説明

ロール状衛生用紙及びその製造方法

【課題】デザインエンボスを形成した場合でもロール状衛生用紙の外観がいびつになり難く、美観に優れたロール状衛生用紙を得ることができるロール状衛生用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】デザインエンボスを形成する凸模様がロールの外周面に形成されたデザインエンボスロールを長尺原紙に対して押圧することにより、デザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を得るロール状衛生用紙の製造方法である。デザインエンボスロールとして、ロールの周方向に沿って同一形状の凸模様52Aが一定のピッチで繰り返し配置されてなる凸模様列54Aを有し、凸模様列54Aがロールの周方向に対して一定の角度θで傾斜して配置されるとともに、ロールの幅方向に一定の列間隔で複数列配置されたデザインエンボスロール50Aを用い、デザインエンボスロール50Aを長尺原紙に対して押圧することにより、デザインエンボスが形成された長尺衛生用紙を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパー等のロール状衛生用紙及びその製造方法に関するものである。より具体的には、意匠性を高めるためのデザインエンボスが形成されたロール状衛生用紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙には、意匠性を向上させ、商品価値を高める目的で、模様等の図柄を構成するエンボス(デザインエンボス)を付すことが行われている(例えば、特許文献1〜10参照)。このようなデザインエンボスは衛生用紙の原紙に対して、デザインエンボスを形成する凸模様が外周面に形成されたデザインエンボスロールを押圧(型押し)することで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−59347号公報
【特許文献2】特表2002−505207号公報
【特許文献3】特開2003−116741号公報
【特許文献4】特開2005−168582号公報
【特許文献5】特表2006−513068号公報
【特許文献6】特開2006−183216号公報
【特許文献7】特開2006−204570号公報
【特許文献8】特開2007−61510号公報
【特許文献9】特開2007−68577号公報
【特許文献10】特開2008−113695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図柄を容易に視認させる必要があるデザインエンボスは、柔軟性向上を目的として形成されるマイクロエンボスと比較してエンボスを深く形成することが一般的である。即ち、デザインエンボスが形成された衛生用紙はマイクロエンボスのみが形成された衛生用紙と比較して表面に大きな突出部(デザインエンボスに相当する部分)が形成されることになる。
【0005】
しかし、前記のように表面に大きな突出部が形成された衛生用紙を巻き取ってロールとすると、前記突出部が多層に重畳されることによって得られたロール状衛生用紙において外周面の一部(デザインエンボスに相当する部分)が大きく突出し、ロール状衛生用紙の外観がいびつになるという問題があった。このような問題はロール状衛生用紙の美観を損ねることに繋がり好ましくない。特に、デザイン上の観点から衛生用紙の特定部分のみに配置されるデザインエンボスは、柔軟性を向上させるという目的上、衛生用紙全体に概ね均一に配置されるマイクロエンボスよりも前記問題が顕著に発生する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、デザインエンボスを形成した場合でもロール状衛生用紙の外観がいびつになり難く、美観に優れたロール状衛生用紙の製造方法及びいびつな外観を呈することが少なく、美観に優れるロール状衛生用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、長尺原紙の始端から終端に向かうにつれて、デザインエンボスが長尺原紙の幅方向に徐々にずれていくようにデザインエンボスを形成し、デザインエンボスに相当する部分の突出を長尺衛生用紙の幅方向全体に分散させることで、デザインエンボスの形成に伴うロール状衛生用紙の外観悪化を有効に防止可能であることを見出した。
【0008】
具体的には、デザインエンボスを形成する凸模様をデザインエンボスロールの外周面にその幅方向に対して複数列形成し、この複数列の凸模様をデザインエンボスロールの周方向に対して一定の角度で傾斜させるように配置することによって、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示すロール状衛生用紙及びその製造方法が提供される。
【0009】
[1] デザインエンボスを形成する凸模様がロールの外周面に形成されたデザインエンボスロールを、長尺原紙に対して押圧することにより、前記長尺原紙に前記デザインエンボスを形成して長尺衛生用紙を得た後、前記長尺衛生用紙をロール状に巻き取るロール状衛生用紙の製造方法であって、前記デザインエンボスロールとして、ロールの周方向に同一形状の前記凸模様が一定のピッチで繰り返し配置されてなる凸模様列を有し、前記凸模様列が、ロールの周方向に対して一定の角度で傾斜して配置されるとともに、ロールの幅方向に一定の列間隔で複数列配置されたデザインエンボスロールを用い、当該デザインエンボスロールを前記長尺原紙に対して押圧することにより、前記デザインエンボスを形成して長尺衛生用紙を得るロール状衛生用紙の製造方法。
【0010】
[2] 複数枚の長尺衛生用紙が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙を形成するに際し、少なくとも前記マルチプライ衛生用紙の最外層に配置される最外層衛生用紙となる長尺原紙に対して、前記デザインエンボスロールを押圧することにより、前記デザインエンボスを形成する前記[1]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0011】
[3] 前記デザインエンボスロールとして、一の凸模様列に属する凸模様に対して、当該一の凸模様列と隣接する他の凸模様列に属する凸模様の周方向位置を一定の長さだけずらす関係が順次繰り返されて、前記凸模様列が複数列配置されたものを用いる前記[1]又は[2]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0012】
[4] 前記デザインエンボスロールとして、各々の前記凸模様列において、一の凸模様の下流端と当該一の凸模様と隣接する他の凸模様の上流端との周方向位置を一致させるように配置する関係が順次繰り返されて、前記各凸模様列が形成されたものを用いる前記[3]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【0013】
[5] 長尺衛生用紙がロール状に巻き取られたロール状衛生用紙であって、前記長尺衛生用紙の長手方向に同一形状のデザインエンボスが一定のピッチで繰り返し形成されたデザインエンボス列を有し、前記デザインエンボス列が、前記長尺衛生用紙の長手方向に対して一定の角度で傾斜して形成されるとともに、前記長尺衛生用紙の幅方向に一定の列間隔で複数列形成されているロール状衛生用紙。
【0014】
[6] 前記長尺衛生用紙は、複数枚の長尺衛生用紙が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙であり、前記デザインエンボスは少なくともマルチプライ衛生用紙の最も外側に位置する最外層衛生用紙に形成されている前記[5]に記載のロール状衛生用紙。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、長尺原紙にデザインエンボスを形成する場合でもロール状衛生用紙の外観がいびつになり難く、美観に優れたロール状衛生用紙を得ることができる。本発明のロール状衛生用紙はいびつな外観を呈することが少なく、美観に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の製造方法で用いられるデザインエンボスロールの一の実施形態を模式的に示す説明図であり、ロール表面を平面的に展開した状態を示す説明図である。
【図1B】図1Aに示すデザインエンボスロールを模式的に示す説明図であり、ロール表面を平面的に展開した状態を示す別の説明図である。
【図2A】本発明の製造方法の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2B】本発明の製造方法の別の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2C】本発明の製造方法の更に別の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図3A】本発明のロール状衛生用紙の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示すロール状衛生用紙のA−A’断面を模式的に示すA−A’断面図である。
【図3C】図3Aに示すロール状衛生用紙の構成部材である内層衛生用紙を模式的に示す平面図である。
【図3D】図3Aに示すロール状衛生用紙の構成部材である最外層衛生用紙を模式的に示す平面図である。
【図4A】本発明の製造方法で用いられるデザインエンボスロールの別の実施形態を模式的に示す説明図であり、ロール表面を平面的に展開した状態を示す説明図である。
【図4B】図4Aに示すデザインエンボスロールを模式的に示す説明図であり、ロール表面を平面的に展開した状態を示す別の説明図である。
【図5A】本発明のロール状衛生用紙の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図5B】図5Aに示すロール状衛生用紙のA−A’断面を模式的に示すA−A’断面図である。
【図5C】図5Aに示すロール状衛生用紙の構成部材である内層衛生用紙を模式的に示す平面図である。
【図5D】図5Aに示すロール状衛生用紙の構成部材である最外層衛生用紙を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のロール状衛生用紙及びその製造方法を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるロール状衛生用紙及びその製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[1]定義等:
「ロール状衛生用紙」とは、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aのように、長尺衛生用紙2がロール状に巻き取られてなる衛生用紙をいう。例えば、ロール状トイレットペーパー、ロール状キッチンタオル等を挙げることができる。なお、「ロール状衛生用紙」には、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aのような、芯管20に対して長尺衛生用紙2を巻き付けたものの他、芯管を使用することなく長尺衛生用紙2のみを巻回してロール状としたもの(ノンコア)も含むものとする。
【0019】
「長尺衛生用紙」としては、1枚の衛生用紙からなる、所謂1プライ衛生用紙に限らず、例えば、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aのように、長尺衛生用紙2を2枚積層して結合した2プライ衛生用紙や長尺衛生用紙を3枚積層して結合した3プライ衛生用紙等、衛生用紙を複数枚積層して結合したマルチプライ衛生用紙も含まれるものとする。
【0020】
以下、本明細書においては、長尺衛生用紙を複数枚積層して結合したマルチプライ衛生用紙の場合には、複数枚の長尺衛生用紙のうち、ロール状衛生用紙の最も外側に位置する衛生用紙を「最外層衛生用紙」と称し、最外層衛生用紙以外の長尺衛生用紙を「内層衛生用紙」と称することにする。なお、本明細書においては、説明の便宜上、全てのエンボス(デザインエンボス及びマイクロエンボス)が形成される前の衛生用紙を「原紙」と称し、後に「最外層衛生用紙」となる原紙を「最外層原紙」と称し、後に「内層衛生用紙」となる原紙を「内層原紙」と称することにする。
【0021】
「エンボス」は、1対のロール間に対象物(原紙)を挟み込んで押圧し、ロール表面に形成された凸模様を原紙に型押し(転写)することによって形成される型押し模様であり、デザインエンボスの他、マイクロエンボスも含むものとする。
【0022】
「デザインエンボス」とは、主として意匠性向上のために付されるデザイン性を有するエンボスであって、頂面部の面積が2mmを超えるエンボス単独で又はその集合によって模様を形成しているものを意味する。デザインエンボスの形状は、ドットエンボス、ラインエンボス、及びこれらが一体的に組み合わされたエンボスのいずれであってもよい。図3Aに示すロール状衛生用紙1Aは、面状に型押しされた一体的なデザインエンボス12により各々の模様を形成した例であるが、複数のデザインエンボスを集合的に配置し、1つのまとまった模様を形成してもよい。通常、デザインエンボスは線又は面の少なくとも一方によって描き出された花、木、川等のデザイン形状に形成される。
【0023】
「マイクロエンボス」とは、主として柔軟性向上のために付されるエンボスであって、頂面部の面積が0.01〜2mmのドットエンボスを意味する。通常、マイクロエンボスの頂面部は円形状又は矩形状等の平面形状に形成され、長尺衛生用紙の全面に均一に形成されている。なお、説明の便宜上、内層原紙に形成するマイクロエンボスを「内層マイクロエンボス」、最外層原紙に形成するマイクロエンボスを「外層マイクロエンボス」と称することにする。
【0024】
[2]本発明の製造方法の実施形態:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、デザインエンボスロールとして、図1Aに示すようなロールの周方向に同一形状の凸模様52Aが一定のピッチで繰り返し配置されてなる凸模様列54Aを有し、凸模様列54Aが、ロールの周方向(図1A上下方向)に対して一定の角度θで傾斜して配置されるとともに、ロールの幅方向(図1A左右方向)に一定の列間隔で複数列配置されたデザインエンボスロール50Aを用い、図2Aに示すようにデザインエンボスロール64を長尺原紙に対して押圧することにより、デザインエンボス66を形成して長尺衛生用紙を得るものである。
【0025】
凸模様列をロールの周方向(ロールの回転方向)に対して傾斜するように配置したデザインエンボスロールを用いることで、デザインエンボスは長尺原紙の始端から終端に向かうにつれて長尺原紙の幅方向に徐々に位置をずらしながら形成されていく。これにより、得られた長尺衛生用紙は、その幅方向全体に亘ってほぼ均等にデザインエンボスが形成されているものとなり、デザインエンボスに相当する部分の突出が長尺衛生用紙の幅方向全体に分散される。この方法によれば、長尺衛生用紙をロール状とした際に、ロール状衛生用紙の外周面の一部のみが大きく突出することを抑制できるため、ロール状衛生用紙の外観がいびつになり難く、美観に優れたロール状衛生用紙を得ることができる。
【0026】
[2−1]デザインエンボスの形成:
本発明の製造方法においては、ロール状衛生用紙を製造する際に、デザインエンボスロールを長尺原紙に対して押圧することにより、デザインエンボスを形成して長尺衛生用紙を得る。
【0027】
「デザインエンボスロールを長尺原紙に対して押圧」とは、1プライ衛生用紙の場合、後にその1プライ衛生用紙となる長尺原紙に対してデザインエンボスロールを押圧することを意味し、マルチプライ衛生用紙の場合、最外層原紙(後に最外層衛生用紙となる長尺原紙)に対してデザインエンボスロールを押圧するのみならず、最外層原紙に加えて、内層原紙(後に内層衛生用紙となる長尺原紙)に対しても押圧する場合も含む。例えば、図2A及び図2Bに示す製造方法のように、デザインエンボスロール64を最外層原紙60と内層原紙62の双方に対して押圧する方法によりデザインエンボス66を形成してもよいし、図2Cに示す製造方法のように、デザインエンボスロール64を最外層原紙60のみに対して押圧する方法によりデザインエンボス66を形成してもよい。
【0028】
「長尺原紙」としては、例えば、トイレットロール用原紙等を好適に用いることができ、中でも坪量10〜25g/mに抄紙されたトイレットロール用原紙を用いることが好ましい。坪量が10g/m未満であると、柔軟性向上の観点からは好ましいが、適正な強度を確保することができない場合がある。一方、坪量が25g/mを超えると、適正な強度を確保することはできるが、柔軟性が損なわれ、触感が硬くなり過ぎる場合がある。
【0029】
「デザインエンボスロール」とは、デザインエンボスを形成する凸模様がロールの外周面に形成されたエンボスロールを意味する。このデザインエンボスロールと対をなすロールとの間に、少なくとも最外層原紙を挟み込んで押圧することで、最外層原紙に対して、デザインエンボスロールが押圧され、デザインエンボスが形成される。
【0030】
デザインエンボスロールとしては、通常、ロールの外周面に凸模様が形成された金属ロールが用いられる。対をなすロールとしては、ロールの外周面にデザインエンボスロールの凸模様と相補的な凹模様が形成された金属ロール、金属ロールの外周面がゴムで被覆されたプレーンラバーロール等を用いることができる。本発明の製造方法としては、デザインエンボスロールとプレーンラバーロールとの間に長尺原紙を挟みこんで押圧するラバースチール法によりデザインエンボスを形成することが好ましい。この方法は、他のエンボス加工方法と比較して、エンボスが崩れ難い。従って、デザインエンボスによる意匠性向上効果に優れる点において好ましい。
【0031】
本発明の製造方法は、前記凸模様を特定のパターンに配置したデザインエンボスロールを用いてデザインエンボスを形成する点に特徴がある。
【0032】
本発明で用いるデザインエンボスロールの第1の特徴は、図1Aに示すデザインエンボスロール50Aのように、ロールの外周面に、ロールの周方向に同一形状の凸模様52A,52Bが一定のピッチで繰り返し配置されてなる凸模様列54A,54Bを有している点である。
【0033】
「凸模様列」は、複数の凸模様がロールの周方向に列状に配置されたものを意味し、例えば、図1Aに示すデザインエンボスロール50Aにおいては、複数の凸模様52Aが列をなすように配置されて一の凸模様列54Aが形成され、複数の凸模様52Bが列をなすように配置されて別の凸模様列54Bが形成されている。
【0034】
「一定のピッチで繰り返し配置」とは、一定のピッチで断続的に凸模様52A(又は凸模様52B)が配置されることによって凸模様列54A(又は凸模様列54B)が形成されていることを意味する。そして、この「ピッチ」は、全ての凸模様列において同一とする。凸模様を配置する「ピッチ」については、凸模様の形状やサイズ、凸模様列の列数等によって適宜設定することが好ましい。
【0035】
本発明で用いるデザインエンボスロールの第2の特徴は、図1Aに示すデザインエンボスロール50Aのように、凸模様列54A,54Bがロールの幅方向に一定の列間隔で複数列配置されている点である。
【0036】
デザインエンボスロールの「幅方向」は、「ロール状衛生用紙の製品の幅方向」に対応する。即ち、本発明で用いるデザインエンボスロールによれば、得られる長尺衛生用紙の幅方向に複数列のデザインエンボスが形成されることになる。
【0037】
凸模様列の列数も特に限定されず、ロール状衛生用紙の製品幅に対して複数列(2列以上)形成される構成であればよい。図1A及び図1Bに示すデザインエンボスロール50Aは、2列の凸模様列54A,54Bを形成した例である。一方、図4A及び図4Bに示すデザインエンボスロール50Bは、3列の凸模様列54C,54D,54Eを形成した例である。
【0038】
図4A及び図4Bに示すデザインエンボスロール50Bは、ロールの幅方向両側縁部の凸模様列54C,54Eに加えて、ロール中央部にも凸模様列54Dが形成されているため、図1A及び図1Bに示すデザインエンボスロール50Aよりも意匠性向上効果、プライボンディング効果が高いロール状衛生用紙を得られるという利点がある。
【0039】
なお、図4A及び図4Bに示すデザインエンボスロール50Bは、凸模様列の列数を1列増やすことを除いては、図1A及び図1Bに示すデザインエンボスロール50Aと同様の構成を採用することができる。
【0040】
本発明で用いるデザインエンボスロールの第3の特徴は、図1Aに示すデザインエンボスロール50Aのように、全ての凸模様列54A,54Bがロールの周方向に対して一定の角度θで傾斜するように配置されている点である。
【0041】
凸模様列の角度θは、凸模様の形状やサイズ、凸模様列の数、長尺衛生用紙の巻き取り長さ、デザインエンボスロールのロール径等を考慮して適宜設定すればよい。長尺衛生用紙を巻き取る際の巻厚が均一になり、ロール状衛生用紙の外周面の一部(長尺衛生用紙のデザインエンボスに相当する部分)のみが大きく突出しないように、かつ、デザインエンボスが長尺衛生用紙の幅方向に均一に分散するように角度を設定する。具体的には、凸模様列の傾斜角度をθとし、凸模様列のピッチをWとし、長尺原紙の長さをLとし、凸模様列のピッチWに対応した長尺原紙の幅をWとし、デザインエンボスロールのロール径(直径)をDとすると、下記式(1)及び(2)で規定される関係を満足するように角度θを設定することが好ましい。
/πD≦tanθ:(1)
(2×W/L)≦tanθ:(2)
【0042】
本発明の製造方法においては、デザインエンボスロールとして、図1Bに示すデザインエンボスロール50Aのように、凸模様列54Aに属する凸模様列54A,54Bに対して、凸模様列54Aと隣接する他の凸模様列54Bに属する凸模様列54Bの周方向位置を一定の長さαだけずらす関係が順次繰り返されて、凸模様列54A,54Bが複数列配置されたものを用いることが好ましい。複数の凸模様列54A,54Bにおいて、各々の凸模様52A,52Bの周方向位置をずらした場合、一の凸模様列54Aに属する凸模様52Aが長尺原紙に押圧されていない時でも他の凸模様列54Bに属する凸模様52Bが長尺原紙に押圧されることになる。即ち、ロール全体として見ると、凸模様が常に長尺原紙に押圧される状態を維持することができるため、デザインエンボスロールの回転が安定し、デザインエンボスを形成する際の加工安定性が向上するという効果を奏する。
【0043】
「周方向位置」とは、デザインエンボスロールの周方向(回転方向)に対する凸模様の位置をいう。この位置は、図1Bに示すように、デザインエンボスロール50Bの周方向と直交する方向(即ち、デザインエンボスロール50Bの幅方向と平行する方向)に向かう直線を基準として算出することができる。
【0044】
例えば、図1Bに示すデザインエンボスロール50Aでは、凸模様列54Aに属する凸模様52Aに対して、凸模様列54Aに隣接する凸模様列54Bに属する凸模様52Bの周方向位置が長さαだけロールの回転方向下流側にずれる関係となっている。
【0045】
また、図4Bに示すデザインエンボスロール50Bでは、凸模様列54Cに属する凸模様52Cに対して、隣接する凸模様列54Dに属する凸模様52Dの周方向位置が長さαだけ当該ロールの回転方向下流側にずれる関係となっている。そして、凸模様列54Dに属する凸模様52Dに対して、隣接する凸模様列54Eに属する凸模様52Eの周方向位置が長さαだけ当該ロールの回転方向下流側にずれる関係となっている。即ち、凸模様列のロール周方向位置が長さαだけロールの回転方向下流側にずれる関係が複数の凸模様列54C,54D,54Eにおいて順次繰り返されている。
【0046】
凸模様をロール周方向にずらす長さは、ロール全体として見た場合に、凸模様が常に長尺原紙に押圧される状態を維持することができるように、凸模様の長さ(ロールの周方向への長さ)に基づいて設定される。例えば、図1Bに示すデザインエンボスロール50Aのように、長さαを凸模様52a,52bの長さL1より短くなるように設定することが好ましい。一方、図4Bに示すデザインエンボスロール50Bは、長尺衛生用紙の製品幅に対して凸模様列が3列形成された例である。この例でも、図1Bに示すデザインエンボスロール50Aと同様の理由から、長さαを凸模様52C,52D,52Eの長さL2よりも短くなるように設定している。
【0047】
本発明の製造方法においては、デザインエンボスロールとして、図1Bに示すデザインエンボスロール50Aのように、各々の凸模様列54A(又は凸模様列54B)において、一の凸模様52A(又は凸模様52B)の周方向下流端P2と当該一の凸模様52A(又は凸模様52B)と隣接する他の凸模様52A(又は凸模様52B)の周方向上流端P1との周方向位置を一致させるように配置する関係が順次繰り返されて、各凸模様列54A(又は凸模様列54B)が形成されたものを用いることが好ましい。凸模様をこのような配置とすることにより、デザインエンボスロールの回転位置にかかわらず、デザインエンボスロールと長尺原紙とをロール軸方向にばらつきなく均等に接触させることができ、長尺原紙を押圧する力の均一化を図ることができる。
【0048】
例えば、デザインエンボスロール50Aでは、凸模様列54Aに属する凸模様52Aのうち、図中上から三番目の凸模様52Aの周方向下流端P2と、図中上から二番目の凸模様52Aの周方向上流端P1との周方向位置を一致させるように配置している。また、図中上から二番目の凸模様52Aの周方向下流端P2と、図中上から一番目の凸模様52Aの周方向上流端P1との周方向位置を一致させるように配置している。即ち、前記関係が順次繰り返されて、凸模様列54Aが形成されている。凸模様列54Bにおいても同様の関係が順次繰り返されて、凸模様列54Aが形成されている。
【0049】
また、図4Bに示すデザインエンボスロール50Bでは、凸模様列54Cに属する凸模様52Cのうち、図中上から三番目の凸模様52Cの周方向下流端P2と、図中上から二番目の凸模様52Cの周方向上流端P1との周方向位置を一致させるように配置している。また、図中上から二番目の凸模様52Cの周方向下流端P2と、図中上から一番目の凸模様52Cの周方向上流端P1との周方向位置を一致させるように配置している。即ち、前記関係が順次繰り返されて、凸模様列54Cが形成されている。凸模様列54D,54Eにおいても同様の関係が順次繰り返されて、凸模様列54D,54Eが形成されている。
【0050】
本発明の製造方法で用いられるデザインエンボスロールは、前記特徴以外の部分については、通常のデザインエンボスロールと同様に構成することができる。
【0051】
凸模様の高さ(ロール外周面を基準とした凸模様頂面の高さ)は、後述のマイクロエンボスロールの凸模様の高さ(ロール外周面を基準とした凸模様頂面の高さ)よりも高く設定される。これにより、デザインエンボスによる意匠性向上効果がより効果的に発揮される。また、長尺衛生用紙が複数枚積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙を得る場合には、長尺原紙を複数枚積層した後に、全ての長尺原紙に対してデザインエンボスロールを押圧すれば、デザインエンボスによってプライボンディングされたマルチプライ衛生用紙を得ることができる。
【0052】
デザインエンボスロールの軸方向長さは特に限定されない。但し、ロール状衛生用紙は、その製品幅の概ね10〜30倍の幅を有する幅広長尺原紙を用い、これを製品長さ分だけ巻き取って幅広のロール状衛生用紙(ログ)とした後、製品幅にカットする方法により製造されることが多い。このような方法によりロール状衛生用紙を製造する場合には、デザインエンボスロールもこれに対応する幅のものを用いる。ロール状衛生用紙の製品幅は、ロール状トイレットペーパーの場合であれば105〜114mm、ロール状キッチンタオルの場合であれば210〜228mmとすることが一般的である。デザインエンボスロールの径も特に限定されないが、通常は外径300〜600mmφのものが用いられる。
【0053】
デザインエンボスロールに関しては、長尺原紙の紙面の面積に対するデザインエンボスのエンボス頂面部面積の比率(面積占有率)が0.1〜20%となるように、ロール外周面面積に対する凸模様頂面部面積の比率(面積占有率)が設定される。
【0054】
[2−2]内層原紙へのマイクロエンボスの形成:
ロール状衛生用紙(特にロール状トイレットペーパー)に関しては、長尺原紙に柔軟性の向上効果が高いマイクロエンボスを形成して長尺衛生用紙を得ることが好ましい。長尺衛生用紙がマルチプライ衛生用紙である場合には、最外層衛生用紙を内側にして折り畳んだ状態で使用することが一般的である。この折り畳んだ状態においては表面に内層衛生用紙が露出するため、内層衛生用紙には柔軟性が求められる。従って、本発明の製造方法において、マルチプライ衛生用紙を得る際には、少なくとも内層原紙に対して、柔軟性の向上効果が高いマイクロエンボスを形成して長尺衛生用紙を得ることが好ましい。
【0055】
マイクロエンボスは、デザインエンボスと同様に、マイクロエンボスを形成する凸模様が外周面に形成されたマイクロエンボスロールを長尺原紙に対して押圧することにより形成することができる。マイクロエンボスロールとしては、ロール外周面に凸模様が形成された金属ロールを用いることができ、対をなすロールとしては、金属ロールの外周面がゴムで被覆されたプレーンラバーロール等を用いることができる。即ち、ラバースチール法によりマイクロエンボスを形成することが好ましい。この方法は、他のエンボス加工方法と比較して、エンボスが崩れ難い。従って、マイクロエンボスによる柔軟性向上効果が一層向上する。
【0056】
マイクロエンボスロールとしては、長尺原紙に形成されるドットエンボス1個当たり頂面部面積が0.01〜2mm(より好ましくは0.01〜1mm)となるように、当該ドットエンボスを形成する凸模様が形成されたエンボスロールを用いることが好ましい。この際、凸模様頂面部の形状が真円形状又は楕円形状のものを用いると、滑らかで肌触りが良好なマイクロエンボスを形成することができ好ましい。
【0057】
マイクロエンボスは、デザインエンボスとは異なり、長尺原紙の全面に均一に形成することが好ましい。こうすることで、長尺衛生用紙のいずれの部分においても柔軟性が確保される。図3A及び図3Cに示す内層衛生用紙2aは、内層マイクロエンボス6として平面円形状のドットエンボスを形成した例である。この例では内層マイクロエンボス6が内層衛生用紙2aの全面に均一に形成されている。
【0058】
マイクロエンボスに関しては、強度を十分に確保しつつ柔軟性を向上するという観点より、エンボス密度が51〜100個/cmである他、エンボス深さが0.5〜2.0mm、原紙面積に対する各エンボスの頂面部合計面積の比率(面積占有率)が0.15〜30%であることが好ましいとされている。従って、マイクロエンボスロールとしてはそのようなエンボスを形成する凸模様が形成されたものを用いればよい。なお、ここにいう「エンボス密度」とは、エンボスの平均密度であり、単位面積当たりのドットエンボスの個数を意味するものとする。
【0059】
[2−3]最外層原紙へのマイクロエンボスの形成:
本発明の製造方法において、マルチプライ衛生用紙を得る際には、内層原紙だけでなく、最外層原紙にもマイクロエンボスを形成してもよい。内層原紙に加えて最外層原紙にもマイクロエンボスを形成することにより、内層原紙のみにマイクロエンボスを形成した場合と比較して、より一層、柔軟性に優れたロール状衛生用紙を得ることができる。
【0060】
「外層マイクロエンボス」は、内層マイクロエンボスに準じて形成することができる。従って、外層マイクロエンボスと内層マイクロエンボスの構成(頂面部面積、エンボス密度、エンボス深さ、最外層原紙面積に対するエンボス頂面部面積の比率(面積占有率)等)を同一の構成としてもよい。
【0061】
但し、本発明の製造方法において、マルチプライ衛生用紙を得る際には、内層マイクロエンボスに比してエンボス密度が低くなるように外層マイクロエンボスを形成することが好ましい。このような方法によれば、内層マイクロエンボスの模様をデザインエンボスの背景デザインとして浮き出させることが可能となり、得られるロール状衛生用紙の意匠性を更に向上させることができる。
【0062】
具体的には、内層マイクロエンボスのエンボス密度は51〜100個/cmとすることが好ましいので、外層マイクロエンボスのエンボス密度を20〜50個/cmとすることが好ましい。これにより、外層マイクロエンボスがデザインエンボスの意匠性を阻害することがなく、また、最外層衛生用紙にも良好な肌触りを付与することができる。一方、外層マイクロエンボスの密度が20個/cm未満であると、最外層衛生用紙に十分な柔軟性を付与することができなくなり、良好な肌触りを得られなくなるおそれがある。逆に、エンボスの密度が50個/cmを超えると、外層マイクロエンボスがデザインエンボスの意匠性を阻害し、十分な意匠性を得られない場合がある。
【0063】
また、本発明の製造方法において、マルチプライ衛生用紙を得る際には、内層マイクロエンボスに比して頂面部面積が小となるように外層マイクロエンボスを形成することが好ましい。このような方法によれば、最外層衛生用紙において外層マイクロエンボスとデザインエンボスが重畳的に形成されていても、外層マイクロエンボスによってデザインエンボスが潰れたり、外層マイクロエンボス中にデザインエンボスが埋没してしまったりすることがなくなる。従って、デザインエンボスの意匠性が外層マイクロエンボスによって阻害されることがない。
【0064】
具体的には、内層マイクロエンボスの頂面部面積を1.1〜2.0mmとし、外層マイクロエンボスの頂面部面積を0.01〜1.0mmとすることが好ましい。こうすることにより、デザインエンボスの意匠性を阻害することがなく、最外層衛生用紙にも良好な肌触りを付与することができる。一方、外層マイクロエンボスの頂面部面積が0.01mm未満であると、最外層衛生用紙に十分な柔軟性を付与することができなくなり、良好な肌触りを得られなくなるおそれがある。逆に、外層マイクロエンボスの頂面部面積が1.0mmを超えると、外層マイクロエンボスがデザインエンボスの意匠性を阻害し、十分な意匠性を得られない場合がある。
【0065】
外層マイクロエンボスに関しては、前記エンボス密度、頂面部面積以外の構成については、内層マイクロエンボスに準じて構成することができる。好ましいエンボス形状、深さ等も同様である。
【0066】
なお、マルチプライ衛生用紙を得る際に、最外層原紙に外層マイクロエンボスを形成する場合には、外層マイクロエンボスを形成するマイクロエンボスロールの凸模様高さよりも凸模様高さが大であるデザインエンボスロールを用いることが好ましい。この方法では外層マイクロエンボスよりもデザインエンボスを深く形成することができるため、マイクロエンボスの形状等に拘らず、デザインエンボスが明確に表示され、マイクロエンボスに埋没することなく、デザインエンボスの意匠性を発揮させることが可能となる。
【0067】
なお、凸模様高さは各エンボスロールの凸模様の頂面の高さを基準に比較する。この際、デザインエンボスロールに形成された凸模様の頂面高さに対して、外層マイクロエンボスに形成された凸模様の頂面高さが90%以下であることが好ましい。
【0068】
[2−4]プライボンディング:
本発明の製造方法は、図2Cに示すように、最外層原紙60にデザインエンボス66を形成して最外層衛生用紙61を得た後、全ての長尺衛生用紙(内層衛生用紙63及び最外層衛生用紙61)を積層し、接着剤72で貼り合わせることによって結合し、マルチプライ衛生用紙76を形成することが好ましい。このような方法によれば、内層衛生用紙63及び最外層衛生用紙61に付されたエンボスが潰れ難く、各々のエンボスの機能を損ない難いことに加え、全ての長尺衛生用紙が各々確実に接着され、プライボンディングの効果が高いという利点がある。
【0069】
「接着剤」としては、従来、紙製のシート製品に用いられてきた接着剤を用いればよい。例えば、PVA(ポリビニルアルコール)やCMC(カルボキシルセルロース)等の従来公知の接着剤を用いることができる。
【0070】
「接着剤」を塗工する部位は、最外層衛生用紙と内層衛生用紙を接着する場合には最外層衛生用紙の裏面、内層衛生用紙の表面のいずれか一方又は双方であり、内層衛生用紙同士を接着する場合には内層衛生用紙の裏面、内層衛生用紙の表面のいずれか一方又は双方である。但し、長尺衛生用紙が2プライ衛生用紙であるときは、接着剤が最外層衛生用紙の裏面で、かつ、デザインエンボスの裏側に塗工されたものであることが好ましい。このような構成は製造が容易である点において好ましい。
【0071】
図2Cに示す製造方法は、最外層原紙60にデザインエンボス66を形成して最外層衛生用紙61を得た後、最外層衛生用紙61の裏面で、かつ、デザインエンボス66の裏側に、グルーラバーロール74によって接着剤72を塗工し、内層衛生用紙63と貼り合わせることによって結合し、マルチプライ衛生用紙76を形成した例である(例えば、特表2002−505207号公報を参照)。
【0072】
接着剤でプライボンディングする方法を採用した場合、図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bのように、最外層衛生用紙2bのみにデザインエンボス12が形成されていることになる。
【0073】
前記のように、マルチプライ衛生用紙を得る際に、最外層衛生用紙の裏面で、かつ、デザインエンボスの裏側に接着剤を塗工する場合には、接着剤を最外層衛生用紙の色と異なる色に着色された着色接着剤とすることが好ましい。このような構成とすると、デザインエンボス部分が最外層衛生用紙の色と異なる色に着色されるため、デザインエンボスの視認性が向上し、単にデザインエンボスを付したときよりも意匠性が向上するという効果がある。
【0074】
着色接着剤としては、既に述べたPVA、CMC等の既知のシート製品に用いられる接着剤に顔料や染料等の着色剤を混合して着色したものを用いることができる。
【0075】
本発明の製造方法においては、図2A及び図2Bに示すように、デザインエンボス66によって最外層原紙60と内層原紙62とをプライボンディングする方法を採用してもよい。このような構成では、デザインエンボス66によって全ての原紙(内層原紙62及び最外層原紙60)が結合されるため、デザインエンボス66がクリンパーと同様のプライボンディングの効果をも併せ持つことになる。また、この方法によれば接着剤が不要となり、製造工程も簡略化することができる。
【0076】
デザインエンボスでプライボンディングする方法を採用した場合、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Bのように、内層衛生用紙2a及び最外層衛生用紙2bの双方にデザインエンボス12が形成されていることになる。
【0077】
なお、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aは、デザインエンボス12によってプライボンディングすることを除いては、図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bと同様の構成を採用することができる。
【0078】
[3]本発明のロール状衛生用紙の形態:
本発明のロール状衛生用紙は、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aのように、長尺衛生用紙2がロール状に巻き取られたロール状衛生用紙1Aである。そして、長尺衛生用紙2の長手方向に沿って同一形状のデザインエンボス12が一定のピッチで繰り返し形成されたデザインエンボス列を有し、デザインエンボス列が、長尺衛生用紙2の長手方向に対して一定の角度で傾斜して形成されるとともに、長尺衛生用紙2の幅方向に一定の列間隔で複数列形成されているロール状衛生用紙である。
【0079】
図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aは、長尺衛生用紙2の幅方向に2列のデザインエンボス列が形成された例である。一方、図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bは、長尺衛生用紙2の幅方向に3列のデザインエンボス列が形成された例である。
【0080】
本発明のロール状衛生用紙は、図3A及び図3Bに示すように、長尺衛生用紙2が複数枚の長尺衛生用紙2が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙4であることが好ましい。図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1A及び図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bは、最外層衛生用紙2bと内層衛生用紙2aの2枚の長尺衛生用紙2が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙4から構成されている。
【0081】
そして、デザインエンボスは少なくともマルチプライ衛生用紙の最外層に配置された最外層衛生用紙に形成されていることが好ましい。図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aは、デザインエンボス12が最外層衛生用紙2bに形成された上で、更に内層衛生用紙2aにも形成された例である。一方、図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bは、デザインエンボス12が最外層衛生用紙2bのみに形成された例である。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の製造方法の実施例について、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1A、並びに図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bを製造した場合の例により、更に具体的に説明する。
【0083】
(実施例1)
以下の製造方法により、2枚の長尺衛生用紙からなる2プライ衛生用紙、更には、図3A及び図3Bに示すロール状衛生用紙1Aを製造した。
【0084】
まず、図2Bに示すように、内層原紙62をマイクロエンボスロール78Bとプレーンラバーロール82Bの間に挟み込んで押圧し、内層原紙62に内層マイクロエンボス68を形成した。一方、最外層原紙60をマイクロエンボスロール78Aとプレーンラバーロール82Aの間に挟み込んで押圧し、最外層原紙60に外層マイクロエンボス70を形成した。この際、内層原紙62及び最外層原紙60は、ロール状衛生用紙の製品幅の10倍の幅を有する幅広の長尺原紙を用いた。また、マイクロエンボスロール78Aは、マイクロエンボスロール78Bに比して凸模様の密度が小であるものを用いた。
【0085】
次いで、内層原紙62及び最外層原紙60をガイドロール84A,84Bで支持しながらデザインエンボスロール64とプレーンラバーロール82Cの間に送り込んで押圧し、全ての原紙(内層原紙62及び最外層原紙60)にデザインエンボス66を形成した。これにより、全ての原紙(内層原紙62及び最外層原紙60)をデザインエンボス66によって積層状態で結合してマルチプライ衛生用紙76とした。この際、デザインエンボスロール64としては、図1A及び図1Bに示すデザインエンボスロール50Aを用いた。なお、マルチプライ衛生用紙76は製品幅の10倍の幅を有する幅広2プライ衛生用紙である。この幅広2プライ衛生用紙を中間巻取りロールに巻き取った。
【0086】
更に、中間巻取りロールから幅広2プライ衛生用紙を送り出し、その幅広2プライ衛生用紙の始端部を長尺芯管の外周面に接着固定(ピックアップ)した。更にまた、ワインダーを用いて、幅広2プライ衛生用紙を製品長さ分だけ長尺芯管に巻き直しロールを形成した。そして、ロールの外周面に幅広2プライ衛生用紙の終端部を接着固定(テールシール)することにより、幅広のロール状衛生用紙であるログを形成した。最後に、ログソーにより、ログを製品幅にカットしてロール状衛生用紙を得た。
【0087】
これにより、図3A及び図3Bに示すような、内層衛生用紙2aには、その全面に均一に内層マイクロエンボス6が形成され、最外層衛生用紙2bには、その全面に均一に外層マイクロエンボス16が形成されるとともに、長尺衛生用紙2の長手方向に同一形状のデザインエンボス12が一定のピッチで繰り返し形成されたデザインエンボス列を有し、デザインエンボス列が、長尺衛生用紙2の長手方向に対して一定の角度で傾斜して形成されるとともに、長尺衛生用紙2の幅方向に一定の列間隔で2列形成されたマルチプライ衛生用紙4が芯管20に巻回されたロール状衛生用紙1Aを得た。
【0088】
なお、図2Bに示す製造方法の一部を改変することにより、内層原紙62及び最外層原紙60に内層マイクロエンボス68、外層マイクロエンボス70を形成せず、デザインエンボス66のみを形成することも可能である。即ち、図2Aに示す製造方法のように、図2Bに示すマイクロエンボスロール78A,78B、プレーンラバーロール82A,82Bに代えて、送りロール86A,86B,86C,86Dを用いることにより、内層原紙62及び最外層原紙60にデザインエンボス66のみを形成することができる。
【0089】
(実施例2)
以下の製造方法により、2枚の長尺衛生用紙からなる2プライ衛生用紙、更には、図5A及び図5Bに示すロール状衛生用紙1Bを製造した。
【0090】
まず、図2Cに示すように、内層原紙62をマイクロエンボスロール78Bとプレーンラバーロール82Bの間に挟み込んで押圧し、内層原紙62に内層マイクロエンボス68を形成した。一方、最外層原紙60をマイクロエンボスロール78Aとプレーンラバーロール82Aの間に挟み込んで押圧し、最外層原紙60に外層マイクロエンボス70を形成した。この際、内層原紙62及び最外層原紙60は、ロール状衛生用紙の製品幅の10倍の幅を有する幅広の長尺原紙を用いた。また、マイクロエンボスロール78Aは、マイクロエンボスロール78Bに比して凸模様の密度が小であるものを用いた。
【0091】
そして、最外層原紙60をデザインエンボスロール64とプレーンラバーロール82Cの間に挟み込んで押圧し、最外層原紙60にデザインエンボス66を形成した。その後、最外層原紙60の裏面で、かつ、デザインエンボス66の裏側に、グルーラバーロール74によって接着剤72を塗工した。更に、内層原紙62及び最外層原紙60をデザインエンボスロール64とプレーンラバーロール82Dの間に送り込んで押圧することにより、最外層衛生用紙61と内層衛生用紙63とを貼り合わせて結合し、マルチプライ衛生用紙76とした。
【0092】
この際、デザインエンボスロール64としては、図4A及び図4Bに示すデザインエンボスロール50Bを用いた。なお、マルチプライ衛生用紙76は製品幅の10倍の幅を有する幅広2プライ衛生用紙である。以下の工程は、実施例1と同様に行った。
【0093】
これにより、図5A及び図5Bに示すような、内層衛生用紙2aには、その全面に均一に内層マイクロエンボス6が形成され、最外層衛生用紙2bには、その全面に均一に外層マイクロエンボス16が形成されるとともに、長尺衛生用紙2の長手方向に同一形状のデザインエンボス12が一定のピッチで繰り返し形成されたデザインエンボス列を有し、デザインエンボス列が、長尺衛生用紙2の長手方向に対して一定の角度θで傾斜して形成されるとともに、長尺衛生用紙2の幅方向に一定の列間隔で3列形成されたマルチプライ衛生用紙4が芯管20に巻回されたロール状衛生用紙1Bを得た。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のロール状衛生用紙は、トイレットペーパー、キッチンタオル等に利用することができる。中でもトイレットペーパーとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
1A,1B:ロール状衛生用紙、2:長尺衛生用紙、2a:内層衛生用紙、2b:最外層衛生用紙、4:マルチプライ衛生用紙、6:内層マイクロエンボス、12:デザインエンボス、16:外層マイクロエンボス、20:芯管、24:接着剤、50A,50B:デザインエンボスロール、52A,52B,52C,52D,52E:凸模様、54A,54B,54C,54D,54E:凸模様列、60:最外層原紙、61:最外層衛生用紙、62:内層原紙、63:内層衛生用紙、64:デザインエンボスロール、66:デザインエンボス、68:内層マイクロエンボス、70:外層マイクロエンボス、72:接着剤、74:グルーラバーロール、76:マルチプライ衛生用紙、78A,78B:マイクロエンボスロール、82A,82B,82C:プレーンラバーロール、84A,84B:ガイドロール、86A,86B,86C,86D:送りロール、α,α,L1,L2:長さ、θ,θ:角度、P1:周方向上流端、P2:周方向下流端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザインエンボスを形成する凸模様がロールの外周面に形成されたデザインエンボスロールを、長尺原紙に対して押圧することにより、前記長尺原紙に前記デザインエンボスを形成して長尺衛生用紙を得た後、前記長尺衛生用紙をロール状に巻き取るロール状衛生用紙の製造方法であって、
前記デザインエンボスロールとして、ロールの周方向に同一形状の前記凸模様が一定のピッチで繰り返し配置されてなる凸模様列を有し、前記凸模様列が、ロールの周方向に対して一定の角度で傾斜して配置されるとともに、ロールの幅方向に一定の列間隔で複数列配置されたデザインエンボスロールを用い、
当該デザインエンボスロールを前記長尺原紙に対して押圧することにより、前記デザインエンボスを形成して長尺衛生用紙を得るロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項2】
複数枚の長尺衛生用紙が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙を形成するに際し、少なくとも前記マルチプライ衛生用紙の最外層に配置される最外層衛生用紙となる長尺原紙に対して、前記デザインエンボスロールを押圧することにより、前記デザインエンボスを形成する請求項1に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項3】
前記デザインエンボスロールとして、一の凸模様列に属する凸模様に対して、当該一の凸模様列と隣接する他の凸模様列に属する凸模様の周方向位置を一定の長さだけずらす関係が順次繰り返されて、前記凸模様列が複数列配置されたものを用いる請求項1又は2に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項4】
前記デザインエンボスロールとして、各々の前記凸模様列において、一の凸模様の周方向下流端と当該一の凸模様と隣接する他の凸模様の周方向上流端との周方向位置を一致させるように配置する関係が順次繰り返されて、前記各凸模様列が形成されたものを用いる請求項3に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項5】
長尺衛生用紙がロール状に巻き取られたロール状衛生用紙であって、
前記長尺衛生用紙の長手方向に同一形状のデザインエンボスが一定のピッチで繰り返し形成されたデザインエンボス列を有し、
前記デザインエンボス列が、前記長尺衛生用紙の長手方向に対して一定の角度で傾斜して形成されるとともに、前記長尺衛生用紙の幅方向に一定の列間隔で複数列形成されているロール状衛生用紙。
【請求項6】
前記長尺衛生用紙は、複数枚の長尺衛生用紙が積層されて結合されたマルチプライ衛生用紙であり、前記デザインエンボスは少なくともマルチプライ衛生用紙の最外層に配置された最外層衛生用紙に形成されている請求項5に記載のロール状衛生用紙。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2010−188690(P2010−188690A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37725(P2009−37725)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】