ロボットシステム
【課題】ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保する。
【解決手段】ロボット10は、複数のモータ21〜26と複数のエンコーダ21a〜26aとを備えている。ロボット10と制御ユニット30とは電気ケーブル40を介して接続されており、それにはエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブル42が含まれている。制御ユニット30は、コントローラ31と電源回路32とを備えており、コントローラ31は、電源回路32で生成される電源電圧を、エンコーダ駆動に適した適合電源電圧に調整する。このとき、コントローラ31は、電源電圧を複数の段階で変更しながら設定し、電源電圧が設定された状態で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定する。そして、通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧を算出する。
【解決手段】ロボット10は、複数のモータ21〜26と複数のエンコーダ21a〜26aとを備えている。ロボット10と制御ユニット30とは電気ケーブル40を介して接続されており、それにはエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブル42が含まれている。制御ユニット30は、コントローラ31と電源回路32とを備えており、コントローラ31は、電源回路32で生成される電源電圧を、エンコーダ駆動に適した適合電源電圧に調整する。このとき、コントローラ31は、電源電圧を複数の段階で変更しながら設定し、電源電圧が設定された状態で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定する。そして、通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを好適に制御するためのロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットのシステムとして、ロボットとこれを制御する制御ユニットとが別体で構成され、それらロボット及び制御ユニットの通信系統や電源系統が電気ケーブルを介して接続されているものがある。ロボットは一般的に、関節部の駆動源としてのモータや、そのモータの回転状態を検出するエンコーダを有しており、モータやエンコーダに対しては制御ユニット内に設けられた電源回路から電源ケーブルを介して駆動電源が供給される構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のように電源ケーブルを介して制御ユニット側の電源回路からロボット側のエンコーダに駆動電源が供給される構成では、電源ケーブルにおいてケーブル長に応じて電圧ドロップが生じ、その電圧ドロップに起因してエンコーダの検出性能が低下するという事態が生じる。また、使用される電源ケーブルをあらかじめ想定し、その想定した電源ケーブルでの電圧ドロップを加味して電源回路の電源電圧を設定しておいたとしても、エンドユーザであるメーカのFA工場等において電源ケーブルの交換が行われたりすることもあり、こうした想定外のケーブル交換等により、やはりエンコーダの供給電源が適正でなくなり、結果としてエンコーダの性能低下が生じる。
【0005】
本発明は、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保することができるロボットシステムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明のロボットシステムは、
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により前記電源電圧が順次変更されつつ設定されて前記電源部から出力される状態で、前記複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて該エンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、制御ユニット側の電源部で生成される電源電圧が複数の段階で変更されながら設定される。また、こうして段階的に設定された電源電圧が電源部から順次出力される状態で、複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについてエンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否が判定され、それらの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧が算出される。そして、電源部で生成される電源電圧が適合電源電圧に調整されることにより、電源ケーブルでの電圧ドロップを加味しつつエンコーダに対して適切な駆動電源を供給できる。かかる場合、ロボットシステム自身で適合電源電圧(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、エンコーダに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダの性能低下を抑制できる。電源電圧の調整処理は、システム起動時に実施されるのが望ましい。
【0009】
ここで、エンコーダについては適正動作を保証する動作保証電圧範囲が定められているが、その動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも、エンコーダの通信自体は可能になることがある。ただし、動作保証電圧範囲以下の電圧印加の状態では、通信良好の状態と不良の状態とが混在する可能性がある。この点、複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としたため、通信良好であるとの判定精度が上がり、適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0010】
以上により、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保できることとなる。
【0011】
第2の発明では、前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれている。そして、前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて前記通信状況の良否を判定し、前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する。
【0012】
上記構成のロボットシステムでは、電源ケーブルで電圧ドロップが生じることに加え、ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路でも電圧ドロップが生じると考えられる。また、複数のエンコーダについて、電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが異なっていると、エンコーダごとに電圧ドロップの量が相違したものとなり、電源経路の長さが最大となるエンコーダでは、電圧ドロップが最大になることから実際の印加電圧が最小になる。
【0013】
かかる場合において、複数のエンコーダのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としたため、電圧ドロップが最大となるエンコーダ、すなわち電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダの通信状況を加味して適合電源電圧を算出できる。したがって、適合電源電圧の信頼性を一層高めることができる。
【0014】
第3の発明では、前記複数のエンコーダとして、第1エンコーダと、それよりも前記電源経路の長さが大きい第2エンコーダとを含んでおり、それら第1及び第2の両エンコーダの電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記電圧設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定されるまで、前記電源電圧を、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更しながら設定する第1設定手段と、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点で、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして設定する第2設定手段とを有し、
前記適合電圧算出手段は、前記電源経路の長さが最大となるエンコーダが前記第2エンコーダである場合において、前記第2設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する。
【0015】
ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路は、エンドユーザで交換や変更が行われる可能性は低く、第1及び第2の両エンコーダにおける電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差はあらかじめ把握できる。本発明では、こうした前提を利用して、各エンコーダの通信状況が良好であると判定される場合にその判定の確からしさを高め、ひいては適合電源電圧の信頼性を高めるものである。
【0016】
なお、状況によっては、設定された電源電圧より高めの電源電圧がエンコーダに印加されていたり、印加電圧が規定電圧よりも低いのにエンコーダ自身が誤って動作していたりすることもある(以下、これを「ゆらぎ」という)。かかる場合、ゆらぎが存在する状態での電源電圧に基づいて以降の電圧制御を実施すると、実際は電源電圧が足りず動作が不安定になるおそれもある。この点を鑑みて、適合電源電圧の信頼性を高めるようとするものである。
【0017】
つまり、第1エンコーダ(第1,第2のうち電源経路が短いエンコーダ)の通信状況が良好と判定されるまでは、電源電圧が、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更されながら設定される。これにより、先ずは第1エンコーダが通信良好となる電源電圧が求められる。そして、第1エンコーダの通信状況が良好となった時点で、電源電圧が、その時の電源電圧に対して(その時の電源電圧を基準として)電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて設定され、その電圧設定の状態で第2エンコーダ(第1,第2のうち電源経路が長いエンコーダ)について通信状況の良否が判定される。
【0018】
このとき、第2エンコーダ用に設定された電源電圧は、ロボット内での電圧ドロップの差が加味されただけであり、この上乗せの時点で電源電圧が各エンコーダにとって適したものになっていれば、上乗せ前の電源電圧で第1エンコーダの通信状況が良好となり、かつ上乗せ後の電源電圧で第2エンコーダの通信状況が良好となる筈である。これに対し、ゆらぎ等に起因して電源電圧が各エンコーダにとって適したものになっていなければ、上乗せ前の電源電圧で第1エンコーダの通信状況が良好となったとしても、上乗せ後の電源電圧で第2エンコーダの通信状況が良好とならない。本構成では、エンコーダごとの電源経路の違いを考慮した上で、各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、現状の電源電圧がこれら各エンコーダにとって適したものであるとより正確に判断できる。
【0019】
そして、電源経路の長さが最大となるエンコーダが第2エンコーダである場合を想定すれば、第2設定手段により電源電圧が設定された状態で、第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されれば、その時の電源電圧に基づいて適合電源電圧を算出できる。以上により、信頼性の高い適合電源電圧を求めることができる。
【0020】
第4の発明では、前記第2エンコーダは、各々前記電源経路の長さが異なるn個(n≧2)のエンコーダを含んでおり、そのn個のエンコーダについて前記第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記第2設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された以降に、前記電源電圧を、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点の電源電圧に対して、前記n個のエンコーダに関するそれぞれの前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして順次設定し、
前記適合電圧算出手段は、前記第2設定手段により前記n個のエンコーダについて各々前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして前記電源電圧を順次設定した場合に、該順次設定した各状態での前記n個のエンコーダの通信状況が全て良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する。
【0021】
上記構成によれば、第2エンコーダとしてn個のエンコーダが設けられているロボットにおいて、そのそれぞれについて第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いを考慮して電源電圧が多段に設定される。かかる場合、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せするといった電圧設定が繰り返し実施されることになるため、ゆらぎによる通信状況の誤判定を抑制できる。例えば、多軸ロボットにおいて軸ごとにモータ及びエンコーダが設けられている構成であれば、その軸数分だけ電圧設定が繰り返されることとなる。以上により、各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、適合電源電圧の信頼性をより一層高めることができる。
【0022】
第5の発明では、前記電圧設定手段は、
前記適合電圧算出手段により、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧が算出された後、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を差し引いて設定する第3設定手段をさらに有し、
前記第3設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第1エンコーダの通信状況が良好でないと判定された場合に、前記適合電圧算出手段により算出した前記適合電源電圧を無効とする。
【0023】
上記構成によれば、第1エンコーダの通信状況が良好になるまで電源電圧が徐々に高電圧側に変更された後、電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて電源電圧が設定される。さらにその後、電圧ドロップの差相当の電圧が差し引かれて電源電圧が設定される(つまり、第1エンコーダの通信状況が良好になった時点の電源電圧に戻される)。すなわち、電源電圧は、一旦高電圧側に変更され、その後低電圧側に戻される。かかる場合、電圧増加時及び電圧降下時のそれぞれで、同一の電源電圧により通信状況の良否判定がそれぞれ行われる。これにより、やはり各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、適合電源電圧の信頼性をより一層高めることができる。
【0024】
第6の発明では、前記第1設定手段により電圧変更される前記所定の電圧幅が、前記電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとなっている。
【0025】
これにより、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せする際に基準となる電源電圧(第1エンコーダの通信状況が良好となる電源電圧)をきめ細かく求めることができる。そして、各エンコーダの通信状況を確実に良好なものとしつつも、適合電源電圧を過剰に高くすることなく好適に求めることができる。
【0026】
第7の発明では、前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、前記適合電源電圧として算出する。
【0027】
上述したとおりエンコーダでは、動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも通信が可能になることがあるが、かかる状態では、通信良好の状態と不良の状態とが混在する可能性がある。この点、エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、適合電源電圧として算出することにより、適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0028】
第8の発明のロボットシステムは、
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記ロボットは、前記電源ケーブルを通じて供給される駆動電源を入力し、該入力した駆動電源について電圧−周波数変換を実施する電圧−周波数変換手段を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により設定された前記電源電圧が前記電源部から出力された状態で、前記電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号を取得し、その周波数検出信号に基づいて、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記実印加電圧が前記複数のエンコーダに適したものであると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、制御ユニット側の電源部で生成される電源電圧が複数の段階で変更されながら設定される。また、こうして段階的に設定された電源電圧が電源部から出力された状態で、ロボット側に設けられた電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号が取得されるとともに、その周波数検出信号に基づいて、複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否が判定され、その実印加電圧が複数のエンコーダに適したものであると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧が算出される。そして、電源部で生成される電源電圧が適合電源電圧に調整されることにより、電源ケーブルでの電圧ドロップを加味しつつエンコーダに対して適切な駆動電源を供給できる。かかる場合、ロボットシステム自身で適合電源電圧(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、エンコーダに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダの性能低下を抑制できる。電源電圧の調整処理は、システム起動時に実施されるのが望ましい。
【0030】
ここで、ロボット側に電圧−周波数変換手段が設けられており、制御ユニット側では、電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号が取得される。かかる場合、ロボット側から制御ユニット側に周波数検出信号が送信されることになるが、周波数検出信号は減衰に起因する誤認識が生じにくいため、制御ユニット側では、電圧−周波数変換後の周波数情報を正しく把握できる。したがって、制御ユニット側において、複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を正確に判定することができ、ひいては適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0031】
以上により、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保できることとなる。
【0032】
第9の発明では、前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、前記電圧−周波数変換手段は、前記電源コネクタの付近に設けられている。そして、前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダについて前記電源コネクタまでの前記電源経路の電圧ドロップを加味して、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する。
【0033】
上述したとおり、上記構成のロボットシステムでは、電源ケーブルで電圧ドロップが生じることに加え、ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路でも電圧ドロップが生じると考えられる。また、複数のエンコーダについて、電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが異なっていると、エンコーダごとに電圧ドロップの量が相違したものとなり、電源経路の長さが最大となるエンコーダでは、電圧ドロップが最大になることから実際の印加電圧が最小になる。
【0034】
かかる場合において、複数のエンコーダのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダの電圧ドロップを加味して、エンコーダ実印加電圧の適否が判定されるため、電圧ドロップが最大となり電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダについても実印加電圧の適否を正しく判定できる。したがって、電源電圧の調整結果についてその信頼性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ロボットシステムの電気的構成図。
【図2】ロボットの概要を示す構成図。
【図3】エンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図4】フラグリセット処理を示すフローチャート。
【図5】第2実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図6】図5に引き続きエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図7】エンコーダ駆動電源の調整処理を具体的に説明するためのタイムチャート。
【図8】第3実施形態におけるロボットシステムの電気的構成図。
【図9】(a)はV/F変換回路の構成を示す回路図、(b)はV/F変換回路の動作説明のためのタイムチャート。
【図10】第3実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図11】周波数とエンコーダ印加電圧との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
以下、本発明を垂直多関節型ロボットに具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立システムにて用いられる。
【0037】
はじめに、ロボット10の概要を図2に基づいて説明する。同図に示すように、ロボット10は、回動中心軸線として第1軸J1、第2軸J2、第3軸J3、第4軸J4、第5軸J5、第6軸J6を有する6軸ロボットであり、これら各軸における各部の動作角度がそれぞれサーボモータ等からなる駆動源の駆動により調整されるものとなっている。サーボモータはいずれも正逆両方向の回転が可能であり、モータ駆動により原点位置を基準として各部が動作する。本実施形態では、第1軸J1が鉛直方向に延びるようにしてロボット10が床等のロボット設置箇所に設置されるものとしており、図1の上下方向が鉛直方向を示すとして以下説明する。
【0038】
ロボット10において、基台11は、床等に固定される固定部12と、その固定部12の上方に設けられる回動部13とを有しており、回動部13が第1軸J1を回動中心として水平方向に回動可能になっている。回動部13の上端部分には下アーム15が回動可能に連結されている。下アーム15は基本姿勢として鉛直方向に延びる向きに設けられ、その上端部には上アーム16が回動可能に連結されている。上アーム16は基本姿勢として水平方向に延びる向きに設けられている。
【0039】
下アーム15は、水平方向に延びる第2軸J2を回動中心として回動部13に対して回動可能になっており、所定の動作範囲内において時計回り方向又は反時計回り方向に回動動作する。また、上アーム16は、水平方向に延びる第3軸J3を回動中心として下アーム15に対して回動可能になっており、所定の動作範囲内において時計回り方向又は反時計回り方向に回動動作する。
【0040】
上アーム16は、基端側と先端側とで2つのアーム部に分割されて構成されており、基端側は第1上アーム16A、先端側は第2上アーム16Bとなっている。第1上アーム16Aは上述したとおり下アーム15に回動可能に連結されている。これに対し、第2上アーム16Bは、本上アーム16の長手方向に延びる第4軸J4を回動中心として第1上アーム16Aに対してねじり方向に回動可能になっている。
【0041】
上アーム16(詳しくは第2上アーム16B)の先端部には手首部17が設けられ、その手首部17には、ワークやツール等を取り付けるためのハンド部18が設けられている。手首部17は、水平方向に延びる第5軸J5を回動中心として第2上アーム16Bに対して回動可能になっている。また、ハンド部18は、その中心線である第6軸J6を回動中心としてねじり方向に回動可能になっている。
【0042】
ロボット10において各軸J1〜J6の関節部分には、それぞれ前段部材側にモータ(サーボモータ)21,22,23,24,25,26が設けられている。そして、各関節部分において、前段部材に設けられたモータの駆動により、後段部材がそれぞれ回動動作する。なお、モータ21〜26の出力軸(駆動軸)の中心軸線がそれぞれ第1軸J1〜第6軸J6となっている。
【0043】
各モータ21〜26は、その出力軸の回転位置に応じたパルス信号を出力するエンコーダ21a,22a,23a,24a,25a,26aを有している。これらの各エンコーダ21a〜26aは、所定パターンに形成されたスリットを有する回転子と、その回転子の回転を光学的に検出する検出素子と、その検出素子の信号を処理するICとを有している。なお、各エンコーダ21a〜26aは、回転子の回転を磁気的に検出するものであってもよい。
【0044】
また、各モータ21〜26は、モータ出力軸を制動する非励磁作動型の電磁ブレーキを有している。各電磁ブレーキは、ばねの弾性力に基づき駆動軸(モータの出力軸)の制動を行い、励磁コイルへの電力供給に基づき駆動軸の制動を解除する。エンコーダ及び電磁ブレーキはそれぞれモータに組み込まれており、モータにおいて一体化されている。すなわち、各モータは、その回転駆動部とエンコーダとブレーキとを含むユニットとして構成されている。
【0045】
なお、ロボット10の各部(モータ21〜26等)はそれぞれカバーで覆われており、塵や油等の異物が外部から侵入することが抑制されている。これらカバーの内部は互いに連通しており、この連通部に電気配線等が通されている。
【0046】
次に、図1を参照して、ロボットシステムの制御系の構成について説明する。図1は、ロボットシステムの電気的構成図である。なお図1では、説明の便宜上、6つのモータ21〜26のうちモータ21,22,26を記載している。
【0047】
制御ユニット30は、主要な構成として、ロボット10の動作に関する一連の制御を実施するコントローラ31と、ロボット10を駆動させるための駆動電源を生成する電源回路32とを備えている。コントローラ31は、CPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータを中核にして構成されており、ROMに記憶されている制御プログラムに基づいてロボット10の動作位置や動作速度等を制御する。例えば、エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいてモータ21〜26の実回転位置や実回転速度を算出するとともに、それら実回転位置や実回転速度が、回転位置指令値や回転速度指令値に収束するようにフィードバック制御を実施する。
【0048】
電源回路32は、例えば交流200Vをベース電源として本ロボットシステムに必要な各種の駆動電源を生成し出力する。具体的には、コントローラ駆動用の電源や、モータ駆動用の電源、エンコーダ駆動用の電源を生成する。エンコーダ駆動用の電源に関して言えば、電源電圧が可変となっており、あらかじめ定められた動作保証電圧範囲の電源電圧がエンコーダ21a〜26aに印加されるように駆動電源を可変に生成し出力できるものとなっている。なお、エンコーダ21a〜26aの動作保証電圧範囲は、例えば4.75〜5.25Vである。
【0049】
電源回路32からコントローラ31に対しては、制御ユニット30内の電源経路D1,D2を介して電源供給が行われる。ここで、電源経路D1には電源スイッチ33が設けられており、電源スイッチ33のオン操作に伴い電源経路D1を介して電源回路32からコントローラ31に駆動電源が供給される。また、電源経路D2は、電源スイッチ33を経由せずに電源回路32からコントローラ31に駆動電源を供給する経路であり、電源スイッチ33のオフ状態下でもコントローラ31の動作が可能となっている。なお、電源スイッチ33はシステム起動に伴いオンされるものとなっている。
【0050】
ロボット10と制御ユニット30とは、電気ケーブル40を介して電気的に接続されている。電気ケーブル40には、制御ユニット30側とロボット10側との通信を行うための通信ケーブル41と、電源回路32で生成した駆動電源をロボット10側に供給するための電源ケーブル42とが含まれている。制御ユニット30とロボット10とにはそれぞれ通信コネクタ34,35が設けられており、それら通信コネクタ34,35に通信ケーブル41が接続されている。本実施形態では、通信方式として例えばRS−422、RS−232C等からなるシリアル通信方式を採用している。ただし、パラレル通信方式により通信を行う構成であってもよい。また、制御ユニット30とロボット10とにはそれぞれ電源コネクタ36,37が設けられており、それら電源コネクタ36,37に電源ケーブル42が接続されている。
【0051】
また、制御ユニット30の電源コネクタ36には、電源ケーブル42が着脱された場合にその着脱を検出する着脱検出部38が設けられており、その着脱検出部38の検出結果がコントローラ31に逐次入力される。例えば、電源ケーブル42の交換時において電源ケーブル42が電源コネクタ36から取り外されると、その取り外しが着脱検出部38で検出される。コントローラ31には電源経路D2を介してバックアップ用の電源が常時供給されている。また、着脱検出部38にもバックアップ用の電源が常時供給されている。したがって、電源スイッチ33がオフ状態にある場合にケーブル交換作業が行われても、それが検出できるようになっている。
【0052】
ロボット10においては、電源コネクタ37を基端として各エンコーダ21a〜26aに駆動電源を供給するロボット電源配線43が設けられている。この場合、モータ21〜26は複数のロボット関節各部に設けられており、それ故に電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでのロボット電源配線43の長さはエンコーダ21a〜26aごとに相違するものとなっている。例えば、電源コネクタ37がロボット10の基台11に設けられている構成を想定すると、エンコーダ21a→エンコーダ22a→・・・→エンコーダ26aの順にロボット電源配線43の配線長が大きくなる構成となっている。
【0053】
ところで、ロボット10と制御ユニット30とが互いに離間して設けられ、制御ユニット30によりロボット10の遠隔操作が可能になっている場合には、その離間距離に応じて延長された長さの電源ケーブル42が用いられる。また、ロボット10がレール等の案内部に沿って移動可能な可動式であると、電源ケーブル42の長さをロボット移動分を加味した長さにしておく必要がある。かかる場合、電源ケーブル42が長くなるほど、同ケーブル42での電圧ドロップが大きくなり、電源回路32で生成された電源電圧に対して、実際に各エンコーダ21a〜26aに印加される電源電圧(以下、実印加電圧という)が降下するという事態が生じる。
【0054】
ここで一般には、電源ケーブル42の電圧ドロップ量は都度使用されるケーブルの長さや種類により把握できるため、その電圧ドロップ量を加味した上で電源回路32での生成電圧を上乗せしておけば、エンコーダ21a〜26aの実印加電圧を動作保証電圧範囲(4.75〜5.25V)内とすることが可能である。しかしながら、電源ケーブル42はエンドユーザ(メーカのFA工場の作業者等)により交換される場合があり、そのケーブル交換によってケーブル長が変わったりケーブルの種類が変わったりすることがある。この場合、電圧ドロップ量があらかじめ想定したものと異なるため、エンコーダ21a〜26aの実印加電圧が想定外の電圧値になることが懸念される。
【0055】
そこで本実施形態では、制御ユニット30において、電源回路32で生成されるエンコーダ駆動用の電源電圧Venを自動調整できる構成とする。つまり、電源電圧Venを複数の段階で変更しながら設定し、その電源電圧Venが設定された状態(電源電圧Venの駆動電源が供給された状態)で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定するとともに、その通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、適合電源電圧としての調整済み電源電圧Vadjを算出することとしている。以下、その詳細を説明する。
【0056】
図3は、エンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0057】
図3において、ステップS101では、電源調整済みフラグが1であるか否かを判定する。電源調整済みフラグは、エンコーダ駆動電源の調整が完了しているか否かを表すフラグであり、同フラグ=1は調整完了済みであることを示し、同フラグ=0は調整未完了であることを示す。電源調整済みフラグ=1である場合、ステップS102に進む。ステップS102では、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し、その後本処理を終了する。
【0058】
また、電源調整済みフラグ=0である場合、ステップS103に進み、同ステップS103以降において、エンコーダ駆動用の電源電圧を適正値に調整するための一連の処理を実施する。すなわち、ステップS103では、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する。
【0059】
その後、ステップS104では、所定期間において各エンコーダ21a〜26aからそれぞれ送信される回転検出情報を取得する。続くステップS105では、各エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいて各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定する。
【0060】
このとき、各エンコーダ21a〜26aではそれぞれロボット10内におけるロボット電源配線43の長さが異なるため、電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでにおいて各々異なる電圧ドロップが生じる。つまり、電源ケーブル42が同一であっても、ロボット電源配線43の長さの相違により、各エンコーダ21a〜26aでは電圧ドロップ量が相違する。本実施形態では、こうして電圧ドロップが各々相違することを踏まえて、一部のエンコーダだけでなく(特に電源経路長が比較的短いエンコーダだけでなく)、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定する。
【0061】
エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合において、ステップS106では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。電圧調整量ΔVaは、例えば0.125Vである。
【0062】
その後、ステップS107では、今現在の電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定する。制限電圧は、エンコーダの動作保証電圧範囲(仕様最大電圧)やケーブル特性等に基づいて決定される電圧値である。制限電圧についてより具体的には、仕様最大電圧が5.25V、電源ケーブル42の線抵抗が222Ω/km、ケーブル長が40m、エンコーダ消費電流が160mAである場合、
5.25〔V〕+222×10^-3〔Ω〕×40〔m〕×160×10^-3〔Ω〕=6.67〔V〕
となり、制限電圧=6.67Vとして定められる。
【0063】
電源電圧Ven≦制限電圧の場合、ステップS104に戻り、再びエンコーダ21a〜26aの回転検出情報を取得するとともに、通信状況の良否を判定する(ステップS104,S105)。そして、通信状況が良好にならなければ電源電圧Venを再び上昇させる(ステップS106)。こうした処理において、電源電圧Venが次第に上昇し、制限電圧に到達するまでに通信状況が良好にならない場合には、電源電圧Ven>制限電圧となる(ステップS107がNOとなる)。かかる場合、ステップS108に進み、異常発生していると判定する。つまり、各エンコーダ21a〜26aの通信が当然良好となる筈の電源電圧が印加されているのに、通信状況が良好にならない場合には、例えばエンコーダに異常があると判定する。このとき、異常発生の情報を、コントローラ31内のバックアップ用メモリに記憶したり、誤動作防止を図るべく調整済み電源電圧Vadjを0Vに設定したりするとよい。
【0064】
一方、ステップS105で通信状況が良好であると判定されると、ステップS109に進み、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。そして最後に、ステップS110では、電源電圧Venの調整が完了したとして、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0065】
電源調整済みフラグは、電源ケーブル42が取り外された場合に、その取り外しの検出信号に基づいてリセットされるものとなっている。つまり、電源ケーブル42が取り外された場合には、電源ケーブル42が交換される可能性があり、電源電圧の再調整を行わせるべく電源調整済みフラグがリセットされる。
【0066】
具体的には、コントローラ31が図4に示すフラグリセット処理を実行する。図4において、ステップS201では、着脱検出部38の検出結果に基づいて、ケーブル取り外しの有無を判定する。そして、電源ケーブル42の取り外し有りと判定された場合に、ステップS202に進み、電源調整済みフラグを0にリセットする。
【0067】
ただし、電源調整済みフラグがリセットされる構成は上記以外であってもよい。例えば、電源スイッチ33がオン操作される都度、電源調整済みフラグが初期化処理によってリセットされる構成であってもよい。又は、FA工場の室内温度等のロボット設置環境が変わった場合に、電源調整済みフラグがリセットされる構成であってもよい。定期的に、例えば数ヶ月ごとに電源調整済みフラグがリセットされる構成であってもよい。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0069】
電源電圧Venが段階的に設定された状態で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否が判定され、それらの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)が算出される構成とした。かかる場合、ロボットシステム自身で調整済み電源電圧Vadj(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、各エンコーダ21a〜26aに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダ21a〜26aの性能低下を抑制できる。
【0070】
また、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定するようにしたため、通信良好であるとの判定精度が上がり、調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。つまり、1つのエンコーダのみについて通信良好となった時点では、実際にはエンコーダ印加電圧が動作保証電圧範囲を下回っている可能性があり、通信良好のエンコーダ以外に通信不良のエンコーダが混在している可能性があるが、各々電源経路長が相違する全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果を参照する構成としたため、こうした可能性が極めて低いものとなる。
【0071】
以上により、ロボット10の運転に際し、制御ユニット30側からロボット10側のエンコーダ21a〜26aに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダ21a〜26aの検出性能を確保できることとなる。
【0072】
エンドユーザにおいては、エンコーダ駆動電源の電圧ドロップを意識することなく、電源ケーブル42を交換することが実施できる。例えば、FA工場側でのロボット10及び制御ユニット30の設置位置に応じて、電源ケーブル42を長いものから短いものに交換したり、その逆に短いものから長いものに交換したりする場合にも、エンコーダ駆動電源の電圧ドロップを意識することなく交換できる。この場合、作業者による、電源回路32の電源電圧の調整は不要である。
【0073】
電源ケーブル42が取り外されたことの検出信号に基づいて電源調整済みフラグがリセットされる構成としたため、電源ケーブル42が交換された可能性がある場合には電源電圧の再調整が行われる。したがって、FA工場等において電源ケーブル42が何度も交換される場合にも、エンコーダに対する最適な駆動電源の供給状態を維持できる。また、電源電圧を調整するための一連の処理が、システム起動の都度毎回実施されるのではなく必要時のみ実施されるため、システム起動時においてロボット10の運転開始の準備をいち早く整えることができる。
【0074】
電源電圧Venが段階的に高電圧側に更新される際に、その電源電圧Venに基づいて異常検出を実施する構成とした。すなわち、電源電圧Venが制限電圧を上回ったのにエンコーダの通信が良好とならない場合に異常有りと判定する構成とした。これにより、調整済み電源電圧Vadjを求めるための電圧調整と同時に、ロボットシステムの異常診断についても実施できる。
【0075】
各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好となった時点での電源電圧Venに基づいて調整済み電源電圧Vadjを算出する構成において、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を加算した電圧値を、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)として算出する構成であってもよい。加算する電圧増加分は、例えば0.25Vである。本処理は、図3のステップS109において実施されるとよい。つまり、各エンコーダ21a〜26aでは、動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも通信が可能になることがあるが、上記のとおり電圧加算を行って調整済み電源電圧Vadjを算出することで、その調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。ロボット10において電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでのロボット電源配線43は、エンドユーザ側で交換や変更が行われる可能性は低く、各エンコーダ21a〜26aのロボット電源配線43の長さの違いによる電圧ドロップの差はあらかじめ把握できる。本実施形態では、こうした前提を利用して、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であると判定される場合にその判定の確からしさを高め、ひいては調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)の信頼性を高めるものである。なお、ロボットシステムの構成は図1や図2に示すとおりである。
【0077】
本実施形態では、6つのエンコーダ21a〜26aについてロボット10内での電源配線の長さが、エンコーダ21a、エンコーダ22a、エンコーダ23a、エンコーダ24a、エンコーダ25a、エンコーダ26aの順に大きくなり、その順序で電圧ドロップの量も次第に大きくなっている。また、各エンコーダ21a〜26aの電源配線の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報はコントローラ31内にあらかじめ記憶されている。そして、エンコーダ駆動用の電源電圧Venを段階的に増加させつつ(低電圧側から高電圧側に変更しつつ)、電源配線の長さが小さいものから大きいものへの順序で、すなわち電圧ドロップが小さいものから大きいものへの順序でエンコーダの通信状況の良否を判定するとともに、その判定結果に基づいて、各エンコーダ21a〜26aの駆動に適した適合駆動電圧(調整済み電源電圧Vadj)を見出す構成としている。
【0078】
図5及び図6は、本実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0079】
図5において、ステップS301〜S303は、図3のステップS101〜S103と同じ処理である。すなわち、電源調整済みフラグ=1である場合には、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し(ステップS302)、電源調整済みフラグ=0である場合には、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する(ステップS303)。
【0080】
その後、ステップS304では、所定期間においてエンコーダ21aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS305では、エンコーダ21aの回転検出情報に基づいてエンコーダ21aの通信状況の良否を判定する。そして、エンコーダ21aの通信状況が良好でないと判定された場合において、ステップS306では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。ここで、電圧調整量ΔVaは、後述する電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1,ΔVdr2等よりも小さい電圧幅となっている。
【0081】
一方、ステップS305でエンコーダ21aの通信状況が良好であると判定されると、ステップS311に進み、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ21aとエンコーダ22aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1を上乗せ(加算)して、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr1)。このとき、エンコーダ21aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr1が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。補足しておくと、ロボット電源配線において、エンコーダ21aまでの配線部分の電圧ドロップをVD1、エンコーダ22aまでの配線部分の電圧ドロップをVD2とすると、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1は、ΔVdr1=VD2−VD1として定義される。
【0082】
その後、ステップS312では、所定期間においてエンコーダ22aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS313では、エンコーダ22aの回転検出情報に基づいてエンコーダ22aの通信状況の良否を判定する。
【0083】
このとき、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1が上乗せされる前後の各電源電圧は、ロボット10内での電圧ドロップの差が加味されただけであり、この上乗せの時点で電源電圧Venが各エンコーダ21a,21bにとって適したものになっていれば、上乗せ前の電源電圧でエンコーダ21aの通信状況が良好となり、かつ上乗せ後の電源電圧でエンコーダ22aの通信状況が良好となる筈である。これに対し、電源電圧が各エンコーダ21a,22aにとって適したものになっていなければ、上乗せ前の電源電圧でエンコーダ21aの通信状況が良好となったとしても、上乗せ後の電源電圧でエンコーダ22aの通信状況が良好とならない。かかる場合、ステップS305,S313が連続してYESになることは、上乗せ前の電源電圧はエンコーダ21aにとって適したものであり、かつ上乗せ後の電源電圧はエンコーダ22aにとって適したものであると言える。したがって、ステップS313がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続のステップS321に進む。
【0084】
ステップS313がNOの場合には、ステップS314では、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb)。ここで、電圧調整量ΔVbは、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1よりも小さい電圧幅となっている(後述の電圧ΔVdr2等との関係も同様)。そしてその後、ステップS312に戻り、所定期間においてエンコーダ22aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ22aの通信状況の良否を判定する(ステップS312,S313)。
【0085】
なお、ステップS313がNOであれば、調整処理を初めからやり直すべく、ステップS303に戻る構成であってもよい(後述のステップS323,S333でも同様)。
【0086】
ステップS313からステップS321に進むと、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ22aとエンコーダ23aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr2を上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr2)。このとき、エンコーダ22aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr2が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。
【0087】
その後、ステップS322では、所定期間においてエンコーダ23aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS323では、エンコーダ23aの回転検出情報に基づいてエンコーダ23aの通信状況の良否を判定する。
【0088】
そして、ステップS323がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続の図6のステップS331に進む。また、ステップS323がNOであれば、ステップS324に進み、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb、ステップS314と同様)。そしてその後、ステップS322に戻り、所定期間においてエンコーダ23aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ23aの通信状況の良否を判定する(ステップS322,S323)。
【0089】
なお、ステップS323がYESの場合には、その後、ステップS311〜S314やステップS321〜S324と同じパターンで、エンコーダ24aに関する処理とエンコーダ25aに関する処理とが実施される。本来その処理は存在するが、その実質的な内容は同じであるため、ここではその図示と説明とを割愛する。
【0090】
ステップS323からステップS331に進むと、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ25aとエンコーダ26aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr5を上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr5)。このとき、エンコーダ25aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr5が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。
【0091】
その後、ステップS332では、所定期間においてエンコーダ26aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS333では、エンコーダ26aの回転検出情報に基づいてエンコーダ26aの通信状況の良否を判定する。
【0092】
そして、ステップS333がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続のステップS335に進む。ステップS335では、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。そして最後に、ステップS336では、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0093】
また、ステップS333がNOであれば、ステップS334に進み、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb、ステップS314と同様)。そしてその後、ステップS332に戻り、所定期間においてエンコーダ26aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ26aの通信状況の良否を判定する(ステップS332,S333)。
【0094】
なお、上述した図5及び図6の演算処理において、電源電圧Venが段階的に変更される過程で、電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定し、電源電圧Ven>制限電圧となった場合に異常発生していると判定する処理を追加することも可能である(図3のステップS107,S108と同様)。
【0095】
図7は、図5及び図6の演算処理を具体的に説明するためのタイムチャートである。
【0096】
さて、図7では、先ずタイミングt1で、システム起動に伴いエンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値が設定される(本実施形態では初期設定値=4.75V)。これにより、その電源電圧Venが電源回路32で生成され、電源ケーブル42を介してロボット10側に出力される。
【0097】
その後、タイミングt1〜t2の期間では、エンコーダ21aから送信される回転検出情報が制御ユニット30側で取得され、タイミングt2では、エンコーダ21aの回転検出情報に基づいてエンコーダ21aの通信状況の良否が判定される。このとき、エンコーダ21aの通信状況が良好でなければ、図示のとおり電源電圧Venが所定の電圧調整量ΔVaだけ上げられる。その後、同様の処理が繰り返し実施される。つまり、エンコーダ21aの通信状況が良好と判定されるまで、電源電圧Venが、所定の電圧幅で段階的に変更されながら設定される。
【0098】
そして、タイミングt3で、エンコーダ21aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venに対して、エンコーダ21aとエンコーダ22aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1が上乗せされて、新たな電源電圧Venが設定される(Ven=Ven+ΔVdr1)。
【0099】
また、続くタイミングt4で、エンコーダ22aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venに対して、エンコーダ22aとエンコーダ23aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr2が上乗せされて、新たな電源電圧Venが設定される(Ven=Ven+ΔVdr2)。
【0100】
こうした段階的な電源電圧Venの更新処理は繰り返し実施される。そして、タイミングt5で、電源経路長が最大(電圧ドロップが最大)のエンコーダ26aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venが調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶される。また、電源調整済みフラグに1がセットされる。
【0101】
なお、図7では、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後は、各エンコーダの電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされることで、順次各エンコーダの通信状況が良好に転じる場合について例示したが、仮に各エンコーダの電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされてもエンコーダの通信状況が良好に転じない場合(例えば図7のタイミングt4でエンコーダ22aの通信状況が良好とならない場合)には、その時点で、所定の電圧調整量ΔVbによる小刻みな電源電圧Venの更新が行われる。そして、その状態下であらためてエンコーダの通信状況の良否が判定されることとなる。
【0102】
以上詳述した第2実施形態によれば、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差を考慮しつつ電源電圧Venを段階的に設定することで、各エンコーダ21a〜26aについて通信良好となる電源電圧Venをそれぞれに求めることができる。そして、それらの結果に基づいて、調整済み電源電圧Vadjを好適に求めることができる。
【0103】
エンコーダ21a(電圧ドロップ最小のエンコーダ)について通信状況が良好となった後、残りの5つのエンコーダ22a〜26aについて、それぞれの電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして電源電圧Venを順次設定し、それら全てのエンコーダ22a〜26aの通信状況が全て良好であると判定された後、調整済み電源電圧Vadjを求める構成とした。つまり、多軸ロボット10においてその軸数分だけ電圧設定を繰り返す構成とした。これにより、各エンコーダ21a〜26aについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、調整済み電源電圧Vadjの信頼性をより一層高めることができる。
【0104】
エンコーダ21aの通信状況が良好となるまでの期間で電源電圧Venが段階的に設定される際の電圧幅(ステップS306の電圧調整量ΔVa)を、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとした。これにより、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せする際に基準となる電源電圧(エンコーダ21aの通信状況が良好となる電源電圧)をきめ細かく求めることができる。
【0105】
また、「電源電圧Ven+電圧ドロップの差相当の電圧」を電源電圧Venとして設定した状態で各エンコーダ22a〜26aの通信状況が良好でない場合における、電源電圧Venの更新量である電圧幅(ステップS314,S324,S334の電圧調整量ΔVb)を、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとした。これにより、各エンコーダ22a〜26aにとって適正な電源電圧をきめ細かく求めることができる。
【0106】
上記のごとく電圧調整量ΔVa,ΔVbを定めることにより、各エンコーダ21a〜26aの通信状況を確実に良好なものとしつつも、調整済み電源電圧Vadjを過剰に高くすることなく好適に求めることができる。
【0107】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0108】
図8は、本実施形態におけるロボットシステムの電気的構成図である。図8の構成では、図1の構成との相違点として、ロボット10においてロボット電源配線43に電圧−周波数変換回路(以下、V/F変換回路51という)が接続して設けられており、V/F変換回路51からコントローラ31に対して周波数検出信号が出力される構成となっている。V/F変換回路51は、ロボット電源配線43において電源コネクタ37の付近に設けられている。
【0109】
次に、図9を参照してV/F変換回路51を具体的に説明する。図9において、(a)はV/F変換回路51の構成を示す回路図であり、(b)はV/F変換回路51の動作説明のためのタイムチャートである。
【0110】
図9(a)に示すように、V/F変換回路51は基本構成として前段部に設けられた積分回路52と、後段部に設けられた比較回路53とを有している。積分回路52は、負帰還部にコンデンサ54が設けられたオペアンプ55により構成されている。オペアンプ55には、電源ケーブル42を通じて供給されるエンコーダ駆動電源のロボット10側の入力電圧Vinが入力される。また、比較回路53は、積分回路52の積分出力V1を入力し、これを所定の閾値と比較するコンパレータ56により構成されている。オペアンプ55の負側入力端子には、比較回路53の比較出力V2に応じてオン/オフするトランジスタ57のコレクタが接続されている。
【0111】
上記構成によれば、図9(b)に示すごとく積分回路52の積分出力V1と比較回路53の比較出力V2とが変化する。すなわち、積分回路52の積分出力V1は、入力電圧Vinの大きさに応じた傾きで上昇変化又は低下変化する。このとき、入力電圧Vinが大きいほど、積分出力V1の変化の傾きが大きくなる。そして、積分出力V1の変化に伴い比較回路53の比較出力V2がパルス状に変化するものとなる。
【0112】
図10は、本実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0113】
図10において、ステップS401〜S403は、図3のステップS101〜S103と同じ処理である。すなわち、電源調整済みフラグ=1である場合には、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し(ステップS402)、電源調整済みフラグ=0である場合には、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する(ステップS403)。
【0114】
その後、ステップS404では、V/F変換回路51から送信される周波数検出信号を取得し、周波数カウント処理を実施する。周波数カウント処理は、周波数検出信号のパルス数をカウントし、所定時間内のパルスカウント数に基づいて周波数fを算出するものである。
【0115】
続くステップS405では、周波数検出信号の周波数fに基づいて、ロボット10側におけるエンコーダ印加電圧Vxを算出する。このとき、例えば図11の関係を用いて、周波数fに基づいてエンコーダ印加電圧Vxが算出される。
【0116】
ここで、厳密にはV/F変換回路51からエンコーダ21a〜26aまでの電源配線が存在しているため、その分の電圧ドロップを見込んで、エンコーダ印加電圧Vxが算出されるとよい。具体的には、周波数fに基づく電圧算出値を、各エンコーダ21a〜26aのうち電源経路長が最大となるエンコーダ26aの電圧ドロップで減補正して、エンコーダ印加電圧Vxを算出するとよい。
【0117】
その後、ステップS406では、エンコーダ印加電圧Vxが所定電圧未満であるか否かを判定する。この所定電圧は、エンコーダの動作保証電圧範囲に応じて定められるものであり、例えばエンコーダ駆動電圧のティピカル値として定められる(所定電圧=5V)。
【0118】
エンコーダ印加電圧Vx<所定電圧であると判定された場合において、ステップS407では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。電圧調整量ΔVaは、例えば0.125Vである。
【0119】
その後、ステップS408では、今現在の電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定する。そして、電源電圧Ven≦制限電圧であれば、ステップS404に戻り、電源電圧Ven>制限電圧であれば、ステップS409に進んで異常発生していると判定する。なお、ステップS408,S409は、図3のステップS107,S108と同じ処理である。
【0120】
ステップS404に戻った場合、再び周波数検出信号を取得して周波数カウント処理を実施するとともに、周波数検出信号の周波数fに基づいて算出したエンコーダ印加電圧Vxが所定電圧未満であるか否かを判定する(ステップS404〜S406)。
【0121】
そして、ステップS406でエンコーダ印加電圧Vx≧所定電圧であると判定されると、ステップS410に進み、各エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいて、現時点で各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であるか否かを判定する。そして、通信状況が良好であると判定される場合には、ステップS411に進み、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。続くステップS412では、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0122】
また、ステップS410で各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合には、ステップS413に進んで異常発生していると判定する。つまり、各エンコーダ21a〜26aに適正な電源電圧が印加されている筈なのに、通信状況が良好でない場合には、例えばエンコーダに異常があると判定する。
【0123】
以上詳述した第3実施形態によれば、既述の各実施形態と同様に、ロボットシステム自身で調整済み電源電圧Vadj(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、各エンコーダ21a〜26aに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダ21a〜26aの性能低下を抑制できる。
【0124】
この場合特に、ロボット10側から制御ユニット30側に周波数検出信号が送信されることになるが、周波数検出信号は減衰に起因する誤認識が生じにくいため、制御ユニット30側では、電圧−周波数変換後の周波数情報を正しく把握できる。したがって、制御ユニット30側において、各エンコーダ21a〜26aにおける実印加電圧の適否を正確に判定することができ、ひいては調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。
【0125】
各エンコーダ21a〜26aのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダ26aの電圧ドロップを加味して、エンコーダ印加電圧Vx(エンコーダ実印加電圧)の適否を判定する場合、電圧ドロップが最大となり電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダ26aについても実印加電圧の適否を正しく判定できる。したがって、電源電圧の調整結果についてその信頼性を一層高めることができる。
【0126】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0127】
・上記第1実施形態では、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)を算出する際に、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定する構成としたが、これを変更してもよく、各エンコーダ21a〜26aのうち2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としてもよい。この場合、電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定することが望ましい。そして、2以上のエンコーダについて各通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)を算出する。
【0128】
・上記第2実施形態では、エンコーダ21a(電源経路長が最小のエンコーダ)の通信状況が良好となった後において、現時点での電源電圧Venに対して各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧(ΔVdr1,ΔVdr2等)を順次上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する構成としたが、これを変更する。具体的には、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後において、エンコーダ21aの通信状況が良好となった時点での電源電圧Venを「基準電源電圧Vref」とし、その基準電源電圧Vrefに対して、エンコーダ21aとそれ以外のエンコーダ22a〜26aとの電圧ドロップの差相当の電圧(エンコーダ21a−22aの電圧ドロップの差相当の電圧、エンコーダ21a−23aの電圧ドロップの差相当の電圧、・・・、エンコーダ21a−26aの電圧ドロップの差相当の電圧)をそれぞれ上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する構成としてもよい。
【0129】
この場合、エンコーダ22a→23a→・・・→26aの順に、必ずしも全てのエンコーダについて通信状況を確認しなくてもよい。つまり、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後において、いきなりエンコーダ26a(電源経路長が最大のエンコーダ)の通信状況の良否を判定するようにしてもよい。
【0130】
・上記第2実施形態において、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の判定結果に基づいて調整済み電源電圧Vadjが算出された後に(図6のステップS335の処理後に)、電源電圧Venを、それまでの増加変化から降下変化に切り替えて再設定し、あらためて各エンコーダの通信状況を判定する。このとき、「Ven=Ven−ΔVdr5」というように、電圧ドロップの差相当の電圧(ΔVdr5等)を差し引いて電源電圧Venを多段に設定する。図7のタイムチャートを用いて言えば、タイミングt5の電源電圧Ven→・・・タイミングt4の電源電圧Ven→タイミングt3の電源電圧Ven・・・のように、電源電圧Venを低電圧側に段階的に変更する。そして、これらの電源電圧Venの変更に合わせて、それに対応するエンコーダの通信状況を判定する。例えば、電源電圧Venが、図5の処理でエンコーダ21aの通信状況が良好になった時点の電源電圧(図5のステップS305がYESになった時の電源電圧Ven)まで戻った時に、エンコーダ21aの通信状況の良否を判定する。これにより、電圧増加時及び電圧降下時のそれぞれで、同一の電源電圧Venにより、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否判定がそれぞれ行われることとなる。そしてこのとき、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合に、調整済み電源電圧Vadj(図6のステップS335の算出値)を無効とする。この場合、一連の電圧調整処理がやり直される。
【0131】
上記構成によれば、エンコーダ21aの通信状況が良好になるまで電源電圧Venが徐々に高電圧側に変更された後(図5のステップS306)、電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて電源電圧Venが設定される(図5のステップS311,S321,図6のS331)。さらにその後、電圧ドロップの差相当の電圧が差し引かれて(減算されて)電源電圧Venが設定される。かかる場合、やはり各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)の信頼性をより一層高めることができる。
【0132】
・第3実施形態において、V/F変換回路51の周波数検出信号を、電源ケーブル42の電源電圧Venに重畳させてロボット10側から制御ユニット30側に送信する構成としてもよい。この場合、V/F変換回路51の周波数検出結果に応じて振幅する電源電圧Venを、制御ユニット30側に設けた電圧検出回路(復調回路)で復調した後、コントローラ31に取り込む構成とする。
【0133】
・上記各実施形態では、ロボット10において電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでの電源経路の長さがいずれも異なるものとしたが、その電源経路の長さが同一であるものを含む構成や、全てのエンコーダの電源経路の長さが同一である構成としてもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、6つの関節部(モータ)を有する6軸ロボットについて例示したが、本発明をこれ以外のロボットに適用することも可能であり、例えば2軸ロボットや3軸ロボット等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0135】
10…ロボット、21〜26…モータ、21a〜26a…エンコーダ、30…制御ユニット、31…コントローラ(電圧調整手段、電圧設定手段、判定手段、適合電圧算出手段)、32…電源回路(電源部)、37…電源コネクタ、43…ロボット電源配線、40…電気ケーブル、42…電源ケーブル、43…ロボット電源配線、51…V/F変換回路(電圧−周波数変換手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを好適に制御するためのロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットのシステムとして、ロボットとこれを制御する制御ユニットとが別体で構成され、それらロボット及び制御ユニットの通信系統や電源系統が電気ケーブルを介して接続されているものがある。ロボットは一般的に、関節部の駆動源としてのモータや、そのモータの回転状態を検出するエンコーダを有しており、モータやエンコーダに対しては制御ユニット内に設けられた電源回路から電源ケーブルを介して駆動電源が供給される構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のように電源ケーブルを介して制御ユニット側の電源回路からロボット側のエンコーダに駆動電源が供給される構成では、電源ケーブルにおいてケーブル長に応じて電圧ドロップが生じ、その電圧ドロップに起因してエンコーダの検出性能が低下するという事態が生じる。また、使用される電源ケーブルをあらかじめ想定し、その想定した電源ケーブルでの電圧ドロップを加味して電源回路の電源電圧を設定しておいたとしても、エンドユーザであるメーカのFA工場等において電源ケーブルの交換が行われたりすることもあり、こうした想定外のケーブル交換等により、やはりエンコーダの供給電源が適正でなくなり、結果としてエンコーダの性能低下が生じる。
【0005】
本発明は、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保することができるロボットシステムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明のロボットシステムは、
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により前記電源電圧が順次変更されつつ設定されて前記電源部から出力される状態で、前記複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて該エンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、制御ユニット側の電源部で生成される電源電圧が複数の段階で変更されながら設定される。また、こうして段階的に設定された電源電圧が電源部から順次出力される状態で、複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについてエンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否が判定され、それらの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧が算出される。そして、電源部で生成される電源電圧が適合電源電圧に調整されることにより、電源ケーブルでの電圧ドロップを加味しつつエンコーダに対して適切な駆動電源を供給できる。かかる場合、ロボットシステム自身で適合電源電圧(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、エンコーダに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダの性能低下を抑制できる。電源電圧の調整処理は、システム起動時に実施されるのが望ましい。
【0009】
ここで、エンコーダについては適正動作を保証する動作保証電圧範囲が定められているが、その動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも、エンコーダの通信自体は可能になることがある。ただし、動作保証電圧範囲以下の電圧印加の状態では、通信良好の状態と不良の状態とが混在する可能性がある。この点、複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としたため、通信良好であるとの判定精度が上がり、適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0010】
以上により、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保できることとなる。
【0011】
第2の発明では、前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれている。そして、前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて前記通信状況の良否を判定し、前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する。
【0012】
上記構成のロボットシステムでは、電源ケーブルで電圧ドロップが生じることに加え、ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路でも電圧ドロップが生じると考えられる。また、複数のエンコーダについて、電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが異なっていると、エンコーダごとに電圧ドロップの量が相違したものとなり、電源経路の長さが最大となるエンコーダでは、電圧ドロップが最大になることから実際の印加電圧が最小になる。
【0013】
かかる場合において、複数のエンコーダのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としたため、電圧ドロップが最大となるエンコーダ、すなわち電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダの通信状況を加味して適合電源電圧を算出できる。したがって、適合電源電圧の信頼性を一層高めることができる。
【0014】
第3の発明では、前記複数のエンコーダとして、第1エンコーダと、それよりも前記電源経路の長さが大きい第2エンコーダとを含んでおり、それら第1及び第2の両エンコーダの電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記電圧設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定されるまで、前記電源電圧を、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更しながら設定する第1設定手段と、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点で、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして設定する第2設定手段とを有し、
前記適合電圧算出手段は、前記電源経路の長さが最大となるエンコーダが前記第2エンコーダである場合において、前記第2設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する。
【0015】
ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路は、エンドユーザで交換や変更が行われる可能性は低く、第1及び第2の両エンコーダにおける電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差はあらかじめ把握できる。本発明では、こうした前提を利用して、各エンコーダの通信状況が良好であると判定される場合にその判定の確からしさを高め、ひいては適合電源電圧の信頼性を高めるものである。
【0016】
なお、状況によっては、設定された電源電圧より高めの電源電圧がエンコーダに印加されていたり、印加電圧が規定電圧よりも低いのにエンコーダ自身が誤って動作していたりすることもある(以下、これを「ゆらぎ」という)。かかる場合、ゆらぎが存在する状態での電源電圧に基づいて以降の電圧制御を実施すると、実際は電源電圧が足りず動作が不安定になるおそれもある。この点を鑑みて、適合電源電圧の信頼性を高めるようとするものである。
【0017】
つまり、第1エンコーダ(第1,第2のうち電源経路が短いエンコーダ)の通信状況が良好と判定されるまでは、電源電圧が、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更されながら設定される。これにより、先ずは第1エンコーダが通信良好となる電源電圧が求められる。そして、第1エンコーダの通信状況が良好となった時点で、電源電圧が、その時の電源電圧に対して(その時の電源電圧を基準として)電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて設定され、その電圧設定の状態で第2エンコーダ(第1,第2のうち電源経路が長いエンコーダ)について通信状況の良否が判定される。
【0018】
このとき、第2エンコーダ用に設定された電源電圧は、ロボット内での電圧ドロップの差が加味されただけであり、この上乗せの時点で電源電圧が各エンコーダにとって適したものになっていれば、上乗せ前の電源電圧で第1エンコーダの通信状況が良好となり、かつ上乗せ後の電源電圧で第2エンコーダの通信状況が良好となる筈である。これに対し、ゆらぎ等に起因して電源電圧が各エンコーダにとって適したものになっていなければ、上乗せ前の電源電圧で第1エンコーダの通信状況が良好となったとしても、上乗せ後の電源電圧で第2エンコーダの通信状況が良好とならない。本構成では、エンコーダごとの電源経路の違いを考慮した上で、各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、現状の電源電圧がこれら各エンコーダにとって適したものであるとより正確に判断できる。
【0019】
そして、電源経路の長さが最大となるエンコーダが第2エンコーダである場合を想定すれば、第2設定手段により電源電圧が設定された状態で、第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されれば、その時の電源電圧に基づいて適合電源電圧を算出できる。以上により、信頼性の高い適合電源電圧を求めることができる。
【0020】
第4の発明では、前記第2エンコーダは、各々前記電源経路の長さが異なるn個(n≧2)のエンコーダを含んでおり、そのn個のエンコーダについて前記第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記第2設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された以降に、前記電源電圧を、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点の電源電圧に対して、前記n個のエンコーダに関するそれぞれの前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして順次設定し、
前記適合電圧算出手段は、前記第2設定手段により前記n個のエンコーダについて各々前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして前記電源電圧を順次設定した場合に、該順次設定した各状態での前記n個のエンコーダの通信状況が全て良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する。
【0021】
上記構成によれば、第2エンコーダとしてn個のエンコーダが設けられているロボットにおいて、そのそれぞれについて第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いを考慮して電源電圧が多段に設定される。かかる場合、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せするといった電圧設定が繰り返し実施されることになるため、ゆらぎによる通信状況の誤判定を抑制できる。例えば、多軸ロボットにおいて軸ごとにモータ及びエンコーダが設けられている構成であれば、その軸数分だけ電圧設定が繰り返されることとなる。以上により、各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、適合電源電圧の信頼性をより一層高めることができる。
【0022】
第5の発明では、前記電圧設定手段は、
前記適合電圧算出手段により、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧が算出された後、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を差し引いて設定する第3設定手段をさらに有し、
前記第3設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第1エンコーダの通信状況が良好でないと判定された場合に、前記適合電圧算出手段により算出した前記適合電源電圧を無効とする。
【0023】
上記構成によれば、第1エンコーダの通信状況が良好になるまで電源電圧が徐々に高電圧側に変更された後、電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて電源電圧が設定される。さらにその後、電圧ドロップの差相当の電圧が差し引かれて電源電圧が設定される(つまり、第1エンコーダの通信状況が良好になった時点の電源電圧に戻される)。すなわち、電源電圧は、一旦高電圧側に変更され、その後低電圧側に戻される。かかる場合、電圧増加時及び電圧降下時のそれぞれで、同一の電源電圧により通信状況の良否判定がそれぞれ行われる。これにより、やはり各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、適合電源電圧の信頼性をより一層高めることができる。
【0024】
第6の発明では、前記第1設定手段により電圧変更される前記所定の電圧幅が、前記電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとなっている。
【0025】
これにより、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せする際に基準となる電源電圧(第1エンコーダの通信状況が良好となる電源電圧)をきめ細かく求めることができる。そして、各エンコーダの通信状況を確実に良好なものとしつつも、適合電源電圧を過剰に高くすることなく好適に求めることができる。
【0026】
第7の発明では、前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、前記適合電源電圧として算出する。
【0027】
上述したとおりエンコーダでは、動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも通信が可能になることがあるが、かかる状態では、通信良好の状態と不良の状態とが混在する可能性がある。この点、エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、適合電源電圧として算出することにより、適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0028】
第8の発明のロボットシステムは、
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記ロボットは、前記電源ケーブルを通じて供給される駆動電源を入力し、該入力した駆動電源について電圧−周波数変換を実施する電圧−周波数変換手段を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により設定された前記電源電圧が前記電源部から出力された状態で、前記電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号を取得し、その周波数検出信号に基づいて、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記実印加電圧が前記複数のエンコーダに適したものであると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、制御ユニット側の電源部で生成される電源電圧が複数の段階で変更されながら設定される。また、こうして段階的に設定された電源電圧が電源部から出力された状態で、ロボット側に設けられた電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号が取得されるとともに、その周波数検出信号に基づいて、複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否が判定され、その実印加電圧が複数のエンコーダに適したものであると判定された時の電源電圧に基づいて、適合電源電圧が算出される。そして、電源部で生成される電源電圧が適合電源電圧に調整されることにより、電源ケーブルでの電圧ドロップを加味しつつエンコーダに対して適切な駆動電源を供給できる。かかる場合、ロボットシステム自身で適合電源電圧(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、エンコーダに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダの性能低下を抑制できる。電源電圧の調整処理は、システム起動時に実施されるのが望ましい。
【0030】
ここで、ロボット側に電圧−周波数変換手段が設けられており、制御ユニット側では、電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号が取得される。かかる場合、ロボット側から制御ユニット側に周波数検出信号が送信されることになるが、周波数検出信号は減衰に起因する誤認識が生じにくいため、制御ユニット側では、電圧−周波数変換後の周波数情報を正しく把握できる。したがって、制御ユニット側において、複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を正確に判定することができ、ひいては適合電源電圧の信頼性を高めることができる。
【0031】
以上により、ロボットの運転に際し、制御ユニット側からロボット側のエンコーダに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダの検出性能を確保できることとなる。
【0032】
第9の発明では、前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、前記電圧−周波数変換手段は、前記電源コネクタの付近に設けられている。そして、前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダについて前記電源コネクタまでの前記電源経路の電圧ドロップを加味して、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する。
【0033】
上述したとおり、上記構成のロボットシステムでは、電源ケーブルで電圧ドロップが生じることに加え、ロボットにおいて電源コネクタから各エンコーダまでの電源経路でも電圧ドロップが生じると考えられる。また、複数のエンコーダについて、電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが異なっていると、エンコーダごとに電圧ドロップの量が相違したものとなり、電源経路の長さが最大となるエンコーダでは、電圧ドロップが最大になることから実際の印加電圧が最小になる。
【0034】
かかる場合において、複数のエンコーダのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダの電圧ドロップを加味して、エンコーダ実印加電圧の適否が判定されるため、電圧ドロップが最大となり電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダについても実印加電圧の適否を正しく判定できる。したがって、電源電圧の調整結果についてその信頼性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ロボットシステムの電気的構成図。
【図2】ロボットの概要を示す構成図。
【図3】エンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図4】フラグリセット処理を示すフローチャート。
【図5】第2実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図6】図5に引き続きエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図7】エンコーダ駆動電源の調整処理を具体的に説明するためのタイムチャート。
【図8】第3実施形態におけるロボットシステムの電気的構成図。
【図9】(a)はV/F変換回路の構成を示す回路図、(b)はV/F変換回路の動作説明のためのタイムチャート。
【図10】第3実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャート。
【図11】周波数とエンコーダ印加電圧との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
以下、本発明を垂直多関節型ロボットに具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立システムにて用いられる。
【0037】
はじめに、ロボット10の概要を図2に基づいて説明する。同図に示すように、ロボット10は、回動中心軸線として第1軸J1、第2軸J2、第3軸J3、第4軸J4、第5軸J5、第6軸J6を有する6軸ロボットであり、これら各軸における各部の動作角度がそれぞれサーボモータ等からなる駆動源の駆動により調整されるものとなっている。サーボモータはいずれも正逆両方向の回転が可能であり、モータ駆動により原点位置を基準として各部が動作する。本実施形態では、第1軸J1が鉛直方向に延びるようにしてロボット10が床等のロボット設置箇所に設置されるものとしており、図1の上下方向が鉛直方向を示すとして以下説明する。
【0038】
ロボット10において、基台11は、床等に固定される固定部12と、その固定部12の上方に設けられる回動部13とを有しており、回動部13が第1軸J1を回動中心として水平方向に回動可能になっている。回動部13の上端部分には下アーム15が回動可能に連結されている。下アーム15は基本姿勢として鉛直方向に延びる向きに設けられ、その上端部には上アーム16が回動可能に連結されている。上アーム16は基本姿勢として水平方向に延びる向きに設けられている。
【0039】
下アーム15は、水平方向に延びる第2軸J2を回動中心として回動部13に対して回動可能になっており、所定の動作範囲内において時計回り方向又は反時計回り方向に回動動作する。また、上アーム16は、水平方向に延びる第3軸J3を回動中心として下アーム15に対して回動可能になっており、所定の動作範囲内において時計回り方向又は反時計回り方向に回動動作する。
【0040】
上アーム16は、基端側と先端側とで2つのアーム部に分割されて構成されており、基端側は第1上アーム16A、先端側は第2上アーム16Bとなっている。第1上アーム16Aは上述したとおり下アーム15に回動可能に連結されている。これに対し、第2上アーム16Bは、本上アーム16の長手方向に延びる第4軸J4を回動中心として第1上アーム16Aに対してねじり方向に回動可能になっている。
【0041】
上アーム16(詳しくは第2上アーム16B)の先端部には手首部17が設けられ、その手首部17には、ワークやツール等を取り付けるためのハンド部18が設けられている。手首部17は、水平方向に延びる第5軸J5を回動中心として第2上アーム16Bに対して回動可能になっている。また、ハンド部18は、その中心線である第6軸J6を回動中心としてねじり方向に回動可能になっている。
【0042】
ロボット10において各軸J1〜J6の関節部分には、それぞれ前段部材側にモータ(サーボモータ)21,22,23,24,25,26が設けられている。そして、各関節部分において、前段部材に設けられたモータの駆動により、後段部材がそれぞれ回動動作する。なお、モータ21〜26の出力軸(駆動軸)の中心軸線がそれぞれ第1軸J1〜第6軸J6となっている。
【0043】
各モータ21〜26は、その出力軸の回転位置に応じたパルス信号を出力するエンコーダ21a,22a,23a,24a,25a,26aを有している。これらの各エンコーダ21a〜26aは、所定パターンに形成されたスリットを有する回転子と、その回転子の回転を光学的に検出する検出素子と、その検出素子の信号を処理するICとを有している。なお、各エンコーダ21a〜26aは、回転子の回転を磁気的に検出するものであってもよい。
【0044】
また、各モータ21〜26は、モータ出力軸を制動する非励磁作動型の電磁ブレーキを有している。各電磁ブレーキは、ばねの弾性力に基づき駆動軸(モータの出力軸)の制動を行い、励磁コイルへの電力供給に基づき駆動軸の制動を解除する。エンコーダ及び電磁ブレーキはそれぞれモータに組み込まれており、モータにおいて一体化されている。すなわち、各モータは、その回転駆動部とエンコーダとブレーキとを含むユニットとして構成されている。
【0045】
なお、ロボット10の各部(モータ21〜26等)はそれぞれカバーで覆われており、塵や油等の異物が外部から侵入することが抑制されている。これらカバーの内部は互いに連通しており、この連通部に電気配線等が通されている。
【0046】
次に、図1を参照して、ロボットシステムの制御系の構成について説明する。図1は、ロボットシステムの電気的構成図である。なお図1では、説明の便宜上、6つのモータ21〜26のうちモータ21,22,26を記載している。
【0047】
制御ユニット30は、主要な構成として、ロボット10の動作に関する一連の制御を実施するコントローラ31と、ロボット10を駆動させるための駆動電源を生成する電源回路32とを備えている。コントローラ31は、CPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータを中核にして構成されており、ROMに記憶されている制御プログラムに基づいてロボット10の動作位置や動作速度等を制御する。例えば、エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいてモータ21〜26の実回転位置や実回転速度を算出するとともに、それら実回転位置や実回転速度が、回転位置指令値や回転速度指令値に収束するようにフィードバック制御を実施する。
【0048】
電源回路32は、例えば交流200Vをベース電源として本ロボットシステムに必要な各種の駆動電源を生成し出力する。具体的には、コントローラ駆動用の電源や、モータ駆動用の電源、エンコーダ駆動用の電源を生成する。エンコーダ駆動用の電源に関して言えば、電源電圧が可変となっており、あらかじめ定められた動作保証電圧範囲の電源電圧がエンコーダ21a〜26aに印加されるように駆動電源を可変に生成し出力できるものとなっている。なお、エンコーダ21a〜26aの動作保証電圧範囲は、例えば4.75〜5.25Vである。
【0049】
電源回路32からコントローラ31に対しては、制御ユニット30内の電源経路D1,D2を介して電源供給が行われる。ここで、電源経路D1には電源スイッチ33が設けられており、電源スイッチ33のオン操作に伴い電源経路D1を介して電源回路32からコントローラ31に駆動電源が供給される。また、電源経路D2は、電源スイッチ33を経由せずに電源回路32からコントローラ31に駆動電源を供給する経路であり、電源スイッチ33のオフ状態下でもコントローラ31の動作が可能となっている。なお、電源スイッチ33はシステム起動に伴いオンされるものとなっている。
【0050】
ロボット10と制御ユニット30とは、電気ケーブル40を介して電気的に接続されている。電気ケーブル40には、制御ユニット30側とロボット10側との通信を行うための通信ケーブル41と、電源回路32で生成した駆動電源をロボット10側に供給するための電源ケーブル42とが含まれている。制御ユニット30とロボット10とにはそれぞれ通信コネクタ34,35が設けられており、それら通信コネクタ34,35に通信ケーブル41が接続されている。本実施形態では、通信方式として例えばRS−422、RS−232C等からなるシリアル通信方式を採用している。ただし、パラレル通信方式により通信を行う構成であってもよい。また、制御ユニット30とロボット10とにはそれぞれ電源コネクタ36,37が設けられており、それら電源コネクタ36,37に電源ケーブル42が接続されている。
【0051】
また、制御ユニット30の電源コネクタ36には、電源ケーブル42が着脱された場合にその着脱を検出する着脱検出部38が設けられており、その着脱検出部38の検出結果がコントローラ31に逐次入力される。例えば、電源ケーブル42の交換時において電源ケーブル42が電源コネクタ36から取り外されると、その取り外しが着脱検出部38で検出される。コントローラ31には電源経路D2を介してバックアップ用の電源が常時供給されている。また、着脱検出部38にもバックアップ用の電源が常時供給されている。したがって、電源スイッチ33がオフ状態にある場合にケーブル交換作業が行われても、それが検出できるようになっている。
【0052】
ロボット10においては、電源コネクタ37を基端として各エンコーダ21a〜26aに駆動電源を供給するロボット電源配線43が設けられている。この場合、モータ21〜26は複数のロボット関節各部に設けられており、それ故に電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでのロボット電源配線43の長さはエンコーダ21a〜26aごとに相違するものとなっている。例えば、電源コネクタ37がロボット10の基台11に設けられている構成を想定すると、エンコーダ21a→エンコーダ22a→・・・→エンコーダ26aの順にロボット電源配線43の配線長が大きくなる構成となっている。
【0053】
ところで、ロボット10と制御ユニット30とが互いに離間して設けられ、制御ユニット30によりロボット10の遠隔操作が可能になっている場合には、その離間距離に応じて延長された長さの電源ケーブル42が用いられる。また、ロボット10がレール等の案内部に沿って移動可能な可動式であると、電源ケーブル42の長さをロボット移動分を加味した長さにしておく必要がある。かかる場合、電源ケーブル42が長くなるほど、同ケーブル42での電圧ドロップが大きくなり、電源回路32で生成された電源電圧に対して、実際に各エンコーダ21a〜26aに印加される電源電圧(以下、実印加電圧という)が降下するという事態が生じる。
【0054】
ここで一般には、電源ケーブル42の電圧ドロップ量は都度使用されるケーブルの長さや種類により把握できるため、その電圧ドロップ量を加味した上で電源回路32での生成電圧を上乗せしておけば、エンコーダ21a〜26aの実印加電圧を動作保証電圧範囲(4.75〜5.25V)内とすることが可能である。しかしながら、電源ケーブル42はエンドユーザ(メーカのFA工場の作業者等)により交換される場合があり、そのケーブル交換によってケーブル長が変わったりケーブルの種類が変わったりすることがある。この場合、電圧ドロップ量があらかじめ想定したものと異なるため、エンコーダ21a〜26aの実印加電圧が想定外の電圧値になることが懸念される。
【0055】
そこで本実施形態では、制御ユニット30において、電源回路32で生成されるエンコーダ駆動用の電源電圧Venを自動調整できる構成とする。つまり、電源電圧Venを複数の段階で変更しながら設定し、その電源電圧Venが設定された状態(電源電圧Venの駆動電源が供給された状態)で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定するとともに、その通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、適合電源電圧としての調整済み電源電圧Vadjを算出することとしている。以下、その詳細を説明する。
【0056】
図3は、エンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0057】
図3において、ステップS101では、電源調整済みフラグが1であるか否かを判定する。電源調整済みフラグは、エンコーダ駆動電源の調整が完了しているか否かを表すフラグであり、同フラグ=1は調整完了済みであることを示し、同フラグ=0は調整未完了であることを示す。電源調整済みフラグ=1である場合、ステップS102に進む。ステップS102では、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し、その後本処理を終了する。
【0058】
また、電源調整済みフラグ=0である場合、ステップS103に進み、同ステップS103以降において、エンコーダ駆動用の電源電圧を適正値に調整するための一連の処理を実施する。すなわち、ステップS103では、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する。
【0059】
その後、ステップS104では、所定期間において各エンコーダ21a〜26aからそれぞれ送信される回転検出情報を取得する。続くステップS105では、各エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいて各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否を判定する。
【0060】
このとき、各エンコーダ21a〜26aではそれぞれロボット10内におけるロボット電源配線43の長さが異なるため、電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでにおいて各々異なる電圧ドロップが生じる。つまり、電源ケーブル42が同一であっても、ロボット電源配線43の長さの相違により、各エンコーダ21a〜26aでは電圧ドロップ量が相違する。本実施形態では、こうして電圧ドロップが各々相違することを踏まえて、一部のエンコーダだけでなく(特に電源経路長が比較的短いエンコーダだけでなく)、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定する。
【0061】
エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合において、ステップS106では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。電圧調整量ΔVaは、例えば0.125Vである。
【0062】
その後、ステップS107では、今現在の電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定する。制限電圧は、エンコーダの動作保証電圧範囲(仕様最大電圧)やケーブル特性等に基づいて決定される電圧値である。制限電圧についてより具体的には、仕様最大電圧が5.25V、電源ケーブル42の線抵抗が222Ω/km、ケーブル長が40m、エンコーダ消費電流が160mAである場合、
5.25〔V〕+222×10^-3〔Ω〕×40〔m〕×160×10^-3〔Ω〕=6.67〔V〕
となり、制限電圧=6.67Vとして定められる。
【0063】
電源電圧Ven≦制限電圧の場合、ステップS104に戻り、再びエンコーダ21a〜26aの回転検出情報を取得するとともに、通信状況の良否を判定する(ステップS104,S105)。そして、通信状況が良好にならなければ電源電圧Venを再び上昇させる(ステップS106)。こうした処理において、電源電圧Venが次第に上昇し、制限電圧に到達するまでに通信状況が良好にならない場合には、電源電圧Ven>制限電圧となる(ステップS107がNOとなる)。かかる場合、ステップS108に進み、異常発生していると判定する。つまり、各エンコーダ21a〜26aの通信が当然良好となる筈の電源電圧が印加されているのに、通信状況が良好にならない場合には、例えばエンコーダに異常があると判定する。このとき、異常発生の情報を、コントローラ31内のバックアップ用メモリに記憶したり、誤動作防止を図るべく調整済み電源電圧Vadjを0Vに設定したりするとよい。
【0064】
一方、ステップS105で通信状況が良好であると判定されると、ステップS109に進み、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。そして最後に、ステップS110では、電源電圧Venの調整が完了したとして、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0065】
電源調整済みフラグは、電源ケーブル42が取り外された場合に、その取り外しの検出信号に基づいてリセットされるものとなっている。つまり、電源ケーブル42が取り外された場合には、電源ケーブル42が交換される可能性があり、電源電圧の再調整を行わせるべく電源調整済みフラグがリセットされる。
【0066】
具体的には、コントローラ31が図4に示すフラグリセット処理を実行する。図4において、ステップS201では、着脱検出部38の検出結果に基づいて、ケーブル取り外しの有無を判定する。そして、電源ケーブル42の取り外し有りと判定された場合に、ステップS202に進み、電源調整済みフラグを0にリセットする。
【0067】
ただし、電源調整済みフラグがリセットされる構成は上記以外であってもよい。例えば、電源スイッチ33がオン操作される都度、電源調整済みフラグが初期化処理によってリセットされる構成であってもよい。又は、FA工場の室内温度等のロボット設置環境が変わった場合に、電源調整済みフラグがリセットされる構成であってもよい。定期的に、例えば数ヶ月ごとに電源調整済みフラグがリセットされる構成であってもよい。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0069】
電源電圧Venが段階的に設定された状態で、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否が判定され、それらの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)が算出される構成とした。かかる場合、ロボットシステム自身で調整済み電源電圧Vadj(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、各エンコーダ21a〜26aに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダ21a〜26aの性能低下を抑制できる。
【0070】
また、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定するようにしたため、通信良好であるとの判定精度が上がり、調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。つまり、1つのエンコーダのみについて通信良好となった時点では、実際にはエンコーダ印加電圧が動作保証電圧範囲を下回っている可能性があり、通信良好のエンコーダ以外に通信不良のエンコーダが混在している可能性があるが、各々電源経路長が相違する全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果を参照する構成としたため、こうした可能性が極めて低いものとなる。
【0071】
以上により、ロボット10の運転に際し、制御ユニット30側からロボット10側のエンコーダ21a〜26aに対して適正な駆動電源を供給し、ひいてはエンコーダ21a〜26aの検出性能を確保できることとなる。
【0072】
エンドユーザにおいては、エンコーダ駆動電源の電圧ドロップを意識することなく、電源ケーブル42を交換することが実施できる。例えば、FA工場側でのロボット10及び制御ユニット30の設置位置に応じて、電源ケーブル42を長いものから短いものに交換したり、その逆に短いものから長いものに交換したりする場合にも、エンコーダ駆動電源の電圧ドロップを意識することなく交換できる。この場合、作業者による、電源回路32の電源電圧の調整は不要である。
【0073】
電源ケーブル42が取り外されたことの検出信号に基づいて電源調整済みフラグがリセットされる構成としたため、電源ケーブル42が交換された可能性がある場合には電源電圧の再調整が行われる。したがって、FA工場等において電源ケーブル42が何度も交換される場合にも、エンコーダに対する最適な駆動電源の供給状態を維持できる。また、電源電圧を調整するための一連の処理が、システム起動の都度毎回実施されるのではなく必要時のみ実施されるため、システム起動時においてロボット10の運転開始の準備をいち早く整えることができる。
【0074】
電源電圧Venが段階的に高電圧側に更新される際に、その電源電圧Venに基づいて異常検出を実施する構成とした。すなわち、電源電圧Venが制限電圧を上回ったのにエンコーダの通信が良好とならない場合に異常有りと判定する構成とした。これにより、調整済み電源電圧Vadjを求めるための電圧調整と同時に、ロボットシステムの異常診断についても実施できる。
【0075】
各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好となった時点での電源電圧Venに基づいて調整済み電源電圧Vadjを算出する構成において、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を加算した電圧値を、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)として算出する構成であってもよい。加算する電圧増加分は、例えば0.25Vである。本処理は、図3のステップS109において実施されるとよい。つまり、各エンコーダ21a〜26aでは、動作保証電圧範囲以下の電圧が印加された状態でも通信が可能になることがあるが、上記のとおり電圧加算を行って調整済み電源電圧Vadjを算出することで、その調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。ロボット10において電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでのロボット電源配線43は、エンドユーザ側で交換や変更が行われる可能性は低く、各エンコーダ21a〜26aのロボット電源配線43の長さの違いによる電圧ドロップの差はあらかじめ把握できる。本実施形態では、こうした前提を利用して、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であると判定される場合にその判定の確からしさを高め、ひいては調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)の信頼性を高めるものである。なお、ロボットシステムの構成は図1や図2に示すとおりである。
【0077】
本実施形態では、6つのエンコーダ21a〜26aについてロボット10内での電源配線の長さが、エンコーダ21a、エンコーダ22a、エンコーダ23a、エンコーダ24a、エンコーダ25a、エンコーダ26aの順に大きくなり、その順序で電圧ドロップの量も次第に大きくなっている。また、各エンコーダ21a〜26aの電源配線の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報はコントローラ31内にあらかじめ記憶されている。そして、エンコーダ駆動用の電源電圧Venを段階的に増加させつつ(低電圧側から高電圧側に変更しつつ)、電源配線の長さが小さいものから大きいものへの順序で、すなわち電圧ドロップが小さいものから大きいものへの順序でエンコーダの通信状況の良否を判定するとともに、その判定結果に基づいて、各エンコーダ21a〜26aの駆動に適した適合駆動電圧(調整済み電源電圧Vadj)を見出す構成としている。
【0078】
図5及び図6は、本実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0079】
図5において、ステップS301〜S303は、図3のステップS101〜S103と同じ処理である。すなわち、電源調整済みフラグ=1である場合には、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し(ステップS302)、電源調整済みフラグ=0である場合には、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する(ステップS303)。
【0080】
その後、ステップS304では、所定期間においてエンコーダ21aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS305では、エンコーダ21aの回転検出情報に基づいてエンコーダ21aの通信状況の良否を判定する。そして、エンコーダ21aの通信状況が良好でないと判定された場合において、ステップS306では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。ここで、電圧調整量ΔVaは、後述する電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1,ΔVdr2等よりも小さい電圧幅となっている。
【0081】
一方、ステップS305でエンコーダ21aの通信状況が良好であると判定されると、ステップS311に進み、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ21aとエンコーダ22aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1を上乗せ(加算)して、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr1)。このとき、エンコーダ21aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr1が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。補足しておくと、ロボット電源配線において、エンコーダ21aまでの配線部分の電圧ドロップをVD1、エンコーダ22aまでの配線部分の電圧ドロップをVD2とすると、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1は、ΔVdr1=VD2−VD1として定義される。
【0082】
その後、ステップS312では、所定期間においてエンコーダ22aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS313では、エンコーダ22aの回転検出情報に基づいてエンコーダ22aの通信状況の良否を判定する。
【0083】
このとき、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1が上乗せされる前後の各電源電圧は、ロボット10内での電圧ドロップの差が加味されただけであり、この上乗せの時点で電源電圧Venが各エンコーダ21a,21bにとって適したものになっていれば、上乗せ前の電源電圧でエンコーダ21aの通信状況が良好となり、かつ上乗せ後の電源電圧でエンコーダ22aの通信状況が良好となる筈である。これに対し、電源電圧が各エンコーダ21a,22aにとって適したものになっていなければ、上乗せ前の電源電圧でエンコーダ21aの通信状況が良好となったとしても、上乗せ後の電源電圧でエンコーダ22aの通信状況が良好とならない。かかる場合、ステップS305,S313が連続してYESになることは、上乗せ前の電源電圧はエンコーダ21aにとって適したものであり、かつ上乗せ後の電源電圧はエンコーダ22aにとって適したものであると言える。したがって、ステップS313がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続のステップS321に進む。
【0084】
ステップS313がNOの場合には、ステップS314では、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb)。ここで、電圧調整量ΔVbは、電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1よりも小さい電圧幅となっている(後述の電圧ΔVdr2等との関係も同様)。そしてその後、ステップS312に戻り、所定期間においてエンコーダ22aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ22aの通信状況の良否を判定する(ステップS312,S313)。
【0085】
なお、ステップS313がNOであれば、調整処理を初めからやり直すべく、ステップS303に戻る構成であってもよい(後述のステップS323,S333でも同様)。
【0086】
ステップS313からステップS321に進むと、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ22aとエンコーダ23aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr2を上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr2)。このとき、エンコーダ22aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr2が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。
【0087】
その後、ステップS322では、所定期間においてエンコーダ23aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS323では、エンコーダ23aの回転検出情報に基づいてエンコーダ23aの通信状況の良否を判定する。
【0088】
そして、ステップS323がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続の図6のステップS331に進む。また、ステップS323がNOであれば、ステップS324に進み、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb、ステップS314と同様)。そしてその後、ステップS322に戻り、所定期間においてエンコーダ23aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ23aの通信状況の良否を判定する(ステップS322,S323)。
【0089】
なお、ステップS323がYESの場合には、その後、ステップS311〜S314やステップS321〜S324と同じパターンで、エンコーダ24aに関する処理とエンコーダ25aに関する処理とが実施される。本来その処理は存在するが、その実質的な内容は同じであるため、ここではその図示と説明とを割愛する。
【0090】
ステップS323からステップS331に進むと、その時の電源電圧Venに対してエンコーダ25aとエンコーダ26aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr5を上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する(Ven=Ven+ΔVdr5)。このとき、エンコーダ25aの通信状況が良好であると判定された時点での電源電圧Venを基準にして電圧ΔVdr5が加算されることにより、新たな電源電圧Venが設定される。
【0091】
その後、ステップS332では、所定期間においてエンコーダ26aから送信される回転検出情報を取得し、続くステップS333では、エンコーダ26aの回転検出情報に基づいてエンコーダ26aの通信状況の良否を判定する。
【0092】
そして、ステップS333がYESであれば、現時点の電源電圧Venは適正であるとして後続のステップS335に進む。ステップS335では、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。そして最後に、ステップS336では、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0093】
また、ステップS333がNOであれば、ステップS334に進み、現時点の電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVbだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVb、ステップS314と同様)。そしてその後、ステップS332に戻り、所定期間においてエンコーダ26aから送信される回転検出情報を取得し、その回転検出情報に基づいてエンコーダ26aの通信状況の良否を判定する(ステップS332,S333)。
【0094】
なお、上述した図5及び図6の演算処理において、電源電圧Venが段階的に変更される過程で、電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定し、電源電圧Ven>制限電圧となった場合に異常発生していると判定する処理を追加することも可能である(図3のステップS107,S108と同様)。
【0095】
図7は、図5及び図6の演算処理を具体的に説明するためのタイムチャートである。
【0096】
さて、図7では、先ずタイミングt1で、システム起動に伴いエンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値が設定される(本実施形態では初期設定値=4.75V)。これにより、その電源電圧Venが電源回路32で生成され、電源ケーブル42を介してロボット10側に出力される。
【0097】
その後、タイミングt1〜t2の期間では、エンコーダ21aから送信される回転検出情報が制御ユニット30側で取得され、タイミングt2では、エンコーダ21aの回転検出情報に基づいてエンコーダ21aの通信状況の良否が判定される。このとき、エンコーダ21aの通信状況が良好でなければ、図示のとおり電源電圧Venが所定の電圧調整量ΔVaだけ上げられる。その後、同様の処理が繰り返し実施される。つまり、エンコーダ21aの通信状況が良好と判定されるまで、電源電圧Venが、所定の電圧幅で段階的に変更されながら設定される。
【0098】
そして、タイミングt3で、エンコーダ21aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venに対して、エンコーダ21aとエンコーダ22aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr1が上乗せされて、新たな電源電圧Venが設定される(Ven=Ven+ΔVdr1)。
【0099】
また、続くタイミングt4で、エンコーダ22aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venに対して、エンコーダ22aとエンコーダ23aとの電圧ドロップの差相当の電圧ΔVdr2が上乗せされて、新たな電源電圧Venが設定される(Ven=Ven+ΔVdr2)。
【0100】
こうした段階的な電源電圧Venの更新処理は繰り返し実施される。そして、タイミングt5で、電源経路長が最大(電圧ドロップが最大)のエンコーダ26aの通信状況が良好となりその旨が判定されると、その時の電源電圧Venが調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶される。また、電源調整済みフラグに1がセットされる。
【0101】
なお、図7では、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後は、各エンコーダの電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされることで、順次各エンコーダの通信状況が良好に転じる場合について例示したが、仮に各エンコーダの電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされてもエンコーダの通信状況が良好に転じない場合(例えば図7のタイミングt4でエンコーダ22aの通信状況が良好とならない場合)には、その時点で、所定の電圧調整量ΔVbによる小刻みな電源電圧Venの更新が行われる。そして、その状態下であらためてエンコーダの通信状況の良否が判定されることとなる。
【0102】
以上詳述した第2実施形態によれば、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差を考慮しつつ電源電圧Venを段階的に設定することで、各エンコーダ21a〜26aについて通信良好となる電源電圧Venをそれぞれに求めることができる。そして、それらの結果に基づいて、調整済み電源電圧Vadjを好適に求めることができる。
【0103】
エンコーダ21a(電圧ドロップ最小のエンコーダ)について通信状況が良好となった後、残りの5つのエンコーダ22a〜26aについて、それぞれの電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして電源電圧Venを順次設定し、それら全てのエンコーダ22a〜26aの通信状況が全て良好であると判定された後、調整済み電源電圧Vadjを求める構成とした。つまり、多軸ロボット10においてその軸数分だけ電圧設定を繰り返す構成とした。これにより、各エンコーダ21a〜26aについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、調整済み電源電圧Vadjの信頼性をより一層高めることができる。
【0104】
エンコーダ21aの通信状況が良好となるまでの期間で電源電圧Venが段階的に設定される際の電圧幅(ステップS306の電圧調整量ΔVa)を、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとした。これにより、電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せする際に基準となる電源電圧(エンコーダ21aの通信状況が良好となる電源電圧)をきめ細かく求めることができる。
【0105】
また、「電源電圧Ven+電圧ドロップの差相当の電圧」を電源電圧Venとして設定した状態で各エンコーダ22a〜26aの通信状況が良好でない場合における、電源電圧Venの更新量である電圧幅(ステップS314,S324,S334の電圧調整量ΔVb)を、各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとした。これにより、各エンコーダ22a〜26aにとって適正な電源電圧をきめ細かく求めることができる。
【0106】
上記のごとく電圧調整量ΔVa,ΔVbを定めることにより、各エンコーダ21a〜26aの通信状況を確実に良好なものとしつつも、調整済み電源電圧Vadjを過剰に高くすることなく好適に求めることができる。
【0107】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0108】
図8は、本実施形態におけるロボットシステムの電気的構成図である。図8の構成では、図1の構成との相違点として、ロボット10においてロボット電源配線43に電圧−周波数変換回路(以下、V/F変換回路51という)が接続して設けられており、V/F変換回路51からコントローラ31に対して周波数検出信号が出力される構成となっている。V/F変換回路51は、ロボット電源配線43において電源コネクタ37の付近に設けられている。
【0109】
次に、図9を参照してV/F変換回路51を具体的に説明する。図9において、(a)はV/F変換回路51の構成を示す回路図であり、(b)はV/F変換回路51の動作説明のためのタイムチャートである。
【0110】
図9(a)に示すように、V/F変換回路51は基本構成として前段部に設けられた積分回路52と、後段部に設けられた比較回路53とを有している。積分回路52は、負帰還部にコンデンサ54が設けられたオペアンプ55により構成されている。オペアンプ55には、電源ケーブル42を通じて供給されるエンコーダ駆動電源のロボット10側の入力電圧Vinが入力される。また、比較回路53は、積分回路52の積分出力V1を入力し、これを所定の閾値と比較するコンパレータ56により構成されている。オペアンプ55の負側入力端子には、比較回路53の比較出力V2に応じてオン/オフするトランジスタ57のコレクタが接続されている。
【0111】
上記構成によれば、図9(b)に示すごとく積分回路52の積分出力V1と比較回路53の比較出力V2とが変化する。すなわち、積分回路52の積分出力V1は、入力電圧Vinの大きさに応じた傾きで上昇変化又は低下変化する。このとき、入力電圧Vinが大きいほど、積分出力V1の変化の傾きが大きくなる。そして、積分出力V1の変化に伴い比較回路53の比較出力V2がパルス状に変化するものとなる。
【0112】
図10は、本実施形態におけるエンコーダ駆動電源の調整処理を示すフローチャートであり、この処理は本システムの起動に伴いコントローラ31により実行される。
【0113】
図10において、ステップS401〜S403は、図3のステップS101〜S103と同じ処理である。すなわち、電源調整済みフラグ=1である場合には、電源回路32におけるエンコーダ駆動電源の電源電圧として調整済み電源電圧Vadjを設定し(ステップS402)、電源調整済みフラグ=0である場合には、エンコーダ駆動用の電源電圧Venの初期設定値として、動作保証電圧範囲の最小電圧(本実施形態では4.75V)を設定する(ステップS403)。
【0114】
その後、ステップS404では、V/F変換回路51から送信される周波数検出信号を取得し、周波数カウント処理を実施する。周波数カウント処理は、周波数検出信号のパルス数をカウントし、所定時間内のパルスカウント数に基づいて周波数fを算出するものである。
【0115】
続くステップS405では、周波数検出信号の周波数fに基づいて、ロボット10側におけるエンコーダ印加電圧Vxを算出する。このとき、例えば図11の関係を用いて、周波数fに基づいてエンコーダ印加電圧Vxが算出される。
【0116】
ここで、厳密にはV/F変換回路51からエンコーダ21a〜26aまでの電源配線が存在しているため、その分の電圧ドロップを見込んで、エンコーダ印加電圧Vxが算出されるとよい。具体的には、周波数fに基づく電圧算出値を、各エンコーダ21a〜26aのうち電源経路長が最大となるエンコーダ26aの電圧ドロップで減補正して、エンコーダ印加電圧Vxを算出するとよい。
【0117】
その後、ステップS406では、エンコーダ印加電圧Vxが所定電圧未満であるか否かを判定する。この所定電圧は、エンコーダの動作保証電圧範囲に応じて定められるものであり、例えばエンコーダ駆動電圧のティピカル値として定められる(所定電圧=5V)。
【0118】
エンコーダ印加電圧Vx<所定電圧であると判定された場合において、ステップS407では、電源電圧Venを、あらかじめ定めた所定の電圧調整量ΔVaだけ上昇させる(Ven=Ven+ΔVa)。電圧調整量ΔVaは、例えば0.125Vである。
【0119】
その後、ステップS408では、今現在の電源電圧Venが所定の制限電圧以下であるか否かを判定する。そして、電源電圧Ven≦制限電圧であれば、ステップS404に戻り、電源電圧Ven>制限電圧であれば、ステップS409に進んで異常発生していると判定する。なお、ステップS408,S409は、図3のステップS107,S108と同じ処理である。
【0120】
ステップS404に戻った場合、再び周波数検出信号を取得して周波数カウント処理を実施するとともに、周波数検出信号の周波数fに基づいて算出したエンコーダ印加電圧Vxが所定電圧未満であるか否かを判定する(ステップS404〜S406)。
【0121】
そして、ステップS406でエンコーダ印加電圧Vx≧所定電圧であると判定されると、ステップS410に進み、各エンコーダ21a〜26aの回転検出情報に基づいて、現時点で各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好であるか否かを判定する。そして、通信状況が良好であると判定される場合には、ステップS411に進み、現時点の電源電圧Venを、調整済み電源電圧Vadjとしてバックアップ用のメモリに記憶する。続くステップS412では、電源調整済みフラグに1をセットする。
【0122】
また、ステップS410で各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合には、ステップS413に進んで異常発生していると判定する。つまり、各エンコーダ21a〜26aに適正な電源電圧が印加されている筈なのに、通信状況が良好でない場合には、例えばエンコーダに異常があると判定する。
【0123】
以上詳述した第3実施形態によれば、既述の各実施形態と同様に、ロボットシステム自身で調整済み電源電圧Vadj(エンコーダの駆動に適した電源電圧)を見出すことができるため、仮にエンドユーザであるメーカのFA工場等において想定外の電源ケーブルの交換が行われたりしても、各エンコーダ21a〜26aに対する適正な電源供給が維持でき、エンコーダ21a〜26aの性能低下を抑制できる。
【0124】
この場合特に、ロボット10側から制御ユニット30側に周波数検出信号が送信されることになるが、周波数検出信号は減衰に起因する誤認識が生じにくいため、制御ユニット30側では、電圧−周波数変換後の周波数情報を正しく把握できる。したがって、制御ユニット30側において、各エンコーダ21a〜26aにおける実印加電圧の適否を正確に判定することができ、ひいては調整済み電源電圧Vadjの信頼性を高めることができる。
【0125】
各エンコーダ21a〜26aのうち電源経路の長さが最大となるエンコーダ26aの電圧ドロップを加味して、エンコーダ印加電圧Vx(エンコーダ実印加電圧)の適否を判定する場合、電圧ドロップが最大となり電源電圧の条件が最も厳しくなるエンコーダ26aについても実印加電圧の適否を正しく判定できる。したがって、電源電圧の調整結果についてその信頼性を一層高めることができる。
【0126】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0127】
・上記第1実施形態では、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)を算出する際に、全てのエンコーダ21a〜26aの通信結果に基づいて通信状況の良否を判定する構成としたが、これを変更してもよく、各エンコーダ21a〜26aのうち2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定する構成としてもよい。この場合、電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて通信状況の良否を判定することが望ましい。そして、2以上のエンコーダについて各通信状況が良好であると判定された時の電源電圧Venに基づいて、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)を算出する。
【0128】
・上記第2実施形態では、エンコーダ21a(電源経路長が最小のエンコーダ)の通信状況が良好となった後において、現時点での電源電圧Venに対して各エンコーダ同士の電圧ドロップの差相当の電圧(ΔVdr1,ΔVdr2等)を順次上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する構成としたが、これを変更する。具体的には、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後において、エンコーダ21aの通信状況が良好となった時点での電源電圧Venを「基準電源電圧Vref」とし、その基準電源電圧Vrefに対して、エンコーダ21aとそれ以外のエンコーダ22a〜26aとの電圧ドロップの差相当の電圧(エンコーダ21a−22aの電圧ドロップの差相当の電圧、エンコーダ21a−23aの電圧ドロップの差相当の電圧、・・・、エンコーダ21a−26aの電圧ドロップの差相当の電圧)をそれぞれ上乗せして、新たな電源電圧Venを設定する構成としてもよい。
【0129】
この場合、エンコーダ22a→23a→・・・→26aの順に、必ずしも全てのエンコーダについて通信状況を確認しなくてもよい。つまり、エンコーダ21aの通信状況が良好となった後において、いきなりエンコーダ26a(電源経路長が最大のエンコーダ)の通信状況の良否を判定するようにしてもよい。
【0130】
・上記第2実施形態において、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の判定結果に基づいて調整済み電源電圧Vadjが算出された後に(図6のステップS335の処理後に)、電源電圧Venを、それまでの増加変化から降下変化に切り替えて再設定し、あらためて各エンコーダの通信状況を判定する。このとき、「Ven=Ven−ΔVdr5」というように、電圧ドロップの差相当の電圧(ΔVdr5等)を差し引いて電源電圧Venを多段に設定する。図7のタイムチャートを用いて言えば、タイミングt5の電源電圧Ven→・・・タイミングt4の電源電圧Ven→タイミングt3の電源電圧Ven・・・のように、電源電圧Venを低電圧側に段階的に変更する。そして、これらの電源電圧Venの変更に合わせて、それに対応するエンコーダの通信状況を判定する。例えば、電源電圧Venが、図5の処理でエンコーダ21aの通信状況が良好になった時点の電源電圧(図5のステップS305がYESになった時の電源電圧Ven)まで戻った時に、エンコーダ21aの通信状況の良否を判定する。これにより、電圧増加時及び電圧降下時のそれぞれで、同一の電源電圧Venにより、各エンコーダ21a〜26aの通信状況の良否判定がそれぞれ行われることとなる。そしてこのとき、各エンコーダ21a〜26aの通信状況が良好でないと判定された場合に、調整済み電源電圧Vadj(図6のステップS335の算出値)を無効とする。この場合、一連の電圧調整処理がやり直される。
【0131】
上記構成によれば、エンコーダ21aの通信状況が良好になるまで電源電圧Venが徐々に高電圧側に変更された後(図5のステップS306)、電圧ドロップの差相当の電圧が上乗せされて電源電圧Venが設定される(図5のステップS311,S321,図6のS331)。さらにその後、電圧ドロップの差相当の電圧が差し引かれて(減算されて)電源電圧Venが設定される。かかる場合、やはり各エンコーダについて通信良好とした判定の信憑性を高めることができ、調整済み電源電圧Vadj(適合電源電圧)の信頼性をより一層高めることができる。
【0132】
・第3実施形態において、V/F変換回路51の周波数検出信号を、電源ケーブル42の電源電圧Venに重畳させてロボット10側から制御ユニット30側に送信する構成としてもよい。この場合、V/F変換回路51の周波数検出結果に応じて振幅する電源電圧Venを、制御ユニット30側に設けた電圧検出回路(復調回路)で復調した後、コントローラ31に取り込む構成とする。
【0133】
・上記各実施形態では、ロボット10において電源コネクタ37から各エンコーダ21a〜26aまでの電源経路の長さがいずれも異なるものとしたが、その電源経路の長さが同一であるものを含む構成や、全てのエンコーダの電源経路の長さが同一である構成としてもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、6つの関節部(モータ)を有する6軸ロボットについて例示したが、本発明をこれ以外のロボットに適用することも可能であり、例えば2軸ロボットや3軸ロボット等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0135】
10…ロボット、21〜26…モータ、21a〜26a…エンコーダ、30…制御ユニット、31…コントローラ(電圧調整手段、電圧設定手段、判定手段、適合電圧算出手段)、32…電源回路(電源部)、37…電源コネクタ、43…ロボット電源配線、40…電気ケーブル、42…電源ケーブル、43…ロボット電源配線、51…V/F変換回路(電圧−周波数変換手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により前記電源電圧が順次変更されつつ設定されて前記電源部から出力される状態で、前記複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて該エンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、
前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて前記通信状況の良否を判定し、
前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記複数のエンコーダとして、第1エンコーダと、それよりも前記電源経路の長さが大きい第2エンコーダとを含んでおり、それら第1及び第2の両エンコーダの電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記電圧設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定されるまで、前記電源電圧を、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更しながら設定する第1設定手段と、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点で、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして設定する第2設定手段とを有し、
前記適合電圧算出手段は、前記電源経路の長さが最大となるエンコーダが前記第2エンコーダである場合において、前記第2設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記第2エンコーダは、各々前記電源経路の長さが異なるn個(n≧2)のエンコーダを含んでおり、そのn個のエンコーダについて前記第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記第2設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された以降に、前記電源電圧を、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点の電源電圧に対して、前記n個のエンコーダに関するそれぞれの前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして順次設定し、
前記適合電圧算出手段は、前記第2設定手段により前記n個のエンコーダについて各々前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして前記電源電圧を順次設定した場合に、該順次設定した各状態での前記n個のエンコーダの通信状況が全て良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記電圧設定手段は、
前記適合電圧算出手段により、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧が算出された後、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を差し引いて設定する第3設定手段をさらに有し、
前記第3設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第1エンコーダの通信状況が良好でないと判定された場合に、前記適合電圧算出手段により算出した前記適合電源電圧を無効とする請求項3又は4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記第1設定手段により電圧変更される前記所定の電圧幅が、前記電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとなっている請求項3乃至5のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、前記適合電源電圧として算出する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記ロボットは、前記電源ケーブルを通じて供給される駆動電源を入力し、該入力した駆動電源について電圧−周波数変換を実施する電圧−周波数変換手段を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により設定された前記電源電圧が前記電源部から出力された状態で、前記電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号を取得し、その周波数検出信号に基づいて、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記実印加電圧が前記複数のエンコーダに適したものであると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項9】
前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、
前記電圧−周波数変換手段は、前記電源コネクタの付近に設けられており、
前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダについて前記電源コネクタまでの前記電源経路の電圧ドロップを加味して、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する請求項8に記載のロボットシステム。
【請求項1】
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により前記電源電圧が順次変更されつつ設定されて前記電源部から出力される状態で、前記複数のエンコーダのうち2以上のエンコーダについて該エンコーダからの返信に基づいて通信状況の良否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、
前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダについて前記通信状況の良否を判定し、
前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記電源経路の長さが最大となるエンコーダを含む2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記複数のエンコーダとして、第1エンコーダと、それよりも前記電源経路の長さが大きい第2エンコーダとを含んでおり、それら第1及び第2の両エンコーダの電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記電圧設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定されるまで、前記電源電圧を、低電圧側から高電圧側に所定の電圧幅で段階的に変更しながら設定する第1設定手段と、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点で、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして設定する第2設定手段とを有し、
前記適合電圧算出手段は、前記電源経路の長さが最大となるエンコーダが前記第2エンコーダである場合において、前記第2設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記第2エンコーダは、各々前記電源経路の長さが異なるn個(n≧2)のエンコーダを含んでおり、そのn個のエンコーダについて前記第1エンコーダとの各々の電源経路の長さの違いによる電圧ドロップの差の情報があらかじめ記憶されており、
前記第2設定手段は、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された以降に、前記電源電圧を、前記第1エンコーダの通信状況が良好と判定された時点の電源電圧に対して、前記n個のエンコーダに関するそれぞれの前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして順次設定し、
前記適合電圧算出手段は、前記第2設定手段により前記n個のエンコーダについて各々前記電圧ドロップの差相当の電圧を上乗せして前記電源電圧を順次設定した場合に、該順次設定した各状態での前記n個のエンコーダの通信状況が全て良好であると判定されると、その時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧を算出する請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記電圧設定手段は、
前記適合電圧算出手段により、前記第2エンコーダの通信状況が良好であると判定された時の電源電圧に基づいて前記適合電源電圧が算出された後、前記電源電圧を、その時の電源電圧に対して前記電圧ドロップの差相当の電圧を差し引いて設定する第3設定手段をさらに有し、
前記第3設定手段により前記電源電圧を設定した状態で、前記第1エンコーダの通信状況が良好でないと判定された場合に、前記適合電圧算出手段により算出した前記適合電源電圧を無効とする請求項3又は4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記第1設定手段により電圧変更される前記所定の電圧幅が、前記電圧ドロップの差相当の電圧よりも小さいものとなっている請求項3乃至5のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記適合電圧算出手段は、前記判定手段により前記2以上のエンコーダの通信状況が良好であると判定された時の前記電源電圧に対して、あらかじめ定めた所定の電圧増加分を上乗せした電圧値を、前記適合電源電圧として算出する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
複数のモータと、それら各モータにそれぞれ設けられモータ回転状態を検出する複数のエンコーダとを備えてなる産業用のロボットと、
前記ロボットに電気ケーブルを介して接続される制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、前記電気ケーブルを通じて前記複数のエンコーダからそれぞれ回転検出情報を入力し、その回転検出情報に基づいて前記複数のモータを制御するロボットシステムであって、
前記電気ケーブルとして、前記制御ユニットから前記ロボットに対してエンコーダ駆動電源を供給する電源ケーブルが含まれており、
前記制御ユニットは、
前記エンコーダ駆動電源の電源電圧を可変に生成し出力する電源部と、
前記電源部で生成される前記電源電圧を、前記ロボット側において前記エンコーダの駆動に適した適合電源電圧に調整する電圧調整手段と、
を備え、
前記ロボットは、前記電源ケーブルを通じて供給される駆動電源を入力し、該入力した駆動電源について電圧−周波数変換を実施する電圧−周波数変換手段を備え、
前記電圧調整手段は、
前記電源部で生成される前記電源電圧を複数の段階で変更しながら設定する電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により設定された前記電源電圧が前記電源部から出力された状態で、前記電圧−周波数変換手段による周波数変換後の周波数検出信号を取得し、その周波数検出信号に基づいて、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記実印加電圧が前記複数のエンコーダに適したものであると判定された時の前記電源電圧に基づいて、前記適合電源電圧を算出する適合電圧算出手段と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項9】
前記複数のエンコーダには、前記ロボットにおいて前記電源ケーブルが接続される電源コネクタからエンコーダまでの電源経路の長さが相違するものが含まれており、
前記電圧−周波数変換手段は、前記電源コネクタの付近に設けられており、
前記判定手段は、前記複数のエンコーダのうち前記電源経路の長さが最大となるエンコーダについて前記電源コネクタまでの前記電源経路の電圧ドロップを加味して、前記複数のエンコーダにおける実印加電圧の適否を判定する請求項8に記載のロボットシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−56039(P2012−56039A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202690(P2010−202690)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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