ロータリーダンパ及びその製造方法
【課題】粘性液体が充填される室の容積を減少させることなく蓋の変形を抑制し、それにより、制動特性の向上を図ることができるロータリーダンパを提供する。
【解決手段】本発明は、本体ケース1とロータ2との間に設けられる隔壁3と、隔壁3により仕切られた室4内に充填される粘性液体と、ロータ2と共に回転して粘性液体を押圧するベーン5と、本体ケース1の開口部を閉塞する蓋6とを有するロータリーダンパにおいて、蓋6が、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、本体ケース1とロータ2との間に設けられる隔壁3と、隔壁3により仕切られた室4内に充填される粘性液体と、ロータ2と共に回転して粘性液体を押圧するベーン5と、本体ケース1の開口部を閉塞する蓋6とを有するロータリーダンパにおいて、蓋6が、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパが知られている。かかるロータリーダンパは、ベーンが粘性液体を押圧することによって生じる粘性液体の抵抗により、ロータの回転速度を減速させるものである。
【0003】
しかしながら、従来のロータリーダンパでは、蓋の周縁部が本体ケースに固定される構造であるため、大きな制動力を発生させようとすると、粘性液体の圧力によって蓋の周縁部以外の部分が周縁部より隆起するように蓋が変形し、それにより、蓋と隔壁との間隙が拡大して、制動力が低下するという問題があった。
【0004】
下記特許文献1の図3には、ロータ(220)にフランジ(260)を設けて、該フランジを蓋(212)と隔壁(211e)との間に介在させる構成が記載されている。かかる構成によれば、蓋の変形を抑制することができる。しかしながら、かかる構成では、粘性液体が充填される室(230,231)の容積が減少することになり、制動特性の低下を招くことになる。また、粘性液体の圧力によりフランジが蓋に圧接され、フランジと蓋との間に摩擦抵抗が生じるため、制動特性が安定しないという問題があった。
【0005】
下記特許文献1の図9には、蓋(420)の厚さを厚くする構成が記載されている。かかる構成によっても、蓋の変形を抑制することができる。しかしながら、かかる構成も、粘性液体が充填される室(460)の容積が減少することになるため、制動特性の低下を招くことになる。
【0006】
下記特許文献1に記載されたように、従来のロータリーダンパでは、本体ケースと蓋との間隙を通じて粘性液体が外部へ漏出することを防止するため、Oリングが用いられている。したがって、必然的に本体ケースの開口部が円形となり、異形の開口部を有する本体ケースを採用できなかった。
【0007】
下記特許文献2及び特許文献3には、超音波溶着により、蓋の周縁部を本体ケースに溶着することが記載されている。しかしながら、超音波溶着には、溶着箇所に粘性液体が付着すると、溶着不良を引き起こし易いという欠点がある。従来の溶着方法では、部分的に溶着不良が生じていても、それが外観に現れないため、製造ライン上で溶着不良を検出することが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−372085号公報
【特許文献2】特開平5−240284号公報
【特許文献3】特開2006−112538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、粘性液体が充填される室の容積を減少させることなく蓋の変形を抑制し、それにより、制動特性の向上を図ることができるロータリーダンパ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下のロータリーダンパ及びその製造方法を提供する。
1.本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパであって、前記蓋が、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着されていることを特徴とするロータリーダンパ。
2.前記蓋が、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着されていることを特徴とする前記1に記載のロータリーダンパ。
3.レーザ溶着により形成される連続した溶着部によって、前記本体ケースと前記蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されることを特徴とする前記2に記載のロータリーダンパ。
4.前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを有することを特徴とする前記2又は3に記載のロータリーダンパ。
5.前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置していることを特徴とする前記2から4のいずれか1に記載のロータリーダンパ。
6.本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋を、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着する工程を含むことを特徴とするロータリーダンパの製造方法。
7.前記蓋を、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記6に記載のロータリーダンパの製造方法。
8.レーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むことを特徴とする前記7に記載のロータリーダンパの製造方法。
9.前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを備えており、該凸部を前記室に嵌め込んだ後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記7又は8に記載のロータリーダンパの製造方法。
10.前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置しており、それらの溶着面に前記蓋の溶着面を当接させた後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記7から9のいずれか1に記載のロータリーダンパの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
前記1に記載の本発明によれば、蓋が、本体ケースのみならず、隔壁にも溶着されるため、蓋の周縁部が本体ケースに溶着されることに加えて、蓋の径方向にも蓋と隔壁の溶着部(溶着された部分)が形成されることになる。したがって、蓋の周縁部のみが本体ケースに溶着される構造と比較して、粘性液体の圧力により蓋が変形する度合いを小さくすることが可能になる。その結果、厚さの薄い蓋を採用することが可能になるため、粘性液体が充填される室の容積を十分に確保できる。その上、蓋が変形し難いので、大きな制動力を発生させることが可能になる。
前記2に記載の本発明によれば、溶着箇所に粘性液体が付着していても、強固に溶着することが可能になる。
前記3に記載の本発明によれば、レーザ溶着により形成される連続した溶着部により、蓋と本体ケース及び隔壁との接合強度を高めることができる。また、当該溶着部によって、本体ケースと蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されるため、Oリング等のシール部材を不要にできる。さらに、Oリングが不要になるため、本体ケースの開口部が円形である必要性がなく、異形の開口部を有する本体ケースを採用することが可能になる。
前記4に記載の本発明によれば、蓋に設けられた凸部により、バリの発生を抑制することが可能になる。また、該凸部により、溶着箇所に粘性液体が付着することを防止できる。
前記5に記載の本発明によれば、本体ケースの溶着面と隔壁の溶着面とが同じ高さに位置することにより、それらの溶着面と蓋の溶着面との間の密着度が高まるため、より強固に溶着することが可能になる。
前記6に記載の本発明によれば、粘性液体が充填される室の容積を減少させることなく蓋の変形を抑制し、それにより、制動特性の向上を図ることができるロータリーダンパを提供することが可能になる。
前記7に記載の本発明によれば、溶着箇所に粘性液体が付着することによって引き起こされる溶着不良をなくすことができ、しかも、蓋を強固に溶着することが可能になる。
前記8に記載の本発明によれば、部分的に溶着不良が生じた場合に、それを製造ライン上で検出することが可能になる。
前記9に記載の本発明によれば、バリの発生を抑制し得るため、バリが粘性液体の中に混入することによって引き起こされるロータの回転不良を防止することが可能になる。また、溶着箇所への粘性液体の付着を防止し得るため、溶着不良の発生をより確実に防止できる。
前記10に記載の本発明によれば、量産した場合でも、蓋の溶着面と本体ケース及び隔壁の各溶着面との間の密着度にばらつきが生じに難く、かつ密着度が高いため、溶着の程度が良好な製品を大量に生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係るロータリーダンパを示す平面図、図2は同実施例に係るロータリーダンパを示す正面図、図3は図2におけるC−C部断面図、図4は図1におけるA−A部断面図、図5は図1におけるB−B部断面図、図6は図5におけるD部拡大図である。これらの図に示したように、実施例1に係るロータリーダンパは、本体ケース1とロータ2との間に設けられる隔壁3と、隔壁3により仕切られた室4内に充填される粘性液体と、ロータ2と共に回転して粘性液体を押圧するベーン5と、本体ケース1の開口部を閉塞する蓋6とを有して構成される。
【0014】
本体ケース1は、一端が開口し、他端が底壁1aにより閉塞されている。ロータ2は、一端に第1の溝2aを有し、他端に第2の溝2bを有する。ロータ2は、図4に示したように、第1の溝2aに、本体ケース1の底壁1aから突出する突起1bが嵌り込み、第2の溝2bに、蓋6の下面から突出する突起6aが嵌り込むことにより、本体ケース1内で回転可能に支持される。第1の溝2a付近及び第2の溝2b付近には、本体ケース1とロータ2との間隙及び蓋6とロータ2との間隙を通じて粘性液体が外部へ漏出することを防止するため、Oリング7が配設されている。隔壁3は、本体ケース1と一体に成形されている。ベーン5は、ロータ2と一体に成形されている。
【0015】
蓋6は、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着される。溶着方法としては、従来公知の溶着方法を採用することができる。好ましい溶着方法としては、レーザ溶着である。本実施例では、蓋6を、レーザ溶着により、本体ケース1及び隔壁3に溶着するために、蓋6は、レーザ光を透過する性質を有するものから成り、本体ケース1及び隔壁3は、レーザ光を吸収する性質を有するものから成る。蓋6、本体ケース1及び隔壁3としては、相互に融点が同一の熱可塑性樹脂からなるものを用いることが好ましい。
【0016】
レーザ溶着には、被溶着物に対してレーザ光を照射でき、かつレーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測し得る装置を用いることが好ましい。本実施例では、図7に示したように、レーザ光出力部8と赤外線入力部9とが一体的に構成された装置が用いられる。レーザ光出力部8から出力されたレーザ光10は、途中で屈折するように照射角度が調整され、蓋6の上面に照射され、蓋6を透過して本体ケース1又は隔壁3に到達し、本体ケース1又は隔壁3を加熱する。レーザ光10により本体ケース1又は隔壁3が加熱されることにより発生する赤外線11は、図8に示したように、赤外線入力部9に入力される。溶着部(溶着された部分)12の温度は、赤外線入力部9に入力された赤外線11に基づいて計測される。この装置によれば、同軸上でレーザ光10の照射と赤外線11の入力が可能であるため、溶着部12の温度測定が溶着と同時にできる。
【0017】
本体ケース1上に蓋6を載置し、蓋6の周縁部にレーザ光10を照射すると、図6に示したように、蓋6の下面と本体ケース1の端面とが接する部分に溶着部12が形成される。かかる溶着部12は、図3において太線で示したように、本体ケース1の外周端面上及び隔壁3の端面上に連続して形成されることが好ましい。これにより、本体ケース1と蓋6との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止される。
【0018】
蓋6は、該蓋6の溶着面を、本体ケース1の溶着面及び隔壁3の溶着面に当接させた後、レーザ溶着により溶着されるが、溶着時に互いに向き合う溶着面同士の間に隙間が存在すると、溶着不良を引き起こすことになるため、溶着時に互いに向き合う溶着面同士が密着していることが望ましい。ここで、溶着面とは、レーザ光を利用して溶着される面をいうが、本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面とが異なる高さに位置していると、蓋6の溶着面もそれらに対応して高低差のあるものとなるため、溶着時に互いに向き合う溶着面同士の間に隙間が生じ易くなる。特に量産する場合には、隙間のあるものとないものとが混在することによって、品質のばらつきが生じ易い。この点、本実施例では、図3及び図4に示したように、本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面とが同じ高さに位置しているため、蓋6の溶着面に高低差がなく、いずれも高低差のない溶着面同士を当接させることになるので、本体ケース1及び隔壁3の各溶着面と蓋6の溶着面との密着度が非常に高いものとなる。また、量産した場合でも、溶着面同士の密着度にばらつきが生じ難いので、溶着の程度が良好な製品を大量に生産することができる。
【0019】
上記のように構成されるロータリーダンパは、ロータ2と共にベーン5が回転し、粘性液体を押圧すると、粘性液体は、ベーン5と本体ケース1との間の僅かな隙間を通じて移動することになる。この際、粘性液体の抵抗が発生し、その抵抗により、ロータ2の回転速度が減速されることになる。
【0020】
かかるロータリーダンパに大きな制動力を発揮させようとする場合、蓋6の下面に粘性液体の大きな圧力が付与されることになる。この際、本実施例によれば、蓋6が、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着され、蓋6の周縁部に本体ケース1との溶着部12が形成されるとともに、蓋6の径方向にも蓋6と隔壁3の溶着部12が形成されるため、蓋6の周縁部のみが本体ケース1に溶着される構造と比較して、蓋6が変形する度合いが非常に小さい。したがって、厚さの薄い蓋6を採用して、粘性液体が充填される室4の容積を十分に確保できるとともに、大きな制動力を発生させることが可能になる。
【0021】
また、本実施例によれば、蓋6がレーザ溶着により本体ケース1及び隔壁3に溶着されるため、溶着箇所に粘性液体が付着していても、その量が大量でない限り、粘性液体の付着が原因で溶着不良となることがなく、蓋6を強固に溶着することができる。
【0022】
また、本実施例によれば、レーザ溶着により形成される連続した溶着部12により、蓋6と本体ケース1及び隔壁3との接合強度を高めることができる。また、当該溶着部12によって、本体ケース1と蓋6との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されるため、蓋6と本体ケース1との間に設けられるOリングを不要にできる。さらに、Oリングが不要になるため、本体ケース1の開口部が円形である必要性がなく、図3に示したように、異形の開口部を有する本体ケース1を採用することができる。
【0023】
さらに、本実施例によれば、ロータリーダンパの製造工程において、レーザ溶着時に、レーザ光10により加熱された部位から発せられる赤外線11に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むため、部分的に溶着不良が生じた場合に、それを製造ライン上で検出することができる。すなわち、蓋6と本体ケース1又は蓋6と隔壁3が十分かつ確実に溶着されている場合には、溶着される面同士が密着して熱を逃がすため、融点付近の温度が計測されることになるが、溶着が不十分な場合には、溶着される面同士の間に隙間が生じているので、熱を逃がすことができず、融点より高い温度が計測されることになる。したがって、相対的に融点より高い温度が計測された場合には、溶着不良が生じているものと判断して、製造ライン上で排除することができる。
【実施例2】
【0024】
図9は本発明の実施例2に係るロータリーダンパを示す平面図、図10は同実施例に係るロータリーダンパを示す正面図、図11は図10におけるD−D部断面図、図12は図10におけるE−E部断面図、図13は図9におけるA−A部断面図、図14は図9におけるB−B部断面図、図15は図9におけるC−C部断面図、図16は同実施例において採用した蓋の底面図、図17は同実施例において採用した蓋の正面図、図18は図16におけるF−F部断面図、図19は図15におけるG部拡大図である。これらの図に示したように、実施例2に係るロータリーダンパは、蓋6が室4に嵌り込む凸部6bを有する点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0025】
凸部6bは、本体ケース1の内周面1c(図12参照)に接する外周面6c(図16及び図17参照)と、隔壁3の側面3a(図12参照)に接する側面6d(図16及び図17参照)とを有し、図16に示したように、本体ケース1の開口部(室4の開口部)と略同一の輪郭を有する形状に形成されている。
【0026】
本実施例では、凸部6bを室4に嵌め込み、蓋6の溶着面と本体ケース1及び隔壁3の各溶着面とを当接させた後、蓋6がレーザ溶着により本体ケース1及び隔壁3に溶着される。
【0027】
本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面は、実施例1と同様に、同じ高さに位置しているが、本実施例によれば、実施例1と異なり、凸部6bによって溶着箇所への粘性液体の付着を確実に防止できる。すなわち、蓋6が凸部6bを有しない構造では、室4に充填される粘性液体の液面と本体ケース1及び隔壁3の各溶着面とがほぼ同じ高さに位置することになるため、粘性液体が室4から溢れ出て、それらの溶着面に大量に付着するおそれがある。粘性液体が溶着面に大量に付着した場合には、レーザ溶着によっても溶着不良が発生する。この点、本実施例では、凸部6bが室4に嵌り込むことにより、粘性液体が室4から溢れ出ることを阻止できるので、本体ケース1及び隔壁3の各溶着面への粘性液体の付着がなく、溶着不良の発生を確実に防止し得る。
【0028】
また、図20に示したように、蓋6が凸部6bを有しない構造では、溶着後に、溶着部12付近に、室4にはみ出すバリ13が生じることがある。そして、このバリ13が脱落し、粘性液体の中に混入すると、バリ13がロータ2と隔壁3との間又は本体ケース1とベーン5との間に詰まって、ロータ2の回転を妨害し、ロータ2の回転不良を発生させることになる。この点、本実施例では、凸部6bが室4に嵌り込むことにより、バリ13の発生を抑制し得るため、バリ13が粘性液体の中に混入することによって引き起こされるロータ2の回転不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図2】実施例1に係るロータリーダンパを示す正面図である。
【図3】図2におけるC−C部断面図である。
【図4】図1におけるA−A部断面図である。
【図5】図1におけるB−B部断面図である。
【図6】図5におけるD部拡大図である。
【図7】実施例1に係るロータリーダンパの製造方法を説明するための概略図である。
【図8】実施例1に係るロータリーダンパの製造方法を説明するための概略図である。
【図9】実施例2に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図10】実施例2に係るロータリーダンパを示す正面図である。
【図11】図10におけるD−D部断面図である。
【図12】図10におけるE−E部断面図である。
【図13】図9におけるA−A部断面図である。
【図14】図9におけるB−B部断面図である。
【図15】図9におけるC−C部断面図である。
【図16】実施例2において採用した蓋の底面図である。
【図17】実施例2において採用した蓋の正面図である。
【図18】図16におけるF−F部断面図である。
【図19】図15におけるG部拡大図である。
【図20】実施例2において採用した蓋の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体ケース
1a 底壁
1b 突起
2 ロータ
2a 第1の溝
2b 第2の溝
3 隔壁
4 室
5 ベーン
6 蓋
6a 突起
6b 凸部
7 Oリング
8 レーザ光出力部
9 赤外線入力部
10 レーザ光
11 赤外線
12 溶着部
13 バリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパが知られている。かかるロータリーダンパは、ベーンが粘性液体を押圧することによって生じる粘性液体の抵抗により、ロータの回転速度を減速させるものである。
【0003】
しかしながら、従来のロータリーダンパでは、蓋の周縁部が本体ケースに固定される構造であるため、大きな制動力を発生させようとすると、粘性液体の圧力によって蓋の周縁部以外の部分が周縁部より隆起するように蓋が変形し、それにより、蓋と隔壁との間隙が拡大して、制動力が低下するという問題があった。
【0004】
下記特許文献1の図3には、ロータ(220)にフランジ(260)を設けて、該フランジを蓋(212)と隔壁(211e)との間に介在させる構成が記載されている。かかる構成によれば、蓋の変形を抑制することができる。しかしながら、かかる構成では、粘性液体が充填される室(230,231)の容積が減少することになり、制動特性の低下を招くことになる。また、粘性液体の圧力によりフランジが蓋に圧接され、フランジと蓋との間に摩擦抵抗が生じるため、制動特性が安定しないという問題があった。
【0005】
下記特許文献1の図9には、蓋(420)の厚さを厚くする構成が記載されている。かかる構成によっても、蓋の変形を抑制することができる。しかしながら、かかる構成も、粘性液体が充填される室(460)の容積が減少することになるため、制動特性の低下を招くことになる。
【0006】
下記特許文献1に記載されたように、従来のロータリーダンパでは、本体ケースと蓋との間隙を通じて粘性液体が外部へ漏出することを防止するため、Oリングが用いられている。したがって、必然的に本体ケースの開口部が円形となり、異形の開口部を有する本体ケースを採用できなかった。
【0007】
下記特許文献2及び特許文献3には、超音波溶着により、蓋の周縁部を本体ケースに溶着することが記載されている。しかしながら、超音波溶着には、溶着箇所に粘性液体が付着すると、溶着不良を引き起こし易いという欠点がある。従来の溶着方法では、部分的に溶着不良が生じていても、それが外観に現れないため、製造ライン上で溶着不良を検出することが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−372085号公報
【特許文献2】特開平5−240284号公報
【特許文献3】特開2006−112538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、粘性液体が充填される室の容積を減少させることなく蓋の変形を抑制し、それにより、制動特性の向上を図ることができるロータリーダンパ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下のロータリーダンパ及びその製造方法を提供する。
1.本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパであって、前記蓋が、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着されていることを特徴とするロータリーダンパ。
2.前記蓋が、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着されていることを特徴とする前記1に記載のロータリーダンパ。
3.レーザ溶着により形成される連続した溶着部によって、前記本体ケースと前記蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されることを特徴とする前記2に記載のロータリーダンパ。
4.前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを有することを特徴とする前記2又は3に記載のロータリーダンパ。
5.前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置していることを特徴とする前記2から4のいずれか1に記載のロータリーダンパ。
6.本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋を、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着する工程を含むことを特徴とするロータリーダンパの製造方法。
7.前記蓋を、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記6に記載のロータリーダンパの製造方法。
8.レーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むことを特徴とする前記7に記載のロータリーダンパの製造方法。
9.前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを備えており、該凸部を前記室に嵌め込んだ後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記7又は8に記載のロータリーダンパの製造方法。
10.前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置しており、それらの溶着面に前記蓋の溶着面を当接させた後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする前記7から9のいずれか1に記載のロータリーダンパの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
前記1に記載の本発明によれば、蓋が、本体ケースのみならず、隔壁にも溶着されるため、蓋の周縁部が本体ケースに溶着されることに加えて、蓋の径方向にも蓋と隔壁の溶着部(溶着された部分)が形成されることになる。したがって、蓋の周縁部のみが本体ケースに溶着される構造と比較して、粘性液体の圧力により蓋が変形する度合いを小さくすることが可能になる。その結果、厚さの薄い蓋を採用することが可能になるため、粘性液体が充填される室の容積を十分に確保できる。その上、蓋が変形し難いので、大きな制動力を発生させることが可能になる。
前記2に記載の本発明によれば、溶着箇所に粘性液体が付着していても、強固に溶着することが可能になる。
前記3に記載の本発明によれば、レーザ溶着により形成される連続した溶着部により、蓋と本体ケース及び隔壁との接合強度を高めることができる。また、当該溶着部によって、本体ケースと蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されるため、Oリング等のシール部材を不要にできる。さらに、Oリングが不要になるため、本体ケースの開口部が円形である必要性がなく、異形の開口部を有する本体ケースを採用することが可能になる。
前記4に記載の本発明によれば、蓋に設けられた凸部により、バリの発生を抑制することが可能になる。また、該凸部により、溶着箇所に粘性液体が付着することを防止できる。
前記5に記載の本発明によれば、本体ケースの溶着面と隔壁の溶着面とが同じ高さに位置することにより、それらの溶着面と蓋の溶着面との間の密着度が高まるため、より強固に溶着することが可能になる。
前記6に記載の本発明によれば、粘性液体が充填される室の容積を減少させることなく蓋の変形を抑制し、それにより、制動特性の向上を図ることができるロータリーダンパを提供することが可能になる。
前記7に記載の本発明によれば、溶着箇所に粘性液体が付着することによって引き起こされる溶着不良をなくすことができ、しかも、蓋を強固に溶着することが可能になる。
前記8に記載の本発明によれば、部分的に溶着不良が生じた場合に、それを製造ライン上で検出することが可能になる。
前記9に記載の本発明によれば、バリの発生を抑制し得るため、バリが粘性液体の中に混入することによって引き起こされるロータの回転不良を防止することが可能になる。また、溶着箇所への粘性液体の付着を防止し得るため、溶着不良の発生をより確実に防止できる。
前記10に記載の本発明によれば、量産した場合でも、蓋の溶着面と本体ケース及び隔壁の各溶着面との間の密着度にばらつきが生じに難く、かつ密着度が高いため、溶着の程度が良好な製品を大量に生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係るロータリーダンパを示す平面図、図2は同実施例に係るロータリーダンパを示す正面図、図3は図2におけるC−C部断面図、図4は図1におけるA−A部断面図、図5は図1におけるB−B部断面図、図6は図5におけるD部拡大図である。これらの図に示したように、実施例1に係るロータリーダンパは、本体ケース1とロータ2との間に設けられる隔壁3と、隔壁3により仕切られた室4内に充填される粘性液体と、ロータ2と共に回転して粘性液体を押圧するベーン5と、本体ケース1の開口部を閉塞する蓋6とを有して構成される。
【0014】
本体ケース1は、一端が開口し、他端が底壁1aにより閉塞されている。ロータ2は、一端に第1の溝2aを有し、他端に第2の溝2bを有する。ロータ2は、図4に示したように、第1の溝2aに、本体ケース1の底壁1aから突出する突起1bが嵌り込み、第2の溝2bに、蓋6の下面から突出する突起6aが嵌り込むことにより、本体ケース1内で回転可能に支持される。第1の溝2a付近及び第2の溝2b付近には、本体ケース1とロータ2との間隙及び蓋6とロータ2との間隙を通じて粘性液体が外部へ漏出することを防止するため、Oリング7が配設されている。隔壁3は、本体ケース1と一体に成形されている。ベーン5は、ロータ2と一体に成形されている。
【0015】
蓋6は、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着される。溶着方法としては、従来公知の溶着方法を採用することができる。好ましい溶着方法としては、レーザ溶着である。本実施例では、蓋6を、レーザ溶着により、本体ケース1及び隔壁3に溶着するために、蓋6は、レーザ光を透過する性質を有するものから成り、本体ケース1及び隔壁3は、レーザ光を吸収する性質を有するものから成る。蓋6、本体ケース1及び隔壁3としては、相互に融点が同一の熱可塑性樹脂からなるものを用いることが好ましい。
【0016】
レーザ溶着には、被溶着物に対してレーザ光を照射でき、かつレーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測し得る装置を用いることが好ましい。本実施例では、図7に示したように、レーザ光出力部8と赤外線入力部9とが一体的に構成された装置が用いられる。レーザ光出力部8から出力されたレーザ光10は、途中で屈折するように照射角度が調整され、蓋6の上面に照射され、蓋6を透過して本体ケース1又は隔壁3に到達し、本体ケース1又は隔壁3を加熱する。レーザ光10により本体ケース1又は隔壁3が加熱されることにより発生する赤外線11は、図8に示したように、赤外線入力部9に入力される。溶着部(溶着された部分)12の温度は、赤外線入力部9に入力された赤外線11に基づいて計測される。この装置によれば、同軸上でレーザ光10の照射と赤外線11の入力が可能であるため、溶着部12の温度測定が溶着と同時にできる。
【0017】
本体ケース1上に蓋6を載置し、蓋6の周縁部にレーザ光10を照射すると、図6に示したように、蓋6の下面と本体ケース1の端面とが接する部分に溶着部12が形成される。かかる溶着部12は、図3において太線で示したように、本体ケース1の外周端面上及び隔壁3の端面上に連続して形成されることが好ましい。これにより、本体ケース1と蓋6との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止される。
【0018】
蓋6は、該蓋6の溶着面を、本体ケース1の溶着面及び隔壁3の溶着面に当接させた後、レーザ溶着により溶着されるが、溶着時に互いに向き合う溶着面同士の間に隙間が存在すると、溶着不良を引き起こすことになるため、溶着時に互いに向き合う溶着面同士が密着していることが望ましい。ここで、溶着面とは、レーザ光を利用して溶着される面をいうが、本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面とが異なる高さに位置していると、蓋6の溶着面もそれらに対応して高低差のあるものとなるため、溶着時に互いに向き合う溶着面同士の間に隙間が生じ易くなる。特に量産する場合には、隙間のあるものとないものとが混在することによって、品質のばらつきが生じ易い。この点、本実施例では、図3及び図4に示したように、本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面とが同じ高さに位置しているため、蓋6の溶着面に高低差がなく、いずれも高低差のない溶着面同士を当接させることになるので、本体ケース1及び隔壁3の各溶着面と蓋6の溶着面との密着度が非常に高いものとなる。また、量産した場合でも、溶着面同士の密着度にばらつきが生じ難いので、溶着の程度が良好な製品を大量に生産することができる。
【0019】
上記のように構成されるロータリーダンパは、ロータ2と共にベーン5が回転し、粘性液体を押圧すると、粘性液体は、ベーン5と本体ケース1との間の僅かな隙間を通じて移動することになる。この際、粘性液体の抵抗が発生し、その抵抗により、ロータ2の回転速度が減速されることになる。
【0020】
かかるロータリーダンパに大きな制動力を発揮させようとする場合、蓋6の下面に粘性液体の大きな圧力が付与されることになる。この際、本実施例によれば、蓋6が、本体ケース1のみならず、隔壁3にも溶着され、蓋6の周縁部に本体ケース1との溶着部12が形成されるとともに、蓋6の径方向にも蓋6と隔壁3の溶着部12が形成されるため、蓋6の周縁部のみが本体ケース1に溶着される構造と比較して、蓋6が変形する度合いが非常に小さい。したがって、厚さの薄い蓋6を採用して、粘性液体が充填される室4の容積を十分に確保できるとともに、大きな制動力を発生させることが可能になる。
【0021】
また、本実施例によれば、蓋6がレーザ溶着により本体ケース1及び隔壁3に溶着されるため、溶着箇所に粘性液体が付着していても、その量が大量でない限り、粘性液体の付着が原因で溶着不良となることがなく、蓋6を強固に溶着することができる。
【0022】
また、本実施例によれば、レーザ溶着により形成される連続した溶着部12により、蓋6と本体ケース1及び隔壁3との接合強度を高めることができる。また、当該溶着部12によって、本体ケース1と蓋6との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されるため、蓋6と本体ケース1との間に設けられるOリングを不要にできる。さらに、Oリングが不要になるため、本体ケース1の開口部が円形である必要性がなく、図3に示したように、異形の開口部を有する本体ケース1を採用することができる。
【0023】
さらに、本実施例によれば、ロータリーダンパの製造工程において、レーザ溶着時に、レーザ光10により加熱された部位から発せられる赤外線11に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むため、部分的に溶着不良が生じた場合に、それを製造ライン上で検出することができる。すなわち、蓋6と本体ケース1又は蓋6と隔壁3が十分かつ確実に溶着されている場合には、溶着される面同士が密着して熱を逃がすため、融点付近の温度が計測されることになるが、溶着が不十分な場合には、溶着される面同士の間に隙間が生じているので、熱を逃がすことができず、融点より高い温度が計測されることになる。したがって、相対的に融点より高い温度が計測された場合には、溶着不良が生じているものと判断して、製造ライン上で排除することができる。
【実施例2】
【0024】
図9は本発明の実施例2に係るロータリーダンパを示す平面図、図10は同実施例に係るロータリーダンパを示す正面図、図11は図10におけるD−D部断面図、図12は図10におけるE−E部断面図、図13は図9におけるA−A部断面図、図14は図9におけるB−B部断面図、図15は図9におけるC−C部断面図、図16は同実施例において採用した蓋の底面図、図17は同実施例において採用した蓋の正面図、図18は図16におけるF−F部断面図、図19は図15におけるG部拡大図である。これらの図に示したように、実施例2に係るロータリーダンパは、蓋6が室4に嵌り込む凸部6bを有する点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0025】
凸部6bは、本体ケース1の内周面1c(図12参照)に接する外周面6c(図16及び図17参照)と、隔壁3の側面3a(図12参照)に接する側面6d(図16及び図17参照)とを有し、図16に示したように、本体ケース1の開口部(室4の開口部)と略同一の輪郭を有する形状に形成されている。
【0026】
本実施例では、凸部6bを室4に嵌め込み、蓋6の溶着面と本体ケース1及び隔壁3の各溶着面とを当接させた後、蓋6がレーザ溶着により本体ケース1及び隔壁3に溶着される。
【0027】
本体ケース1の溶着面と隔壁3の溶着面は、実施例1と同様に、同じ高さに位置しているが、本実施例によれば、実施例1と異なり、凸部6bによって溶着箇所への粘性液体の付着を確実に防止できる。すなわち、蓋6が凸部6bを有しない構造では、室4に充填される粘性液体の液面と本体ケース1及び隔壁3の各溶着面とがほぼ同じ高さに位置することになるため、粘性液体が室4から溢れ出て、それらの溶着面に大量に付着するおそれがある。粘性液体が溶着面に大量に付着した場合には、レーザ溶着によっても溶着不良が発生する。この点、本実施例では、凸部6bが室4に嵌り込むことにより、粘性液体が室4から溢れ出ることを阻止できるので、本体ケース1及び隔壁3の各溶着面への粘性液体の付着がなく、溶着不良の発生を確実に防止し得る。
【0028】
また、図20に示したように、蓋6が凸部6bを有しない構造では、溶着後に、溶着部12付近に、室4にはみ出すバリ13が生じることがある。そして、このバリ13が脱落し、粘性液体の中に混入すると、バリ13がロータ2と隔壁3との間又は本体ケース1とベーン5との間に詰まって、ロータ2の回転を妨害し、ロータ2の回転不良を発生させることになる。この点、本実施例では、凸部6bが室4に嵌り込むことにより、バリ13の発生を抑制し得るため、バリ13が粘性液体の中に混入することによって引き起こされるロータ2の回転不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図2】実施例1に係るロータリーダンパを示す正面図である。
【図3】図2におけるC−C部断面図である。
【図4】図1におけるA−A部断面図である。
【図5】図1におけるB−B部断面図である。
【図6】図5におけるD部拡大図である。
【図7】実施例1に係るロータリーダンパの製造方法を説明するための概略図である。
【図8】実施例1に係るロータリーダンパの製造方法を説明するための概略図である。
【図9】実施例2に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図10】実施例2に係るロータリーダンパを示す正面図である。
【図11】図10におけるD−D部断面図である。
【図12】図10におけるE−E部断面図である。
【図13】図9におけるA−A部断面図である。
【図14】図9におけるB−B部断面図である。
【図15】図9におけるC−C部断面図である。
【図16】実施例2において採用した蓋の底面図である。
【図17】実施例2において採用した蓋の正面図である。
【図18】図16におけるF−F部断面図である。
【図19】図15におけるG部拡大図である。
【図20】実施例2において採用した蓋の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体ケース
1a 底壁
1b 突起
2 ロータ
2a 第1の溝
2b 第2の溝
3 隔壁
4 室
5 ベーン
6 蓋
6a 突起
6b 凸部
7 Oリング
8 レーザ光出力部
9 赤外線入力部
10 レーザ光
11 赤外線
12 溶着部
13 バリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパであって、前記蓋が、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着されていることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記蓋が、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
レーザ溶着により形成される連続した溶着部によって、前記本体ケースと前記蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されることを特徴とする請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを有することを特徴とする請求項2又は3に記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置していることを特徴とする請求項2から4のいずれか1に記載のロータリーダンパ。
【請求項6】
本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋を、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着する工程を含むことを特徴とするロータリーダンパの製造方法。
【請求項7】
前記蓋を、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項6に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項8】
レーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項9】
前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを備えており、該凸部を前記室に嵌め込んだ後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項7又は8に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項10】
前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置しており、それらの溶着面に前記蓋の溶着面を当接させた後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項7から9のいずれか1に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項1】
本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパであって、前記蓋が、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着されていることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記蓋が、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
レーザ溶着により形成される連続した溶着部によって、前記本体ケースと前記蓋との間隙を通じた粘性液体の漏出が防止されることを特徴とする請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを有することを特徴とする請求項2又は3に記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置していることを特徴とする請求項2から4のいずれか1に記載のロータリーダンパ。
【請求項6】
本体ケースとロータとの間に設けられる隔壁と、該隔壁により仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記ロータと共に回転して前記粘性液体を押圧するベーンと、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋を、前記本体ケースのみならず、前記隔壁にも溶着する工程を含むことを特徴とするロータリーダンパの製造方法。
【請求項7】
前記蓋を、レーザ溶着により、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項6に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項8】
レーザ溶着時に、レーザ光により加熱された部位から発せられる赤外線に基づいて当該部位の温度を計測する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項9】
前記蓋が、前記室に嵌り込む凸部を有し、該凸部は、前記本体ケースの内周面に接する外周面と、前記隔壁の側面に接する側面とを備えており、該凸部を前記室に嵌め込んだ後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項7又は8に記載のロータリーダンパの製造方法。
【請求項10】
前記本体ケースの溶着面と前記隔壁の溶着面とが同じ高さに位置しており、それらの溶着面に前記蓋の溶着面を当接させた後、前記蓋を、前記本体ケース及び前記隔壁に溶着することを特徴とする請求項7から9のいずれか1に記載のロータリーダンパの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−215606(P2008−215606A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137401(P2007−137401)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
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