説明

ローラポンプ

【課題】ローラポンプのローラとステータとの間にチューブを容易に装着すると共に、チューブを押圧するローラが該チューブから離れる際に打撃音が発生しないようにしたローラポンプを提供する。
【解決手段】ロータ5に設けられた各ローラ6の支軸23を支承する軸孔24はロータ5の半径方向に長い長円形状を有し、各ローラ6の支軸23が該支軸の上下部を支持するコ字形の板バネ27で保持されると共に該板バネの側部の中央部がロータ5の中心側に向けて支持される一方、回動するローラ6に対向してチューブTを押圧するステータ7の周壁形状が、該チューブTに対する押圧を開始する箇所においては急カーブC1に形成され、該チューブTに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲を押圧開始の急カーブの範囲よりも長い傾斜状C2に形成したことによって、ローラ6がチューブTに対する押圧状態から離れる際に打撃音を生じさせないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析装置等の体液又は補充液等を装置回路に流通する際に使用するローラポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析装置等の体液又は補充液を装置回路に流通する際に使用するローラポンプの基本的構成は、モータの駆動軸に連結して回転するロータと、該ロータに配設された複数個のローラと、これらのローラにチューブを押圧するステータとを有するものであり、回転する各ローラによってチューブに対する圧迫箇所を作りながらステータに沿って移動させることにより、チューブ内の液を輸送するものである。
【0003】
このようなローラポンプの従来例として特許文献1をあげて説明する。この文献のローラポンプは、図10(a)及び(b)に示すように、円弧状内周面53を有するケーシング本体51に配設されたチューブ50をローラ52、52…によって円弧状内周面53に押しつけるようにしてロータ部54を回動させることにより、チューブ50内の液体を送液するチューブポンプであって、ケーシング本体51を可動ケーシング55とポンプ本体51に固定される固定ケーシング56に分割して、可動ケーシング55を固定ケーシング56に摺動可能に保持するとともに、可動ケーシング55を固定ケーシング56から離れる方向に引張る引張りバネ57と、可動ケーシング55を固定ケーシング56に結合する位置に規制するソレノイドコイル58とを備え、ソレノイドコイル58による位置規制を解除することにより可動ケーシング55が固定ケーシング56から自動的に離れるようにしたものである。
【0004】
ところで、上記のような構成のチューブポンプにおいては、可動ケーシング55の上面にケーシングカバー60が支軸59を中心に揺動可能に付設され、支軸59には半円形板61が取り付けられ、この半円形板61の外周に形成されたワイヤー案内溝62にはワイヤー63が配設されている。このワイヤー63の一端はケーシングカバー60に結合され、その他端は可動ケーシング55の底を経由して固定ケーシング56に結合された構成とされている。このような構成において、ケーシングカバー60を閉めると、ワイヤー63の張力によって可動ケーシング55が移動し、完全にケーシングカバー60を閉めたときに、可動ケーシング55と固定ケーシング56とが一体となり、それぞれの円弧状内周面が結合して連続した1個の円弧状内周面53が形成される。
【0005】
ところが、このような構成において、ケーシングカバー60の開閉はワイヤー63の張力によって行うようにしているが、ワイヤー63は半円形板61のワイヤー案内溝62に掛けられた構成とされているため、ワイヤー63がワイヤー案内溝62から外れるおそれがあり、装置の信頼性に欠けるという問題があった。
【0006】
さらに、上記のように回転するロータ部54に回動自在に軸支されたローラ52、52…でチューブ50を押圧する方式のローラポンプにおいては、ロータ部54が回転するに従い、ローラ52、52…がチューブ50を押圧している状態から急激に離れて開放状態になるとき、ローラ52の軸部に打撃音が生じる。これは、チューブ50をステータ(特許文献1の装置の場合、固定ケーシング56)の方向に押圧していたローラ52がチューブ50から急激に外れた際、ローラ52の軸部が周囲の部材を叩く音として発生するものである。
【特許文献1】特開平6−218042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ローラポンプのローラとステータとの間にチューブを容易に装着すると共に、チューブを押圧するローラが該チューブから離れる際に打撃音が生じないようにしたローラポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明における請求項1のローラポンプは、ケーシングに設けられたモータの回転軸にロータが装着され、該ロータの周囲に回転自在に軸支された複数個のローラの周軌道の一部をステータで囲繞すると共に前記ローラの周軌道に掛け渡した軟質チューブを前記ステータで押圧することによってチューブ内の送液を行うローラポンプにおいて、前記ロータに設けられた各ローラの支軸を支承する軸孔は前記ロータの半径方向に長い長円形状を有し、各ローラの支軸が該支軸の上下部を支持するコ字形の板バネで保持されると共に該板バネの側部の中央部が前記ロータの中心側に向けて支持される一方、前記回動するローラに対向して前記チューブを押圧する前記ステータの周壁形状が、該チューブに対する押圧を開始する箇所においては急カーブに形成され、該チューブに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲を緩やかな傾斜状に形成したことによって、前記ローラが前記チューブに対する押圧状態から離れる際に打撃音を生じさせないようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明による請求項2のローラポンプは、請求項1において、前記ケーシングの上方を覆うポンプカバーのカバーアームが前記ステータの後端中央に設けられた後端溝内に軸支されて前記ポンプカバーの開閉を行うと共に、該カバーアームの軸支位置から離間した部位に設けられた案内軸が前記ステータの後端溝に設けられた縦方向ガイドに係合して案内されることにより、前記ポンプカバーを閉じる動作で前記ステータが前記チューブを圧迫する方向へ移動し、又は前記ポンプカバーを開く動作で前記ステータが前記チューブを開放する方向へ移動するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明による請求項3のローラポンプは、請求項1又は2において、前記各ローラの支軸には回転ブレーキが設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による請求項4のローラポンプは、請求項1、2又は3において、前記ステータの下面において前記モータの回転軸を挟んで対称位置に1個ずつのマグネットといずれか一方のマグネットから所定角度だけずらした位置に1個のマグネットが設けられ、夫々のマグネットを検知するホール素子が前記ケーシング側の対向位置に設けられたことにより、前記ステータの回転方向と回転速度を検出するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による請求項5のローラポンプは、請求項1、2、3又は4において、前記ポンプカバーを閉じる動作によって作動するマイクロスイッチが前記ケーシング側に設けられたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明による請求項6のローラポンプは、請求項1、2、3、4又は5において、前記ステータの下部にマグネットを設け、このマグネットを検知するホール素子が前記ケーシング側の対向位置に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のローラポンプにおいては、ロータに設けられた各ローラの支軸を支承する軸孔はロータの半径方向に長い長円形状を有し、各ローラの支軸が該支軸の上下部を支持するコ字形の板バネで保持されると共に該板バネの側部の中央部がロータの中心側に向けて支持されているため、ローラがチューブを圧迫するときのように、ローラの支軸がロータの中心方向へ付勢された際の衝撃を板バネの弾性力によって緩衝することが可能である。
【0015】
また、本発明においては、チューブを押圧するステータの周壁形状が、該チューブに対する押圧を開始する箇所においては急カーブに形成されているため、ローラがチューブを押圧することによる圧迫状態を瞬間的に開始することができ、しかもこの押圧の開始時期には上記のローラの支軸に設けた板バネの弾性力が作用して急カーブの周壁形状による衝撃を緩衝することができる。
【0016】
また、本発明においては、チューブを押圧するステータの周壁形状が、チューブに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲を緩やかな傾斜状に形成してあるため、上記のローラの支軸に設けた板バネの復元動作に追従しながらチューブに対する押圧動作を緩やかに解除することとなり、ローラの支軸に打撃音が生じることなく復帰することが可能となる。
【0017】
また、本発明において、チューブを各ローラの周軌道に対して後方から圧迫する円弧状周壁を有するステータが前後移動自在に設けられ、ケーシングの上方を覆うポンプカバーのカバーアームがステータの後端中央に設けられた後端溝内に軸支されてポンプカバーの開閉を行うと共に、該カバーアームの軸支位置から離間した部位に設けられた案内軸がステータの後端溝に設けられた縦方向ガイドに係合して案内される構成とすることにより、ポンプカバーを閉じる動作でステータがチューブを圧迫する方向へ移動し、又はポンプカバーを開く動作でステータがチューブを開放する方向へ移動することが可能となる。このように本発明のロータポンプは、ポンプカバーを手動で開閉する動作のみによってステータを移動することができ、チューブを容易に装填することが可能となる。
【0018】
また、このような構成においては、チューブの正常な装填及びロータの回転は、ポンプカバーを閉じた状態において遂行されるため、ローラポンプの使用中は回転するロータに手が触れない構造とすることができ、安全性に優れた構造化が可能となる。
【0019】
また、本発明によるローラポンプにおいて、各ローラの支軸に回転ブレーキが設けられたことにより、各ローラの騒音発生を防止すると共に、各ローラの安定した回転を維持することが可能となる。
【0020】
また、本発明によるローラポンプにおいて、モータの回転軸を挟んで対称位置に1個ずつのマグネットといずれか一方のマグネットから所定角度だけずらした位置に1個のマグネットが設けられ、夫々のマグネットを検知するホール素子がケーシング側の対向位置に設けられた構成によって、ステータの回転方向と回転速度を検出することが可能となる。
【0021】
また、本発明によるローラポンプにおいては、ポンプカバーを閉じる動作によって作動するマイクロスイッチがケーシング側に設けられた構成によって、ポンプカバーの閉塞状態を確実に検知することが可能となる。
【0022】
さらに、本発明によるローラポンプにおいては、ステータの下部にマグネットを設け、このマグネットを検知するホール素子がケーシング側の対向位置に設けられた構成によって、ステータの移動状態を確実に検出することができ、これによってチューブの圧迫状態が正常に行われているか否かを知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
本実施例は、図1又は図2に示すように、ケーシング2に設けられたモータ3の回転軸4をケーシング2内の上方に突出すると共に、回転軸4に装着されたロータ5の周囲に複数個のローラ6、6…が回転自在に設けられ、各ローラ6の周軌道の後側にチューブTを掛けて該チューブTの両側をケーシング2の手前両側に導き出すようにしたローラポンプ1の構成を有する。
【0025】
このローラポンプ1の各部について詳細に述べると、図1に示すように、ケーシング2の下部に固設されたモータ3の回転軸4がケーシング2内に上方を向けて突出した状態に取り付けられている。また、図1及び図2に示すように、ケーシング2は上方が開放され、モータ3の回転軸4に取り付けられるロータ5の周囲に所定幅の隙間を空けて左右の側方に側方周壁13、14が設けられ、また後方に後方周壁15が設けられ、前方周壁13の左右にはチューブTを嵌合した状態にして該チューブTの両側を前方へ導き出すための凹溝16、16(図8参照)が形成されている。
【0026】
また、ロータ5は、図1又は図4(a)、(b)に示すように、上端と下端とに円盤17a、17bが形成され、この上下の円盤17a、17bの間には三角柱を成す本体18が形成され、図1に示すように該本体18の中心の縦方向に形成された所定高さの支軸孔19を上記のモータ3の回転軸4に挿着することによってロータ5を所定高さに取り付けるようにしている。
【0027】
また、図1に示すように、ロータ5の支軸孔19に対して本体18の横方向に設けられたネジ穴20に止めネジ21を螺合してモータ3の回転軸4に締め付けることにより、ロータ5を固定状態にすることができる。
【0028】
さらに、図4(a)及び(b)に示すように、ロータ5の上下に設けられた円盤17a、17bの外周における複数個所(本実施例においては3箇所)には等間隔でローラ6の支軸23を貫通状態で取付けるための軸孔24が形成されている。夫々の軸孔24はロータ5の半径方向に長い長円形状を有し、その長さの範囲で支軸23が移動可能とされている。これらの軸孔24にローラ6の支軸23をベアリング25(図1参照)を介して取り付けることにより、ロータ5の周部に3個のローラ6が等間隔で回動自在に設けられた構成となる。
【0029】
また、上記の構造においては、図1に示すように、各ローラ6の支軸23が該支軸23の上下部を支持するコ字形の板バネ27で保持されると共に該板バネ27の側部の中央部がロータ5の中心側に向けて支持された構成とされている。このような構成についてより詳細に述べると、図5(a)及び(b)に示すように、長尺の弾性板部材の上下部を同方向に折曲してなるコ字形の板バネ27の上端と下端とを各ローラ6の支軸23の上下部に形成された切込溝26、26に嵌め込んで固定すると共に、板バネ27の側部の中央部に支持片28を固定し、該支持片28をロータ5の本体18の側部に形成した案内穴18aに挿着することによって、ローラ6がチューブTを圧迫するときのように、ローラ6の支軸23がロータ5の中心方向へ付勢された際の衝撃を板バネ27の弾性力によって緩衝することが可能とされている。
【0030】
さらに、各ローラ6の支軸23には回転ブレーキ22が設けられている。この回転ブレーキ22は、各ローラ6の支軸23の軸周りに、摩擦係数が少なく、耐磨耗性に優れているPOM(ポリアセタール)を設けた状態で各ローラ6の軸孔6aに挿通した構成としたものである。仮に、この回転ブレーキ22が設けられていない場合、ロータ5の回転によって、各ローラ6がチューブTを圧迫した状態から開放された直後に騒音が発生したり、急激に回転速度が増したりするという不安定な状態となるが、上記の回転ブレーキ22を設けた構成により、これらの発生を防止して、各ローラ6の騒音発生を防止すると共に、各ローラ6の安定した回転を維持することが可能となる。
【0031】
さらに、図1又は図4(a)及び(b)に示すように、ロータ5には三角柱を成す本体18の各角部の上下位置に離間して外半径方向に突出した位置決めガイド29、29が設けられている。これらの位置決めガイド29によって、ロータ5とステータ7間に装着したチューブTを係止することによって、このチューブTが上下方向へ移動しないように押さえることができる。
【0032】
なお、図1において、ロータ5は、本体18の側部の止めネジ21を緩めることにより、用手でそのまま持ち上げて、モータ3の回転軸4から抜き出すことができる。従って、清拭作業の際には、ロータ5を取り外したケーシング2の上方空間を拭き取ることができ、取り外したロータ5はそのまま清拭することが可能となる。
【0033】
また、本実施例において、図1に示すように、チューブTを各ローラ6の周軌道に対して後方から圧迫する円弧状周壁7aを有するステータ7が移動自在に設けられている。このステータ7は、図2又は図3に示すように、その周壁形状が、チューブTに対する押圧を開始する箇所(側方周壁13の付近)においては急カーブC1に形成され、該チューブTに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲(側方周壁14の付近)を押圧開始の急カーブC1の範囲よりも長い傾斜状C2に形成されている。
【0034】
上記の構成の具体的な態様例としては、図3に示すように、チューブTに対する押圧を開始する急カーブC1の範囲がロータ5の回転軸4を中心に5°の角度を有し、チューブTを押圧する範囲(後方周壁15の付近)がロータ5の回転軸4を中心に125°の角度を有し、チューブTに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの傾斜状C2の範囲(側方周壁14)がロータの回転軸を中心に50°の角度を有する構成となる。
【0035】
上記の構成において、チューブTを押圧するステータ7の周壁形状が、該チューブに対する押圧を開始する箇所においては急カーブに形成されているため、ローラ6がチューブTを押圧することによる圧迫状態を瞬間的に開始することができ、しかもこの押圧の開始時期には上記のローラ6の支軸23に設けた板バネ27の弾性力が作用して急カーブC1の周壁形状による衝撃を緩衝することができる。
【0036】
また、本発明においては、チューブTを押圧するステータ7の周壁形状が、チューブTに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲を緩やかな傾斜状C2に形成してあるため、ローラ6の支軸23に設けた板バネ27の復元動作に追従しながらチューブTに対する押圧動作を緩やかに解除することが可能となるため、ローラ6の支軸23に打撃音が生じることなく復帰することが可能となる。
【0037】
さらに、上記のステータ7は、図1に示すように、本実施例のケーシング2の後方周壁をなし、ケーシング2の後方上部材30とケーシング2の後方底部31の間に沿って前後に移動することができるが、その移動は下記のようにポンプカバー8の開閉に規制されるものである。
【0038】
即ち、図1、図7及び図8に示すように、ポンプカバー8はケーシング2の上方を覆う部材によって形成されると共に、ポンプカバー8の上側中心には前後方向に幅狭のカバーアーム9が固設されている。このカバーアーム9の後端部は直角に曲げられた直角片9aを有すると共に、図7に示すように、直角片9aの中央下部には凹部9bが形成されている。
【0039】
一方、図1又は図7に示すように、ケーシング2の後方底部31の最後端には上方に突出した軸支承片32が設けられ、この軸支承片32に横方向に貫通された支承軸11の両端をカバーアーム9の凹部9bの両端に形成された軸孔部9c、9cに係止した構成とすることにより、ポンプカバー8を軸支承片32の周りに回動可能としている。
【0040】
また、図1又は図9(a)に示すように、上記のカバーアーム9の直角片9aの端部には内側方向に突出した案内凸部9dが形成され、この案内凸部9dにおいて支承軸11から内側にやや離間した位置に案内軸12が横方向に設けられ、該案内軸12がステータ7の後端溝10の両側に設けられた縦方向ガイド12aに係合して案内されるように構成されている。
【0041】
従って、図9(a)に示すように、ポンプカバー8を開けた状態にすると、上記のポンプカバー8に取り付けられたカバーアーム9が支承軸11の周りに回動し、カバーアーム9の後端の案内凸部9dが上方を向くことによって、案内軸12に案内されたステータ7を後ろ方向に引っ張って後方に移動し、これによってロータ5の周軌道との隙間をあけて、この隙間にチューブTを容易に掛けることができる。
【0042】
また、図9(b)に示すように、ポンプカバー8を閉じる方向へ移動すると、カバーアーム9が支承軸11の周りに回動して、カバーアーム9の案内凸部9dが前方へ傾倒するように回動することにより、案内軸12に案内されたステータ7が前方への移動を開始する。
【0043】
そして、図9(c)に示すように、ポンプカバー8を完全に閉じると、案内軸12が支承軸11の前方に移動して、ステータ7を最前方へ移動することにより、チューブTをローラ6に押圧して完全に圧迫状態とする。この状態でモータ3の駆動によって回転するロータ5の各ローラ6がチューブTに対する圧迫位置を移動することにより、該チューブT内の液を移送することができる。
【0044】
なお、図8に示すように、ポンプカバー8の裏面には、両側の凹溝16、16の部位において、装填されたチューブTを上方から押さえつける円柱形の押え部材41が設けられ、ポンプカバー8を閉じた状態でチューブTの要所を押えることによってチューブTの安全な装填状態を確保するようにしている。
【0045】
上記の構成においては、チューブTの正常な装填及びロータ5の回転は、ポンプカバー8を閉じた状態において遂行されるため、ローラポンプ1の使用中は回転するロータ5に手が触れない構造とすることができ、安全性に優れた構造化が可能となる。
【0046】
また、上記の構成において、図1又は図6に示すように、ステータ7の下面にモータ3の回転軸4を挟んで対称位置に1個ずつのマグネット33a、33bと、いずれか一方のマグネット(例えばマグネット33a)から所定角度だけずらした位置に1個のマグネット33cが設けられ、夫々のマグネットを検知するホール素子34がケーシング2側の対向位置に設けられたことにより、ステータ7の回転方向と回転速度を検出することが可能とされている。
【0047】
さらに、本発明によるローラポンプにおいては、図1又は図6に示すように、ステータ7の下部にマグネット35を設け、このマグネット35を検知するホール素子36がケーシング2側の対向位置に設けられた構成によって、ステータ7の移動状態を確実に検出することができ、これによってチューブTの圧迫状態が正常に行われているか否かを知ることができる。
【0048】
一方、図8に示すように、ケーシング2の前方周壁13の上面において、カバーアーム9を閉じた際に押圧片37に押圧される位置には、プッシュロッド38の上端係合部38aが突出状態で設けられ、該プッシュロッド38は内蔵されたスプリング39によって上方へ弾性的に付勢されると共に、このプッシュロッド38の下端はケーシング2から下方へ突出した位置に設けられたマイクロスイッチ40を押し込んでONするようにしている。このような構成によってポンプカバー8が完全に閉じられたかどうかは、上記のマイクロスイッチ40の起動によって正確に検出することが可能となる。
【0049】
なお、上記のホール素子34、36又はマイクロスイッチ40は、不図示の制御装置に接続され、夫々の検知を行うと共に、ロータ5の回転速度表示や速度制御、或いは異常緊急時の停止動作、各種の安全或いは異常検知に対するランプ点灯等のコントロールに供されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のローラポンプは、ポンプカバーの開閉によってローラポンプのローラとステータとの間にチューブを容易に装着することが可能であると共に、チューブを押圧するローラが該チューブから離れる際に打撃音が生じないようにしたローラポンプとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるローラポンプの全体縦断面図である。
【図2】本発明によるローラポンプのポンプカバーを閉じた状態における上面図である。
【図3】本発明によるローラポンプのステータの周壁形状を説明するための概略上面図である。
【図4】(a)は本発明によるローラポンプのロータの上面図であり、(b)はその下面図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明におけるローラの支軸に設けられた板バネを説明するための部分拡大図である。
【図6】本発明によるローラポンプにおけるステータの回転方向と回転速度を検出するためのマグネット及びホール素子の位置関係を示す概略図である。
【図7】本発明によるローラポンプの後方全体図である。
【図8】本発明によるローラポンプの前方全体図である。
【図9】本発明によるローラポンプにおけるポンプカバーの開閉動作に伴うステータの位置状態を示す部分断面図であり、(a)はポンプカバーを完全に開いた状態を示し、(b)はポンプカバーを途中まで閉じた状態を示し、(c)はポンプカバーを完全に閉じた状態を示す。
【図10】(a)及び(b)は、特許文献1に関するポンプの上面図と断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラポンプ
2 ケーシング
3 モータ
4 回転軸
5 ロータ
6 ローラ
6a 軸孔
7 ステータ
7a 円弧状周壁
8 ポンプカバー
9 カバーアーム
9a 直角片
9b 凹部
9c 軸孔部
9d 案内凸部
10 後端溝
11 支承軸
12 案内軸
12a 縦方向ガイド
13、14 側方周壁
15 後方周壁
16 凹溝
17a、17b 円盤
18 本体
18a 案内穴
19 支軸孔
20 ネジ穴
21 止めネジ
22 回転ブレーキ
23 支軸
24 軸孔
25 ベアリング
26 切込溝
27 板バネ
28 支持片
29 位置決めガイド
30 後方上部材
31 後方底部
32 軸支承片
33a、33b マグネット
34 ホール素子
35 マグネット
36 ホール素子
37 押圧片
38 プッシュロッド
38a 上端係合部
39 スプリング
40 マイクロスイッチ
41 押え部材
T チューブ
C1 急カーブ
C2 傾斜状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに設けられたモータの回転軸にロータが装着され、該ロータの周囲に回転自在に軸支された複数個のローラの周軌道の一部をステータで囲繞すると共に前記ローラの周軌道に掛け渡した軟質チューブを前記ステータで押圧することによってチューブ内の送液を行うローラポンプにおいて、前記ロータに設けられた各ローラの支軸を支承する軸孔は前記ロータの半径方向に長い長円形状を有し、各ローラの支軸が該支軸の上下部を支持するコ字形の板バネで保持されると共に該板バネの側部の中央部が前記ロータの中心側に向けて支持される一方、前記回動するローラに対向して前記チューブを押圧する前記ステータの周壁形状が、該チューブに対する押圧を開始する箇所においては急カーブに形成され、該チューブに対する押圧を緩め始めてから完全に開放するまでの範囲を緩やかな傾斜状に形成したことによって、前記ローラが前記チューブに対する押圧状態から離れる際に打撃音を生じさせないようにしたことを特徴とするローラポンプ。
【請求項2】
前記ケーシングの上方を覆うポンプカバーのカバーアームが前記ステータの後端中央に設けられた後端溝内に軸支されて前記ポンプカバーの開閉を行うと共に、該カバーアームの軸支位置から離間した部位に設けられた案内軸が前記ステータの後端溝に設けられた縦方向ガイドに係合して案内されることにより、前記ポンプカバーを閉じる動作で前記ステータが前記チューブを圧迫する方向へ移動し、又は前記ポンプカバーを開く動作で前記ステータが前記チューブを開放する方向へ移動するようにしたことを特徴とする請求項1記載のローラポンプ。
【請求項3】
前記各ローラの支軸には回転ブレーキが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のローラポンプ。
【請求項4】
前記ステータの下面において前記モータの回転軸を挟んで対称位置に1個ずつのマグネットといずれか一方のマグネットから所定角度だけずらした位置に1個のマグネットが設けられ、夫々のマグネットを検知するホール素子が前記ケーシング側の対向位置に設けられたことにより、前記ステータの回転方向と回転速度を検出するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のローラポンプ。
【請求項5】
前記ポンプカバーを閉じる動作によって作動するマイクロスイッチが前記ケーシング側に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のローラポンプ。
【請求項6】
前記ステータの下部にマグネットを設け、このマグネットを検知するホール素子が前記ケーシング側の対向位置に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のローラポンプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−143728(P2007−143728A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340397(P2005−340397)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000138037)株式会社メテク (11)
【Fターム(参考)】