説明

ローラミル構造

【課題】ミル本体の過大な振動発生やシリンダのスタックを防止または抑制できるようにした衝撃吸収機構を備えているローラミル構造提供する。
【解決手段】ミル本体内で回転するテーブルと、該テーブル上を転動して被粉砕物を粉砕する複数個のローラ13と、粉体出口の上流に配設された回転式分級器と、ローラ13で被粉砕物を粉砕する際に作用する反力が振動としてミル本体に伝達することを緩和する衝撃吸収機構30Aとを具備し、衝撃吸収機構30Aは、ローラ13に一端を連結し他端にストライカ33Aを取り付けたアーム32がクランク機構を構成し、ミル本体に取り付けたシリンダ34Aのシリンダロッド先端を略半球形状の凸状曲面36に形成しておくとともに、ストライカ33Aに形成した平坦面37でシリンダロッド先端をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば微粉炭焚きボイラ等に適用されるローラミル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭焚きボイラでは、ローラミル(粉砕機)へ原炭を投入して粉砕した微粉炭を燃料として使用する。ローラミルの内部では、原炭が粉砕されるとともに、粉砕された微粉炭が乾燥及び分級され、ローラミル上部に設置された微粉炭管より搬送用の一次空気によりボイラまで気流搬送される。
【0003】
以下、ローラミル10の構成例について、図3及び図4に基づいて簡単に説明する。
図示のローラミル10は、ミル本体11内に投入された原炭を回転テーブル12とローラ13との間で粉砕し、回転式分級器20によって選別される所定粒径以下の微粉炭(粉体)を気流搬送により火炉1へ供給する装置である。なお、ローラ13は、回転テーブル12の周方向に等ピッチで複数(たとえば3個)配設され、回転テーブル12の回転によりテーブル上面で連れ回りされるようになっている。
ミル本体11の頂部には、回転式分級器20で分級された微粉炭を気流搬送により外部へ排出する粉体出口14が開口している。この粉体出口14は、周方向を4分割した状態で開口し、各粉体出口14には上述した微粉炭管2が接続されている。すなわち、回転式分級器20の頂部には、周方向を4分割した粉体出口14が開口している。
【0004】
また、図中の符号15は回転式分級器20の軸中心位置を貫通する原炭投入管、16はミル本体11内に気流搬送用の一次空気を供給する空気供給配管である。この空気供給配管16からミル本体11内に供給された一次空気は、回転テーブル12の外周部に配設された空気吹出口17からミル本体11内に流出して微粉炭を気流搬送する。
なお、図中の符号18はベーンであり、ミル本体11内の気流を軸中心方向へ導いて旋回を与える機能を有している。
【0005】
このようなローラミル10においては、原炭をローラ13で押しつぶすように粉砕することから、粉砕時には図5に示すような反力Fが発生する。この反力Fを緩和してミル本体11に対する振動伝達を抑制するため、ローラ13には衝撃吸収機構30が設けられている。この衝撃吸収機構30は、ローラ13に連結されてピン31に支持された略く字状のアーム32を備えている。
【0006】
アーム32は、一端がローラ13に連結され、他端に略半球形状のストライカ33が取り付けられている。そして、ローラ13に反力Fが作用すると、ピン31に支持されたアーム32がクランク機構として動作し、略上下方向の衝撃力はストライカ33を略水平方向に動作させる。この結果、ストライカ33がミル本体11に固定支持されたシリンダ34のピストンロッド先端に形成された平坦面35を叩くことにより、原炭粉砕時に発生する衝撃はシリンダ34で吸収される。従って、粉砕時に発生する衝撃力は、ミル本体11への伝達が抑制される。
【0007】
石炭等の粉砕に用いられるローラミルにおいては、ロータの自励振動を抑えるため、ローラ内に、相対的に動きうる移動体(ローラや粉粒体等)を取り付ける技術が開示されている。(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−213937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来の衝撃吸収機構30は、略半球状のストライカ33がシリンダロッドの平坦面35を叩いてシリンダ34で衝撃吸収するものであるから、ストライカ33の叩く位置が平坦面35の中心位置からずれてしまうことがある。すなわち、ストライカ33が平坦面35の軸中心ではない位置を叩いてしまうことにより、シリンダ34に対する入力に軸方向とは異なる成分が生じることとなる。
【0010】
このような状況になると、シリンダ34には軸方向(ピストンロッドの移動方向)とは異なる方向の入力が生じるため、ミル本体11に過大な振動を発生させることや、シリンダ34をスタックさせることが懸念される。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ミル本体の過大な振動発生やシリンダのスタックを防止または抑制できるようにした衝撃吸収機構を備えているローラミル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るローラミル構造は、ミル本体内で回転するテーブルと、該テーブル上を転動して被粉砕物を粉砕する複数個のローラと、粉体出口の上流に配設された回転式分級器と、前記ローラで前記被粉砕物を粉砕する際に作用する反力が振動として前記ミル本体に伝達することを緩和する衝撃吸収機構とを具備してなるローラミル構造であって、前記衝撃吸収機構は、前記ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、前記ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端を略半球形状に形成しておくとともに、前記ストライカに形成した平坦面で前記シリンダロッド先端をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
このような本発明のローラミル構造によれば、衝撃吸収機構は、ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端を略半球形状に形成しておくとともに、ストライカに形成した平坦面でシリンダロッド先端をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したので、平面のストライカが略半球形状のシリンダロッド先端を叩くことにより、シリンダに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。すなわち、粉砕によりローラに作用する反力は、アームのクランク機構を介して平面のストライカが略半球形状のシリンダロッド先端を叩くため、シリンダに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。
【0013】
本発明に係るローラミル構造は、ミル本体内で回転するテーブルと、該テーブル上を転動して被粉砕物を粉砕する複数個のローラと、粉体出口の上流に配設された回転式分級器と、前記ローラで前記被粉砕物を粉砕する際に作用する反力が振動として前記ミル本体に伝達することを緩和する衝撃吸収機構とを具備してなるローラミル構造であって、前記衝撃吸収機構は、前記ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、前記ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端に球面軸受を設置しておくとともに、前記ストライカに形成した平坦面で前記球面軸受をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
このような本発明のローラミル構造によれば、衝撃吸収機構は、ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端に球面軸受を設置しておくとともに、ストライカに形成した平坦面で球面軸受をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したので、平面のストライカがシリンダロッド先端の球面軸受を叩くことにより、シリンダに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。すなわち、粉砕によりローラに作用する反力は、アームのクランク機構を介して平面のストライカがシリンダロッド先端の球面軸受を叩くため、シリンダに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、平面のストライカが、略半球形状のシリンダロッド先端またはシリンダロッド先端の球面軸受を叩くため、粉砕時にローラに作用する反力(衝撃力)は、アームのクランク機構を介して、シリンダに対して常にシリンダ軸方向へ入力されることとなる。従って、シリンダによる効率のよい入力吸収が可能となり、ミル本体に伝達して作用する反力が抑制され、ミル本体に過大な振動が発生することや、シリンダがスタックすることを防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るローラミル構造の一実施形態として、(a)は衝撃吸収構造の構成例を示す図、(b)はストライカからシリンダへの入力説明図である。
【図2】図1(a)に示した衝撃吸収構造に関する変形例を示す図である。
【図3】ローラミルの概略構成例を示す縦断面図である。
【図4】ローラミルの概略構成例を示す平面図である。
【図5】衝撃吸収構造の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るローラミル構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、ローラミルは被粉砕物の原炭(石炭)を粉砕し、微粉炭(粉体)を得るものとするが、これに限定されることはない。
図3及び図4に示す実施形態のローラミル10は、ミル本体11内に投入された原炭を粉砕して微粉炭とし、この微粉炭が周方向を4分割されたミル本体頂部の粉体出口14から気流搬送により外部へ排出されるように構成されている。
【0018】
ローラミル10は、ミル本体11内で回転する回転テーブル12と、この回転テーブル12上を転動して原炭を粉砕する複数(図示の例では3個)のローラ13と、粉体出口14の上流に配設された回転式分級器20とを備えている。この場合のローラ13は、回転テーブル12の周方向に等ピッチで3個配設され、回転テーブル12の回転によりテーブル上面を連れ回りするようになっている。
また、ミル本体11の頂部には、回転式分級器20で分級された微粉炭を気流搬送により外部へ排出するための粉体出口14が開口している。この粉体出口14は、実質的には回転分級器20の頂部において平面視で周方向を4分割した状態に開口し、各粉体出口14には上述した微粉炭管2が接続されている。すなわち、略円錐台形状とした回転式分級器20の頂部には、周方向を4分割した粉体出口14が開口している。
【0019】
さて、上述したローラミル10は、ローラ13で原炭を粉砕する際に作用する反力Fが振動としてミル本体11に伝達することを緩和するため、たとえば図1に示すように構成された衝撃吸収機構30Aを備えている。
この衝撃吸収機構30Aは、一端がローラ13に連結され、他端にストライカ33Aを取り付けた剛体のアーム32を備えている。このアーム32は、略く字状に折曲された折曲部がピン31により揺動自在に支持されており、上向きの反力Fとしてローラ13に作用した入力を受けると、ストライカ33Aを水平方向に移動させるクランク機構を構成している。
【0020】
上述したピン31は、たとえばミル本体11の内壁面に対して固定支持されており、ストライカ33Aがシリンダロッド先端を叩く際、内壁面とアーム32のストライカ33A側との間には角度θが形成されている。なお、ストライカ33Aは、アーム32の他端を水平方向に折曲した先端部に取り付けられている。
【0021】
また、上述した衝撃吸収機構30Aは、ミル本体11に取り付けたシリンダ34を備えている。このシリンダ34は、シリンダロッドが水平方向に移動するように取り付けられており、シリンダロッド先端は、略半球形状に形成した凸状曲面36となっている。
【0022】
一方、ストライカ33Aの先端は平坦面37とされ、ストライカ33Aに形成した平坦面37がシリンダロッド先端の凸状曲面36をシリンダ軸方向に叩くことにより、粉砕時の衝撃を吸収するように構成されている。すなわち、上向きの反力Fに起因する衝撃力が作用することにより、アーム32はピン31を支点に揺動するクランク機構であり、しかも、ストライカ33Aを取り付けた他端部側が水平方向に向けられているので、上向きの衝撃力は、ストライカ33Aを水平方向(シリンダ軸方向)に動作させて凸状曲面36を叩くように方向転換する。
【0023】
このような本実施形態のローラミル構造において、上述した衝撃吸収機構30Aは、ローラ13に一端を連結し他端にストライカ33Aを取り付けたアーム32がクランク機構を構成し、ミル本体11に取り付けたシリンダ34Aのシリンダロッド先端を略半球形状の凸状曲面36に形成しておくとともに、ストライカ33Aに形成した平坦面37でシリンダロッド先端をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成されている。このため、平面に形成したストライカ33Aの平坦面37が、略半球形状の凸状曲面36としたシリンダロッド先端を叩くことにより、シリンダ34Aに対する入力は、常にシリンダ軸方向と一致する水平方向となる。
【0024】
すなわち、粉砕によりローラ13に作用する反力Fは、アーム32のクランク機構を介して、平坦面37を有するストライカ33Aが略半球形状の凸状曲面36となるシリンダロッド先端を叩くため、シリンダ34Aに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。換言すれば、たとえば図1(b)に示す矢印f1,f2のように、ストライカ33Aで凸状曲面36を叩く方向がシリンダ軸方向からずれた場合でも、上下方向の分力が生じることはなく、常に水平方向の入力fとしてシリンダ34Aに作用する。
【0025】
上述した実施形態は、たとえば図2に示すような変形例の構成としてもよい。なお、図2に示す変形例において、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この変形例は、シリンダロッド先端に形成した凸状曲面36に代えて、ミル本体11に取り付けたシリンダ34Bのシリンダロッド先端に球面軸受38を設置している。この場合、ストライカ33Aには、上述した実施形態と同様の平坦面37が設けられており、この平坦面37で球面軸受38の凸状曲面をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成されている。
【0026】
このような構成としても、平面に形成されたストライカ33Aの平坦面37が、シリンダロッド先端の球面軸受38を叩くことにより、シリンダ34Bに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。すなわち、粉砕によりローラ13に作用する反力は、アーム32のクランク機構を介してストライカ33Aの平坦面37がシリンダロッド先端の球面軸受38を叩くため、上下方向の分力を生じることはなく、従って、シリンダ34Bに対する入力は常にシリンダ軸方向となる。
【0027】
このように、上述した本実施形態及び変形例によれば、平面(平坦面37)のストライカ33Aが、略半球形状のシリンダロッド先端(凸状曲面36)またはシリンダロッド先端の球面軸受38を叩くため、粉砕時にローラ13に作用して衝撃力となる反力Fは、アーム32のクランク機構を介して、シリンダ34A,34Bに対して常にシリンダ軸方向へ入力されることとなる。
従って、シリンダ34A,34Bによる効率のよい入力吸収が可能となり、ミル本体11に伝達して作用する反力は抑制される。この結果、ミル本体11に伝達された衝撃力により過大な振動が発生することや、シリンダ34A,34Bがスタックすることを防止または抑制できる。
【0028】
このようにして、ミル本体11の過大な振動やシリンダ34A,34Bのスタックが防止または抑制されると、ローラミル10の信頼性や耐久性が向上するという顕著な効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ローラミル
11 ミル本体
12 回転テーブル
13 ローラ
14 粉体出口
20 回転式分級器
30A,30B 衝撃吸収機構
31 ピン
32 アーム
33A ストライカ
34A,34B シリンダ
36 凸状曲面
37 平坦面
38 球状軸受


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミル本体内で回転するテーブルと、該テーブル上を転動して被粉砕物を粉砕する複数個のローラと、粉体出口の上流に配設された回転式分級器と、前記ローラで前記被粉砕物を粉砕する際に作用する反力が振動として前記ミル本体に伝達することを緩和する衝撃吸収機構とを具備してなるローラミル構造であって、
前記衝撃吸収機構は、前記ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、前記ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端を略半球形状に形成しておくとともに、前記ストライカに形成した平坦面で前記シリンダロッド先端をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したことを特徴とするローラミル構造。
【請求項2】
ミル本体内で回転するテーブルと、該テーブル上を転動して被粉砕物を粉砕する複数個のローラと、粉体出口の上流に配設された回転式分級器と、前記ローラで前記被粉砕物を粉砕する際に作用する反力が振動として前記ミル本体に伝達することを緩和する衝撃吸収機構とを具備してなるローラミル構造であって、
前記衝撃吸収機構は、前記ローラに一端を連結し他端にストライカを取り付けたアームがクランク機構を構成し、前記ミル本体に取り付けたシリンダのシリンダロッド先端に球面軸受を設置しておくとともに、前記ストライカに形成した平坦面で前記球面軸受をシリンダ軸方向に叩いて衝撃を吸収するように構成したことを特徴とするローラミル構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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