0049】
10… 複合弁
12… 油圧システム
14… 2方向型油圧ポンプ
16… 油圧シリンダ
18… 圧油タンク
20… 油量調整回路
22… 第1ロジック弁
24… 第2ロジック弁
26… 本体部
28… 第1リリーフ弁
30… 第2リリーフ弁
36a… 加圧側油路
36b… 復帰側油路
36c… 吸排油路
36d… 排出油路
36e… 吸入油路
38… 第1ロジック弁室
40… 第2ロジック弁室
42… 第1リリーフ弁室
44… 第2リリーフ弁室
48… 第1ポペット
50… 第1ピストンロッド
50a… 第1ピストン部
50b… 第1ロッド部
52… 第1油室
68… 第1パイロット油路
80… 第2ポペット
82… 第2ピストンロッド
84… 第2油室
90… 第2パイロット油路
102… 通常型のロジック弁
104… ロジック弁とは異なる弁
106… ピストンロッド
108… ロジック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路を開閉するポペットと、前記ポペットの背面に内圧を作用させ得るように構成された油室とを有するロジック弁において、
前記ポペットの内部には、前記油室の内圧を受けるピストンロッドが配置されており、前記ピストンロッドを構成するロッド部が前記ポペットの先端部から外部へ突出されていることを特徴とする、ロジック弁。
【請求項2】
油路を開閉する第1ポペットと前記第1ポペットの背面に内圧を作用させ得るように構成された第1油室とを有する第1弁と、油路を開閉する第2ポペットを有し、前記第1弁に対向して配置された第2弁とを備える複合弁であって、
前記第1ポペットの内部には、前記第1油室の内圧を受ける第1ピストンロッドが配置されており、前記第1ピストンロッドを構成する第1ロッド部によって前記第2ポペットが開方向へ押圧される、複合弁。
【請求項3】
前記第2弁は、前記第2ポペットの背面に内圧を作用させ得るように構成された第2油室を有しており、前記第2ポペットの内部には、前記第2油室の内圧を受ける第2ピストンロッドが配置されており、前記第2ピストンロッドを構成する第2ロッド部によって前記第1ポペットが開方向へ押圧される、請求項2に記載の複合弁。
【請求項4】
一端が油圧シリンダの加圧室に連通され、他端が2方向型油圧ポンプの一方のポートに連通される加圧側油路と、一端が前記油圧シリンダの復帰室に連通され、他端が前記2方向型油圧ポンプの他方のポートに連通される復帰側油路と、圧油タンクに連通される吸排油路と、前記加圧側油路と前記吸排油路とを連通する排出油路と、前記復帰側油路と前記吸排油路とを連通する吸入油路とを有する本体部を備えており、
前記本体部の内部に前記第1弁および前記第2弁が組み込まれており、前記排出油路が前記第1ポペットによって開閉され、前記吸入油路が前記第2ポペットによって開閉される、請求項2または3に記載の複合弁。
【請求項5】
前記本体部は、前記第1弁の前記第1油室と前記2方向型油圧ポンプの一方のポートとを連通する第1パイロット油路と、前記第2弁の前記第2油室と前記2方向型油圧ポンプの他方のポートとを連通する第2パイロット油路とを有する、請求項2ないし4のいずれかに記載の複合弁。
【請求項6】
前記第1油室および/または前記第2油室には、内圧を逃がすためのリリーフ弁が設けられている、請求項4または5に記載の複合弁。
【請求項7】
前記本体部は板状に形成されており、前記加圧側油路および前記復帰側油路は、前記本体部を厚み方向へ貫通して形成されており、前記加圧側油路および前記復帰側油路の両端に形成されたポートは互いに対向している、請求項2ないし6のいずれかに記載の複合弁。
【請求項8】
油圧シリンダと、前記油圧シリンダへ圧油を供給する2方向型油圧ポンプと、圧油の不足分を圧油タンクから補充するとともに、圧油の過剰分を前記圧油タンクへ排出する油量調整回路とを備える閉回路の油圧システムであって、
前記油量調整回路は、前記圧油タンクから補充される圧油を通す吸入油路と、前記圧油タンクへ排出される圧油を通す排出油路と、前記排出油路を開閉する第1ポペットを有する第1弁と、前記吸入油路を開閉する第2ポペットを有する第2弁とを備えており、前記第1ポペットの内部には、前記第2弁を開操作する第1ピストンロッドが配置されており、前記第2ポペットの内部には、前記第1弁を開操作する第2ピストンロッドが配置されている、油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−194352(P2006−194352A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6516(P2005−6516)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(593056222)
【Fターム(参考)】