説明

ロール状衛生用紙の製造方法

【課題】デザインエンボスを形成しても巻き形状がいびつになり難く、美観に優れ、形状の整ったロール状衛生用紙を得られるとともに、簡素かつコンパクトな設備で実施することが可能なロール状衛生用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】同一形状の凸模様52が繰り返し配置されてなる凸模様列54が形成され、凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とする螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されたエンボスロール50を用い、エンボスロール50を、その軸線Aが長尺原紙の送り出し方向と直交するように配置した状態で、長尺原紙に対して押圧することにより、長尺原紙に、凸模様52に対応する複数のデザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を得、長尺衛生用紙をロール状に巻き取るロール状衛生用紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙を製造する方法に関するものである。より具体的には、衛生用紙に意匠性を付与することを目的として、原紙に対してエンボス加工を行う工程を備えたロール状衛生用紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙においては、用紙の柔軟性を向上させる等の目的で、細かいドット状のエンボスを用紙全体に均一に形成するエンボス加工を行うことがある(「マイクロエンボス」と称される。)。
【0003】
また、衛生用紙の意匠性を向上させ、商品価値を高める目的で、前記のような細かいドット状のエンボスではなく、装飾用の模様や図形を表す頂面面積の大きいエンボス(「デザインエンボス」と称される。)を形成することも行われている(例えば、特許文献1〜10参照)。前記のようなデザインエンボスは、ロール表面に、前記デザインエンボスに対応する凸模様が複数形成されたエンボスロールを用い、前記エンボスロールを衛生用紙の原紙に対して押圧(型押し)することで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−59347号公報
【特許文献2】特表2002−505207号公報
【特許文献3】特開2003−116741号公報
【特許文献4】特開2005−168582号公報
【特許文献5】特表2006−513068号公報
【特許文献6】特開2006−183216号公報
【特許文献7】特開2006−204570号公報
【特許文献8】特開2007−61510号公報
【特許文献9】特開2007−68577号公報
【特許文献10】特開2008−113695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マイクロエンボスは衛生用紙に柔軟性を付与するという性質上、衛生用紙全体に均一に形成されるのに対し、デザインエンボスは装飾を目的とするため用紙の一部に局所的に形成される。従って、衛生用紙のデザインエンボス形成部は局所的に大きく突出し、又は大きく凹むことになる。
【0006】
しかし、前記のようにデザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を巻き取ってロール状にすると、デザインエンボス形成部が幾重にも重畳されるため、ロール外周方向に大きく突出し(又はロール中心方向に大きく凹み)、ロール状衛生用紙の巻き形状がいびつになるという問題があった。このような問題はロール状衛生用紙の美観を損ねるのみならず、ロール状衛生用紙の包装が困難となるため好ましくない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、デザインエンボスを形成しても巻き形状がいびつになり難く、美観に優れ、形状の整ったロール状衛生用紙を得られるとともに、簡素かつコンパクトな設備で実施することが可能なロール状衛生用紙の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、デザインエンボスを形成するエンボスロールとして、同一形状の凸模様が繰り返し配置されてなる凸模様列が形成され、その凸模様列がロールの軸線を中心軸線とした螺旋曲線を描くようにロールの外周面に配置されたエンボスロールを用いることで、ロール状衛生用紙の巻き形状を改善可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示すロール状衛生用紙の製造方法が提供される。
【0009】
[1]同一形状の凸模様が繰り返し配置されてなる凸模様列が形成され、前記凸模様列がロールの軸線を中心軸線とした螺旋曲線を描くようにロールの外周面に配置されたエンボスロールを用い、前記エンボスロールを、その軸線方向が長尺原紙の送り出し方向と直交するように配置した状態で、前記長尺原紙に対して押圧することにより、前記長尺原紙に、前記凸模様に対応する複数のデザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を得、前記長尺衛生用紙をロール状に巻き取るロール状衛生用紙の製造方法。
【0010】
[2]前記エンボスロールとして、同心円状の凸模様が繰り返し配置されたものを用いる前記[1]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0011】
[3]前記エンボスロールとして、同一形状のドット状凸部が集合配置されて前記凸模様が形成されたものを用いる前記[1]又は[2]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0012】
[4]前記エンボスロールとして、前記凸模様列の列方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して前記凸模様を形成しているものを用いる前記[3]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0013】
[5]前記エンボスロールとして、前記凸模様列の列方向と交差する方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して前記凸模様を形成しているものを用いる前記[3]又は[4]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、デザインエンボスを形成しても巻き形状がいびつになり難く、美観に優れ、形状の整ったロール状衛生用紙を得られるとともに、簡素かつコンパクトな製造設備で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の製造方法で用いられるエンボスロールの一の側面近傍を模式的に示す概略斜視図である。
【図1B】図1Aに示すエンボスロールのロール表面を平面的に展開した状態を模式的に示す概略展開図である。
【図1C】図1Bに示すロール表面の一部を更に拡大して示す概略展開図である。
【図2】本発明の製造方法により得られたロール状衛生用紙を模式的に示す概略斜視図である。
【図3A】本発明の製造方法の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図3B】本発明の製造方法の別の実施形態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の製造方法を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図1A及び図1Bはエンボスロール50の側面60近傍を図示したものであり、図1Aにおいてはエンボスロール50を回転させる回転軸体62が図示されている。
【0017】
[1]定義等:
本明細書において「エンボス」とは、エンボスロール外周面の凸模様が押圧されて形成される型押し模様を意味し、単に「エンボス」というときはデザインエンボスの他、後述するマイクロエンボスも含むものとする。
【0018】
なお、本明細書にいう「長尺衛生用紙」には、単層の長尺衛生用紙からなる1プライ衛生用紙の他、図2に示すロール状衛生用紙1のように2枚の長尺衛生用紙2Aを積層して1組とした2プライ衛生用紙、3枚の長尺衛生用紙を積層して1組とした3プライ衛生用紙等のマルチプライ衛生用紙も含まれる。
【0019】
前記マルチプライ衛生用紙の場合には、1組になった複数枚の長尺衛生用紙のうち、後にロール最外層を構成することとなる用紙を「最外層用紙」、後にロール最外層以外の層を構成することとなる用紙(即ち、前記最外層用紙以外の全ての用紙)を「内層用紙」と称することにする。また、本明細書においては、説明の便宜上、長尺衛生用紙の原材料となる紙であって、全てのエンボス(デザインエンボス、マイクロエンボス等)が形成される前の状態の紙を包括的に「長尺原紙」と称し、このうち、後に「最外層用紙」となる長尺原紙を「最外層用紙原紙」、後に「内層用紙」となる長尺原紙を「内層用紙原紙」と称することにする。
【0020】
[2]本発明の製造方法の特徴:
本発明の製造方法は、図1A〜図1Cに示すように同一形状の凸模様52が繰り返し配置されてなる凸模様列54が形成され、凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とした螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されたエンボスロール50を用い、図3Aに示すようにエンボスロール50を、その軸線A方向が長尺原紙70の送り出し方向D3と直交するように配置した状態で、長尺原紙70に対して押圧することにより、長尺原紙70に、凸模様52に対応する複数のデザインエンボス12が形成された長尺衛生用紙2Aを得、長尺衛生用紙2Aをロール状に巻き取るものである。
【0021】
図1A〜図1Cに示すように凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とした螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されたエンボスロール50を用いることで、凸模様列54に対応するデザインエンボス列が長尺原紙の長手方向に対して傾斜するように(即ちデザインエンボスが長尺原紙の幅方向に徐々に位置をずらしながら)形成される。従って、デザインエンボス形成部の突出又は凹みが長尺衛生用紙の幅方向全体に均一化され、長尺衛生用紙をロール状に巻き取った際にロール状衛生用紙の巻き形状がいびつになる不具合を有効に防止することができる。
【0022】
また、図1A〜図1Cに示す構造のエンボスロール50を用いると、エンボスロール50の径を小径とすることが可能となり、コンパクトな設備により長尺原紙の長手方向に対して傾斜するデザインエンボスを形成することが可能となる。
【0023】
凸模様列を螺旋状に配置しないで、かつ、長尺原紙の長手方向に対して斜め方向にデザインエンボスを形成する方法としては、エンボスロールの周径をロール状衛生用紙の巻長に対応する周径とし、ロールの軸線を中心軸線として1回転以内の範囲で凸模様列が形成されたエンボスロールを用いる方法が考えられる。しかし、このような方法ではエンボスロールが大径(巻長60mの場合、約19mφ)となり、製造設備が製造される製品のサイズ(115mmφ等)に対して著しく大きくなるという問題を生じ、好ましくない。
【0024】
更に、図3Aに示すように軸線A方向が長尺原紙70の送り出し方向D3と直交するようにエンボスロール50を配置した状態で、長尺原紙70に対して前記ロールを押圧する方法を採用したことも、設備のコンパクト化に資する。
【0025】
例えば、前記凸模様列がロールの回転方向に沿うように形成されたエンボスロールを用い、前記エンボスロールを長尺原紙の送り出し方向に対して斜めに配置した状態で長尺原紙に対して押圧する方法でも、長尺原紙の長手方向に対して斜め方向にデザインエンボスを形成することはできる。しかし、このような方法では原紙の送り出し方向に対してエンボスロールを斜め方向に設置するため、装置構成が複雑化し、設置スペースも大きくならざるを得ないという問題を生じ、好ましくない。
【0026】
[3]本発明の製造方法の特徴的な構成:
本発明の製造方法は、図1A〜図1Cに示すような特徴的な凸模様パターンを有するエンボスロール50を用いてデザインエンボスを形成する。
【0027】
「デザインエンボス」とは、衛生用紙の意匠性を向上させ、商品価値を高める目的で形成される、装飾用の模様や図形を表す頂面面積の大きいエンボスである。具体的には、1)単一のエンボスによって一つのモチーフ(繰り返し単位となるデザイン)が形成されていて、かつ、当該エンボスの頂面面積が単独で2mmを超えるもの、2)複数のエンボスが集合配置されることによって一つのモチーフ(繰り返し単位となるデザイン)が形成されていて、かつ、当該複数のエンボスの頂面面積が合計で2mmを超えるものが好ましい。
【0028】
[3−1]エンボスロールの構造:
本発明の製造方法においては、図1A〜図1Cに示すような同一形状の凸模様52が繰り返し配置されてなる凸模様列54が形成され、凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とした螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されたエンボスロール50を用いる。
【0029】
「エンボスロール」は、その外周面に、長尺原紙に対して形成するエンボスに対応する凸模様が形成されたロールであり、通常は金属製のロールが用いられる。
【0030】
「凸模様」とは、図1A〜図1Cに示す凸模様52のようなエンボスロール50の外周面56に形成されるデザインエンボスに対応する凸部である。本発明においては、一つの凸模様は一つのモチーフ(繰り返し単位となるデザイン)に対応している。モチーフの形状は特に限定されない。例えば幾何学模様(円形状、三角形状、四角形状、波形状等)や自然物の形状(花びら状、木の葉状等)等を挙げることができる。
【0031】
中でも、図1A〜図1Cに示すように凸模様52を同心円状とすることが好ましい。円形状の凸模様52は、長尺原紙に接触する際にエンボスロール50の回転に伴って凸模様52の接触面積が徐々に大きくなっていく。従って、長尺原紙を確実に送り出すことができ、エンボス加工時において、長尺原紙に皺ができたり、破れたりする不具合を効果的に抑制することができる。また、同心円状の凸模様52は、大径の円形凸部の内側に小径の円形凸部が配置される構造なので、両凸部の間の空隙によって、長尺原紙を送り出す際に長尺原紙がよれても、そのよれを緩衝することができる。従って、エンボス加工時に長尺原紙に皺ができたり、破れたりする不具合を防止する効果を高めることができる。
【0032】
「同一形状」、「繰り返し配置」とは、同じモチーフに基づく凸模様が連続的又は断続的に列をなすように配置されていることを意味する。本明細書においては、前記のように列状に繰り返し配置された複数の凸模様の集合体を「凸模様列」という。図1A〜図1Cに示すエンボスロール50は、同心円状の凸模様52が複数連なって凸模様列54を形成している。
【0033】
本発明の製造方法においては、1)一つの凸部によって一つの凸模様(モチーフ)が形成されているエンボスロールを用いてもよいし、2)複数の凸部が集合配置されて一つの凸模様(モチーフ)が形成されているエンボスロールを用いてもよい。
【0034】
前記2)の形態においては、複数の凸部の各々の形状はドット状、ライン状及びこれらが一体的に組み合わされた形状のいずれであってもよい。但し、本発明の製造方法においては、同一形状のドット状凸部が集合配置されて一つの凸模様が形成されていることが好ましい。このような形態は、エンボスが形成される長尺原紙への接触圧のばらつきを小さくすることができる。従って、長尺原紙の送り出しを均一化し、エンボスロール通過時に長尺原紙に皺ができたり、破れたりする不具合を効果的に抑制することができる。
【0035】
図1A〜図1Cに示すエンボスロール50は、複数のドット状凸部58が集合配置されて一つの同心円状の凸模様52が形成されている例である。「同一形状のドット状凸部」は、頂面が面積2mm以下で円形状のドット状凸部であることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法においては、エンボスロールとして、a)凸模様列の列方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して凸模様を形成しているものを用いることが好ましく、b)凸模様列の列方向と交差する方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して凸模様を形成しているものを用いることが好ましく、c)前記a)及びb)の双方の形態を兼ね備えていることが特に好ましい。
【0037】
前記a)〜c)の形態は、エンボスが形成される長尺原紙への接触圧のばらつきを小さくする効果に優れる。従って、長尺原紙の送り出しを均一化し、エンボスロール通過時に長尺原紙に皺ができたり、破れたりする不具合を一層効果的に抑制することができる。
【0038】
図1A〜図1Cに示すエンボスロール50は、前記c)の構成を有するエンボスロールの一例である。図1Cに示すようにエンボスロール50においては複数のドット状凸部58により同心円状の凸模様52が構成されており、同心円の最外周円の内側に包含される一部のドット状凸部64を凸模様列の列方向に隣接する凸模様52同士で共有し、同様に一部のドット状凸部66を凸模様列の列方向と交差する方向に隣接する凸模様52同士で共有している形態である。
【0039】
本発明の製造方法においては、図1A〜図1Cに示すように凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とした螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されたエンボスロール50を用いる。即ち、凸模様列54を一つの線とみなした場合に、前記線が螺旋曲線Cを描くように凸模様列54が配置されている。図1Bには凸模様列54の列方向D2に沿って螺旋曲線Cが描かれる。
【0040】
螺旋曲線の形態は、1)エンボスロールの軸線を中心軸線とした螺旋曲線であること、2)エンボスロールの外周面上に形成される螺旋曲線であることを除き、特に限定されない。例えば、ロール外周面に複数列の平行する凸模様列が存在し、当該凸模様列が平行する複数本の螺旋曲線を描くように配置されたエンボスロールを用いることができる。但し、本発明の製造方法においては、図1A〜図1Cに示すようにロールの外周面56に1列の凸模様列54のみが存在し、凸模様列54が1本の螺旋曲線Cを描くように配置されたエンボスロール50を用いることが好ましい。
【0041】
螺旋曲線のピッチについても特に限定されないが、図1Bに示すように衛生用紙の製品幅W当たり、螺旋曲線が2〜4回通過するように、ロールの外周面56に螺旋曲線Cが配置されたエンボスロール50を用いることが好ましい。
【0042】
図1Bに示すように、螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に凸模様列54を配置すると、凸模様列54がロールの回転方向D1(周方向)に対して一定の角度θ1で傾斜するように配置されることになる。
【0043】
凸模様列の傾斜角度は、凸模様の形状やサイズ、凸模様列(螺旋曲線)のピッチ、長尺衛生用紙の巻き取り長さ、エンボスロールのロール径等を考慮して適宜設定すればよい。長尺衛生用紙を巻き取る際の巻厚が均一になり、ロール状衛生用紙の外周面の一部(長尺衛生用紙のデザインエンボスに相当する部分)のみが大きく突出しないように、かつ、デザインエンボスが長尺衛生用紙の幅方向に均一に分散するように角度を設定することが好ましい。例えば、5〜10°とすることができる。
【0044】
本発明の製造方法においては、図1Bに示すように凸模様列54の列方向D2と交差する方向に隣接する凸模様52同士が回転方向D1に対する相対位置を徐々にずらしながら配置されたエンボスロール50を用いることも好ましい。このような配置形態は、ロールの周方向と直交する方向に向かって凸模様が並列されている配置形態と比較して、凸模様52と凸模様52の間の空隙(段差)がロールの回転方向D1に分散されるので、ロール全体として見ると、長尺原紙に対して凸模様52が常に押圧される状態とすることができる。従って、エンボスロール50の回転が安定し、デザインエンボスを形成する際の加工安定性が向上するという効果を奏する。
【0045】
図1Bに示すエンボスロール50は同心円状の凸模様52が列方向D2と交差する方向に並列するように配置されており、その並列方向に延びる直線Lがロールの回転方向D1(周方向)と直交しておらず、凸模様52の回転方向D1に対する相対位置が徐々にずれていることがわかる。図示の例では図右側に向かうにつれて、凸模様52の相対位置がロールの回転方向D1に対して川上側にずれる関係となっている。
【0046】
ロールの回転方向に対する相対位置をどの程度ずらすかについて特に制限はない。図1Bに示すように凸模様52が列方向D2と交差する方向に並列するように配置されている場合には、その並列方向に延びる直線Lとロールの軸線Aに平行な直線との角度θ2が5〜10°となるようにずらすことが好ましい。
【0047】
エンボスロールは、前記特徴部分以外の部分については、通常のデザインエンボスを形成するエンボスロールと同様に構成することができる。
【0048】
凸模様の高さ(ロール外周面を基準とした凸模様頂面の高さ)は、0.5〜2.0mmとすることが好ましい。0.5mm以上とすることで、デザインエンボスによる意匠性向上効果を発揮させることが可能となる。一方、2.0mm以下とすることで、デザインエンボス形成部の柔軟性や触感が低下する不具合を抑制することができる。
【0049】
エンボスロールの幅(軸線方向の長さ)は特に限定されない。但し、図2に示すような製品幅Wのロール状衛生用紙1を得る場合、その製品幅W(ロール状トイレットペーパー:105〜114mm、ロール状キッチンタオル:210〜228mm)に対し10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用いることが多い。そして、この幅広長尺原紙にエンボスを形成し、製品長さ分だけ巻き取って幅広のロール状衛生用紙(ログ)とした後、製品幅Wにカットする方法により製造することが一般的である。このような方法を採用する場合には、エンボスロールも前記幅広長尺原紙に対応する幅のものを用いる。エンボスロールの径も特に限定されないが、通常は外径300〜600mmφのものが用いられる。
【0050】
エンボスロールの外周面全体の面積に対する、凸模様頂面の合計面積の比率(面積占有率)は、0.1〜20%とすることが好ましい。0.1%以上とすることでデザインが視認し易くなり、デザインエンボス形成による意匠性向上効果が発揮される。20%以下とすることでデザインエンボスの面積が大きくなり過ぎて衛生用紙の柔軟性を損なう不具合を抑制することができる。
【0051】
[3−2]デザインエンボスの形成:
本発明においては、図3Aに示すようにエンボスロール50を、その軸線Aの方向が長尺原紙70の送り出し方向D3と直交するように配置した状態で、長尺原紙70に対して押圧する。これにより、長尺原紙70に、凸模様52に対応する複数のデザインエンボス12が形成された長尺衛生用紙2Aを得る。
【0052】
デザインエンボスの形成は、エンボスロールを長尺原紙に対して押圧することにより行う。例えば図3Aに示すように、エンボスロール50と、対をなす受けロール(図示の例ではラバーロール80)との間に長尺原紙70を挟み込んで押圧することにより、長尺原紙70にデザインエンボス12を形成することができる。
【0053】
受けロールとしては、ロールの外周面にエンボスロールの凸模様と相補的な凹模様が形成された金属製のロールである凹ロール、ロールの外周面がゴムで被覆された金属製のロールであるラバーロール等を用いることができる。本発明の製造方法においては、図3Aに示すようにエンボスロール50とラバーロール80との間に長尺原紙70を挟みこんで押圧することによりデザインエンボス12を形成することが好ましい(ラバースチール法)。この方法は、他のエンボス加工方法と比較してエンボスが崩れ難い。従って、デザインエンボスによる意匠性向上効果に優れる点において好ましい。
【0054】
「長尺原紙」としては、例えば、トイレットロール用原紙等を好適に用いることができ、中でも坪量10〜25g/mに抄紙されたトイレットロール用原紙を用いることが好ましい。坪量を10g/m以上とすることにより、適正な強度を確保することができる。一方、坪量を25g/m以下とすることで、柔軟性を向上させることができ、柔らかい触感を付与することができる。長尺原紙の幅も特に限定されないが、図2に示すような製品幅Wのロール状衛生用紙1を製造する際にはその製品幅Wに対し10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用いることが好ましい。
【0055】
マルチプライのロール状衛生用紙を製造する場合には、意匠性を向上させるデザインエンボスをロール外周面に位置させる必要から、少なくとも最外層用紙原紙(最もロール外周側の層を構成する最外層用紙となる長尺原紙)にデザインエンボスを形成する。例えば、最外層用紙原紙にデザインエンボスを形成し、内層用紙と積層・一体化させてマルチプライの長尺衛生用紙とし、これをロール状に巻き取ればよい。
【0056】
[3−3]マイクロエンボスの形成:
本発明の製造方法においては、図3Bに示すように長尺原紙70に対してデザインエンボス12だけでなくマイクロエンボス10を形成してもよい。
【0057】
「マイクロエンボス」とは、衛生用紙の柔軟性を向上させる等の目的で形成される細かいドット状のエンボスであり、集合配置されて一つのモチーフ(繰り返し単位となるデザイン)を構成することはなく、長尺原紙全体に均一に形成される。具体的には、頂面面積0.01〜2mmのドットエンボスが長尺原紙全体に均一に形成された形態が好ましい。
【0058】
マイクロエンボスは、デザインエンボスと同様に、マイクロエンボスを形成する凸模様がロール外周面に形成されたエンボスロールを長尺原紙に対して押圧することにより形成することができる。衛生用紙の柔軟性向上効果が高いという理由から、ラバースチール法によりマイクロエンボスを形成することが好ましい。
【0059】
前記エンボスロールとしては、長尺原紙に形成されるドットエンボスに対応するドット状凸部1個当たり頂面面積が0.01〜2mm(より好ましくは0.01〜1mm)のエンボスロールを用いることが好ましい。この際、頂面形状が真円形状又は楕円形状のものを用いると、滑らかで肌触りが良好なマイクロエンボスを形成することができる。
【0060】
マイクロエンボスに関しては、強度を十分に確保しつつ柔軟性を向上するという観点より、ドット状凸部の密度が51〜100個/cm、ドット状凸部の高さが0.5〜2.0mm、エンボスロール外周面の面積に対するドット状凸部頂面の合計面積の比率(面積占有率)が0.15〜30%のエンボスロールを用いることが好ましい。なお、ここにいう「密度」とは、ドット状凸部の平均密度であり、単位面積当たりのドット状凸部の個数を意味するものとする。
【0061】
本発明の製造方法をマルチプライ衛生用紙の製造に適用する場合には、図3Bに示すように内層用紙原紙72にマイクロエンボス10を形成することが好ましい。マルチプライ衛生用紙は、最外層用紙6Bを内側にして折り畳んだ状態で使用することが多い。この折り畳んだ状態においては使用面に露出する内層用紙4Bの柔軟性が高いことが望ましいからである。
【0062】
図3Bに示す方法においては、まず図3Aに示す方法と同様にエンボスロール50とラバーロール80との間に長尺原紙70(最外層用紙原紙74)を挟み込んで押圧することによりデザインエンボス12を形成する。これと並行してエンボスロール88とラバーロール90との間に長尺原紙70(内層用紙原紙72)を挟み込んで押圧することによりマイクロエンボス10を形成する。そして、最後に内層用紙原紙72と最外層用紙原紙74を積層・一体化してマルチプライの長尺衛生用紙2Bを得る。
【0063】
但し、内層用紙原紙だけでなく、最外層用紙原紙にもマイクロエンボスを形成してもよい。内層用紙原紙に加えて最外層用紙原紙にもマイクロエンボスを形成することにより、内層用紙原紙のみにマイクロエンボスを形成した場合と比較して、より一層、柔軟性に優れたロール状衛生用紙を得ることができる。以下、説明の便宜上、最外層用紙原紙に形成されるマイクロエンボスを「最外層マイクロエンボス」、内層用紙原紙に形成されるマイクロエンボスを「内層マイクロエンボス」と記す。
【0064】
内層マイクロエンボス形成用のエンボスロールについては既に説明した構成(ドット状凸部1個当たりの頂面面積、頂面形状、ドット状凸部の密度、ドット状凸部の高さ、面積占有率等)を採用することができる。最外層マイクロエンボス形成用のエンボスロールも同様の構成を採用することができる。
【0065】
但し、デザインエンボスの意匠性を阻害せず、最外層用紙にも良好な肌触りを付与する観点から、ドット状凸部の密度が20〜50個/cm、ドット状凸部の高さが0.5〜2.0mmのエンボスロールを用いて最外層マイクロエンボスを形成することが好ましい。
【0066】
また、内層マイクロエンボスの形成に凸部1個当たりの頂面面積が1.1〜2.0mmのエンボスロールを用い、最外層マイクロエンボスの形成には前記頂面面積が0.01〜1.0mmのエンボスロールを用いることが好ましい。このような方法によれば、内層マイクロエンボスの模様をデザインエンボスの背景デザインとして浮き出させることが可能となり、得られる衛生用紙の意匠性を更に向上させることができる。
【0067】
なお、デザインエンボスの意匠性を確実に発揮させるため、最外層マイクロエンボスの形成にはデザインエンボス形成用エンボスロールの凸模様高さよりも凸部高さが小さいエンボスロールを用いることが好ましい。具体的には前記凸模様の頂面高さに対し、前記凸部の頂面高さが90%以下であることが好ましい。
【0068】
[3−4]プライボンディング:
本発明の製造方法においては、例えば図3Aに示すようにデザインエンボス12によって最外層用紙原紙74と内層用紙原紙72とをプライボンディングする方法を採用することができる。このような構成では、デザインエンボス12によって全ての原紙(内層用紙原紙72及び最外層用紙原紙74)が結合されるため、デザインエンボス12がクリンパーと同様のプライボンディングの効果をも併せ持つことになる。また、この方法によれば接着剤が不要となり、製造工程も簡略化することができる。
【0069】
デザインエンボスでプライボンディングする方法を採用した場合、図2に示すロール状衛生用紙1のように、内層用紙4A及び最外層用紙6Aの双方にデザインエンボス12が形成されていることになる。
【0070】
また、本発明の製造方法においては、図3Bに示すように全ての長尺衛生用紙2B(内層用紙4B及び最外層用紙6B)を積層し、ロール状衛生用紙の両側縁部に対応する部分にエッジエンボスを形成することによって、全ての長尺衛生用紙2Bを結合し、マルチプライの長尺衛生用紙2Bを得ることも好ましい。
【0071】
前記のような方法は、最外層用紙にデザインエンボス、内層用紙にはマイクロエンボスが形成されたロール状衛生用紙の製造に好適に用いることができる。図3Bに示す方法においては、最外層用紙原紙74にデザインエンボス12を形成して最外層用紙6Bとし、内層用紙原紙72にマイクロエンボス10を形成して内層用紙4Bとした後、最外層用紙6Bと内層用紙4Bをエッジエンボスホイール92と受けロール(図示の例ではラバーロール94)との間に挟み込んで押圧することによりエッジエンボスを形成している。即ち、このエッジエンボスにより内層用紙原紙72と最外層用紙原紙74のプライボンディングを行い、これらが積層・一体化されたマルチプライの長尺衛生用紙2Bを得ている。
【0072】
なお、「エッジエンボス」とは、長尺衛生用紙が複数枚積層された状態において、ロール状衛生用紙の両側縁部に対応する部分に形成されるプライ剥がれ防止用のエンボスを意味する。「ロール状衛生用紙の両側縁部に対応する部分」というときは、最終製品であるロール状衛生用紙を幅方向に三等分した場合において、その中央部を除く左右両側の部分を意味するものとする。
【0073】
エッジエンボスホイールの構造については特に限定されず、従来公知のエッジエンボスホイールを用いることができる。例えば、ロール状衛生用紙の両側縁部に対応する部分に二条の押圧面が形成され、その押圧面の各々にエッジエンボス形成用の凸部が形成されたエッジエンボスホイールを用いることができる。このようなエッジエンボスホイールによれば、ロール状衛生用紙の両側縁部に対応する部分に二条のエッジエンボスが形成される。従って、図2に示すようなロール状衛生用紙1をその製品幅Wに対し10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用いて製造する場合には、当該二条のエッジエンボスの間を裁断することで、両側縁部に各一条のエッジエンボスが形成された長尺衛生用紙を得ることができる。
【0074】
前記エッジエンボスホイールの凸部の形状、配置形態についても特に限定されず、従来公知のエッジエンボスホイールに準じて構成することができる。凸部形状としては、例えば真円形、楕円形、菱型等の形状を挙げることができる。これらの形状の凸部をエッジエンボスホイールの押圧面に連続的又は断続的に配置すればよい。また、複数の凸部がある程度の幅に集合して配置され、模様を形成しているようなものであってもよい。
【0075】
受けロールとしては、図3Bに示すようなラバーロール94を用いることが好ましいが、ロールの外周面にエッジエンボスホイールの凸部と相補的な凹部が形成された金属製のロールである凹ロールを用いてもよい。
【0076】
更に、本発明の製造方法においては、最外層用紙原紙にデザインエンボスを形成して最外層用紙を得た後、全ての長尺衛生用紙(内層用紙及び最外層用紙)を積層し、接着剤で貼り合わせることによって結合し、マルチプライ衛生用紙を形成してもよい。このような方法によれば、内層用紙及び最外層用紙に付されたエンボスが潰れ難く、各々のエンボスの機能を損ない難いことに加え、全ての長尺衛生用紙が各々確実に接着され、プライボンディングの効果が高いという利点がある。
【0077】
「接着剤」としては、従来、紙製のシート製品に用いられてきた接着剤を用いればよい。例えば、PVA(ポリビニルアルコール)やCMC(カルボキシルセルロース)等の従来公知の接着剤を用いることができる。
【0078】
「接着剤」を塗工する部位は、最外層用紙と内層用紙を接着する場合には最外層用紙の裏面、内層用紙の表面のいずれか一方又は双方であり、内層用紙同士を接着する場合には内層用紙の裏面、内層用紙の表面のいずれか一方又は双方である。但し、長尺衛生用紙が2プライ衛生用紙であるときは、接着剤を最外層用紙の裏面で、かつ、デザインエンボスの裏側に塗工することにより、容易にプライボンディングを行うことができる。
【0079】
例えば最外層用紙原紙にデザインエンボスを形成して最外層用紙を得た後、最外層用紙の裏面で、かつ、デザインエンボスの裏側に、グルーラバーロールによって接着剤を塗工し、内層用紙と貼り合わせることによって結合し、マルチプライ衛生用紙を形成することができる(例えば、特表2002−505207号公報を参照)。
【0080】
接着剤でプライボンディングする方法を採用した場合、少なくとも最外層用紙にはデザインエンボスが形成されることになる。内層用紙にはデザインエンボスやマイクロエンボスが形成されていてもよいし、何らのエンボスも形成されていなくてもよい。
【0081】
前記のように、マルチプライ衛生用紙を得る際に、最外層用紙の裏面で、かつ、デザインエンボスの裏側に接着剤を塗工する場合には、接着剤を最外層用紙の色と異なる色に着色された着色接着剤とすることが好ましい。このような構成とすると、デザインエンボス部分が最外層用紙の色と異なる色に着色されるため、デザインエンボスの視認性が向上し、単にデザインエンボスを付したときよりも意匠性が向上するという効果がある。
【0082】
着色接着剤としては、既に述べたPVA、CMC等の既知のシート製品に用いられる接着剤に顔料や染料等の着色剤を混合して着色したものを用いることができる。
【0083】
[3−5]長尺衛生用紙の巻き取り:
本発明の製造方法では、前記のように得られた長尺衛生用紙をロール状に巻き取ってロール状衛生用紙とする。
【0084】
長尺衛生用紙の巻き取りは、例えばマンドレルシャフトを有するワインダーを用いて、以下のように行うことができる。1)まず巻芯となる芯管をマンドレルシャフトに挿入し、固定する。2)前記芯管に接着剤(「ピックアップ糊」と称される。)を付着させ、前記芯管に長尺衛生用紙の始端部を接着固定する。3)マンドレルシャフトを回転させることにより、長尺原紙を製品長さ分だけ芯管に巻き取る。
【0085】
芯管20としては、ボール紙等の厚紙からなる紙管が好適に用いられる。サイズはロール状衛生用紙の種類により異なるが、外径35〜50mmφ、厚さ0.5〜1.5mmのものが好適に用いられる。既述のように図2に示すようなロール状衛生用紙1を、その製品幅Wに対し10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用いて製造する場合には、ロール状衛生用紙1の製品幅W(即ち、図2に示す芯管20の長さ)の10〜30倍の長さを有する長尺芯管が用いられる。
【0086】
なお、本発明の製造方法にいう「ロール状衛生用紙」には、図2に示すロール状衛生用紙1のような巻芯となる芯管20を有するもののみならず、長尺衛生用紙のみが巻回されてロール状となっているもの(「ノンコアロール」と称される。)も含まれる。ノンコアロールは、既に説明した方法でデザインエンボスを形成することを除き、従来公知のノンコアロールの製法に準じて製造することができる。
【0087】
長尺衛生用紙の巻取り長さは、製造しようとするロール状衛生用紙の種類によって異なる。例えば、ロール状トイレットペーパーの場合であれば25〜90m、ロール状キッチンタオルの場合であれば10〜20mとすることが一般的である。
【0088】
長尺衛生用紙を所定の長さだけ巻き取った後は、長尺衛生用紙の終端部又は形成されたロールの外周面に接着剤(「テールシール糊」と称される。)を付着させ、長尺衛生用紙の終端部をロール外周面に接着固定することが好ましい。テールシール糊としては、水溶性接着剤を用いることが好ましい。
【0089】
既述のように図2に示すようなロール状衛生用紙1を、その製品幅Wに対し10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用いて製造する場合には、幅広のロール状衛生用紙(「ログ」と称される。)を得ることができる。このログはログソー(丸刃)、バンドソー(平刃)等、従来公知の切断刃を使用して、図2に示すような製品幅Wに切断することにより、最終製品であるロール状衛生用紙1とする。切断刃の厚さとしては、2〜10mmのものが好適に用いられる。
【0090】
[4]ロール状衛生用紙:
本発明の製造方法により、図2に示すようなデザインエンボス列が長手方向に対して傾斜するように(即ちデザインエンボス12が幅方向に徐々に位置をずらしながら)形成された長尺衛生用紙2Aがロール状に巻き取られてなるロール状衛生用紙1が得られる。
【0091】
図2に示すロール状衛生用紙1は2枚の長尺衛生用紙2A(最外層用紙6A及び内層用紙4A)を積層して1組とした2プライ衛生用紙である。但し、本発明の製造方法は、単層の長尺衛生用紙からなる1プライ衛生用紙、3枚以上の長尺衛生用紙を積層して1組としたマルチプライ衛生用紙等の製造にも適用することができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の製造方法の実施例について、図2に示すロール状衛生用紙1を製造した場合の例により、更に具体的に説明する。
【0093】
(実施例1)
実施例1では、図1A〜図1Cに示すエンボスロール50を用いてデザインエンボスを形成した。
【0094】
[1]エンボスロール:
エンボスロール50は金属製のロールであり、その外周面56には同心円状の凸模様52が繰り返し配置されてなる凸模様列54が形成され、凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とする螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されている。
【0095】
エンボスロール50は、頂面が1mmφ(頂面面積0.785mm)の円形、凸部高さが0.8mmの円錐台形のドット状凸部58を集合配置して同心円状の凸模様52を形成した例である。エンボスロール50は、凸模様52を構成する同心円の最も外側に位置する円の外径が30mmに形成されており、これより内側に位置するドット状凸部の頂面面積の合計は約117mmとなっている。エンボスロール外周面に対するドット状凸部58の密度は21.17個/cmであり、エンボスロールの外周面全体の面積に占めるドット状凸部58頂面の合計面積の比率(面積占有率)は16.63%である。
【0096】
また、エンボスロール50は、凸模様列54の列方向D2に隣接する凸模様52同士が、11個のドット状凸部64を共有し、凸模様列54の列方向D2と交差する方向に隣接する凸模様52同士が、21個のドット状凸部66を共有して凸模様52を形成している。
【0097】
エンボスロール50は、凸模様列54がロールの軸線Aを中心軸線とした螺旋曲線Cを描くようにロールの外周面56に配置されている。エンボスロール50には、ロールの外周面56に1列の凸模様列54のみが存在し、凸模様列54が1本の螺旋曲線Cを描くように配置されている。そして、螺旋曲線Cは、衛生用紙の製品幅W(ロール状トイレットペーパー、製品幅114mm)当たり、約3.5回通過するように、ロールの外周面56に配置されている。ロールの回転方向D1(周方向)に対する凸模様列54の傾斜角度θ1は5°とした。
【0098】
エンボスロール50は、凸模様列54の列方向D2と交差する方向に隣接する凸模様52同士が回転方向D1に対する相対位置を徐々にずらしながら配置されている。また、エンボスロール50は、隣接する凸模様52が列方向D2と交差する方向に並列するように配置されており、その並列方向に延びる直線Lとロールの軸線Aに平行な直線との角度θ2が5°となるように配置した。
【0099】
エンボスロール50の幅(軸線A方向の長さ)は、図2に示すロール状衛生用紙1(ロール状トイレットペーパー)の製品幅W(114mm)の約27倍(3100mm)とした。エンボスロール50の径は300mmφとした。
【0100】
[2]デザインエンボスの形成:
実施例1では、図3Aに示すようにエンボスロール50を、その軸線Aの方向が長尺原紙の送り出し方向D3と直交するように配置した状態で、長尺原紙70に対して押圧した。エンボスロール50と、対をなすラバーロール80との間に長尺原紙70を挟み込んで押圧することによりデザインエンボス12を形成した。
【0101】
具体的には、送りロール86A,86B(又は86C,86D)の一方を駆動ロール、他方を従動ロールとして回転させ、ガイドロール84A,84Bで支持しながら内層用紙原紙72及び最外層用紙原紙74をエンボスロール50とラバーロール80の間に送り込んで押圧した。これにより、全ての原紙(内層用紙原紙72及び最外層用紙原紙74)にデザインエンボス12を形成し、内層用紙4Aと最外層用紙6Aからなるマルチプライの長尺衛生用紙2Aとした。
【0102】
長尺原紙70としては、坪量18g/mに抄紙されたトイレットロール用原紙からなり、図2に示すロール状衛生用紙1の製品幅Wの27倍幅(3078mm)を有する幅広長尺原紙を用いた。
【0103】
[3]プライボンディング:
実施例1では、図3Aに示すようにデザインエンボス12によって最外層用紙原紙74と内層用紙原紙72とをプライボンディングする方法を採用した。接着剤によるプライボンディングは行わなかった。
【0104】
[4]長尺衛生用紙の巻き取り:
実施例1ではマンドレルシャフトを有するワインダーを用いて長尺衛生用紙の巻き取りを行った。
【0105】
芯管としては、ボール紙からなる外径38mmφ、厚さ1.5mm、図2に示すロール状衛生用紙1の製品幅W(114mm、即ち芯管20の長さ)の27倍の長さ(3078mm)を有する長尺芯管を用いた。長尺衛生用紙の巻取り長さは30mとした。
【0106】
形成されたログは、刃の厚さが最大4.8mmのログソー(丸刃)を用いて114mm幅に切断することにより、図2に示す製品幅Wのロール状衛生用紙1(ロール状トイレットペーパー)とした。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の製造方法は、トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙の製造に好適に用いることができる。中でもトイレットペーパーの製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0108】
1:ロール状衛生用紙、2A,2B:長尺衛生用紙、4A,4B:内層用紙、6A,6B:最外層用紙、10:マイクロエンボス、12:デザインエンボス、20:芯管、50:エンボスロール、52:凸模様、54:凸模様列、56:外周面、58,64,66:ドット状凸部、60:側面、62:回転軸体、64、70:長尺原紙、72:内層用紙原紙、74:最外層用紙原紙、80,90,94:ラバーロール、84A,84B:ガイドロール、86A,86B,86C,86D:送りロール、88:エンボスロール、92:エッジエンボスホイール、A:軸線、L:直線、C:螺旋曲線、W:製品幅、D1:回転方向、D2:列方向、D3:送り出し方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の凸模様が繰り返し配置されてなる凸模様列が形成され、前記凸模様列がロールの軸線を中心軸線とした螺旋曲線を描くようにロールの外周面に配置されたエンボスロールを用い、
前記エンボスロールを、その軸線方向が長尺原紙の送り出し方向と直交するように配置した状態で、前記長尺原紙に対して押圧することにより、前記長尺原紙に、前記凸模様に対応する複数のデザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を得、
前記長尺衛生用紙をロール状に巻き取るロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項2】
前記エンボスロールとして、同心円状の凸模様が繰り返し配置されたものを用いる請求項1に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項3】
前記エンボスロールとして、同一形状のドット状凸部が集合配置されて前記凸模様が形成されたものを用いる請求項1又は2に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項4】
前記エンボスロールとして、前記凸模様列の列方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して前記凸模様を形成しているものを用いる請求項3に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項5】
前記エンボスロールとして、前記凸模様列の列方向と交差する方向に隣接する凸模様同士が、一部のドット状凸部を共有して前記凸模様を形成しているものを用いる請求項3又は4に記載のロール状衛生用紙の製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公開番号】特開2012−40775(P2012−40775A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184178(P2010−184178)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】