説明

ローラ散水装置

【課題】散水量を適量に調整できるとともに、転圧ローラの表面全体に確実に散水できるローラ散水装置を提供することを課題とする。
【解決手段】アスファルト舗装2の転圧ローラ3への付着を防止するために転圧ローラ3の軸方向に沿って配置された散水配管11から複数の散水ノズル12を介して転圧ローラ3に散水するローラ散水装置10であって、転圧ローラ3への散水量を調整する散水量調整手段20と、転圧ローラ3と散水配管11との間隔Lを調整する間隔調整手段30と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装の転圧ローラへの付着を防止するために転圧ローラに散水するローラ散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧ローラ車両には、アスファルト舗装の合材が転圧ローラへ付着するのを防止するために、転圧ローラに散水する散水装置が設けられている。従来の散水装置では、散水量が多過ぎて、舗装面に水が流れ込み、その水が蒸発することで舗装面が膨れ上がってしまうブリスタリング現象を引き起こしてしまうことがあった。
【0003】
そこで、従来は散水量を減らすために、運転手がアスファルト舗装の状態を目視しながら、散水のオン・オフを手動にて行っていた。その他、散水量を減らす構成としては、例えば、開閉バルブを介して散水ノズルを接続し、開閉バルブの開度を調整することで散水量を調整するものがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−200312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように運転手が散水のオン・オフを手動で行う場合、散水量を適量にするのが困難であり、散水量が多くブリスタリング現象を引き起こしたり、散水量が足りずにアスファルト合材が転圧ローラに付着してアスファルト舗装が剥がれたりする問題があった。
【0006】
一方、開閉バルブを用いて散水量を調整する場合、散水量を適量に調整するのはできるものの、散水量を減らした場合、散水ノズルからの噴射角度が小さくなるため、隣り合う散水ノズルの中間部の転圧ローラの表面に散水されない部分が発生し、その部分にアスファルト合材が付着してアスファルト舗装が剥がれてしまう問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題に鑑みて創案されたものであり、散水量を適量に調整できるとともに、転圧ローラの表面全体に確実に散水できるローラ散水装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、アスファルト舗装の転圧ローラへの付着を防止するために前記転圧ローラの軸方向に沿って配置された散水配管から複数の散水ノズルを介して前記転圧ローラに散水するローラ散水装置であって、前記転圧ローラへの散水量を調整する散水量調整手段と、前記転圧ローラと前記散水配管との間隔を調整する間隔調整手段と、を備えたことを特徴とするローラ散水装置である。
【0009】
このような構成によれば、散水量調整手段で転圧ローラへの散水量を減らすことで、ブリスタリング現象の発生を防止できる。このとき、散水量の低下に伴って散水ノズルからの噴射角度が小さくなるが、間隔調整手段で転圧ローラと散水配管との間隔を長くすることで、散水範囲が広くなり、転圧ローラの表面全体に確実に散水することができる。つまり、本発明は、噴射角度が小さくなるという現象に対して、転圧ローラと散水配管との間隔に着目してこれを長くすることで、散水範囲を確保しているものである。また、散水量調整手段を用いて散水量を容易に調整することが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記散水量調整手段が、最大流量が制限される散水ノズルにて構成されていることを特徴とする。
【0011】
最大流量は、アスファルト舗装にブリスタリング現象が発生する散水量よりも少ない流量に制限されている。ブリスタリング現象が発生する散水量は、アスファルト舗装の仕様や施工場所の気候等の各種条件によって決まっており、従来の散水量よりも少なくなっている。請求項2に係る発明の構成によれば、散水供給量を変えなくても散水ノズルを交換するだけで、散水量を減らすことができるので、簡単な構成で散水量を調整することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記散水ノズルが、前記散水配管に沿って少なくとも3つ以上設けられており、前記散水ノズルのうち、前記散水配管の両端部に位置する散水ノズルは、内側に位置する散水ノズルよりも最大流量が大きい散水ノズルにて構成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、外部に開放されて水が乾きやすい状態の転圧ローラの軸方向両端部に多くの水を散水することができるので、転圧ローラの両端部と内側の部分とで均一の湿り具合を得ることができ、アスファルト合材が転圧ローラに付着してアスファルト舗装が剥がれてしまうのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、散水量を適量に調整できるとともに、転圧ローラの表面全体に確実に散水できるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るローラ散水装置を用いた転圧ローラ車両を示した側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るローラ散水装置の間隔調整手段を示した拡大側面図である。
【図3】(a),(b)は、本発明の実施形態に係るローラ散水装置の散水状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るローラ散水装置について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、転圧ローラ車両1には、アスファルト舗装2の合材が転圧ローラ3,3へ付着するのを防止するために、前後の転圧ローラ3,3にそれぞれ散水するローラ散水装置10が設けられている。ローラ散水装置10は、転圧ローラの上方に配置された散水配管11と、この散水配管11に取り付けられた複数の散水ノズル12と、散水する水を貯蔵する散水タンク(図示せず)と、散水タンク内の水を散水配管11に向けて供給する散水ポンプ(図示せず)と、を備えている。本発明のローラ散水装置10は、特に、転圧ローラ3への散水量を調整する散水量調整手段20と、散水ノズル12(図2および図3参照)からの噴射角度に応じて、転圧ローラ3と散水配管11との間隔Lを調整する間隔調整手段30とを備えたことを特徴とする。
【0018】
図1および図3に示すように、散水配管11は、転圧ローラ3の軸方向に沿って延在するように配置されている。散水配管11には、図示しない散水ポンプから延びる接続配管15が接続されている。接続配管15は、可撓性を有する部材で構成されている。散水配管11には、長手方向(転圧ローラ3の軸方向)に沿って所定の間隔(等ピッチ)で散水ノズル12が複数(本実施形態では4つ)取り付けられている。
【0019】
散水ノズル12は、アスファルト舗装2にブリスタリング現象が発生する散水量よりも少ない流量に最大流量が設定され制限されている。ブリスタリング現象が発生する散水量は、アスファルト舗装2の仕様や施工場所の気候・温度等の各種条件によって経験的に決まっている。本実施形態では、散水ノズル12に、例えば、ダムや貯水池の遮水舗装に敷設される水密アスファルトコンクリートからなるアスファルト舗装2に対して設定されており、最大流量が毎分0.50リッターで噴射角度が95度のノズルと、毎分0.67リッターで噴射角度が95度のノズルが採用されている。水密アスファルトコンクリートは、アスファルト量が8±1(重量%)程度であって、一般道路のアスファルト舗装(密粒度アスファルトコンクリート(5±1(重量%)程度))よりも多くなっており、本実施形態のアスファルト舗装2は、例えば、50mmと60mmの二つのアスファルト層(図示せず)を有している。ここで、ブリスタリング現象の発生に特に影響を与える空隙率は、水密アスファルトコンクリートは2%程度であり、通常の密粒度アスファルトコンクリートの4%程度に比べて少なくなっている。このようなアスファルトコンクリートの仕様の場合、前記の散水ノズル12のうち、散水配管11の両端部には、毎分0.67リッターで噴射角度が95度の散水ノズル12を取り付け、散水配管11の長手方向内側には、最大流量が毎分0.50リッターで噴射角度が95度の散水ノズル12を取り付けている。このような散水量とすることで、ブリスタリング現象の発生を防止することができる。なお、両側の散水ノズル12の最大流量を大きくしているのは、以下の理由による。つまり、転圧ローラ3の軸方向両端部は、外気や日光に触れやすく表面の水が蒸発しやすいので、複数の散水ノズル12のうち、散水配管11の両端部に位置する散水ノズル12を、内側に位置する散水ノズル12よりも最大流量が大きいものとすることで、転圧ローラ3の表面に均等な水膜が形成された状態でアスファルト舗装2に接地させるためである。
【0020】
なお、散水ノズル12の噴射角度は、最大流量によって決まっている。本実施形態における毎分0.50リッターまたは0.67リッターの散水ノズル12では、水圧や散水面積の関係で、噴射角度の上限値は95度である。つまり、噴射角度を95度よりも大きくすると、水圧が不足したり、散水面積に対して散水量が不足して、散水ムラが発生する場合がある。
【0021】
前記仕様のアスファルト舗装2の場合、従来は、最大流量が毎分1.0リッターで噴射角度が110度のものが採用されており、本発明においては、散水ノズル12は、従来よりも小流量タイプのものが採用される。このように小流量タイプの散水ノズル12を取り付けることによって、散水ポンプの仕様はそのまま変更することなく、散水量を少なくしている。つまり、本実施形態では、散水ノズル12を従来の散水ノズルよりも小流量タイプのものとすることで、散水量を調整しており、散水ノズル12にて散水量調整手段20が構成されている。
【0022】
なお、前記した散水ノズル12の最大流量および噴射角度は一例であって、前記のものに限定する趣旨ではない。散水ノズルの最大流量は、例えば、空港の滑走路の舗装等の使用の異なるアスファルト舗装に応じて、ブリスタリング現象が発生しないように適宜決定される。
【0023】
ところで、散水ノズル12を従来よりも小流量タイプとしたことで、噴射角度が狭くなっているが、図3の(a)に示すように、転圧ローラ3と散水配管11(散水ノズル12)との間隔Lが従来と同じであると、隣り合う散水ノズル12,12の中間部に相当する転圧ローラ3の表面に、水がかからない部分が発生してしまう。そこで、本発明では、図3の(b)に示すように、散水配管11を転圧ローラ3から遠くに移動させることで、水の噴射範囲を広げている。つまり、転圧ローラ3と散水配管11との間隔Lを長くすることで、散水ノズル12から遠い位置で、噴射された水が転圧ローラ3の表面にかかる。これによって、水の噴射範囲が広くなり転圧ローラ3の全表面に水がかかる。
【0024】
転圧ローラ3と散水配管11との間隔Lを調整する間隔調整手段30は、図2に示すように、転圧ローラ3(図1参照)から離間する方向に延出した支持ロッド31と、支持ロッド31上に設けられ散水配管11を係止する係止部材32とを備えて構成されている。間隔調整手段30は、前後の転圧ローラ3,3に対してそれぞれ設けられている。
【0025】
支持ロッド31は、車幅方向に所定の間隔をあけて、2つが互いに平行に設けられており、支持ロッド31,31間に散水配管11を架け渡すように構成されている(図3参照)。係止部材32は、支持ロッド31の上面に、所定の間隔で複数(本実施形態では3つ)設けられている。係止部材32は、半円状の支持金具32aと、散水配管11を押える押さえ金具32bとで構成されている。支持金具32aは、散水配管11の外径と同等の内径を備えており、斜め上部に開口するように支持ロッド31上に固定されている。支持金具32a上に散水配管11を載置して、押さえ金具32bで散水配管11を押えて係止する。
【0026】
転圧ローラ3と散水配管11との間隔Lは、散水ノズル12の噴射角度に応じて決定すればよく、隣り合う散水ノズル12,12から噴射された水同士が互いに交差する部分に転圧ローラ3の表面が位置するように決定される。
【0027】
以上のような構成のローラ散水装置10によれば、散水量調整手段20で転圧ローラ3への散水量を減らすことで、ブリスタリング現象の発生を防止できる。ここで、散水量調整手段20は小流量タイプの散水ノズル12にて構成されているので、転圧ローラ車両1の運転者が、手動でローラ散水装置10のオン・オフ作業を行わなくても、自動的に散水量が低減され、容易に適量の散水を行うことができる。
【0028】
このとき、散水量の低下に伴って散水ノズル12からの噴射角度が小さくなるが、間隔調整手段30で転圧ローラ3と散水配管11との間隔を長くすることで、散水範囲(噴射範囲)が広くなるので、転圧ローラ3の表面全体に確実に散水することができる。
【0029】
また、散水量調整手段20は、小流量タイプのノズルに交換するだけで、散水量を容易に調整することが可能となる。さらに、このような散水量調整手段20によれば、散水供給量を変えなくても、散水量を減らすことができるので、簡単な構成で散水量を調整することができる。
【0030】
さらに、間隔調整手段30も簡単な構成であるので、転圧ローラ3と散水配管11との間隔の調整を容易に行うことができる。
【0031】
また、散水配管11に取り付けられた複数の散水ノズル12のうち、散水配管11の両端部に位置する散水ノズル12は、内側に位置する散水ノズル12よりも最大流量が大きいものにて構成されているので、外部に開放されて水が乾きやすい状態の転圧ローラ3の軸方向両端部に多くの水を散水することができるので、転圧ローラ3の両端部と内側の部分とで均一の湿り具合を得ることができ、アスファルト合材が転圧ローラ3に付着してアスファルト舗装2が剥がれてしまうのを確実に防止できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、散水量調整手段20や間隔調整手段30の構成は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
2 アスファルト舗装
3 転圧ローラ
10 ローラ散水装置
11 散水配管
12 散水ノズル
20 散水量調整手段
30 間隔調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装の転圧ローラへの付着を防止するために前記転圧ローラの軸方向に沿って配置された散水配管から複数の散水ノズルを介して前記転圧ローラに散水するローラ散水装置であって、
前記転圧ローラへの散水量を調整する散水量調整手段と、
前記転圧ローラと前記散水配管との間隔を調整する間隔調整手段と、を備えた
ことを特徴とするローラ散水装置。
【請求項2】
前記散水量調整手段は、最大流量が制限される散水ノズルにて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のローラ散水装置。
【請求項3】
前記散水ノズルは、前記散水配管に沿って少なくとも3つ以上設けられており、
前記散水ノズルのうち、前記散水配管の両端部に位置する散水ノズルは、内側に位置する散水ノズルよりも最大流量が大きい散水ノズルにて構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のローラ散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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