説明

ロボットコントローラー、簡易設置型ロボット、及び簡易設置型ロボットの制御方法

【課題】移動装置に搭載されたロボットの動作速度を該ロボットの設置された状況に応じて変更することの可能なロボットコントローラー、該ロボットコントローラーとロボットとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボット、及び簡易設置型ロボットの制御方法を提供する。
【解決手段】ロボット20は、ロボット20の振動を検出する角速度センサー38を備えている。制御装置21は、ロボット20に試行動作を実行させ、試行動作中における角速度センサー38の計測結果を振動情報として取得するとともに、その取得した振動情報をデータベース53に記憶されているメーカー評価情報71に基づいて解析する。メーカー評価情報71には、振動情報と該振動情報が計測されるロボット20の設置状況に適した動作速度とが関連付けられている。そして、振動情報の解析結果に基づいて選択された動作速度でロボット20を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動装置に搭載されたロボットの動作を制御するロボットコントローラー、該ロボットコントローラーとロボットとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボット、及び該簡易設置型ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業においては、多関節アームを備えたロボットを組立ラインに導入することによって、作業対象物に対して作業者が行っていた作業を自動化する動きが活発になってきている。また、製品の多品種少量生産化ならびに製品サイクルの短期間化も進んでおり、これにともなう生産ラインの組み替えによって、ロボットの移設も頻繁に行われるようになってきている。
【0003】
特許文献1には、ロボットの移設が容易に実現されるように、キャスターとアジャスターフットとが設けられた台車に、ロボットと該ロボットのコントローラーとが搭載された簡易設置型ロボットが開示されている。この簡易設置型ロボットは、アジャスターフットによってキャスターを床面から離間させることで床面に対して簡易的に固定されることから、ロボットの動作にともなう慣性力等によってロボットの作業位置がずれてしまうことがある。そのため、特許文献1には、ロボットの作業位置がずれてしまったときに、簡易設置型ロボットを自動的に初期の作業位置へと復帰させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−64198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロボットの動作にともなう慣性力に対する抗力は、ロボットの筐体そのものの剛性によるものの他、アジャスターフットを介して床面から受ける力である。そのため、床面の強度が低い場合や設置場所の周辺に振動源がある場合など、簡易設置型ロボットの設置状況によっては床面から受ける抗力が安定せず上述した位置ずれが生じやすくなる。特許文献1では、ロボットの作業位置を初期の作業位置に復帰させることが可能ではあるものの、初期の作業位置への復帰の前後においてロボットの動きの制御態様に変化がないため、結局のところ、位置ずれと初期の作業位置への復帰とが繰り返し行われることになる。
【0006】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、移動装置に搭載されたロボットの動作速度を該ロボットの設置された状況に応じて変更することの可能なロボットコントローラー、該ロボットコントローラーとロボットとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボット、及び該簡易設置型ロボットの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロボットコントローラーは、移動装置に搭載されたロボットの動作を制御するロボットコントローラーであって、前記ロボットに所定の試行動作を実行させる試行動作実行部と、前記ロボットにおける振動の大きさが前記ロボットに設けられた振動計測部から入力される入力部と、前記振動の大きさと該振動に適した動作速度とを予め関連付けた動作速度情報が記憶される記憶部と、前記試行動作における前記振動計測部の計測結果と前記動作速度情報とに基づいて該計測結果に応じた動作速度を出力する動作速度出力部と、前記動作速度出力部が出力する動作速度で前記ロボットに処理動作を実行させる処理動作実行部とを備える。
【0008】
本発明のロボットコントローラーによれば、試行動作中における振動計測部の計測結果と記憶部が記憶する動作速度情報とに基づいて、試行動作で生じる振動に適した動作速度、すなわちロボットが設置されている状況に適した動作速度が動作速度出力部から出力される。そして、動作速度出力部が出力する動作速度でロボットの処理動作が実行される。その結果、ロボットが設置されている状況に適した動作速度でロボットを動作させることができる。
【0009】
このロボットコントローラーは、前記記憶部が、互いに異なる複数の動作モードの各々に関連付けられた互いに異なる複数の前記動作速度情報を記憶し、前記動作速度出力部が、前記振動計測部の計測結果に応じた複数の動作速度を前記複数の動作モードごとに出力し、前記動作速度出力部が出力する前記動作モードごとの動作速度のうち、ユーザーによって選択された一つの動作モードの動作速度が入力される操作部をさらに備え、前記処理動作実行部は、前記ユーザーによって選択された動作速度で前記ロボットを動作させることが好ましい。
【0010】
このロボットコントローラーによれば、複数の動作モードの各々に対応する動作速度が出力されることから、選択可能な動作モードとして、例えば作業時間よりも作業精度が優先される場合には動作速度の相対的に遅い動作モード、また例えば作業精度よりも作業時間が優先される場合には動作速度の相対的に速い動作モードを出力することができる。その結果、操作部を通じてユーザーによって選択された動作速度でロボットを動作させることができる。
【0011】
このロボットコントローラーは、前記動作速度出力部が出力する動作速度による作業時間を前記動作モードごとに算出する作業時間算出部をさらに備え、前記動作速度出力部は、前記振動計測部の計測結果に応じた動作速度と前記作業時間算出部が算出した作業時間とを関連付けて出力することが好ましい。
【0012】
このロボットコントローラーによれば、各動作モードにおける作業時間が算出されることから、動作モードがユーザーによって選択される場合に、より多くの情報に基づいて動作モードをユーザーに選択させることができる。
【0013】
このロボットコントローラーにおいて、前記試行動作は、前記ロボットに所定の動作を行わせる動作期間と該動作期間の直後において該ロボットを所定の姿勢に保持する保持期間とで構成され、前記計測結果は、前記保持期間における前記ロボットの振動の大きさであることが好ましい。
【0014】
このロボットコントローラーでは、ロボットに所定の動作を行わせた後に該ロボットが所定の姿勢に保持されている期間に振動計測部が計測した振動を計測結果としている。その結果、振動計測部の計測結果にロボットに生じた振動の減衰態様が含まれることから、ロボットが設置されている状況をより反映させた計測結果を得ることができる。
【0015】
本発明の簡易設置型ロボットは、ロボットと該ロボットを制御するロボットコントローラーとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボットであって、前記ロボットコントローラーは、上述した構成のロボットコントローラーである。
【0016】
本発明の簡易設置型ロボットによれば、上述したロボットコントローラーの効果と同様の効果を得ることができる。
【0017】
この簡易設置型ロボットにおいて、前記ロボットは、前記移動装置に対して固定されるベース部と、前記ベース部に連結される第1の可動部と、前記第1の可動部を介して前記ベース部に連結される第2の可動部とを有し、前記振動計測部が前記第1の可動部に設置されていることが好ましい。
【0018】
ここで、上記第2の可動部で生じている振動は、ベース部に生じている振動がベース部と第1の可動部とを連結する関節機構、第1の可動部と第2の可動部とを連結する関節機構、これらの関節機構によって増幅された振動である可能性がある。そのため、第2の可動部に振動計測部が設けられているとなれば、上記関節機構の増幅作用によってベース部の振動よりも大きな振動が振動計測部で計測されてしまい、その計測結果に基づく設置状況が実際の設置状況とは大きく異なってしまう虞がある。この点、上記構成では、ベース部に連結された第1の可動部に振動計測部が設置されていることから、関節機構による増幅作用が抑えられた振動を計測することができる。その結果、実際に簡易設置型ロボットが設置された状況に応じた振動を計測することができる。
【0019】
この簡易設置型ロボットは、前記振動計測部が角速度センサーであることが好ましい。
【0020】
振動を計測する振動計測部としては、具体的に上記角速度センサーの他、変位センサーや視覚センサーなどが挙げられる。しかしながら、振動計測部を変位センサーや視覚センサーにした場合、これらのセンサーには振動を計測するうえで基準となる対象物が別途必要であり、それ単独で振動を計測することができない。一方、角速度センサーは、振動を計測する際の基準となる対象物がなくとも振動を計測することができる。すなわち、上記構成によれば、ロボットの振動を計測する振動計測部をより簡易な構成のものとすることができる。
【0021】
本発明の簡易設置型ロボットの制御方法は、ロボットと該ロボットを制御するロボットコントローラーとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボットの制御方法であって、前記ロボットに所定の試行動作を実行させる工程と、前記ロボットに設けられ該ロボットの振動の大きさを計測する振動計測部を用い、前記試行動作中における前記ロボットの振動の大きさを計測する工程と、前記振動計測部の計測結果と、前記振動の大きさと該振動に適した動作速度とを予め関連付けた動作速度情報とに基づいて、前記計測結果に応じた動作速度を出力する工程と、前記出力された動作速度で前記ロボットに処理動作を実行させる工程とを備える。
【0022】
本発明の簡易設置型ロボットの制御方法によれば、試行動作中に振動計測部が計測した計測結果と、振動の大きさと該振動に適した動作速度とを予め関連付けた動作速度情報とに基づいて、該計測結果に応じて出力された動作速度、すなわちロボットが設置されている状況に適した動作速度でロボットに処理動作を実行させることが可能である。その結果、ロボットが設置されている状況に適した動作速度でロボットを動作させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる簡易設置型ロボットの概略構成を示す斜視図。
【図2】ロボットの側面構造を示す側面図。
【図3】簡易設置型ロボットの構成を機能に基づいて示す機能ブロック図。
【図4】メーカー評価情報の構成を模式的に示した図。
【図5】動作開始処理の手順を示すフローチャート。
【図6】環境検出処理の手順を示すフローチャート。
【図7】解析情報の表示態様の一例を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかるロボットコントローラー、簡易設置型ロボット、及び簡易設置型ロボットの制御方法の一実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0025】
まず、簡易設置型ロボットの概略構成について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、簡易設置型ロボット10は、矩形状をなす支持板11の各隅部にキャスター12とアジャスターフット13とが設けられた移動装置としての台車15を有している。台車15の支持板11には、ロボット20が固定される架台16が固設され、架台16の内部にロボット20の動作を制御するロボットコントローラーを構成する制御装置21が配設されている。架台16の後側には、上記制御装置21に電気的に接続されてロボットコントローラーを構成する入出力装置23が配設されている。入出力装置23は、ユーザーによって操作される操作部24と液晶画面からなる表示部25とを備えており、操作部24を用いてユーザーが入力した各種情報を制御装置21に出力するとともに制御装置21から入力された各種情報を表示部25に表示する。
【0026】
次に、ロボット20の概略構成について図2を参照して説明する。図2に示されるように、ロボット20は、いわゆる6軸の多関節アームを備えた多関節ロボットであって、架台16に固設されたベース部28にはアーム部30が連結されている。アーム部30は、第1〜第5アーム31〜35とハンド部36とで構成されている。ベース部28には、関節機構41を介して該ベース部28に対して回転軸C1を中心にして回転可能な第1の可動部としての第1アーム31が連結されている。第1アーム31には、振動計測部として該第1アーム31の角速度を計測する角速度センサー38が設けられているとともに、関節機構42を介して該第1アーム31に対して回転軸C2を中心にして回転可能な第2の可動部としての第2アーム32が連結されている。第2アーム32には、関節機構43を介して該第2アーム32に対して回転軸C3を中心にして回転可能な第3アーム33が連結され、第3アーム33には、関節機構44を介して該第3アーム33に対して回転軸C4を中心にして回転可能な第4アーム34が連結されている。第4アーム34には、関節機構45を介して該第4アーム34に対して回転軸C5を中心にして回転可能な第5アーム35が連結され、第5アーム35には、関節機構46を介して該第5アーム35に対して回転軸C6を中心にして回転可能なハンド部36が連結されている。各アーム31〜35及びハンド部36は、各関節機構41〜46に搭載されたサーボモーターが駆動されることにより各回転軸C1〜C6を中心に回転する。
【0027】
こうした構成の簡易設置型ロボット10は、所定の作業位置まで移動させたあと、アジャスターフット13を操作してキャスター12を床面から離間させることで床面に対して簡易的に固定される。そして、ユーザーによって入出力装置23の操作部24を介して入力される作業条件に応じて、関節機構41〜46に搭載されたサーボモーターの各々が制御装置21によって適宜駆動されることによって該作業条件に応じた作業を実行する。
【0028】
次に、上述した簡易設置型ロボット10の電気的な構成について図3を参照して説明する。図3に示されるように、簡易設置型ロボット10においては、ロボット20の動作を制御する制御装置21に対して入出力装置23とロボット20とが電気的に接続されている。
【0029】
ロボット20には、第1アーム31に設けられた角速度センサー38の他にも図示しない各種センサーが搭載されており、各センサーからの検出値が所定の周期で制御装置21に入力される。制御装置21は、入出力装置23及びロボット20から入力される情報に基づいてロボット20の動作を制御する。
【0030】
入出力装置23は、ユーザーによって操作される操作部24と各種情報が表示される表示部25とを備えている。操作部24は、各種入力キーが設けられたキーボードやロボット20の動作をティーチングするためのティーチングペンダントなどで構成されている。ユーザーは、操作部24を操作することによって、ロボット20に所定の作業を実行させるための作業条件を入力したり表示部25に表示される各種情報を選択したりする。
【0031】
なお、作業条件とは、作業対象物に対してロボット20が行う一連の作業に関する情報である。本実施形態では作業条件として、1つの作業対象物の給材位置及び除材位置を含めたハンド部36の停止位置や該停止位置でのハンド部36の動きといった作業シナリオに関する作業シナリオ情報、アーム部30の動作が許容される許容動作エリアに関するエリア情報、作業対象物の外形に関する対象物情報、作業条件を識別するための識別情報などが入力される。
【0032】
制御装置21は、CPU、ROM、RAM、ASIC等で構成されており、制御部51と、演算部52と、記憶部であるデータベース53とを備えている。
【0033】
制御部51は、ロボット20の動作の制御、入出力装置23から入力される各種情報に基づく各種処理、入出力装置23の表示部25に表示する各種情報の出力、演算部52への演算指令などを行う。演算部52は、制御部51からの演算指令を受けてロボット20の動作を制御するために必要な演算や表示部25に表示する情報を取得するための演算を実行する。データベース53には、各種情報が記憶されるとともに演算部52による各種演算に必要な情報が予め記憶されている。
【0034】
制御部51は、作業条件が入力された後、ロボット20の動作を開始させるための操作がユーザーによってなされてから実際にロボット20の動作が開始されるまでの処理である動作開始処理を実行する。
【0035】
また制御部51は、上記動作開始処理において、簡易設置型ロボット10の設置状況に適した動作速度でロボット20を動作させるための操作がユーザーによってなされると、ロボット20の動作速度をユーザーに選択させる環境検出処理を実行する。
【0036】
この環境検出処理においては、ロボット20に対して試行動作を実行させ、該試行動作中における角速度センサー38の計測結果であるロボット20の振動情報が取得される。そして、その取得した振動情報の解析が行われ、その解析結果として、該振動情報に基づいて推測された簡易設置型ロボット10の設置状況に関する情報である設置情報、該設置状況に適した動作モードであって動作速度の互いに異なる動作モードと各動作モードにおける動作速度とを関連付けた情報であるモード情報、各動作モードにおいて一連の作業に要する作業時間に関する生産情報が取得される。そして、これら取得した情報が表示部25に表示され、表示部25に表示される各種情報を判断材料として、モード情報に基づく2つの動作モードのどちらか一方をロボット20の動作モードとして選択するか、簡易設置型ロボット10の設置状況を変更するかがユーザーによって選択される。
【0037】
ちなみに、試行動作とは、簡易設置型ロボット10の設置状況に関する情報を取得するためにロボット20に実行させる動作であって、本実施形態では、ロボット20に所定の動作を実行させる動作期間と該動作期間の直後にロボット20を所定の姿勢に保持する保持期間とで構成される。
【0038】
制御部51は、各種情報を管理する入出力情報管理部55、動作条件管理部56、動作モード管理部57、教示情報管理部58、動作プログラム管理部59、解析情報管理部60を備えているとともに、ロボット20の各関節機構41〜46に搭載されたサーボモーター48に所定の制御周期で動作指令値を出力する動作司令部61を備えている。
【0039】
入出力情報管理部55は、ロボット20や入出力装置23、演算部52との間で制御部51に入力される情報及び制御部51から出力される情報を管理する。例えば、動作速度出力部としての入出力情報管理部55は、環境検出処理において上記モード情報及び生産情報が取得されると、それらの情報を入出力装置23に出力して表示部25に表示させる。
【0040】
また、入出力情報管理部55は、演算部52に対する各種演算指令を該演算に必要な情報とともに出力する。例えば、入出力情報管理部55は、新たな識別情報の作業条件が入力されると、該作業条件の動作条件である作業シナリオ情報、エリア情報、対象物情報に基づくアーム部30の軌道を演算させる演算指令を該動作条件とともに演算部52に出力する。
【0041】
入力部としての入出力情報管理部55は、試行動作の保持期間中における角速度センサー38の計測結果をロボット20の振動の大きさを示す振動情報として取得する。そして、その取得した振動情報に基づいて簡易設置型ロボット10の設置状況を解析させる演算指令を該振動情報とともに演算部52に出力する。
【0042】
入出力情報管理部55は、後述する動作プログラム管理部59で新たな動作プログラムが作成されると、該動作プログラムでロボット20を動作させたときの作業時間を演算させる演算指令を演算部52に出力する。
【0043】
動作条件管理部56は、新たな識別情報の作業条件が入力されると、該作業条件の動作条件、すなわち作業シナリオ情報、エリア情報、対象物情報を識別情報に関連付けて記憶する。動作条件管理部56は、識別情報に関連付けて動作条件を記憶することで、以後、該動作条件を該識別情報に対応する動作条件として管理し、識別情報が入力されると対応する動作条件を呼び出す。入出力情報管理部55は、呼び出された動作条件を入出力装置23へと出力し表示部25に表示させる。
【0044】
動作モード管理部57は、環境検出処理においてユーザーが実際に選択した動作モードの動作速度を作業条件の識別情報に関連付けて記憶する。動作モード管理部57は、該動作モードを作業条件の識別情報に関連付けて記憶することで、以後、該識別情報に対して選択された動作モードの履歴として管理し、識別情報が入力されると対応する動作モードを呼び出す。入出力情報管理部55は、入力された識別情報に基づいて呼び出された動作モードを過去に選択した動作モードとして、適宜、入出力装置23に出力して表示部25に表示させる。
【0045】
教示情報管理部58は、動作条件に応じた作業をロボット20に実行させるためのアーム部30の軌道が示される教示情報を上記識別情報に関連付けて記憶する。教示情報管理部58は、上記アーム部30の軌道を演算させる演算指令に対する演算部52の演算結果を教示情報として識別情報に関連付けて記憶することで、以後、該教示情報を該識別情報に対応する教示情報として管理し、識別情報が入力されると対応する教示情報を呼び出す。
【0046】
動作プログラム管理部59は、ロボット20に試行動作を実行させる動作プログラムを記憶している。また、振動情報の解析結果であるモード情報に基づく2つの動作モードの動作速度で上記教示情報に示されるアーム部30の軌道を具現化する動作プログラムを作成し、それら作成した動作プログラムを識別情報に関連付けて記憶する。動作プログラム管理部59は、作成した動作プログラムを識別情報に関連付けて記憶することで、以後、該作成した動作プログラムを該識別情報に対応する動作プログラムの履歴として管理する。動作プログラム管理部59は、識別情報やユーザーによって選択された動作モードに関する情報に基づいて、該情報に対応する動作プログラムを呼び出す。
【0047】
解析情報管理部60は、演算部52による振動情報の解析結果である解析情報を識別情報に関連付けて記憶する。すなわち解析情報管理部60は、振動情報の解析結果であるロボット20の設置状況に関する設置情報、該設置状況に適した2つの動作モードと該動作モードにおける動作速度と関連付けたモード情報、各動作モードにおいて一連の作業に要する作業時間に関する生産情報を識別情報に関連付けて記憶する。解析情報管理部60は、解析情報を識別情報に関連付けて記憶することで、以後、該解析情報を該識別情報に対応する解析結果の履歴として管理し、識別情報が入力されると対応する解析情報を呼び出す。入出力情報管理部55は、入力された識別情報に基づいて呼び出された解析情報を、適宜、入出力装置23に出力して表示部25に表示させる。
【0048】
動作司令部61は、動作プログラム管理部59が呼び出した動作プログラムに基づいて、各サーボモーター48に所定の制御周期で動作指令値を生成するとともにサーボモーター48の回転角度を検出するエンコーダー49の検出値に基づくフィードバック制御により該動作指令値を制御する。入出力情報管理部55は、動作司令部61において生成された動作指令値を各サーボモーター48に出力する。すなわち、入出力情報管理部55及び動作司令部61は、試行動作を実行させるための動作プログラムに基づきロボット20を動作させることにより試行動作実行部として機能するとともに、ユーザーによって選択された動作モードに対応する動作プログラムに基づきロボット20を動作させることにより処理動作実行部として機能する。なお、図3では、複数のサーボモーター48及びエンコーダー49のうち一部のみを図示している。
【0049】
続いて、演算部52について説明する。演算部52は、制御部51からの演算指令に応じた演算を行う軌道生成部65、作業シミュレーション部66、データベース53に記憶されている各種情報を参照して振動情報を解析する振動情報解析部67、作業時間算出部68を備えている。
【0050】
軌道生成部65は、動作条件に基づくアーム部30の軌道を演算する演算指令を受けて、該動作条件に基づきアーム部30の軌道を演算する。軌道生成部65は、動作条件を満足するように、すなわち作業シナリオ情報で示される作業をロボット20に実行させたときに、把持した作業対象物を含めたアーム部30の一部が許容動作エリアから逸脱しないようにアーム部30の軌道を演算する。作業シミュレーション部66は、軌道生成部65にて演算されたアーム部30の軌道のシミュレーションを行い、アーム部30の軌道が許容動作エリア内に収まっているか否かを確認する。軌道生成部65は、作業シミュレーション部66によるシミュレーションの結果に基づいて、演算した軌道が許容動作エリアに収まっている場合には、その軌道が示される情報を教示情報として制御部51に出力し、演算した軌道が許容動作エリアからはみ出してしまう場合には、アーム部30の軌道を再び演算する。
【0051】
振動情報解析部67は、振動情報に基づいて簡易設置型ロボット10の設置状況を解析させる演算指令を受けて、データベース53に記憶されている各種情報を参照して振動情報を解析する。
【0052】
ここで、データベース53に予め記憶されている各種情報について説明する。データベース53には、理想振動情報70、メーカー評価情報71が記憶されている。
【0053】
理想振動情報70は、十分な強度を有する床面であって周辺に振動源が存在しない理想的な設置状況下にある簡易設置型ロボット10に試行動作を実行させたときに取得される振動情報が示された情報である。
【0054】
メーカー評価情報71は、図4に示されるように、設置状況が予め把握されている振動情報と上記理想振動情報とを比較した結果の各々に対して、その予め把握されている設置状況が対応付けられている情報である。すなわち、環境検出処理において取得された振動情報と理想振動情報とを比較し、その比較した結果をメーカー評価情報71と比較することで簡易設置型ロボット10の設置状況を推測することが可能である。
【0055】
またメーカー評価情報71は、予め把握されている設置状況の各々に対して、該設置状況に適した動作速度及び加速度の上限値が設定されている動作速度情報である。メーカー評価情報71には、各設置状況に対して、動作速度及び加速度の上限値が互いに異なる動作モードである速度優先モードと精度優先モードとが対応付けられている。すなわちメーカー評価情報71は、速度優先モードに対応する動作速度情報と精度優先モードに対応する動作速度情報とで構成されている。速度優先モードは、対応する設置状況においてロボット20を動作させた場合に、簡易設置型ロボット10の位置ずれが生じにくい範囲で相対的に速い動作速度でアーム部30を動作させる動作モードである。一方、精度優先モードは、対応する設置状況においてロボット20を動作させた場合に、簡易設置型ロボット10の位置ずれが生じにくい範囲で相対的に遅い動作速度でアーム部30を動作させる動作モードである。すなわち、速度優先モードは、相対的に作業時間が短くなるものの動作中におけるアーム部30の振動によって作業精度が低下する動作モードである。一方、精度優先モードは、相対的に作業時間が長くなるものの動作中におけるアーム部30の振動が抑えられることにより作業精度が向上する動作モードである。
【0056】
なお、各設置状況に対応する各動作モードの動作速度及び動作加速度の上限値は、簡易設置型ロボット10を用いた各種実験やシミュレーション等に基づく値に設定される。また、各設置状況の速度優先モードにおける動作速度及び動作加速度の上限値は、理想振動情報に近い振動情報が取得される設置状況であるほど速い動作速度及び動作加速度が設定される。同様に、各設置状況の精度優先モードにおける動作速度及び動作加速度の上限値は、理想振動情報に近い振動情報が取得される設置状況であるほど速い動作速度及び動作加速度が設定される。
【0057】
上記振動情報解析部67は、制御部51から入力された振動情報とデータベース53に記憶された理想振動情報70とを比較し、その比較結果とデータベース53に記憶されたメーカー評価情報71とを比較することによって簡易設置型ロボット10の設置状況を推測する。そして、その推測された設置状況に関する情報である設置情報と、該設置状況に適した2つの動作モードと各動作モードにおける動作速度とを関連付けたモード情報とを制御部51に出力する。
【0058】
作業時間算出部68は、動作プログラム管理部59で作成された動作プログラムでロボット20を動作させたときの作業時間を算出する演算指令を受けて、該動作プログラムでロボット20を動作させたときの作業時間を演算し、その演算結果に基づく情報を生産情報として制御部51に出力する。
【0059】
次に、ロボット20の動作を開始させる操作がユーザーによってなされてから、実際にロボット20の動作が開始されるまでの処理である動作開始処理の手順について図5を参照して説明する。
【0060】
図5に示されるように、動作開始処理においては、まず、入力された作業条件の識別情報に基づいて、該作業条件が新たに入力された作業条件であるか否かが判断される(ステップS11)。
【0061】
入力された作業条件が新たな作業条件である場合(ステップS11:YES)、ステップS16に移行して環境検出処理を実行してからロボット20の動作が開始される(ステップS17)。
【0062】
一方、入力された作業条件が過去に入力された作業条件である場合(ステップS11:NO)、環境検出処理を実行するか否かを示す表示が表示部25になされ、ユーザーによって環境検出処理を実行するか否かが操作部24を介して入力される(ステップS12)。
【0063】
上記ステップS12において、環境検出処理を実行することを示す操作がユーザーによってなされた場合(ステップS12:YES)、ステップS16に移行して環境検出処理が実行されてからロボット20の動作が開始される(ステップS17)。
【0064】
一方、ステップS12において、環境検出処理を実行しないことを示す操作がユーザーによってなされた場合(ステップS12:NO)、動作モードとして該識別情報に対して前回選択された動作モードが選択される(ステップS13)。そして、その動作モードに関する情報とともに、該識別情報の動作条件及び動作モードに対応する生産情報が入出力装置23へと出力され表示部25に表示される(ステップS14)。
【0065】
次のステップS15では、ステップS14において表示部25に表示された生産情報等を確認したユーザーによって、動作モードを変更するか否かが操作部24を介して入力される(ステップS15)。
【0066】
ステップS15において、動作モードを変更する操作がなされた場合(ステップS15:YES)、ステップS16に移行して環境検出処理が実行されてからロボット20の動作が開始される(ステップS17)。
【0067】
一方、ステップS15において、動作モードを変更しない操作がなされた場合(ステップS15:NO)、前回選択された動作モードに対応する動作プログラムが呼び出され、該動作プログラムに基づいてロボット20の動作が開始される(ステップS17)。
【0068】
次に、上記動作開始処理におけるステップS16に該当する環境検出処理の手順について図6を参照して説明する。
【0069】
図6に示されるように、環境検出処理においては、まず、ロボット20に試行動作が実行され(ステップS16−1)、該試行動作の保持期間中における角速度センサー38の計測結果に基づいてロボット20の振動情報が取得される(ステップS16−2)。
【0070】
次のステップS16−3では、データベース53に記憶されている理想振動情報70とメーカー評価情報71とに基づいて、ステップS16−2で取得された振動情報の解析を行うべく、各種情報とともに演算部52に演算指令が出力される。そして、その解析結果である解析情報として、簡易設置型ロボット10の設置状況に関する設置情報と、該設置状況に適した動作モードであって動作速度の互いに異なる動作モードと各動作モードにおける動作速度とが関連付けられたモード情報とが取得される(ステップS16−4)。
【0071】
次のステップS16−5では、作業条件の識別情報と、取得したモード情報とに基づいて、該モード情報に対応する動作モードの動作プログラムが履歴としてあるか否かが判断される。
【0072】
上記ステップS16−5において動作プログラムが履歴としてなかった場合(ステップS16−5:NO)、取得したモード情報に示される各動作モードの動作速度と教示情報とに基づいて、動作モード毎に動作プログラムが作成される(ステップS16−6)。
【0073】
そして、ステップS16−6において作成された動作プログラムに基づいて動作モード毎に作業時間を演算する演算指令を出力してその演算結果に基づく生産情報が解析情報として取得される(ステップS16−7)。
【0074】
一方、上記ステップS16−5において動作プログラムが履歴としてあった場合(ステップS16−5:YES)、該動作プログラムに基づく生産情報も履歴としてあることから、ステップS16−6とステップS16−7とをスキップしてステップS16−8に移行する。
【0075】
次のステップS16−8では、解析情報であるモード情報、生産情報が入出力装置23に出力されて表示部25に表示される。図7は、上記解析情報の表示部25における表示態様の一例を示している。図7に示されるように、ユーザーは、表示される情報を判断材料として、設置状況を変更するか、2つの動作モードのうちの一方を選択するかを判断する。
【0076】
次のステップS16−9では、ステップS16−8において表示部25に表示された解析情報に応じて、ユーザーが動作モードを選択したか否かが判断される。
【0077】
ステップS16−9において動作モードが選択されなかった場合(ステップS16−9:NO)、すなわち簡易設置型ロボット10の設置状況を変更する旨の操作がなされた場合には、設置状況が変更された後に動作開始の操作がなされると再びロボット20の試行動作が実施される(ステップS16−1)。
【0078】
一方、ステップS16−9において動作モードが選択された場合(ステップS16−9:YES)、その選択された動作モードの動作プログラムが選択されて(ステップS16−10)、一連の処理が終了する。
【0079】
次に、上述した構成の簡易設置型ロボット10の作用について説明する。
【0080】
上記簡易設置型ロボット10では、該簡易設置型ロボット10の設置状況を解析するための試行動作が行われ、該試行動作中におけるロボット20の振動の大きさを示す振動情報が取得される。そして、その振動情報の解析が行われ、該振動情報に基づいて推測された簡易設置型ロボット10の設置状況に関する設置情報、推測された設置状況に適した動作モードであって互いに動作速度の異なる動作モードと各動作モードにおける動作速度とを関連付けたモード情報が取得される。また、モード情報で示される速度優先モード及び精度優先モードの各々に関する生産情報が取得される。これら取得された情報は入出力装置23に出力されて表示部25に表示される。ユーザーは、それらの情報を判断材料として、2つの動作モードの一方の動作モードでロボット20を動作させるか、あるいは簡易設置型ロボット10の設置状況を変更するかを判断する。そして、ユーザーによって一方の動作モードが選択された場合、その選択された動作モードに基づく動作速度でロボット20を動作させる。
【0081】
上記実施形態にかかるロボットコントローラーを構成する制御装置21及び入出力装置23、簡易設置型ロボット10、簡易設置型ロボット10の制御方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(1)上記実施形態によれば、簡易設置型ロボット10の設置状況に適した動作速度でロボット20を動作させることができる。その結果、簡易設置型ロボット10の設置状況に応じた動作速度でロボット20を動作させることが可能であることから、簡易設置型ロボット10の移設に関して専門的な知識を有していない作業者であっても、簡易設置型ロボット10の移設を容易に行うことができる。
【0083】
(2)しかも、簡易設置型ロボット10の設置状況に適した動作速度であって、動作速度の相対的に速い速度優先モードと動作速度の相対的に遅い精度優先モードとが選択可能である。これにより、作業精度よりも作業時間が優先されるときには速度優先モードを選択することができ、反対に作業時間よりも作業精度が優先されるときには精度優先モードを選択することができる。すなわち、その作業の内容に応じた動作速度を選択することができる。
【0084】
(3)上記実施形態によれば、簡易設置型ロボット10の設置状況に適した動作速度の速度優先モードと精度優先モードとに関する生産情報が入出力装置23に出力され表示部25に表示される。これによりユーザーは、より多くの情報に基づいて動作モードを選択することができる。
【0085】
(4)上記実施形態では、動作期間と保持期間とで構成される試行動作のうち、保持期間における角速度センサー38の計測結果を振動情報として取得した。ここで、動作期間における角速度センサー38の計測結果を振動情報として取得した場合、その振動情報にロボット20の動作そのものに関わる振動が含まれてしまう。この点、上記構成によれば、振動情報として動作期間においてロボット20に生じた振動の減衰態様も含めた振動情報が取得されることから、簡易設置型ロボット10が設置された状況をより反映させた振動情報を取得することができる。その結果、簡易設置型ロボット10の設置状況をより正確に判断することができる。
【0086】
(5)上記実施形態では、第1アーム31に角速度センサー38が設置されている。ここで、例えば第2アーム32で生じている振動は、架台16と第1アーム31とを連結する関節機構41、第1アーム31と第2アーム32とを連結する関節機構42、これらの関節機構によって増幅された振動である可能性がある。そのため、第2アーム32に角速度センサー38が設けられているとなれば、上記関節機構41,42の増幅作用によって架台16の振動よりも大きな振動が検出されてしまい、その振動情報に基づいて特定される設置状況が実際の設置状況とは大きく異なってしまう虞がある。この点、上記構成では、架台16に固設されたベース部28に関節機構41を介して連結された第1アーム31に角速度センサー38が設置されていることから、関節機構による増幅作用が抑えられた振動を検出することができる。その結果、実際の設置状況に近い振動情報を取得することができることから、簡易設置型ロボット10の設置状況により適した動作速度を選択することができる。しかも、角速度センサー38が第1アーム31に設置されていることから、ロボット20の動作中に角速度センサー38の計測値に基づいて第1アーム31を制振制御することもできる。
【0087】
(6)上記実施形態では、角速度センサー38の計測値に基づいて振動情報を取得している。振動を検出するセンサーとしては、上記角速度センサーの他、変位センサーや視覚センサーなどが挙げられる。しかしながら、変位センサーや視覚センサーに基づいて振動情報を取得する場合、振動を計測するうえで基準となる対象物が必要であり、それ単独で振動を計測することができない。一方、角速度センサー38は、振動を計測する際の基準となる対象物がなくとも振動を計測することができる。すなわち、上記構成によれば、ロボット20の振動を計測する構成をより簡易なものとすることができる。
【0088】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することも可能である。
【0089】
・上記実施形態の環境検出処理においては、表示部25に表示された解析情報に基づいてユーザーがロボット20の動作モードを選択している。これを変更して、例えば作業条件を入力する際に振動情報の解析によって選択可能となる速度優先モードと精度優先モードとのうち、どちらの動作モードを選択するかを予め入力しておくことにより、環境検出処理における動作モードの選択を自動的に行うようにしてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、振動計測部として角速度センサー38を用いた。これらに限らず、振動計測部は、試行動作中におけるロボット20の振動を検出できるものであればよく、例えば変位センサーや視覚センサー、加速度センサーであってもよい。
【0091】
・上記実施形態では、振動計測部としての角速度センサー38が第1アーム31に設置されている。これに限らず、角速度センサー38は、例えば、ロボット20の第2アーム32に設置してもよいし、ロボット20が固定される架台16に設置してもよい。
【0092】
・上記実施形態では、振動情報を取得するための試行動作を動作期間と保持期間とで構成するとともに、保持期間におけるロボット20の振動を振動情報として取得した。これに限らず、動作期間と保持期間とを含めて振動情報を取得してもよいし、試行動作が動作期間のみであってもよい。
【0093】
・上記実施形態の演算部52には、設置状況に応じて選択可能となる各動作モードでロボット20を動作させたときの作業時間を算出する作業時間算出部68が設けられているが、作業時間算出部68が割愛された構成であってもよい。
【0094】
・上記実施形態のメーカー評価情報71は、振動情報に基づいて推測される設置状況の各々に対して、該設置状況に適した動作速度であって動作速度の互いに異なる2つの動作モード、すなわち速度優先モードに対応する動作速度情報と精度優先モードに対応する動作速度情報とで構成されている。これに限らず、メーカー評価情報71は、互いに動作速度の異なる複数の動作モードに対応する動作速度情報で構成されている場合には、例えば速度優先モードにおける動作速度よりも遅く、且つ精度優先モードにおける動作速度よりも速い動作速度の動作モードに対応する動作速度情報をさらに備えていてもよい。また、複数の動作モードに限らず、振動情報に基づいて推測される設置状況の各々に対して1つの動作モード、例えば精度優先モードに対応する動作速度情報のみで構成されていてもよい。
【0095】
・上記実施形態において、振動情報の解析情報として、簡易設置型ロボット10の設置状況の改善方法が示される設置状況改善情報が含まれていてもよい。
【0096】
すなわち、データベース53に、メーカー評価情報71において規定されている設置状況の各々に対して、その設置状況を理想的な状況に近づけるための改善方法が対応付けられている改善方法情報を記憶させておく。演算部52の振動情報解析部67は、振動情報と理想振動情報との比較結果によって推測された簡易設置型ロボット10の設置状況と、データベース53に記憶された改善方法情報とに基づいて、その推測された設置状況を理想的な設置状況にするための改善方法を選択する。そして、その選択した改善方法に関する情報である改善情報を制御部51に出力する。入出力情報管理部55は、振動情報の解析情報としてモード情報、生産情報とともに上記改善情報を入出力装置23に出力して表示部25に表示させる。
【0097】
こうした構成によれば、図6に示した環境検出処理のステップS16−9において簡易設置型ロボット10の設置状況を改善することを選択したとしても、ユーザーは、上記改善情報を参考にしながら簡易設置型ロボット10の設置状況を変更することができる。これにより、簡易設置型ロボット10の設置状況を理想的な設置状況に近づけるための改善方法をユーザーに模索させる手間を省くことができる。
【0098】
・上記実施形態の各管理部56〜60は、対応する情報を識別情報に関連付けてデータベース53に記憶させ、入力される識別情報に基づいて、管理している情報を適宜呼び出すことにより各種情報を管理するような態様であってもよい。
【0099】
・ロボットコントローラーは、通常、各種センサーから異常な値が入力された場合にはロボット20の動作を停止させる。こうした動作の停止は、簡易設置型ロボット10の設置状況を原因とする場合があるため、上記実施形態においては、ロボット20の動作が停止されたのち、再びロボットを動作させる際に上記環境検出処理を実行させるようにしてもよい。こうした構成によれば、例えば簡易設置型ロボット10の近くに振動源がありその振動源がロボット20の動作中に駆動された場合など、簡易設置型ロボット10の設置状況がロボット20の動作中に変化した場合に、その変化した設置状況に応じた動作速度でロボット20を動作させることができる。
【0100】
・上記実施形態の簡易設置型ロボット10には、6軸のアーム部30を1つ備えた多関節ロボットが搭載されている。これに限らず、簡易設置型ロボットに搭載されるロボットは、作業に必要な自由度が確保できるのであれば、そのアーム部の軸数は5軸以下でも7軸以上であってもよいし、複数のアーム部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
C1,C2,C3,C4,C5,C6…回転軸、10…簡易設置型ロボット、11…支持板、12…キャスター、13…アジャスターフット、15…台車、16…架台、20…ロボット、21…制御装置、23…入出力装置、24…操作部、25…表示部、28…ベース部、30…アーム部、31…第1アーム、32…第2アーム、33…第3アーム、34…第4アーム、35…第5アーム、36…ハンド部、38…角速度センサー、41,42,43,44,45,46…関節機構、48…サーボモーター、49…エンコーダー、51…制御部、52…演算部、53…データベース、55…入出力情報管理部、56…動作条件管理部、57…動作モード管理部、58…教示情報管理部、59…動作プログラム管理部、60…解析情報管理部、61…動作司令部、65…軌道生成部、66…作業シミュレーション部、67…振動情報解析部、68…作業時間算出部、70…理想振動情報、71…メーカー評価情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置に搭載されたロボットの動作を制御するロボットコントローラーであって、
前記ロボットに所定の試行動作を実行させる試行動作実行部と、
前記ロボットにおける振動の大きさが前記ロボットに設けられた振動計測部から入力される入力部と、
前記振動の大きさと該振動に適した動作速度とを予め関連付けた動作速度情報が記憶される記憶部と、
前記試行動作における前記振動計測部の計測結果と前記動作速度情報とに基づいて該計測結果に応じた動作速度を出力する動作速度出力部と、
前記動作速度出力部が出力する動作速度で前記ロボットに処理動作を実行させる処理動作実行部と
を備えることを特徴とするロボットコントローラー。
【請求項2】
前記記憶部が、互いに異なる複数の動作モードの各々に関連付けられた互いに異なる複数の前記動作速度情報を記憶し、
前記動作速度出力部が、前記振動計測部の計測結果に応じた複数の動作速度を前記複数の動作モードごとに出力し、
前記動作速度出力部が出力する前記動作モードごとの動作速度のうち、ユーザーによって選択された一つの動作モードの動作速度が入力される操作部をさらに備え、
前記処理動作実行部は、前記ユーザーによって選択された動作速度で前記ロボットを動作させる
請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項3】
前記動作速度出力部が出力する動作速度による作業時間を前記動作モードごとに算出する作業時間算出部をさらに備え、
前記動作速度出力部は、前記振動計測部の計測結果に応じた動作速度と前記作業時間算出部が算出した作業時間とを関連付けて出力する
請求項2に記載のロボットコントローラー。
【請求項4】
前記試行動作は、
前記ロボットに所定の動作を行わせる動作期間と該動作期間の直後において該ロボットを所定の姿勢に保持する保持期間とで構成され、
前記計測結果は、
前記保持期間における前記ロボットの振動の大きさである
請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットコントローラー。
【請求項5】
ロボットと該ロボットを制御するロボットコントローラーとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボットであって、
前記ロボットコントローラーは、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットコントローラーである
ことを特徴とする簡易設置型ロボット。
【請求項6】
前記ロボットは、
前記移動装置に対して固定されるベース部と、
前記ベース部に連結される第1の可動部と、
前記第1の可動部を介して前記ベース部に連結される第2の可動部と
を有し、
前記振動計測部が前記第1の可動部に設置されている
請求項5に記載の簡易設置型ロボット。
【請求項7】
前記振動計測部が角速度センサーを有する
請求項5または6に記載の簡易設置型ロボット。
【請求項8】
ロボットと該ロボットを制御するロボットコントローラーとが移動装置に搭載された簡易設置型ロボットの制御方法であって、
前記ロボットに所定の試行動作を実行させる工程と、
前記ロボットに設けられ該ロボットの振動の大きさを計測する振動計測部を用い、前記試行動作中における前記ロボットの振動の大きさを計測する工程と、
前記振動計測部の計測結果と、前記振動の大きさと該振動に適した動作速度とを予め関連付けた動作速度情報とに基づいて、前記計測結果に応じた動作速度を出力する工程と、
前記出力された動作速度で前記ロボットに処理動作を実行させる工程と、
を備えることを特徴とする簡易設置型ロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232370(P2012−232370A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101360(P2011−101360)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】