説明

ロボットハンド

【課題】指部材を平行移動させる方式で狭い作業スペースでの作業に適用可能なロボット
ハンドを提供する。
【解決手段】対象物を把持する指部材を移動部材から立設し、掌部材に設けられた移動機
構によって移動部材を所定軸方向に移動させることで指部材を移動させて対象物を把持す
る。移動部材を所定軸方向に移動させるためのガイド部材を移動部材から立設させ、ガイ
ド部材を掌部材に対して摺動させることによってガイドする。こうすれば、指部材の間隔
を狭める(移動部材を掌部材に近づける)と、ガイド部材は掌部材に対して摺動しながら
移動部材の移動とともに移動するので、ロボットハンドが小さくなる。このため、指部材
を平行移動させる方式のロボットハンドでありながら、狭い作業スペースで小さな対象物
を把持する作業にも適用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、対象物を掴むことが可能なロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット技術の進歩により、工業製品の製造現場では多くの産業用ロボットが使
用されるようになっている。また最近では、医療や介護の現場でもロボットの活用が期待
されている。これらのロボットが対象物を把持するためのロボットハンドは、様々な大き
さや形状の対象物を把持可能としておく必要がある。
【0003】
ここで、ロボットハンドが対象物を把持する方式には、人間の掌に相当する掌部材から
、人間の指に相当する複数本の指部材を突設させ、指部材の付け根の部分を支点として指
部材を回転させて対象物を把持する方式(たとえば、特許文献1など)と、指部材の付け
根を平行移動させて指部材と指部材との間隔を狭めることによって対象物を把持する方式
(たとえば、特許文献2など)とが知られている。
【0004】
このうち、指部材の付け根を支点として指部材を回転させる方式は、把持しようとする
対象物の大きさによって、指部材が対象物に接する角度が変化する。このため、対象物に
応じて指部材の形状や把持する力を変える必要が生じて、ロボットハンドの構造や制御が
複雑になる。この点で、指部材の付け根を平行移動させる方式では、指部材が対象物に接
する角度が対象物の大きさによって変化することがないので、ロボットハンドの構造や制
御を簡単にすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−201538号公報
【特許文献2】特開平5−220687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、指部材の付け根を平行移動させる方式のロボットハンドは、小さな対象物を把
持する作業に適用することが困難であるという課題があった。これは次の理由による。先
ず、小さな対象物を把持する作業は、狭い作業スペースで行われることが通常である。た
とえば、小さな部品を取り上げて所定の位置に組み付ける作業を考えると、組み付ける部
品は狭いスペースに間隔を詰めて並べられていることが多く、部品を取り上げるためにロ
ボットハンドを入れるスペースが限られていることが通常である。更に、取り上げた部品
を取り付ける場合にも、部品が小さいことに対応して狭いスペースに組み付けなければな
らないことが多い。そして、指部材の付け根を平行移動させる方式のロボットハンドは、
移動する指部材の付け根を支えなければならないので掌部材が大きくなり、その結果、ロ
ボットハンドが大きくなって、狭い作業スペースでの作業に適用することが困難になる。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、
指部材の付け根を平行移動させて対象物を把持する方式でありながら、小型で、狭い作業
スペースでの作業にも適用することが可能なロボットハンドを提供することを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本願発明のロボットハンドは次の構
成を採用した。すなわち、
互いに離して設けられた指部材の間隔を変更することによって、対象物を把持するロボ
ットハンドであって、
前記指部材が立設された移動部材と、
前記移動部材を所定軸方向に移動させる移動機構が設けられた掌部材と、
前記移動部材から立設されて前記掌部材に対して摺動することにより、該移動部材の前
記所定軸方向への移動をガイドするガイド部材と
を備えることを要旨とする。
【0009】
このような構成を有する本願発明のロボットハンドにおいては、対象物を把持するため
の指部材は移動部材から立設されており、掌部材に設けられた移動機構によって移動部材
を所定軸方向に移動させることにより、移動部材と共に指部材を移動させて対象物を把持
するようになっている。ここで、移動部材を所定軸方向に移動させるためには、移動部材
に駆動力を伝えて移動させるための移動機構の他に、所定軸方向に移動するように移動部
材をガイドするためのガイド部材が必要となる。ここで「ガイドする」とは、移動方向が
所定軸方向からずれないように位置決めしながら導くことを言う。本願発明のロボットハ
ンドでは、ガイド部材が移動部材から立設されており、ガイド部材が掌部材に対して摺動
することによって、所定軸方向にガイドする構造となっている。
【0010】
このような構造では、たとえば指部材の間隔を広げるために移動部材を掌部材から遠ざ
けると、ガイド部材は掌部材に対して摺動しながら移動部材の移動とともに移動する。こ
のため大きな対象物を把持することが可能となる。また逆に、指部材の間隔を狭めるため
に移動部材を掌部材に近づけると、ガイド部材は掌部材に対して摺動しながら移動部材の
移動とともに移動する。この動きを掌部材の側から見ると、移動部材が近付くに従ってガ
イド部材が引っ込んだ状態となって、ロボットハンドが小さくなった状態となる。このよ
うに、本願発明のロボットハンドは、小さな対象物を把持する際には、それに伴ってロボ
ットハンドの大きさが小さくなる。このため、指部材の付け根を平行移動させて対象物を
把持する方式でありながら、狭い作業スペースで、小さな対象物を把持する作業にも適用
することが可能となる。
【0011】
また、上述した本願発明のロボットハンドにおいては、次のようにして移動部材(従っ
て、移動部材に設けられた指部材)を移動しても良い。すなわち、掌部材に、移動機構が
設けられた中央掌部材と、中央掌部材を中心として第1の所定軸方向に移動可能に設けら
れた第1周辺掌部材と、中央掌部材を中心として第2の所定軸方向(第1の所定軸方向に
対して直交する方向)に移動可能に設けられた第2周辺掌部材とを設ける。そして、第1
周辺掌部材と第2周辺掌部材との間に、1つずつ移動部材を設ける。更に、各々の移動部
材には少なくとも2本のガイド部材を互いに直交する方向に立設し、一方のガイド部材と
第1周辺掌部材とが摺動し、他方のガイド部材と第2周辺掌部材とが摺動することによっ
て、各々の移動部材が、第1の所定軸方向および第2の所定軸方向への移動がガイドされ
るようにしておく。そして、移動機構を用いて第1周辺掌部材を第1の所定軸方向に移動
させ、あるいは、第2周辺掌部材を第2の所定軸方向に移動させるようにしてもよい。
【0012】
こうすれば、第1周辺掌部材を第1の所定軸方向に移動させることによって、その第1
周辺掌部材の両側に設けられた移動部材(および指部材)を第1の所定軸方向に移動させ
ることができる。また同様に、第2周辺掌部材を第2の所定軸方向に移動させることによ
って、その第2周辺掌部材の両側に設けられた移動部材(および指部材)を第2の所定軸
方向に移動させることができる。そして、移動部材が第1の所定軸方向あるいは第2の所
定軸方向に移動する動きをガイドするガイド部材は、移動部材から立設されている。この
ため、小さな対象物を把持するために移動部材を中央掌部材に近付けると、それに伴って
ガイド部材も移動して、ロボットハンドの大きさが小さくなる。このため、指部材の付け
根を平行移動させて対象物を把持する方式でありながら、狭い作業スペースで、小さな対
象物を把持する作業にも適用することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のロボットハンドは、指部材の付け根を平行移動させて対象物を
把持する方式であるために、指部材が対象物に接する角度が対象物の大きさによって変化
することがないという利点を備えたまま、尚且つ、狭い作業スペースで、小さな対象物を
把持することが可能である。従って、このようなロボットハンドは、狭い作業スペースで
、小さな対象物を把持する作業を行うロボットに、好適に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のロボットハンドの構造を示す説明図である。
【図2】本実施例のロボットハンドの動作を示す説明図である。
【図3】一般的なロボットハンドの動作を示す説明図である。
【図4】変形例のロボットハンドの構造を示す説明図である。
【図5】変形例のロボットハンドの動作を示す説明図である。
【図6】本実施例のロボットハンドを備えたロボットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.本実施例のロボットハンドの構造:
B.本実施例のロボットハンドの動作:
C.変形例:
【0016】
A.本実施例のロボットハンドの構成 :
図1は、本実施例のロボットハンド100の構造を示した説明図である。図示されるよ
うに本実施例のロボットハンド100は、大きくは3つの部分から構成されている。中央
の部分は、矩形形状の上辺中央に大きな溝が形成された断面形状をした掌部材110と、
掌部材110の溝のほぼ中央に設けられたピニオンギア112と、ピニオンギア112を
回転させるための図示しないモーターなどによって構成されている。また、掌部材110
の左右には、略直方体形状の移動部材120,130が設けられており、移動部材120
の上面には2つの指部材122が設けられ、移動部材130の上面にも2つの指部材13
2が設けられている。
【0017】
移動部材120には、ギアの歯形が切られたラック124が立設されており、ピニオン
ギア112と噛み合わされている。また、移動部材120の両端付近からは、円柱状のガ
イド部材126がそれぞれ1本ずつ立設されており、それぞれのガイド部材126は、掌
部材110に設けられたガイド孔114を貫通している。ガイド部材126とガイド孔1
14との大きさは、ガイド孔114の中をガイド部材126が摺動可能であるが、ガイド
部材126ががたつくことの無い適切な大きさに設定されている。移動部材130にも同
様に、ギアの歯形が切られたラック134と、円柱状をした2本のガイド部材136が立
設されており、ラック134はピニオンギア112と噛み合わされて、2本のガイド部材
136は、掌部材110に設けられたガイド孔114を貫通している。ガイド部材136
とガイド孔114との大きさも、ガイド部材136が摺動可能であるが、ガイド部材13
6ががたつくことのない適切な大きさに設定されている。
【0018】
このため、ピニオンギア112を回転させると、ピニオンギア112に噛み合ったラッ
ク124およびラック134によって移動部材120および移動部材130が移動して、
指部材122と指部材132との間隔が変化する。たとえば、図1に示した例では、ピニ
オンギア112を図上で時計方向に回転させると、移動部材120と移動部材130とが
遠ざかるように移動する結果、指部材122と指部材132との間隔が大きくなる。また
、ピニオンギア112を図上で反時計方向に回転させると、指部材122と指部材132
との間隔が小さくなる。
【0019】
尚、ガイド部材126あるいはガイド部材136にガイドされて移動部材120あるい
は移動部材130が移動する方向が、本願発明の「所定軸方向」に対応する。また、移動
部材120あるいは移動部材130を移動させるためのピニオンギア112や、ラック1
24、ラック134、更にはピニオンギア112を回転させるモーターなどが、本願発明
の「移動機構」に対応する。
【0020】
B.本実施例のロボットハンドの動作 :
図2は、本実施例のロボットハンド100の動作を示す説明図である。図2(a)には
、移動部材120と移動部材130との間隔を最も広げた状態が示されており、図2(b
)には、移動部材120と移動部材130との間隔を最も狭めた状態が示されている。図
2(a)は大きな対象物を把持する場合に該当し、図2(b)は小さな対象物を把持する
場合に該当する。
【0021】
図1を用いて前述したように、移動部材120をガイドするガイド部材126は移動部
材120から立設されており、掌部材110に形成されたガイド孔114の中を摺動する
。また、移動部材130をガイドするガイド部材136は移動部材130から立設されて
おり、掌部材110に形成されたガイド孔114の中を摺動する。このため、小さな対象
物を把持するために移動部材120と移動部材130との間隔を狭めると、ガイド部材1
26およびガイド部材136が摺動して、図2(b)に示したように、ロボットハンド1
00の大きさが小さくなる。
【0022】
参考として、指部材122,132を平行移動させて対象物を把持する方式の一般的な
ロボットハンド900の動作について簡単に説明しておく。図3は、一般的なロボットハ
ンド900の動作を示す説明図である。図3に例示したロボットハンド900では、大き
な基台910の上に、移動部材920および移動部材930が設けられており、移動部材
920の上には2つの指部材122が、移動部材930の上にも2つの指部材132が設
けられている。そして、移動部材920および移動部材930は、基台910に設けられ
たガイド溝914の中を摺動するようになっている。このため、移動部材920および移
動部材930は、ガイド溝914によってガイドされた状態で、互いの間隔を広げたり狭
くしたりすることが可能となっている。尚、図3では、移動部材920および移動部材9
30を移動させるための機構は図示を省略している。
【0023】
図3(a)には、移動部材920と移動部材930との間隔が最も広くなった状態が示
されており、図3(b)には、移動部材920と移動部材930との間隔が最も狭くなっ
た状態が示されている。図3(a)と図3(b)とを比較すれば明らかなように、指部材
122が設けられた移動部材920および指部材132が設けられた移動部材930を平
行移動させて対象物を把持する方式では、ロボットハンド900の大きさは、移動部材9
20および移動部材930をガイドする基台910の大きさによってほとんど決まってし
まう。このため、小さな対象物を把持するために移動部材920と移動部材930との間
隔を狭くしても、ロボットハンド900の大きさが小さくなることはない。
【0024】
これに対して本実施例のロボットハンド100は、図2(b)に示したように、小さな
対象物を把持する際にはロボットハンド100の大きさが小さくなる。このため、指部材
122が設けられた移動部材120、および指部材132が設けられた移動部材130を
平行移動させて対象物を把持する方式でありながら、狭い作業スペースで小さな対象物を
把持するような作業に対しても、好適に用いることが可能となる。
【0025】
C.変形例 :
上述した実施例では、指部材122と指部材132とが一つの所定軸方向にのみ移動し
得るものとした。しかし、互いに直交する二つの軸方向に移動させることも可能である。
以下では、このような変形例のロボットハンド100について説明する。
【0026】
図4は、変形例のロボットハンド100の構造を示した説明図である。図1を用いて前
述したロボットハンド100では、掌部材110は一つの部材であったが、変形例のロボ
ットハンド100では、掌部材110が五つの部材から構成されている。すなわち、中央
に設けられた中央掌部材110Aと、中央掌部材110Aを中心として十字を形成するよ
うに配置された4つの周辺掌部材110B,110C,110D,110Eとによって構
成されている。この中の中央掌部材110Aは、上面が略正方形に形成されており、上面
のほぼ中央には、ピニオンギア112A、およびピニオンギア112Bが二段に重ねられ
て設けられている。下側のピニオンギア112Bを駆動する駆動軸(図示は省略)には中
空管が用いられており、その内側を、上側のピニオンギア112Aの駆動軸(図示は省略
)が通過している。そして、それぞれの駆動軸は、図示しないモーターによって独立して
駆動させることが可能となっている。
【0027】
周辺掌部材110B、110C,110D,110Eの各々には、ギアの歯形が切られ
たラック114B,114C,114D,114Eが立設されている。そして、互いに向
かい合う周辺掌部材110Cおよび周辺掌部材110Dに設けられたラック114Cおよ
びラック114Dは、上側のピニオンギア112Aに噛み合わされている。また、周辺掌
部材110Bのラック114Bおよび周辺掌部材110Eのラック114Eは、下側のピ
ニオンギア112Bに噛み合わされている。
【0028】
更に、四つの周辺掌部材110B,110C,110D,110Eの間には、移動部材
120,130,140,150が設けられており、移動部材120,130,140,
150の上面には、それぞれ指部材122,132,142,152が設けられている。
そして、それぞれ移動部材120,130,140,150には、互いに直交する方向に
ガイド部材が立設されている。すなわち、周辺掌部材110Bと周辺掌部材110Cとの
間に設けられた移動部材120には、周辺掌部材110Bに向かって立設するガイド部材
126aと、周辺掌部材110Cに向かって立設するガイド部材126bとが設けられて
おり、ガイド部材126aは周辺掌部材110Bに設けられたガイド孔114に填め込ま
れ、ガイド部材126bは周辺掌部材110Cに設けられたガイド孔114に填め込まれ
ている。
【0029】
周辺掌部材110Bと周辺掌部材110Dとの間に設けられた移動部材130について
も同様に、周辺掌部材110Dに向かって立設するガイド部材136a(図示は省略)と
、周辺掌部材110Bに向かって立設するガイド部材136bとが設けられており、ガイ
ド部材136aは周辺掌部材110Dに設けられたガイド孔114に填め込まれ、ガイド
部材136bは周辺掌部材110Bに設けられたガイド孔114に填め込まれている。周
辺掌部材110Cと周辺掌部材110Eとの間に設けられた移動部材140や、周辺掌部
材110Dと周辺掌部材110Eとの間に設けられた移動部材150についても同様であ
る。すなわち、移動部材140からは周辺掌部材110Cに向かうガイド部材146a(
図示は省略)と周辺掌部材110Eに向かうガイド部材146bとが立設されて、ガイド
部材146aは周辺掌部材110Cに設けられたガイド孔114に填め込まれ、ガイド部
材146bは周辺掌部材110Eに設けられたガイド孔114に填め込まれている。また
、移動部材150からは周辺掌部材110Eに向かうガイド部材156aと周辺掌部材1
10Dに向かうガイド部材156b(図示は省略)とが立設されて、ガイド部材156a
は周辺掌部材110Eに設けられたガイド孔114に填め込まれ、ガイド部材156bは
周辺掌部材110Dに設けられたガイド孔114に填め込まれている。
【0030】
また、周辺掌部材110B,110C,110D,110Eに設けられたガイド孔11
4は、それぞれのガイド孔114に填め込まれたガイド部材126a,126b,136
a,136b,146a,146b,156a,156bが、ガイド孔114の内部を摺
動可能で、尚且つ、がたつかないような大きさに設定されている。
【0031】
図5は、変形例のロボットハンド100の動作を示した説明図である。たとえば、中央
掌部材110Aに設けられた上側のピニオンギア112Aを、図面上で時計方向に回転さ
せると、周辺掌部材110Cと周辺掌部材110Dとの間隔が広がる。すると、周辺掌部
材110Cに填め込まれたガイド部材126b(移動部材120から周辺掌部材110C
に向けて立設されたガイド部材)およびガイド部材146a(移動部材140から周辺掌
部材110Cに向けて立設されたガイド部材)によって、移動部材120および移動部材
140が周辺掌部材110Cと同じ方向に移動する。このとき、移動部材120に立設さ
れたもう一方のガイド部材(ガイド部材126a)および移動部材140に立設されたも
う一方のガイド部材(ガイド部材146b)は、周辺掌部材110Cの移動とともに移動
部材120および移動部材140が移動する方向をガイドする。
【0032】
周辺掌部材110Dについても全く同様なことが成立する。すなわち、周辺掌部材11
0Dが移動すると、周辺掌部材110Dに填め込まれたガイド部材136a(移動部材1
30から周辺掌部材110Dに向けて立設されたガイド部材)およびガイド部材156b
(移動部材150から周辺掌部材110Dに向けて立設されたガイド部材)によって、移
動部材130および移動部材150が周辺掌部材110Dと同じ方向に移動する。このと
き、移動部材130に立設されたもう一方のガイド部材(ガイド部材136b)および移
動部材150に立設されたもう一方のガイド部材(ガイド部材156a)は、周辺掌部材
110Dの移動とともに移動部材130および移動部材150が移動する方向をガイドす
る。尚、上述した移動方向(周辺掌部材110Cと周辺掌部材110Dとが近付いたり遠
ざかったりする方向)を「X軸方向」と呼ぶことにする。
【0033】
中央掌部材110Aに設けられた下側のピニオンギア112Bを回転させた場合にも同
様に動作する。以下、簡単に説明すると、前述したように下側のピニオンギア112Bに
は、ラック114Bおよびラック114Eが噛み合っているので(図4参照)、周辺掌部
材110Bおよび周辺掌部材110Eがそれぞれ逆方向に移動する。周辺掌部材110B
には移動部材120からのガイド部材126aと、移動部材130からのガイド部材13
6bとが填め込まれているので、周辺掌部材110Bと同じ方向に移動部材120および
移動部材130も移動する。このとき、移動部材120に立設されたもう一方のガイド部
材(ガイド部材126b)および移動部材130に立設されたもう一方のガイド部材(ガ
イド部材136a)は、周辺掌部材110Bの移動とともに移動部材120および移動部
材130が移動する方向をガイドする。周辺掌部材110Eについても同様に、周辺掌部
材110Eの移動とともに移動部材140および移動部材150が移動する。このとき、
移動部材140から周辺掌部材110Cに向けて立設されたガイド部材146a、および
移動部材150から周辺掌部材110Dに向けて立設されたガイド部材156bは、移動
部材140および移動部材150の移動をガイドする。尚、上述した移動方向(周辺掌部
材110Bと周辺掌部材110Eとが近付いたり遠ざかったりする方向)を「Y軸方向」
と呼ぶことにする。
【0034】
以上のように、変形例のロボットハンド100では、移動部材120,130,140
,150をX軸方向およびY軸方向に移動させることが可能である。このため、それぞれ
の移動部材120,130,140,150に設けられた指部材122,132,142
,152の間隔を変更して、様々な大きさの対象物を把持することが可能となる。尚、上
述した変形例では、X軸方向が本願発明の「第1の所定軸方向」に対応し、Y軸方向が本
願発明の「第2の所定軸方向」に対応する。そして、周辺掌部材110Cおよび周辺掌部
材110Dが本願発明の「第1周辺掌部材」に対応し、周辺掌部材110Bおよび周辺掌
部材110Eが本願発明の「第2周辺掌部材」に対応する。
【0035】
そして、移動部材120,130,140,150には、X軸方向およびY軸方向にガ
イド部材が立設されており、移動部材120,130,140,150を一方の軸方向(
たとえばX軸方向)に動かす際には、その軸方向のガイド部材によってガイドされつつ、
他方の軸方向(たとえばY軸方向)のガイド部材に押されて移動する。そして、それぞれ
のガイド部材は、移動部材120,130,140,150から立設されているので、移
動部材120,130,140,150の移動とともにガイド部材も移動する。このため
、変形例のロボットハンド100においても、小さな対象物を把持しようとして周辺掌部
材110B,110C,110D,110Eを中央掌部材110Aに近づけると、ロボッ
トハンド100の大きさが小さくなる。その結果、指部材122が設けられた移動部材1
20、指部材132が設けられた移動部材130、指部材142が設けられた移動部材1
40、および指部材152が設けられた移動部材150を平行移動させて対象物を把持す
る方式でありながら、狭い作業スペースで小さな対象物を把持するような作業に対しても
、好適に用いることが可能となる。
【0036】
以上、各種実施例のロボットハンドについて説明したが、本願発明は上記すべての実施
例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様
で実施することが可能である。
【0037】
例えば、上述した実施例あるいは変形例のロボットハンド100を、ロボットアーム1
2の先端に、これらのロボットハンドを装着してロボット500を構成すれば、様々な対
象物に対して対応可能でありながら、狭い作業スペースで小さな対象物を把持する作業に
も好適に適用することが可能なロボット500を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
12…ロボットアーム、 100…ロボットハンド、 110…掌部材、
112…ピニオンギア、 114…ガイド孔、 114…ラック、
120…移動部材、 122…指部材、 124…ラック、
126…ガイド部材、 130…移動部材、 132…指部材
134…ラック、 136…ガイド部材、 140…移動部材、
142…指部材、 146a,b…ガイド部材、 150…移動部材、
152…指部材、 156a,b…ガイド部材、 500…ロボット、
900…ロボットハンド、 910…基台、 914…ガイド溝、
920…移動部材、 930…移動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離して設けられた指部材の間隔を変更することによって、対象物を把持するロボ
ットハンドであって、
前記指部材が立設された移動部材と、
前記移動部材を所定軸方向に移動させる移動機構が設けられた掌部材と、
前記移動部材から立設されて前記掌部材に対して摺動することにより、該移動部材の前
記所定軸方向への移動をガイドするガイド部材と
を備えるロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドであって、
前記掌部材は、
前記移動機構が設けられた中央掌部材と、
前記中央掌部材を中心として第1の所定軸方向に移動可能に設けられた第1周辺掌部
材と、
前記中央掌部材を中心として前記第1の所定軸方向に直交する第2の所定軸方向に移
動可能に設けられた第2周辺掌部材と、
を備え、
前記第1周辺掌部材と前記第2周辺掌部材との間には1つずつ前記移動部材が設けられ

各々の前記移動部材には少なくとも2本の前記ガイド部材が互いに直交する方向に立設
されて、一方の前記ガイド部材と前記第1周辺掌部材とが摺動し、他方の前記ガイド部材
と前記第2周辺掌部材とが摺動することによって、各々の該移動部材は前記第1の所定軸
方向および前記第2の所定軸方向への移動がガイドされており、
前記移動機構は、
前記第1周辺掌部材を前記第1の所定軸方向に移動させることによって、複数の前記
移動部材を該第1の所定軸方向に移動させ、
前記第2周辺掌部材を前記第2の所定軸方向に移動させることによって、複数の前記
移動部材を該第2の所定軸方向に移動させる機構であるロボットハンド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロボットハンドを搭載したロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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