説明

ロッキング椅子

【課題】弾力調節装置又は傾動制御装置を備えて椅子において、弾力調節装置又は傾動制御装置の組み付け作業や補修作業を容易化する。
【手段】操作ユニット29は、操作機構部27とこれが取付けられた背面カバー28とを有する。操作機構部27は中心軸54と外筒55とを有しており、中心軸54の一端に強弱調節レバー56を設けて、外筒55の一端にはロックレバー57を設けている。強弱調節レバー56を回動させるとスライダー74が左右移動し、可動式ゴム43に荷重が作用したり作用しなかったりすることで、ロッキングに対する抵抗が2段階に切り換えられる。弾力調節装置と傾動制御装置とがユニット化されているため、椅子の組み立てに際しての組み付けを簡単に行なえると共に、部品の交換や操作ユニット29ごとの交換も簡単に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、弾力調節装置又は傾動制御装置若しくは両方を有するロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロッキング椅子は背もたれの後傾動をばねやゴム等の弾性手段で支持している。背もたれはフレーム構造やシェル構造等の背支持装置に設けられており、背支持装置はベースに左右横長の軸で連結されていることが多い。背支持装置の形態は様々であり、全体を樹脂やアルミダイキャストで一体成形しているものもあるが、全体を一体化すると加工コストが嵩む等の問題があるため、ベースに揺動部材を左右横長の軸で連結し、揺動部材にバックフレームをねじで固定していることが多い。すなわち、背支持装置を揺動部材とバックフレームとで構成していることが多い。その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
他方、ロッキング椅子では、ロッキングに対する抵抗の強さを調節する弾力調節装置と、背もたれを傾動自在なフリー状態にしたり殆ど後傾しないロック状態にしたり後傾範囲を半分程度にした中間状態にしたりというように背もたれの後傾を規制する(正確には、規制されていない状態と1つ又は複数の規制状態とに切り換える)傾動制御装置を設けていることが多い。その例として特許文献2では、弾力調節装置として、ベースの下面部にトーションバーの初期弾性力を変えるねじ式のハンドルを設ける一方、ベースには横向き突出した筒体を設けて、この筒体に2つのレバーを有する傾動制御装置を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−119251号公報
【特許文献2】特開2002−142899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弾力調節装置として座の下面にねじ式のハンドルを設けることは、極めてポピュラーである。このハンドル方式は弾力を微調整できる利点があるが、必ずしも微調整を要せずに例えば2段階や3段階の切り換えで足りる場合には適用できない問題がある。また、傾動制御装置を筒体に設けると、椅子の組み立てに際しての組み付けや部品の交換が非常に面倒である。
【0006】
本願発明はこのような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の椅子は、脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動を弾性的に支持する弾性手段と、ロッキングに際しての前記弾性手段の抵抗を調節する弾力調節装置又は前記背もたれの後傾動を規制する傾動制御装置とが備えられている、という基本構成になっている。
【0008】
そして、請求項1の発明では、上記基本構成において、前記弾力調節装置又は傾動制御装置は、操作レバーを有する操作機構部と、前記背支持装置又はベースに取付くサポート材とを有しており、前記操作機構部をサポート材に組み込むことによって操作ユニットが構成されている。この場合、「前記弾力調節装置又は傾動制御装置」は「前記弾力調節装置及び傾動制御装置」も含んでいる。請求項2の発明では、請求項1において、前記操作機構部は、同心の軸心回りに回動する操作レバーを有する弾力調節装置と傾動制御装置とで構成されている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記背支持装置は、前記ベースに連結した揺動部材とこれに取付けたバックフレームとを有しており、前記揺動部材は上板と左右側板とを有する下向き開口コの字形の形態である。一方、前記ベースと揺動部材との間には弾性手段が配置されており、前記弾力調節装置に設けたスライダーを揺動部材における左右側板の間において左右動させることでロッキングに対する抵抗が変わるようになっている一方、前記傾動制御装置は揺動部材の左右側板の間の箇所において前記ベースの後端部に上方から当たり得るロック体を備えており、前記ロック体の姿勢を変えることで背もたれの後傾規制が成されている。更に、前記操作ユニットを構成するサポート材は前記揺動部材を後ろから塞ぐ背面カバーになっている。
【発明の効果】
【0010】
弾力調節装置や傾動制御装置は複数の部品(部材)で構成されており、操作レバーの動きを他の部材で弾性手段やロック体に伝えているが、本願発明では弾力調節装置又は傾動制御装置はユニット化されているため、椅子の組み立てに際しての組み付けを能率良く行える。また、部品の交換も操作ユニットを取り外すことで簡単に行える。更に、ベースと背支持装置との空間を操作ユニットで後ろから覆うことにより、人がベースと操作機構部とで指を挟むことを防止することも可能になる。また、弾力調節装置は操作レバーによって弾力を変えるものであるため、例えば2段階の切り換えのようなワンタッチ的な切り換えも容易に実現できる。
【0011】
請求項2のように、弾力調節装置と傾動制御装置とを1つの操作ユニットに組み込むと、椅子の組み立て作業能率を一層向上できる利点がある。従って、ロッキングの弾力調節機能と傾動制御機能とを有するユーザーフレンドリーな椅子でありながら、組み立て作業性を向上できる。
【0012】
請求項3の構成を採用すると、弾性手段を揺動部材とベースとで挟圧することでロッキングに対して抵抗が付与されるため、部材数を抑制したコストダウンに貢献できる。また、傾動制御装置においても、ロック体をベースの後端部に当接させる単純な構成であるため、この面においても構造を簡素化してコストダウンに貢献できる。
【0013】
そして、揺動部材とベースとの間に弾性手段やロック体を配置すると、人が手を差し込んでも指を挟まないように配慮する必要があるが、請求項3の発明では、揺動部材が上板と左右側板とを有することにより、人か指を上方及び左右側方からベースと揺動部材との間に差し込むことが阻止され、かつ、揺動部材は操作ユニットの背面カバーで後ろから塞がれているため、後ろから指を差し込もうとしてもガードされる。このように揺動部材及び操作ユニットを利用して指挟みを防止できるのであり、従って、安全性を確保した椅子でありながら、部品点数を抑制してコストダウンに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は実施形態に係る椅子の部分斜視図、(B)は側面視図である。
【図2】分離斜視図である。
【図3】分離斜視図である。
【図4】下方から見た分離図である。
【図5】分離斜視図である。
【図6】(A)は可動式ゴムの部分的な分離斜視図、(B)はバックフレームの取付け構造を示すための分離斜視図である。
【図7】要部の分離斜視図である。
【図8】(A)は部材の分離斜視図、(B)は受け部材を裏返した状態での斜視図、(C)はベースの一部破断斜視図である。
【図9】分離斜視図である。
【図10】固定式ゴムの箇所での側断面図である。
【図11】(A)はロック体の箇所での側断面図、(B)は可動式ゴムを弱位置に配置した状態での側断面図である。
【図12】(A)は分離平面図、(B)は操作機構部の斜視図である。
【図13】(A)は背面カバーの斜視図、(B)は操作ユニットの分離斜視図、(C)は操作機構部の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用等に使用される回転椅子に適用している。以下の説明及び請求項で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用しているが、この文言は、椅子に普通の姿勢で着座した人が向いた方向を前として定義している。正面視は着座者と相対向した方向から見たものである。
【0016】
(1).椅子の概要
図1に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の上端に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座体3、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4を有している。なお、ベース2にはオプション品として肘掛け装置を取り付けることができる。
【0017】
図2から理解できるように、座体3は合成樹脂製の座板(座インナーシェル)5とその上面に重ね配置したクッション材6とを有しており、クッション材6にはクロス等の表皮材が張られている。また、座板5は合成樹脂製の座受け体(座アウターシェル)7に前後移動調節可能に取り付けられている。従って、本実施形態では、座体3と座受け体7とで座部8が構成されている。
【0018】
図2に示すように、背もたれ4は、合成樹脂製のバックフレーム10とその前面に固定した合成樹脂製の背板11とを備えている。背板11は横長の穴が多段に空いた横縞状に形態になっており、これにメッシュ等の表皮材12が張られている。背板11の前面にクッション材を配置することもある。この場合は、クッション材は袋状の表皮材で覆われる。バックフレーム10は、上下長手の左右サイドフレーム13と、その上端を繋ぐアッパーフレーム14と、左右サイドフレーム13の下端を繋ぐロアフレーム15とを有しており、左右サイドフレーム13とアッパーフレーム14とに背板11が固定されている。
【0019】
バックフレーム10はサイドフレーム13から一連に延びる左右の前向きアーム部16を有しており、左右の前向きアーム部16には上板17aと左右側板17bとを有するジョイント部17が一体に繋がっている。ベース2の後部には金属板製の揺動部材18が左右長手の第1軸19によって傾動自在に連結されており、揺動部材18にバックフレーム10のジョイント部17がビスで固定されている。第1軸19の左右端部は揺動部材18の外側に露出している。
【0020】
従って、本実形態では、揺動部材18及びバックフレーム10の前向きアーム部16とジョイント部17とによって背支持装置が構成されており、背もたれ4は第1軸19を中心にして傾動する(第1軸19が背もたれ4の枢支軸になっている。)。バックフレーム10の左右前向きアーム部16はジョイント部17で一体に連結されているため、バックフレーム10は樹脂製であっても高い剛性を有している。揺動部材18とバックフレーム10とを一体に構成したり、前向きアーム部16をサイドフレーム13とは別部材にしたり、揺動部材18と前向きアーム16とを一体化したりすることも可能である。
【0021】
揺動部材18には側面視傾斜姿勢で前方及び上方に延びるサポートアーム18aが一体に設けられており、左右サポートアーム18aの先端に、リア係合ピン20を挿通している。そして、例えば図5に示すように、座受け体7の下面にはリア係合ピン20に後ろから引っ掛かり嵌合する左右一対のリア係合爪21が一体成形されている。このため、背もたれ4が後傾すると座受け体7及び座体3は後ろに引っ張られる。
【0022】
他方、例えば図5に示すように、ベース2は金属板製であって、左右の側板2aを有する上向き開口の箱状の形態を成しており、その前部に左右横長の第2軸22を取り付けて、この第2軸22に単一構造のフロントリンク23を回動自在に連結し、かつ、フロントリンク23の上端は座受け体7に形成した上雌形嵌合部24に回動可能に嵌入している。従って、着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、揺動部材18で座受け体7が後ろに引っ張られ、これに伴ってフロントリンクが回動して座部8は上昇しながら後退する。
【0023】
図5に示すように、ベース2には上から上カバー25が装着されており、リア係合ピン20は上カバー25で支持されている。また、ベース2は下方から下カバー26で覆われている。ベース2の後部には、操作機構部27と背面カバー28とを有する制御ユニット29が配置されている。この制御ユニット29により、ロッキングに対する抵抗の切り換えと、背もたれ4の後傾の規制とが行われる。
【0024】
(2).ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係
以下、各部の詳細を説明する。まず、ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係を説明する。既述のとおりベース2は上向きに開口した箱型の形態であり、例えば図5に示すように、ベース2の内部のうち略中央部に側断面下向き開口コの字型の第1インナーブラケット31を溶接しており、このインナーブラケット31とベース2の底板とにブッシュ32を固着し、このブッシュ32に脚支柱1を下方から嵌着している。
【0025】
第1インナーブラケット31には上向き開口コの字形の第2インナーブラケット33が固着されており、両インナーブラケット31,33で囲われた空間に肘掛け装置の基端部が横方向から挿入されるようになっている。第2インナーブラケット33の左右両端部はベース2の外側に露出していてその先端に下向き片33aを形成しており、下向き片33aに肘掛け装置の基端部がビスで締結される。
【0026】
揺動部材18は上板と左右側板18bとを有する基本形態であり、左右側板18bでベース2を外側から囲い、ベース2の左右側板2aと揺動部材18の左右側板18bとに第1軸19が貫通している。第1軸19はブッシュを介してベース2に取り付けている。揺動部材18のサポートアーム18aは側板18bから延びている。
【0027】
揺動部材18における左右側板の後部には、左右長手のフレーム受け軸34が挿通している。フレーム受け軸34の左右両端部は揺動部材18の外側に露出している。他方、例えば図4に示すように、バックフレーム10の前向きアーム部16はある程度の左右巾を有する厚肉状になっており、左右前向きアーム部16の先端には第1軸19の露出端部に嵌入する前向き開口溝35が形成されており、更に、前向き開口溝35よりも後ろの部位には、フレーム受け軸34の先端部に上方から嵌まる下向き開口溝36が形成されている。
【0028】
両開口溝35,36は左右外側には開口しておらず、従って、第1軸19とフレーム受け軸34とは前向きアーム部16によって左右抜け不能に保持されている。このため、第1軸19及びフレーム受け軸34にはスナップリングのような抜け止め手段を装着する必要はない。
【0029】
図6(B)から容易に理解できるように、バックフレーム10のジョイント部17は揺動部材18に上から重なっており、更に、揺動部材18の下面には樹脂製の押圧部材38が重なっている。そして、ジョイント部17の上面板17aと揺動部材18の上面板とはビス37で締結している。
【0030】
ロッキングするとリア係合ピン20でリア係合爪21が後ろに引っ張られるが、ロッキングの戻り時にリア係合ピン20で座受け体7を前に押さねばならない。そこで、図示していないが、座受け体7に、リア係合ピン20を前後相対動不能に保持するためのストッパーを上からの嵌め込みで装着している。
【0031】
(3).固定式ゴムの配置態様
例えば図10に示すように、押圧部材38とベース2との間には弾性体の一例としての左右一対の固定式ゴム40を配置しており、固定式ゴム40はベース2に取り付けた受け部材41に装着されている。非ロッキング状態でも固定式ゴム40は押圧部材38で圧縮されている。すなわち、固定式ゴム40にはプリテンションが掛かっている(そうでないと、ロッキング当初に背もたれ4が急激に後傾して危険である。)。
【0032】
固定式ゴム40は側面視扇形のブロック形状を成しており、図10に示すように、上面40aと下面40bとが第1軸19の軸心の延長線に位置するように配置している。このため、固定式ゴム40の各部位は押圧部材38によって均等に圧縮される。換言すると、プリテンション及びロッキングに伴う荷重は固定式ゴム40の各部位に均等に作用する。このため、片当たりを無くして耐久性を向上できる。
【0033】
受け部材41は樹脂製であり、例えば図9に示すように、左右の固定式ゴム40が装着される左右の固定式ゴムマウント部42を有している。押圧部材38の下面にも固定式ゴム40が嵌まるゴムマウント部42を形成している。
【0034】
受け部材41における左右の固定式ゴムマウント部42の間には、後述する可動式ゴム43を受けてロッキングに対する抵抗を強状態にするための可動式ゴム受け台44と、ロッキングしても可動式ゴム43が圧縮されないように逃がすための可動式ゴム逃がし部45とが左右に並んだ状態で形成されている。
【0035】
図10に示すようにベース2の底板は概ね水平姿勢になっている一方、固定式ゴム40は側面視で第1軸19の軸心を通る水平面を挟んで略上下対称形状になっている。このため固定式ゴムマウント部43は水平面に対して後傾した姿勢に傾斜している。
【0036】
また、固定式ゴムマウント部42には、固定式ゴム40を後ろ向きずれ不能に保持するためのリアリブ42aと、左右ずれ不能に保持するためのサイドリブ42bとを上向きに突設している。可動式ゴム受け台43は固定式ゴムマウント部42よりも高くなっており、このため、可動式ゴム受け台43と隣り合った左側の固定式ゴム40では可動式ゴム受け台43が固定式ゴム40の内向き移動を阻止するストッパーの役割を果たしている。従って、左側の固定式ゴム40ではサイドリブ42bは一つしか存在していない。他方、右側の固定式ゴムマウント部42ではサイドリブ42bは左右2つ存在している。
【0037】
例えば図9や図10に示すように、押圧部材38と固定式ゴム40との間、及び、固定式ゴム40の上下両面には左右横長の突条46が形成されている一方、受け部材41のゴムマウント部42と押圧部材38のゴムマウント部42とには、突条46が嵌まる断面円形状の受け溝47を形成している。
【0038】
既述のとおり可動式ゴム受け台44は固定式ゴムマウント部42よりも高い高さである一方、図11の(A)と(B)との比較から理解できるように、可動式ゴム逃がし部45は固定式ゴムマウント部42の上面よりも低く(深く)なっている。可動式ゴム逃がし部45の底面も側面視で第1軸19の軸心を通るように設定されている。
【0039】
受け部材41は樹脂の成形品であり、底には多数のリブ(或いは空所)を形成している。また、図8(B)に示すように、受け部材41はの底面に左右の位置決めピン48を突設している一方、図8(B)には位置決めピン48が嵌まる位置決め穴49を空けている。このため、受け部材41はビス止めしなくてもずれ不能で脱落不能に保持されている。もとより、ビスで固定することは構わない。
【0040】
メイン押圧部材38は樹脂製品であり、おおむね左右長手で角形に近いブロック状の外観を呈しているが、軽量化のため多数の空所を有している。そして、図11(A)に示すように、バックフレーム10のジョイント部17が揺動部材18にビス37で締結されている。
【0041】
図8に示すように、押圧部材38の上面には突起38aが形成されている一方、図7に示すように、揺動部材18には押圧部材38の突起38aが嵌まる穴18cを設けている。揺動部材42には固定式ゴム40の押圧力がプリテンションとして常に作用しているため、突起38aと穴18cとの嵌合関係は維持続けられる。従って、押圧部材38はビスで固定しなくてもずれ不能に保持される。もとより、ビスで共締めすることは自由である。
【0042】
(4).操作ユニットの傾動制御装置
次に、操作ユニット29を説明する。まず、主として傾動制御装置を説明する。既述のとおり、操作ユニット29は操作機構部27とこれが取り付いた背面カバー28とで構成されている。背面カバー28は左右のリブ板側板28aを有しており、縦長き左右アターリブ28aに、背面カバー28をフレーム受け軸34に取り付けるための挟持部28bが前向き開口している。挟持部28bは、弾性に抗して変形させることでフレーム受け軸34に嵌め込まれてる。フレーム受け軸34に嵌め込むことに代えて、又はこれに加えて、背面カバー28に形成した係合爪を揺動部材18の側板18bに係合させることも可能である。
【0043】
例えば図9に示すように、背面カバー28には揺動部材18の後部上面に重なる庇部28cを設けており、庇部28cをビス51で揺動部材18の上面板18aに固定している。庇部28cには、ビス51の頭を収納する凹所52が形成されている。
【0044】
例えば図12にから理解できるように、操作機構部27は中心軸54とこれを覆う外筒55とを有している。中心軸54は弾力調節装置を構成するものであり、その一端部(右端)は外筒55の外側にはみ出しており、ここに強弱調節レバー56を取付けている。
【0045】
他方、外筒55は傾動制御装置を構成しており、その一端部(右端)にロックレバー57を設けている。両レバー56,57は、強弱調節レバー56が外側でロックレバー57が内側に位置するように配置している。また、両レバー56,57は人が操作しやすいように側面視での姿勢を異ならせて配置している。外筒55の外端部は大径部55aになっており、この大径部55aに強弱調節レバー56の軸部が回転自在に保持されており、中心軸54は強弱調節レバー56の軸部に相対回転不能に嵌合している。
【0046】
例えば図9に示すように、背面カバー28の左右側端面にはその上半分程度において手前に突出する側板28dを設けており、側板28dの内側に既述のアウターリブ28aを前向き突設している。側板28dは、バックフレーム10におけるジョイント部17の側板17bに後ろから重なるように設定している。
【0047】
外筒55のうちロックレバー57と反対側の端部には、その軸心から突出したロック体59を一体に設けており、背面カバー28には、ロック体59を左側から挟むインナーリブ60を形成し、外筒55の内端部55bをインナーリブ60に形成した軸受け穴61に嵌め込んでいる。すなわち、ロック体59の付け部がアウターリブ28aとインナーリブ60とで左右両側から囲われている。アターリブ28aには、外筒55の他端部55cが嵌まる係合溝穴62を形成している。係合溝穴62は開口部が巾狭のくびれた形状をしている。
【0048】
図13に示すように、外筒55の他端部55cには、外周面を平坦に切欠いたヌスミ溝63が形成されており、外筒55は、ヌスミ溝63が係合溝穴62と平行となる姿勢にすることによって係合溝穴62に嵌め込むことができ、かつ、嵌め込んでから使用姿勢に回転させると抜け不能に保持される。支持部55cには、外筒55が内向き移動を阻止するストッパー片64を形成している。
【0049】
ロック体59は外筒55から略下向きに突出した姿勢になっており、ベース2に向いた第1段部65と第2段部66との2つの段部を有している。第1段部66が先端側に位置している。他方、ロック体59の背面部には、第1〜第4の4つの係合溝67a〜67dが形成されており、この係合溝67a〜67dに、後ろからストッパー68が選択的に嵌合するようになっている。ストッパー68は背面カバー28に形成したポケット部69に前後動のみするように装着されており、ブロック状弾性体70で前進方向に付勢されている。図11(A)に示すように、外筒55の他方の端部には、安定した回転を確保するため、中心軸54に外側から当接する内向きリブ71を設けている。
【0050】
図11(A)から理解できるように、ロック体59は、ベース3における後ろ壁2bに設けた外向き支持フランジ2cに上から当接し得るようになっている。図11(A)では、ロック体59は第1段部56が支持フランジ2cの上面に対向したロック姿勢になっており、この状態では背もたれ4は殆ど後傾しない完全ロック状態になっている。また、ストッパー68は第2係合溝66bに嵌まっており、このためロック体59は姿勢保持されている。
【0051】
図11(A)の状態で外筒55を半時計回りに回転させると、ロック体59は、第2段部66が支持フランジ2cと対向する中間姿勢と、第2段部66が支持フランジ2cの外側に向いたフリー姿勢とに切り換わる。中間姿勢では、背もたれ4が最大傾動範囲の半分程度の範囲まで傾動すると第2段部66が支持フランジ2cに当接し、これにより、背もたれ4の後傾範囲が最大ストロークの半分程度に規制される。また、この中間姿勢では、第3係合溝67cにストッパー68が嵌まっている。後傾し切った状態にロックすることも可能である。
【0052】
更に、フリー姿勢ではロッキングに際してロック体59が支持フランジ2cに当たることはなく、このため、背もたれ4は最大傾動範囲だけ自由に傾動する。このフリー状態ではストッパー68は第4係合溝67dに嵌まっている。
【0053】
(5).操作ユニットのうち可動式ゴム
次に、操作機構部27のうち可動式ゴムを説明する。既述のとおり、可動式ゴムは中心軸54を有している。例えば図13(B)から理解できるように、中心軸54の先端部は背面カバー28における他方のアウターリブ28aで支持されており、先端には抜け止めのためスナップリング73を装着している。そして、中心軸54のうち、背面カバー28のインナーリブ60と他方のアウターリブ28aとの間には、例えば図9や図11(B)に示すように、スライダー74及びこれを左右動させる作動カム75が嵌まっている。
【0054】
スライダー74は中心軸54にスライド自在に嵌まっていると前向きに突出しており、その下面に可動式ゴム43を配置している。スライダー74は下向きに開口しており、このため可動式ゴム43は左右方向及び前後方向にずれ不能に保持されている。また、図13(B)に示すように、可動式ゴム43の一側面に溝43aを形成する一方、スライダー74には溝43aに嵌まるリブ74を形成しており、これによって脱落を確実に阻止している。
【0055】
スライダー74及び可動式ゴム43は押圧部材38に形成した空所76に左右スライド自在に嵌入している。可動式ゴム43も側面視扇形の形態を成している。また、スライダー74の先端には左右2つのガイド突起77を設けている一方、押圧部材38の前端部にガイド突起77が嵌まるガイド溝78を設けており、これにより、スライダー74及び可動式ゴム43は上下に触れることなく安定して左右スライドする。なお、ガイド手段は他の構造でも良い。
【0056】
例えば図12に示すように、スライダー74は中心軸54に嵌まる筒体79、これを囲うケース部80とを有しており、ケース部80は背面カバー28に形成したリブ82(図13(A)参照)の群で左右スライド自在に保持されている。また、ケース部80はばね93で強弱調節レバー56に向けて付勢されている。
【0057】
そして、筒体79には、平面視で強弱調節レバー56に向けて間隔が広がる雌形カム溝部84がリブを立てることで形成されている一方、作動カム75は筒体79を外側から抱くように配置された二股状になっており、雌形カム溝部84と重なり合う平面視テーパ状のカム面84aを有している。作動カム75は、中心軸54に相対回転不能及びスライド不能に固定されている。
【0058】
従って、強弱調節レバー56を回転させると、作動カム75と雌形カム溝部84とのガイド作用により、スライダー74が左右動する。作動カム75の先端には、雌形カム溝部84の開口縁の平坦部84′に係合する段部85を形成している。段部85は、作動カム75を雌形カム溝部84と非嵌合状態に保持する係止手段の一例である。
【0059】
図12(A)のように、作動カム75が雌形カム溝部84に嵌まった状態では、スライダー74はばね83によって後退してその嵌まり合い状態が保持されている。このようにスライダー74が後退した、状態では可動式ゴム43は受け部材41における可動式ゴム逃がし部45上方に位置しており、従って、可動式ゴム43がロッキングに際しての抵抗として作用することはない。つまり、弾力調節装置はロッキングに対する抵抗が小さい弱状態になっている。
【0060】
そして、スライダー74が後退した状態で作動カム75を図12(B)の矢印方向に回転させると、スライダー74はばね83に抗して強弱調節レバー56から逃げる方向に押しやられ、作動カム75の段部85が雌形カム溝部84の開口縁に当接することで、スライダー74は前進状態に保持される。この前進状態では、可動式ゴム43は可動式ゴム受け台44の上方に位置しており、従って、可動式ゴム43はロッキングに際して抵抗として作用する。すなわち、弾力調節装置はロッキングに際しての抵抗が大きい強状態になっている。
【0061】
図12に示すように、作動カム75の基端部には、スライダー74が後退した状態で図12(A)の点線矢印A方向には回転させられないように、スライダー74における雌形カム溝部84の開口縁に当接する規制部86を設けている。背面カバー28は揺動部材18を後ろから塞いでいる。そこで、揺動部材18の左右側板には、操作機構部27の外筒55が嵌まり込む逃がし溝穴87を空けている。
【0062】
(6).まとめ
以上の構成において、操作ユニット29はベース2の後ろ側から嵌め込んでからビス51で固定する、というごく簡単な作業で取付けできる。このため、椅子の組み立て作業の能率向上に貢献できる。また、操作ユニット29は簡単に取り外しできるため、固定式ゴム40や可動式ゴム43の交換のような作業もごく簡単に行える。操作ユニット29ごと交換することも可能である。
【0063】
操作態様は既に説明したとおりであり、ロッキングに際しての弾力は強弱調節レバー56の回動操作によって強弱2段階に調節され、また、ロックレバー57の回動操作によって背もたれ4の後傾動はフリー状態とロック状態と中間状態との3段階に切り換えられる。そして、ベース2の後端と揺動部材18との間の部分は揺動部材18と操作ユニット29とで囲われているため、人が指を差し入れようとしてもガードされて安全である。
【0064】
本実施形態は様々の利点を有する。例えば、操作機構部27を背面カバー28に取り付ける手段として、外筒55を、アウターリブ28aにおける切り開き方式の係合溝穴62とインナーリブ60に形成した丸形の軸受け穴61とに嵌め込む方式を採用すると、簡単に取付けできるものでありながら抜け不能にしっかりと保持できる利点がある。
【0065】
また、固定式ゴム40と押圧部材38及び受け部材41との間にストッパーピン46を介在させると、ロッキングに際しての固定式ゴム40のずれを確実に阻止して固定式ゴム40を均一な状態に圧縮させることができる。固定式ゴム40及び可動式ゴム43を側面視扇形に形成した利点は既に述べている。
【0066】
また、可動式ゴムと傾動制御装置とを操作ユニット29に組み込むと、着座者は片手で弾力調節と傾動制御とを行えるため、操作性に優れている。また、中心軸54を弾力調節装置に使用して外筒55を傾動制御装置に使用すると、スライダー74のスライドを無理なく行えるのみならず、外周が大きい外筒55でロッキング荷重を受けるため、支持強度にも優れている。
【0067】
更に、バックフレーム10のジョイント部17と揺動部材18と押圧部材38とを共締めすると、部材点数を抑制してコストダウンに貢献できる。更に、スライダー74を押圧部材38にスライド自在に保持すると、既述のとおり、スライダー74の上下振れを防止して強弱調節を確実化できる。なお、可動式ゴム43を使用せずに、可動式ゴム43に相当する中間固定式ゴムを受け部材41に装着し、スライダー74を中間固定式ゴムに当たる位置と当たらない位置に移動させることも可能である。
【0068】
(7).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、ロッキングに際して座部が上昇及び後退動しない椅子に適用できることはいうまでもない。弾性手段としては、コイルスプリングのようなばねも使用できる(上記の実施形態の固定式ゴム40と可動式ゴム43とをそれぞれコイルスプリングに置き換えても良い。)。傾動制御装置としては、ロッキングの抵抗を3段階以上に切り換えることや無段階に切り換えることも可能である。
【0069】
更に、操作ユニットは、ベースや背支持装置のセット部に、左方向又は右方向から嵌め込んで(或いは重ね合わせて)セットしたり、下方又は上方から嵌め込んで(重ね合わせて)セットしたりすることも可能である。
【0070】
操作ユニットの具体的な形態・構造は必要に応じて設定できる。操作機構部と背面カバーとを一体化することも可能である。弾力調節装置のみ又は傾動制御装置のみをユニット化することも可能である。レバーは回動(回転)方式に限定されるものではなく、プッシュ方式等の他の操作態様も採用できる。
【0071】
また、適用対象となる椅子は回転椅子に限定されるものではなく、会議用椅子のような非昇降式の椅子や劇場用椅子のような固定式椅子にも適用可能である。座板に上雌形嵌合部やリア係合爪のような連結部を設けることも可能である。弾性手段としはてコイルスプリングのようなばねを使用することも可能である。
【0072】
操作ユニットはベースに取り付けることも可能である。弾力調節装置では必ずしも左右動するスライダーを使用する必要はない。スライダーを使用する場合、必ずしも実施形態のようなカム手段を採用する必要はない。カム手段を採用する場合、周面カムも採用可能である。
【0073】
更に、操作ユニットには、弾力調節装置及び傾動制御装置に加えて(又はこれらに代えて)別の調節装置又は制御装置を組み込むことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明椅子に具体化してその有用性が発揮される。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 脚支柱(ガスシリンダ)
2 ベース
3 座体
4 背もたれ
7 座受け体
10 バックフレーム
16 バックフレームの前向きアーム部
18 揺動部材
19 第1軸
17 ジョイント部
27 操作機構部
28 サポート材の一例としての背面カバー
29 操作ユニット
39 弾性手段を構成する固定式ゴム
41 受け部材
43 弾性手段を構成する可動式ゴム
56 強弱調節レバー
57 ロックレバー
74 スライダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動を弾性的に支持する弾性手段と、ロッキングに際しての前記弾性手段の抵抗を調節する弾力調節装置又は前記背もたれの後傾動を規制する傾動制御装置とが備えられている椅子であって、
前記弾力調節装置又は傾動制御装置は、操作レバーを有する操作機構部と、前記背支持装置又はベースに取付くサポート材とを有しており、前記操作機構部をサポート材に組み込むことによって操作ユニットが構成されている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記操作機構部は、同心の軸心回りに回動する操作レバーを有する弾力調節装置と傾動制御装置とで構成されている、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
前記背支持装置は、前記ベースに連結した揺動部材とこれに取付けたバックフレームとを有しており、前記揺動部材は上板と左右側板とを有する下向き開口コの字形の形態である一方、
前記ベースと揺動部材との間には弾性手段が配置されており、前記弾力調節装置に設けたスライダーを揺動部材における左右側板の間において左右動させることでロッキングに対する抵抗が変わるようになっている一方、前記傾動制御装置は揺動部材の左右側板の間の箇所において前記ベースの後端部に上方から当たり得るロック体を備えており、前記ロック体の姿勢を変えることで背もたれの後傾規制が成されており、
更に、前記操作ユニットを構成するサポート材は前記揺動部材を後ろから塞ぐ背面カバーになっている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−92471(P2011−92471A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249951(P2009−249951)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】