説明

ロールオン容器

【課題】塗布する内容物の量を調整することができるロールオン容器であって、特に、増粘剤を配合しない粘度の極めて低い内容物であっても、垂れ落ちることがなく塗布可能なロールオン容器を提供する。
【解決手段】容器口部に直径5乃至40mmのボールを回転自在に保持した中栓を配置し、容器本体に収容する内容物を中栓の流路を通してボール表面に分配し所望部位に塗布するロールオン容器であって、中栓の流路の直径は1mm以上、且つボールの直径の1/4.5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部にボールを回転自在に保持した中栓を配置し、化粧料等の内容物をボール表面に分配して所望の部位に塗布するロールオン容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器口部にボールを回転自在に保持する中栓を配置し、内容物をボール表面に分配して所望部位に塗布するロールオン容器は、手を汚さず化粧品や医薬品等の内容物を簡便に塗布することができる容器として広く用いられている。ロールオン容器を使用する際には、ボールを塗布部位となる皮膚に接触させつつ、容器本体を上方に持ち上げ、内容物をボールに接触させるとともに、ボールを皮膚上で転がすことによって、ボール表面に内容物を分配する。このようにして、内容物はボール表面と中栓内周面との間の隙間を通って、ボールの表面から皮膚上に塗布される。
【0003】
ボール表面と中栓内周面との間の隙間は、内容物の塗布量を決定する重要な部分であるにも拘わらず、量産における寸法誤差を考慮し、ボールが回転しないという問題を防止するため、隙間の寸法を大きくする傾向にある。そして、隙間を大きくすることによって生じ得る内容物が出過ぎるという問題に対しては、少なくとも、内容物が垂れ落ち、衣服等を汚すなどの製品不良に繋がらないよう、内容物の粘度を必要以上に高めることで回避しているのが実情であった。
【0004】
しかしながら、内容物に必要以上に粘度を付与すると、皮膚に塗布しにくくなるとともに、厚塗りとなってしまい、塗布した後に、更に指で塗り広げる必要が生じるなど、ロールオン容器の簡便性が損なわれることとなる。また、近年市場では清涼感があり、薄く均一に塗ることができる粘度の低い内容物が要望され、これに対応する容器が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−222860号公報
【特許文献2】特開2002−240847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、内容物の塗布する量を調整することができるロールオン容器であって、特に、増粘剤の配合量が少ない粘度の極めて低い内容物であっても、垂れ落ちることがなく塗布可能なロールオン容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器口部に直径が5〜40mmのボールを回転自在に保持した中栓を配置し、容器本体に収容する内容物を中栓の流路を通してボール表面に分配し所望部位に塗布するロールオン容器であって、中栓の流路の直径は1mm以上、且つボールの直径の1/4.5以下であることを特徴とするロールオン容器である。
【0008】
また本発明は、粘度が20〜300mPa・sの内容物を収容することを特徴とするロールオン容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロールオン容器であっても、塗布する内容物の量を調整することができ、特に、従来はロールオン容器の量産でのバラツキによって、塗布することが不可能であった粘度が低い内容物であっても、内容物が垂れ落ちることがなく適切に塗布することが可能なロールオン容器の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ロールオン容器の斜視(一部断面)図
【図2】ロールオン容器の断面図
【図3】ロールオン容器のボールと中栓の拡大図
【図4】A−A線断面図
【図5】従来のロールオン容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のロールオン容器の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0012】
図2は、本発明のロールオン容器の断面図を示す。容器本体(1)の口部に中栓(3)を配置する。中栓(3)は内周面(7)においてボールを回転自在に保持する。
【0013】
ロールオン容器を使用する際には、ボール(2)を塗布部位となる皮膚に接触させつつ、容器本体(1)を上方に持ち上げ、容器本体(1)に収容した内容物を流路(8)を通してボール(2)に接触させるとともに、ボール(2)を皮膚上で転がすことによって、ボール表面に内容物を分配し、ボール表面と中栓内周面との間の隙間を通して、皮膚上に塗布するようにする。
【0014】
ボール(2)の直径は、ロールオン容器として所望する部位に塗布する際に適した大きさにするよう設計する。一度に塗布する幅はボールの大きさによるところ、人体の皮膚に塗布する場合の塗布面の幅を考慮し、ボール(2)の直径は5〜40mmが好ましく、さらに7〜35mmが好ましい。
【0015】
容器本体(1)に収容した内容物をボール(2)の回転方向によらずボール表面に均一に接触させるため、中栓の流路(8)の断面は通常円形とするが、容器の形状等に対応して種々の形状とすることは可能であり、円形、楕円形、及びこれらに類似する形状を基本形状とするものであればよく、これに限定されるものではない。
【0016】
使用後は、キャップ(4)を容器本体(1)に螺合し装着する。キャップ(4)内面には、押下リブ(6)を垂設しており、キャップ(4)を容器本体(1)に螺合すると、ボール(2)は押下リブ(6)によってシール段部(5)に圧着され、流路(8)は閉鎖される。これにより、容器本体(1)内の内容物を、外気との接触から遮断し、品質を保持することができる(図2)。
【0017】
図4は、A−A線における断面図を示す。Rは中栓(3)の口内半径、rはボール(2)の断面の半径を示す。中栓(3)およびボール(2)は、いずれも合成樹脂を成型することにより得られるが、量産によるバラツキは、Rが約±0.05mm、rが約±0.05mmである。中栓(3)とボール(2)との隙間(9)は、ボール(2)がスムーズに回転し、内容物を送り出すために、少なくとも0.05mmを確保する必要がある。したがって、成型のバラツキにより、口内半径Rが最も小さい中栓と、断面半径rが最も大きい回転ボールを組み合わせた場合にも、隙間(9)が0.05mmを保てるよう、隙間(9)を0.15mmとして設計する。逆に、最も小さいボールと最も大きい中栓が組み合わされた場合には、隙間(9)は0.25mmとなる。
【0018】
バラツキにより発生し得る隙間(9)の大きいロールオン容器は、内容物の出る量が多く、内容物の垂れ落ちや流れ出しなどの問題が生じる可能性がある。このため、従来は内容物に増粘剤を多量に配合し、粘度を高めることによって、この問題を解決していた。したがって、従来のロールオン容器に収納する内容物の粘度は、約300〜5000mPa・sであった。
【0019】
本発明のロールオン容器は、ボール(2)と中栓(3)の量産でのバラツキによって生じる内容物の過剰な塗布量の問題を、中栓の流路(8)の直径を制御することによって解消せんとするものである。具体的には、ボール(2)の直径と中栓(3)の流路(8)の直径との関係に着目し、低粘度の内容物であっても垂れ落ちることがないロールオン容器を開発するため、試作品による使用テストを行った。その結果、前記問題点を解消し得るロールオン容器、すなわち、容器口部に直径5乃至40mmのボールを回転自在に保持する中栓を配置し、中栓の流路の直径は1mm以上、且つボールの直径の1/4.5以下であることを特徴とするロールオン容器を開発することができた。
【0020】
中栓(3)の流路(8)の直径がボール(2)の直径の1/4.5以下とすることによって、量産でのバラツキにより、たとえ口内半径Rが最も大きい中栓と、断面半径rが最も小さい回転ボールとの組み合わせにより、隙間(9)が最大0.25mmとなった場合でも、内容物の出る量を制限し、内容物の垂れ落ち等の問題が生じることはない。したがって、内容物に増粘剤を必要以上に配合するなどして粘度を高める必要はなく、清涼感があり、薄く均一に塗ることができる粘度の低い内容物を収容することが可能となる。
【0021】
また、中栓の流路(8)の直径を1mm以上とすることによって、内容物をスムーズに通過させることができるとともに、中栓を量産する際に成型が容易となる。
【0022】
図5は、従来のロールオン容器の断面図を示す。ボール(2)の直径は約19mm、中栓(3)の流路(8)の直径は約13.6mmであるため、中栓の流路の直径はボールの直径の約1/1.4に相当する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明のロールオン容器について行った使用テストの結果を実施例として説明する。
【0024】
ボールと中栓の流路のそれぞれの直径の組み合わせについて、サンプルによる使用テストを行った結果を表1に示す。容器には、30℃における粘度(ビスメトロン回転粘度計;ローターNo.2,ローター回転数60rpm)が10〜400mPa・sの内容物を収容した。
【0025】
ロールオン容器の使用テストの評価基準は下記の通りとし、パネラー4名が脇の下に円を数回描くように使用して評価した。
○:適量が塗布できる
△:塗布量が不十分
×:塗布量が過剰で内容物が垂れ落ちる
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す使用テストの結果から、流路の直径がボールの直径の1/4.5
以下とすることによって適量が塗布できることが確認されたが(実施例1〜10)、1/4.5より大きい、例えば1/3.8以上では、塗布量が過剰となり内容物の垂れ落ちが確認された(比較例1〜4,6,7)。
【0028】
また、流路の直径が、1mm以上では、適量が塗布できることが確認されたが(実施例1〜10)、1mm未満、例えば、0.8mm以下では、塗布量が少量となり、充分に塗布することができなかった(比較例5,8)。
【0029】
内容物の粘度は、10mPa・sでは、塗布量がやや過剰となり内容物が垂れ落ちる傾向が生じ(実施例2)、400mPa・sでは塗布量がやや不十分な傾向にあることから(実施例7)、20〜300mPa・sが好ましく、更に本発明のロールオン容器において良好な使用性を得るためには20〜220mPa・sが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 容器本体
2 ボール
3 中栓
4 キャップ
5 シール段部
6 押下リブ
7 内周面
8 流路
9 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に直径が5〜40mmのボールを回転自在に保持した中栓を配置し、容器本体に収容する内容物を中栓の流路を通してボール表面に分配し所望部位に塗布するロールオン容器であって、中栓の流路の直径が1mm以上、且つボールの直径の1/4.5以下であることを特徴とするロールオン容器。
【請求項2】
粘度が20〜300mPa・sの内容物を収容することを特徴とする請求項1記載のロールオン容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255910(P2011−255910A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130054(P2010−130054)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】