ロータリーキルン炉
【課題】キルン本体内で被処理物の所望の滞留時間及び層厚を得られるロータリーキルン炉を提供する。
【解決手段】軸回りに回転するキルン本体2を備え、当該キルン本体2を回転させてキルン本体2内に投入された被処理物4を加熱して排出するロータリーキルン炉1において、キルン本体2の内壁に突出するリフタ12を備え、このリフタ12を、その回転方向R前側の前側面12bが回転方向R後方に傾斜するように構成し、リフタ12が所定の高さに達して一気に被処理物4が落下するのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に被処理物4を落下させることで、落下距離を短くし、被処理物4の飛散量を低減し、十分に燃焼した被処理物4の残さを回収する。
【解決手段】軸回りに回転するキルン本体2を備え、当該キルン本体2を回転させてキルン本体2内に投入された被処理物4を加熱して排出するロータリーキルン炉1において、キルン本体2の内壁に突出するリフタ12を備え、このリフタ12を、その回転方向R前側の前側面12bが回転方向R後方に傾斜するように構成し、リフタ12が所定の高さに達して一気に被処理物4が落下するのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に被処理物4を落下させることで、落下距離を短くし、被処理物4の飛散量を低減し、十分に燃焼した被処理物4の残さを回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するキルン本体を備え、このキルン本体の上流側に、キルン本体内に投入される被処理物を燃焼させるためのバーナーが設けられ、キルン本体の内壁に、被処理物を撹拌すると共にこの被処理物を下流側に移動させる矩形状の羽根(リフタ)が設けられるロータリーキルン炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−054523公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ロータリーキルン炉では、被処理物をリフタで撹拌しているにも拘らず、被処理物が十分に燃焼されずに排出されるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、被処理物を十分に燃焼できるロータリーキルン炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者らは鋭意検討の結果、上記ロータリーキルン炉では、キルン本体のリフタが撹拌を行うべく被処理物を回転により上部まで持ち上げるため、キルン本体の上部から被処理物が一気に落下して飛散し、この飛散した被処理物が燃焼ガス及び排ガスの気流により上流側から下流側へ流され、キルン本体内で必要な滞留時間を得られないことが原因であることを突き止めた。
【0006】
そこで、本発明によるロータリーキルン炉は、軸回りに回転するキルン本体を備え、当該キルン本体を回転させて前記キルン本体内に投入された被処理物を加熱して排出するロータリーキルン炉において、キルン本体の内壁に突出するように設けられ、キルン本体の回転方向前側の面が回転方向後方に傾斜しているリフタを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によるロータリーキルン炉においては、キルン本体が回転すると、キルン本体内に投入された被処理物はリフタにより持ち上げられ、このリフタの回転方向前側の面の傾斜に沿って回転方向後方へ落下する。すなわち、リフタが所定の高さに達して一気に被処理物が落下するのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に被処理物が落下するため、落下距離が短くなり、被処理物の飛散量が低減する。このため、被処理物が下流側に飛散するのを抑制することができ、キルン本体内で必要な滞留時間を得ることが可能となる。
【0008】
ここで、上記リフタは、キルン本体の軸線方向に対して傾斜するように設けられることが好ましい。このような構成を採用した場合、キルン本体に投入された被処理物はリフタの傾斜角度に応じて下流側に移動する速度が変わるため、リフタの傾斜角度を適宜設定することで、キルン本体内での滞留時間及び層厚を調整することが可能となる。
【0009】
この場合、上記リフタは、軸線方向に複数設けられ、キルン本体の軸線方向の位置に応じて傾斜角度が異なるように設けられることが好ましい。このような構成を採用した場合、キルン本体の軸線方向の位置に応じて被処理物の移動速度を変えることができ、各位置毎に所望の層厚に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、キルン本体内で被処理物の所望の滞留時間及び層厚を得られ、被処理物を十分に燃焼できるロータリーキルン炉を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるロータリーキルン炉の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るロータリーキルン炉1を示す断面図、図2は、キルン本体2の内壁の展開図、図3は、図1におけるIII−III矢視図、図4は、リフタを示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかるロータリーキルン炉1は、水平設置面Zに設置された横型回転式のロータリーキルン炉であって、キルン本体2、フロントウォール3を備えている。
【0013】
キルン本体2は、回転しながら投入される被処理物4を搬送方向(軸線方向)Fに搬送すると共に燃焼させて排出するものである。このキルン本体2は、円筒状を呈し、その内壁5は、耐火材により内張りされている。このキルン本体2は、ベース6上に固定されて搬送方向Fに複数並設された支持部7により回転可能に支持されると共に、ベース6上の駆動部8を駆動源として回転される。キルン本体2は、回転軸線を傾斜させて設置されており、これにより、被処理物4を高い側(上流側)から低い側(下流側)に搬送し、燃焼残さを下流側端部に設けられた排出口9から排出させる。
【0014】
フロントウォール3は、ベース6上に固定されており、キルン本体2の前部が回転可能に挿入される。このフロントウォール3には、キルン本体2内に連通し被処理物4をキルン本体2内に投入するための投入部10が接続されている。また、フロントウォール3には、キルン本体2内に投入された被処理物4を燃焼させるためのバーナー11が設けられており、このバーナー11は、排出口9に向けてキルン本体2内に火炎を噴射する。なお、排出口9に対しては、図示を省略した二次燃焼室や排出物受けが接続される。
【0015】
図1及び図2に示すように、キルン本体2の内壁5には、被処理物4を撹拌するために突出するリフタが設けられている。本実施形態では、前半部にリフタ12が、後半部にリフタ13がそれぞれ設けられている。これらのリフタ12,13は、周方向にそれぞれ複数設けられていると共に、搬送方向(軸線方向)Fに沿ってそれぞれ複数設けられている。各リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜するように設けられている。そして、リフタ12は、搬送方向Fに対して、ここでは、30°傾斜するように設けられ、リフタ13は、搬送方向Fに対して、ここでは、15°傾斜するように設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すように、各リフタ12,13は、それぞれ横断面(その長手方向に直交する断面)台形状に形成されており、長手方向に延びる長方形に形成されてキルン本体2の内壁5に固定される底面12a,13aと、回転方向R前側の面であって回転方向R後方に傾斜する前側面12b,13bと、回転方向R後側の面であって回転方向R前方に傾斜する後側面12c,13cと、底面12a,13aより小とされた上面12d,13dと、両端を閉じる台形状の端面12e,13eとにより構成されている。
【0017】
続いて、ロータリーキルン炉1の動作について説明する。まず、駆動部8を駆動してキルン本体2を軸回りに回転させ、バーナー11から火炎を噴射させる。キルン本体2内が所定の高温状態になると、被処理物4が投入部10を介してキルン本体2内に投入され、バーナー11から噴射される火炎により燃焼される。そして、キルン本体2の回転に伴い、被処理物4は、リフタ12,13によって撹拌されながら、キルン本体2の傾斜に従って排出口9に向けて搬送される。
【0018】
ここで、リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜するように設けられているため(図2参照)、キルン本体2の回転に従うリフタ12,13の回転により被処理物4の一部は上流側に押し戻され、リフタ12,13に対応する位置では、被処理物4の搬送速度が遅くなると共に層厚が大きくなる。更に、リフタ13の傾斜角度よりもリフタ12の傾斜角度の方が大きいため、リフタ13よりもリフタ12の方が被処理物4の一部を押し戻す力が大きくなる。このため、リフタ13に対応する位置の被処理物4よりもリフタ12に対応する位置の被処理物4の方が搬送速度が遅くなると共に層厚が大きくなる。ここでの被処理物4は、その燃焼特性から下流側にいて酸素との接触時間を多くとる必要がある。そのため、ここでは上流側の層厚を下流側より厚い任意の層厚、下流側の層厚を上流側より薄い任意の層厚にすることにより、最適な燃焼条件を得ることができる。このようにして、被処理物4は、リフタ12,13の数、位置及び傾斜角度に応じて所定の層厚が形成され、所定の滞留時間を経ながらキルン本体2内を流動し、キルン本体2の傾斜回転に従い排出口9へ向かう。
【0019】
このとき、キルン本体2内では、図5に示すように、リフタ12,13の前側面12b,13bより回転方向R前方の被処理物4は、キルン本体2の回転に伴い、リフタ12,13によって持ち上げられる。そして、被処理物4は、リフタ12,13がキルン本体2の下部から上部に回転していく間に、前側面12bの傾斜(矢印A参照)に沿って徐々に落下していき、図6に示すように、リフタ12,13が所定の高さに達するまでに全ての被処理物4が落下し終える。従って、被処理物4の落下距離が従来に比して短くなり、被処理物4は緩やかに落下するため、落下中の飛散や落下衝撃による飛散が低減され、所定の層厚で所定の滞留時間を経て、排出口9から排出される。
【0020】
ここで、図7に示すように、従来技術のロータリーキルン炉21にあっては、リフタ23が横断面矩形状に形成されているため、キルン本体22の回転に伴いリフタ23の回転方向R前側の面により持ち上げられた被処理物4はなかなか落下せずに、図8に示すように、上部の所定の高さ(本実施形態の所定の高さと略同じ高さ)に達すると、一気に落下する。従って、被処理物4の落下距離が長く、落下中に飛散(図中の矢印a参照)すると共に落下衝撃によって飛散(図中の矢印b参照)し、燃焼ガス及び排ガスの気流により下流側に流されてしまい、一部の被処理物4は、十分滞留時間が得られなくなるが、本実施形態では、これが解消されている。
【0021】
すなわち、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、キルン本体2が回転すると、キルン本体2内に投入された被処理物4がリフタ12,13により持ち上げられ、このリフタ12,13の前側面12b,13bの傾斜に沿って回転方向R後方へ落下するようにし、被処理物4を、リフタ12,13が所定の高さに達して一気に落下させるのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に落下させ、落下距離を短くし飛散量を低減するようにしているため、従来技術の課題である被処理物4が下流側に飛散するのを抑制することができ、キルン本体2内で所望の滞留時間及び層厚を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、キルン本体2に投入された被処理物4はリフタ12,13の傾斜角度に応じて下流側に移動する速度が変わるため、リフタ12,13の傾斜角度を適宜設定することで、キルン本体2内における被処理物4の滞留時間及び層厚を調整することが可能となる。
【0023】
更に、搬送方向Fに並設されたリフタ12とリフタ13を傾斜角度が異なるように設けたため、キルン本体2の軸線方向の位置に応じて被処理物4の移動速度を変えることができ、各位置毎に所定の層厚に調整することが可能となり、最適な燃焼条件を得ることができる。
【0024】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、各リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜して設けるように説明したが、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R後方に傾斜するように設けても良い。この場合、キルン本体が回転すると、被処理物はリフタにより下流側に押し進められるため、傾斜角度を大きくするほど搬送速度が速くなり、層厚が小さくなる。
【0025】
また、上記実施形態においては、キルン本体2を傾斜配置する場合について説明したが、水平配置としても良い。この場合、リフタを、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R後方に傾斜するように設けることで、被処理物4を下流側に搬送できる。
【実施例1】
【0026】
次に、ロータリーキルン炉1のリフタの傾斜角度による効果を実証するために、キルン本体2内のリフタの傾斜角度を変えて、被処理物の滞留時間と層厚を計測した実施例1,2及び比較例1を説明する。
【0027】
(実施例1)
ロータリーキルン炉及び被処理物を以下の条件とした。
キルン本体:内径600mm×長さ1200mm
キルン本体の回転数:0.18rpm
リフタ:高さ25mm×巾20mm×長さ100
リフタの設置位置:上流端から400mm
リフタの個数:周方向に10個
リフタの設置間隔:約188mm
被処理物:炭素(C)及び硫黄(S)分を含む灰
被処理物の投入量:150g/min
【0028】
また、図9に示すように、リフタの傾斜角度を、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に15°傾斜するように設けた。
【0029】
(実施例2)
図10に示すように、リフタの傾斜角度を、30°とした点以外は実施例1と同様とした。
【0030】
(比較例1)
図11に示すように、リフタの傾斜角度を0°とした点以外は実施例1と同様とした。
【0031】
計測の結果、滞留時間を表1に示し、層厚を図12に示す。表1及び図12から明らかなように、実施例1,2のように、リフタを設けることで被処理物の滞留時間及び層厚が変化し、更に、リフタの傾斜角度に応じても、被処理物の滞留時間及び層厚が変化することが分かる。この結果に基づき、リフタの傾斜角度を適宜設定し、且つ/または、異なる傾斜角度を有するリフタを軸線方向に組み合わせることで、所望の滞留時間、層厚及び層厚の勾配を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るロータリーキルン炉を示す断面図である。
【図2】図1に示すキルン本体の内壁の展開図である。
【図3】図1におけるIII−III矢視図である。
【図4】リフタを示す斜視図である。
【図5】キルン本体が回転したときの被処理物の第1状態を示す図である。
【図6】図5の状態からキルン本体がさらに回転したときの被処理物の第2状態を示す図である。
【図7】従来技術においてキルン本体が回転したときの被処理物の第1状態を示す図である。
【図8】図7の状態からキルン本体がさらに回転したときの被処理物の第2状態を示す図である。
【図9】実施例1におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図10】実施例2におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図11】比較例におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図12】実施例1,2及び比較例1による被処理物の層厚を示す線図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ロータリーキルン炉、2…キルン本体、4…被処理物、5…内壁、12,13…リフタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するキルン本体を備え、このキルン本体の上流側に、キルン本体内に投入される被処理物を燃焼させるためのバーナーが設けられ、キルン本体の内壁に、被処理物を撹拌すると共にこの被処理物を下流側に移動させる矩形状の羽根(リフタ)が設けられるロータリーキルン炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−054523公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ロータリーキルン炉では、被処理物をリフタで撹拌しているにも拘らず、被処理物が十分に燃焼されずに排出されるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、被処理物を十分に燃焼できるロータリーキルン炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者らは鋭意検討の結果、上記ロータリーキルン炉では、キルン本体のリフタが撹拌を行うべく被処理物を回転により上部まで持ち上げるため、キルン本体の上部から被処理物が一気に落下して飛散し、この飛散した被処理物が燃焼ガス及び排ガスの気流により上流側から下流側へ流され、キルン本体内で必要な滞留時間を得られないことが原因であることを突き止めた。
【0006】
そこで、本発明によるロータリーキルン炉は、軸回りに回転するキルン本体を備え、当該キルン本体を回転させて前記キルン本体内に投入された被処理物を加熱して排出するロータリーキルン炉において、キルン本体の内壁に突出するように設けられ、キルン本体の回転方向前側の面が回転方向後方に傾斜しているリフタを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によるロータリーキルン炉においては、キルン本体が回転すると、キルン本体内に投入された被処理物はリフタにより持ち上げられ、このリフタの回転方向前側の面の傾斜に沿って回転方向後方へ落下する。すなわち、リフタが所定の高さに達して一気に被処理物が落下するのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に被処理物が落下するため、落下距離が短くなり、被処理物の飛散量が低減する。このため、被処理物が下流側に飛散するのを抑制することができ、キルン本体内で必要な滞留時間を得ることが可能となる。
【0008】
ここで、上記リフタは、キルン本体の軸線方向に対して傾斜するように設けられることが好ましい。このような構成を採用した場合、キルン本体に投入された被処理物はリフタの傾斜角度に応じて下流側に移動する速度が変わるため、リフタの傾斜角度を適宜設定することで、キルン本体内での滞留時間及び層厚を調整することが可能となる。
【0009】
この場合、上記リフタは、軸線方向に複数設けられ、キルン本体の軸線方向の位置に応じて傾斜角度が異なるように設けられることが好ましい。このような構成を採用した場合、キルン本体の軸線方向の位置に応じて被処理物の移動速度を変えることができ、各位置毎に所望の層厚に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、キルン本体内で被処理物の所望の滞留時間及び層厚を得られ、被処理物を十分に燃焼できるロータリーキルン炉を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるロータリーキルン炉の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るロータリーキルン炉1を示す断面図、図2は、キルン本体2の内壁の展開図、図3は、図1におけるIII−III矢視図、図4は、リフタを示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかるロータリーキルン炉1は、水平設置面Zに設置された横型回転式のロータリーキルン炉であって、キルン本体2、フロントウォール3を備えている。
【0013】
キルン本体2は、回転しながら投入される被処理物4を搬送方向(軸線方向)Fに搬送すると共に燃焼させて排出するものである。このキルン本体2は、円筒状を呈し、その内壁5は、耐火材により内張りされている。このキルン本体2は、ベース6上に固定されて搬送方向Fに複数並設された支持部7により回転可能に支持されると共に、ベース6上の駆動部8を駆動源として回転される。キルン本体2は、回転軸線を傾斜させて設置されており、これにより、被処理物4を高い側(上流側)から低い側(下流側)に搬送し、燃焼残さを下流側端部に設けられた排出口9から排出させる。
【0014】
フロントウォール3は、ベース6上に固定されており、キルン本体2の前部が回転可能に挿入される。このフロントウォール3には、キルン本体2内に連通し被処理物4をキルン本体2内に投入するための投入部10が接続されている。また、フロントウォール3には、キルン本体2内に投入された被処理物4を燃焼させるためのバーナー11が設けられており、このバーナー11は、排出口9に向けてキルン本体2内に火炎を噴射する。なお、排出口9に対しては、図示を省略した二次燃焼室や排出物受けが接続される。
【0015】
図1及び図2に示すように、キルン本体2の内壁5には、被処理物4を撹拌するために突出するリフタが設けられている。本実施形態では、前半部にリフタ12が、後半部にリフタ13がそれぞれ設けられている。これらのリフタ12,13は、周方向にそれぞれ複数設けられていると共に、搬送方向(軸線方向)Fに沿ってそれぞれ複数設けられている。各リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜するように設けられている。そして、リフタ12は、搬送方向Fに対して、ここでは、30°傾斜するように設けられ、リフタ13は、搬送方向Fに対して、ここでは、15°傾斜するように設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すように、各リフタ12,13は、それぞれ横断面(その長手方向に直交する断面)台形状に形成されており、長手方向に延びる長方形に形成されてキルン本体2の内壁5に固定される底面12a,13aと、回転方向R前側の面であって回転方向R後方に傾斜する前側面12b,13bと、回転方向R後側の面であって回転方向R前方に傾斜する後側面12c,13cと、底面12a,13aより小とされた上面12d,13dと、両端を閉じる台形状の端面12e,13eとにより構成されている。
【0017】
続いて、ロータリーキルン炉1の動作について説明する。まず、駆動部8を駆動してキルン本体2を軸回りに回転させ、バーナー11から火炎を噴射させる。キルン本体2内が所定の高温状態になると、被処理物4が投入部10を介してキルン本体2内に投入され、バーナー11から噴射される火炎により燃焼される。そして、キルン本体2の回転に伴い、被処理物4は、リフタ12,13によって撹拌されながら、キルン本体2の傾斜に従って排出口9に向けて搬送される。
【0018】
ここで、リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜するように設けられているため(図2参照)、キルン本体2の回転に従うリフタ12,13の回転により被処理物4の一部は上流側に押し戻され、リフタ12,13に対応する位置では、被処理物4の搬送速度が遅くなると共に層厚が大きくなる。更に、リフタ13の傾斜角度よりもリフタ12の傾斜角度の方が大きいため、リフタ13よりもリフタ12の方が被処理物4の一部を押し戻す力が大きくなる。このため、リフタ13に対応する位置の被処理物4よりもリフタ12に対応する位置の被処理物4の方が搬送速度が遅くなると共に層厚が大きくなる。ここでの被処理物4は、その燃焼特性から下流側にいて酸素との接触時間を多くとる必要がある。そのため、ここでは上流側の層厚を下流側より厚い任意の層厚、下流側の層厚を上流側より薄い任意の層厚にすることにより、最適な燃焼条件を得ることができる。このようにして、被処理物4は、リフタ12,13の数、位置及び傾斜角度に応じて所定の層厚が形成され、所定の滞留時間を経ながらキルン本体2内を流動し、キルン本体2の傾斜回転に従い排出口9へ向かう。
【0019】
このとき、キルン本体2内では、図5に示すように、リフタ12,13の前側面12b,13bより回転方向R前方の被処理物4は、キルン本体2の回転に伴い、リフタ12,13によって持ち上げられる。そして、被処理物4は、リフタ12,13がキルン本体2の下部から上部に回転していく間に、前側面12bの傾斜(矢印A参照)に沿って徐々に落下していき、図6に示すように、リフタ12,13が所定の高さに達するまでに全ての被処理物4が落下し終える。従って、被処理物4の落下距離が従来に比して短くなり、被処理物4は緩やかに落下するため、落下中の飛散や落下衝撃による飛散が低減され、所定の層厚で所定の滞留時間を経て、排出口9から排出される。
【0020】
ここで、図7に示すように、従来技術のロータリーキルン炉21にあっては、リフタ23が横断面矩形状に形成されているため、キルン本体22の回転に伴いリフタ23の回転方向R前側の面により持ち上げられた被処理物4はなかなか落下せずに、図8に示すように、上部の所定の高さ(本実施形態の所定の高さと略同じ高さ)に達すると、一気に落下する。従って、被処理物4の落下距離が長く、落下中に飛散(図中の矢印a参照)すると共に落下衝撃によって飛散(図中の矢印b参照)し、燃焼ガス及び排ガスの気流により下流側に流されてしまい、一部の被処理物4は、十分滞留時間が得られなくなるが、本実施形態では、これが解消されている。
【0021】
すなわち、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、キルン本体2が回転すると、キルン本体2内に投入された被処理物4がリフタ12,13により持ち上げられ、このリフタ12,13の前側面12b,13bの傾斜に沿って回転方向R後方へ落下するようにし、被処理物4を、リフタ12,13が所定の高さに達して一気に落下させるのではなく、所定の高さに達するまでに徐々に落下させ、落下距離を短くし飛散量を低減するようにしているため、従来技術の課題である被処理物4が下流側に飛散するのを抑制することができ、キルン本体2内で所望の滞留時間及び層厚を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態に係るロータリーキルン炉1においては、キルン本体2に投入された被処理物4はリフタ12,13の傾斜角度に応じて下流側に移動する速度が変わるため、リフタ12,13の傾斜角度を適宜設定することで、キルン本体2内における被処理物4の滞留時間及び層厚を調整することが可能となる。
【0023】
更に、搬送方向Fに並設されたリフタ12とリフタ13を傾斜角度が異なるように設けたため、キルン本体2の軸線方向の位置に応じて被処理物4の移動速度を変えることができ、各位置毎に所定の層厚に調整することが可能となり、最適な燃焼条件を得ることができる。
【0024】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、各リフタ12,13は、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に傾斜して設けるように説明したが、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R後方に傾斜するように設けても良い。この場合、キルン本体が回転すると、被処理物はリフタにより下流側に押し進められるため、傾斜角度を大きくするほど搬送速度が速くなり、層厚が小さくなる。
【0025】
また、上記実施形態においては、キルン本体2を傾斜配置する場合について説明したが、水平配置としても良い。この場合、リフタを、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R後方に傾斜するように設けることで、被処理物4を下流側に搬送できる。
【実施例1】
【0026】
次に、ロータリーキルン炉1のリフタの傾斜角度による効果を実証するために、キルン本体2内のリフタの傾斜角度を変えて、被処理物の滞留時間と層厚を計測した実施例1,2及び比較例1を説明する。
【0027】
(実施例1)
ロータリーキルン炉及び被処理物を以下の条件とした。
キルン本体:内径600mm×長さ1200mm
キルン本体の回転数:0.18rpm
リフタ:高さ25mm×巾20mm×長さ100
リフタの設置位置:上流端から400mm
リフタの個数:周方向に10個
リフタの設置間隔:約188mm
被処理物:炭素(C)及び硫黄(S)分を含む灰
被処理物の投入量:150g/min
【0028】
また、図9に示すように、リフタの傾斜角度を、上流側から下流側に向けて、搬送方向Fに対して回転方向R前方に15°傾斜するように設けた。
【0029】
(実施例2)
図10に示すように、リフタの傾斜角度を、30°とした点以外は実施例1と同様とした。
【0030】
(比較例1)
図11に示すように、リフタの傾斜角度を0°とした点以外は実施例1と同様とした。
【0031】
計測の結果、滞留時間を表1に示し、層厚を図12に示す。表1及び図12から明らかなように、実施例1,2のように、リフタを設けることで被処理物の滞留時間及び層厚が変化し、更に、リフタの傾斜角度に応じても、被処理物の滞留時間及び層厚が変化することが分かる。この結果に基づき、リフタの傾斜角度を適宜設定し、且つ/または、異なる傾斜角度を有するリフタを軸線方向に組み合わせることで、所望の滞留時間、層厚及び層厚の勾配を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るロータリーキルン炉を示す断面図である。
【図2】図1に示すキルン本体の内壁の展開図である。
【図3】図1におけるIII−III矢視図である。
【図4】リフタを示す斜視図である。
【図5】キルン本体が回転したときの被処理物の第1状態を示す図である。
【図6】図5の状態からキルン本体がさらに回転したときの被処理物の第2状態を示す図である。
【図7】従来技術においてキルン本体が回転したときの被処理物の第1状態を示す図である。
【図8】図7の状態からキルン本体がさらに回転したときの被処理物の第2状態を示す図である。
【図9】実施例1におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図10】実施例2におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図11】比較例におけるキルン本体の内壁の展開図である。
【図12】実施例1,2及び比較例1による被処理物の層厚を示す線図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ロータリーキルン炉、2…キルン本体、4…被処理物、5…内壁、12,13…リフタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りに回転するキルン本体を備え、当該キルン本体を回転させて前記キルン本体内に投入された被処理物を加熱して排出するロータリーキルン炉において、
前記キルン本体の内壁に突出するように設けられ、前記キルン本体の回転方向前側の面が前記回転方向後方に傾斜しているリフタを備えることを特徴とするロータリーキルン炉。
【請求項2】
前記リフタは、前記キルン本体の軸線方向に対して傾斜するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のロータリーキルン炉。
【請求項3】
前記リフタは、軸線方向に複数設けられ、前記キルン本体の軸線方向の位置に応じて傾斜角度が異なるように設けられることを特徴とする請求項2に記載のロータリーキルン炉。
【請求項1】
軸回りに回転するキルン本体を備え、当該キルン本体を回転させて前記キルン本体内に投入された被処理物を加熱して排出するロータリーキルン炉において、
前記キルン本体の内壁に突出するように設けられ、前記キルン本体の回転方向前側の面が前記回転方向後方に傾斜しているリフタを備えることを特徴とするロータリーキルン炉。
【請求項2】
前記リフタは、前記キルン本体の軸線方向に対して傾斜するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のロータリーキルン炉。
【請求項3】
前記リフタは、軸線方向に複数設けられ、前記キルン本体の軸線方向の位置に応じて傾斜角度が異なるように設けられることを特徴とする請求項2に記載のロータリーキルン炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−122043(P2008−122043A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309565(P2006−309565)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(500103236)JFEマテリアル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(500103236)JFEマテリアル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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