説明

ロール清掃装置

【課題】フイルム取扱ラインを停止させることなく、フイルム取扱ラインのワークロールを手拭きによらず自動的に清掃する。
【解決手段】平板なワーク材料を取り扱う取扱ラインにおいて、ワーク材料に接触回転するワークロールに付着した塵埃等をロール清掃装置によって自動的に拭き取る。ロール清掃装置には清掃布13をロール巻きにして装着し、送出装置14から巻取装置15へと送り出される過程において、清掃布13をワークロール11の周面12に押圧し、ワークロールの周面12に付着している塵埃等を拭き取る。清掃布をワークロールの周面12に押圧する押圧装置16は、清掃布をロール周面へと押し出すパッドヘッド17と、そのパッドヘッドをロール周面へと押し出すシリンダー18と、パッドヘッドをロール周面へと導くガイド19と、シリンダーを操作する駆動装置によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク材料、例えば、磁気記録媒体等の塗布積層された磁気フイルム、液晶パネルディスプレイ光学フイルム、液晶パネル保護フイルム、偏光板用フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、帯電防止フィルム、近赤外線カットフィルム、食品包装用フィルム等の精密フイルム等(以下、単にワーク材料とも言う。)の取扱ラインにおいて、フイルムにコーティング剤を塗布するコーティングロールに対応するバックアップロール、フイルム押出成形機のキャスティングロール、取扱ラインで搬送されるフイルムを支持するガイドロール、フイルムを緊張するテンションロール、ブライドルロール、レベラーロール等のワークロールの周面を清掃するロール清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フイルム取扱ラインに使用されるワークロールには、フイルムとの摩擦による静電気が発生し易く、その発生した静電気によって微細な塵埃がロール周面に付着し易く、それがロール周面からフイルムへと転写されてフイルムの精密性が損なわれ易い。
【0003】
静電気の発生を防ぐために、フイルム取扱ラインには制電処理の施されたワークロールが使用されるが(例えば、特許文献1参照)、フイルムとの接触時にワークロールに静電気が発生しないとしても、フイルムに付着していた塵埃等が除去されるとは限らず、ワークロールに拭き取られた塵埃等が再びフイルムに転写されることも起こり得る。
【0004】
制電処理の施されたワークロールの周面に粘着性を付与し、フイルムを除電すると共に、フイルムに付着している塵埃等をワークロールの周面へと粘着除去する方法もあるが(例えば、特許文献2参照)、磁気記録媒体等の塗膜の積層されたフイルムでは、その塗膜が亀裂したり剥離する危険がある。
【0005】
フイルムに付着している塵埃を除去する方法として、ブラシロールによって塵埃を拭き取り、その拭き取った塵埃をバキュームによって吸い取る方法もあるが(例えば、特許文献3参照)、磁気記録媒体等の塗膜の積層されたフイルムでは、その塗膜が亀裂したり剥離する危険があり、又、バキュームに吸引される気流に乗って集まる周囲の塵埃がフイルムに付着する危険もある。
【0006】
そして何よりも、フイルムに磁気記録媒体等を塗布積層する製造ラインは、防塵処理の施されたクリーンルームに設定されており、フイルムに塵埃等が付着することは極く稀な異常事態であるから、導電性粘着ロールやブラシロールをワークロールに使用することは、塗膜が亀裂したり剥離する危険を伴うだけで適切な方法とは言い難い。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−105408号公報(特公昭62−48486)
【特許文献2】特開平05−342571号公報(特許第3232541号)
【特許文献3】特開平04−197475号公報(特許第2543254号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、フイルムに磁気記録媒体等を塗布積層する製造ラインでは、金属ロール母体の周面にハードクロム鍍金等を施して鏡面に仕上げられたワークロールが使用され、その周面に付着した塵埃等がフィルムに転写されて生じるトラブルを回避するためには定期的に、例えば8時間毎とか24時間毎に1回の割合で製造ラインを停止させ、オペレータが手拭きで丁寧にワークロールを清掃する必要があった。
【0009】
本発明は、その従来行われていた手拭きによる方法に頼らず、オペレータの安全面も考慮し、製造ラインを停止させることなく自動的にワークロールを清掃する自動清掃装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るロール清掃装置は、(a) 平板なワーク材料を取り扱う取扱ラインに配置された鏡面仕上げの施されたワークロール11の周面12に接触する清掃布13を備えたロール清掃装置であり、(b) ロール巻きされた清掃布を送り出す送出装置14と、その送り出される清掃布を巻き取る巻取装置15と、それらの送出装置と巻取装置の間で清掃布13をロール周面12に押圧する押圧装置16を具備し、(c) 押圧装置16は、清掃布をロール周面へと押し出されるパッドヘッド17と、そのパッドヘッドをロール周面へと押し出すシリンダー18と、パッドヘッドをロール周面へと導くガイド19と、シリンダー18を操作する駆動装置を具備していることを第1の特徴とする。
【0011】
本発明に係るロール清掃装置の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(d) パッドヘッド17が、シリンダー18から出没駆動されるピストン20の先端に装着されており、(e) パッドヘッド17をロール周面12へと導くガイド19が、シリンダー18から出没駆動されるピストン20に平行なレール21と、そのレールに沿って走行するスライダー22とから成り、(f) レール21とスライダー22の一方がパッドヘッド17に、その他方がシリンダーを支持する押圧装置16の本体フレーム23に、それぞれ装着されている点にある。
【0012】
本発明に係るロール清掃装置の第3の特徴は、上記第1〜第2の何れかの特徴に加えて、(g) 押圧装置本体フレーム23が、ロール清掃装置の本体フレーム24に、送出装置14から巻取装置15へと移動する清掃布13の移動方向25に平行な平面内で揺動可能にピン接合されており、押圧装置本体フレーム23と清掃装置本体フレーム24の間に、押圧装置本体フレーム23の揺動を妨げるプランジャー26が介在し、押圧装置本体フレーム23が、プランジャー26によって清掃装置本体フレーム24に係脱自在に係止されている点にある。
【0013】
本発明に係るロール清掃装置の第4の特徴は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、(h) 清掃布13に液体を付与する給液装置を具備し、(i) その液体がパッドヘッド17のロール周面12に向き合う対向面27に滲み出る滲出孔28が、パッドヘッド17に設けられており、(j) その液体が溜まる液溜め溝29が、その対向面27に設けられており、(k) その液溜め溝29の長さ方向が、清掃布の移動方向25に交叉している点にある。
【0014】
本発明に係るロール清掃装置の第5の特徴は、上記第4の特徴に加えて、(l) ロール周面12に乾燥空気を吹き付ける乾燥ノズル31を具備する点にある。
【0015】
本発明に係るロール清掃装置の第6の特徴は、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、(m) ロール周面12に機能性液体を吹き付ける機能性ノズル51を具備する点にある。
【0016】
本発明に係るロール清掃装置の第7の特徴は、上記第1〜第6の何れかの特徴に加えて、(n) ロール周面12に作用するブレード32と、そのブレードの尖端縁33をロール周面12に向けて往復駆動するブレード駆動装置34を具備する点にある。
【0017】
本発明に係るロール清掃装置の第8の特徴は、上記第1〜第7の何れかの特徴に加えて、(o) ワークロール11の軸芯35に平行に清掃装置本体フレーム24を移動するトラバースユニット36を具備する点にある。
【0018】
本発明に係るロール清掃装置の第9の特徴は、上記第1〜第8の何れかの特徴に加えて、(p) 送出装置14が、軸受け37と、その軸受けに軸支されて清掃布を保持する保持軸38と、保持軸38の回転を制禦するブレーキ39とから成り、巻取装置15が、軸受け40と、その軸受けに軸支されて清掃布を巻き上げる巻取軸41と、巻取軸を回転する回転装置42とから成り、(q) 送出装置の保持軸38と巻取装置の巻取軸41が、それぞれの軸受け37・40を介して清掃装置本体フレーム24に片持ち梁状に支持されており、パッドヘッド17が、押圧装置本体フレーム23に片持ち梁状に支持されており、(r) それらの片持ち梁状に支持された保持軸38と巻取軸41とパッドヘッド17の各自由端が同じ側に向けて突き出ており、それらの自由端の突出側から、清掃布13が、保持軸38とパッドヘッド17と巻取軸41に装着可能になっている点にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明(第1の特徴)では、ワーク材料に付着している塵埃等を直接拭き取るのではなく、ワークロール11の周面12に付着している塵埃等を拭き取るので、ワーク材料の取扱ラインを停止する必要はなく、ワーク材料の取扱効率が損なわれることがなく、取扱ラインの停止に伴ってワーク材料にストップマーク等の疵が発生することもない。又、送出装置14から巻取装置15へと送り出される清掃布13をパッドヘッド17によってロール周面12に押し出すこととしたので、塵埃等を発見した時にだけ清掃布13をロール周面12に接触させることも出来る。その場合は、常時清掃布をロール周面に接触させる必要はないので、ロール周面12が摩耗し易くなることはなく、徒に清掃布が消耗されることもない。又、本発明では、塵埃を拭き取る際にはワークロール11が回転しており、清掃布の送出方向25がワークロールの回転方向43に逆向きになるので、塵埃は、掻き取るように瞬時に拭き取られ、そのまま巻取装置15へと送り込まれるので、清掃布からワークロールへと塵埃等が転写されることはない。そして、パッドヘッド17がガイド19に導かれてロール周面12へと押し出されるので、ワークロール11からの反力を受けて振れやガタツキが起きることはなく、清掃布がロール周面に綺麗に密着し、パッドヘッド17の振れやガタツキによって塵埃がロール周面12に取り残されることもなくなる。
【0020】
本発明(第1の特徴)では、清掃布13が、送出装置と巻取装置の間においてロール周面12に向けてパッドヘッド17によって突き出され、そのパッドヘッド17に常時触れ合って緊張状態にあるので、ロール周面12に触れた際に衝撃を受けて清掃布13に弛み皺が発生することがなく、パッドヘッド17がロール周面12に向けて僅かに移動しただけで清掃布13がロール周面12に触れ合うことになるので、塵埃等を発見したときスピーディに清掃布13をロール周面12に作用させることが出来、拭き取りが遅れてワークロール11からワーク材料へと塵埃等が転写される不具合も回避される。そして、パッドヘッド17が清掃布13に常時触れ合っているので、パッドヘッド17を僅かに押し出すだけ塵埃等が拭き取られ、パッドヘッド17を大きく押し出す必要がないので、パッドヘッド17を細かく操作することが出来、清掃布13をロール周面12に接触させるために大型シリンダーを必要とせず、パッドヘッド17の操作精度が高まる。
【0021】
本発明(第2の特徴)によると、シリンダー18から出没駆動されるピストン20の先端にパッドヘッド17が装着されているので、ピストン20の移動距離がそのままパッドヘッドの移動距離となり、この点でも塵埃等をロール周面12に発見してから拭き取るまでの応答時間を短くすることが出来る。
【0022】
そしてパッドヘッド17をロール周面12へと導くガイド19が、シリンダー18から出没駆動されるピストン20に平行なレール21と、そのレールに沿って走行するスライダー22とから成り、レール21とスライダー22の一方がパッドヘッド17に、その他方がシリンダーを支持する押圧装置本体フレーム23に装着されているので、ワークロール11からの反力によるパッドヘッド17の振れやガタツキが抑えられる。
【0023】
本発明(第3の特徴)によると、押圧装置本体フレーム23が、プランジャー26によって清掃装置本体フレーム24に係脱自在に係止されているので、ロール周面12に清掃布13が強く擦れ合う不慮の事態が生じたときは、ロール周面12からの反力を受けてプランジャー26が外れ、押圧装置16がピン接合点44を中心に揺動して傾き、パッドヘッド17がロール周面12から離れる方向に移動することになり、清掃布13に強く擦れられてロール周面12に擦過痕が生じるような不具合は回避される。
【0024】
本発明(第4の特徴)によると、液体が付与されて清掃布13の摩擦係数が少なくなるので、ロール周面12が清掃布13に強く擦れられるような不慮の事態が生じてもロール周面12に擦過痕が生じるようなことはなく、却って、ロール周面12との密着性が高まって清掃布13による清掃効果が高まる。
【0025】
そして、パッドヘッド17のロール周面12に向き合う対向面27に液体の滲出孔28が設けられており、液体がパッドヘッドから清掃布へと滲み出し、液体が滲出孔28から飛散することがなく、滲出孔28が清掃布13に覆われているので、揮発性の液体であってもその揮発が少なく、液体の飛散や揮発によるロスが少なく抑えられる。
【0026】
又、液溜め溝29の長さ方向が清掃布の移動方向25に交叉しているので、清掃布13の液体に触れる時間が長く保たれ、液体が清掃布13に滲み出し易く、その滲出孔28に向き合う部分にだけ偏って液体が清掃布13に滲み出すことがなく、清掃布全体に均一に万遍なく液体を付与することが出来る。
【0027】
本発明(第5の特徴)によると、ロール周面12に乾燥空気を吹き付ける乾燥ノズル31を設けたので、ロール周面が極端に湿潤状態になるようなことはなく、特に、液体が機能性薬剤を含む場合には、その機能性薬剤がワークロール11から転写されるときワーク材料に斑着きなるようなことはなく、機能性薬剤が均等に転写された高品質のワーク材料が得られる。その乾燥ノズル31にイオナイザー等の静電気除去用ブロアーを適用することにより、帯電防止効果を期待することが出来る。
【0028】
本発明(第6の特徴)によると、機能性ノズル51から吹き付けられた機能性液体によってロール周面12と清掃布13との摩擦係数が少なくなり、清掃布13に強く擦られてもロール周面12に擦過痕が生じるようなことはなく、清掃布13のロール周面12との密着性が高まって清掃効果が高まり、又、本発明の清掃装置をワーク材料に機能性薬剤を付与する塗布装置に応用することも出来、本発明の清掃装置の用途が広がる。
【0029】
本発明(第7の特徴)では、ロール周面12に作用するブレード32と、そのブレードの尖端縁33をロール周面12に向けて往復駆動するブレード駆動装置34を付設したので、粗大な異物がロール周面に付着した場合や、微塵が積み重なって次第に粗大な異物に脹れ上がって固着した場合でも、それを掻き取ることが出来、その際に生じた微塵は清掃布に拭き取られ、ワークロール11に取り残されることはない。
【0030】
本発明(第8の特徴)では、ワークロール11の軸芯35に平行に清掃装置本体フレーム24を移動するトラバースユニット36を付設したので、清掃布13の幅がワークロール11の幅よりも狭い場合には、清掃装置本体フレーム24をワークロールの軸芯方向(35)に移動させて、その広幅のワークロール11の全面を清掃することが出来、従って、ワークロール11の幅(軸芯の長さ)に応じた幅の異なる種々の清掃布13を用意する必要はなく、又、パッドヘッド17の幅の異なる種々のロール清掃装置を用意する必要もなく、幅の異なる既存の何れのワークロール11にも本発明のロール清掃装置を適用することが可能となる。例えば、ロール清掃装置を軸芯35に沿って連続移動して全面拭き取り、ワークロール11の両端部だけのサイド拭き取り、塵埃発見箇所だけの狙い打ち拭き取り、パッドヘッド17を周期的に駆動する間欠全面拭き取り、取扱ラインの稼働中に連続的に行う連続全面拭き取りを行うことも出来る。その連続全面拭き取りにおいては、機能性液体を付与し、全面拭き取りと同時に機能性薬剤をワーク材料に付与することが出来、又、取扱ラインの終了時にはロール周面12に錆止め剤を全面塗布することも出来、機能性薬剤の塗布後は液体を付与することなく清掃布13による乾拭きも可能である。
【0031】
本発明(第9の特徴)では、送出装置の保持軸38と巻取装置の巻取軸41とパッドヘッド17を、自由端の向きを合わせて片持ち梁状に清掃装置本体フレーム24に取り付けたので、それらの自由端の突出側から清掃布13を保持軸38とパッドヘッド17と巻取軸41に装着することが出来、保持軸38に支架される清掃布13の残量を見てワンタッチで新しい清掃布に交換することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
清掃布13を自動的に補充し得るようにするためには、その残量を検知するセンサーを保持軸38の付近に付設し、又、保持軸38に嵌合する筒体に清掃布13を巻き上げて用意するとよい。
【0033】
本発明のロール清掃装置は、精密フイルムのワークロールの他、製鉄ラインや製銅ライン等におけるブライドルロールやレベラーロール、ガイドロール等に、更には、取扱ラインの終了後のドクターロールやコーターロール、ニップロール、プリントロール等の塗布ロールの清掃にも適用することが出来る。清掃布13には、紙、織物、編物、不織布の他にサンドペーパー、バフシート(布)等も使用することが出来る。サンドペーパーを清掃布13に使用する場合は、ロール周面が傷付く虞れのない砥粒荒さが♯1500程度のものを用いる。
【0034】
塵埃を発見した時にだけシリンダー18を自動的に操作して清掃布をロール周面に接触させるためには、塵埃を感知するセンサーをロール周面12に向けて付設するとよい。パッドヘッド17をロール周面12に向けて往復操作するシリンダー18は、オイルシリンダーでもエアーシリンダーでもよい。シリンダー18が作動し、清掃布13がロール周面12に触れる際の衝撃を緩和し、清掃布13がロール周面12に弾性的に接触するようにするためには、パッドヘッド17のロール周面12に向き合う対向面27の裏側や、シリンダー18からパッドヘッド17までの中間支持部材にポリウレタン樹脂その他の弾性部材を介在させるとよい。
【0035】
プランジャー26は、押圧装置本体フレーム23と清掃装置本体フレーム24との何れか一方に設けた凹部と、その他方のフレームにバネ等の弾性体を介して弾性的に出没可能に設けた凸部によって構成され、ロール周面12に清掃布13が強く擦れ合う不慮の事態が生じたときに、その凸部が凹部から外れ、パッドヘッド17がロール周面12から離れる方向に移動するようにする。パッドヘッド17には、鉄(SUS等)、アルミニウム、ナイロン(MCナイロン)等が使用される。
【0036】
清掃布に付与する液体は、界面活性剤や有機溶剤を含む洗浄液でもよいし、ワーク材料の品質を阻害しないものであればシリコン液等の帯電防止剤、防錆剤、防曇剤等の機能性薬剤を含んでいてもよく、その機能性薬剤によってワーク材料の表面に所要の機能性を付与することも可能となる。その液体は、速乾性の有機溶剤を含むものが望ましい。
【0037】
清掃布13に付与する液体をパッドヘッドの対向面27に滲み出させる滲出孔28は、パッドヘッドの清掃布13に触れる対向面27の表面に設けることも出来るが、その液体を溜める液溜め溝29をパッドヘッドの対向面27に設けるときは、その液溜め溝29の溝縁や溝底30に設けるとよく、更に好ましくは、液溜め溝29の溝底30に滲出孔28を設け、毛細管現象によって吸い取られるように液溜め溝29から清掃布13へと液体が滲み出るようにする。
【0038】
ロール周面12に乾燥空気を吹き付ける乾燥ノズル31は、ロール周面12が清掃布13に触れて通過したロール回転方向43の下方、即ち、パッドヘッド17の後方に設定する。界面活性剤や有機溶剤、帯電防止剤、防錆剤、防曇剤等の機能性液体を吹き付ける機能性ノズル51は、ロール周面12が清掃布13に触れるロール回転方向43の上方、即ち、ブレード32とパッドヘッド17の間に設定する。
【0039】
清掃布やロール周面に付与する液体は、密封された加圧タンクに貯蔵し、加圧タンク内の圧力を調整し、電磁弁を介して所要量を滲出孔28や機能性ノズル51に供給する。
パッドヘッド17に設ける滲出孔28の孔径は1mm以下で概して0.5mm〜0.7mm前後にし、パッドヘッド17の対向面27の複数箇所に均等に設ける。
【0040】
トラバースユニット36は、清掃装置本体(24)を搭載するキャリア45が走行するレール46と、そのレール46に沿ってキャリア45を走行させるスクリューボルト、又は、ベルト、又は、ワイヤー等の駆動装置、および、清掃装置(24)に乾燥空気や洗浄液や機能性液体や供給する乾燥空気供給管、洗浄液供給管、機能性液体供給管、電線等を保護するケーブルベアー47によって構成する。レール46の両端部には、ロール清掃装置本体(24)の移動範囲を規制する位置検出センサーを設ける。ワークロール11の幅に比して清掃布13の幅が極めて狭い場合には、レール46の上に複数基のキャリア45を所要の間隔をもって配置し、その各キャリア45にロール清掃装置をそれぞれ搭載し、広幅のワークロール11の周面を複数基の各ロール清掃装置が分担して部分的に清掃するようにすれば、ワークロール11の幅に応じた広幅のロール清掃装置を使用せずに済む。広幅のロール清掃装置では、図示する細幅のロール清掃装置の保持軸38や巻取軸41やパッドヘッド17のように片持ち梁状にではなく、保持軸(38)と巻取軸(41)とパッドヘッド(17)の両端を両持ち梁状に支持する。
【0041】
送出装置14の保持軸38の回転を制禦するブレーキ39は、保持軸38の空回りを防ぐ程度のものであればよい。巻取装置の巻取軸41は、間欠的に回転させてもよいし、連続回転させてもよい。巻取軸41の回転装置42にはトルクモータやサーボモーターが使用される。図示する回転装置42には、ラチェット歯車48とラチェット付き揺動アーム49と、エアーシリンダー50によって構成されるラチェット装置が適用されており、巻取軸41は、ロール周面に塵埃が発見されたとき、パッドヘッド17と同期して間欠的に回転駆動され、清掃布13が保持軸38から引っ張り出される。清掃布13の幅がワークロール11の幅よりも狭く、清掃装置本体フレーム24をワークロールの軸芯方向(35)に移動させ、その広幅のワークロール11の全面を取扱ラインの稼働中に連続的に行う連続全面拭き取りを行う場合は、その拭取時間と間隔を制御盤に予め設定しておき、清掃布13を間欠的に巻き取ることで、清掃布13の無駄な消費が回避される。
【0042】
ブレード32には、ばね鋼(SUS等)、エンジニアリングプラスチック(MCナイロン等)、ベークライト等、ロール清掃装置の適用対象物に応じて選定し使用される。ブレード駆動装置34には、サーボモーターやクランク機構を適用し、ブレード32を支軸に取り付け、粗大な異物をロール周面12に発見したとき、支軸を回転してブレードの尖端縁33をロール周面12に当接させることが出来る。その支軸を回転するクランク機構は、図示する巻取軸41の回転装置42のように、エアーシリンダー(50)を連結桿として構成し、エアーシリンダー(50)によってクランク(揺動アーム49)を揺動し、ブレード32を支持する支軸を揺動回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るロール清掃装置の正面図である。
【図2】本発明に係るロール清掃装置の側面図である。
【図3】本発明に係るロール清掃装置の平面図である。
【符号の説明】
【0044】
11:ワークロール
12:ロール周面
13:清掃布
14:送出装置
15:巻取装置
16:押圧装置
17:パッドヘッド
18:シリンダー
19:ガイド
20:ピストン
21:レール
22:スライダー
23:押圧装置本体フレーム
24:清掃装置本体フレーム
25:清掃布の移動方向
26:プランジャー
27:対向面
28:滲出孔
29:液溜め溝
30:溝底
31:乾燥ノズル
32:ドクターブレード
33:尖端縁
34:ブレード駆動装置
35:ワークロールの軸芯
36:トラバースユニット
37:軸受け
38:保持軸
39:ブレーキ
40:軸受け
41:巻取軸
42:回転装置
43:ロール回転方向
44:ピン接合点
45:キャリア
46:レール
47:ケーブルベアー
48:ラチェット歯車
49:揺動アーム
50:エアーシリンダー
51:機能性ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 平板なワーク材料を取り扱う取扱ラインに配置された鏡面仕上げの施されたワークロール(11)の周面(12)に接触する清掃布(13)を備えたロール清掃装置であり、
(b) ロール巻きされた清掃布を送り出す送出装置(14)と、その送り出される清掃布を巻き取る巻取装置(15)と、それらの送出装置と巻取装置の間で清掃布(13)をロール周面(12)に押圧する押圧装置(16)を具備し、
(c) 押圧装置(16)は、清掃布をロール周面へと押し出されるパッドヘッド(17)と、そのパッドヘッドをロール周面へと押し出すシリンダー(18)と、パッドヘッドをロール周面へと導くガイド(19)と、シリンダー(18)を操作する駆動装置を具備しているロール清掃装置。
【請求項2】
(d) パッドヘッド(17)が、シリンダー(18)から出没駆動されるピストン(20)の先端に装着されており、
(e) パッドヘッド(17)をロール周面(12)へと導くガイド(19)が、シリンダー(18)から出没駆動されるピストン(20)に平行なレール(21)と、そのレールに沿って走行するスライダー(22)とから成り、
(f) レール(21)とスライダー(22)の一方がパッドヘッド(17)に、その他方がシリンダーを支持する押圧装置(16)の本体フレーム(23)に、それぞれ装着されている前掲請求項1に記載のロール清掃装置。
【請求項3】
(g) 押圧装置本体フレーム(23)が、ロール清掃装置の本体フレーム(24)に、送出装置(14)から巻取装置(15)へと移動する清掃布(13)の移動方向(25)に平行な平面内で揺動可能にピン接合されており、押圧装置本体フレーム(23)と清掃装置本体フレーム(24)の間に、押圧装置本体フレーム(23)の揺動を妨げるプランジャー(26)が介在し、押圧装置本体フレーム(23)が、プランジャー(26)によって清掃装置本体フレーム(24)に係脱自在に係止されている前掲請求項1〜2の何れかに記載のロール清掃装置。
【請求項4】
(h) 清掃布(13)に液体を付与する給液装置を具備し、
(i) その液体がパッドヘッド(17)のロール周面(12)に向き合う対向面(27)に滲み出る滲出孔(28)が、パッドヘッド(17)に設けられており、
(j) その液体が溜まる液溜め溝(29)が、その対向面(27)に設けられており、
(k) その液溜め溝(29)の長さ方向が、清掃布の移動方向(25)に交叉している前掲請求項1〜3の何れかに記載のロール清掃装置。
【請求項5】
(l) ロール周面(12)に乾燥空気を吹き付ける乾燥ノズル(31)を具備する前掲請求項4に記載のロール清掃装置。
【請求項6】
(m) ロール周面(12)に機能性液体を吹き付ける機能性ノズル(51)を具備する前掲請求項1〜4の何れかに記載のロール清掃装置。
【請求項7】
(n) ロール周面(12)に作用するブレード(32)と、そのブレードの尖端縁(33)をロール周面(12)に向けて往復駆動するブレード駆動装置(34)を具備する前掲請求項1〜6の何れかに記載のロール清掃装置。
【請求項8】
(o) ワークロール(11)の軸芯(35)に平行に清掃装置本体フレーム(24)を移動するトラバースユニット(36)を具備する前掲請求項1〜7の何れかに記載のロール清掃装置。
【請求項9】
(p) 送出装置(14)が、軸受け(37)と、その軸受けに軸支されて清掃布を保持する保持軸(38)と、保持軸(38)の回転を制禦するブレーキ(39)とから成り、巻取装置(15)が、軸受け(40)と、その軸受けに軸支されて清掃布を巻き上げる巻取軸(41)と、巻取軸を回転する回転装置(42)とから成り、
(q) 送出装置の保持軸(38)と巻取装置の巻取軸(41)が、それぞれの軸受け(37・40)を介して清掃装置本体フレーム(24)に片持ち梁状に支持されており、パッドヘッド(17)が、押圧装置本体フレーム(23)に片持ち梁状に支持されており、
(r) それらの片持ち梁状に支持された保持軸(38)と巻取軸(41)とパッドヘッド(17)の各自由端が同じ側に向けて突き出ており、それらの自由端の突出側から、清掃布(13)が、保持軸(38)とパッドヘッド(17)と巻取軸(41)に装着可能になっている前掲請求項1〜8の何れかに記載のロール清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269004(P2009−269004A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124096(P2008−124096)
【出願日】平成20年5月10日(2008.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000109495)テクノロール株式会社 (9)
【Fターム(参考)】