説明

ローダミン染料

【課題】高い鮮明性、発色性、堅牢性に優れた染料組成物の提供。
【解決手段】下式で表されるローダミン染料及び該化合物を含む油性または水性染料組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なローダミン染料に関する。
【背景技術】
【0002】
ローダミンB、ローダミン3B、ローダミン6G等のローダミン染料は、レッドあるいはバイオレットの染料として広く使用されており、各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用、染色用など幅広い用途での応用がなされている。一般に色材に要求される特性は用途によって異なるものの、着色物が光や熱等に対し堅牢である事が特に強く要求される。
【0003】
一般にローダミン染料は鮮明で発色性が優れる反面、耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性が劣るという欠点がある。このため、ローダミン染料の鮮明性及び発色性を有し、且つ高堅牢な染料が要望されているが、これらの性能を兼ね備えたローダミン染料は見出されていない。特許文献1にはローダミン化合物のカチオン部位と塩素イオンやさらに塩化亜鉛とから成るローダミン染料が記載されているが、本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載されているローダミン染料は耐光性、耐熱性、耐水性、耐湿熱性等の堅牢性が不十分であった。また特許文献2にはフッ素化アルキルスルホニル対イオンを有するローダミン染料についての記載はあるが、具体的な化合物の例示は無く、また染料組成物の耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性に関する記載もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−271559号
【特許文献2】特開平8−253705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐光性、耐熱性、耐湿熱性及び耐水性等の堅牢性に優れる新規なローダミン染料並びに該染料を用いた染料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するローダミン染料が、従来に比べ飛躍的に耐熱性等の堅牢性が向上する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表されるローダミン染料
【化1】

(一般式(1)においてR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Xはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表す。)、
(2)一般式(1)が下記一般式(2)で表される(1)に記載のローダミン染料
【化2】

(一般式(2)においてR〜R、及びXは式(1)におけるのと同じ意味を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。)、
(3)一般式(1)のRがカルボアミド基及びその誘導体である(1)に記載のローダミン染料、
(4)Xがトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンである(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のローダミン染料、
(5)(1)乃至(4)のいずれか一つに記載のローダミン染料と少なくとも1種以上の油性溶媒を含有する油性染料組成物、
(6)(1)乃至(4)のいずれか一つに記載のローダミン染料及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のローダミン染料は、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工すると、従来品よりも堅牢性に優れた特性を示すものである。すなわち、本発明のローダミン染料は染料着色体に好適に利用でき、カラーフィルターやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のローダミン染料は、前記一般式(1)または式(2)で表される。
【0010】
一般式(1)及び式(2)においてXはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表し、特にトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンが好ましい。
【0011】
一般式(1)においてR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
【0012】
一般式(1)のR〜Rにおいてアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有してもよく、該置換基としては特に制限は無いが、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)のR〜Rにおいてアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等の芳香族炭化水素残基;ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基等の芳香族複素環残基、等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)のR〜Rにおいて、アリール基はさらに置換基を有してもよく、該置換基としては特に制限はないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;2―ヒドロキシエトキシ基等のヒドロキシアルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、スルホン酸基、等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)のR、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R、R及びRの置換基としては、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルボアミド基、アルキル置換カルボアミド基、アリール置換カルボアミド基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基、等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)のR〜Rは一般式(1)におけるのと同じ意味を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
【0017】
一般式(2)のRにおけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有してもよく、該置換基としては特に制限は無いが、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0018】
本発明のローダミン染料は、例えば、特許文献1に記載された公知の方法で合成することができる。また、一般式(1)及び式(2)のXが塩素アニオン等である市販品を購入し、対応する塩または酸を加え塩交換する事でも合成できる。
【0019】
本発明のローダミン染料を塩交換により合成する場合は、例えば、Xが塩素アニオンである染料を反応溶媒(例えば、水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N,N−ジメチルホルアミド(以下DMFと略記)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記)等の水溶性極性溶媒が挙げられ、これらの溶媒は単独、または混合してもよい。)に溶解し、対応する塩または酸を0.5〜3等量程度加え、所定温度(例えば0〜100℃)で攪拌し、析出した結晶をろ取する事により容易に得られる。
【0020】
上記式(1)で表される具体例を、以下の表1−1〜表1−3に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
表1−1

表1−2

表1−3

【0022】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明のローダミン染料及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明のローダミン染料を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調整などの目的で必要に応じて一般式(1)または式(2)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0023】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に本発明のローダミン染料を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレンエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、NMP、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、等が挙げられる。
【0024】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種の油溶性有機溶媒に本発明のローダミン染料を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド、スルホラン、NMP、2−ピロリドン等の極性有機溶媒、等が挙げられ、これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する色素化合物に対して10〜100質量%で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0026】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いるが、中でもサンドミル(ビーズミル)が一般に用いられる。サンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕には、小粒径のビーズを使用し、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理する必要があり、また粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去する必要がある。
【0027】
本発明の染料組成物はその他の添加剤として表面調整剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤等を添加しても良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐や防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等が挙げられ、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0028】
また本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への色素の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤等を含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【0029】
本発明のローダミン染料は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。尚、実施例中、「部」は特定しない限り「質量部」を表す。また、耐湿熱性や耐水性等の評価は染料着色体の色度(L値、a値、b値)を分光光度計「(株)島津製作所製商品名UV−3150」により測定し評価した。
【0031】
実施例1
100mlビーカーに、下記式(100)のローダミン6G(東京化成工業製)1部、水20部を仕込み、常温で30分間攪拌した。これにDMF1部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩(セントラル硝子製)1部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(表1−1の化合物No.1)0.8部を得た。極大吸収波長:531nm(シクロヘキサノン)
【0032】
【化3】

【0033】
実施例2
ローダミン染料を下記式(101)のローダミンB(東京化成工業製)に変更した以外は実施例1と同様にして、染料(表1−1の化合物No.3)0.7部を得た。極大吸収波長:560nm(シクロヘキサノン)
【0034】
【化4】

【0035】
実施例3
(工程3−1)
200mlフラスコに水75部、28%水酸化ナトリウム水溶液4.3部、上記式(101)のローダミンBを14.4部仕込み、常温で攪拌した。これに反応液のpHが7付近になるまで28%水酸化ナトリウム水溶液を加え、更に炭酸ナトリウム1.6部を加えて、反応液のpHを10.3に調整した。ここに硫酸ジメチル7.5部を加え、30℃で2時間攪拌した後、この反応液を1Lビーカーに移した。これに50℃の湯350部、98%硫酸1部を加え、反応液のpHを2.7〜3.0に調整し、反応液を60℃で2時間攪拌した。加熱を止め、これに水300部、塩化亜鉛4.2部を加え、塩化ナトリウム7.5部を少しずつ加え、そのまま1時間攪拌、更に塩化ナトリウム45部を追加し、30分攪拌した。析出した染料をろ取、乾燥することにより、下記式(102)の中間体16部を得た。極大吸収波長:561nm(シクロヘキサノン)
【0036】
【化5】

【0037】
(工程3−2)
実施例1におけるローダミン6Gを、中間体(102)に変更した以外は実施例1と同様にして、染料(表1−1の化合物No.7)1.4部を得た。極大吸収波長:561nm(シクロヘキサノン)
【0038】
実施例4
(工程4−1)
50mlフラスコに、上記式(101)のローダミンBを1.2部、(R)−(−)−2−アミノ−1−プロパノール(東京化成工業製)5部を仕込み、160℃で6時間攪拌した。これに常温で飽和食塩水150部を加えて、ジクロロメタンで抽出、5%塩酸、水、飽和食塩水で洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮した。得られた残渣を必要最小量のジクロロメタンに溶解させ、過剰量のヘキサンを加えた後、0℃で一晩静置させた。析出した赤紫色結晶をろ取、乾燥することにより、下記式(103)の中間体0.6部を得た。
【0039】
【化6】

【0040】
(工程4−2)
500mlビーカーに、中間体(103)の0.4部、酢酸70部、水70部を仕込み、常温で10分攪拌した。これにDMF3部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩0.5部を溶解させた溶液を滴下し、2時間常温で攪拌した。この反応液に飽和重曹水300部を少しずつ加え、析出した染料をろ取した。得られたウェットケーキを一晩水洗、ろ取、乾燥することにより、染料(表1−2の化合物No.13)0.4部を得た。極大吸収波長:558nm(シクロヘキサノン)
【0041】
実施例5
300mlビーカーに、中間体(102)1.5部、水125部を仕込み、常温で30分攪拌した。これにDMF2部にビストリフルオロメタンスルホニルイミドのカリウム塩(森田化学工業製)0.9部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(表1−2の化合物No.14)1.7部を得た。極大吸収波長:560nm(シクロヘキサノン)
【0042】
実施例6
(工程6−1)
実施例4の工程4−1における(R)−(−)−2−アミノ−1−プロパノールをベンジルアミンに変更した以外は、実施例4の工程4−1と同様にして、下記式(104)の中間体2部を得た。
【0043】
【化7】

【0044】
(工程6−2)
実施例4の工程4−2における中間体(103)を上記式(104)に変更した以外は、実施例4の工程4−2と同様にして、染料(表1−3の化合物No.15)1.3部を得た。極大吸収波長:559nm(シクロヘキサノン)
【0045】
実施例7
300mlビーカーに、非特許文献(Organic Letters、2003、Vol.5、3245−3248)に記載の方法で合成した下記式(105)の中間体6部、水170部を仕込み、常温で10分攪拌した。これにDMF5.5部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩5.5部を溶解させた溶液を滴下し、1時間室温で攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥することにより、染料(表1−3の化合物No.16)7部を得た。極大吸収波長:585nm(シクロヘキサノン)
【0046】
【化8】

【0047】
実施例8
(工程8―1)
100mlフラスコに、N,N−ジエチル−3−アミノフェノール(東京化成工業製)5部、テトラクロロ無水フタル酸(東京化成工業製)10.6部、p−トルエンスルホン酸一水和物0.6部、プロピオン酸18部を仕込み、遮光して12時間還流した。この反応溶液にトルエンを加え、80℃の0.1M塩酸で洗浄し、有機層を減圧下で濃縮した後、18%アンモニア水300部を加え、常温で一晩攪拌した。再び、反応溶液中の染料をトルエンで抽出し、水層が透明になるまで水で洗浄、更に80℃の0.1M塩酸で数回洗浄し、有機層を減圧下で濃縮することにより、下記式(106)の中間体1部を得た。
【0048】
【化9】

【0049】
(工程8−2)
1Lビーカーに中間体(106)0.6部、水200部、メタノール360部を仕込み、40℃で30分攪拌した。加熱を止め、これにDMF2.1部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩0.6部を溶解させた溶液を滴下し、4時間室温で攪拌した。染料が析出してくるまでメタノールを減圧下で蒸発させた後、析出した染料をろ取、水洗、乾燥することにより染料(表1−3の化合物No.17)0.4部を得た。極大吸収波長:587nm(シクロヘキサノン)
【0050】
実施例9
(工程9−1)
50mlフラスコに、中間体(106)0.7部、2−アミノ−1−プロパノール5部を仕込み、160℃で4時間攪拌した。これに常温で飽和食塩水150部を加えて、ジクロロメタンで抽出、5%塩酸、水、飽和食塩水で洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮した。得られた残渣を必要最小量のジクロロメタンに溶解させ、過剰量のヘキサンを加えた後、0℃で一晩静置させた。析出した赤紫色結晶をろ取、乾燥することにより、下記式(107)の中間体0.6部を得た。
【0051】
【化10】

【0052】
(工程9−2)
実施例4の工程4−2における中間体(103)を中間体(107)に変更した以外は、実施例4の工程4−2と同様にして、染料(表1−3の化合物No.18)0.3部を得た。極大吸収波長:569nm(シクロヘキサノン)
【0053】
実施例10
(工程10−1)
四つ口フラスコにDMF30部、ベンジルブロミド(東京化成工業製)6.8部、炭酸カリウム3.0部、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(サンアプロ製)4.3部、上記式(101)のローダミンB9.6部を仕込み、90℃で6時間攪拌した。反応液を濾過後、濾液に水を加え500部に調整した。この液に、塩化亜鉛5部、さらに塩化ナトリウム10部を少しずつ加え、そのまま1時間攪拌した。析出した染料をろ取、することにより、下記式(108)の中間体8部を得た。
【0054】
【化11】

【0055】
(工程10−2)
実施例1におけるローダミンBを、中間体(108)に変更した以外は実施例1と同様にして、染料(表1−3の化合物No.19)1.4部を得た。極大吸収波長:562nm(シクロヘキサノン)
【0056】
実施例11
油性染料組成物及び染料着色体の作成
前記の実施例1〜3で得られた化合物No.1、3及び7の0.5部をテトラフルオロプロパノール10部にそれぞれ溶解し、油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をポリカーボネート基盤にスピンコートし、80℃で30分乾燥し、染料着色体を調製した。
【0057】
以下の各表中における比較例1は上記式(100)のローダミンBを、比較例2は上記式(101)のローダミン6Gを使用し、同様に調製した染料着色体の評価結果である。
【0058】
耐湿熱性試験
上記の方法で得られた染料着色体を、85℃、85%RHの条件の恒温恒湿機中40時間放置した。試験前後の染料着色体を分光光度計でL値、a値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため優れている事を示す。
色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
耐湿熱性試験における測色の測定値および色差を以下の表2〜表7に示す。
【0059】
化合物No.1の測色結果を以下の表2に示す。
表2
L値 a値 b値
試験前 87.49 25.80 −13.48
試験後 88.43 23.62 −12.22
試験前後差 −0.94 2.18 −1.26
【0060】
化合物No.3の測色結果を以下の表3に示す。
表3
L値 a値 b値
試験前 64.57 50.00 −57.90
試験後 65.18 50.64 −56.12
試験前後差 −0.94 −0.64 −1.78
【0061】
化合物No.7の測色結果を以下の表4に示す。
表4
L値 a値 b値
試験前 81.6 22.73 −28.93
試験後 82.02 22.13 −28.33
試験前後差 −0.42 −0.6 −0.6
【0062】
比較例1の測色結果を以下の表5に示す。
表5
L値 a値 b値
試験前 78.43 34.98 −26.84
試験後 98.35 1.36 −1.07
試験前後差 −19.92 33.62 −25.77
【0063】
比較例2の測色結果を以下の表6に示す。
表6
L値 a値 b値
試験前 89.06 12.29 −14.54
試験後 95.70 5.55 −4.06
試験前後差 −6.64 6.74 −10.48
【0064】
上記の表2〜表6の化合物No.1、3、7及び表5と表6の比較例1、2の色差を求めた結果を以下の表7に示す。
表7
色 差
化合物No.1 2.69
化合物No.3 1.99
化合物No.7 4.8
比較例1 46.81
比較例2 14.12
【0065】
上記の結果から明らかなように、比較例の染料着色体の試験前後における色差が10以上と高い値を示すのに対し、本発明の染料着色体の色差は5以下の低い値を示し、耐湿熱性にきわめて優れていることがわかる。
以上のように本発明のローダミン染料及び、その染料着色体は耐湿熱性に優れ、高い堅牢性を有するものであり、本発明のローダミン染料はカラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等、アプリケーションの幅が広がるなどの産業的な価値が高い事が明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるローダミン染料
【化1】

(一般式(1)においてR〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Xはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表す。)。
【請求項2】
一般式(1)が下記一般式(2)で表される請求項1に記載のローダミン染料
【化2】

(一般式(2)においてR〜R、及びXは式(1)におけるのと同じ意味を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。)。
【請求項3】
一般式(1)のRがカルボアミド基及びその誘導体である請求項1に記載のローダミン染料。
【請求項4】
がトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のローダミン染料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のローダミン染料と少なくとも1種以上の油性溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のローダミン染料及び水性媒体を含有する水性染料組成物。

【公開番号】特開2011−241372(P2011−241372A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256746(P2010−256746)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】