説明

ロック機構

【課題】キッチンキャビネットの扉等に設けられるロック機構において、施錠忘れを防止する。
【解決手段】リモコンを操作して解錠信号を送信すると、アクチュエータ11のプランジャ12が降下して扉1が開閉自在な解錠状態となる。扉1が閉止され、検知部が出力する検知信号の出力継続時間が所定時間を超えると、アクチュエータ11がプランジャ12を上昇させて扉1を閉止位置に保持する。従って、扉1が閉止位置に在る時間が所定時間を超えると自動的にロック機構Lが施錠状態へ移行するから、使用者が特に操作しなくても耐震ロック・チャイルドロックの機能を確実に発揮させることができる。電池消耗時や停電時には突出端部13を操作することにより、プランジャ12を強制的に昇降させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンキャビネット・食器棚・洗面キャビネット・衣装ダンス・書類用キャビネット等の各種収納家具における扉や引出し、窓・雨戸・ドア・障子等の仕切り部材等の可動部材に対し設けられるロック機構に関し、可動部材の閉止状態が一定時間以上継続すると、自動的に施錠するように構成したものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、光センサーによって検出する室内の明るさ(照度)が一定値以下になると或いは室内の照明装置がOFF操作されると、キャビネットの開閉扉や抽斗に設けた施錠装置を施錠状態にする技術が記載されている。これにより、例えばオフィスにおいて人が居る執務中は業務に支障をきたさないようキャビネットの扉・抽斗を開閉自在な解錠状態とし、オフィスが無人になったときには自動的にキャビネットを施錠して施錠忘れを防止するとされている。
【特許文献1】実公平6−40303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般家庭における例えばキッチンキャビネットでは、幼児が勝手に扉や引出しを開けるのを防止できる手段(「チャイルドロック」と言う)を設けることが望ましいが、前記特許文献1の技術は、このような目的に適していない。何故なら、特許文献1に記載の施錠装置は、夜間など室内に人が不在であることを前提として施錠動作するものであるので、キッチン等で人が作業中に扉や引出しの施錠をするものではないからである。また同様の理由で、人の在室中に地震が発生した場合に、扉や引出しが開いて収納物が飛び出すのを防止する手段(「耐震ロック」と言う)としても利用できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、耐震ロックやチャイルドロックとして機能させることのできるロック機構を提供するものであって、その特徴とするところは、請求項1に記載するとおり、屋内設備における手動で開閉操作される可動部材と当該可動部材が配置される固定部材との間に設けられ、電気的に動作が制御され、施錠状態のときに可動部材を閉止位置に保持し、解錠状態のときに可動部材を開閉自在とする錠装置を有し、当該錠装置は、リモコンから無線方式で送信される解錠信号により解錠状態となり、可動部材が閉止位置に在る時間が所定時間以上になると施錠状態となるように設定されていることである。
【0005】
前記において、屋内設備における手動で開閉操作される可動部材とは、キッチンキャビネット・洗面キャビネット・整理ダンス・衣装ダンス・食器棚・書類用キャビネット等の収納家具や、クローゼット・押し入れ等の収納設備における扉・引出し・引き戸などを指すほか、窓・雨戸・ドア・戸・障子等の可動の仕切り部材が含まれる。他方、可動部材が配置される固定部材とは、収納家具にあってはその本体、収納設備にあっては近傍の壁や床等の建物躯体、仕切り部材にあっては窓枠・ドア枠・鴨居・敷居・柱・壁等を指す。電気的に動作が制御される錠装置の駆動手段としては、ソレノイド式のアクチュエータ、ステッピングモータ、リニア駆動モータ、リニアモータなどが考えられる。リモコンにおける解錠信号の送信方式については、電波のほか、赤外線や超音波を用いる方式も考えられる。
【0006】
前記ロック機構には、前記錠装置を機械的に解錠状態とする手段を設けておくことが望ましい。(請求項2)
【0007】
また、可動部材に開閉操作用の取っ手を設けた場合、リモコンのスイッチ部を当該取っ手に組み込むことも可能である。(請求項3)
【発明の効果】
【0008】
本発明を例えばキャビネットの扉に適用した場合を想定すると、請求項1に記載した本発明に係るロック機構は、扉(可動部材)が閉止位置に在る時間が所定時間以上になると錠装置が動作して施錠状態となるように設定されているから、例えば収納物を取り出した後または物品を収納した後、可動部材を閉止状態に戻して一定時間放置しておけば、自動的に施錠される。つまり使用者が施錠操作を行わなくても、一定時間後には必ず扉を施錠状態にできるから、地震が起きたときに振動で扉が開き、収納物が飛び出したり飛散したりして使用者に怪我を負わせるという事故を防止できる。また、幼児が勝手に扉を開けて包丁等に接触し怪我をする事故を未然に防げる。このように本発明は、いわゆる耐震ロックやチャイルドロックの機能を発揮することができる。また、錠装置の解錠操作を無線方式によりリモコンで行うように構成したから、リモコンを錠装置とは別の場所に設置することが可能である。従って、リモコンを容易には子供の手が届かない場所に配置することで、より安全性の高いチャイルドロック機能を提供できる。
【0009】
請求項2に記載したように、前記錠装置を機械的に解錠状態とする手段を設ければ、電池の消耗又は停電等の電気的障害により、リモコンによる解錠操作ができなくなったときに、強制的に解錠して可動部材を開閉可能とすることができる。
【0010】
請求項3に記載の如く、開閉操作用の取っ手にリモコンのスイッチ部を組み込んだ場合は、可動部材を開こうとするときに自動的に解錠されるから、使い勝手がよい。但し本例は、チャイルドロックとしての機能が低下するので、子供の手が容易に届かない高い位置の可動部材に適用するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係るロック機構LをキャビネットKの扉1に適用した実施形態を示すものである。本例では、可動部材が扉1であり、固定部材がキャビネット本体2であり、ロック機構Lをキャビネット本体2の底面に配置し、ロック機構Lに解錠信号を送信するリモコンRを扉1の表面に配置してある。なお、ロック機構L及びリモコンRの位置は状況に応じ適宜変更できる。すなわち、使用者が容易に操作できる位置であるならば、ロック機構L又はリモコンRを、キャビネット本体2の側板4上や天板5上に配置することもできる。さらにリモコンRについては、必ずしもキャビネットK上である必要はなく、携帯式としたり、磁石や吸盤で所望箇所へ着脱自在に配置できる構成とすることも可能である。但し信号の送信方式や出力により、リモコンRとロック機構Lとの通信可能距離に制限が有るのは言うまでもない。
【0012】
リモコンRは、図2に示す如く、スイッチ部と発信部とから成り、好ましくは電池等の電源を備える。場合によっては、外部電源と配線接続する給電方式も可能である。電源用電池は、乾電池・蓄電池のほか、太陽電池又は太陽電池と充電池との組み合わせが考えられる。発信部は水晶発信子やプログラム式発信器を用い、スイッチ部の操作により、所定の矩形波又はパルス波を解錠信号として出力するものが考えられるが、赤外線発光装置や超音波発信器を発信部に用い、赤外線又は超音波による通信方式を採用することも妨げない。なお、リモコンRは少なくとも解錠信号を出力するが、必要に応じ施錠信号を送信できるようにしてもよい。
【0013】
本発明に係るロック機構Lは、扉1等の可動部材を閉止状態に保持するものであり、本例では図3に示すような構造を採用した。扉1の下端部に係合部材20を取着し、底板3の下面に取着したハウジング10内に、上記係合部材20と係止する係止手段11及びその制御手段15を収納する。ハウジング10と係合部材20とでロック機構ユニットが構成され、ビス等により、所望箇所に取着可能である。係止手段11は電気的に動作が制御されるものであって、本例では、小型で制御の容易なソレノイド式のリニアアクチュエータを用い、上下方向に昇降するプランジャ12の先端が、係合部材20に形成した係合孔21内へ挿入可能となされている。またプランジャ12の他端をハウジング10外に突出させ、この突出端部13を直接操作することにより、プランジャ12を手動で強制的に移動させることができるよう構成されている。係合部材20は、底板3との間にプランジャ12の先端部を突出させる空間を設けるため、階段状に折曲形成されている。上記係止手段11と係合部材20とにより錠手段が構成され、図3(A)の如くプランジャ12が降下位置にあるとき解錠状態となり、同図(B)の如くプランジャ12が上昇位置にあるとき施錠状態となる。またハウジング10には、扉1の開閉に従い、係合部材20を進退させる開口10aが設けられている。
【0014】
制御手段15は、係止手段であるアクチュエータ11の動作を制御するためのものであって、動作信号を出力する制御部、リモコンからの解錠信号を受信する受信部、係合部材20の位置を検知する検知部、検知部から出力される検知信号の継続時間の長さに基づいてアクチュエータの動作を決定する判定部、及び、電池等の駆動用電源を備えている。受信部の構成は、リモコンRとの通信方式に応じて適宜選択される。検知部は、例えば係合部材20の端部に取着した磁石とリードスイッチとの組み合わせ、近接スイッチ、光センサ等で構成され、扉1が閉止状態にあるときのみ係合部材20を検知して、検知信号を出力する。判定部は、検知信号の出力継続時間を測定するタイマー回路等を有している。電源には、乾電池・蓄電池・太陽電池・太陽電池と充電池との組み合わせのほか、外部の商用電源を利用することも可能である。
【0015】
前記の如く構成されたロック機構Lは、キャビネットK(図1参照)から収納物を取り出す場合や物品をキャビネットK内へ収納しようとする場合などに、使用者がスイッチ部を操作することによって、リモコンRから解錠信号が送信され、ロック機構Lの受信部がこれを受けて制御部に伝達し、制御部がアクチュエータ11へ動作信号を出力する。その結果、図3(A)の如く、アクチュエータ11がプランジャ12を降下させ、扉1が開閉自在な解錠状態となる。扉1が開かれた状態のとき、又は、頻繁に開閉操作されているときには、検知部が係合部材20端部を検知しないか、あるいは検知信号の出力継続時間が短いので、上述の解錠状態が維持される。
【0016】
扉1が図3(B)に示すように閉止されると、検知部が係合部材20の端部を検知して検知信号を判定部へ出力する。判定部は、この検知信号の出力時間を計測し、出力継続時間が所定時間を超えると、制御部へ判定信号を出力する。その結果、制御部がアクチュエータ11へ動作信号を出力してプランジャ12を上昇させ、扉1を閉止位置に保持する施錠状態になる。つまり、扉1が閉止位置に在る時間が所定時間を超えると、ロック機構Lが自動的に扉1が容易には開くことのない施錠状態へ移行する。従って、扉1を閉じたのち所定時間以上放置するだけで、使用者が特に操作しなくても施錠されるから、耐震ロック・チャイルドロックの機能を確実に発揮させることができる。
【0017】
なお、ロック機構Lに内蔵させた電池の消耗や停電等により、アクチュエータ11を電気的に動作させることが出来なくなった場合には、プランジャ12の突出端部13を操作することにより、プランジャ12を強制的に昇降させることが可能である。つまり、ロック機構Lの施錠状態・解錠状態を機械的に切り替えることができる。この場合、プランジャ12は少なくとも降下して解錠できればよいが、強制的に上昇させて施錠もできる方が好ましい。
【0018】
またリモコンRは、解錠信号だけを送信できればよいが、必要に応じ、施錠信号を出力可能に構成することも妨げない。
【0019】
さらに、扉1の表面に取着される取っ手6(図1参照)に、静電容量型スイッチ・感圧スイッチ等を、リモコンのスイッチ部として組み込み、取っ手6に触れると自動的にロック機構Lが解錠状態となるように構成することも考えられる。但し、この例は、少なくとも取っ手6の位置が、容易には子供の手が届かない比較的高い位置である場合に適用するのが好ましい。
【0020】
[第2の実施形態]
図4に示す実施形態は、ロック機構Lの錠装置を構成する係止手段を、水平方向にプランジャ12を進退させるように配置したリニアアクチュエータ11と、プランジャ12の進退により、軸14aを中心として揺動する係止片14とで構成したものである。係止片14は断面扇形であり、揺動軸14aは係合部材20よりも下側に配置されている。なお扉1の下端部に取着する係合部材20、及び、ロック機構Lの制御手段15については、前記第1の実施形態と共通でよい。
【0021】
本例では、図4(A)に示す如く、プランジャ12が後退位置にあるとき、係止片14は下方へ揺動して係合部材20の下側に収納される。係合部材20と係止片14とは係合しないので、扉1が開閉自在な解錠状態となる。そして同図(B)に示す如く、扉1が閉止位置にあるときに、プランジャ12を前進させると、係止片14がプランジャ12の先端に押されて上方へ揺動し、係合部材20の係合孔21の上側に突出する。このとき係止片14は、下面がプランジャ12の側面に当接して、下方への揺動が阻止される。その結果、係合部材20が係止片14の平面部と係合して、扉1が容易には開くことのない施錠状態となる。
【0022】
本例では、プランジャ12を水平方向に移動させるので、ロック機構Lのハウジング高さを小さくできるという利点が得られる。
【0023】
[第3の実施形態]
図5に示す実施形態は、ロック機構Lの錠装置を構成する係止手段を、係止フック17とこれを回動させるロータリーアクチュエータ16とで構成したものである。係止フック17は先端に適宜角度の屈曲部を有する。この例も、係合部材20及び制御手段15については、前記実施形態と共通でよい。
【0024】
本例では、図5(A)に示す如く、係止フック17が係合部材20より下側の待機位置にあるとき、扉1が開閉自在な解錠状態となっている。そして同図(B)に示す如く、扉1が閉止位置に在るとき、係止フック17を上方へ回動させて先端部を係合部材20の係合孔21に係止させることにより、扉1が容易には開くことのない施錠状態とすることができる。
【0025】
[第4の実施形態]
図6(A)に示す如く、システムキッチンSのようにキャビネットJ1〜2,K1〜4や引出しH1〜2などが多数設けられている場合、それぞれの扉等の各可動部材に対応して配設されるロック機構L1,L2,…も、それだけ多数となる。このような場合、1個のリモコンRで、全ロック機構L1,L2,…を同時に解錠状態とするよう構成して、リモコンRの使用個数を最小にすることが可能である。
【0026】
さらに図6(B)に示す如く、1個のリモコンRに、ロック機構Lを取り付けた可動部材の個数分のスイッチ30,30…を設け、各スイッチ30に対応した可動部材のロック機構Lのみを解錠(必要に応じ施錠も)できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に関するものであって、ロック機構を設けたキャビネットを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に関するものであって、リモコンの内部構造を概略的に示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るロック機構の内部構造を概略的に示す側面断面図であって、図(A)は解錠状態、図(B)は施錠状態を示すものである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るロック機構の内部構造を概略的に示す側面断面図であって、図(A)は解錠状態、図(B)は施錠状態を示すものである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るロック機構の内部構造を概略的に示す側面断面図であって、図(A)は解錠状態、図(B)は施錠状態を示すものである。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るものであって、図(A)はシステムキッチンに応用した例を示す斜視図、図(B)はリモコンの操作面を示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
L…ロック機構 R…リモコン K…キャビネット 1…扉(可動部材) 2…キャビネット本体(固定部材) 3…底板 11…係止手段(アクチュエータ) 15…制御手段 20…係合部材 21…係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内設備における手動で開閉操作される可動部材と当該可動部材が配置される固定部材との間に設けられるロック機構であって、電気的に動作が制御され、施錠状態のときに可動部材を閉止位置に保持し、解錠状態のときに可動部材を開閉自在とする錠装置を有し、当該錠装置は、リモコンから無線方式で送信される解錠信号により解錠状態となり、可動部材が閉止位置に在る時間が所定時間以上になると施錠状態となるように設定されていることを特徴とするロック機構。
【請求項2】
前記錠装置を機械的に解錠状態とする手段を設けた請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記可動部材に開閉操作用の取っ手が設けられ、前記リモコンのスイッチ部を当該取っ手に組み込んだ請求項1又は2に記載のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−321507(P2007−321507A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155029(P2006−155029)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】