説明

ロール装置用油回収装置,油循環装置,及び油循環制御装置,並びにロール装置用油循環装置の制御方法

【課題】ロール外套内の油を適切な回収率で回収できるようにした、ロール装置用の油回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ロール外套4A内の油を回収するロール装置用油回収装置であって、シュー5Aのロール外套4Aへの摺接部よりもロール外套4Aの回転方向上流側に、摺接部7から回転方向上流側に跳ね返った油を案内するガイド部材11を設け、ガイド部材11により油をロール外套4A内の油収容空間41側と油回収パン側とに分岐させる分岐構造を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール外套内の油を回収するためのロール装置用の油回収装置,油循環装置,及び油循環制御装置,並びにロール装置用油循環装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば抄紙機のプレス装置やカレンダ装置などに用いるものとして、静止した支持体の周囲に回転するロール外套を配設して、上記支持体に支持されたシューによって上記ロール外套を内周側から周外方向に押圧するようにしたロール装置が開発されている。
このようなロール装置では、ロール外套の内周面とシューの押圧面との摺動部分に潤滑油(単に、油ともいう)を供給する。この油は潤滑に用いられることにより、温度上昇等により性状が悪化していくため、ロール装置には、潤滑に用いた油を回収してロール装置の外部へ排出し、冷却等の適宜の処理を施した後、再びロール外套内に供給するようにした、油の循環システムがそなえられている。
【0003】
ここで、重要となるのが、ロール外套内の油を回収する装置であるが、これに関しては種々の技術が提案されている(特許文献1,2参照)。特に、近年、抄紙機運転の高速化が進み、ロール外套の回転速度も従来に比べて格段に速くなってきており、ロール外套の回転速度が速くなると、ロール外套内で油の動きが激しくなるため、特許文献1の技術では油の回収を十分に行ない難い点から、本願発明者らは、ロール外套の高速回転時においても油の回収効率を高めるようにした技術を提案した(特許文献2)。
【0004】
この技術は、ロール外套内において、ロール外套内周面とシュー押圧面との摺動部分よりもロール外套の回転方向上流側に、ロール外套内でロール外套と連れ回りする油を回収する油回収パンをそなえ、この油回収パンの外縁上端部を、ロール外套内で連れ回りする油膜(リミング油という)と干渉しない範囲で、ロール外套内周面に接近した位置まで延設したものである。
【特許文献1】特開平10−82416号公報
【特許文献2】特開2005−221027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ロール外套をシューで押圧するタイプのロール装置に装備する油回収装置では、油の回収率を上げるための技術開発が行なわれているが、油の回収率を上げて油の循環を促進すると、温度等を適正に管理された油をロール外套内周面とシュー押圧面との摺動部分に供給することができる反面、大量の油を循環させることになり、油の循環のための機器類の高出力化が要求され、装置の大型化,重量増やコスト増を招く上、油循環のためのエネルギ消費の増大も招くことになる。
【0006】
このような観点から油回収装置を考えると、油の回収率を単純に向上させるのではなく、油の回収率を適宜のレベルに設定することで、装置の大型化,重量増を抑制しながら、上記摺動部分の潤滑について必要にして十分な性能を得ることができるようにすることが必要である。
このためには、油の回収率をどの程度にすべきかを検討することや、設定した回収率で油の回収率を行なえるようにする油回収装置の構成や、回収率の制御手法を実現することが必要になる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ロール外套内の油を適切な回収率で回収できるようにした、ロール装置用の油回収装置,油循環装置,及び油循環制御装置,並びにロール装置用油循環装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明のロール装置用油回収装置は、静止した支持体と、前記支持体の周囲に配設されて回転するロール外套と、前記支持体に支持され前記ロール外套を内周側から周外方向に押圧するシューとをそなえたロール装置に装備され、前記ロール外套内の油を回収するロール装置用油回収装置であって、前記ロール外套内における前記シューの前記ロール外套への摺接部よりも前記ロール外套の回転方向上流側に設けられ、前記摺接部から前記回転方向上流側に跳ね返った油を案内するガイド部材と、前記の跳ね返った油を回収する油回収パンと、前記ガイド部材により油を前記ロール外套内の油収容空間側と前記油回収パン側とに分岐させる分岐構造と、をそなえていることを特徴としている(請求項1)。なお、ロール外套内の油収容空間とは、一般に、ロール外套内の下部の油が溜まる空間である。
【0009】
前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させるガイド面を有するガイドプレートであって、前記分岐構造は、前記ガイドプレートに部分的に形成され、前記ガイド面上を流下する油を前記ガイド面上からその裏面側に導くガイド穴であって、前記ガイド穴に導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記ガイド穴を経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されていることが好ましい(請求項2)。
【0010】
この場合、前記ガイド穴の開口面積を調整する開口調整機構がそなえられていることが好ましい(請求項3)。
また、前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させるガイド面を有するガイドプレートであって、前記分岐構造は、前記ガイドプレートに油の流下方向に交差する方向に延設され、前記ガイド面上を流下する油を前記ガイド面上からその裏面側に導くスリットであって、前記スリットに導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されていることが好ましい(請求項4)。
【0011】
あるいは、前記ガイド部材は、上流端を前記シューに接近して備え、前記の跳ね返った油を案内するガイド面を有するガイドプレートであって、前記分岐構造は、前記ガイド面の上流端と前記シューとの間の隙間として構成されるスリットであって、前記スリットに導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記ガイド面の裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されていることが好ましい(請求項5)。
【0012】
あるいは、前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させる第1のガイド面を有する第1のガイドプレートと、前記第1のガイドプレートの下流側に配置され前記第1のガイド面を流下した油をさらに流下させる第2のガイド面を有する第2のガイドプレートと、から構成され、前記分岐構造は、前記第1のガイドプレートと前記第2のガイドプレートとの間に、油の流下方向に交差する方向に延設され、前記第1のガイド面上を流下する油を前記第1のガイド面上からその裏面側に導くスリットであって、前記スリットに導かれずに前記第1のガイド面から前記第2のガイド面上に流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されていることが好ましい(請求項6)。
【0013】
これらの場合、前記スリットの開口幅を調整する開口調整機構がそなえられていることが好ましい(請求項7)。
また、前記分岐構造は、前記の摺接部から跳ね返った油を予め設定された比率で前記ロール外套内の鉛直下方に導き前記ロール外套内を再循環させると共に、残りの油を前記油回収パンに導くように構成されていることが好ましい(請求項8)。
【0014】
前記の摺接部から跳ね返った油のうち前記ロール外套内を再循環させる前記比率は、50〜95%であることが好ましい(請求項9)。
本発明のロール装置用油循環装置は、請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえた、ロール装置用油循環装置であって、前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)は、前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)に相当するように設定されていることを特徴としている(請求項10)。
【0015】
前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量は、前記ロール外套内の下部における油面の高さが予め設定された範囲内となるように設定されていることが好ましい(請求項11)。
前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量は、前記ロール外套の内周に沿って連れ回りする油膜の厚みが予め設定された範囲内となるように設定されていることが好ましい(請求項12)。
【0016】
本発明のロール装置用油循環制御装置は、請求項10〜12の何れか1項に記載のロール装置用油循環装置を自動で制御するロール装置用油循環制御装置であって、前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)を推定する油回収量推定手段と、前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)が、前記油回収量推定手段により推定された前記油回収量に一致する又は近づくように前記油供給装置による前記油供給量を調整する油供給量調整手段と、を備えていることを特徴としている(請求項13)。
【0017】
本発明のロール装置用油循環装置の制御方法は、請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえたロール装置用油循環装置を制御する方法であって、前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)を推定する油回収量推定ステップと、前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)が、前記油回収量推定ステップにより推定された前記油回収量に一致する又は近づくように前記油供給装置による前記油供給量を調整する油供給量調整ステップと、を備えていることを特徴としている(請求項14)。
【0018】
本発明のもう一つのロール装置用油循環装置の制御方法は、請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえたロール装置用油循環装置を制御する方法であって、前記ロール外套の回転速度を検出又は推定により取得する回転速度取得ステップと、前記油供給装置による前記油供給量を前記ロール外套の回転速度に応じて調整する制御する油供給量調整ステップと、を備えていることを特徴としている(請求項15)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、ロール外套内で、シューとロール外套の内周との摺接部から回転方向上流側に跳ね返った油は、ガイド部材により案内されて流れ、分岐構造を通じて、ロール外套内の油収容空間側と油回収パン側とに分岐する。したがって、摺接部から跳ね返った油の一部が油回収パンに回収され、その他の油は、ロール外套内の下部空間等の油収容空間に戻される。分岐構造による分岐の割合、即ち、ロール外套内の油収容空間に戻されるものと、油回収パンに回収されるものとの割合を適宜設定することにより、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、装置の大型化,重量増を抑制しながら、摺動部の潤滑について必要にして十分な性能を得ることが可能になる。
【0020】
請求項2にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、シューとロール外套の内周との摺接部から回転方向上流側に跳ね返った油は、ガイドプレートにより案内されガイド面上を流下し、ガイドプレートに部分的に形成されたガイド穴によって、一部の油はガイド面上からその裏面側に導かれ、残りの油はガイド面上をそのまま流下することで、2方向に分岐される。そして、分岐した油の一方は、油回収パンに流れ込み、他方はロール外套内の油収容空間に流れ込む。この分岐の割合は、ガイドプレートに形成するガイド穴の開口率で調整可能であり、ガイド穴の開口率を予め適宜に大きさに設定すれば、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、上記効果を得ることができる。
【0021】
請求項3にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、ガイド穴の開口率を調整できるため、油の回収率をより自由に所望のレベルに設定するができる。
請求項4にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、シューとロール外套の内周との摺接部から回転方向上流側に跳ね返った油は、ガイドプレートにより案内されガイド面上を流下し、この油の一部は、ガイドプレートに油の流下方向に交差する方向に形成されたスリットによって、ガイド面上からその裏面側に導かれ、残りの油はガイド面上をそのまま流下することで、2方向に分岐される。そして、分岐した油の一方は、油回収パンに流れ込み、他方はロール外套内の油収容空間に流れ込む。この分岐の割合は、ガイドプレートに形成するガイド穴の開口率で調整可能であり、ガイド穴の開口率を予め適宜に大きさに設定すれば、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、上記効果を得ることができる。
【0022】
請求項5にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、シューとロール外套の内周との摺接部から回転方向上流側に跳ね返った油の一部は、ガイドプレートのガイド面の上流端とシューとの間の隙間として構成されるスリットによって、ガイド面の裏面側に導かれ、跳ね返った油の残りは、ガイドプレートのガイド面に案内されて流れる。これにより、油は2方向に分岐され、分岐した油の一方は、油回収パンに流れ込み、他方はロール外套内の油収容空間に流れ込む。この分岐の割合は、スリットの開口率で調整可能であり、この開口率を予め適宜に大きさに設定すれば、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、上記効果を得ることができる。
【0023】
請求項6にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、シューとロール外套の内周との摺接部から回転方向上流側に跳ね返った油は、第1のガイドプレートにより案内され第1のガイド面上を流下し、この油の一部は、第1のガイドプレートと第2のガイドプレートとの間に、油の流下方向に交差する方向に延設されたスリットによって、第1のガイド面上からその裏面側に導かれ、残りの油は第1のガイドプレートの第2のガイド面上を流下することで、2方向に分岐される。そして、分岐した油の一方は、油回収パンに流れ込み、他方はロール外套内の油収容空間に流れ込む。この分岐の割合は、ガイドプレートに形成するガイド穴の開口率で調整可能であり、ガイド穴の開口率を予め適宜に大きさに設定すれば、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、上記効果を得ることができる。
【0024】
請求項7にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、スリットの開口率を調整できるため、油の回収率をより自由に所望のレベルに設定するができる。
請求項8,9にかかる本発明のロール装置用油回収装置によれば、油の回収率を所望のレベルに設定するができ、上記効果を得ることができる。
請求項10〜12にかかる本発明のロール装置用油循環装置及び請求項13にかかる本発明のロール装置用油循環制御装置並びに請求項14,15にかかるロール装置用油循環装置の制御方法によれば、ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)と、ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)とがバランスするので、ロール外套内の油の量を一定に保ちながら、所望の回収率或いは所望の再循環率で、油を循環させることができる。したがって、ロール外套内の油量又はロール外套内周面に沿って連れ回りする油(リミング油)の厚みを適切な大きさに保つことができ、潤滑に必要な量の油を摺動部に供給しつつ、ロール外套の回転に伴って生じる油の連れ回り負荷を抑えることができる。
【0025】
特に、前記の分岐構造を通じて分岐する油の割合、即ち、油の回収率或いは再循環率は、ロール外套の回転速度に応じて変化するが、請求項15にかかるロール装置用油循環装置の制御方法のように、ロール外套の回転速度に応じて油供給量を調整することで、油供給量を油回収量とバランスさせることができ、上記効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(A)第1実施形態
図1〜図3に基づいて、本発明の第1実施形態にかかるロール装置用油回収装置を説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に特有の形状の部材については符号1〜5,20にAを付すが、対応する部材を一般的に示す場合はこれらの符号にAを付さない。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係るロール装置用油回収装置1Aは、例えば抄紙機のプレス装置やカレンダ装置などに設けられたロール装置2に装備される。ロール装置2Aは、ロール軸方向(装置幅方向)に設けられ静止したセンターシャフト(支持体)3Aと、センターシャフト3Aを覆うようにセンターシャフト3Aの軸周りに配設され、軸端部に設けられた図示しない駆動装置により回転駆動する円筒状のロール外套4Aと、センターシャフト3Aの上部に支持されロール外套4Aを内周側から周外部向に押圧するシュー5Aとを備えて構成されている。
【0028】
なお、シュー5Aについては、図4(a)に示すように、シューをロール軸方向において複数の部分シュー51に分割して、これらの各部分シュー51による押圧力を独立に調整することが可能な構成にしてもよく、図4(b)に示すように、ロール軸方向に分割されない単一のシュー50としてもよい。また、ロール外套4は自ら回転駆動力を受けて回動する回転駆動式のものの他、従動式のものでもよい。
【0029】
また、本実施形態では、図1に示すように、本ロール装置用油回収装置1Aが適用されるロール装置2Aの一例として、円筒状外周面を4つの平面でカットして略八角形の断面形状を有するように構成したセンターシャフト3Aを示しているが、センターシャフトはこの形状に限定されるものではなく任意の形状であっても良い。ここでは、センターシャフト3Aの4つの平面状の外周部分の同一直径上の2箇所にシュー5Aを備えている。そして、ロール装置2Aは対向ロール6の鉛直下方に配置されているが、この配置についてもこれに限定されるものではなく、対向ロール6は、ロール外套4Aに対して、真上を中心の±90°の範囲内で、つまり、ロール外套4Aに対して左真横から右真横から間での範囲で配置しうるものである。
【0030】
このようなロール装置2Aでは、ロール外套4Aの内周面とシュー5Aの押圧面との摺接部7の摩擦係数を小さくしてロール外套4Aを円滑に回転させるためにロール外套4A内に油(潤滑油)を供給して摺動部7に油膜を形成するようになっている。つまり、図5に示すように、ロール外套4内には、ロール外套4の内周面とシュー5の押圧面との摺接部7の摩擦係数を小さくしてロール外套4Aを円滑に回転させるためにロール外套4A内に油を供給して摺動部7に油膜を形成するようになっている。
【0031】
つまり、図5に示すように、ロール外套4内に油を供給する油供給装置9Aと、ロール外套4内の油を回収する油回収装置9Bとを有する、油循環装置9が装備されている。
油供給装置9Aは、ロール装置外部の油タンク91内に貯蔵されている油をロール外套4内に供給するための供給管92及びポンプ93を備えている。ここでは、供給管92は、シュー5を加圧するために加圧シリンダ52に油を供給する配管92aと、ロール外套4内の油収容空間(ロール外套4内の下部空間)41に油を潤滑油として供給する配管92bとに分岐し、潤滑油供給量(単位時間当たりの量)は、バルブ94aの開度調整により行なえるようになっている。
【0032】
油回収装置9Bは、ロール外套4内に装備された回収パン20と、回収パン20から油タンク91に配設された排出管96と、排出管96に介装され油回収パン20内に回収された油を油タンク91に強制吸引するポンプ97とを備えている。これにより、油回収パン20内に回収された油は油回収パン20外に溢れ出ることはなく、円滑に油タンク91に導かれるようになっている。
【0033】
したがって、油供給装置9Aによりロール外套4内下部の油収容空間41に供給された油は、ロール外套4の回転に伴ってロール外套4の内周面に沿って連れ回り、この連れ回った油(リミング油)8aは摺接部7に激しく衝突して、一部は摺接部7内に供給されるものの残りは回転方向上流側に跳ね返る。油回収装置9Bでは、この跳ね返った油8bを回収パン20に回収して油タンク91に戻すようになっている。
【0034】
なお、図示しないが、油タンク91では、温度管理装置や油浄化装置(例えば、フィルタ)が装備され、戻ってきた油を浄化し、また、油温を下げるなどの温度管理をして、適切な性状にした上で、油供給装置9Aによる供給を行なうようになっている。
本発明の油回収装置9Bでは、上述の跳ね返った油8bを全て回収パン20に回収しようとするのではなく、跳ね返った油8bの一部(実線矢印を参照)を回収パン20に回収して、残りの油は、ロール外套4内の油収容空間41に戻して(破線矢印を参照)ロール外套4内で再循環させるようになっている。
【0035】
このように、本発明の油回収装置9Bでは、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油8bを、回収パン20側と油収容空間41側とに分岐させる分岐構造が備えられている。
本実施形態の分岐構造は、図1〜図3に示すように、回収パン20Aの入り口部分に設けられたガイドプレート(ガイド部材)11に形成されたガイド穴11aにより構成される。つまり、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油は、センターシャフト3Aの周面に沿って下方に流下し、もしもガイドプレート11がなければ回収パン20Aに進入するが、ここでは、ガイドプレート11が、センターシャフト3Aの周面に接続するとともに回収パン20Aの上部入り口を覆うように装備されているので、油は、ガイドプレート11の表面(ガイド面)11Aに沿って流下する。
【0036】
ただし、このガイドプレート11には、ガイド穴11aが部分的に形成されているので、ガイド穴11aに流れ込んだ油は、ガイド面11A上からその裏面側である回収パン20Aに導かれることになり、回収パン20Aから回収流路21a,21bを経て、排出管96(図5参照)から油タンク91へと回収されるようになっている。
なお、図2,図3(a)に示すように、ガイド穴11aは、ガイドプレート11に横並びに間隔を空けて設けられており、ガイドプレート11のガイド面11A上を流れる油の一部は、破線で示すように、ガイド穴11aの上を通過しないので、回収パン20Aには進まず油収容空間41に戻ることになる。
【0037】
このガイド穴11a上を通過して油収容空間41に戻る割合(ガイド穴11a部分での再循環率)は、ガイド穴11aの大きさや、ガイド穴11a上を進む油の量(図3(b)における油の高さ)や油の速度に依存し、ガイド穴11aの大きさが大きいほどガイド穴11a部分での再循環率は低下し、ガイド穴11a上を進む油の量が多いほどガイド穴11a部分での再循環率は低下し、ガイド穴11a上を進む油の流速が高いほどガイド穴11a部分での再循環率は上昇し、ガイド穴11a上を進む油の粘性率が高いほどガイド穴11a部分での再循環率は低下する。
【0038】
したがって、ガイド穴11a上を進む油の量や速度や粘性率が一定であれば、ガイド穴11aの横並び間隔及びガイド穴11aの幅の大きさ(即ち、ガイド穴11aの横方向での開口割合)とガイド穴11aの長さとの設定、換言すれば、ガイド穴11aの開口設定に応じて、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油の回収率或いは再循環率が決まることになる。
【0039】
本発明の第1実施形態にかかるロール装置用油回収装置は、上述のごとく構成されているので、ロール装置用油回収装置1Aにより、ロール外套4内で連れ回りして摺接部7に激しく衝突してロール外套4の回転方向上流側の一帯に跳ね返った油は、一部が回収パン20Aに回収され、残りがロール外套4内の油収容空間41に戻ることになる。
この摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油の回収率或いは再循環率はガイド穴11aの開口設定によって操作することができるので、想定される油の量や速度や粘性率に応じて、ガイド穴11aの開口を適宜設定することで、油の回収率或いは再循環率を所望の大きさにすることが可能になる。なお、摺接部7から跳ね返った油のうちロール外套4内を再循環させる比率(再循環率)は、50〜95%であることが好ましい。
【0040】
これにより、摺動部の潤滑について必要にして十分な性能を得ることができる範囲で油を回収するようにでき、油の回収率を適当に抑えるようにすることが可能になる。したがって、油の循環量(単位時間当たりの量)を抑えることができ、油の循環のためのポンプや配管等の機器類の高出力化や大型化を抑えることができ、装置の大型化,重量増を抑え、設備面のコスト抑制や、油循環のためのエネルギ消費の抑制を図ることもできる。
【0041】
なお、本発明の第1実施形態にかかる油循環装置9では、油供給装置9Aによる供給量(単位時間当たりの量)を油回収装置9Bによる回収量(単位時間当たりの量)に一致或いは接近させて、ロール外套4内の油量が過不足ないようにすることが必要であり、油回収装置9Bによる回収量を取得(検出又は推定)して油供給装置9Aによる供給量を調整することが好ましい。
【0042】
油回収装置9Bによる回収量は、跳ね返った油の量(単位時間当たりの量)と回収率とから決まるが、この場合、油の粘性が一定であれば、油量はロール外套4の回転速度に対応し、また、回収率を支配する油の量や速度もロール外套4の回転速度に対応することから、油回収装置9Bによる回収量をロール外套4の回転速度から推定することができ、ロール外套4の回転速度を検出し、これに応じて、油供給装置9Aによる供給量を調整することもできる。
【0043】
なお、この油回収装置9Bによる油の回収は高速運転域でのみ行なうようにして、低速運転域では、油収容空間41となるロール外套4の下部からの管により排油を回収する公知の手段を用いるように回収手法を切り替えるようにしても良い。
【0044】
(B)第2実施形態
図6〜図8に基づいて、本発明の第2実施形態にかかるロール装置用油回収装置を説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に特有の形状の部材については符号1〜5,20にBを付すが、対応する部材を一般的に示す場合はこれらの符号にBを付さない。また、ここでは、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。

図6に示すように、本実施形態に係るロール装置用油回収装置1Bが装備されるロール装置2Bは、第1実施形態とは異なる断面形状のセンターシャフト(支持体)3Bをそなえ、ロール外套4Bを内周側から周外部向に押圧するシュー5Bも第1実施形態とは異なる断面形状となっている。また、対向ロール6は、ロール外套4Bに対して真上ではなく側方にやや傾斜した方向(ここでは、右に30°ほど傾斜)に配置されている。これらの第1実施形態に対する相違は、これらのバリエーションを示すものであり、本発明の特徴とするものではない。
【0045】
本発明の油回収装置9Bは、図5に示す跳ね返った油8bを全て回収パン20に回収しようとするのではなく、跳ね返った油8bの一部(実線矢印を参照)をロール外套4内の油収容空間41に戻して(破線矢印を参照)ロール外套4内で再循環させ、残りの油を回収パン20に回収するようになっている。
本ロール装置用油回収装置1Bでは、図6に示すように、摺接部7のロール外套4Bの回転方向上流側に油回収パン20Bが配置され、摺接部7と油回収パン20Bとの間に、摺接部7からロール外套4の回転方向上流側に跳ね返った油を、補足して油回収パン20Bに案内するガイドプレート(ガイド部材)12が介装されている。
【0046】
そして、本実施形態の分岐構造は、図6〜図8に示すように、ガイドプレート12に形成されたガイド穴12aにより構成される。つまり、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油は、ガイドプレート12の表面(ガイド面)12Aに沿って下方に流下し、回収パン20Bに進入するが、ここでは、ガイドプレート12には、ガイド穴12aが部分的に形成されているので、ガイド穴12aに流れ込んだ油は、回収パン20Bには進まずガイド面12Aの裏面側に回って油収容空間41に戻り、ガイド穴12aに流れ込まない油は、ガイド面12Aに沿って回収パン20Bに導かれることになり、回収パン20Bから回収流路21c,21d,21eを経て、排出管96(図5参照)から油タンク91へと回収されるようになっている。
【0047】
したがって、この構成では、このガイド穴12aの側方を流れる油は、回収パン20Bに回収され、ガイド穴12aの下方に流下した油のみが油収容空間41に戻されることになる。
つまり、油収容空間41に戻る割合(ガイド穴12a部分での再循環率)は、第1実施形態とは逆に、ガイド穴11aの大きさが大きいほど上昇し、ガイド穴12a上を進む油の量が多いほど上昇し、ガイド穴12a上を進む油の流速が高いほど低下し、ガイド穴12a上を進む油の粘性率が高いほど上昇する。
【0048】
本発明の第2実施形態にかかるロール装置用油回収装置は、上述のごとく構成されているので、ロール装置用油回収装置1Bにより、ロール外套4内で連れ回りして摺接部7に激しく衝突してロール外套4の回転方向上流側の一帯に跳ね返った油は、一部が回収パン20Bに回収され、残りがロール外套4内の油収容空間41に戻ることになり、ガイド穴12aの大きさ設定に対する再循環率或いは回収率は第1実施形態とは逆になるが、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0049】
(C)第3実施形態
図9に基づいて、本発明の第3実施形態にかかるロール装置用油回収装置を説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に特有の形状の部材については符号1〜5,20にCを付すが、対応する部材を一般的に示す場合はこれらの符号にCを付さない。また、ここでは、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
図9に示すように、本実施形態に係るロール装置用油回収装置1Cが装備されるロール装置2Cは、第2実施形態と略同様な断面形状のセンターシャフト(支持体)3Cをそなえ、ロール外套4Cを内周側から周外部向に押圧するシュー5Cは第2実施形態とは異なる断面形状となっている。また、対向ロール6は、ロール外套4Cに対して真上に配置されている。これらの第1,2実施形態に対する相違は、これらのバリエーションを示すものであり、本発明の特徴とするものではない。
【0051】
本ロール装置用油回収装置1Cでは、図9に示すように、摺接部7のロール外套4Cの回転方向上流側に油回収パン20Cが配置され、摺接部7と油回収パン20Cとの間に、摺接部7からロール外套4Cの回転方向上流側に跳ね返った油を、補足して油回収パン20Cに案内するガイドプレート(ガイド部材)13aが介装されている。
そして、本実施形態の分岐構造は、ガイドプレート13aとシュー5Cの壁面(ロール外套4Cの回転方向上流側壁面)との間に隙間(スリット)13cにより形成されており、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油の一部は、この隙間13cから下方の油収容空間41に流下し、残りの油は、ガイドプレート13aの表面(ガイド面)に沿って下方に流下し、回収パン20Cに進入し、回収流路21c´,21d´,21e´を経て、排出管96(図5参照)から油タンク91へと回収されるようになっている。
【0052】
つまり、油収容空間41に戻る割合(再循環率)は、隙間13cの大きさが大きいほど上昇し、隙間13c上を進む油の量が多いほど低下し、隙間13c上を進む油の流速が高いほど上昇し、隙間13c上を進む油の粘性率が高いほど低下する。
本発明の第3実施形態にかかるロール装置用油回収装置は、上述のごとく構成されているので、ロール装置用油回収装置1Cにより、ロール外套4内で連れ回りして摺接部7に激しく衝突してロール外套4の回転方向上流側の一帯に跳ね返った油は、一部が回収パン20Cに回収され、残りがロール外套4内の油収容空間41に戻ることになり、隙間13cの大きさ設定に対する再循環率或いは回収率を所望の大きさにすることが可能であり、第1,2実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0053】
(D)第4実施形態
図10に基づいて、本発明の第4実施形態にかかるロール装置用油回収装置を説明する。
図10に示すように、本実施形態に係るロール装置用油回収装置1Dでは、油を案内するガイドプレート(ガイド部材)が、第1ガイド面14aaを有する第1ガイドプレート14aと、この第1ガイドプレート14aの鉛直下方に配置され、上端を第1ガイド面14aa上に間隔(スリット)14cを空けて重合させた第2ガイドプレート14bとをそなえ、分岐構造は、隙間(スリット)14cにより形成されている。
【0054】
したがって、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油の一部は、この隙間14cから下方に流下し、残りの油は、ガイドプレート14aのガイド面14aa上からガイドプレート14bの上面(ガイド面)14bb上に流れ込んで、ガイド面14bbに沿って下方に流下するようになっている。
なお、隙間14cから下方に図示しない回収パン20が配置され、ガイド面14bbに沿って下方に流下する下方に油収容空間41が配置されていれば、油収容空間41に戻る割合(再循環率)は、隙間143cの大きさが大きいほど低下し、隙間13c上を進む油の量が多いほど上昇し、隙間14c上を進む油の流速が高いほど低下し、隙間14c上を進む油の粘性率が高いほど上昇する。
【0055】
或いは逆に、隙間14cから下方に油収容空間41が配置され、ガイド面14bbに沿って下方に流下する下方に図示しない回収パン20が配置されていれば、油収容空間41に戻る割合は、隙間14cの大きさが大きいほど上昇し、隙間14c上を進む油の量が多いほど低下し、隙間14c上を進む油の流速が高いほど上昇し、隙間14c上を進む油の粘性率が高いほど低下する。
【0056】
本発明の第4実施形態にかかるロール装置用油回収装置は、上述のごとく構成されているので、ロール装置用油回収装置1Cにより、ロール外套4内で連れ回りして摺接部7に激しく衝突してロール外套4の回転方向上流側の一帯に跳ね返った油は、一部が回収パン20に回収され、残りがロール外套4内の油収容空間41に戻ることになり、第1〜3実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0057】
(E)第5実施形態
図11に基づいて、本発明の第5実施形態にかかるロール装置用油回収装置を説明する。
図11に示すように、本実施形態に係るロール装置用油回収装置1Eでは、油を案内するガイドプレート(ガイド部材)が、第1ガイド面15aaを有する第1ガイドプレート15aと、この第1ガイドプレート15aの鉛直下方に延在し、上端を第1ガイド面15aaと隙間(スリット)15cを空けて同一面上に配置された第2ガイドプレート15bとをそなえ、分岐構造は、隙間(スリット)15cにより形成されている。
【0058】
したがって、摺接部7で回転方向上流側に跳ね返った油の一部は、この隙間15cから下方に流下し、残りの油は、ガイドプレート15aのガイド面15aa上からガイドプレート15bの上面(ガイド面)15bb上に流れ込んで、ガイド面15bbに沿って下方に流下するようになっている。
なお、隙間15cから下方に図示しない回収パン20が配置され、ガイド面15bbに沿って下方に流下する下方に油収容空間41が配置されていれば、油収容空間41に戻る割合(再循環率)は、隙間15cの大きさが大きいほど低下し、隙間15c上を進む油の量が多いほど上昇し、隙間15c上を進む油の流速が高いほど上昇し、隙間15c上を進む油の粘性率が高いほど上昇する。
【0059】
或いは逆に、隙間15cから下方に油収容空間41が配置され、ガイド面15bbに沿って下方に流下する下方に図示しない回収パン20が配置されていれば、油収容空間41に戻る割合は、隙間15cの大きさが大きいほど上昇し、隙間15c上を進む油の量が多いほど低下し、隙間15c上を進む油の流速が高いほど低下し、隙間15c上を進む油の粘性率が高いほど低下する。
【0060】
本発明の第5実施形態にかかるロール装置用油回収装置は、上述のごとく構成されているので、ロール装置用油回収装置1Cにより、ロール外套4内で連れ回りして摺接部7に激しく衝突してロール外套4の回転方向上流側の一帯に跳ね返った油は、一部が回収パン20に回収され、残りがロール外套4内の油収容空間41に戻ることになり、第1〜4実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0061】
(F)第1,2実施形態にかかる変形例
上述の第1,2実施形態では、ガイド穴の開口が固定されているが、図12に示すように、2枚のガイドプレート(ガイド部材)16a,16bを重合させ、いずれか一方のガイドプレート16a又は16bに形成されたガイド穴16cを他方のガイドプレート16b又は16aにより部分的に閉塞できるようにするとともに、どちらかガイドプレートをスライドさせることで互いに相対動できるようにして、ガイド穴16cの開口度合を可変にするように構成しても良い。これにより、ガイド面16aa,16bb上を進む油と、下方に流れる油とへの分岐状態を、適宜の割合に調整することができる。なお、スライド方向は、図示する流れ方向の他、これと垂直な幅方向でも良い。
【0062】
(G)第4,5実施形態にかかる変形例
上述の第4,5実施形態ではスリット14c,15cの開口幅が固定されているが、図13,図14に示すように、2枚のガイドプレート(ガイド部材)14a,14b,15a,15bの一方を可動(スライド又は旋回)にすることで、スリット14c,15cの開口幅の開口度合を可変にするように構成しても良い。これにより、分岐状態を、適宜の割合に調整することができる。
【0063】
(H)その他
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、各実施形態に係るロール装置において、各実施形態ロール装置用油回収装置の他に、他のロール装置用油回収装置をさらに装備する構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では説明していないが、各ガイドプレート(ガイド部材)や油回収パンは、ロール幅方向に延在させるが、ロール端部は支持構造など構造が複雑になっているので、この部分を避けて設置することが好ましい。
また、分割シューはシューの相互間から油回収パンに流れ込まず再循環に回る油量の割合が単一シューよりも大きいので、上記の再循環率等を設定する場合これらの特性を考慮することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態としてのロール装置用油回収装置を説明する断面図(ロール装置をロール軸方向に垂直な面で切断した断面図)である。
【図2】本発明の第1実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートの正面図(図1のA矢視図)である。
【図3】本発明の第1実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する図であって、(a)はガイドプレートの模式的正面図、(b)はガイドプレートの模式的断面図(図1のA矢視部分の拡大図)である。
【図4】本発明の各実施形態にかかるシューを説明する模式的斜視図であって、(a)は分割シューを示し、(b)は単一シューを示す。
【図5】本発明の各実施形態にかかるロール装置用油循環装置を説明する模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態としてのロール装置用油回収装置を説明する断面図(ロール装置をロール軸方向に垂直な面で切断した断面図)である。
【図7】本発明の第2実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートの正面図(図6のB矢視図)である。
【図8】本発明の第2実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する図であって、(a)はガイドプレートの模式的正面図、(b)はガイドプレートの模式的断面図(図6のB矢視部分の拡大図)である。
【図9】本発明の第3実施形態としてのロール装置用油回収装置を説明する断面図であり、(a)はロール装置をロール軸方向に垂直な面で切断した断面図、(b)は図9(a)の要部拡大図である。
【図10】本発明の第5実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する図であって、(a)はガイドプレートの模式的正面図、(b)はガイドプレートの模式的断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する図であって、(a)はガイドプレートの模式的正面図、(b)はガイドプレートの模式的断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する模式的な斜視図である。
【図13】本発明の第8実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する模式的断面図(図10(b)に対応する図)である。
【図14】本発明の第9実施形態としてのロール装置用油回収装置のガイドプレートを説明する模式的断面図(図11(b)に対応する図)である。模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B,1C ロール装置用油回収装置
2,2A,2B,2C ロール装置
3,3A,3B,3C センターシャフト(支持体)
4,4A,4B,4C ロール外套
5,5A,5B,5C シュー
50 単一シュー
51 分割シュー
52 加圧シリンダ
6 対向ロール
7 摺接部
8,8a,8b 油
9A 油供給装置
9B 油回収装置
91 油タンク
92 供給管
93 ポンプ
94a バルブ
96 排出管
97 ポンプ
20,20A,20B,20C 回収パン
11,12,13a,14a,14b,15a,15b ガイドプレート(ガイド部材)
11A,12A,14aa,14bb,15aa,15bb ガイド面
11a,12a ガイド穴
13c,14c,15c 隙間(スリット)
41 油収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止した支持体と、前記支持体の周囲に配設されて回転するロール外套と、前記支持体に支持され前記ロール外套を内周側から周外方向に押圧するシューとをそなえたロール装置に装備され、前記ロール外套内の油を回収するロール装置用油回収装置であって、
前記ロール外套内における前記シューの前記ロール外套への摺接部よりも前記ロール外套の回転方向上流側に設けられ、前記摺接部から前記回転方向上流側に跳ね返った油を案内するガイド部材と、
前記の跳ね返った油を回収する油回収パンと、
前記ガイド部材により油を前記ロール外套内の油収容空間側と前記油回収パン側とに分岐させる分岐構造と、をそなえている
ことを特徴とする、ロール装置用油回収装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させるガイド面を有するガイドプレートであって、
前記分岐構造は、前記ガイドプレートに部分的に形成され、前記ガイド面上を流下する油を前記ガイド面上からその裏面側に導くガイド穴であって、
前記ガイド穴に導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記ガイド穴を経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載のロール装置用油回収装置。
【請求項3】
前記ガイド穴の開口面積を調整する開口調整機構がそなえられている
ことを特徴とする、請求項2記載のロール装置用油回収装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させるガイド面を有するガイドプレートであって、
前記分岐構造は、前記ガイドプレートに油の流下方向に交差する方向に延設され、前記ガイド面上を流下する油を前記ガイド面上からその裏面側に導くスリットであって、
前記スリットに導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載のロール装置用油回収装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、上流端を前記シューに接近してそなえ前記の跳ね返った油を案内するガイド面を有するガイドプレートであって、
前記分岐構造は、前記ガイド面の上流端と前記シューとの間の隙間として構成されるスリットであって、
前記スリットに導かれずに前記ガイド面上を流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記ガイド面の裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載のロール装置用油回収装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前記の跳ね返った油を流下させる第1のガイド面を有する第1のガイドプレートと、前記第1のガイドプレートの下流側に配置され前記第1のガイド面を流下した油をさらに流下させる第2のガイド面を有する第2のガイドプレートと、から構成され、
前記分岐構造は、前記第1のガイドプレートと前記第2のガイドプレートとの間に、油の流下方向に交差する方向に延設され、前記第1のガイド面上を流下する油を前記第1のガイド面上からその裏面側に導くスリットであって、
前記スリットに導かれずに前記第1のガイド面から前記第2のガイド面上に流下する油の流路下流側と前記スリットを経て前記裏面側に導かれた油の流路下流側とのうち、いずれか一方が前記油回収パンに接続され、他方が前記油収容空間に接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載のロール装置用油回収装置。
【請求項7】
前記スリットの開口幅を調整する開口調整機構がそなえられている
ことを特徴とする、請求項4〜6の何れか1項に記載のロール装置用油回収装置。
【請求項8】
前記分岐構造は、前記の摺接部から跳ね返った油を予め設定された比率で前記ロール外套内の鉛直下方に導き前記ロール外套内を再循環させると共に、残りの油を前記油回収パンに導くように構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載のロール装置用油回収装置。
【請求項9】
前記の摺接部から跳ね返った油のうち前記ロール外套内を再循環させる前記比率は、50〜95%である
ことを特徴とする、請求項8記載のロール装置用油回収装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえた、ロール装置用油循環装置であって、
前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)は、前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)に相当するように設定されている
ことを特徴とする、ロール装置用油循環装置。
【請求項11】
前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量は、前記ロール外套内の下部における油面の高さが予め設定された範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする、請求項10記載のロール装置用油循環装置。
【請求項12】
前記油供給装置による前記ロール外套内への油供給量は、前記ロール外套の内周に沿って連れ回りする油膜の厚みが予め設定された範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする、請求項10記載のロール装置用油循環装置。
【請求項13】
請求項10〜12の何れか1項に記載のロール装置用油循環装置を自動で制御するロール装置用油循環制御装置であって、
前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)を推定する油回収量推定手段と、
前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)が、前記油回収量推定手段により推定された前記油回収量に一致する又は近づくように前記油供給装置による前記油供給量を調整する油供給量調整手段と、を備えている
ことを特徴とする、ロール装置用油循環制御装置。
【請求項14】
請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえたロール装置用油循環装置を制御する方法であって、
前記油回収装置による前記ロール外套内からの油回収量(単位時間当たりの量)を推定する油回収量推定ステップと、
前記ロール外套内への油供給量(単位時間当たりの量)が、前記油回収量推定ステップにより推定された前記油回収量に一致する又は近づくように前記油供給装置による前記油供給量を調整する油供給量調整ステップと、を備えている
ことを特徴とする、ロール装置用油循環装置の制御方法。
【請求項15】
請求項8又は9記載のロール装置用油回収装置と、前記油回収装置により回収された油を再利用処理して前記ロール外套内に供給するロール装置用油供給装置とをそなえたロール装置用油循環装置を制御する方法であって、
前記ロール外套の回転速度を検出又は推定により取得する回転速度取得ステップと、
前記油供給装置による前記油供給量を前記ロール外套の回転速度に応じて調整する制御する油供給量調整ステップと、を備えている
ことを特徴とする、ロール装置用油循環装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−205421(P2007−205421A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23136(P2006−23136)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】