説明

ロータリーダンパ

【課題】トルク変動を抑制することができるロータリーダンパを得る。
【解決手段】ロータ104の回転によってロータ104の軸方向に沿って往復移動するチップ116を複数設け、各チップ116で互いに位相をずらして移動させるようにすることで、各チップ116によって、往路と復路とでチップ116の移動方向が変わるタイミングが異なることになる。このため、一つのチップ116でシリコンオイルによる圧縮抵抗が増大する方向へ移動しても、他のチップ116ではシリコンオイルによる圧縮抵抗が減少する方向へ移動したりするので、各チップ116によって生じるトルク変動を他のチップ116との間で互いに相殺することができる。したがって、ロータ104に作用するトルクの変動を抑制することができ、ロータ104のスムーズな回転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータにトルクを付与するロータリーダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
引き戸や引出し等の移動体には、該移動体を制動するためのダンパを用いている場合があり、移動体が必要以上に勢いよく移動しないようにしている。例えば、特許文献1では、回転軸の回転によって、回転軸に外挿された回転円板が、ダンパケース内で回転軸の軸方向に沿って往復移動する。この回転円板には、複数の絞り流路を設けており、回転円板の移動によって、該絞り流路を液体が流動することで、回転軸にトルクを作用させている。
【0003】
しかしながら、このようにトルクを発生させるための回転円板を往復移動させた場合、往路と復路とで回転円板の移動方向が変わる時、大きなトルク変動が生じてしまう。
【特許文献1】特公平4−5856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、トルク変動を抑制することができるロータリーダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ロータリーダンパにおいて、粘性流体が充填された筒状のハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に収容され、外部から回転力が伝達されるロータと、前記ロータの回転力を、前記ハウジング内に設けられた移動部材を往復移動させる力に変換する変換手段と、を備え、前記移動部材が少なくとも2つ設けられ、互いに位相をずらして移動することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明では、筒状のハウジング内には粘性流体が充填されており、該ハウジングは、外部から回転力が伝達されるロータを回転可能に収容している。このロータの回転力を、変換手段によって、ハウジング内に設けられた移動部材を往復移動させる力に変換させる。ここで、この移動部材を少なくとも2つ設け、互いに位相をずらして移動させるようにしている。
【0007】
このように、変換手段によって、ロータの回転移動を移動部材の直線移動に変換することで、ロータの移動量に対して移動部材の移動量を増やすことができ、ロータに作用するトルク量を増やすことができる。
【0008】
そして、移動部材を複数設け、各移動部材で互いに位相をずらして移動させるようにすることで、各移動部材によって、往路と復路とで移動部材の移動方向が変わるタイミングが異なることになる。
【0009】
このため、一つの移動部材で粘性流体によるトルクが増大する方向へ移動しても、他の移動部材では粘性流体によるトルクが減少する方向へ移動したりするので、各移動部材によって生じるトルク変動を他の移動部材との間で互いに相殺することができる。したがって、ロータに作用するトルクの変動を抑止することができ、ロータのスムーズな回転を確保することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータリーダンパにおいて、前記移動部材が、前記ハウジングの内壁から突出し前記液室を区画する柱材の間で上下移動可能に設けられ、前記変換手段が、前記ロータの外周面に形成され該ロータの軸方向に山と谷を有する波形状のカム溝と、前記移動部材に設けられ前記カム溝と係合する係合突起と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、ハウジングの内壁から突出し液室を区画する柱材の間で移動部材を上下移動可能に設けている。そして、ロータの外周面には、該ロータの軸方向に沿って山と谷を有する波形状のカム溝を形成し、移動部材に該カム溝と係合する係合突起を設けることで、ロータを回転させると、カム溝の形状に合わせて、係合突起を介して、移動部材をロータの軸方向に沿って移動させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のロータリーダンパにおいて、前記変換手段が、中心軸が傾斜した状態で前記ロータの軸芯に対して偏心して連結され、該ロータの回転によって揺動する揺動部材であり、前記揺動部材の表面に前記移動部材が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、中心軸が傾斜した状態で、ロータの軸芯に対して偏心して連結される揺動部材を設けている。このため、ロータの回転によって、該揺動部材は揺動することとなるが、この揺動部材の揺動によって、揺動部材の表面に設けられた移動部材は、上下移動を含め揺動することとなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のロータリーダンパにおいて、前記変換手段が、前記ロータとは異なる軸芯を有し、該ロータの回転力が伝達される回転部材と、前記回転部材の軸芯から位置をずらして設けられたガイド突起と、前記移動部材に設けられ、前記ガイド突起と係合する直線状のガイド溝と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明では、ロータとは異なる軸芯を有し、該ロータによって回転力が伝達される回転部材を備えており、該回転部材の軸芯から位置をずらしてガイド突起を設けている。そして、移動部材にはこのガイド突起と係合する直線状のガイド溝を設けている。
【0016】
回転部材が回転すると、ロータとは異なる軸芯でガイド突起も回転することとなるが、該ガイド突起と係合する、移動部材のガイド溝は直線状であるため、ガイド突起の回転移動に対して、移動部材は揺動することとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成としたので、トルク変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパについて説明する。
【0019】
図1〜図3に示すように、ロータリーダンパ100には、略円筒状を成す有底のハウジング102が備えられている。ここで、説明の便宜上、ハウジング102の開口側をロータリーダンパ100の上側、底部側をロータリーダンパ100の下側として各部品の説明を行う。
【0020】
このハウジング102内には、シリコンオイルが充填されており、ハウジング102内には、棒状のロータ104が収容可能となっている。このロータ104の一端側は、他端側よりも小径となっており、外部へ露出し、回転力を伝達する伝達部材(図示省略)と連結される。
【0021】
ロータ104の他端側には、ロータ104の軸方向に沿って振幅する波形のカム溝(カム手段)106が形成されており、波数は4つとなっている。そして、このロータ104の他端側には、略円筒状のカラー108が外挿されている。
【0022】
カラー108の上端側には、小径部109が設けられており、該小径部109によってカラー108の内周面側には段差109Aが設けられている。そして、この段差109Aの角部には、Oリング装着溝110が形成されており、Oリング112が装着されている。このOリング112により、カラー108とロータ104との間で、シリコンオイルが外部へ漏れないようにしている。
【0023】
また、カラー108には、カム溝106と対応する位置に、120°間隔で3つの矩形孔114が形成されており、カラー108の外側には、各矩形孔114を覆うようにして、カラー108の外周面に合わせて円弧状に形成された板状のチップ(移動部材)116がそれぞれ設けられる。
【0024】
チップ116の内側中央部からは、係合突起(カム手段)118が突出しており、該係合突起118はカラー108の矩形孔114を通じて、ロータ104のカム溝106と係合可能となっている。これにより、ロータ104の回転によって、カム溝106及び係合突起118を介して、チップ116がロータ104の軸方向に沿って往復移動する(図4参照)。このとき、各チップ116は互いに位相をずらして移動する。
【0025】
また、隣り合うチップ116間には隙間が設けられており、チップ116の側面には、チップ116の移動方向に沿ってオリフィス120が形成されている。
【0026】
ここで、ハウジング102の内周面には、カラー108に取付られたチップ116との干渉を回避するため、上部が開口する略矩形状のチップ収容部122が凹設されている。そして、このチップ収容部122内にシリコンオイルが充填され、チップ収容部122内で、ロータ104の軸方向に沿ってチップ116が往復移動する。
【0027】
また、図3に示すように、チップ116の係合突起118がカム溝106の山と谷の中央部に配置された状態で、チップ収容部122の上部を塞ぐ、後述する内キャップ124の鍔部126の下面とチップ116の上端面との間に設けられた隙間(空間S)と、チップ収容部122の底面とチップ116の下端面との間に設けられた隙間(空間S)は同じ大きさとなっている。つまり、チップ116が往復移動するに当って生じるシリコンオイルの圧縮力に対してチップ116の移動方向による違いはない。
【0028】
一方、図5及び図7(A)に示すように、カラー108の中央部に設けられた矩形孔114と矩形孔114の間には、カラー108の軸方向に沿った両側に、矩形状の連通凹部128が形成されており、チップ116との間に隙間を設けるようにしている。
【0029】
また、カラー108の上端部には、逆三角形状に形成されたカム面108Aが設けられている。カラー108の上部には、ロータ104に外挿された環状のカム132が設けられており、該カム132の下端部には、カム面108Aと面接触可能なカム面132Aが設けられ、互いに係合している。
【0030】
また、カム132の外側には、略円筒状を成す内キャップ124が外挿される。該内キャップ124の内周面には、位置決め溝134が形成されており、この位置決め溝134には、カム132の外周面に、カム132の軸方向に沿って突設された位置決めリブ136が係合可能となっている。この位置決め溝134を位置決めリブ136に係合させた状態で、カム132が内キャップ124に対して回り止めされる。
【0031】
一方、カム132の上部には、内キャップ124の上端部内側に設けられた環状部124Aとの間に隙間が設けられており、該隙間内にはコイルスプリング137が配設され、一端部が環状部124Aに当接し、他端部がカム132に当接して、該カム132をカラー108側へ付勢している。これにより、カラー108のカム面108Aは、カム132のカム面132Aとの係合状態(カム面108Aの谷部とカム面132Aの山部の位置が一致している状態)が維持される。
【0032】
ところで、カラー108の外周面には、上端側に形成された小径部109によって段部138が設けられている。一方、ハウジング102の上端部内側には、環状の台座部140が設けられており、カラー108がハウジング102内に収容された状態で、段部138と略同じ高さとなっている。
【0033】
そして、カラー108の外側に外挿された内キャップ124の下端部には、鍔部126が形成されており、該鍔部126の下面が、段部138及び台座部140に略当接する。そして、この鍔部126の下面を台座部140に固定する。これにより、内キャップ124及び該内キャップ124を介してカム132が回転不能となる。
【0034】
この状態で、内キャップ124の鍔部126の上面とハウジング102の上端部とは面一の状態となり、内キャップ124の鍔部126を覆うように形成され、内側にネジ部142Aが形成された外キャップ142が、ハウジング102の外周面に形成されたネジ部102Aにねじ込まれ、該外キャップ142を介して、内キャップ124がハウジング102に固定される。
【0035】
ここで、鍔部126の下面の外縁部及び内縁部には、Oリング装着部144、146が形成されており、Oリング148、150がそれぞれ装着可能となっている。Oリング148は、内キャップ124とハウジング102との間で、シリコンオイルが外部へ漏れないようにしており、Oリング150は、内キャップ124とカラー108との間で、シリコンオイルが外部へ漏れないようにしている。
【0036】
ところで、カム132の上部と内キャップ124の環状部124Aとの間に配設されたコイルスプリング137の付勢力によって、図5に示すように、カム132のカム面132Aとカラー108のカム面108Aとが係合している状態では、ハウジング102内にカラー108が収容された状態で、カラー108に設けられた連通凹部128が、ハウジング102内に設けられた、隣り合うチップ収容部122同士を区画する区画リブ130と対面し、区画リブ130の両側面からはみ出している。
【0037】
図7(A)に示すように、カラー108の外周面と区画リブ130との間には、隙間はほとんど生じないが、連通凹部128と区画リブ130との間には隙間が設けられ、また、連通凹部128は区画リブ130の両側面からはみ出しているため、該連通凹部128を通じて、隣り合うチップ収容部122同士が連通状態とされる(隣り合う空間S同士、空間S同士が連通状態とされる)こととなる。
【0038】
一方、コイルスプリング137の付勢力の抗する方向への応力(カラー108を正回転或いは逆回転させる応力)によって、図6に示すように、カム132のカム面132Aとカラー108のカム面108Aとの係合状態を解除させると、図7(B)に示すように、連通凹部128の一端側が区画リブ130によって塞がれることとなる。つまり、連通凹部128による、隣り合うチップ収容部122は非連通状態とされる(隣り合う空間S同士、空間S同士は非連通状態とされる)。
【0039】
次に、本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパの作用について説明する。
【0040】
ロータ104を低速で回転させると、図4に示すように、ロータ104に形成されたカム溝106及びチップ116に形成された係合突起118を介して、該チップ116がカム溝106の形状に合わせてチップ収容部122内でロータ104の軸方向に沿って往復移動する。
【0041】
これにより、図5及び図7(A)で示すチップ収容部122内では、チップ116がチップ収容部122内のシリコンオイルを攪拌することにより生じる粘性抵抗及びチップ116が移動する際にチップ収容部122の内壁との間で生じる剪断抵抗が発生する。
【0042】
ここで、例えば、チップ116が上方へ移動すると、チップ116の上端面と内キャップ124の鍔部126の下面との間に設けられた隙間(空間S)は狭くなるため、シリコンオイルによる圧縮抵抗が生じることとなる。
【0043】
しかし、各チップ116は互いに位相をずらして移動するため、3つのチップ116が全て同一方向へ移動することはない。したがって、図5に示すように、チップ116の移動によって構成される空間Sが狭くなった状態では、隣のチップ116で構成される空間Sは広くなっている。
【0044】
一方、カラー108に設けられた連通凹部128は、区画リブ130との間に隙間を設けた状態で略対面し、区画リブ130の両側面からはみ出して、該連通凹部128を通じて、隣り合うチップ収容部122同士を連通させている(隣り合う空間S同士、空間S同士が連通させている)。
【0045】
このため、チップ116の移動により、空間が狭くなると、該空間内のシリコンオイルは、カラー108の連通凹部128を通じて隣のチップ収容部122へ移動するので、シリコンオイルによる圧縮抵抗は小さい。
【0046】
つまり、チップ116が往復移動することで、ロータ104には、主にシリコンオイルによる粘性抵抗及び剪断抵抗によるトルクが作用することとなり、トルクはロータ104の回転速度に比例して大きくなる(図8で示すトルク1)。そして、前述した圧縮抵抗が低減されることで、その分、ロータ104に作用するトルクは小さく、ロータリーダンパ100による減衰力は小さい。
【0047】
ところで、図3に示すように、ロータ104と接触するカラー108は、ロータ104の回転により、ロータ104との間で剪断力が生じるが、コイルスプリング137の付勢力によって、カム132のカム面132Aをカラー108のカム面108Aと係合させ、カラー108の回転を規制している。
【0048】
しかし、ロータ104を高速で回転させると、ロータ104とカラー108との間で生じる剪断力が大きくなり、コイルスプリング137による付勢力を上回ってしまう。このように、該剪断力がコイルスプリング137による付勢力よりも大きくなると、図6に示すように、カラー108が回転し、カラー108のカム面108Aとカム132のカム面132Aとの間で位置ずれが生じる。
【0049】
このカラー108の回転により、図6及び図7(B)に示すように、連通凹部128の位置はずれてしまい、連通凹部128の一端側が区画リブ130によって塞がれることとなる。つまり、連通凹部128による、隣り合うチップ収容部122が非連通状態とされる(隣り合う空間S同士、空間S同士が非連通状態とされる)。
【0050】
これにより、チップ116の移動で狭くなった空間内のシリコンオイルは圧縮され、チップ116の移動によるシリコンオイルの流路は、チップ116の側面に形成されたオリフィス120のみとなる。
【0051】
つまり、ロータ104には、シリコンオイルによる粘性抵抗及び剪断抵抗以外に、シリコンオイルによる圧縮抵抗が付加されることとなり、ロータ104に作用するトルクが増大し、ロータリーダンパ100による減衰力が大きくなる(図8で示すトルク2)。
【0052】
ここで、カラー108の回転により、カラー108のカム面108A及びカム132のカム面132Aを介して、コイルスプリング137には、カム132の軸方向に沿った軸力が付与され、弾性エネルギー(復元力)が蓄積された状態となっている。
【0053】
このため、ロータ104の回転速度が遅くなり、ロータ104とカラー108との間で発生する剪断力が該弾性エネルギーよりも小さくなると、コイルスプリング137は復元すると共に、カム132を介してカラー108が元の位置に戻り、ロータ104に作用するトルクが元の状態(トルク1の状態)に戻る。
【0054】
つまり、図8に示すように、ロータ104の回転速度に応じて、該ロータ104に作用するトルクを可変(トルク1とトルク2)させることができる。また、コイルスプリング137の付勢力を調整することで、図9に示すように、ロータ104の回転速度と低トルク(トルク1)と高トルク(トルク2)の切替位置を容易に変えることができる。
【0055】
ところで、本実施形態では、ロータ104の外周面に、ロータ104の軸方向に沿って山と谷を有する波形のカム溝106を設け、ロータ104の回転によって該カム溝106と係合するチップ116をロータ104の軸方向に沿って往復移動させるようにしている。これにより、ロータ104の移動量に対するチップ116の移動量を増やすことができ、シリコンオイルによる粘性抵抗及び剪断抵抗を増大させることができる。
【0056】
また、チップ116を複数設けることで、該チップ116を収容するチップ収容部122も複数設けられることとなるが、各チップ116で互いに位相をずらしてチップ収容部122内を移動させるようにすることで、各チップ116によって、往路と復路とでチップ116の移動方向が変わるタイミングが異なることになる。
【0057】
このため、一つのチップ116でシリコンオイルによる圧縮抵抗が増大する方向へ移動しても、他のチップ116ではシリコンオイルによる圧縮抵抗が減少する方向へ移動したりするので、各チップ116によって生じるトルク変動を他のチップ116との間で互いに相殺することができる。したがって、ロータ104に作用するトルクの変動を抑制することができ、ロータ104のスムーズな回転が可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、ロータ104の回転速度に応じて、ロータ104に作用するトルクを可変(トルク1とトルク2)させるようにしたが、必ずしもトルクを可変させる必要はなく、単にロータ104の回転速度に比例してトルクを増大させるという構成でも良い。そして、この場合、カラー108を回転不能な状態にする。
【0059】
また、本実施形態では、チップ116はシリコンオイルの圧縮効率を考慮して、平面視にて円弧状となるようにしたが、チップ収容部122に対応して形成されるため、必ずしも円弧状である必要はない。
【0060】
また、カム溝106の波数を4つとし、ロータ104が1回転したときにチップ116が4往復できるように設定し、チップ116を3つにすることで、チップ116が全て同一方向に動くことがないようにしたが、カム溝106の形状(波の周期、波数等)やチップ116の数を変更して、チップ116の脈動やトルク等を調整しても良い。
【0061】
さらに、ロータ104のカム溝106内にシリコンオイルが流れ込まないように、カラー108にシール機能を設けても良い。また、カラー108を回転させ、連通凹部128の位置をずらしてトルク切替を行ったが、隣り合う空間S、S内に図示しないバルブを設け、シリコンオイルの流れをコントロールするようにしても良い。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパについて説明する。
【0063】
図10〜図12に示すように、ロータリーダンパ200には、略円筒状を成す有底のハウジング202が備えられている。ここで、説明の便宜上、ハウジング202の開口側をロータリーダンパ200の上側、底部側をロータリーダンパ200の下側として各部品の説明を行う。
【0064】
このハウジング202内には、シリコンオイルが充填されており、ハウジング202の内周面からは、ハウジング202の周方向に沿って120°間隔で3箇所にガイドリブ204が突設されている。また、ハウジング202の底部中央には、略円柱状の取付凹部206が凹設されている。
【0065】
一方、略円板状のバルブ208の下面中央部には、取付凸部210が突設しており、取付凹部206と係合可能としている。該取付凸部210を取付凹部206に係合させた状態で、バルブ208がハウジング202に対して回転可能となる。
【0066】
また、バルブ208の外周面からは、時計の回転方向と反対方向(後述するロータ244の回転方向とは逆方向)に延出する渦巻き片212が形成され、バルブ208の周方向に沿って120°間隔で3箇所設けられている。
【0067】
この渦巻き片212の先端部には、引張りバネ214の一端部が装着されており、引張りバネ214の他端部はハウジング202に装着され、渦巻き片212を介して、バルブ208を時計と反対方向に回転する方向へ付勢している。
【0068】
また、バルブ208の上面中央部には、略円柱状の流路体216が設けられている。この流路体216には、流路体216の中央部から120°間隔で拡がる3本の流路218が凹設されている。また、流路体216の上面は凹状の曲面となっており、流路体216の上面には、小球体220と大球体222で構成された、だるま状(或いはひょうたん状)のピストンボディ(揺動部材)224が載置可能とされている。
【0069】
一方、ハウジング202内には、平面視にて円弧状のインナーハウジング225が収容可能となっており、インナーハウジング225の背面中央部には、インナーハウジング225の高さ方向に沿って、ガイド溝226が凹設されている。このガイド溝226はハウジング202のガイドリブ204と係合可能となっており、ガイド溝226をガイドリブ204に係合させた状態で、インナーハウジング225は回り止めされる。
【0070】
また、インナーハウジング225の内側には、ピストンボディ224の大球体222が収容可能となっており、インナーハウジング225の内側に、ピストンボディ224の大球体222が収容された状態で、ピストンボディ224の小球体220は、インナーハウジング225の上面から露出する。
【0071】
また、インナーハウジング225の内側には、ピストンボディ224の大球体222を収容するため、ピストンボディ224の大球体222の形状に合わせて、インナーハウジング225の上端部及び下端部を残し、凹状の曲面228を有している。この曲面228の中央部には、略矩形状のピストン収容部230が凹設されており、該ピストン収容部230の下縁部中央からは、曲面228を通過し、インナーハウジング225の下端部へ向かう、オリフィス232が形成されている。
【0072】
そして、ピストン収容部230内にはシリコンオイルが充填可能とされており、ピストン収容部230内のシリコンオイルが該オリフィス232内を流動可能となる。このオリフィス232はバルブ208の流路体216に形成された流路218と連通可能となっており、図14(A)に示すように、オリフィス232と流路218の位置が一致した状態で、ピストン収容部230内のシリコンオイルがオリフィス232を通じて流路218内へ流動可能となる。つまり、該流路218を通じて、隣り合うピストン収容部230同士が連通状態とされる。
【0073】
ところで、図10〜図12に示すように、ピストンボディ224の大球体222の外周面には、大球体222の形状に合わせて略矩形状の湾曲凹部234が120°間隔で3箇所凹設されている。この湾曲凹部234の中央部には、略円柱状の嵌合凹部236が凹設され、湾曲凹部234と係合する係合片238の内面側に設けられた嵌合突起240が嵌合可能とされている。
【0074】
係合片238の外面は、嵌合突起240を嵌合凹部236に嵌合させた状態で、ピストンボディ224の大球体222の外面と面一となる。また、係合片238の外面中央部からはピストン(ピストン部材)242が突出している。このピストン242がピストン収容部230内に収容されることとなる。
【0075】
ところで、インナーハウジング225の外周面の上部側は小径となっており、ハウジング202の内周面との間には、隙間が設けられるようになっている。この隙間には、2段で構成された略円柱状のロータ244の大径側の底部外縁から垂下する環状のガイド片246が挿通可能となる。
【0076】
ロータ244の小径側には、回転力を伝達する伝達部材(図示省略)が連結可能とされており、ロータ244の大径側の底部がインナーハウジング225の上面に当接した状態で、ガイド片246を介して、ロータ244がハウジング202の周方向に沿って回転する。
【0077】
また、ロータ244の小径側には、環状のキャップ248が挿通可能となっており、該キャップ248がハウジング202に固定される。これにより、ロータ244は抜け止めされることとなる。ここで、キャップ248の内縁側下部には、Oリング装着部250が切り欠かれており、Oリング252が装着される。これにより、ハウジング202内に充填されたシリコンオイルが外部へ漏れないようにしている。
【0078】
さらに、ロータ244の大径側の底部には、ロータ244の軸芯からずれた位置に、ピストンボディ224の小球体220を連結可能な連結部254が形成されており、該連結部254によってピストンボディ224の小球体220を連結すると、ピストンボディ224は傾いた状態でバルブ208上に載置されることとなる。
【0079】
そして、ロータ244を回転させると、ピストンボディ224は小球体220を介して、点Pを中心に揺動する。このとき、図15に示すように、ピストンボディ224のピストン242はピストン収容部230内で揺動しながら上下移動するが、各ピストン242は互いに位相をずらして移動することとなる。
【0080】
ところで、バルブ208は、渦巻き片212に装着された引張りバネ214の付勢力によって位置決めされ、図14(A)に示すように、流路体216に形成された流路218がピストン収容部230のオリフィス232と連通する位置となっている。このため、ピストン収容部230内のシリコンオイルがオリフィス232を通じて流路218へ流動し、該流路218を通じて、隣り合うピストン収容部230同士が連通状態とされる。
【0081】
一方、引張りバネ214の付勢力の抗する方向への応力によって、図14(B)に示すように、バルブ208を回転させると、流路体216の流路218の位置がずれ、ピストン収容部230のオリフィス232の端部が流路体216の周壁によって塞がれることとなる。つまり、流路218による、隣り合うピストン収容部230は非連通状態とされる。
【0082】
次に、本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパの作用について説明する。
【0083】
ロータ244を低速で回転させると、図15に示すように、該ロータ244の回転に伴い、ピストンボディ224が点Pを中心に揺動するが、ピストンボディ224に設けられたピストン242がピストン収容部230内で揺動しながら上下移動する。
【0084】
これにより、ピストン収容部230内では、ピストン242がピストン収容部230内のシリコンオイルを攪拌することにより生じる粘性抵抗及びピストン242が移動する際にピストン収容部230の内壁との間で生じる剪断抵抗が発生する。
【0085】
ここで、図12に示すように、ピストン242が上方へ移動するとき、ピストン242の上端面とピストン収容部230との間に設けられた隙間は狭くなるため、シリコンオイルによる圧縮抵抗が生じるが、3つのピストン242は、それぞれ位相をずらして移動するため、ピストン収容部230内における位置がそれぞれ異なる。
【0086】
つまり、ピストン242の上端面とピストン収容部230との間に設けられた隙間が狭くなった状態では、隣のピストン242の上端面とピストン収容部230との間で構成される隙間は広くなっている。
【0087】
このため、ピストン242が下方へ移動するときは、ピストン収容部230内のシリコンオイルは、該ピストン収容部230に設けられたオリフィス232を通じて、バルブ208の流路218を経て、隣のピストン収容部230へ移動するので、シリコンオイルによる圧縮抵抗は小さい。
【0088】
つまり、ピストン242が往復移動することで、ロータ244には、主にシリコンオイルによる粘性抵抗、剪断抵抗によるトルクが作用することとなる。そして、前述した圧縮抵抗が低減されることで、その分、ロータ244に作用するトルクは小さく、ロータリーダンパ200による減衰力は小さい。
【0089】
ところで、ピストンボディ224と接触するバルブ208には、ピストンボディ224の揺動により、ピストンボディ224との間で剪断力が生じるが、引張りバネ214の付勢力によって位置決めされている。
【0090】
しかし、ロータ244を高速回転させると、ピストンボディ224とバルブ208との間で生じる剪断力が大きくなり、引張りバネ214による付勢力を上回ってしまう。このように、該剪断力が引張りバネ214による付勢力よりも大きくなると、図13(B)に示すように、バルブ208が回転してしまう。
【0091】
この回転により、図14(B)に示すように、バルブ208の流路218の位置がピストン収容部230のオリフィス232の位置からずれてしまう。これにより、ピストン収容部230のオリフィス232の端部が流路体216の周壁によって塞がれ、流路218による、隣り合うピストン収容部230が非連通状態となる。
【0092】
このため、ピストン242の移動で狭くなった空間内のシリコンオイルは圧縮され、シリコンオイルによる圧縮抵抗が、ロータ244の低速回転時よりもさらに大きくなり、該圧縮抵抗によりロータ244に作用するトルクが増大することとなる。つまり、ロータリーダンパ200による減衰力が大きくなる。
【0093】
ここで、バルブ208は、引張りバネ214の付勢力の抗する方向へ移動し、引張りバネ214には弾性エネルギー(復元力)が蓄積された状態となっているため、ロータ244の回転速度が遅くなり、ピストンボディ224とバルブ208との間で発生する剪断力が該弾性エネルギーよりも小さくなると、図13(A)及び図14(A)に示すように、引張りバネ214は復元すると共に、バルブ208が元の位置に戻り、ロータ244に作用するトルクが元の状態に戻る。
【0094】
つまり、ロータ244の回転速度に応じて、ロータ244に作用するトルクを可変させることができる。また、引張りバネ214の付勢力を調整することで、ロータ244の回転速度と低トルクと高トルクの切替位置を容易に変えることができる。
【0095】
ところで、本実施形態では、ロータ244の回転力を、ピストンボディ224の揺動力に変換し、ピストンボディ224の外周面に設けられたピストン242を上下移動させるようにしている。これにより、ロータ244の移動量に対するピストン242の移動量を増やすことができ、シリコンオイルによる粘性抵抗及び剪断抵抗を増大させることができる。
【0096】
また、ピストン242を複数設けることで、該ピストン242を収容するピストン収容部230も複数設けられることとなるが、各ピストン242で互いに位相をずらしてピストン収容部230内を移動させるようにすることで、各ピストン242によって、往路と復路とでピストン242の移動方向が変わるタイミングが異なることになる。
【0097】
このため、一つのピストン242でシリコンオイルによる圧縮抵抗が増大する方向へ移動しても、他のピストン242ではシリコンオイルによる圧縮抵抗が減少する方向へ移動したりするので、各ピストン242によって生じるトルク変動を他のピストン242との間で互いに相殺することができる。したがって、ロータ244に作用するトルクの変動を抑制することができ、ロータ244のスムーズな回転が可能となる。
【0098】
なお、本実施形態では、ロータ244の回転速度に応じて、ロータ244に作用するトルクを可変させることができるようにしたが、必ずしもトルクを可変させる必要はなく、単にロータ244の回転速度に比例してトルクを増大させるという構成でも良い。そして、この場合、バルブ208を回転不能な状態にする。
【0099】
また、ここでは、図11に示すように、ピストンボディ224の大球体222に湾曲凹部234を凹設し、該湾曲凹部234と係合する係合片238を形成し、該係合片238にピストン242を設けるようにしたが、図16に示すように、ピストンボディ224の大球体222とピストン242を一体に形成しても良い。
【0100】
また、本実施形態では、図13(A)、(B)に示すように、バルブ208の外周面から渦巻き片212を延出させ、該渦巻き片212の先端部に引張りバネ214を設け、この引張りバネ214によってバルブ208を時計と反対方向に回転する方向へ付勢させるようにしたが、これはロータ244の回転方向が一方向である場合の構成である。
【0101】
したがって、ロータ244が正回転及び逆回転する場合は、図17(A)に示すように、渦巻き片212の先端部に渦巻き片212との間で鈍角を成すように内側に折れ曲がる折曲部212Aを延出させ、ハウジング202の内周面には、略三角形状の傾斜部202Aを凹設し、該傾斜部202Aの形状に沿って渦巻き片212を内側へ向かって撓ませながら移動させるようにする。
【0102】
つまり、ロータ244の回転(矢印方向)によってピストンボディ224との間で発生する剪断力によってバルブ208が回転すると、仮想線で示すように、渦巻き片212は該傾斜部202Aに沿って移動することとなるが、そのとき、渦巻き片212は弾性変形し、これにより弾性エネルギー(復元力)が蓄積されることとなる。したがって、この場合、引張りバネ214は不要となる。
【0103】
そして、ロータ244の回転速度が遅くなり、ピストンボディ224とバルブ208との間で発生する剪断力が該弾性エネルギーよりも小さくなると、実線で示すように、渦巻き片212は復元すると共に、バルブ208は元の位置(実線で示す位置)に戻り、ロータ244に作用するトルクが元の状態に戻る。
【0104】
一方、ロータ244を逆回転させた場合は、図17(B)に示すように、渦巻き片212は傾斜部202Aの形状に沿って矢印方向に沿って移動することとなる。そして、このとき、渦巻き片212は弾性変形し、これにより弾性エネルギー(復元力)が蓄積される。
【0105】
また、図17(A)、(B)で示す構成以外にも、図示はしないが、ハウジングとバルブとの間にトーションスプリングを配設し、該トーションスプリングによってバルブの周方向の位置決めを行う。そして、ロータの回転によってピストンボディとの間で発生する剪断力により、バルブを正回転及び逆回転可能とする。この場合、トーションスプリングに弾性エネルギーが蓄積されるため、渦巻き片212は不要となる。
【0106】
次に、本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパについて説明する。
【0107】
図18〜図19に示すロータリーダンパ300には、略円柱状の有底のハウジング302が備えられている。ここで、説明の便宜上、ハウジング302の開口側をロータリーダンパ300の上側、底部側をロータリーダンパ300の下側として各部品の説明を行う。
【0108】
このハウジング302の底部中央には、回転力を伝達する伝達部材(図示省略)と連結される棒状のロータ304を軸支可能な軸孔308が凹設されている。また、ハウジング302の底部には、120°間隔で扇状の収容部310が凹設されており、この収容部310内にはシリコンオイルが充填され、略扇状の揺動体312が揺動可能に収容される。
【0109】
また、収容部310の底部には、揺動体312の下面に設けられた軸部314と係合する軸孔315が形成されており、該軸部314が軸孔315と係合した状態で、軸部314を中心に、揺動体312が揺動可能となる。
【0110】
この揺動体312の上面には、軸部314の同軸上に、軸部318が立設しており、揺動体312の上面中央部には、揺動体312の半径方向に沿ってガイド溝320が凹設されている。
【0111】
ハウジング302内には略円板状のガイド板330がハウジング302の底部に固着されており、ガイド板330の中央部には、ロータ304が挿通可能な貫通孔332が形成されている。ロータ304には、貫通孔332に対応して、Oリング用装着溝350が凹設されており、該Oリング用装着溝350内にOリング352が装着された状態で、該Oリング352は貫通孔332の内周面に面接触して、貫通孔332を通じてガイド板330の表面にシリコンオイルが漏れないようにしている。
【0112】
また、ガイド板330には120°間隔で、貫通孔334及び揺動体312に形成された軸部316と係合可能な軸孔335が形成され、収容部310と対応するようになっている。そして、隣り合う貫通孔334間には、略扇状のいわゆる肉盗み部336が形成され、その部分が薄肉となっている。
【0113】
また、貫通孔334内には、それぞれギア部材338が装着可能となっている。このギア部材338は上部にギア(回転部材)340を備えており、該ギア340の下部には、略円柱状のシール部342が設けられている。
【0114】
このシール部342の外周面には、Oリング用装着溝344が形成されており、該Oリング用装着溝344内にOリング346が装着された状態で、Oリング346は貫通孔334の内周面に面接触して、該貫通孔334を通じてガイド板330の表面にシリコンオイルが漏れないようにしている。
【0115】
そして、シール部342の裏面からは、ギア340の軸芯からずれた位置に棒状のガイドボス(ガイド突起)348が垂下している。このため、ギア340が回転すると、該ガイドボス348はギア340の軸芯を中心に回転する。
【0116】
このガイドボス348は、揺動体312の上面に凹設されたガイド溝320に係合可能となっている。このため、図21(A)〜(D)に示すように、ギア340の回転によるガイドボス348の移動によって、ガイドボス348と係合するガイド溝320を介して揺動体312は移動するが、ガイドボス348が円弧移動するのに対して、ガイド溝320は直線形状であるため、該ガイド溝320を介して、揺動体312は収容部310内で軸部314、316を中心に揺動することとなる。
【0117】
このとき、ギア340に対するガイドボス348の位置は、各ガイドボス348で異なっており、各揺動体312のガイド溝320内でのガイドボス348の位置は、全て異なっている。ここで、ロータ304には、大ギア354が嵌合しており、ロータ304と一体に回転可能としている。この大ギア354が各ギア340と噛合い、ロータ304を回転させると、大ギア354を介して、各ギア340が回転する。
【0118】
ところで、ハウジング302には、ロータ304が挿通可能な略環状の蓋体356が取付けられる。この蓋体356の下面には、ギア340の上面に設けられ位置決め凸部358が係合可能な位置決め凹部360が凹設されている。また、蓋体356のガイド板330の肉盗み部336に相当する位置には、円弧状の開口362が形成されている。さらに、蓋体356の内縁部の下面からは、当接リブ364が突設され、大ギア354の上面に当接する。これにより、ロータ304は抜け止めされる。
【0119】
ところで、図22に示すように、揺動体312の下面には、いわゆる銀杏型のバルブ321が収容可能な収容凹部324が凹設されている。この収容凹部324はバルブ321の形状よりも若干大きく形成されており、該バルブ321を収容凹部324内で、揺動体312の揺動方向に沿って揺動可能としている(図23(B)、(D)参照)。
【0120】
図23(A)、(B)に示すように(なお、図23(A)は(B)のA−A矢視図であり、図23(C)は(D)のC−C矢視図である)、収容凹部324は、バルブ321を構成する直線状の弁部326の先端部との間に隙間が設けられており、該弁部326が収容される領域には、揺動体312の揺動方向に沿ってシリコンオイルが通過可能な流路328が形成されている。これにより、揺動体312によって、略分断された収容部310を連通状態とする。
【0121】
一方、揺動体312の揺動により、流路328内を通過するシリコンオイルの粘性抵抗によって収容凹部324内のバルブ321が揺動し、図23(C)、(D)に示すように、弁部326に流路328の一方が閉塞されると、揺動体312によって、略分断された収容部310が非連通状態となる。
【0122】
次に、本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパの作用について説明する。
【0123】
ロータ304を低速で回転させると、図20に示すように、大ギア354を介して、各ギア340が回転する。このギア340の回転により、図21(A)〜(D)に示すように、各ギア340に設けられたガイドボス348がギア340の軸芯を中心に回転する。これにより、ガイドボス348と係合するガイド溝320を介して、揺動体312が収容部310内で軸部314、316を中心に揺動する。
【0124】
ここで、図23(A)、(B)に示すように、収容凹部324は、バルブ321の弁部326の先端部との間に隙間を設け、該弁部326が収容される領域に、揺動体312の揺動方向に沿ってシリコンオイルが通過可能な流路328を設けているため、揺動体312が揺動する際、揺動体312によって押しのけられたシリコンオイルは、該流路328を流動して、揺動体312の進行方向とは反対側の領域へ案内される。
【0125】
つまり、この揺動体312の揺動によって、収容部310では、揺動体312がシリコンオイルを攪拌することにより生じる粘性抵抗、揺動体312が揺動する際に収容部310の内壁との間で生じる剪断抵抗が発生するが、揺動体312の揺動によって収容部310内で圧縮される圧縮抵抗は小さいため、ロータ304に作用するトルクは小さく、ロータリーダンパ300による減衰力は小さい。
【0126】
一方、ロータ304を高速回転させると、揺動体312の高速移動によってシリコンオイルによる粘性抵抗が増加する。これにより、揺動体312内のバルブ321が揺動し、図23(C)、(D)に示すように、減圧用の流路328の一方を閉塞する。このため、揺動体312によって収容部310内でシリコンオイルが圧縮され、圧縮抵抗が増大し、ロータ304に作用するトルクが増大して、ロータリーダンパ300による減衰力が大きくなる。
【0127】
ここで、ロータ304の回転速度が遅くなり、シリコンオイルによる粘性抵抗が小さくなると、バルブ321が揺動して、元の位置(収容凹部324の中央部)に戻り、ロータ304に作用するトルクが元の状態に戻る。
【0128】
つまり、ここでは、ロータ244の回転速度に応じて、ロータ244に作用するトルクを可変させることができる。また、バルブ321の揺動力を調整することで、ロータ244の回転速度と低トルクと高トルクの切替位置を容易に変えることができる。
【0129】
ところで、本実施形態では、ギア340を介して、ロータ244の回転速度を増速し、揺動体312の揺動力に変換させるようにしている。これにより、ロータ244の回転移動量に対する揺動体312の移動量を増やすことができ、シリコンオイルによる粘性抵抗及び剪断抵抗を増大させることができる。
【0130】
さらに、揺動体312を複数設けることで、該揺動体312を収容する収容部310も複数設けられることとなるが、各揺動体312で互いに位相をずらして収容部310内を移動させるようにすることで、各揺動体312によって、往路と復路とで揺動体312の移動方向が変わるタイミングが異なることになる。
【0131】
このため、一つの揺動体312でシリコンオイルによる圧縮抵抗が増大する方向へ移動しても、他の揺動体312ではシリコンオイルによる圧縮抵抗が減少する方向へ移動したりするので、各揺動体312によって生じるトルク変動を他の揺動体312との間で互いに相殺することができる。したがって、ロータ304に作用するトルクの変動を抑制することができ、ロータ304のスムーズな回転が可能となる。
【0132】
なお、ここでは、大ギア354とギア340との歯面接触による摩擦抵抗やガイドボス348がガイド溝320を移動する際の摺動抵抗等もロータ304のトルクには作用することとなるが、ここでは、あくまでもシリコンオイルによって作用するトルクを説明するため、これらについての説明は省略している。
【0133】
また、本実施形態では、ロータ244の回転速度に応じて、ロータ244に作用するトルクを可変させることができるようにしたが、必ずしもトルクを可変させる必要はなく、単にロータ244の回転速度に比例してトルクを増大させるという構成でも良い。そして、この場合、バルブ321は不要となる。
【0134】
以上、説明したように、これらの実施形態によるロータリーダンパは、引出し部材以外にも、引戸、車椅子の車輪、ブラインド、ペットのリード、ピアノの蓋、スーツケース、自動車のグローブボックスなどに設けることができ、ロータのスムーズな回転が可能となり、移動部材をスムーズに移動させることができる。
【0135】
また、本発明は、移動部材を複数設け、互いに位相をずらして移動させることができればよいため、以上の実施形態に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを構成するロータとチップの関係を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す断面斜視図であり、隣り合う空間同士が連通された状態である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す断面斜視図であり、隣り合う空間同士が遮断された状態である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパを示す横断面図であり、(A)は隣り合う空間同士が連通された状態であり、(B)は隣り合う空間同士が遮断された状態である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパの作用を説明するグラフである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るロータリーダンパの変形例における作用を説明するグラフ
【図10】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパを示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパの要部を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパを示す断面図である。
【図13】(A)、(B)は、本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパを構成するバルブの位置を示す平面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパを示す横断面図であり、(A)は隣り合う空間同士が連通された状態であり、(B)は隣り合う空間同士が遮断された状態である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパを構成するピストンの動きを説明する断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係るロータリーダンパの要部の変形例を示す分解斜視図である。
【図17】(A)、(B)は、本発明の第2の実施形態に係るロ−タリ−ダンパを構成するバルブの変形例を示す平面図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを示す分解斜視図である。
【図19】本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを示す断面図である。
【図20】本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図21】(A)〜(D)は、本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを構成するギアのガイドボスと揺動体との関係を示す平面図である。
【図22】本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを構成する揺動体の下面の構成を示す分解斜視図である。
【図23】(B)、(D)は、本発明の第3の実施形態に係るロータリーダンパを構成する揺動体のバルブの動きを示す裏面図であり、(A)は(B)のA−A矢視図、(C)は(D)のB−B矢視図である。
【符号の説明】
【0137】
100 ロータリーダンパ
102 ハウジング
104 ロータ
106 カム溝(変換手段)
116 チップ(移動部材)
118 係合突起(変換手段)
200 ロータリーダンパ
202 ハウジング
224 ピストンボディ(揺動部材、変換手段)
242 ピストン(移動部材)
244 ロータ
300 ロータリーダンパ
302 ハウジング
304 ロータ
312 揺動体(移動部材)
320 ガイド溝(交換手段)
340 ギア(回転部材、交換手段)
348 ガイドボス(ガイド突起、交換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体が充填された筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に収容され、外部から回転力が伝達されるロータと、
前記ロータの回転力を、前記ハウジング内に設けられた移動部材を往復移動させる力に変換する変換手段と、
を備え、
前記移動部材が少なくとも2つ設けられ、互いに位相をずらして移動することを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記移動部材が、前記ハウジングの内壁から突出し前記液室を区画する柱材の間で上下移動可能に設けられ、
前記変換手段が、前記ロータの外周面に形成され該ロータの軸方向に山と谷を有する波形状のカム溝と、前記移動部材に設けられ前記カム溝と係合する係合突起と、を含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記変換手段が、中心軸が傾斜した状態で前記ロータの軸芯に対して偏心して連結され、該ロータの回転によって揺動する揺動部材であり、
前記揺動部材の表面に前記移動部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記変換手段が、
前記ロータとは異なる軸芯を有し、該ロータの回転力が伝達される回転部材と、
前記回転部材の軸芯から位置をずらして設けられたガイド突起と、
前記移動部材に設けられ、前記ガイド突起と係合する直線状のガイド溝と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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