説明

ロボットハンド

【課題】異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングすることができるロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンド100であって、第1および第2のピッキング手段110a,110bと駆動手段120とを有する。第1および第2のピッキング手段110a,110bは、互いに独立的にワークをピッキングする。駆動手段120は、ワークをピッキングした第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、第1のピッキング手段110aをピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、第2のピッキング手段110bをピッキング位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の組立工程において、サプライヤからの供給部品を生産順序にしたがって並べ替え、組立ラインに同期させて供給するロットピッキングが実施されている。
【0003】
ワークをピッキングする技術としては、下記の特許文献1に示すピッキング装置が知られている。特許文献1に開示されているピッキング装置は、部品棚中の部品箱に収容されているワークを把持するハンド機構と、ハンド機構を部品棚に沿って移動させる移動機構とを備えており、部品棚の下部には出荷箱が配置されている。このような構成によれば、部品棚から出荷箱までハンド機構を移動させる移動機構の移動距離が最小化されるため、ピッキング作業に要する時間を短縮することができる。
【特許文献1】特開平6−144507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ピッキング装置では、異なる部品箱に収容されている2つのワークを取り出す場合、ハンド機構が最初の部品箱からピッキングしたワークを一度出荷箱に収容し、その後、ハンド機構が次の部品箱から次のワークをピッキングするように移動されるため、ピッキング作業に要する時間が長くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングすることができるロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
本発明のロボットハンドは、ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、第1および第2のピッキング手段と駆動手段とを有する。第1および第2のピッキング手段は、互いに独立的にワークをピッキングする。駆動手段は、ワークをピッキングした第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、当該第1のピッキング手段をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、前記第2のピッキング手段を前記ピッキング位置に移動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロボットハンドによれば、第1のピッキング手段がワークをピッキングした状態で第2のピッキング手段が次のワークをピッキングすることができるため、異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングすることができる。したがって、ピッキングロボットが異なる部品箱から2つのワークを取り出すのに必要なサイクルタイムが短縮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。なお、図中、同様の部材には、同一の符号を用いた。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態におけるロボットハンドが適用されるピッキング装置について説明する。本実施の形態のピッキング装置は、異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングするものである。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態におけるピッキング装置の概略構成を示す図である。
【0012】
図1に示すとおり、本実施の形態のピッキング装置は、ロボットハンド100、ロボット200、およびロボット移動部300を有する。ピッキング装置の両側には、部品棚400が配置されている。
【0013】
ロボットハンド100は、ワークをピッキングするものある。ロボットハンド100は、第1および第2の吸着パッド部を備え、2つのワークを連続的にピッキングする。ロボットハンド100についての詳細な説明は後述する。
【0014】
ロボット200は、ロボットハンド100を移動するものである。ロボット200は、アームロボットであって、ロボットハンド100がアーム先端部に取り付けられている。なお、ロボット200自体は、一般的な多関節型のロボットであるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
ロボット移動部300は、ロボット200を部品棚400に沿って移動するものである。ロボット移動部300は、ロボット200を水平方向に移動する水平移動機構と、垂直方向に移動する垂直移動機構とを有し、ロボット200を部品棚400に沿って水平方向および垂直方向に移動する。
【0016】
なお、本実施の形態の部品棚400には、各段に複数の部品箱が配置されており、各部品箱にはワークが収容されている。上下に配置される部品箱の間隔は200mm程度であり、ロボットハンド100が部品棚400の内部に進入する際の間隔としては非常に小さい。
【0017】
次に、図2を参照して、本実施の形態におけるロボットハンド100について詳細に説明する。
【0018】
図2は、本実施の形態のピッキング装置におけるロボットハンドを説明するための図である。図2(A)は、ロボットハンドの上面図であり、図2(B)は、ロボットハンドの側面図である。
【0019】
図2に示すとおり、本実施の形態のロボットハンド100は、第1および第2の吸着パッド部110a,110b、揺動機構120、および往復移動機構130を有する。第1および第2の吸着パッド部110a,110b、揺動機構120、および往復移動機構130は、アルミフレーム140を介して、ロボット200のアーム先端部に取り付けられている。
【0020】
第1および第2の吸着パッド部110a,110bは、第1および第2のピッキング手段として、互いに独立的にワークをピッキングするものである。第1および第2の吸着パッド部110a,110bは、同一平面上に互いに直交する向きに配置され、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに揺動される。第1および第2の吸着パッド部110a,110bは、吸着パッドをそれぞれ2つ備え、2つの吸着パッドにより一のワークをピッキングする。各吸着パッドは、吸着パッド取り付けブロック111を介して揺動機構120に取り付けられている。ブロック111には、吸着パッド用のエア通路が2系統備えられている。
【0021】
揺動機構120は、駆動手段として、第1および第2の吸着パッド部110a,110bを揺動させるものである。本実施の形態の揺動機構120は、エア駆動型のロータリーアクチュエータであって、ブロック111を介して連結される第1および第2の吸着パッド部110a,110bを揺動させる。
【0022】
往復移動機構130は、往復移動手段として、第1および第2の吸着パッド部110a,110bを往復移動させるものである。本実施の形態の往復移動機構130は、ピッキング位置にある第1または第2の吸着パッド部110a,110bが、部品箱に収容されているワークを取り出すことができるように、吸着パッド部110a,110bを上下に移動させる。往復移動機構130は、揺動機構120に連結されて上下に移動するスライダ部131と、スライダ部131の移動方向を案内するガイド部132と、スライダ部131を移動させる上下駆動用シリンダ133を備える。上下駆動用シリンダ133は、たとえば、エアシリンダであって、アルミフレーム140に沿って横向きに配置されている。上下駆動用シリンダ133の横向きの運動は、リンク機構134によって上下運動に変換され、スライダ部131が上下に移動する。
【0023】
以上のとおり構成される本実施の形態のピッキング装置によれば、互いに異なる向きに配置されている第1の吸着パッド部110aと第2の吸着パッド部110bとが連動して揺動することにより、異なる部品箱から2つのワークを連続してピッキングすることができる。以下、図3〜図8を参照して、本実施の形態のピッキング装置によるピッキング方法について詳細に説明する。
【0024】
図3〜図8は、本実施の形態のピッキング装置によるピッキング処理を説明するための図である。本実施の形態のピッキング処理は、第1の部品箱に収容される1個目のワークを第1の吸着パッド部110aによりピッキングし、第1の吸着パッド部110aが1個目のワークを保持したまま、第2の部品箱に収容される2個目のワークを第2の吸着パッド部110bによりピッキングするものである。
【0025】
本実施の形態のピッキング処理では、まず、ロボットハンド100が、第1の部品箱411上に移動される。具体的には、図3に示すとおり、ロボット200によりハンド100が移動され、ロボットハンド100の第1の吸着パッド部110aが1個目のワーク421の真上に位置される。なお、第1の吸着パッド部110aが、パッド面が部品箱411の底面と対向するピッキング位置に位置している一方で、第2の吸着パッド部110bは、部品箱411の底面に対して水平な待機位置に位置している。
【0026】
次に、第1の吸着パッド部110aによって1個目のワーク421が吸着される。具体的には、図4に示すとおり、往復移動機構130がピッキング位置にある第1の吸着パッド部110aを下方に移動させることによって、第1の吸着パッド部110aがワーク421を吸着する。より具体的には、第1の吸着パッド部110aを構成する2つの吸着パッドが、ワーク421を真空吸着することによって、第1の吸着パッド部110aがワーク421を吸着する。
【0027】
次に、1個目のワーク421がピッキングされる。具体的には、図5に示すとおり、往復移動機構130が、ワーク421を吸着した第1の吸着パッド部110aを引き上げることにより、1個目のワーク421がピッキングされる。
【0028】
次に、1個目のワーク421が他の部材(たとえば、部品箱および他のワーク)と干渉することを防止するために、1個目のワーク421がハンド100の前方に退避される。具体的には、図6に示すとおり、揺動機構120が、第1の吸着パッド部110aを90度回転させることにより、第1の吸着パッド部110aをピッキング位置から前方の退避位置まで移動させ、1個目のワークを退避させる。これと同時に、第2の吸着パッド部110bが90度回転されて、待機位置からピッキング位置まで移動される。
【0029】
次に、ハンド100が第2の部品箱412上に移動される。具体的には、図7に示すとおり、ロボット200によりハンド100が移動され、ロボットハンド100の第2の吸着パッド部110bが第2の部品箱412に収容されているワーク422の真上に位置される。より具体的には、第2の吸着パッド部110bは、パッド面が部品箱412の底面と対向するピッキング位置に位置する。一方で、第1の吸着パッド部110aは、部品箱412の底面に対して水平な退避位置に位置している。このとき、第1の吸着パッド部110aとともに1個目のワーク421がハンド100の前方に逃がされているため、ハンド100が部品箱412の上部に移動する際に、1個目のワーク421が部品箱と干渉することが防止される。
【0030】
次に、第2の吸着パッド部110bによって2個目のワーク422が吸着される。具体的には、図8に示すとおり、往復移動機構130がピッキング位置にある第2の吸着パッド部110bを下方に移動させることによって、第2の吸着パッド部110bがワーク422を吸着する。このとき、1個目のワーク421は、前方に逃がされているため、1個目のワーク421が第2の部品箱412または第2の部品箱に収容されている他のワークと干渉することが防止される。
【0031】
次に、2個目のワーク422がピッキングされる。具体的には、図9に示すとおり、往復移動機構130が、ワーク422を吸着した第2の吸着パッド部110bを引き上げることにより、ワークがピッキングされる。
【0032】
そして、部品棚411,412から取り出したワーク421,422が、キット箱(不図示)へ投入される。具体的には、ロボット200およびロボット移動部300が駆動して、ロボットハンド100をワーク投入先のキット箱へ移動する。その後、ハンド100がワーク421,422を順次にリリースする。
【0033】
より具体的には、ピッキング位置にある第2の吸着パッド部110bの吸着が解除され、第2のワーク422がキット箱に投入される。次に、第2の吸着パッド部がピッキング位置から待機位置まで移動されるとともに、第1の吸着パッド部110aがハンド100前方の退避位置からピッキング位置まで移動される。そして、ピッキング位置にある第1の吸着パッド部110aの吸着が解除され、1個目のワーク421がキット箱に投入される。
【0034】
なお、キット箱の状況に応じて、揺動機構120を揺動させることにより、ワーク421,422をリリースする第1および第2の吸着パッド部110a,110bの角度は適宜変更される。
【0035】
以上のとおり、本実施の形態のピッキング処理によれば、まず、ロボットハンド100が部品棚400の内部の第1の部品箱411の上部に移動され、第1の吸着パッド部110aにより1個目のワーク421がピッキングされる。そして、1個目のワーク421が他の部品箱または他のワークと干渉することを防止するために、ワーク421を吸着している第1の吸着パッド部110aがハンド100の前方に逃がされる。このとき、第1の吸着パッド部110aの揺動動作に連動して第2の吸着パッド部110bがピッキング位置に移動する。次に、第2の吸着パッド部110bがピッキング位置にある状態でロボットハンド100が、2個目のワーク422が収容されている第2の部品箱412上に移動され、第2の吸着パッド部110bにより2個目のワーク422がピッキングされる。このとき、1個目のワーク421は、前方に逃がされているため、1個目のワーク421が他の部品箱または他のワークと干渉することが防止される。したがって、本発明のロボットハンド100によれば、第1の吸着パッド部110aがワークをピッキングした状態で第2の吸着パッド部110bが次のワークをピッキングすることができるため、異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングすることができる。その結果、ピッキングロボット200が異なる部品箱から2つのワークを取り出すのに必要なサイクルタイムが短縮される。
【0036】
以上のとおり、説明した本実施の形態は以下の効果を奏する。
【0037】
(a)本発明のロボットハンドは、ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、第1および第2の吸着パッド部と揺動機構とを有する。第1および第2の吸着パッド部は、互いに独立的にワークをピッキングする。揺動機構は、ワークをピッキングした第1の吸着パッド部が他の部材と干渉することを防止するために、第1の吸着パッド部をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、第2の吸着パッド部をピッキング位置に移動させる。したがって、第1の吸着パッド部がワークをピッキングした状態で第2の吸着パッド部が次のワークをピッキングすることができるため、異なる部品箱に収容されている2つのワークを連続的にピッキングすることができる。したがって、ピッキングロボットが異なる部品箱から2つのワークを取り出すのに必要なサイクルタイムを短縮することができる。
【0038】
また、投入先のキット箱の状態に応じて取り出したワークの投入角度を変更することができる。
【0039】
(b)本実施の形態のロボットハンドは、第1および第2の吸着パッド部によりワークを吸着するため、ワークを把持する場合と比較して、簡単な構成によりワークをピッキングすることができる。
【0040】
(c)本実施の形態のロボットハンドは、揺動機構により第1および第2の吸着パッド部を移動させるため、簡単な運動機構により第1の吸着パッド部を退避位置に移動させることができる。また、簡単に第1の吸着パッド部と第2の吸着パッド部とを連動させることができる。
【0041】
(d)本発明のロボットハンドは、ピッキング位置における第1または第2の吸着パッド部と部品箱に収容されているワークとを結ぶ直線に沿って、ピッキング位置の第1または第2の吸着パッド部を往復移動させる往復移動機構をさらに有する。したがって、上下に配置される部品箱の間隔が小さく、部品箱とロボットアームとが干渉する場合であっても、ロボットアームに代わって移動機構が吸着パッド部を上下に移動させることにより、ワークをピッキングすることができる。
【0042】
以上のとおり、一実施の形態において、本発明のロボットハンドを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0043】
たとえば、上述した実施の形態では、ピッキング手段として吸着バッドを用いた。しかしながら、ピッキング手段は、吸着パッドに限定されるものではなく、ワークを把持する把持ハンドを用いてもよい。
【0044】
また、上述した実施の形態では、第1および第2の吸着パッド部は、揺動機構により連動するように揺動された。しかしながら、第1および第2の吸着パッド部は、連動して動作すればよく、たとえば、第1の吸着パッド部の直線的な動作に連動して、第2の吸着パッド部が揺動するように、歯車などを介して動的に連結されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態におけるピッキング装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すピッキング装置におけるロボットハンドを説明するための図である。
【図3】図2に示すロボットハンドの部品棚の部品箱への移動を示す図である。
【図4】図3に後続する図である。
【図5】図4に後続する図である。
【図6】図5に後続する図である。
【図7】図6に後続する図である。
【図8】図7に後続する図である。
【図9】図8に後続する図である。
【符号の説明】
【0046】
100 ロボットハンド、
110a,110b 吸着パッド部、
120 揺動機構、
130 往復移動機構、
200 ロボット、
300 ロボット移動部、
400 部品棚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、
互いに独立的にワークをピッキングする第1および第2のピッキング手段と、
ワークをピッキングした前記第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、当該第1のピッキング手段をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、前記第2のピッキング手段を前記ピッキング位置に移動させる駆動手段と、
を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記第1および第2のピッキング手段は、ワークを吸着する吸着パッドをそれぞれ含むことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1および第2のピッキング手段は、同一平面上に異なる向きに配置されており、
前記駆動手段は、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1および第2のピッキング手段を揺動させる揺動機構を含むことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記ピッキング位置における第1または第2のピッキング手段と収容部に収容されているワークとを結ぶ直線に沿って、当該ピッキング位置の第1または第2のピッキング手段を往復移動させる往復移動手段をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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