説明

ロータリーエアシリンダおよびロータリーエアチャック

【課題】ロータリーエアシリンダおよびそれを用いたロータリーエアチャックに対して、反転する際に捩れたり、過度に屈曲したりする不都合が生じことがなく、また他の機器類、設備と干渉したりする恐れが無い様に圧縮空気用のパイプを配管する。
【解決手段】筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダであって、ハウジングには、外周部に形成された圧縮空気系との取り合い部と、取り合い部と前記回転軸の外周面とを連通する貫通孔とが設けられており、回転軸には、外周面に周方向に形成されていると共に前記貫通孔と連通する溝と、溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔とが設けられているロータリーエアシリンダおよびそれを用いたロータリーエアチャック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーエアシリンダおよびロータリーエアチャックに関し、特に回転軸内に圧縮空気を通すための内部貫通孔を導設した配管レスロータリーエアシリンダおよび配管レスロータリーエアシリンダを用いたロータリーエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ドリルやタップ等、丸棒形状の刃物工具の生産工場では、製造や検査等の各工程間を、同一品種の複数の刃物工具を収納した収納箱を用いて運搬する。収納箱には、刃物工具が垂直に並べて収納されており、刃物工具の品種や生産工程の必要性によって、刃先が上向きに収納されている場合と下向きに収納されている場合がある。
【0003】
出荷検査時には収納箱から刃物工具を取り出し、刃物工具の刃部を検査し収納箱へ戻す。人が目視検査を行う場合、収納箱に収納されている刃物工具の刃先が上向きか、下向きかの如何に関わらず、適宜人が刃先の方向を判断して刃部の検査を行う。
【0004】
一方、出荷検査を効率良く行うために、近年人手によらず自動検査装置による出荷検査が増加している。自動検査装置を用いて外観検査を行う場合には、収納箱から刃物工具を取り出し、検査装置の把持機構(いわゆるチャック)に刃物工具やその刃部近くを把持させた状態で、刃先を検査位置に配置する必要がある。この際、収納箱に刃物工具が、刃先が上向きに収納されている場合、下向きに収納されている場合にかかわらず、刃物工具の刃部を検査位置に配置するためには、多少とも刃物工具を回転させる、条件によっては上下が逆になる様に180度回転させる必要がある。
【0005】
さらに、検査終了後は、検査前と同じ状態で刃物工具を収納箱へ収納するため、検査のために刃物工具を回転させた場合には、元に戻すために再度反転させる必要がある。このため、刃物工具の検査装置には、刃物工具を把持した状態で把持機構を回転させたり、反転させたりする機構が設けられている。
【0006】
そして、刃物工具などのチャックの把持機構には、比較的簡単な原理、構造であり低価格でもあるため、圧縮空気を利用したエアシリンダが用いられている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SMC株式会社のホームページ(平行開閉形エアチャック MHZ Seriesについての製品紹介)http://www.smcworld.com/2008/webcatalog/docs/rotarychuck/airchuck/MHZ2.pdf 403頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、検査装置のチャックの把持機構としてエアシリンダを用いた場合には、エアシリンダの圧縮空気の給排気を行う圧縮空気用のパイプの配管が問題となる。
【0009】
即ち、前記の理由で、検査の前後で刃物工具を収納箱から取出して検査装置に把持させ、検査後は逆に把持を解除して収納箱に収納するだけでなく、検査のためには把持機構を取り付けたエアシリンダを頻繁に正逆転する必要があるが、従来のロータリーエアシリンダの場合は、例えば図4に示すように圧縮空気用のパイプ56がエアシリンダの両端に設けられた継ぎ手44aに接続されている。このため、ロータリーエアシリンダが図4の白抜きの双方向の矢印で示される方向に±180度の正逆転をする際には、圧縮空気用のパイプ56が捩れたり、パイプに過度の屈曲が生じたりすることがあり、ひいてはパイプの破損や寿命の低下にも繋がる。
【0010】
また、刃物工具を収納箱から取出したり、検査後に収納したりする際には、パイプ56が刃物工具やその検査装置と好ましくない接触事故を起こしかねず、このため極めて慎重に作業する必要がある。
【0011】
このため、物品を把持する機構のロータリーエアシリンダやかかるエアシリンダを用いたロータリーエアチャックに限らず、筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたエアシリンダ、即ちロータリーエアシリンダに対して、反転する際に捩れたり、パイプに過度の屈曲が生じたりする様な不都合がなく、また他の機器類、設備と干渉する恐れが無い様に圧縮空気用のパイプを配管する技術の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものであり、検査装置の回転軸のハウジングに圧縮空気用のパイプを接続し、その上でハウジングと回転軸の構造に工夫を凝らし、回転軸内に形成された内部貫通孔を介してエアシリンダの圧縮空気の給排気を行う様にしたものである。以下、各請求項の発明について説明する。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダであって、
前記ハウジングには、
外周部に形成された圧縮空気系との取り合い部と、
前記取り合い部と前記回転軸の外周面とを連通する貫通孔とが設けられており、
前記回転軸には、
前記外周面に周方向に形成されていると共に前記貫通孔と連通する溝と、
前記溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔とが設けられている
ことを特徴とするロータリーエアシリンダである。
【0014】
請求項1に記載の発明においては、圧縮空気を通すための管が、ハウジングに設けられた圧縮空気系との取り合い部と、前記取り合い部と回転軸の外周面とを連通する貫通孔と、前記回転軸の外周面に形成された溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔により構成されているため、ロータリーエアシリンダの回転に伴って圧縮空気用のパイプが捩れたり、パイプに過度の屈曲が生じたりする様な不都合がなくなる。また、他の機器類、設備と干渉する恐れも無くなる。
【0015】
また、回転軸の外周面に周方向に沿って形成され、前記ハウジングに形成された貫通孔に連通している溝が形成されているため、回転軸の回転角の如何を問わずエアシリンダに圧縮空気を給排気することが可能となる。
【0016】
なお、ロータリーエアシリンダの回転は、車輪軸の様に同一方向の回転が半永久的に継続するのではなく、検査の開始と終了ごとに180度回転する場合が多いため、前記溝は必ずしも回転軸の全周囲に形成されていなくてもよい。
【0017】
なお、「ロータリーエアシリンダ」の用途は、物品を把持する把持機構に取付けられたロータリーエアシリンダに限定されず、またエアシリンダ部分の作動方式は圧縮空気とバネで動く単動型、双方向の何れの方向にも圧縮空気で動く複動型を問わない。
【0018】
請求項2に記載の発明は、
筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダであって、
前記ハウジングには、
外周部に形成された圧縮空気系との取り合い部と、
前記取り合い部と前記ハウジングの内周面とを連通する貫通孔と、
前記内周面に周方向に形成されていると共に前記貫通孔と連通する溝とが設けられており、
前記回転軸には、前記溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔が設けられていることを特徴とするロータリーエアシリンダである。
【0019】
請求項1に記載の発明は、ハウジングから回転軸に圧縮空気を連通させる為の溝を、回転軸の外周面に形成しているのに対して、請求項2に記載の発明は、前記溝をハウジングの内周面に形成したものである。このため、請求項1の発明と同様の作用がなされ、同様の効果が得られる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、
刃物工具用の把持機構を設けられているロータリーエアチャックであって、
前記把持機構は、請求項1または請求項2に記載のロータリーエアシリンダのシリンダロッドに連結して設けられていることを特徴とするロータリーエアチャックである。
【0021】
請求項3に記載の発明においては、ロータリーエアシリンダのシリンダロッドの動きに伴って機能が発揮される刃物工具用の把持機構を設けたロータリーエアチャックにおいて、請求項1または請求項2に記載のロータリーエアシリンダを用いているため、刃物工具を収納箱から取出したり、検査後に収納したりする際のエアチャックの回転の際に、そのエアシリンダを駆動する圧縮空気用のパイプが捩れたり、刃物工具やその検査装置と好ましくない接触を起こしたりする恐れのないロータリーエアチャックを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダやかかるエアシリンダを用いたロータリーエアチャックにおいて、反転する際に圧縮空気用の配管が、捩れたり、パイプに過度の屈曲が生じたりする様な不都合がなく、また他の機器類、設備と干渉する恐れが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る単動型のロータリーエアシリンダにおける圧縮空気を通す経路の要部を示す(a)正面図と(b)側面図である。
【図2】図1に示したA−A断面における断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る複動型のロータリーエアシリンダの構造の概要を示す図である。
【図4】従来技術のロータリーエアシリンダが正逆転をする様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0025】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、ハウジングから回転軸に圧縮空気を通す為の溝を回転軸の外周側に形成している場合である。
【0026】
図1と図2を参照しつつ、本実施の形態におけるロータリーエアシリンダにおけるエアシリンダ本体の圧縮空気の給排気を行うための構造、方法を説明する。図1の(a)(b)は、それぞれ本実施の形態に係る単動型のロータリーエアシリンダにおける圧縮空気を通すための経路の要部を示す正面図と側面図である。図1において、40はハウジングであり、44は継ぎ手であり、45はベアリングであり、50は回転軸であり、55は回転軸内の圧縮空気用の内部貫通孔であり、60はパッキンであり、65はガスケットであり、70はシリンダ本体であり、80はシリンダロッドであり、85はバネであり、90はスライドガイドであり、95はシリンダロッドに連結された爪である。
【0027】
図2は、図1のA−A断面の拡大図であり、ハウジング40を介して回転軸50内の圧縮空気用の内部貫通孔55へ圧縮空気と送り込むための構造の要部を示す図である。図2において42はハウジング40に半径方向に形成された貫通孔であり、43は継ぎ手の取り付け部であり、51は回転軸50の外周面に周方向に形成された圧縮空気用の溝であり、52は回転軸50に半径方向に形成された内部貫通孔の縦孔であり、55は回転軸50に形成された軸方向(紙面に直行する方向)に形成された内部貫通孔の横孔である。なお、パッキンは実際にはA−A断面には存在しないため点線で示す。
【0028】
本実施の形態に係るロータリーエアシリンダも従来技術のロータリーエアシリンダと同じく、図1の(a)図に示す様に2個の単動型のシリンダ構造を持ちさらに図1、(a)の白抜きの双方向矢印で示される方向に回転する。また、シリンダロッド80は、圧縮空気とバネ85の作用の下で左右に動き、これに伴い図1の(b)の図に示す爪95が紙面に対して垂直方向に動いて刃物工具を保持する。さらに、刃物工具を把持した状態で回転軸50を中心として180°正逆の回転を行なうことが可能である。
【0029】
図1と図2に示すように、ハウジング40の継ぎ手44から供給された圧縮空気は、ハウジング40内の縦孔42を通って回転軸50の外周に形成された圧縮空気を通すための溝51に到達し、さらに回転軸50に形成された半径方向の圧縮空気用の縦孔52、回転軸50に形成された軸方向の圧縮空気用の内部貫通孔の横孔55を通過してシリンダ70に到達する。この際、ハウジング40の内周面と回転軸50の外周面の要所にはパッキン60が装着されており、回転軸50の端部をロータリーエアシリンダの本体に固定する箇所にはガスケット65が挟み込まれている。また、ハウジング40の継ぎ手の取り付け部43もシールしてある(シールは、図示せず)。このため、ハウジング40に対してロータリーエアシリンダの本体が回転軸50と共に回転する際に、圧縮空気が漏出することがない。また、給気の場合と逆方向に圧縮空気を流すことによりシリンダ70内の圧縮空気が排気される。
【0030】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、前記第1の実施の形態の場合には、ハウジングから回転軸に圧縮空気を連通させる為の溝を回転軸の外周面に回転軸の周方向に形成しているのに対して、前記溝がハウジングの内周面に周方向に形成されている点のみが相違し、その他については第1の実施の形態と同様の構成とした実施の形態である。このため、詳細な説明は省略する。
【0031】
以上の第1および第2の実施の形態では、ロータリーエアシリンダに2個の単動型のエアシリンダ本体が取付けられている場合について説明したが、これは3個、4個等であっても良く、また複動型であっても良い。即ち、これらの場合には、ハウジングと回転軸にその分の圧縮空気用の貫通孔、溝、縦孔、横孔が増加するため、構造は多少複雑となるが、特に技術上の差異はない。
【0032】
参考として、本発明の一実施の形態に係る複動型のエアシリンダを2個装備し、内部貫通孔等を4組形成したロータリーエアシリンダの構造の概要を図3に示す。図3の(a)は駆動の原理を示し、図3の(b)は、内部貫通孔等の配置を示す。なお、図3の場合、図1と機能が同一である部材に対しては図1と同じ符号を付している。
【符号の説明】
【0033】
40 ハウジング
42 貫通孔
43 継ぎ手の取り付け部
44、44a 継ぎ手
45 ベアリング
50 回転軸
51 溝
52 内部貫通孔の縦孔
55 内部貫通孔の横孔
56 圧縮空気用のパイプ
60 パッキン
65 ガスケット
70 シリンダ本体
80 シリンダロッド
85 バネ
90 スライドガイド
95 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダであって、
前記ハウジングには、
外周部に形成された圧縮空気系との取り合い部と、
前記取り合い部と前記回転軸の外周面とを連通する貫通孔とが設けられており、
前記回転軸には、
前記外周面に周方向に形成されていると共に前記貫通孔と連通する溝と、
前記溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔とが設けられている
ことを特徴とするロータリーエアシリンダ。
【請求項2】
筒状のハウジングに内接する回転軸に取付けられたロータリーエアシリンダであって、
前記ハウジングには、
外周部に形成された圧縮空気系との取り合い部と、
前記取り合い部と前記ハウジングの内周面とを連通する貫通孔と、
前記内周面に周方向に形成されていると共に前記貫通孔と連通する溝とが設けられており、
前記回転軸には、前記溝と前記エアシリンダとを連通する内部貫通孔が設けられていることを特徴とするロータリーエアシリンダ。
【請求項3】
刃物工具用の把持機構が設けられているロータリーエアチャックであって、
前記把持機構は、請求項1または請求項2に記載のロータリーエアシリンダのシリンダロッドに連結して設けられていることを特徴とするロータリーエアチャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164099(P2010−164099A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5538(P2009−5538)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(591124721)立山マシン株式会社 (36)
【Fターム(参考)】