説明

ロータリーダンパーの破壊防止機構

【課題】本発明は、細くかつ小型化されたロータリーダンパーの破壊防止機構に関するものである。
【解決手段】本発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、上部ロータを一方向に回転動作させた場合、弁体と下部ロータとの間に連通路が形成されて下部ロータと下部ハウジングとによって形成される圧力室の圧力が低下して、容易に回転が行われる。また、前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記上部ロータを他方向に回転動作させた場合、前記弁体と下部ロータとの間で粘性流体が流通しないようになるため、下部ロータと下部ハウジングとによって形成される圧力室の圧力が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開く動作が容易で、かつ閉じる動作に減衰力が加わるとともに、設定以上の力が加わった場合に、ロータリーダンパーが破壊されるのを防止するロータリーダンパーの破壊防止機構に関するものである。特に、本発明は、温水洗浄装置等に使用する便座の回動軸に使用し、便蓋あるいは便座の開閉に伴う回動力を容易に制御することができるロータリーダンパーの破壊防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は従来のロータリーダンパーを説明するための図である。図13におけるロータリーダンパーは、対向して設けられた支持部13911を備えたシリンダー1391と、前記支持部13911、13911′によって支持されるとともに所定角度だけ回転自在で、両先端部に連通路13921、13921′を備えた回転軸1392と、断面ほぼコ字状で前記シリンダー1391の内部対向位置に取り付けられているとともに、前記回転軸1392の先端部が遊嵌されている制御弁1393、1393′とから構成されている。前記制御弁1393、1393′は、ほぼコ字状の一辺に制御口13931、13931′と、前記制御口13931、13931′に対向する位置に制御壁13932、13932′とを備えている。また、前記シリンダー1391は、対向する支持部13911、13911′と、前記回転軸1392の先端部および制御壁13932、13932′とにより、減圧室13941、加圧室13942、減圧室13943、加圧室13944(右周りに)が構成されている(回転軸1392の回転方向は、図において反時計周り方向になっている)。
【0003】
今、前記回転軸1392が矢印のように反時計周り方向に回転した場合、前記回転軸1392の先端は、前記シリンダ1391の制御壁13932、13932′に接触し、隣に設けられている加圧室13942、13944の圧力が高くなる。一方、前記回転軸1392は、前記矢印と反対方向(時計周り)に回転させる。この場合、前記回転軸1392の先端部は、前記制御壁13932、13932′と離れる。その結果、前記減圧室13941、13943は、前記回転軸1392の先端に設けられている連通路13921、13921′と制御口13931、13931′を介して油が流れ出て減圧される。前記ロータリーダンパーの詳細は、たとえば、特許第2882109号公報に記載されている。
【特許文献1】特許第2882109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のロータリーダンパーは、前記回転軸1392、前記連通路13921、13921′と、前記制御弁1393、1393′、前記制御口13931、13931′、制御壁13932、13932′との肉が薄く耐久性が悪く、大きな負荷に耐えられないという問題があった、前記課題を解決するために、前記ロータリーダンパーは、全体を厚くまた大きくしなければならないという問題があった。たとえば、便座あるいは便蓋は、予め決められた狭い場所に設けなければならず、細径のものが期待されていたが実現されなかった。また、前記便座あるいは便蓋に使用するロータリーダンパーは、来客や子供のように力加減が判らない者が使用した場合、閉める際に思わず力が入り過ぎたとしても、充分な強度に耐えるロータリーダンパーがなかった。
【0005】
以上のような課題を解決するために、本発明は、ロータリーダンパーの大きさを細くするとともに、設定以上の力が加わったとしても、壊れることがないロータリーダンパーの破壊防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
第1発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、一方向の回転動作に対する力が小さく、他方向の回転動作に対して減衰力を発生させるとともに、高トルクの負荷が発生した際に破壊されるのを防止するものであり、上部ハウジングと、前記上部ハウジング内で回動自在に回転するとともに、下部に第1の圧力伝達孔を備え、下方向に付勢されている上部ロータと、前記上部ハウジングに取り付けられ、前記上部ロータの下部との間で粘性流体が封止込められている下部ハウジングと、前記下部ハウジング内を前記上部ロータの回転に伴って回動自在に連結され、前記第1の圧力伝達孔に連通する第2の圧力伝達孔と、前記粘性流体を正圧側から負圧側に逃がすリリーフ孔とを備えている下部ロータと、前記下部ロータに取り付けられ、前記下部ロータの回転方向により前記粘性流体を正圧側から負圧側に逃すことができる弁体と、前記第1および第2の圧力伝達孔から流入する粘性流体の圧力により下方に移動するリリーフ弁と、前記リリーフ弁を支持するとともに、前記上部ロータ側に付勢されている籠型のリリーフバルブとから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0007】
(第2発明)
第2発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明のリリーフ弁およびリリーフバルブは、上部ロータの回転により、前記粘性流体が圧縮されて軸方向に移動できることを特徴とする。
【0008】
(第3発明)
第3発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明または第2発明のリリーフバルブと前記下部ロータとの間には、弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0009】
(第4発明)
第4発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明から第3発明の弁体は、下部ロータに設けられた連通路と制御壁とによって、開弁力調節機能を有していることを特徴とする。
【0010】
(第5発明)
第5発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明から第4発明のリリーフバルブは、コイルスプリングによって軸方向に支持されていることを特徴とする。
【0011】
(第6発明)
第6発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明から第5発明の弁体は、前記下部ロータによって回転が可能なように支持されていることを特徴とする。
【0012】
(第7発明)
第7発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構において、第1発明から第6発明のリリーフ弁およびリリーフバルブは、前記上部ロータに設定以上の強い回転力が加わった際に、前記第1および第2圧力伝達孔を介して流れて来る粘性流体の圧力によって軸方向に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粘性流体の第1および第2圧力伝達孔を通過する際の力、および前記粘性流体のリリーフ弁およびリリーフバルブを支持している弾性体に抗して下方に押し下げる力は、軸方向であるため、ロータリーダンパーを細径にするだけでなく、設定以上の力による破壊を防止することができる。また、前記粘性流体は、リリーフ弁およびリリーフバルブによって、圧縮されずに正圧側から負圧側に流れるため、設定以上の力によっても破壊されない。
【0014】
本発明によれば、前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記粘性流体の力を径方向より、軸方向のバネと対抗するような構成になっているため、全体の構成を小径にすることができ、便座あるいは便蓋のような狭い場所に設置したり、無理な力が加わっても破壊しない構造になっている。
【0015】
本発明によれば、設定値以上の高トルクの負荷が発生しても、ロータリーダンパーが破壊しない破壊防止機構である。また、本発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、上部ロータ、リリーフ弁、リリーフバルブ、下部ロータ、弁体等の機械要素を複数に分け、粘性流体の力を軸方向に伝えるとともに、径方向にも逃げられるような構成にしてあるため、一つ一つの機械要素の強度を上げることなく、全体の強度を保持することができ、同時に、全体を小型化することができた。すなわち、本発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、設定以上の力がロータリーダンパーに加わった場合、一つの機械要素で受けることなく、多くの機械要素が分散して受けるため、破壊されるのを防止することが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1発明)
第1発明のロータリーダンパーの破壊防止機構は、一方向の回転動作に対する力を小さくし、他方向の回転動作に対する減衰力を発生させて、前記回転動作を強くするとともに、高トルクの負荷が発生した際に前記ロータリーダンパーが破壊されるのを防止するものである。前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、上部ロータが設けられている上部ハウジングと、前記上部ハウジングと結合する下部ハウジングとから構成されている。前記上部ハウジングの内部には、回転動作により回転する上部ロータが設けられている。前記下部ハウジングの内部には、下部ロータと、弁体と、リリーフ弁と、リリーフバルブとが組み立てられて挿入されている。前記上部ロータは、前記上部ハウジング内で回動自在に回転するとともに、下部に第1の圧力伝達孔を備え、バネ、たとえば、トーションスプリングによって回転方向の力を援助している。前記下部ロータは、前記下部ハウジングに取り付けられ、前記下部ハウジングの下部との間で粘性流体が封止込められている。
【0017】
前記下部ロータは、前記下部ハウジング内を前記上部ロータの回転に伴って所定の角度回動自在に連結され、前記第1の圧力伝達孔に連通する第2の圧力伝達孔を備えている。前記弁体は、前記下部ロータに取り付けられ、可撓性を有するため、前記下部ロータの回転方向と前記粘性流体の粘性とにより、正圧側から負圧側に逃すことができる構造になっている。前記リリーフ弁は、前記第1および第2の圧力伝達孔から流入する粘性流体の圧力を受けることにより下方(軸方向)に移動する。前記リリーフバルブは、前記リリーフ弁を弾性体により支持するとともに、前記上部ロータ側に付勢されている。
【0018】
前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記上部ロータを一方向に回転動作させた場合、前記弁体と下部ロータとの間に連通路が形成されて下部ロータと下部ハウジングとによって形成される圧力室の圧力が低下して、容易に回転が行われる。また、前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記上部ロータを他方向に回転動作させた場合、前記弁体と下部ロータとの間で粘性流体が流通しないようになるため、下部ロータと下部ハウジングとによって形成される圧力室の圧力が高くなる。
【0019】
その結果、前記粘性流体は、第1および第2圧力伝達孔を通過し、リリーフ弁およびリリーフバルブを前記弾性体に抗して下方に押し下げる。前記粘性流体の第1および第2圧力伝達孔を通過する際の力、および前記粘性流体のリリーフ弁およびリリーフバルブを支持している弾性体に抗して下方に押し下げる力は、前記ロータリーダンパーの破壊を防止することができる。前記ロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記粘性流体の力を径方向より、軸方向の弾性体に対してより多く対抗するような構成になっているため、全体の構成を細径にすることができる。
【0020】
(第2発明)
第2発明のロータリーダンパーの破壊防止機構は、第1発明の上部ロータの回転により前記リリーフ弁およびリリーフバルブが、前記第1および第2圧力伝達孔を通過した前記粘性流体の力で軸方向に移動する。前記リリーフ弁およびリリーフバルブは、上部ロータの回転により軸方向に移動することで、ロータリーダンパーの破壊を防止するため、ロータリーダンパーの破壊防止機構を細径とすることができる。
【0021】
(第3発明)
前記リリーフバルブと前記下部ロータとの間には、弾性体が設けられており、上部ロータとリリーフ弁との間で所定の力が保持されている。前記上部ロータを他方向に回転させる場合、前記所定の力は、他方向の回転動作に対する減衰力を発生させる。前記所定の力は、それ以上になった場合、前記リリーフバルブを軸方向に押し、前記上部ロータと前記リリーフバルブとの間から粘性流体が逃げることにより、前記ロータリーダンパーの破壊が防止される。
【0022】
(第4発明)
第4発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記下部ロータに設けられた弁体と、下部ロータの外周面に設けられた連通路と制御壁とによって、開弁力調節機能を有している。前記弁体は、前記制御壁に接触している間、下部ハウジング内の粘性流体を圧縮し、前記連通路側にある場合、下部ハウジング内の粘性流体を減圧する。前記開弁力調節機能は、可撓性を備えた前記弁体と、前記下部ハウジングの内周面との摩擦により、効果的に達成される。
【0023】
(第5発明)
第5発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、リリーフバルブが籠型の筒状であるため、コイルスプリングによって軸方向に支持されている。前記リリーフバルブは、前記リリーフ弁を収納する部分の裏側がコイルスプリングを収納する部分に好適である。
【0024】
(第6発明)
第6発明におけるロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記弁体が前記下部ロータの下部に取り付けられ、前記下部ロータの回転によって、下部ロータの周面に設けられた制御壁または連通路との間で弁機構が構成されている。
【0025】
(第7発明)
第7発明のロータリーダンパーの破壊防止機構は、前記上部ロータに設定以上の強い回転力が加わった際に、前記第1および第2圧力伝達孔を介して流れて来る粘性流体の圧力が前記リリーフ弁およびリリーフバルブの上部に加わることによって軸方向に移動する。本発明のロータリーダンパーの破壊防止機構は、粘性流体を前記軸方向に移動させるような機構にしたため、細径とすることができた。
【実施例】
【0026】
図1は本発明の実施例で、ロータリーダンパーの破壊防止機構の組みたて方を説明するための斜視図である。図1において、ロータリーダンパーは、上部ハウジング11と、上部ロータ12と、リリーフ弁13と、リリーフバルブ14と、下部ロータ15と、弁体16と、下部ハウジング17とが図示のような順序で組み立てられている。前記上部ロータ12は、上部ハウジング11に対して、第1のOリング181と第2のOリング182によりシールされると同時に、前記各Oリングの間にトーションスプリング18を設け、前記トーションスプリング18によって下方向に付勢されている。また、リリーフバルブ14は、弾性体19によって、上方向に付勢されるように下部ロータ15内に設けられている。前記ロータリーダンパーにおける上下は、図に対するものであり、設置する場合、水平方向等、向きが変わることがある。前記トーションスプリング18は、係合部183を上部ハウジング11の図示されていない係合孔に、また、他方の係合部184を上部ロータ12の図示されていない係合孔に係合させることにより、固定されて回転方向の力を保持することだできる。
【0027】
図2は本発明の実施例で、(a)は上部ハウジングの平面図、(b)は上部ハウジングの側面図、(c)は上部ハウジングの底面図、(d)は上部ハウジングの断面図である。図2(a)から(d)において、上部ハウジング11は、側部に、たとえば、便座あるいは弁蓋等を取り付ける機器固定部111と、前記上部ロータ12を挿入する上部ロータ受入口112と、下方に前記下部ハウジング17を取り付ける下部ハウジング取付部113と、前記下部ハウジング17を取り付けた際に離れないようにする下部ハウジング取付凹部114とから構成されている。前記下部ハウジング17は、前記上部ハウジング11の下部取付部113に嵌合された後、下部ハウジング17の凸起部が前記下部ハウジング取付凹部114に嵌合または溶着することにより固定される。
【0028】
図3は本発明の実施例で、(a)は上部ロータの平面図、(b)は上部ロータの側面図、(c)は上部ロータの底面図、(d)は上部ロータの断面図である。図3(a)から(d)において、上部ロータ12は、第1のOリング181が嵌合する第1のOリング挿入溝121と、第2のOリング182が嵌合する第2のOリング挿入溝122と、下部に第1の圧力伝達孔123を備えた、たとえば、六角形の下部ロータ取付部124と、肉抜き部125とを備えている。
【0029】
図4は本発明の実施例で、(a)はリリーフ弁の平面図、(b)はリリーフ弁の側面図、(c)はリリーフ弁の底面図、(d)はリリーフ弁の断面図である。図4(a)から(d)において、リリーフ弁13は、上部中央に上部ロータ受部131と、前記上部ロータ受部131の周囲に設けられたフランジ132と、下部に後述するリリーフバルブ14に取り付けるための取付部133とを備えている。
【0030】
図5は本発明の実施例で、(a)はリリーフバルブの平面図、(b)はリリーフバルブの側面図、(c)はリリーフバルブの底面図、(d)はリリーフバルブ異なる方向から見た側面図、(e)はリリーフバルブの断面図である。図5(a)から(e)において、リリーフバルブ14は、円錐状のリリーフ弁取付部141と、前記リリーフ弁取付部141の先端で、周囲方向に突出するように設けられた誤組み防止爪142を備えた複数の摺動用リブ143と、前記摺動用リブ143に取り付けられた下部リング145とからなり、籠型に成形されている。また、前記円錐状のリリーフ弁取付部141は、前記リリーフ弁13が嵌合し易い形状になっている。前記リリーフ弁取付部141、摺動用リブ143、下部リング145は、別体または一体に成形することができる。前記摺動用リブ143は、下部ロータ15の内部において、弾性体19に抗して上下(軸方向)に摺動し易い形状になっている。
【0031】
図6は本発明の実施例で、(a)は下部ロータの平面図、(b)は下部ロータの側面図、(c)は下部ロータの異なる方向から見た側面図、(d)は下部ロータの底面図、(e)は下部ロータの断面図である。図6(a)から(e)において、前記下部ロータ15は、内部にリリーフバルブ挿入部151と、両側部に対照的に設けられた制御壁152および連通路153と、上部に対照的に設けられた第2の圧力伝達孔154と、内部の粘性流体を逃がすリリーフ孔156と、下部に弁体16を取り付ける取付凹部157および弁体取付部158と、上部ロータ12が嵌合する嵌合部159とから構成されている。前記制御壁152および連通路153は、後述する弁体16とによって弁作用を行うように、前記下部ロータ15の深さ方向の長さを有する。また、前記リリーフ孔156は、対照的に減圧室側に設けられ、下部ハウジング17に粘性流体を逃すことができる。前記嵌合部159は、たとえば、六角形の凹部からなり、上部ロータ12が嵌合し、前記上部ロータ12の回動にしたがって回動される。
【0032】
図7は本発明の実施例で、(a)は弁体の平面図、(b)は弁体の側面図、(c)は弁体の異なる方向から見た側面図である。図7(a)から(c)において、前記弁体16は、下方に前記下部ロータ15の下部に嵌合する環状の取付部161と、前記取付部161から対照的に側方に延びるレバー165に取り付けられ、上方に延び、制御面162および連通面163と、前記下部ロータ15の取付凹部157に嵌合する取付凸部164とから構成されている。前記制御面162および連通面163は、断面がほぼ数字の「7」に近い形状であり、長い辺が制御壁152に面接触し、短い辺の一端が下部ハウジング17の内壁に接するような構成になっている。また、前記制御面162および連通面163は、前記下部ロータ15の深さ方向の長さを有する。
【0033】
図8は本発明の実施例で、(a)は下部ハウジングの平面図、(b)は下部ハウジングの側面図、(c)は下部ハウジングの断面図である。図8(a)から(c)において、前記下部ハウジング17は、前記リリーフ弁13、リリーフバルブ14、下部ロータ15、および弁体16を収納するとともに、ストッパー171と、スプリング取付溝172と、下部ロータ取付溝173と、上部ハウジング11の下部に設けられている下部ハウジング取付凹部114に嵌合する取付凸部174とから構成されている。また、前記ストッパー171は、前記下部ロータ15が回転し過ぎるのを防止するためのものである。
【0034】
図9は本発明の実施例で、ロータリーダンパーを組み立てた状態を説明するための図である。図9におけるロータリーダンパーは、上部ハウジング11、上部ロータ12、リリーフ弁13、リリーフバルブ14、下部ロータ15、弁体16、下部ハウジング17等が組み立てられている。図9で示す状態は、弾性体19の圧力が強く、リリーフ弁13が上部ロータ12の下面と接触している状態である。
【0035】
図10は本発明の実施例で、ロータリーダンパーの破壊防止機構を説明するための図である。図10に示されているロータリーダンパーの破壊防止機構は、第1の圧力伝達孔123および第2の圧力伝達孔154から流入した粘性流体の圧力が弾性体19の圧力より大きい状態であり、前記粘性流体が下部ハウジング17の径方向に逃げることにより、破壊が防止される。
【0036】
図11は本発明の実施例で、上部ロータを反時計方向に回転させた場合の弁体の状態を説明するための図である。図11において、上部ロータ12を反時計方向に回転した場合、弁体16の制御面162は、下部ロータ15の制御壁152と接触し、加圧室1111における粘性流体の圧力を高める。前記加圧室1111における粘性流体は、第2の圧力伝達孔154および第1の圧力伝達孔123(図10参照)を通り、リリーフ弁13を下方(軸方向)に押し下げる。前記軸方向の圧力は、弾性体19、たとえば、コイルスプリングの力に逆らってリリーフ弁13およびリリーフバルブ14を下方(軸方向)に押し下げ(図10に示す状態)、加圧室1111の粘性流体を減圧室1112の方に流すことにより、設定以上の圧力を緩和させることができ、ロータリーダンパーの破壊を防止する。
【0037】
図12は本発明の実施例で、上部ロータを時計方向に回転させた場合の弁体の状態を説明するための図である。図12において、上部ロータ12を時計方向に回転した場合、弁体16の制御面162は、下部ロータ15の制御壁152から離れ、加圧室1111における粘性流体が減圧室1112の方向に流れ、加圧室1111の圧力が低減する。以上のように、本発明のロータリーダンパーの破壊防止機構は、粘性流体の圧力を軸方向に伝達するような構成になっているため、細径であるとともに、小型にすることができた。また、本発明のロータリーダンパーは、前記リリーフ弁13、リリーフバルブ14、下部ロータ15、弁体16の個々が粘性流体により動くことができるため、一つ一つの機械要素の強度が弱くても、設定以上の力を分散することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。図1から図12の各部を構成する機械要素そのものは、材質および形状を公知または周知のものに変えることができる。また、実施例は、便座まはた便蓋について説明したが、その他の機器にも適用できることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例で、ロータリーダンパーの破壊防止機構の組みたて方を説明するための斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例で、(a)は上部ハウジングの平面図、(b)は上部ハウジングの側面図、(c)は上部ハウジングの底面図、(d)は上部ハウジングの断面図である。
【図3】本発明の実施例で、(a)は上部ロータの平面図、(b)は上部ロータの側面図、(c)は上部ロータの底面図、(d)は上部ロータの断面図である。
【図4】本発明の実施例で、(a)はリリーフ弁の平面図、(b)はリリーフ弁の側面図、(c)はリリーフ弁の底面図、(d)はリリーフ弁の断面図である。
【図5】本発明の実施例で、(a)はリリーフバルブの平面図、(b)はリリーフバルブの側面図、(c)はリリーフバルブの底面図、(d)はリリーフバルブ異なる方向から見た側面図、(e)はリリーフバルブの断面図である。
【図6】本発明の実施例で、(a)は下部ロータの平面図、(b)は下部ロータの側面図、(c)は下部ロータの異なる方向から見た側面図、(d)は下部ロータの底面図、(e)は下部ロータの断面図である。
【図7】本発明の実施例で、(a)は弁体の平面図、(b)は弁体の側面図、(c)は弁体の異なる方向から見た側面図である。
【図8】本発明の実施例で、(a)は下部ハウジングの平面図、(b)は下部ハウジングの側面図、(c)は下部ハウジングの断面図である。
【図9】本発明の実施例で、ロータリーダンパーを組み立てた状態を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例で、ロータリーダンパーの破壊防止機構を説明するための図である。
【図11】本発明の実施例で、上部ロータを反時計方向に回転させた場合の弁体の状態を説明するための図である。
【図12】本発明の実施例で、上部ロータを時計方向に回転させた場合の弁体の状態を説明するための図である。
【図13】従来のロータリーダンパーを説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
11・・・上部ハウジング
111・・・機器固定部
112・・・上部ロータ受入口
113・・・下部ハウジング取付部
114・・・下部ハウジング取付凹部
12・・・上部ロータ
121・・・第1のOリング挿入溝
122・・・第2のOリング挿入溝
123・・・第1の圧力伝達孔
124・・・下部ロータ取付部
125・・・肉抜き孔
13・・・リリーフ弁
131・・・上部ロータ受入部
132・・・フランジ
133・・・取付部
14・・・リリーフバルブ
141・・・リリーフ弁取付部
142・・・誤組み防止爪
143・・・摺動用リブ
144・・・スプリング取付部
15・・・下部ロータ
151・・・リリーフバルブ挿入部
152・・・制御壁
153・・・連通路
154・・・第2の圧力伝達孔
156・・・リリーフ孔
157・・・取付凹部
158・・・弁体取付部
16・・・弁体
161・・・取付部
162・・・制御面
163・・・連通面
164・・・取付凸部
17・・・下部ハウジング
171・・・ストッパー
172・・・スプリング取付溝
173・・・下部ロータ取付溝
174・・・取付凸部
18・・・トーションスプリング
181・・・第1のOリング
182・・・第2のOリング
183・・・係合部
184・・・係合部
19・・・弾性体
1111・・・加圧室
1112・・・減圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向の回転動作に対する力が小さく、他方向の回転動作に対して減衰力を発生させるとともに、高トルクの負荷が発生した際に破壊されるのを防止するロータリーダンパーの破壊防止機構において、
上部ハウジングと、
前記上部ハウジング内で回動自在に回転するとともに、下部に第1の圧力伝達孔を備え、下方向に付勢されている上部ロータと、
前記上部ハウジングに取り付けられ、前記上部ロータの下部との間で粘性流体が封止込められている下部ハウジングと、
前記下部ハウジング内を前記上部ロータの回転に伴って回動自在に連結され、前記第1の圧力伝達孔に連通する第2の圧力伝達孔と、前記粘性流体を正圧側から負圧側に逃がすリリーフ孔とを備えている下部ロータと、
前記下部ロータに取り付けられ、前記下部ロータの回転方向により前記粘性流体を正圧側から負圧側に逃すことができる弁体と、
前記第1および第2の圧力伝達孔から流入する粘性流体の圧力により下方に移動するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁を支持するとともに、前記上部ロータ側に付勢されている籠型のリリーフバルブと、
から少なくとも構成されていることを特徴とするロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項2】
前記リリーフ弁およびリリーフバルブは、前記上部ロータの回転により、前記粘性流体が圧縮されて軸方向に移動できることを特徴とする請求項1に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項3】
前記リリーフバルブと前記下部ロータとの間には、弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項4】
前記弁体は、下部ロータに設けられた連通路と制御壁とによって、開弁力調節機能を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項5】
前記リリーフバルブは、コイルスプリングによって軸方向に支持されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項6】
前記弁体は、前記下部ロータによって回転が可能なように支持されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。
【請求項7】
前記リリーフ弁およびリリーフバルブは、前記上部ロータに設定以上の強い回転力が加わった際に、前記第1および第2圧力伝達孔を介して流れて来る粘性流体の圧力によって軸方向に移動することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたロータリーダンパーの破壊防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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