説明

ロール

【課題】コンビロールにおいて大きなトルクが、隣接するリング間で、リング間の滑りを信頼可能な方法で防止する、摩擦ジョイントを介して伝達される。
【解決手段】本発明は、ロールシャフト(1)と、ロールシャフトに設置されたロールリング(2)とを具備する、コンビロールに係り、ロールリングに対して、スペーサーリング(3)等の少なくとも1つの別のリングが軸方向において押圧されており、前記リングの接触面(11)が、お互いに対して押圧されて、トルク伝達摩擦ジョイントとして作用する。端部接触面(11)間の個々のインターフェースにおいて、前記リングの任意のものにおける最も硬質の材料に比べてより硬質な材料の多数の小さな粒が分配されており、粒は、接触面(11)の各々に部分的に貫通する目的を有して、摩擦ジョイントのトルク伝達能力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール(回転)シャフトと、少なくとも1つの別のリングが軸方向にそれに対して押圧されていて且つ前記ロールシャフトに設置される、ロールリングと、を具備する、コンビ(組み合わせ)ロール(回転体)に係り、お互いに対して押圧される前記リングの端部接触面は、トルク伝達摩擦ジョイント(連結部)として作用する。
【背景技術】
【0002】
一般的にコンビロールは、中間スペーサー(間隔)リングにより分離状態で保持される、2つ以上のロールリングを具備しており、リングの全体のセット(組)は、一方で例えばロールシャフトの肩部等の固定式ストップ(停止)リングにより、更にもう一方で内ネジを介してシャフトの雄ネジに締結されても良い、ロックナットにより、ロールシャフトに固定状態で保持される。また、ロックナットとロールリング及びスペーサーリングのセット(組み合わせ)との間において、バネと共に追加のリングが、それぞれ設置されても良い。
【0003】
多くの場合において、ロールリングは、セメントで固められたカーバイド(炭化物)等の硬質材料により製作される一方で、中間のスペーサーリングは、好適には鋼又は鋳鉄等のより軟質の又はより延性の材料により製作される。かなりのトルクが、ロールシャフトからロールリングに伝達されなければならない。ロールリングが、もっぱらセメントで固められたカーバイドにより製作される場合には、トルクの伝達は、ロックナットから固定式ストップ(停止)リングへ、個別のリング間の端部接触面を介して力の軸方向の(円筒状の)列(トレイン)により通常行われる。より詳細には、トルクは、個別のリングから隣接するリングへ、これらのインターフェース(接続部)における摩擦作用により伝達され、そこ(インターフェース)では、リングの端面は、隣接するリングの協働する端面に対して押圧される。力の列全体を通してこの目的を管理するために、リング間の個別のインターフェース又は摩擦ジョイント(連結部)は、強力でなければならない、即ち、お互いに対してリングの滑りなしで、トルクを伝達可能でなければならない。
【0004】
既知のコンビロール(例えば、米国特許第5735788号及び米国特許第6685611号参照)において、個別のインターフェースの端面は、金属であるので、個別のリングを形成するはずである、金属製ブランク(白紙体)の、丸削り(ターニング)及び/又は研磨等の機械加工により該面が形成される。言い換えれば、鋼のスペーサーリングの端面は、鋼表面である一方で、セメントで固められたカーバイドのロールリングの端面は、セメントで固められたカーバイド表面である。表面仕上げ及び異なる材料の性質に依存して、その様な表面間の摩擦は、粗悪になる可能性があり、リングがお互いに対して滑る状態になる場合がある。既知のコンビロールの別の欠点は、ロールリングと共にスペーサーリングが、リングの内側からそれの外側まで、即ち、ロールシャフトの外皮表面から個別のリングの外側円筒表面まで、の全経路を半径方向に伸張する、端面により形成されることである。端面のこの設計では、スペーサーリングの内側と外側との間のほぼ半分に存在する区域において、即ち、ロールシャフトの外皮表面の比較的近くにおいて、トルクが伝達される。更に、端部接触面の間のインターフェース(接続部)における表面圧力は、接触表面が比較的大きいために、極めて低くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既知のコンビロールの上記の欠点を取り除き、更に改善されたロールを提供することを目的とする。従って、本発明の第1の目的は、大きなトルクが、隣接するリング間において、リング間の滑りを信頼可能な方法で防止する、摩擦ジョイントを介して伝達されても良い、コンビロールを提供することである。言い換えれば、本発明は、ロールのリング間において強力で且つ効果的な摩擦ジョイント(連結部)を提供することを目的とする。本発明のその他の目的は、単純な要素により改善された摩擦ジョイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従がい、独立請求項1の特徴部分に規定された形態により、少なくとも第1の目的が実現される。本発明によるロールの好適な実施の形態は、従属請求項において更に規定される。
本発明の請求項1の形態において、ロールシャフト(1)と前記ロールシャフトに設置されたロールリング(2)とを具備するロールは、ロールリングに対して、少なくとも1つの別のリング(3)が軸方向において押圧されており、前記リングの端部接触面(1)が、お互いに対して押圧されて、トルク伝達摩擦ジョイントとして作用しており、接触面(11)間のインターフェース(接続部)において、前記リングの任意のものにおける最も硬質な材料に比べて、より硬質な材料の多数の小さな粒が分配されており、前記粒は、各接触面(11)に部分的に貫通する目的を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1において、ロール(回転体)は、駆動可能なロール(回転)シャフト1と、複数のロールリング2と、複数のスペーサー(間隔)リング3とを具備するように図示される。ロールシャフト1は、中心軸線Cにより規定される回転対称な基本的形状を有する。
【0008】
リング2,3のセット(組み合わせ)は、実施例においてリング形状の肩部の形である、固定式ストップ(停止)リング4と前記シャフトの対向する端部にあるロックナット5との間において所定の位置に保持される。ロックナット5は、内ネジ(図示されない)を有しており、前記内ネジは、ロールシャフトの外ネジに締結されても良い。ロックナット5と第1のロールリング2との間に、この場合においては、リング7によりロックナットから分離される、動的バネ6が更に設けられる。更に、ロックナットにおいて、周方向において間隔を開けて離れる多数の調整デバイス(要素)8が設けられており、その調整デバイス(要素)8により、バネ6のバネ力が調整されても良い。
【0009】
例において、ロールリング2は、固体のセメントで固められたカーバイド(炭化物)により形成され、他方でスペーサーリング3は、例えば鋼等のより軟質な金属で形成されると想定する。各個別のロールリング2は、一方で外側円筒面及び内側円筒面9,10により、他方で対向する端面11により区切られており、各端面11は、平らで、中心軸線Cに対して垂直に伸張する。各端面11は、外側円形エッジライン(縁部線)12により外方向で制限されており、内側円形エッジライン(縁部線)13により内方向で制限される。
【0010】
類似の状態において、個別のスペーサーリング3(図2参照)は、リングの外径を決定する外側円筒面15と、リングの内径を決定する内側円筒面又は孔エッジ(縁部)面10と、リング形状であって且つ中心軸線Cに対して垂直に伸張する、2つの対向する平坦端面11とにより区切られる。
【0011】
図示されるロールの今までの説明に関する限り、同じものは、基本的に既知である(しかし、スペーサーリング3の設計は除く)。
【0012】
本発明の形態に従がい、各対の端部接触面11間の個別のインターフェース(接続部)は、お互いに対して押圧されており、任意のリングの最も硬質な材料に比べて、より硬い材料の多数の小粒が分配されている。粒は、例えば糊等の粘性流体において分散されることが好ましい。図3において、3つのリングは、お互いに間隔が離れた状態で示されており、スペーサーリング3の端部接触面11において、糊の薄層14が示されており、糊の薄い層14は、硬質粒を含み、例えば塗装等の適切な方法で表面に適用される。これとは別に、硬質粒は、メッキ技術を使用して適用されても良い。
【0013】
リング2,3が、ロックナット5及び調整デバイス8により、お互いに対して全力で押圧されると、糊に含まれる粒は、図4に示されているように、端部接触面11の各々に部分的に貫通する。個々の粒はその後、接触面間において小さな機械的橋(ブリッジ)として、摩擦ジョイント(連結部)のトルク伝達能力を半径方向で改善するような状態で、作用する。
【0014】
インターフェース(接続部)における粒は、10〜125μm、好適には25〜100μmの平均粒子寸法を有さなければならない。適切には、より粗悪な粒は、接触面が粗い場合に使用される。
【0015】
この場合においては、ロールリングが、セメントで固められたカーバイドにより形成される場合に、粒は、ダイアモンド、立方晶窒化ホウ素又はセラミック等であることが好ましくても良い。
【0016】
本発明の好適な実施の形態に従がい、個々のスペーサーリング3(図2参照)は、個々の端面11の内側限界エッジライン(縁部線)13が、ロールシャフトの外径に比べてより大きな状態、即ち孔エッジ(縁部)面10の直径に比べてより大きな状態で、形成されている。その様な状態において、与えられた外径に関して端面11の総面積は、小さくなり、それにより隣接するロールリングの端面に対する表面圧力は、大きくなる。更にまた、力伝達区域、即ちエッジライン12,13間の中間あたりの仮想の円形ライン(線)は、既知のスペーサーリングにおける対応する力伝達区域との比較において、外方向に移動させられる。言い換えれば、有効なトルクアームは、これが中心軸線Cと力伝達区域との間の半径方向の距離により決定されるので、増大される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明によるコンビロールを通る部分的長手方向断面図である。
【図2】図2は、前記ロールに具備されるスペーサーリングの立体図である。
【図3】図3は、2つのロールリングから分離されたスペーサーリングを示す拡大詳細断面図であり、それらに対して押し付けられる前の状態である。
【図4】図4は、前記リングの接触面間のインターフェースの一部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ロールシャフト
2 ロールリング
3 スペーサーリング
4 固定式ストップ(停止)リング
5 ロックナット
6 動的バネ
7 リング
8 調整デバイス
9 外側円筒面
10 内側円筒面
11 端面
12 外側エッジライン
13 内側エッジライン
14 糊の薄層
15 外側円筒面
C 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールシャフト(1)と、前記ロールシャフトに設置されたロールリング(2)と、を具備する、ロールにおいて、
前記ロールリングに対して、少なくとも1つの別のリング(3)が軸方向において押圧されており、前記リングの端部接触面(11)が、お互いに対して押圧されて、トルク伝達摩擦ジョイントとして作用しており、
前記接触面(11)間のインターフェースにおいて、前記リングの任意のものにおける最も硬質の材料に比べて、より硬質な材料の多数の小さな粒が分配されており、
前記粒は、各前記接触面(11)に部分的に貫通する目的を有することを特徴とするロール。
【請求項2】
前記粒は、粘性流体において分散させられることを特徴とする請求項1に記載のロール。
【請求項3】
前記インターフェースにおける前記粒の平均粒寸法は、10〜125μm、好適には25〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール。
【請求項4】
前記ロールリングは、セメントで固めたカーバイドにより製作されること、及び
前記粒は、ダイアモンド、立方晶窒化ホウ素又はセラミックのグループから選択される材料であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のロール。
【請求項5】
スペーサーリング(3)の端面(11)の内少なくとも1つは、内側エッジ(13)により制限されており、その内側エッジ(13)の直径は、前記ロールシャフト(1)の外径に比べて、より大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−349173(P2006−349173A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163580(P2006−163580)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】