ロボット出力の測定方法および制限装置
【課題】ロボットが所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得て、その限度を超える出力を制限することで、ロボットと人との共存、協調を図ることにある。
【解決手段】ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタTの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタTを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタTを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、前記エンドエフェクタTを旋回させるためだけの機械的仕事率を前記ロボットの出力とすることを特徴とする、ロボット出力の測定方法である。
【解決手段】ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタTの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタTを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタTを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、前記エンドエフェクタTを旋回させるためだけの機械的仕事率を前記ロボットの出力とすることを特徴とする、ロボット出力の測定方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの出力を測定する方法およびその方法を用いてロボットの出力を制限する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の産業用ロボットは、高速化され、人では為し得ない重量物の移動や組立、悪環境での作業等に使用されている。一方、ヒューマノイドロボットのような自律形ロボットも進歩してきている。
【0003】
それゆえ今後は、例えば特許文献1記載の双腕ロボットのように、人と共存、協調することが予定されるロボットが多くなると予想されるが、その時ロボットにどのような機能が求められるかは、未だ不明である。
【特許文献1】特開2005−238350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法的には産業用ロボットを定義付ける出力が定められているが、近い将来その出力は、人との共存、協調の観点から、より厳しい(低出力)方向に改定される可能性が高い。人と共存、協調できるようにロボットの出力を低め、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得るようにするためには、ロボットの出力をどのように捉えて最低限度を超える出力を制限するかを充分検討する必要がある。
【0005】
それゆえこの発明は、最低限度を超える出力を制限するための、ロボットの出力の測定方法を提供することを目的としている。
また、この発明は、上記の方法で測定したロボットの出力を制限する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のロボット出力の測定方法は、ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を、前記ロボットの出力とすることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明のロボット出力の制限装置は、ロボットの各関節を駆動する各電動機について、前記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求める出力測定手段と、前記各電動機について、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持する出力上限値保持手段と、前記各電動機について、測定した前記エンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度での前記ロボット出力とを、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、前記測定して角速度でのロボット出力が前記ロボット出力上限値を超える場合に、前記電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させる電動機電流値制限手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
上述したこの発明のロボット出力の測定方法によれば、ロボットの関節を駆動する電動機毎に、エンドエフェクタ(ツールまたは、ハンドおよびワーク)を、関節の作動範囲内でそのエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように、ロボットの旋回動作を行わせるので、そのエンドエフェクタの使用条件のうちで最も厳しい条件で動作させることになり、その動作について、関節内部の摩擦抵抗等に対する内部仕事率を含まない、エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めてロボットの出力とするので、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得ることができ、その限度を超える出力を制限することで、人との共存、協調を図ることができる。
【0009】
なお、この発明のロボット出力の測定方法においては、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、前記負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき負荷時電気的仕事率を求め、前記エンドエフェクタを外した無負荷状態で、前記旋回動作と同じ旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記無負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、前記無負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき無負荷時電気的仕事率を求め、前記負荷時電気的仕事率から前記無負荷時電気的仕事率を減じることで求めても良く、このようにすればエンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を容易に求めることができる。
【0010】
また、この発明のロボット出力の測定方法においては、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回中の前記エンドエフェクタの角速度を測定し、前記負荷旋回中に測定したエンドエフェクタの角速度と、あらかじめ測定した前記エンドエフェクタの旋回半径、質量および重力方向移動量と、重力加速度とから演算により求めても良く、このようにすればエンドエフェクタを外した無負荷状態での測定を行わなくてもエンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めることができる。
【0011】
そして、上述したこの発明のロボット出力の制限装置によれば、出力測定手段が、ロボットの各関節を駆動する各電動機について、上記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求め、その一方、出力上限値保持手段が、各電動機について、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持し、電動機電流値制限手段が、各電動機について、測定したエンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度でのロボット出力とを、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、測定した角速度でのロボット出力がロボット出力上限値を超える場合に、電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させるので、例えば角速度の大きい通常作業時のロボット出力上限値よりも、角速度の小さい始動時のロボット出力上限値を高く設定しておくことで、通常作業時はロボット出力を必要最小限に制限して、一緒に作業する人との干渉による障害の発生を防止し得るとともに、静止摩擦によって高出力が必要とされるが人との干渉による障害の発生の危険は少ない始動時はロボット出力の制限を緩めて、電動機を確実に始動させることができる。
【0012】
なお、この発明のロボット出力の制限装置においては、前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度の所定範囲毎に表として保持されていても良く、このようにすれば、簡単な処理で上限値を求めることができる。
【0013】
また、この発明のロボット出力の制限装置においては、前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度を変数とする関数として保持されていても良く、このようにすれば、上限値をきめ細かく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のロボット出力の測定方法の一実施例およびこの発明のロボット出力の制限装置の一実施例を適用する双腕ロボットの全体を示す斜視図、図2は、その双腕ロボットの全体を示す正面図、図3は上記双腕ロボットの側面図、図4は、上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図5は、上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図6は、上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図7は、上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図8は、上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図9は、上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図10は、上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、上記双腕ロボットは、胴体1と、その胴体1のロボット自身から見て左右側方(図2,4,5では右側及び左側)に位置する二本の腕3とを具えるとともに、胴体1の上端部に、例えば視覚センサを搭載した図示しない頭を支持する首関節5を具えており、その首関節5は、頭を軸線P1周りに前後に傾動させる首ピッチ軸と、その頭を軸線Y1周りに左右に回動させる首ヨー軸とを可動軸として有している。またこの双腕ロボットは、下端部が床面に固定されて上端部で胴体1を支持する円柱状の支持脚7を具えるとともに、その支持脚7の上端部と胴体1の下端部との間に腰関節9を具えており、その腰関節9は、胴体1を支持部材7に対して軸線Y1周りに左右に回動させる腰ヨー軸9aを可動軸として有している。
【0016】
さらにこの双腕ロボットは、胴体1と各腕3の上腕11との間の肩関節13と、各腕3の上腕11と下腕15との間の肘関節17と、各腕3の下腕15とここでは図示しない手との間の手首関節19と、をそれぞれ具えており、これらの関節の可動軸は、下記の如く各軸線周りに回動もしくは傾動するものである。
【0017】
すなわち、肩関節13は、図2に示すように、胴体1の左右の側面に設けられた略コ字状をなすブラケット23に挟まれて配置され、胴体1に対し腕3全体を軸線Y2周りに相対的に左右に回動させる肩ヨー軸13aと、その肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交して軸線P2を配置され、胴体1に対し腕3全体をその軸線P2周りに相対的に前後に傾動させる肩ピッチ軸13bとを可動軸として有している。ここでブラケット23は、胴体1に対して斜め下方に15度傾いて配置されていることから、各肩ヨー軸13aの軸線Y2は、図2に示すように、胴体1の上下方向に延在する中心線である上記軸線Y1に対して胴体1側に15度傾いて、下方へ行くほど胴体1に近くなるように延在しており、それに伴い、各肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交する各肩ピッチ軸13bの軸線P2も、床面に対して15度傾いている。そして腕3の上腕11は、肘関節17に近い部分ほど胴体1に近くなるように傾いて延在している。
【0018】
さらに、図1に示すように、各肘関節17は、上腕11に対し下腕15を、軸線P2に平行な軸線P3周りに上下に傾動させる肘ピッチ軸17aを可動軸として有し、また各手首関節19は、下腕15に対してエンドエフェクタの一例としての図4〜図10に示すツールT(図1〜図3では省略)を軸線P4周りに相対的に上下に傾動させる手首ピッチ軸19aと、そのツールTを軸線P4に直交する軸線R周りに相対的に左右に回動させる手首ロール軸19bと、下腕15に対して手首ピッチ軸19aと手首ロール軸19bとを軸線Y3周りにねじる手首ヨー軸19cとを可動軸として有しており、結果として各腕は、合計6つの可動軸、すなわち6自由度を有し、これら可動軸の軸配置により、この二本の腕3は特異点がなく自由な姿勢を作ることが可能である。なお、図4〜図10中、符号TCPはツールセンタポイント、TPはツールセンタポイント旋回軌跡をそれぞれ示す。
【0019】
さらに、この双腕ロボットは、各関節の駆動用電動機の作動を制御する図示しない通常の制御装置を具えており、その制御装置は、上述した実施例のロボットの出力の測定方法を実施するとともに、上述した実施例のロボットの出力の制御装置としても機能する。
【0020】
この双腕ロボットの出力を測定する上記実施例のロボット出力の測定方法を以下に説明する。この測定は、上記双腕ロボットに搭載される電動機の一つ一つについて行うが、ここではその中の一つを例に取って示す。ロボットの仕事率として一番厳しい条件は、対象となる電動機が作用する関節軸の作動面(ツールTの旋回軌跡円を含む平面)の延在方向が重力方向と一致し、ツールTの重心位置が関節の軸線から最も遠い(旋回半径が最も大きい)位置にある場合である。作動面の延在方向が重力方向に一致しない場合でも、延在方向が最も重力方向に向く作動面を測定面に選ぶ。作動面が水平面に限られる場合はこれを測定面とする。
【0021】
測定する項目は、所定のサンプリングタイム毎における、
(1)電動機電流値
(2)電動機速度信号(ロータリーエンコーダーパルス数など)
である。電動機の抵抗値、ツールTの重心(便宜上ここではツールセンタポイントとする)までの旋回半径、およびツールTの質量(設計質量)については、あらかじめ測定しておく。測定の際は、関節の作動範囲内でエンドエフェクタの始点と終点の位置座標を決め、関節の作動範囲内で重力方向の最も低い位置に定めた始点から始め、最も高い位置に定めた終点で終わるようにして、制御し得る最大速度が途中で出るようツールTを加速および減速させて双腕ロボットに旋回動作を行わせる。
【0022】
ツールTの軌跡は円弧であるから、測定した電動機速度信号からツールTの円弧上の位置が判明する。従って、サンプリングタイム毎のツールTの円弧上の移動量と重力方向移動量が算出される。また、ツールTの運動エネルギーは速度信号、ツールTの旋回半径および質量により算出される。関係式にすると、角速度ω(rad/sec)、旋回半径r(m)、ツールTの質量m(kg)、重力方向移動量Δh(m)、重力加速度g(m/sec2)、速度V(m/sec)、機械的仕事量E(J)、機械的仕事率W(W)とすると、
【数1】
で表される。
一方、電気的仕事率We(W)は、電動機の抵抗値R(Ω)、電動機の電流I(A)とすると、
We=RI2
となる。なお、電動機の駆動のためのPWM(パルス幅変調)に印加される電圧は変わらないものとする。
【0023】
先に示した機械的仕事率Wと電気的仕事率Weとの間には差がある。それは電気的仕事率Weは電動機に入力された仕事率であり、機械的仕事率Wはロボットが外界に作用した仕事率であって、その機械的仕事率Wにロボット内部で使われた仕事率を加えたものが電気的仕事率Weになるからである。
【0024】
上記のように演算でツールTに与えた機械的仕事率Wを得る代わりに、電気的仕事率Weからロボット内部で使われた仕事率を分離してツールTに与えた機械的仕事率Wを得るために、例えば測定を、無負荷試験(ツールTを付けない試験)と負荷試験(設計質量のツールTを付けた試験)とに分けて行っても良い。無負荷試験がロボット内部で使われた仕事率であり、単純に負荷試験の電動機出力から無負荷試験による電動機出力を差し引いたものを、ロボットによってツールTに作用した機械的仕事のために使われた機械的仕事率Wとする。このツールT(エンドエフェクタ)に与えた機械的仕事率Wを、本願発明者はロボットの出力とする。この機械的仕事率Wを電気的仕事率Weで除すれば、ロボットの機械的効率となる。
【0025】
但し、負荷試験の電動機出力が連続定格領域を超える場合は、その電動機出力が滞留時間を規定することにより許容される瞬間的なものならその電動機出力を瞬時最大電動機出力とするとともに、試験速度を下げて、電動機の連続定格領域に収まる電動機出力を連続定格最大電動機出力として求める。
【0026】
無負荷試験の機械的仕事率を求めるためには、その関節と同じ減速機構を用いて等価慣性・質量を求めても良い。例えば、同じ制御系、同じベルト・プーリ−、ハーモニックドライブ(登録商標)を使って、旋回半径と質量とを無負荷試験の電動機電流に合わせることにより、同定させることが考えられる。また、3次元CAD(コンピュータ支援設計)の計算機能を利用して算出することもできる。
【0027】
上記の測定により、ロボットの各関節軸の電動機について、ツールTの設計負荷に対する角速度毎の電流値が得られる(時間的に変化する値であり、定常値ではない)。こうしてロボットに搭載する全電動機について外界に作用した機械的仕事率と電動機入力(電流値)とが関係付けられる。
【0028】
技術が進歩し、機械要素部品や電気的部品の効率は向上している。しかし、ロボット内部で消費される仕事率はいまだ大きく、ロボットを小型・軽量化して人と共存、協調しようとするには高い壁となっている。それゆえこの発明は、上述のようにロボットが外界に作用するために使った仕事率をロボットの出力と捉えることを提案する。
【0029】
次に、上記実施例のロボット出力の制限装置について以下に説明する。ロボットの出力を電動機出力の総和または外界に作用するために使われた仕事率の総和(先に定義したロボットの出力)のどちらに捉えるとしても、ある値に制限をかけようとする時、搭載する電動機の角速度と電動機電流との関係が先の測定により判明しているので、各電動機に制限電流値を設定することができるが、この実施例では、ロボットの出力を外界に作用するために使われた仕事率の総和と捉えて、各電動機に制限電流値を設定する。余力のある電動機については、定格出力が得られる電流値未満の制限電流値としても良い。
【0030】
制限電流値は二種類とし、一種類は先に測定で求めた瞬時最大電動機出力に対応させて滞留時間を規定して設定した瞬時制限電流とし、もう一種類は先に測定で求めた連続定格最大電動機出力に対応させて設定した連続定格制限電流とする。角速度に対して電流制限値を定めるのは、起動電流のような大きい電流を許容するためである。起動の際は電流(トルク)は大きくても角速度は小さく、電動機効率も低いためロボット出力は小さいからである。
【0031】
上記の連続定格制限電流により、ロボットが外界に作用する仕事率が規定される。この制限方法によってロボット出力が所期した出力の総和に収まらなくなる場合には、ロボットの動作速度を下げることによって所期した出力の総和に収めるようにする。
【0032】
従って、この実施例のロボット出力の制限装置は、電動機速度信号と電動機電流とを入力信号とし、ある電動機速度において電動機電流値が制限電流値より数%(例えば3%)下の値を超えようとしたとき、直ちに電流を抑制するとともに警報を出す。例えば、スウィッチング回路にて可変抵抗器や抵抗を電動機回路に直列に投入する等の作動機器を設けて電動機電流を抑制しても良く、あるいは、ロボット本体の制御系(PWMの制御回路)に抑制信号を発信し、ロボットの制御系がこの抑制信号を受けて、PWMの制御信号を抑制信号が消えるまで現値から減少させるようにしても良い。このようにしても制限電流値を超える場合には、電動機の遮断回路を働かせるとともに、作業者に報知するようにしても良い。
【0033】
ここでは、ロボット本体の制御装置が、常に各電動機について速度値に対する制限電流値を超えない電動機電流の指示値を出すことを前提としている。制限電流値は、この実施例の制限装置が信号として発信し、ロボット本体の制御装置が読み取っても良いし、ロボット本体に記憶させても良い。また、電動機速度信号ひいては関節角速度に対する一次および二次の制限電流値の関係は、一定速度範囲毎の制限電流値を表した表(チャート)の形で保持しても良いし、関係式の形で保持しても良い。
【0034】
この実施例の制限装置は、ロボット本体の制御装置から独立したものとする。但し、入力信号は共有するものとするが、必要により別途入力信号を設けても良い。また、この実施例の制限装置は、関節角速度と制限電流値との関係の他、ロボットに搭載する全電動機の先の負荷試験および無負荷試験での速度信号と電動機電流値とを記憶する。通常運転ではこの電動機電流値を超えることはないはずであるから、駆動系の異常を検出する目的でこの電動機電流値を用いることができる。無負荷運転か負荷運転かは、例えばロボット本体の制御装置より出力される信号によって判別することができる。
【0035】
表1は、上記双腕ロボットの左手の各関節軸と腰軸とについて、ツールセンタに作用する出力を測定し解析した結果を、電動機の仕様とともに示すものである。この測定は、関節角と電動機電流とを5msec毎に記録することで行った。ツールセンタの出力(運動と位置、仕事率)は、測定した各関節角と、各関節軸からツールセンタポイント(TCP)までの距離(長さ)とから、前述の計算式によって演算で算出した。ここで、SYは肩ヨー軸、SPは肩ピッチ軸、EPは肘ピッチ軸、WYは手首ヨー軸、WPは手首ピッチ軸、WRは手首ロール軸、CYは腰ヨー軸(正回転と逆回転とで測定)を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
図11は、各関節軸の作動角(角変位)と経過時間との関係を示している。関節軸の動作制御はサインカーブでの加減速を使用しており、この図からも、最高速度はある瞬間のみとなるのが判る。台形速度制御を行った場合は、今回の測定とは異なるものとなる。図12〜図19は、各関節軸についての関節角と、電動機入力(負荷1kg無しと有りの場合を図中符号a,bでそれぞれ示す)、ツールセンタポイント(TCP)実出力(図中符号cで示す)、入出力効率(図中符号dで示す)との関係を示している。TCP実出力については、速度変動に起因する振動が生じているため、6次式にて平均化したものも示す(図中符号eで示す)。この式の係数を図の下に示す。電動機電流については比較的変動が大きいため、TCP実出力を多項式で均して見るのは妥当性がある。
【0038】
図20〜図27は、各関節軸の関節角速度と、電動機入力、TCP実出力、電動機電流との関係を示している。ここでの関節角速度とTCP実出力、電動機電流との相関性を上記表1に示す。作動面が水平面に近づくと相関性は弱くなる。強い相関性がある場合は、TCP実出力と電動機電流は、関節角速度に対して傾きの傾向が良い一致関係にあることを表している。強い負の相関の場合は逆比例の傾向にある。なお、無負荷時電動機入力にヒステリシスがあるのは、上側の線が加速時、下側の線が減速時を表すからである。
【0039】
今回の測定では、腰軸の正回転と逆回転とで差異が生じたものの、片腕と腰軸による各関節の最大TCP実出力の総和は、39.5Wとなった。ISOではTCP出力を80W以下に制限しようとしており、これに対応するとすれば、各関節軸のTCP最大実出力と電動機電流との関係が角速度について判っているので、TCP実出力を制限するには電動機電流を制限すれば良い。今回の関節軸構成と電動機においては、双腕ロボットのTCP出力80Wの規制に対する余裕は1.087であり、各関節の最大電動機電流を1.087倍して制限すれば実現される。すなわち、今回行なった計測を用いることによって各関節軸の電動機電流値を制限すれば、TCP出力80Wの規制をクリアすることができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、上記実施例は脚のない固定式の双腕型ロボットに適用したが、本発明の適用対象のロボットは、脚を持つ歩行型ロボットでも良い。また、上記実施例ではロボット出力を負荷時の電動機電流値とハンド(エンドエフェクタ)の仕様とに基づき演算で求めたが、負荷時と無負荷時との電気的仕事率の差に基づいて求めても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくして本発明のロボット出力の測定方法によれば、エンドエフェクタの使用条件のうちで最も厳しい条件で動作させることになり、その動作について、関節内部の摩擦抵抗等に対する内部仕事率を含まない、エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めてロボットの出力とするので、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得ることができ、その限度を超える出力を制限することで、人との共存、協調を図ることができる。
【0042】
そして、本発明のロボット出力の制限装置によれば、例えば角速度の大きい通常作業時のロボット出力上限値よりも、角速度の小さい始動時のロボット出力上限値を高く設定しておくことで、通常作業時はロボット出力を必要最小限に制限して、一緒に作業する人との干渉による障害の発生を防止し得るとともに、静止摩擦によって高出力が必要とされるが人との干渉による障害の発生の危険は少ない始動時はロボット出力の制限を緩めて、確実に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明のロボット出力の測定方法の一実施例およびこの発明のロボット出力の制限装置の一実施例を適用する双腕ロボットの全体を示す斜視図である。
【図2】上記双腕ロボットの全体を示す正面図である。
【図3】上記双腕ロボットの側面図である。
【図4】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図5】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図6】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図7】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図8】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図9】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図10】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図11】上記双腕ロボットの各軸の始点から終点までの旋回動作の経過時間と関節作動角との関係を示す関係線図である。
【図12】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図13】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図14】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図15】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図16】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図17】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図18】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(正回転)における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図19】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(逆回転)における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図20】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図21】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図22】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図23】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図24】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図25】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図26】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(正回転)における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図27】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(逆回転)における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【符号の説明】
【0044】
1 胴体
3 腕
5 頭
7 支持脚
9 腰
9a 腰ヨー軸
11 上腕
13 肩関節
13a 肩ヨー軸
13b 肩ピッチ軸
15 下腕
17 肘関節
17a 肘ピッチ軸
19 手首関節
19a 手首ピッチ軸
19b 手首ロール軸
19c 手首ヨー軸
23 ブラケット
T ツール
TCP ツールセンタポイント
TP ツールセンタポイント旋回軌跡
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの出力を測定する方法およびその方法を用いてロボットの出力を制限する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の産業用ロボットは、高速化され、人では為し得ない重量物の移動や組立、悪環境での作業等に使用されている。一方、ヒューマノイドロボットのような自律形ロボットも進歩してきている。
【0003】
それゆえ今後は、例えば特許文献1記載の双腕ロボットのように、人と共存、協調することが予定されるロボットが多くなると予想されるが、その時ロボットにどのような機能が求められるかは、未だ不明である。
【特許文献1】特開2005−238350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法的には産業用ロボットを定義付ける出力が定められているが、近い将来その出力は、人との共存、協調の観点から、より厳しい(低出力)方向に改定される可能性が高い。人と共存、協調できるようにロボットの出力を低め、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得るようにするためには、ロボットの出力をどのように捉えて最低限度を超える出力を制限するかを充分検討する必要がある。
【0005】
それゆえこの発明は、最低限度を超える出力を制限するための、ロボットの出力の測定方法を提供することを目的としている。
また、この発明は、上記の方法で測定したロボットの出力を制限する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のロボット出力の測定方法は、ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を、前記ロボットの出力とすることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明のロボット出力の制限装置は、ロボットの各関節を駆動する各電動機について、前記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求める出力測定手段と、前記各電動機について、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持する出力上限値保持手段と、前記各電動機について、測定した前記エンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度での前記ロボット出力とを、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、前記測定して角速度でのロボット出力が前記ロボット出力上限値を超える場合に、前記電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させる電動機電流値制限手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
上述したこの発明のロボット出力の測定方法によれば、ロボットの関節を駆動する電動機毎に、エンドエフェクタ(ツールまたは、ハンドおよびワーク)を、関節の作動範囲内でそのエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように、ロボットの旋回動作を行わせるので、そのエンドエフェクタの使用条件のうちで最も厳しい条件で動作させることになり、その動作について、関節内部の摩擦抵抗等に対する内部仕事率を含まない、エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めてロボットの出力とするので、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得ることができ、その限度を超える出力を制限することで、人との共存、協調を図ることができる。
【0009】
なお、この発明のロボット出力の測定方法においては、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、前記負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき負荷時電気的仕事率を求め、前記エンドエフェクタを外した無負荷状態で、前記旋回動作と同じ旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記無負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、前記無負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき無負荷時電気的仕事率を求め、前記負荷時電気的仕事率から前記無負荷時電気的仕事率を減じることで求めても良く、このようにすればエンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を容易に求めることができる。
【0010】
また、この発明のロボット出力の測定方法においては、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回中の前記エンドエフェクタの角速度を測定し、前記負荷旋回中に測定したエンドエフェクタの角速度と、あらかじめ測定した前記エンドエフェクタの旋回半径、質量および重力方向移動量と、重力加速度とから演算により求めても良く、このようにすればエンドエフェクタを外した無負荷状態での測定を行わなくてもエンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めることができる。
【0011】
そして、上述したこの発明のロボット出力の制限装置によれば、出力測定手段が、ロボットの各関節を駆動する各電動機について、上記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求め、その一方、出力上限値保持手段が、各電動機について、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持し、電動機電流値制限手段が、各電動機について、測定したエンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度でのロボット出力とを、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、測定した角速度でのロボット出力がロボット出力上限値を超える場合に、電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させるので、例えば角速度の大きい通常作業時のロボット出力上限値よりも、角速度の小さい始動時のロボット出力上限値を高く設定しておくことで、通常作業時はロボット出力を必要最小限に制限して、一緒に作業する人との干渉による障害の発生を防止し得るとともに、静止摩擦によって高出力が必要とされるが人との干渉による障害の発生の危険は少ない始動時はロボット出力の制限を緩めて、電動機を確実に始動させることができる。
【0012】
なお、この発明のロボット出力の制限装置においては、前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度の所定範囲毎に表として保持されていても良く、このようにすれば、簡単な処理で上限値を求めることができる。
【0013】
また、この発明のロボット出力の制限装置においては、前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度を変数とする関数として保持されていても良く、このようにすれば、上限値をきめ細かく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のロボット出力の測定方法の一実施例およびこの発明のロボット出力の制限装置の一実施例を適用する双腕ロボットの全体を示す斜視図、図2は、その双腕ロボットの全体を示す正面図、図3は上記双腕ロボットの側面図、図4は、上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図5は、上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図6は、上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図7は、上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図8は、上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図9は、上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図、図10は、上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、上記双腕ロボットは、胴体1と、その胴体1のロボット自身から見て左右側方(図2,4,5では右側及び左側)に位置する二本の腕3とを具えるとともに、胴体1の上端部に、例えば視覚センサを搭載した図示しない頭を支持する首関節5を具えており、その首関節5は、頭を軸線P1周りに前後に傾動させる首ピッチ軸と、その頭を軸線Y1周りに左右に回動させる首ヨー軸とを可動軸として有している。またこの双腕ロボットは、下端部が床面に固定されて上端部で胴体1を支持する円柱状の支持脚7を具えるとともに、その支持脚7の上端部と胴体1の下端部との間に腰関節9を具えており、その腰関節9は、胴体1を支持部材7に対して軸線Y1周りに左右に回動させる腰ヨー軸9aを可動軸として有している。
【0016】
さらにこの双腕ロボットは、胴体1と各腕3の上腕11との間の肩関節13と、各腕3の上腕11と下腕15との間の肘関節17と、各腕3の下腕15とここでは図示しない手との間の手首関節19と、をそれぞれ具えており、これらの関節の可動軸は、下記の如く各軸線周りに回動もしくは傾動するものである。
【0017】
すなわち、肩関節13は、図2に示すように、胴体1の左右の側面に設けられた略コ字状をなすブラケット23に挟まれて配置され、胴体1に対し腕3全体を軸線Y2周りに相対的に左右に回動させる肩ヨー軸13aと、その肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交して軸線P2を配置され、胴体1に対し腕3全体をその軸線P2周りに相対的に前後に傾動させる肩ピッチ軸13bとを可動軸として有している。ここでブラケット23は、胴体1に対して斜め下方に15度傾いて配置されていることから、各肩ヨー軸13aの軸線Y2は、図2に示すように、胴体1の上下方向に延在する中心線である上記軸線Y1に対して胴体1側に15度傾いて、下方へ行くほど胴体1に近くなるように延在しており、それに伴い、各肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交する各肩ピッチ軸13bの軸線P2も、床面に対して15度傾いている。そして腕3の上腕11は、肘関節17に近い部分ほど胴体1に近くなるように傾いて延在している。
【0018】
さらに、図1に示すように、各肘関節17は、上腕11に対し下腕15を、軸線P2に平行な軸線P3周りに上下に傾動させる肘ピッチ軸17aを可動軸として有し、また各手首関節19は、下腕15に対してエンドエフェクタの一例としての図4〜図10に示すツールT(図1〜図3では省略)を軸線P4周りに相対的に上下に傾動させる手首ピッチ軸19aと、そのツールTを軸線P4に直交する軸線R周りに相対的に左右に回動させる手首ロール軸19bと、下腕15に対して手首ピッチ軸19aと手首ロール軸19bとを軸線Y3周りにねじる手首ヨー軸19cとを可動軸として有しており、結果として各腕は、合計6つの可動軸、すなわち6自由度を有し、これら可動軸の軸配置により、この二本の腕3は特異点がなく自由な姿勢を作ることが可能である。なお、図4〜図10中、符号TCPはツールセンタポイント、TPはツールセンタポイント旋回軌跡をそれぞれ示す。
【0019】
さらに、この双腕ロボットは、各関節の駆動用電動機の作動を制御する図示しない通常の制御装置を具えており、その制御装置は、上述した実施例のロボットの出力の測定方法を実施するとともに、上述した実施例のロボットの出力の制御装置としても機能する。
【0020】
この双腕ロボットの出力を測定する上記実施例のロボット出力の測定方法を以下に説明する。この測定は、上記双腕ロボットに搭載される電動機の一つ一つについて行うが、ここではその中の一つを例に取って示す。ロボットの仕事率として一番厳しい条件は、対象となる電動機が作用する関節軸の作動面(ツールTの旋回軌跡円を含む平面)の延在方向が重力方向と一致し、ツールTの重心位置が関節の軸線から最も遠い(旋回半径が最も大きい)位置にある場合である。作動面の延在方向が重力方向に一致しない場合でも、延在方向が最も重力方向に向く作動面を測定面に選ぶ。作動面が水平面に限られる場合はこれを測定面とする。
【0021】
測定する項目は、所定のサンプリングタイム毎における、
(1)電動機電流値
(2)電動機速度信号(ロータリーエンコーダーパルス数など)
である。電動機の抵抗値、ツールTの重心(便宜上ここではツールセンタポイントとする)までの旋回半径、およびツールTの質量(設計質量)については、あらかじめ測定しておく。測定の際は、関節の作動範囲内でエンドエフェクタの始点と終点の位置座標を決め、関節の作動範囲内で重力方向の最も低い位置に定めた始点から始め、最も高い位置に定めた終点で終わるようにして、制御し得る最大速度が途中で出るようツールTを加速および減速させて双腕ロボットに旋回動作を行わせる。
【0022】
ツールTの軌跡は円弧であるから、測定した電動機速度信号からツールTの円弧上の位置が判明する。従って、サンプリングタイム毎のツールTの円弧上の移動量と重力方向移動量が算出される。また、ツールTの運動エネルギーは速度信号、ツールTの旋回半径および質量により算出される。関係式にすると、角速度ω(rad/sec)、旋回半径r(m)、ツールTの質量m(kg)、重力方向移動量Δh(m)、重力加速度g(m/sec2)、速度V(m/sec)、機械的仕事量E(J)、機械的仕事率W(W)とすると、
【数1】
で表される。
一方、電気的仕事率We(W)は、電動機の抵抗値R(Ω)、電動機の電流I(A)とすると、
We=RI2
となる。なお、電動機の駆動のためのPWM(パルス幅変調)に印加される電圧は変わらないものとする。
【0023】
先に示した機械的仕事率Wと電気的仕事率Weとの間には差がある。それは電気的仕事率Weは電動機に入力された仕事率であり、機械的仕事率Wはロボットが外界に作用した仕事率であって、その機械的仕事率Wにロボット内部で使われた仕事率を加えたものが電気的仕事率Weになるからである。
【0024】
上記のように演算でツールTに与えた機械的仕事率Wを得る代わりに、電気的仕事率Weからロボット内部で使われた仕事率を分離してツールTに与えた機械的仕事率Wを得るために、例えば測定を、無負荷試験(ツールTを付けない試験)と負荷試験(設計質量のツールTを付けた試験)とに分けて行っても良い。無負荷試験がロボット内部で使われた仕事率であり、単純に負荷試験の電動機出力から無負荷試験による電動機出力を差し引いたものを、ロボットによってツールTに作用した機械的仕事のために使われた機械的仕事率Wとする。このツールT(エンドエフェクタ)に与えた機械的仕事率Wを、本願発明者はロボットの出力とする。この機械的仕事率Wを電気的仕事率Weで除すれば、ロボットの機械的効率となる。
【0025】
但し、負荷試験の電動機出力が連続定格領域を超える場合は、その電動機出力が滞留時間を規定することにより許容される瞬間的なものならその電動機出力を瞬時最大電動機出力とするとともに、試験速度を下げて、電動機の連続定格領域に収まる電動機出力を連続定格最大電動機出力として求める。
【0026】
無負荷試験の機械的仕事率を求めるためには、その関節と同じ減速機構を用いて等価慣性・質量を求めても良い。例えば、同じ制御系、同じベルト・プーリ−、ハーモニックドライブ(登録商標)を使って、旋回半径と質量とを無負荷試験の電動機電流に合わせることにより、同定させることが考えられる。また、3次元CAD(コンピュータ支援設計)の計算機能を利用して算出することもできる。
【0027】
上記の測定により、ロボットの各関節軸の電動機について、ツールTの設計負荷に対する角速度毎の電流値が得られる(時間的に変化する値であり、定常値ではない)。こうしてロボットに搭載する全電動機について外界に作用した機械的仕事率と電動機入力(電流値)とが関係付けられる。
【0028】
技術が進歩し、機械要素部品や電気的部品の効率は向上している。しかし、ロボット内部で消費される仕事率はいまだ大きく、ロボットを小型・軽量化して人と共存、協調しようとするには高い壁となっている。それゆえこの発明は、上述のようにロボットが外界に作用するために使った仕事率をロボットの出力と捉えることを提案する。
【0029】
次に、上記実施例のロボット出力の制限装置について以下に説明する。ロボットの出力を電動機出力の総和または外界に作用するために使われた仕事率の総和(先に定義したロボットの出力)のどちらに捉えるとしても、ある値に制限をかけようとする時、搭載する電動機の角速度と電動機電流との関係が先の測定により判明しているので、各電動機に制限電流値を設定することができるが、この実施例では、ロボットの出力を外界に作用するために使われた仕事率の総和と捉えて、各電動機に制限電流値を設定する。余力のある電動機については、定格出力が得られる電流値未満の制限電流値としても良い。
【0030】
制限電流値は二種類とし、一種類は先に測定で求めた瞬時最大電動機出力に対応させて滞留時間を規定して設定した瞬時制限電流とし、もう一種類は先に測定で求めた連続定格最大電動機出力に対応させて設定した連続定格制限電流とする。角速度に対して電流制限値を定めるのは、起動電流のような大きい電流を許容するためである。起動の際は電流(トルク)は大きくても角速度は小さく、電動機効率も低いためロボット出力は小さいからである。
【0031】
上記の連続定格制限電流により、ロボットが外界に作用する仕事率が規定される。この制限方法によってロボット出力が所期した出力の総和に収まらなくなる場合には、ロボットの動作速度を下げることによって所期した出力の総和に収めるようにする。
【0032】
従って、この実施例のロボット出力の制限装置は、電動機速度信号と電動機電流とを入力信号とし、ある電動機速度において電動機電流値が制限電流値より数%(例えば3%)下の値を超えようとしたとき、直ちに電流を抑制するとともに警報を出す。例えば、スウィッチング回路にて可変抵抗器や抵抗を電動機回路に直列に投入する等の作動機器を設けて電動機電流を抑制しても良く、あるいは、ロボット本体の制御系(PWMの制御回路)に抑制信号を発信し、ロボットの制御系がこの抑制信号を受けて、PWMの制御信号を抑制信号が消えるまで現値から減少させるようにしても良い。このようにしても制限電流値を超える場合には、電動機の遮断回路を働かせるとともに、作業者に報知するようにしても良い。
【0033】
ここでは、ロボット本体の制御装置が、常に各電動機について速度値に対する制限電流値を超えない電動機電流の指示値を出すことを前提としている。制限電流値は、この実施例の制限装置が信号として発信し、ロボット本体の制御装置が読み取っても良いし、ロボット本体に記憶させても良い。また、電動機速度信号ひいては関節角速度に対する一次および二次の制限電流値の関係は、一定速度範囲毎の制限電流値を表した表(チャート)の形で保持しても良いし、関係式の形で保持しても良い。
【0034】
この実施例の制限装置は、ロボット本体の制御装置から独立したものとする。但し、入力信号は共有するものとするが、必要により別途入力信号を設けても良い。また、この実施例の制限装置は、関節角速度と制限電流値との関係の他、ロボットに搭載する全電動機の先の負荷試験および無負荷試験での速度信号と電動機電流値とを記憶する。通常運転ではこの電動機電流値を超えることはないはずであるから、駆動系の異常を検出する目的でこの電動機電流値を用いることができる。無負荷運転か負荷運転かは、例えばロボット本体の制御装置より出力される信号によって判別することができる。
【0035】
表1は、上記双腕ロボットの左手の各関節軸と腰軸とについて、ツールセンタに作用する出力を測定し解析した結果を、電動機の仕様とともに示すものである。この測定は、関節角と電動機電流とを5msec毎に記録することで行った。ツールセンタの出力(運動と位置、仕事率)は、測定した各関節角と、各関節軸からツールセンタポイント(TCP)までの距離(長さ)とから、前述の計算式によって演算で算出した。ここで、SYは肩ヨー軸、SPは肩ピッチ軸、EPは肘ピッチ軸、WYは手首ヨー軸、WPは手首ピッチ軸、WRは手首ロール軸、CYは腰ヨー軸(正回転と逆回転とで測定)を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
図11は、各関節軸の作動角(角変位)と経過時間との関係を示している。関節軸の動作制御はサインカーブでの加減速を使用しており、この図からも、最高速度はある瞬間のみとなるのが判る。台形速度制御を行った場合は、今回の測定とは異なるものとなる。図12〜図19は、各関節軸についての関節角と、電動機入力(負荷1kg無しと有りの場合を図中符号a,bでそれぞれ示す)、ツールセンタポイント(TCP)実出力(図中符号cで示す)、入出力効率(図中符号dで示す)との関係を示している。TCP実出力については、速度変動に起因する振動が生じているため、6次式にて平均化したものも示す(図中符号eで示す)。この式の係数を図の下に示す。電動機電流については比較的変動が大きいため、TCP実出力を多項式で均して見るのは妥当性がある。
【0038】
図20〜図27は、各関節軸の関節角速度と、電動機入力、TCP実出力、電動機電流との関係を示している。ここでの関節角速度とTCP実出力、電動機電流との相関性を上記表1に示す。作動面が水平面に近づくと相関性は弱くなる。強い相関性がある場合は、TCP実出力と電動機電流は、関節角速度に対して傾きの傾向が良い一致関係にあることを表している。強い負の相関の場合は逆比例の傾向にある。なお、無負荷時電動機入力にヒステリシスがあるのは、上側の線が加速時、下側の線が減速時を表すからである。
【0039】
今回の測定では、腰軸の正回転と逆回転とで差異が生じたものの、片腕と腰軸による各関節の最大TCP実出力の総和は、39.5Wとなった。ISOではTCP出力を80W以下に制限しようとしており、これに対応するとすれば、各関節軸のTCP最大実出力と電動機電流との関係が角速度について判っているので、TCP実出力を制限するには電動機電流を制限すれば良い。今回の関節軸構成と電動機においては、双腕ロボットのTCP出力80Wの規制に対する余裕は1.087であり、各関節の最大電動機電流を1.087倍して制限すれば実現される。すなわち、今回行なった計測を用いることによって各関節軸の電動機電流値を制限すれば、TCP出力80Wの規制をクリアすることができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、上記実施例は脚のない固定式の双腕型ロボットに適用したが、本発明の適用対象のロボットは、脚を持つ歩行型ロボットでも良い。また、上記実施例ではロボット出力を負荷時の電動機電流値とハンド(エンドエフェクタ)の仕様とに基づき演算で求めたが、負荷時と無負荷時との電気的仕事率の差に基づいて求めても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくして本発明のロボット出力の測定方法によれば、エンドエフェクタの使用条件のうちで最も厳しい条件で動作させることになり、その動作について、関節内部の摩擦抵抗等に対する内部仕事率を含まない、エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を求めてロボットの出力とするので、所定の作業を完遂するのに最低限度必要な出力を得ることができ、その限度を超える出力を制限することで、人との共存、協調を図ることができる。
【0042】
そして、本発明のロボット出力の制限装置によれば、例えば角速度の大きい通常作業時のロボット出力上限値よりも、角速度の小さい始動時のロボット出力上限値を高く設定しておくことで、通常作業時はロボット出力を必要最小限に制限して、一緒に作業する人との干渉による障害の発生を防止し得るとともに、静止摩擦によって高出力が必要とされるが人との干渉による障害の発生の危険は少ない始動時はロボット出力の制限を緩めて、確実に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明のロボット出力の測定方法の一実施例およびこの発明のロボット出力の制限装置の一実施例を適用する双腕ロボットの全体を示す斜視図である。
【図2】上記双腕ロボットの全体を示す正面図である。
【図3】上記双腕ロボットの側面図である。
【図4】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図5】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図6】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図7】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図8】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図9】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図10】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作によるツール旋回軌跡を示す説明図である。
【図11】上記双腕ロボットの各軸の始点から終点までの旋回動作の経過時間と関節作動角との関係を示す関係線図である。
【図12】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図13】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図14】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図15】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図16】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図17】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図18】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(正回転)における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図19】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(逆回転)における旋回角と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および全効率との関係を示す関係線図である。
【図20】上記双腕ロボットの左腕の肩ヨー軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図21】上記双腕ロボットの左腕の肩ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図22】上記双腕ロボットの左腕の肘ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図23】上記双腕ロボットの左腕の手首ヨー軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図24】上記双腕ロボットの左腕の手首ピッチ軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図25】上記双腕ロボットの左腕の手首ロール軸旋回動作における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図26】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(正回転)における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【図27】上記双腕ロボットの腰ヨー軸旋回動作(逆回転)における関節角速度と、負荷時および無負荷時の電動機入力、実出力および負荷時の電動機電流との関係を示す関係線図である。
【符号の説明】
【0044】
1 胴体
3 腕
5 頭
7 支持脚
9 腰
9a 腰ヨー軸
11 上腕
13 肩関節
13a 肩ヨー軸
13b 肩ピッチ軸
15 下腕
17 肘関節
17a 肘ピッチ軸
19 手首関節
19a 手首ピッチ軸
19b 手首ロール軸
19c 手首ヨー軸
23 ブラケット
T ツール
TCP ツールセンタポイント
TP ツールセンタポイント旋回軌跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、
前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、
前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を、前記ロボットの出力とすることを特徴とする、ロボット出力の測定方法。
【請求項2】
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、
前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、
前記負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき負荷時電気的仕事率を求め、
前記エンドエフェクタを外した無負荷状態で、前記旋回動作と同じ旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記無負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、
前記無負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき無負荷時電気的仕事率を求め、
前記負荷時電気的仕事率から前記無負荷時電気的仕事率を減じることで求めることを特徴とする、請求項1記載のロボット出力の測定方法。
【請求項3】
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、
前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回中の前記エンドエフェクタの角速度を測定し、
前記負荷旋回中に測定したエンドエフェクタの角速度と、あらかじめ測定した前記エンドエフェクタの旋回半径、質量および重力方向移動量と、重力加速度とから演算により求めることを特徴とする、請求項1記載のロボット出力の測定方法。
【請求項4】
ロボットの各関節を駆動する各電動機について、前記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求める出力測定手段と、
前記各電動機について、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持する出力上限値保持手段と、
前記各電動機について、測定した前記エンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度での前記ロボット出力とを、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、前記測定した角速度でのロボット出力が前記ロボット出力上限値を超える場合に、前記電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させる電動機電流値制限手段と、
を具えてなる、ロボット出力の制限装置。
【請求項5】
前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度の所定範囲毎に表として保持されていることを特徴とする、請求項4記載のロボット出力の制限装置。
【請求項6】
前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度を変数とする関数として保持されていることを特徴とする、請求項4記載のロボット出力の制限装置。
【請求項1】
ロボットの出力を、当該ロボットの各関節を駆動する各電動機について測定するに際し、
前記関節の作動範囲内でエンドエフェクタの、重力方向の最も低い位置を始点、最も高い位置を終点として、それら始点と終点との間で、制御し得る最大速度が途中で出るようエンドエフェクタを加速および減速させるように前記ロボットに旋回動作を行わせ、
前記ロボットの旋回動作中の、前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を測定し、
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率を、前記ロボットの出力とすることを特徴とする、ロボット出力の測定方法。
【請求項2】
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、
前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、
前記負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき負荷時電気的仕事率を求め、
前記エンドエフェクタを外した無負荷状態で、前記旋回動作と同じ旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記無負荷旋回動作中の前記電動機の電流値を測定し、
前記無負荷旋回動作中に測定した電動機電流値と、あらかじめ測定した電動機抵抗値とに基づき無負荷時電気的仕事率を求め、
前記負荷時電気的仕事率から前記無負荷時電気的仕事率を減じることで求めることを特徴とする、請求項1記載のロボット出力の測定方法。
【請求項3】
前記エンドエフェクタを旋回させるためだけの機械的仕事率は、
前記エンドエフェクタを装着した負荷状態で前記旋回動作を前記ロボットに行わせて、前記負荷旋回中の前記エンドエフェクタの角速度を測定し、
前記負荷旋回中に測定したエンドエフェクタの角速度と、あらかじめ測定した前記エンドエフェクタの旋回半径、質量および重力方向移動量と、重力加速度とから演算により求めることを特徴とする、請求項1記載のロボット出力の測定方法。
【請求項4】
ロボットの各関節を駆動する各電動機について、前記ロボットの出力の測定方法で、エンドエフェクタの旋回の角速度毎にロボット出力を求める出力測定手段と、
前記各電動機について、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値を保持する出力上限値保持手段と、
前記各電動機について、測定した前記エンドエフェクタの旋回の角速度と、その角速度での前記ロボット出力とを、前記エンドエフェクタの旋回の角速度毎にあらかじめ設定されたロボット出力上限値と比較し、前記測定した角速度でのロボット出力が前記ロボット出力上限値を超える場合に、前記電動機の電流値を制限して当該ロボットの動作速度を低下させる電動機電流値制限手段と、
を具えてなる、ロボット出力の制限装置。
【請求項5】
前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度の所定範囲毎に表として保持されていることを特徴とする、請求項4記載のロボット出力の制限装置。
【請求項6】
前記ロボット出力上限値は、前記エンドエフェクタの旋回の角速度を変数とする関数として保持されていることを特徴とする、請求項4記載のロボット出力の制限装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−264899(P2008−264899A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108327(P2007−108327)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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