説明

ロール型の製造方法

【課題】製造時に転写シートのエンボスパターンを傷めることがなく、被加工材料に対してエンボスパターンを良好に転写できるロール型の製造方法を提供する。
【解決手段】ロール型の製造方法は、転写シート231における裏面の一端231A側に接着剤Ad1を塗布し、一端231A側を回転ロール232の外周面に当接させる当接工程と、一端231A側を回転ロール232に押圧した状態で、一端231A側及び回転ロール232の間に介在した接着剤Ad1を硬化させる第1接着剤硬化工程と、転写シート231の裏面に接着剤Ad2を塗布し、回転ロール232を回転させて回転ロール232に転写シート231を巻き付ける巻き付け工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材料にエンボスパターンを転写するロール型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周面にエンボスパターン(凹凸形状)が形成されたロール型(エンボスローラー)を被加工材料に押圧しながら回転させることで、被加工材料にエンボスパターンを転写する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のロール型としては、薄い金属製の転写シート(板状体)の表面にフォトエッチング、電子線描画、レーザー加工、光造形法等でエンボスパターンを形成し、この転写シートを回転ロール(ローラー)の周囲に巻き付けた構成が例示されている。
【0003】
このようなロール型の製造方法としては、例えば、以下に示す製造方法が考えられる。
先ず、例えば、以下の巻き付け装置を用いて、回転ロールの外周面に倣う側面視略円形状となるように転写シートに癖を付ける。
巻き付け装置は、一対のガイドローラーと、癖付け用ローラーとを備える。
そして、上記3つの各ローラーは、各回転軸が平行し、かつ、一対のガイドローラーの間に癖付け用ローラーが位置するように配設される。
転写シートに癖を付ける際には、先ず、エンボスパターンが形成された転写シートの表面が一対のガイドローラーの外周面に当接し、転写シートの裏面が癖付け用ローラーの外周面に当接するように、転写シートを各ローラーに架設する。
そして、転写シートは、3つの各ローラー間に沿って移動されることで、癖付け用ローラーにより裏面側が内面となるように湾曲し、すなわち、側面視略円形状となるように癖が付けられる。
【0004】
次に、側面視略円形状となるように癖が付けられた転写シートの周方向の両端部をそれぞれ内側(裏面側)に屈曲させる。
また、回転ロールの外周面に回転ロールの回転軸と平行に延びる凹部を形成しておく。
そして、転写シートの周方向の両端部のうち一端を回転ロールの凹部に引っ掛けながら、回転ロールに転写シートを巻き付けるとともに、転写シートの周方向の両端部のうち他端を回転ロールの凹部に引っ掛けることで、転写シートを回転ロールに取り付ける。
すなわち、上述した転写シートへの癖付けは、転写シートを回転ロールに取り付けた際に、転写シートが外側に広がる(転写シートの裏面と回転ロールの外周面との間に空隙が形成される)ことを防止するために行われるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−250014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにロール型を製造した場合には、以下の問題がある。
すなわち、巻き付け装置を用いて転写シートに癖付けを行う際に、3つの各ローラーから転写シートに与えられる圧力により、転写シートのエンボスパターンを傷めてしまう恐れがある、という問題がある。
また、転写シートの周方向の両端部を屈曲させ、屈曲させた部分を回転ローラーの凹部に引っ掛けることで転写シートを回転ロールに取り付けているので、屈曲した両端部のうち少なくともいずれか一方の端部が他の部位に対して外側に盛り上がってしまう恐れがある。そして、上記のように外側に盛り上がった部分が存在している場合には、ロール型の外周面が断面円形状から歪んだ状態となるため、ロール型の回転時に被加工材料に対して均一に圧力を加えることができず、すなわち、被加工材料に対してエンボスパターンを良好に転写することができない、という問題がある。
【0007】
本発明の目的は、製造時に転写シートのエンボスパターンを傷めることがなく、被加工材料に対してエンボスパターンを良好に転写できるロール型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロール型の製造方法は、表面にエンボスパターンが形成された転写シートと、前記転写シートが巻回された回転ロールとを有し、前記回転ロールを回転させて前記転写シートのエンボスパターンを被加工材料に転写するロール型の製造方法であって、前記転写シートにおける裏面の一端側に接着剤を塗布し、前記一端側を前記回転ロールの外周面に当接させる当接工程と、前記一端側を前記回転ロールに押圧した状態で、前記一端側及び前記回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させる第1接着剤硬化工程と、前記転写シートの裏面に接着剤を塗布し、前記回転ロールを回転させて前記回転ロールに前記転写シートを巻き付ける巻き付け工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、ロール型の製造方法は、上述した当接工程、第1接着剤硬化工程、及び巻き付け工程を備える。このため、製造されたロール型は、転写シートが回転ロールに巻き付けられているとともに、接着剤にて転写シートの裏面が回転ロールの外周面に固着された状態となる。
このことにより、転写シートの裏面と回転ロールの外周面とは接着剤により固着されるので、回転ロールに巻き付けられた転写シートが外側に広がることを防止するために、予め転写シートに側面視円形状となる癖を付ける必要がない。すなわち、ロール型の製造時において、転写シートへの癖付けを行う必要がないため、転写シートのエンボスパターンを傷めてしまうことがない。
【0010】
また、第1接着剤硬化工程では、転写シートの一端側(以下、シート一端側と記載)と回転ロールの外周面との間に接着剤が介在した状態で、シート一端側を回転ロールに押圧している。
このことにより、シート一端側を回転ロールに押圧した状態では、シート一端側と回転ロールとの間に介在する接着剤が緩衝材となり、シート一端側の押圧時にエンボスパターンを傷めてしまうこともない。
さらに、第1接着剤硬化工程では、シート一端側を回転ロールに押圧した状態で、シート一端側及び回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させている。
このことにより、シート一端側と回転ロールの外周面とは接着剤により固着されるため、シート一端側が他の部位に対して外側に盛り上がってしまう恐れもない。すなわち、ロール型の外周面を断面略円形状に設定できるため、ロール型の回転時に被加工材料に対して均一に圧力を加えることができ、被加工材料に対してエンボスパターンを良好に転写できる。
【0011】
また、当接工程及び第1接着剤硬化工程にてシート一端側を回転ロールの外周面に仮固定した後、巻き付け工程にて転写シートを回転ロールに巻き付けることで、ロール型を製造している。
このことにより、転写シートにおける回転ロールへの巻き始め部分(シート一端側)を回転ロールに対して確実に固着しておくことで、巻き付け工程において、回転ロールに対して転写シートがずれてしまうことがなく、回転ロールにおける外周面の所望の位置に転写シートを良好に巻き付けることができる。
【0012】
本発明のロール型の製造方法では、前記巻き付け工程の後、前記転写シートにおける前記一端に対向する他端側を前記回転ロールに押圧した状態で、前記転写シートの裏面及び前記回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させる第2接着剤硬化工程を備えることが好ましい。
本発明では、第2接着剤硬化工程では、転写シートの他端側(以下、シート他端側と記載)を回転ロールに押圧した状態で、転写シートの裏面及び回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させている。
このことにより、シート他端側と回転ロールの外周面とは接着剤により固着されるため、上述したシート一端側の外側への盛り上がり防止に加え、シート他端側の外側への盛り上がりも防止でき、被加工材料に対してエンボスパターンをさらに良好に転写できる。
【0013】
また、第2接着剤硬化工程では、シート他端側と回転ロールの外周面との間に接着剤が介在した状態で、シート他端側を回転ロールに押圧している。
このことにより、上述したシート一端側の押圧時と同様に、シート他端側を回転ロールに押圧した状態では、シート他端側と回転ロールとの間に介在する接着剤が緩衝材となり、他端側の押圧時にエンボスパターンを傷めてしまうこともない。
【0014】
本発明のロール型の製造方法では、前記第1接着剤硬化工程では、前記回転ロールに対向して配置される受けロールと前記回転ロールとで前記一端側を挟持させることで前記一端側を前記回転ロールに押圧し、前記巻き付け工程では、前記受けロールと前記回転ロールとで前記転写シートを挟持させながら、前記回転ロールとともに前記受けロールを回転させて前記回転ロールに前記転写シートを巻き付けることが好ましい。
【0015】
本発明では、第1接着剤硬化工程において回転ロールと受けロールとでシート一端側を挟持してシート一端側を回転ロールに押圧し、巻き付け工程において回転ロール及び受けロールを回転させて転写シートを回転ロールに巻き付ける。
このことにより、回転ロールの外周面に転写シートの裏面を確実に密着させた状態で転写シートを回転ロールに巻き付けることができる。このため、ロール型の外周面を断面略円形状により確実に設定でき、被加工材料に対してエンボスパターンをさらに良好に転写できる。
また、巻き付け工程では、受けロール及び回転ロールから転写シートに力が加えられた場合であっても、転写シートの裏面と回転ロールとの間に介在する接着剤が緩衝材となるため、エンボスパターンを傷めてしまうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の製造対象であるロール型によりエンボスパターンが転写されたスクリーンの使用状態を模式的に示す図。
【図2】本実施形態におけるスクリーンの構成を模式的に示す図。
【図3】本実施形態におけるスクリーンの構成を模式的に示す図。
【図4】本実施形態の製造対象であるロール型を備えたロールエンボス加工機の構成を模式的に示す図。
【図5】本実施形態におけるロール型製造装置の構成を模式的に示す図。
【図6】本実施形態におけるロール型の製造方法を説明するフローチャート。
【図7】本実施形態におけるロール型の製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
〔スクリーンの構成〕
図1は、本実施形態の製造対象であるロール型230によりエンボスパターンが転写されたスクリーン100の使用状態を模式的に示す図である。
図2及び図3は、スクリーン100の構成を模式的に示す図である。具体的に、図2はスクリーン100の平面図であり、図3はスクリーン100の縦断面図である。
スクリーン100は、図1または図2に示すように、横長矩形状の反射型スクリーンで構成され、斜め下方に配設された近接投射型のプロジェクターPJ(図1)からの画像光を正面に反射し、投影画像を表示する。
【0018】
このスクリーン100は、図2に示すように、その前面側に素材自体が黒色の塩化ビニル製の基材110を備えている。そして、この基材110の表面には、後述するロール円ボス加工機200によるエンボス加工により、水平方向に沿う円弧形状を有する凸条部120が繰り返し多数形成されている。
これら凸条部120は、図2に示すように、基材110に対して下方側に位置する仮想的な位置Cを中心とする同心円状に形成されたものであり、鉛直方向(縦方向)に沿って並設されている。
具体的に、凸条部120は、図3に示すように、プロジェクターPJからの画像光の入射方向Ri(本実施形態では斜め下方)に向く入射対向面121と、画像光の非入射方向(本実施形態では斜め上方)に向く非入射面122とを有する断面三角形状(プリズム形状)で構成されている。
【0019】
また、基材110における入射対向面121上には、図3に示すように、反射層121Aが形成されている。
すなわち、スクリーン100は、上述した構造を有することで、プロジェクターPJからの画像光を反射層121Aにより正面に反射し、投影画像を表示する。
一方、天井等に設置された蛍光灯等からの外光は、非入射面122に入射し、非入射面122にて吸収されるため、正面に反射することなく、観察者に認識されることがない。
【0020】
〔ロールエンボス加工機の構成〕
図4は、本実施形態の製造対象であるロール型230を備えたロールエンボス加工機200の構成を模式的に示す図である。
ロールエンボス加工機200は、被加工材料としての上述した基材110に対して、エンボス加工を施し(エンボスパターンを転写し)、複数の凸条部120を形成する装置である。このロールエンボス加工機200は、図4に示すように、基材110を搬送する搬送装置210と、基材110にエンボス加工を施す転写装置220とを備える。
【0021】
搬送装置210は、図4に示すように、各回転軸Ax1〜Ax5をそれぞれ有する送出ロール211、第1ガイドロール212、加熱ロール213、第2ガイドロール214、及び巻取ロール215を備える。
そして、搬送装置210は、モーター等の駆動装置(図示略)により各回転軸Ax1,Ax5を回転駆動して各ロール211,215を回転させる。これにより、搬送装置210は、図4の矢印に示すように、予め基材110が巻回された送出ロール211から、基材110を順次、第1ガイドロール212及び加熱ロール213を介して、転写装置220に送り出す。また、搬送装置210は、転写装置220にてエンボス加工が施された基材110を、第2ガイドロール214を介して巻取ロール215にて巻き取る。
ここで、加熱ロール213に対向する位置には、図4に示すように、ヒーター216が配設されている。すなわち、基材110は、ヒーター216により加熱された後、転写装置220にてエンボス加工が施される。
【0022】
転写装置220は、図4に示すように、各回転軸232A,240Aをそれぞれ有し互いに対向して配置されるロール型230及び支持ロール240と、回転軸232Aの両端を回転可能に支持し、ロール型230を支持ロール240に対して近接隔離する油圧シリンダー250とを備える。
ロール型230は、図4に示すように、エンボスパターン(複数の凸条部120を反転した形状)が形成された転写シート231と、回転軸232Aを有し、後述するロール型製造装置1にて転写シート231が巻回された回転ロール232とを備える。
転写シート231は、電鋳母型(複数の凸条部120に応じた形状の型)を金属塩からなる電解溶液に漬けて電解により金属塩を母型表面に析出させ、その析出した金属層を母型から剥離して得られたシート材で構成されている。そして、転写シート231の表面には、電鋳母型から剥離することで、当該母型表面の凹凸が複写され、エンボスパターンが形成されている。
【0023】
以上説明した転写装置220は、油圧シリンダー250を駆動してロール型230を支持ロール240に向けて所定の圧力で押圧するとともに、モーター等の駆動装置(図示略)により回転軸232Aを回転駆動してロール型230及び支持ロール240を回転させる。これにより、転写装置220は、基材110が各部材230,240間を通過する際、基材110の表面にロール型230のエンボスパターンを転写し、複数の凸条部120を形成する。
なお、ロール型230は、上述したように、スクリーン100の基材110にエンボス加工を施すために用いられるものである。このため、ロール型230の周方向の寸法、及び回転軸232A方向の長さ寸法は、それぞれスクリーン100の縦寸法及び横寸法に応じて設定されている。
【0024】
〔ロール型製造装置の構成〕
図5は、ロール型製造装置1の構成を模式的に示す図である。
ロール型製造装置1は、上述した回転ロール232の外周面に転写シート231を巻き付けて、ロール型230を製造する装置である。
このロール型製造装置1は、図5に示すように、支持装置2と、受けロール3と、シート載置台4とを備える。
支持装置2は、支持台1A(図5)上に互いに対向するように一対設けられ、受けロール3の上方側に回転ロール232が位置するように、回転ロール232を支持する。
この支持装置2は、図5に示すように、支持台2A上に立設された矩形枠状の基枠21と、基枠21内において、基枠21の上端から下方に延びるレール2Aを介して支持され、回転軸232Aの両端を回転可能に支持する支持部22とを備える。
そして、回転ロール232は、モーター等の駆動装置(図示略)により回転軸232Aが回転駆動されることで、支持部22に軸支されつつ回転する。
また、支持部22は、モーター等の駆動装置(図示略)により、レール2A(図5)に沿って上下方向に移動可能に構成されている。
【0025】
受けロール3は、図5に示すように、回転ロール232に対して径寸法の小さいロールであり、支持台1A上に回転可能に取り付けられている。
シート載置台4は、図5に示すように、転写シート231が載置される台であり、支持装置2に取り付けられた回転ロール232と受けロール3との間から水平面に沿って延びるように形成されている。
【0026】
〔ロール型の製造方法〕
図6は、ロール型230の製造方法を説明するフローチャートである。
図7は、ロール型230の製造方法を説明するための図である。具体的に、図7(A)はステップS6の工程を示し、図7(B)はステップS7の工程を示し、図7(C)はステップS8の工程を示している。
次に、上述したロール型製造装置1を用いたロール型230の製造方法を説明する。
先ず、製造者は、電鋳により、表面にエンボスパターンが形成されたシート材(転写シート231の元となるシート材)を形成する。そして、製造者は、スクリーン100(基材110)の大きさと略同一の大きさの横長矩形状となるように、シート材を裁断し、転写シート231を形成する(ステップS1)。
ステップS1の後、製造者は、回転ロール232を支持部22に取り付ける(ステップS2)。
【0027】
ステップS2の後、製造者は、ステップS1において形成した転写シート231を、エンボスパターンが形成された表面が下方側に向き、かつ、基材110の上下両端110A,110B(図2)に対応した両端231A,231B(図7)のうち一端231Aが回転ロール232側に位置するようにシート載置台4上に載置する(ステップS3)。
ステップS3の後、製造者は、回転ロール232の外周面における転写シート231の巻き付け開始位置に、回転軸232Aに平行なケガキ線を描く(ステップS4)。
【0028】
ステップS4の後、製造者は、転写シート231の裏面において、一端231A側(一端231Aから数cm程度の領域)に接着剤Ad1(図7(A))を塗布し、一端231AがステップS3において描いたケガキ線に合致するように位置を合わせながら、一端231A側を回転ロール232の外周面に当接する(ステップS5:当接工程)。
ステップS5の後、製造者は、ロール型製造装置1を操作し、モーター等の駆動装置(図示略)により支持部22を下方側に移動させ、図7(A)に示すように、回転ロール232を受けロール3に対して所定の圧力で押圧させ、回転ロール232に一端231A側を圧着させる。そして、製造者は、圧着した状態を所定時間(例えば、30分程度)放置し、一端231A側と回転ロール232との間に介在した接着剤Ad1を硬化させる(ステップS6:第1接着剤硬化工程)。
【0029】
ステップS6の後、製造者は、転写シート231の裏面に接着剤Ad2(図7(B),図7(C))を塗布する。そして、製造者は、ロール型製造装置1を操作し、モーター等の駆動装置(図示略)により回転軸232Aを回転駆動させて回転ロール232及び受けロール3を回転させ、図7(B)に示すように、回転ロール232の外周面に転写シート231を巻き付けていく(ステップS7:巻き付け工程)。
ステップS7の後、製造者は、図7(C)に示すように、回転ロール232と受けロール3との間に転写シート231の他端231B側(他端231Bから数cm程度の領域)が位置した時点で、ロール型製造装置1を操作して回転ロール232の回転を停止する。すなわち、製造者は、回転ロール232に他端231B側を圧着させる。そして、製造者は、圧着した状態を所定時間(例えば、30分程度)放置し、転写シート231の裏面と回転ロール232との間に介在した接着剤Ad2を硬化させる(ステップS7:第2接着剤硬化工程)。
以上の工程により、回転ロール232に転写シート231が巻き付けられ、ロール型230が製造される。
【0030】
なお、接着剤Ad1,Ad2を転写シート231の裏面に塗布する際には、回転ロール232と受けロール3との間に転写シート231が挟み込まれた時に、回転ロール232と転写シート231との間から接着剤が漏れ出ることを防止するために、転写シート231における裏面の外縁から内側に入り込んだ領域のみに接着剤を塗布することが好ましい。
【0031】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、ロール型230の製造方法は、当接工程S4、第1接着剤硬化工程S5、及び巻き付け工程S6を備える。このため、製造されたロール型230は、転写シート231が回転ロール232に巻き付けられているとともに、接着剤Ad1,Ad2にて転写シート231の裏面が回転ロール232の外周面に固着された状態となる。
このことにより、転写シート231の裏面と回転ロール232の外周面とは接着剤Ad1,Ad2により固着されるので、回転ロール232に巻き付けられた転写シート231が外側に広がる(転写シート231の裏面と回転ロール232の外周面との間に空隙が形成される)ことを防止するために、予め転写シート231に側面視円形状となる癖を付ける必要がない。すなわち、ロール型230の製造時において、転写シート231への癖付けを行う必要がないため、転写シート231のエンボスパターンを傷めてしまうことがない。
【0032】
また、第1接着剤硬化工程S5では、一端231A側と回転ロール232の外周面との間に接着剤Ad1が介在した状態で、一端231A側を回転ロール232に押圧している。
このことにより、一端231A側を回転ロール232に押圧した状態では、一端231A側と回転ロール232との間に介在する接着剤Ad1が緩衝材となり、一端231A側の押圧時にエンボスパターンを傷めてしまうこともない。
さらに、第1接着剤硬化工程S5では、一端231A側を回転ロール232に押圧した状態で接着剤Ad1を硬化させている。
このことにより、一端231A側と回転ロール232の外周面とは接着剤Ad1により固着されるため、一端231A側が他の部位に対して外側に盛り上がってしまう恐れもない。すなわち、ロール型230の外周面を断面略円形状に設定できるため、ロール型の回転時に基材110に対して均一に圧力を加えることができ、基材110に対してエンボスパターンを良好に転写できる。
【0033】
また、当接工程S4及び第1接着剤硬化工程S5にて一端231A側を回転ロール232の外周面に仮固定した後、巻き付け工程S6にて転写シート231を回転ロール232に巻き付けることで、ロール型230を製造している。
このことにより、転写シート231における回転ロール232への巻き始め部分(一端231A側)を回転ロール232に対して確実に固着しておくことで、巻き付け工程S6において、回転ロール232に対して転写シート231がずれてしまうことがなく、回転ロール232における外周面の所望の位置に転写シート231を良好に巻き付けることができる。
【0034】
さらに、第2接着剤硬化工程S7では、他端231B側を回転ロール232に押圧した状態で接着剤Ad2を硬化させている。
このことにより、他端231B側と回転ロール232の外周面とは接着剤Ad2により固着されるため、上述した一端231Aの外側への盛り上がり防止に加え、他端231B側の外側への盛り上がりも防止でき、基材110に対してエンボスパターンをさらに良好に転写できる。
【0035】
また、第2接着剤硬化工程S7では、他端231B側と回転ロール232の外周面との間に接着剤Ad2が介在した状態で、他端231B側を回転ロール232に押圧している。
このことにより、上述した一端231A側の押圧時と同様に、他端231B側を回転ロール232に押圧した状態では、他端231B側と回転ロール232との間に介在する接着剤Ad2が緩衝材となり、他端231B側の押圧時にエンボスパターンを傷めてしまうこともない。
【0036】
さらに、本実施形態では、第1接着剤硬化工程S5、巻き付け工程S6、及び第2接着剤硬化工程S7において、受けロール3を利用して回転ロール232への転写シート231の押圧及び巻き付けを実施している。
このことにより、回転ロール232の外周面に転写シート231の裏面を確実に密着させた状態で転写シート231を回転ロール232に巻き付けることができる。このため、ロール型230の外周面を断面略円形状により確実に設定でき、基材110に対してエンボスパターンをより良好に転写できる。
また、巻き付け工程S6では、受けロール3及び回転ロール232から転写シート231に力が加えられた場合であっても、接着剤Ad2が緩衝材となるため、エンボスパターンを傷めてしまうこともない。
【0037】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、ロール型製造装置1において、受けロール3は、支持装置2に取り付けられる回転ロール232に対して下方側に位置するように構成されていたが、これに限らず、支持装置2に取り付けられる回転ロール232に対して上方側に位置するように構成されていても構わない。
前記実施形態では、ロール型製造装置1において、支持装置2を上下に移動させることで、回転ロール232に対して転写シート231を圧着させる構成としていたが、これに限らず、受けロール3を上下に移動させることで圧着させる構成としても構わない。
【0038】
前記実施形態において、被加工材料である基材110表面(複数の凸条部120)の形状は、前記実施形態で説明した形状に限らず、その他の形状を採用しても構わない。
例えば、基材110の表面の形状として、各凸条部120が水平方向に直線状に延び、鉛直方向に並設した形状としても構わない。
また、例えば、各凸条部120の断面形状は、三角形状(プリズム形状)に限らず、凹曲面形状(マイクロレンズ形状)あるいは凸曲面形状(マイクロレンズ形状)で構成しても構わない。
前記実施形態では、被加工材料として、スクリーン100の基材110を採用していたが、これに限らず、スクリーン100以外の他の部材を製造することを目的として、紙、金属薄板、プラスチックフィルム等を採用しても構わない。
前記実施形態では、転写シート231は、電鋳によりエンボスパターンが形成されていたが、これに限らない。例えば、薄い金属製の板状体の表面にフォトエッチング、電子線描画、レーザー加工、光造形法等によりエンボスパターンを形成した構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、被加工材料にエンボスパターンを転写するロール型の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
3・・・受けロール、110・・・基材(被加工材料)、231・・・転写シート、231A・・・一端、231B・・・他端、232・・・回転ロール、Ad1,Ad2・・・接着剤、S5・・・当接工程、S6・・・第1接着剤硬化工程、S7・・・巻き付け工程、S8・・・第2接着剤硬化工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にエンボスパターンが形成された転写シートと、前記転写シートが巻回された回転ロールとを有し、前記回転ロールを回転させて前記転写シートのエンボスパターンを被加工材料に転写するロール型の製造方法であって、
前記転写シートにおける裏面の一端側に接着剤を塗布し、前記一端側を前記回転ロールの外周面に当接させる当接工程と、
前記一端側を前記回転ロールに押圧した状態で、前記一端側及び前記回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させる第1接着剤硬化工程と、
前記転写シートの裏面に接着剤を塗布し、前記回転ロールを回転させて前記回転ロールに前記転写シートを巻き付ける巻き付け工程とを備える
ことを特徴とするロール型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロール型の製造方法において、
前記巻き付け工程の後、
前記転写シートにおける前記一端に対向する他端側を前記回転ロールに押圧した状態で、前記転写シートの裏面及び前記回転ロールの間に介在した接着剤を硬化させる第2接着剤硬化工程を備える
ことを特徴とするロール型の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロール型の製造方法において、
前記第1接着剤硬化工程では、
前記回転ロールに対向して配置される受けロールと前記回転ロールとで前記一端側を挟持させることで前記一端側を前記回転ロールに押圧し、
前記巻き付け工程では、
前記受けロールと前記回転ロールとで前記転写シートを挟持させながら、前記回転ロールとともに前記受けロールを回転させて前記回転ロールに前記転写シートを巻き付ける
ことを特徴とするロール型の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−83984(P2011−83984A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238904(P2009−238904)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】