説明

ロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置

【課題】ロールブレード塗布において恒常的に発生するウェブ幅方向の塗布液の付着量のばらつき、特にウェブ幅方向の両端部近傍での塗布液の付着量が少なくなるのを抑制し得、均一なウェブ幅方向の塗布液の付着量を得ることができるロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置の提供。
【解決手段】連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量の塗布液をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布方法において、前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能にするロールブレード塗布方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に走行するウェブ(織布又は不織布等の基材)に過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量に調整して塗布する塗布方法としては、例えば、メイヤーバー塗布方法、ブレード塗布方法、ロールブレード塗布方法、エアナイフ塗布方法などが種々知られている。これらの中でも、ロールブレード塗布方法は、濃度の高い塗布液を薄膜塗布できることから種々の製品の塗布に広く採用されている。
【0003】
ロールブレード塗布方法は、図1に示すように、ロールブレード31がバックアップロール32に背面を支持されたウェブ33に圧接し、ウェブ33に転液された塗布液34の過剰分を掻き落す方法である。また、図2に示すように、ロールブレード31は保持部材35によって保持されている。更に、保持部材35のロールブレード31に対向する側に該保持部材35を押すチューブ状気空部材36が配されており、これによって、ロールブレード31がウェブ33に圧接し得る力を発生させている。図2中44は、チューブ状気空部材を保持するホルダーである。
図3に、図1中A−A線での断面とその幅方向位置に対応するロールブレード31とバックアップロール32の接圧の概念図を示す。
チューブ状気空部材36は、幅方向にウェブ33の存在しない部分のロールブレード31にも力を伝えることになるので、ロールブレード31とバックアップロール32の接圧はウェブ33の厚みによる段差によってウェブ33の両端部近傍で中央の接圧より高くなる現象がある。このため、従来のロールブレード塗布においてはウェブ33の両端近傍の塗布液の付着量がウェブ33中央部の付着量より少なくなる状況が生じ、ウェブ幅方向に不均一な膜厚になってしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、幅方向の各位置のブレードの押圧を電気信号に変換する圧力検出器を持つことで、ウェブ幅方向における付着量を均一化することができるロールブレード塗布装置が提案されている。
しかし、この特許文献1に記載のロールブレード塗布装置では、ロールブレード幅方向のウェブ押し付け力を機械的な押圧力により調節することができず、また、ロールブレード自体を押すことができないため、効果的にウェブ幅方向の塗布液の付着量を調節することが困難であるという問題がある。
【0005】
また、同じく、前記問題を解決するため、特許文献2では、連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量にロールブレードにより計量して塗布するロールブレード塗布方法において、前記ロールブレードをバックアップロールに背面支持されたウェブにホルダーを介して押し付けるロールブレード押付工程を少なくとも含み、前記ロールブレードを、前記バックアップロールの法線方向に対しウェブ進行方向に15°〜45°傾けて押し付けるもので、ロールブレードを押し付けるために配したチューブ状気空室をロールブレード幅方向に沿って複数個に分割し、該複数個のチューブ状気空室における空気圧を個々に調節してロールブレードの押し付け力を均一にする方法が提案されている。
しかし、この特許文献2に記載の方法では、チューブの分割部両側で比較的広い範囲にチューブが膨らめず、ロールブレードを押し付けるための力を発生できない部分ができてしまうため、細かな分割ができなくて、前記問題を解消させるための十分な機能を出すことができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ロールブレード塗布において恒常的に発生するウェブ幅方向の塗布液の付着量のばらつき、特にウェブ幅方向の両端部近傍での塗布液の付着量が少なくなるのを抑制し得、均一なウェブ幅方向の塗布液の付着量を得ることができるロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明のロールブレード塗布方法は、連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布方法において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能にすることを特徴とする。
本発明のロールブレード塗布装置は、連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布装置において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ロールブレード塗布において恒常的に発生するウェブ幅方向の塗布液の付着量のばらつき、特にウェブ幅方向の両端部近傍での塗布液の付着量が少なくなるのを抑制し得、均一なウェブ幅方向の塗布液の付着量を得ることができるロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、従来のロールブレード塗布方法を示す説明図である。
【図2】図2は、図1で用いた従来のロールブレード装置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、図1のA−A線での断面とその幅方向位置に対応するロールブレードとバックアップロールの接圧の概念図である。
【図4】図4は、本発明のロールブレード塗布装置の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明のロールブレード塗布装置を用いたロールブレード塗布方法を説明する図である。
【図6】図6は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの配列状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明のロールブレード装置における平板部材と空気シリンダーの状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明のロールブレード装置における平板部材と空気シリンダーのロッドの状態を示す図である。
【図9】図9は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの空気圧の調整状態を示す図である。
【図10】図10は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの配列及び各シリンダーの圧力を表示した図である。
【図11】図11は、実施例1及び2におけるウェブ幅方向の両端近傍にそれぞれ4個ずつ配置した空気シリンダーの空気圧の調整方法を示す図である。
【図12】図12は、実施例3におけるウェブ幅方向の両端近傍にそれぞれ2個ずつ配置した空気シリンダーの空気圧の調整方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置)
本発明のロールブレード塗布方法は、連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量の塗布液をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布方法において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能にすることを特徴とする。
本発明のロールブレード塗布装置は、連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量の塗布液をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布装置において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダーの空気圧を、これら以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧よりも低く調整することが、ロールブレードの幅方向で塗布液の付着量が均一な塗布を行う点から好ましい。
ここで、前記ウェブの幅方向両端近傍とは、ウェブの端部を中心としてウェブ内側、ウェブ外側(ウェブの無いところ)の各々100mmまでの部分を意味する。
前記ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダーの空気圧を、これら以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧よりも低く調整する方法としては、例えば、レギュレータ装置を用いた調整方法などが挙げられる。
また、前記ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダーの空気圧を、これら以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧よりも低く調整する程度については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダー以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧は、特に制限はなく、適宜調整することができるが、0.13MPa〜0.28MPaが好ましい。
【0012】
前記ロールブレードとしては、構造、大きさ(幅、長さ)、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
前記ロールブレード塗布方法及びロールブレード塗布装置に用いるバックアップロールとしては、形状、構造、大きさ(幅、長さ)、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、形状については、円柱状が好ましい。該バックアップロールの外周面は、弾性体により被覆されていることが好ましい。前記弾性体としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
前記ウェブとしては、形状、構造、大きさ(幅、長さ)、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、各種基材などが挙げられる。前記ウェブの材質としては、例えば、紙、プラスチックス、金属、木材、などが挙げられる。前記ウェブの形状としては、例えば、シート状、帯状、ロール形態、などが挙げられる。
前記空気シリンダーとしては、形状、構造、大きさ(幅、長さ)、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
前記空気シリンダーを保持するホルダーとしては、形状、構造、大きさ(幅、長さ)、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、前記ホルダーの材質としては、例えば、ゴム、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0013】
ここで、図4は、本発明のロールブレード塗布装置の一例を示す概略図である。
本発明のロールブレード塗布装置は、連続的に走行するウェブ(織布又は不織布等の基材)に塗布液を過剰量に転移させた後、所望の塗布液の付着量に調整するロールブレード塗布装置である。このロールブレード塗布装置は、生産性を高めるためにウェブを高速で走行させている。このため、本発明のロールブレード塗布装置1は、塗布液を調整するロールブレード11と、このロールブレード11を保持した保持部材14と、この背部に保持部材14を均一にウェブ13に押圧させるために複数配列させている空気シリンダー16と、この空気シリンダー16を保持するホルダー23とを備えている。
また、空気シリンダー16には、圧空を供給するチューブ17が接続されていて、該チューブ17の途中には、共通チューブ18の空気圧を所定の圧力に落とす圧調整器19が配されている。
【0014】
図5は、本発明のロールブレード塗布装置を用いたロールブレード塗布方法を説明する図である。
本発明のロールブレード塗布装置1のロールブレード11は保持部材14によって保持されており、保持部材14のロールブレード11に対向する側に、保持部材14を押す空気シリンダー16が配されている。
バックアップロール12に保持されながら走行しているウェブ13に、空気シリンダー16で支持されているロールブレード11を当接して、この空気シリンダー16を適正に設定して過剰な塗布液を掻き落すことによって、ウェブ13上の塗布液が所望の付着量となる。
【0015】
図4に示すように、本発明のロールブレード塗布装置1では、ロールブレード11に対向する側に、保持部材14を押す空気シリンダー16が複数配置されている。これによって、ウェブ13に対する押圧力を適正に設定すると共に、ウェブ幅方向に押圧する力を調整することで、ロールブレード11の幅方向への撓みを抑えて、ウェブ13上の塗布液を所望の付着量であって、ウェブ幅方向の塗布液の付着量を一定にして、均一な膜厚を得ることができる。
【0016】
また、本発明のロールブレード塗布装置では、ロールブレードの直径は8mm〜15mmの間で選択されることが好ましい。
図4に示すロールブレード塗布装置1を用いても、図3に示すようなウェブ幅方向の両端部近傍の接圧上昇は発生する。
しかしながら、ウェブ幅方向の両端部近傍のロールブレード11がウェブ13を押し付ける力が強くなる現象に対しては押し付ける力が強くなる部分(ウェブ幅方向の両端近傍)に配置している空気シリンダー16の空気圧を、圧調整器19を用いて適正に降圧することにより、押し付け力を調整することができるので、ウェブ幅方向で均一な塗布液の付着量を得ることが可能になる。
このとき、ロールブレード11の直径は8mm〜15mmの間で選択されているが、ロールブレード11の直径が8mmより小さい場合には、ロールブレード11を保持部材14で保持している力が不足して、塗布している途中でロールブレード11が脱落する事故が発生しやすくなることがある。一方、ロールブレード11の直径が15mmより大きくなると、ビードスジと呼ばれるピッチの細いスジが全面に発生する確率が増大するし、更に、ロールブレード11の剛性が増すので、ウェブ幅方向に細かく空気シリンダー16の空気圧を調整しても、ロールブレード11がウェブ13を押し付ける力のウェブ幅方向での反映は鈍くなり、微妙な塗布液の付着量調整がしにくくなるという不具合が生じる。
【0017】
図6は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの配列状態を示す図である。
本発明のロールブレード塗布装置1では、空気シリンダー16の外径Dは、10mm〜50mmまでの範囲で選択されており、20mm〜30mmが好ましい。
空気シリンダー16の外径Dが10mmより小さくなると、空気シリンダー16を密度を高くして多数を配置しても、空気シリンダー16に送る空気の圧力は空気シリンダー16の外径Dが大きい場合より高めに設定する必要が生じてくる。
そのために、高圧の空気で作動させると各部に故障が起きやすくなるし、空気シリンダー16の必要数が多くなり、圧調整器19などを含めた機器のコストも増大するという問題がある。
また、空気シリンダー16の外径Dが50mmより大きい場合には、一つの空気シリンダー16が受け持つ幅が広くなり、ウェブ幅方向の押し付け圧を細かく調整することができなくなる。
【0018】
本発明のロールブレード塗布装置1では、図6に示すように、空気シリンダー16は、その配列ピッチYは、空気シリンダー16の外径D以上であって、かつ、空気シリンダー16の外径D+20mm未満の範囲で配列されている。更に、その配列ピッチYは、空気シリンダー16の外径D+10mm未満の範囲にあることが好ましい。
配列ピッチYを、空気シリンダー16の外径D+20mm以上にすると、密に配列した場合より空気シリンダー16に送る空気の圧力はより高めに設定する必要が生じてくる。高圧の空気で作動させると各部に故障が起きやすくなる。また、一つの空気シリンダー16が受け持つ幅が広くなりウェブ幅方向の押し付け圧を細かく調整することができなくなる。
したがって、配列ピッチYを、空気シリンダー16の外径D+20mm未満、好ましくは、空気シリンダー16の外径D+10mm未満にすることで、一つの空気シリンダー16が受け持つ幅が適正になりウェブ幅方向の押し付け圧を細かく調整することが可能になる。
なお、空気シリンダー16は、主にシリンダーとピストンとから構成されていて、できるだけピストン直径を大きくすることが好ましく、同様に、空気シリンダーのボア径、即ち、シリンダー径(内径)はできるだけ大きい方が好ましい。したがって、ピストン、シリンダー等に懸かる圧力を考慮して、空気シリンダーの厚さはできるだけ薄くすることが好ましい。
【0019】
図7は、本発明のロールブレード装置における平板部材と空気シリンダーの状態を示す図である。
本発明のロールブレード塗布装置1では、ロールブレード11の保持部材14と空気シリンダー16の間に平板部材20が、平板部材20の重心と空気シリンダー16の軸心が一致するように配置している。この平板部材20によって、空気シリンダー16のロッド21から受けた圧空の力を保持部材14のウェブ幅方向に均等に伝えている。
また、保持部材14は押し力によって多少の変形を伴うが、その状況においても平板部材20が保持部材14に密着するように、多少のガタをもって、平板部材20は、ロッド21に締結されていて、保持部材14の変形を相殺するように圧空の力を保持部材14の幅方向に均等に伝えることができる。
更に、平板部材20の形状を円盤形状にすることにより、ロッド21上で平板部材20が回転、又は傾いたとしたとしても、隣の平板部材20との接触干渉を防ぐことができる。これによって、隣の平板部材20との隙間を大きく取る必要がなく、平板部材20の直径を空気シリンダー16の配列ピッチYより、わずかに小さくなるように設定することができた。
更に、平板部材20により、ロールブレード11の保持部材14に、空気シリンダー16からの力を伝えられない領域を最小限にできるので、ウェブ幅方向での押し付け圧をより均一にすることができる。
【0020】
図8は、本発明のロールブレード装置における平板部材と空気シリンダーのロッドの状態を示す図である。
平板部材20が、空気シリンダー16のロッド21が接する部分を、図8では、下方に向かって凹球面にし、且つ、空気シリンダー16のロッド21の頭部を、図8では、凸球面することで、平板部材20とロッド21との接触を安定させることができる。このように接触させると、その平板部材20とロッド21との自由度が増すことから、平板部材20のロールブレード11の保持部材14との密着をより確保しやすくなり、ウェブ幅方向での押し付け圧の均一性をより向上することができる。
【0021】
図9は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの空気圧の調整状態を示す図である。
本発明のロールブレード塗布装置1が塗布を行っている際には、共通チューブ18の空気圧P0は、元圧調整器22によって、圧調整器19以降の所定空気圧P1、P2、P3・・・よりも、高くなるように設定してある。
本発明のロールブレード塗布装置1の塗布の開始時には、ウェブ13が破断してしまう危険を回避するために、ロールブレード11のウェブ13を押し付ける力を徐々に上げていって、所定の値にもっていく操作が必要になる。そこで、本発明のロールブレード塗布装置1では、空気圧P1、P2、P3・・・を所定値より低い状態で塗布を開始し、同時に、昇圧していって、おのおの所定の空気圧P1、P2、P3・・・にする操作となる。
共通チューブ18の空気圧P0を、元圧調整器22によって、連続塗布を行う際の空気圧に設定する。
次に、圧調整器19によって、P1、P2、P3・・・を所定値に調節する。
更に、圧調整器19の設定はそのままに、元圧調整器12によって、空気圧P0を連続塗布を行う際の空気圧より下げていくと、P1、P2、P3・・・も下げることができ、塗布開始の準備が整う。
塗布の開始では、空気圧P0を連続塗布を行う際の空気圧より低い状態で、ロールブレード11をウェブ3に押し付け、徐々に、空気圧P0を連続塗布を行う際の空気圧まで昇圧することで、ウェブ3の破断の危険を回避した塗布の開始が達成できる。
【0022】
図10は、本発明のロールブレード塗布装置における空気シリンダーの配列及び各シリンダーの圧力を表示した図である。
空気シリンダー16は、ウェブ13及びロールブレード11の幅方向に複数個配列してある。
この空気シリンダー16の空気圧は、塗布を行っている間におのおの微調整が必要になる場合もある。このときに、空気シリンダー16の空気圧の調整が容易に対応できるように、空気シリンダー16の空気圧を表示することによって、おのおのの空気圧の微調整を確実に行うことが可能になる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図4に示す本発明のロールブレード塗布装置を用いて、以下に示す条件での塗布を行い、オンライン付着量計でウェブ幅方向の塗布液の付着量を確認しながら、おのおのの空気シリンダーの空気圧を調整して、ウェブ幅方向の塗布液の付着量偏差を最小にした。
具体的には、図11に示すように、ウェブ幅方向の両端部近傍の4個ずつの空気シリンダー16について、残りの作動空気シリンダー56個の平均空気圧(100%)に対して15%ずつ4段階に減圧させた。ウェブ13の端部が4つの空気シリンダー16のほぼ真ん中に位置するように空気シリンダーを配置した。
最終的に、調整できた最小偏差は、3.6%であった。
(1)塗布ベース(ウェブ):坪量62g/mの上質紙、厚み70μm
:幅1,560mm
(2)塗布液 :10質量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液
(3)塗布速度 :400m/分
(4)ロールブレード外径 :12mm
(5)ロールブレードの長さ:2,300mm
(6)空気シリンダーの外径:20mm
(7)シリンダー配列ピッチ:26mm
(8)配置シリンダー数 :80個
作動シリンダー数 :64個
ウェブ幅方向の塗布液の付着量偏差は、次式(1)で求めた。
ウェブ幅方向の塗布液の付着量偏差(%)={(最大付着量(g/m)−最小付着量(g/m)/平均付着量(g/m))×100 ・・・式(1)
【0025】
(実施例2)
図7及び図8に示す円盤形状の平板部材20の空気シリンダー16のロッド21が接する部分を凹球面にし、かつ空気シリンダーのロッド頭部を凸球面するようにした本発明のロールブレード塗布装置を用いて、以下に示す条件での塗布を行い、オンライン付着量計でウェブ幅方向の塗布液の付着量を確認しながら、おのおのの空気シリンダーの空気圧を調整して、ウェブ幅方向の塗布液の付着量偏差を最小にした。
具体的には、図11に示すように、ウェブ幅方向の両端部近傍の4個ずつの空気シリンダー16について、残りの作動空気シリンダー56個の平均空気圧(100%)に対して15%ずつ4段階に減圧させた。ウェブ13の端部が4つの空気シリンダー16のほぼ真ん中に位置するように空気シリンダーを配置した。
最終的に、調整できた最小偏差は、3.1%であった。
(1)塗布ベース(ウェブ) :坪量62g/mの上質紙、厚み70μm
:幅1,560mm
(2)塗布液 :10質量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液
(3)塗布速度 :400m/分
(4)ロールブレード外径 :12mm
(5)ロールブレードの長さ :2,300mm
(6)空気シリンダーの外径 :20mm
(7)シリンダー 配列ピッチ:26mm
(8)配置シリンダー数 :80個
作動シリンダー数 :64個
(9)円盤直径 :25mm
【0026】
(実施例3)
実施例1において、図12に示すように、ウェブ幅方向の両端部近傍の2個ずつの空気シリンダー16について、残りの作動空気シリンダー58個の平均空気圧(100%)に対して15%ずつ2段階に減圧させた。ウェブ13の端部が2個の空気シリンダー16のほぼ真ん中に位置するように空気シリンダーを配置した以外は、実施例1と同様にして、ウェブ幅方向の塗布液の付着量偏差を最小にした。
配置シリンダー数 :80個
作動シリンダー数 :62個
最終的に、調整できた最小偏差は、3.9%であった。
【0027】
(比較例1)
従来のロールブレード塗布装置で、図3に示すように、均一な押し力をチューブ状気空部材36を用いて、以下に示す条件での塗布を行い、オンライン付着量計でウェブ幅方向の塗布液の付着量を確認しながら、ウェブ幅方向の塗布液の平均付着量が実施例1〜3と同じになるようチューブ状気空部材内の空気圧を調整した。
ウェブ幅方向中央部と端部の塗布液の付着量差が大きく、最終的に、調整できた最小偏差は、8.7%であった。
(1)塗布ベース(ウェブ):坪量62g/mの上質紙、厚み70μm
:幅1,560mm
(2)塗布液 :10質量%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液
(3)塗布速度 :400m/分
(4)ロールブレード外径 :12mm
(5)ロールブレードの長さ:2,300mm
(6)加圧幅 :2,080mm
【0028】
本発明によれば、ロールブレード塗布においてウェブ幅方向の塗布液の付着量がウェブ幅方向の両端部近傍で少なくなる傾向を矯正できるので、ウェブ幅方向での塗布液の付着量が均一な塗布が可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 ロールブレード塗布装置
11 ロールブレード
12 バックアップロール
13 ウェブ
14 保持部材
16 空気シリンダー
17 チューブ
18 共通チューブ
19 圧調整器
20 平板部材
21 ロッド
22 元圧調整器
23 ホルダー
31 ロールブレード
32 バックアップロール
33 ウェブ
34 塗布液
35 保持部材
36 チューブ状気空部材
44 ホルダー
A ウェブ進行方向
D 空気シリンダーの外径
Y 空気シリンダーの配列ピッチ
P0 共通チューブの空気圧
P1、P2、P3 空気シリンダー各々の空気圧
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平5−015833号公報
【特許文献2】特開2005−279627号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布方法において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能にすることを特徴とするロールブレード塗布方法。
【請求項2】
ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダーの空気圧を、これら以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧よりも低く調整する請求項1に記載のロールブレード塗布方法。
【請求項3】
ロールブレードの直径が、8mm〜15mmである請求項1から2のいずれかに記載のロールブレード塗布方法。
【請求項4】
空気シリンダーの外径が、10mm〜50mmである請求項1から3のいずれかに記載のロールブレード塗布方法。
【請求項5】
空気シリンダーの配列ピッチを、該空気シリンダーの外径D≦配列ピッチ<空気シリンダーの外径D+20mmにする請求項1から4のいずれかに記載のロールブレード塗布方法。
【請求項6】
ロールブレードを保持する部材と空気シリンダーの間に平板部材を該平板部材の重心に、空気シリンダーの軸心が通るように配する請求項1から5のいずれかに記載のロールブレード塗布方法。
【請求項7】
平板部材を円盤形状にし、該平板部材の直径を、空気シリンダーの配列ピッチより小さくする請求項6に記載のロールブレード塗布方法。
【請求項8】
円盤形状の平板部材の空気シリンダーのロッドが接する部分を凹球面にし、かつ空気シリンダーのロッド頭部を凸球面にする請求項6から7のいずれかに記載のロールブレード塗布方法。
【請求項9】
連続的に走行するウェブに過剰量の塗布液を転移させた後、所望の付着量をロールブレードにより調整して塗布するロールブレード塗布装置において、
前記ロールブレードを保持する部材のロールブレードに対向する側に該保持部材を押す空気シリンダーを複数配し、各々の空気シリンダーの空気圧を個別に調整可能であることを特徴とするロールブレード塗布装置。
【請求項10】
ウェブの幅方向両端近傍に配置した空気シリンダーの空気圧を、これら以外の作動している空気シリンダーの平均空気圧よりも低く調整する請求項9に記載のロールブレード塗布装置。
【請求項11】
空気シリンダーの各々の空気圧を所望の空気圧より低い圧から徐々に、且つ同時に昇圧し所望の空気圧に至らせる請求項9から10のいずれかに記載のロールブレード塗布装置。
【請求項12】
空気シリンダーの各々の空気圧を、該シリンダーの配列に対応可能に表示する請求項9から11のいずれかに記載のロールブレード塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−50977(P2012−50977A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169828(P2011−169828)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】