説明

ワイパブレード

【課題】バッキングの脱落を抑制することができるワイパブレードを提供する。
【解決手段】ブレードラバー14の幅方向両側の取付溝50a,50bにそれぞれ嵌入されたバネ材からなるバッキング42a,42bと、そのバッキング42a,42bの取付溝からの抜けを防止すべくブレードラバー14の長手方向両端部のキャップ装着部51にそれぞれ装着されたキャップ43とを備える。そして、ブレードラバー14の長手方向両端部には、キャップ43に設けられた貫通孔(キャップ側係止部)に係止する係止突起52(第1係止部)と、バッキング42a,42bに設けられた係止凹部42c,42d(バッキング側係止部)に長手方向に係止する係止凸部41e,41f(第2係止部)とが設けられ、係止突起52は、その少なくとも一部が係止凸部41eに対して長手方向にラップするように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のフロントガラスを払拭するためのワイパブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイパは、ワイパモータの駆動に基づいて作動するワイパアームと、そのワイパアームの先端部に支持されたワイパブレードとから構成されている。ワイパブレードにおいて、例えば特許文献1に示されるものでは、ワイパアームの先端部に長手方向中央が連結されるホルダ部材(レバー)と、そのホルダ部材に保持され払拭面を払拭するブレードラバーと、所定の剛性を有するとともに中央部が払拭面とは反対側に向けて凸状に湾曲形成され、ブレードラバーの幅方向両側に長手方向に沿って形成された取付溝にそれぞれ嵌入されたバネ材からなるバッキングとを備えている。ホルダ部材の長手方向両端部にはそれぞれ、幅方向(払拭方向)で対をなす一対の保持爪を有する保持部が形成されており、各保持部の保持爪にてブレードラバーの上部の基部が幅方向に把持されている。ブレードラバーは各保持部よりも長手方向に突出され、その突出部分はバッキングの弾性力にて払拭面の湾曲に自由に追従する追従端部として構成されている。このようなワイパブレードでは、複数のレバーを階層構造で連結したホルダ部材がブレードラバーと同等な長さのワイパブレードに対して、ワイパブレード高さを低く抑えることができ運転視界の妨げを防止できるとともに、部品点数を低減して安価なものとすることができる点で有利である。
【0003】
また、このようなバッキングを装着するワイパブレードにおいては、バッキングを装着したブレードラバーの長手方向両端部にキャップがそれぞれ装着されている。このキャップは、ブレードラバーに設けられた被係止部に係止されてブレードラバーの端部からの抜け止めとされている。キャップ内には、ブレードラバーの長手方向端部とともにバッキングの長手方向端部も入り込むように構成され、これにより、バッキングの取付溝からの抜け等が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−22632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなワイパブレードのブレードラバーでは、例えば、積雪等によりキャップをブレードラバーから外すような力が掛かったとき、キャップに係止されたレードラバーの端部がキャップごと長手方向外側に引っ張られる。このとき、キャップ内に入り込んでいたバッキングの端部がそのキャップの収容部から抜ける位置までブレードラバーの端部が長手方向に伸びてしまうと、バッキングが取付溝から飛び出して外れてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バッキングの脱落を抑制することができるワイパブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、払拭面を払拭するブレードラバーと、所定の剛性を有するとともに中央部が前記払拭面とは反対側に向けて凸状に湾曲形成され、前記ブレードラバーの幅方向両側に長手方向に沿って形成された取付溝にそれぞれ嵌入されたバネ材からなるバッキングと、前記バッキングの前記取付溝からの抜けを防止すべく前記ブレードラバーの長手方向両端部にそれぞれ装着されたキャップと、ワイパアームの先端部に長手方向中央が連結されるとともに、長手方向に複数並設された保持部にて前記ブレードラバーの基部を保持する長尺状のホルダ部材とを備え、前記ブレードラバーを前記ホルダ部材の前記保持部よりも長手方向外側に突出させて前記払拭面の湾曲に追従させる追従端部が構成されたワイパブレードであって、前記ブレードラバーの端部には、前記キャップに設けられたキャップ側係止部に係止する第1係止部と、前記バッキングに設けられたバッキング側係止部に長手方向に係止する第2係止部とが設けられ、前記第1係止部は、その少なくとも一部が前記第2係止部に対して長手方向にラップする、若しくは前記第2係止部よりも長手方向内側に位置するように配置されたことを特徴とする。
【0008】
この発明では、ブレードラバーの第2係止部はバッキング側係止部と長手方向に係止されるため、ブレードラバーの第2係止部から長手方向内側の部位は、第2係止部よりも長手方向外側の部位と比べて長手方向外側に伸びにくい。そして、ブレードラバーにおいてキャップ側係止部に係止される第1係止部は、バッキング側係止部に係止される第2係止部に対して少なくとも一部が長手方向にラップする、若しくは該第2係止部よりも長手方向内側に位置するように配置される。これにより、例えば積雪等によってキャップに長手方向外側への荷重が掛かっても、バッキングの長手方向端部がキャップ内に入り込んだ状態を維持しやすくすることができ、その結果、バッキングの脱落を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のワイパブレードにおいて、前記第2係止部は、前記ブレードラバーの両端部にそれぞれ設けられたことを特徴とする。
この発明では、バッキングに係止される第2係止部がブレードラバーの両端部にそれぞれ設けられるため、ブレードラバーの各第2係止部間の部位(各第2係止部の長手方向内側の部位)がバッキングの剛性によって長手方向にほぼ伸びない構成となる。このため、ブレードラバーの第1係止部の少なくとも一部が第2係止部に対して長手方向にラップするように配置、若しくは第1係止部を第2係止部よりも長手方向内側に配置することによるバッキングの脱落抑制効果をより効果的に得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、一対の前記バッキングは、一方の前記バッキングと他方の前記バッキングとで長手方向端部からの距離が異なる位置にそれぞれ前記バッキング側係止部を有しており、該各バッキング側係止部は、前記取付溝に対する一対の前記バッキングの正規装着状態においてのみ前記第2係止部に係止されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、各バッキング側係止部は、取付溝に対するバッキングの正規装着状態においてのみ第2係止部に係止されるため、バッキングの長手方向の基端と先端とが逆向きで取付溝に装着されるといった各バッキングの誤組付けを防止することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記キャップが装着される前記基部の長手方向両端部は、その上面が凹んでいることを特徴とする。
【0013】
この発明では、キャップが装着される基部の長手方向両端部の上面が凹んでいるため、キャップを基部の上面よりも上方に突出させない構成、又はキャップの上方への突出量が小さく抑えられた構成とすることが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記第1係止部は、前記ブレードラバーの前記基部の上面に設けられたことを特徴とする。
【0015】
この発明では、基部の上面はブレードラバーの幅方向側部に比べて設計自由度が高いため、基部の上面では第1係止部を例えば幅方向に大きく設定してキャップ側係止部との係止面積を広くとることが容易となり、その結果、ブレードラバーに対してキャップを強固に係止させることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のワイパブレードにおいて、前記第1係止部は、前記基部の上面に突出形成された突起であり、該第1係止部に係止される前記キャップ側係止部は上下方向に貫通する貫通孔であることを特徴とする。
【0017】
この発明では、第1係止部が基部の上面に突出形成された凸部であるため、基部の上面に凹部を形成する場合に必要とされるスライド型など複雑で高価な金型を不要とすることができ、その結果、成形型にかかる費用を削減することができる。また、キャップ側係止部が貫通孔であるため、キャップの内側に貫通孔でない凹部を形成することと比較して容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
従って、上記記載の発明によれば、バッキングの脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の車両用ワイパの斜視図。
【図2】ワイパブレードの分解斜視図。
【図3】(a)ワイパブレードの平面図、(b)ワイパブレードの側面図。
【図4】図3(b)におけるA−A断面図。
【図5】(a)ブレードラバーの端部を示す斜視図、(b)同図(a)においてキャップを外した状態を示す斜視図。
【図6】キャップの断面図。
【図7】ブレードラバーの係止突起と係止凸部の位置関係を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車のフロントガラスの払拭面Gに付着した雨滴等を払拭する車両用ワイパ10を示す。車両用ワイパ10は、車両(図示略)に連結されたワイパアーム11と、そのワイパアーム11の先端部に支持され払拭面Gに接触配置されるワイパブレード12とから構成されている。ワイパブレード12は、ワイパモータ(図示略)の駆動に基づくワイパアーム11の作動にて往復揺動し、払拭面G上の払拭を行うものである。尚、ワイパブレード12は、ワイパアーム11に設けられたスプリング(図示略)にて払拭面Gに押圧されるようになっている。
【0021】
図1、図2及び図3(a)(b)に示すように、ワイパブレード12は、長尺状のホルダ部材13と、ホルダ部材13に保持されたゴム材よりなるブレードラバー14とから構成されている。ブレードラバー14は、ホルダ部材13よりも長い長尺状をなし、払拭面Gを払拭するためのものである。ホルダ部材13はブレードラバー14をその長手方向中間部で保持しており、ホルダ部材13の長手方向両端(第1端13a及び第2端13b)からそれぞれブレードラバー14が突出している。
【0022】
樹脂材料よりなるホルダ部材13は、上壁部21と、幅方向(払拭方向であって、長手方向と直交する方向)で対をなす側壁部22とを有し、その上壁部21と側壁部22とがホルダ部材13の外観を構成している。また、ホルダ部材13の長手方向直交断面は、上壁部21と側壁部22とから全体的に払拭面G側に開口する略U字状に形成されている。また、図3(b)に示すように、上壁部21は、長手方向両端部に向かうにつれて下方(払拭面G側)になだらかに湾曲しており、ホルダ部材13の長手方向両端部は、側面視において先細りするような形状をなしている。尚、ホルダ部材13の長手方向中間部分において、側壁部22とブレードラバー14との間には間隙Sが設けられている。
【0023】
ホルダ部材13の長手方向中央部には、図3(a)に示す平面視において、長手方向が長辺となる長方形状の開口部23が形成されている。開口部23の幅方向の対向壁部23a間には、円柱状の連結軸24が掛け渡されるようにして固定されている。尚、対向壁部23aは、ホルダ部材13の側壁部22の一部を構成している。開口部23には、ワイパアーム11の先端部との連結を図るための図1に示す連結部材25が嵌挿され、連結軸24に対して回動可能に装着される。
【0024】
一方、ワイパアーム11の先端部は、払拭面G側が自由端のUフック状に形成されており、その先端部は、開口部23に装着された連結部材25を介して連結軸24に係止され、連結部材25に対して着脱可能となっている。そして、図1に示すように、ワイパアーム11は、ホルダ部材13と連結されたその先端部からワイパブレード12の基端側方向に延出されている。
【0025】
図3(b)に示すように、ホルダ部材13は、長手方向の基端部(第1端13a)の近傍に第1保持部31aを、先端部(第2端13b)の近傍に第2保持部31bをそれぞれ有している。尚、ホルダ部材13は、各保持部31a,31bからブレードラバー14の長手方向両端部に向かって更に延出された形状となっている。
【0026】
各保持部31a,31bは互いに同様の構成からなり、図4に示すように、幅方向で対をなす保持爪32のペアから構成されている。各保持爪32は、ホルダ部材13の各側壁部22から下方(払拭面G側)に延びて互いに対向する挟持壁部32aと、その挟持壁部32aの先端(下端)から幅方向内側(ブレードラバー14の保持溝41c内)に延びる保持片32bとから断面L字状に形成されている。尚、前記上壁部21及び各側壁部22も各保持部31a,31bの一部を構成している。また、各保持部31a,31bの挟持壁部32a間には、幅方向に掛け渡された架設部33が形成されている。この架設部33は、ホルダ部材13がワイパアーム11より受ける払拭面G側への押圧力をブレードラバー14に伝えるためのものである。
【0027】
一方、ブレードラバー14の上部(反払拭面側の部位)には、各保持部31a,31bの保持爪32のペアにて幅方向に把持される基部41が長手方向全体に亘って形成されている。基部41の幅方向両側面にはそれぞれ、長手方向に延びる取付溝50a,50bが形成されている。この各取付溝50a,50bには、平板状のバネ材料よりなるバッキング42a,42bが嵌め込まれている。このバッキング42a,42bは、ホルダ部材13を介してワイパアーム11より受ける払拭面Gへの押圧力を長手方向に分散させる役目を果たすものである。また、ブレードラバー14の両端部には、バッキング42a,42bの脱落防止用の樹脂製のキャップ43が長手方向からそれぞれ装着されている。
【0028】
図2に示すように、バッキング42a,42bは、所定の剛性を有して全体として長手方向中央部が払拭面Gとは反対側に向けて凸状に湾曲形成されている。尚、ブレードラバー14の先端側と基端側が払拭する払拭面Gの湾曲形状は相違するため、各バッキング42a,42bにおいても、その先端側と基端側の湾曲形状が相違するもの(バッキング42a,42bの先端側と基端側とでは長手方向に非対称な湾曲形状)となっている。そのため、各バッキング42a,42bの誤組付けを防止する必要がある。
【0029】
本実施形態では、各バッキング42a,42bの長手方向両端側の幅方向内側縁において矩形状に切り欠かれた係止凹部42c,42d(バッキング側係止部)がそれぞれ形成され、更に図2における手前側のバッキング42aに形成される各係止凹部42cが奥側のバッキング42bに形成される各係止凹部42dよりも長手方向外側に配置されている。これに対応して、図7に示すように、長手方向両端部における各取付溝50a,50b内にそれぞれ係止凸部41e,41f(第2係止部)が形成され、更にバッキング42aが装着される取付溝50a(図7中、手前側の取付溝)に形成される各係止凸部41eが奥側の取付溝50bに形成される各係止凸部41fよりも長手方向外側に配置されている。そして、バッキング42aが手前側の取付溝50aに装着され、もう一方のバッキング42bが奥側の取付溝50bに装着された正規装着状態において各係止凸部41e,41fが各係止凹部42c,42d内に挿入可能となっている。これにより、バッキング42aを先端側と後端側とを反対として奥側の取付溝50bに装着することができず、各バッキング42a,42bの誤組付けが防止されている。
【0030】
図4に示すように、ブレードラバー14の基部41は、各保持部31a,31bにおいて架設部33及び一対の保持爪32(挟持壁部32a及び保持片32b)の内側の収容空間に収容されている。そして、基部41の上面41bは架設部33と、基部41の幅方向側面は挟持壁部32aと、基部41の下面は保持片32bとそれぞれ当接し、これにより、基部41が各保持部31a,31bにて囲われるように保持されるようになっている。尚、保持片32bは、ブレードラバー14の幅方向両側において取付溝50a,50bよりも払拭面G側の位置に形成された保持溝41cにそれぞれ挿通されている。また、ブレードラバー14は、基部41の下面から薄肉状のネック部41dを介して延出された断面逆三角形状の払拭部44を有している。そして、払拭部44の下端が払拭面Gと接触する状態でワイパブレード12が動作することで払拭面Gが払拭される。
【0031】
また、図1及び図3(a)(b)に示すように、ブレードラバー14は、ホルダ部材13の各保持部31a,31bよりも更に長手方向外側に向かってそれぞれ突出しており、その突出部分は取付溝50a,50bに嵌め込まれたバッキング42a,42bと共に払拭面Gの湾曲に自由に湾曲追従する追従端部Xを構成している。即ち、ブレードラバー14の各追従端部Xは、ホルダ部材13にて保持されない自由端であるが、バッキング42a,42bの弾性力にて払拭面Gの湾曲に追従するようになっている。尚、各保持部31a,31bは、ブレードラバー14の長手方向を略3等分する位置に配置されるようホルダ部材13に設けられている。
【0032】
尚、図3(b)に示すように、ホルダ部材13の長手方向中間部分において、側壁部22とブレードラバー14の基部41の上面41bとの間には間隙Sが設けられている。これにより、バッキング42a,42bが装着されたブレードラバー14の追従端部Xが払拭面Gに湾曲追従した際に、ブレードラバー14の中央部の上面が凸状に突出することを妨げないように(湾曲追従を妨げないように)間隙Sが機能している。
【0033】
また、基部41と払拭部44との間には、幅方向両側にそれぞれ延出された延出部45が形成されている。各保持部31a,31bの保持爪32の下端の屈曲部分(保持片32b)は、基部41と延出部45とで形成される溝部分(保持溝41c)に入り込むようになっており、各保持爪32(保持片32b)の下側(払拭面G側)に延出部45が位置するようになっている。延出部45は、各保持部31a,31bに保持される箇所に対応して図3(b)に示す側面視で2カ所に設けられている。言い換えれば、ブレードラバー14の各保持部31a,31bに保持される箇所に対応する部分以外の長手方向の大部分が、延出部45よりも延出量が削減された非延出部46(図3(b)の拡大図を参照)となっている。
【0034】
また、図2に示すように、ブレードラバー14の基部41の上面41bには、第1保持部31aの架設部33の長手方向両端部にそれぞれ当接する一対の係合凸部47が突出形成されている。これにより、ブレードラバー14のホルダ部材13からの長手方向への抜けが防止されるようになっている。尚、第2保持部31bの架設部33と対応する箇所には係合凸部47は無く、該第2保持部31bの架設部33はブレードラバー14と長手方向に係合されない構成となっている。
【0035】
このようなワイパブレード12において、ブレードラバー14の基部41の長手方向両端部には、前記キャップ43を装着するためのキャップ装着部51がそれぞれ形成されている。図5(a)(b)に示すように、キャップ装着部51の上面51aは、基部41の長手方向中間部(キャップ装着部51以外の部位)の上面41bから長手方向外側にかけて下る傾斜面41gを経て段差状に凹んだ形状をなしている。これにより、キャップ装着部51は、基部41の長手方向中間部位よりも上下方向(払拭面Gからの高さ方向)の厚みが薄くなっている。また、キャップ装着部51の上面51aには、平面視で台形状の係止突起52(第1係止部)が形成されている。係止突起52は、長手方向外側に向かうにつれて下方に傾斜、幅狭となる形状をなしている。
【0036】
キャップ43は、図5及び図6に示すように、キャップ装着部51の上面51aを覆う上部43aと、上部43aの幅方向両端部からそれぞれ延出され基部41の幅方向両端面を覆う側部43bとを有している。各側部43bの下端部には、幅方向内側に突出する嵌入部43dが形成されており、該嵌入部43dはブレードラバー14の保持溝41c内に入り込むようになっている。また、図6に示すように、キャップ43の上部43a、側部43b、嵌入部43d及びキャップ43の端壁部43eとで構成された内部空間(図6中、長手方向の長さDを有する内部空間)がキャップ装着部51を収容する収容部43fとなっている。
【0037】
キャップ43の上部43aには、上下方向に貫通する貫通孔43c(キャップ側係止部)が形成されており、該貫通孔43cには、キャップ装着部51の係止突起52(第1係止部)が嵌り込むようになっている。これにより、キャップ43がキャップ装着部51の係止突起52に長手方向に係止され、キャップ43のキャップ装着部51からの抜け止めとなっている。この係止突起52は、図7に示すように、その一部が取付溝50aの係止凸部41eに長手方向においてラップする位置に配置されている。即ち、係止突起52は、上下方向の投影の一部が取付溝50aの係止凸部41eと重なるようになっている。従って、キャップ43の貫通孔43cがキャップ装着部51の係止突起52に係止された状態では、取付溝50a,50bに嵌め込まれたバッキング42a,42bの端部がキャップ43の収容部43f内に位置する構成となっている。
【0038】
尚、図5(b)に示すように、キャップ装着部51の上面51aと基部41の長手方向中間部(キャップ装着部51以外の部位)の上面41bとの高低差Hは、キャップ43の上部43aの上下方向の厚みTと略等しくなるように設定されている。これにより、キャップ43の上部43aの上面と基部41の長手方向中間部の上面41bとが同一平面に位置するように構成されている。
【0039】
以下に上記実施形態の作用について説明する。
上記のワイパブレード12では、積雪等によってキャップ43に長手方向外側への荷重が掛かったとき、ブレードラバー14のキャップ装着部51は、キャップ43に係止された係止突起52を作用点として長手方向外側に引っ張られる。ブレードラバー14においてバッキング42aに係止された各係止凸部41e(長手方向外側の2つ)から内側の部位は、平板状の金属性バネ材からなるバッキング42a,42bの剛性によって長手方向にほぼ伸びないようになっている。その一方で、各係止凸部41eよりも外側の部位は長手方向外側にゴム材からなるブレードラバー14自体の伸びとなるため比較的伸びやすくなっている。ここで、ブレードラバー14の係止突起52は、その少なくとも一部が係止凸部41eに対して長手方向にラップするように配置されているため、係止突起52に長手方向外側への荷重が掛かったとき、その荷重が係止凸部41eにも多く掛かる。このとき、係止凸部41eは、バッキング42aの係止凹部42cに対する係止によって長手方向外側への伸びが規制されているため、係止突起52を有するキャップ装着部51が長手方向外側に伸びにくくなっている。これにより、キャップ43に長手方向外側への荷重が掛かったときの、ブレードラバー14の係止突起52と係止凸部41e,41fとの長手方向の相対的な位置関係の変化が小さく抑えられる。このため、バッキング42a,42bの長手方向端部がキャップ43内の収容部43fに入り込んだ状態が維持され、その結果、バッキング42a,42bの取付溝50a,50bからの脱落が抑制されるようになっている。
【0040】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態では、ブレードラバー14の取付溝50a,50bの長手方向両端部に形成された係止凸部41e,41fがバッキング42a,42bに形成された係止凹部42c,42dと長手方向に係止される。このため、ブレードラバー14において取付溝50aの係止凸部41eから長手方向内側の部位は、該各係止凸部41eよりも長手方向外側の部位と比べて長手方向外側に伸びにくい。そして、ブレードラバー14においてキャップ43の貫通孔43cに係止される係止突起52は、係止凸部41eに対して少なくとも一部が長手方向にラップするように配置される。これにより、例えば積雪等によってキャップ43に長手方向外側への荷重が掛かっても、バッキング42a,42bの長手方向端部がキャップ43内に入り込んだ状態を維持しやすくすることができ、その結果、バッキング42a,42bの脱落を抑制することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、バッキング42a,42bに係止される係止凸部41e,41fは、ブレードラバー14の取付溝50a,50bの長手方向両端部にそれぞれ設けられるため、ブレードラバー14の各係止凸部41e,41f間の部位(各係止凸部41e,41fの長手方向内側の部位)がバッキング42a,42bの剛性によって長手方向にほぼ伸びない構成となる。このため、ブレードラバー14の係止突起52の少なくとも一部が係止凸部41eに対して長手方向にラップするように配置、若しくは係止突起52を係止凸部41eよりも長手方向内側に配置することによるバッキング42a,42bの脱落抑制効果をより効果的に得ることができる。
【0042】
(3)本実施形態では、一対のバッキング42a,42bは、一方のバッキング42aと他方のバッキング42bとで長手方向端部からの距離が異なる位置にそれぞれ係止凹部42c,42dを有しており、該各係止凹部42c,42dは、取付溝50a,50bに対するバッキング42a,42bの正規装着状態においてのみ係止凸部41e,41fに係止される。このため、バッキング42a,42bの長手方向の基端と先端とが逆向きで取付溝50a,50bに装着されるといった各バッキング42a,42bの誤組付けを防止することが可能となる。
【0043】
(4)本実施形態では、キャップ43が装着される基部41の長手方向両端部のキャップ装着部51は、その上面51aが凹んでいるため、キャップ43を基部41の上面41bよりも上方に突出させない構成、又はキャップ43の上方への突出量が小さく抑えられた構成とすることが可能となる。
【0044】
(5)本実施形態では、係止突起52は、ブレードラバー14の基部41の上面41bに設けられる。基部41の上面41bはブレードラバー14の幅方向側部に比べて設計自由度が高いため、基部41の上面41bでは係止突起52を例えば幅方向に大きく設定して貫通孔43cとの係止面積を広くとることが容易となり、その結果、ブレードラバー14に対してキャップ43を強固に係止させることが可能となる。
【0045】
(6)本実施形態では、第1係止部は、基部41の上面41bに突出形成された係止突起52であり、該係止突起52に係止されるキャップ側係止部は上下方向に貫通する貫通孔43cである。これにより、このため、基部41の上面41bに凹部を形成する場合に必要とされるスライド型など複雑で高価な金型を不要とすることができ、その結果、成形型にかかる費用を削減することができる。また、キャップ側係止部が貫通孔43cであるため、キャップ43の内側に貫通孔でない凹部を形成することと比較して容易に製造することが可能となる。
【0046】
(7)本実施形態では、キャップ装着部51の上面51aと基部41の長手方向中間部(キャップ装着部51以外の部位)の上面41bとの高低差Hがキャップ43の上部43aの上下方向の厚みTと略等しくなるように設定される。これにより、キャップ43の上部43aの上面と基部41の長手方向中間部の上面41bとが同一平面に位置するように構成でき、その結果、キャップ43に対する引っ掛かりの抑制及びワイパブレード12の外観向上に寄与できる。
【0047】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ブレードラバー14の係止突起52は、バッキング42aに係止された係止凸部41eに対して長手方向にラップするように設けられたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、係止凸部41eよりも長手方向内側に設けてもよい。特に、もう一方のバッキング42bに係止された係止凸部41fに対して長手方向にラップ、若しくは該係止凸部41fよりも長手方向内側に設ければ、キャップ装着部51を長手方向外側により一層伸びにくくすることができる。
【0048】
・上記実施形態では、ブレードラバー14の第1係止部を基部41の上面41bに突出形成された係止突起52とし、該係止突起52に係止されるキャップ側係止部を上下方向に貫通する貫通孔43cとしたが、これ以外に例えば、第1係止部を凹部とし、キャップ側係止部をキャップ43の内面に形成した凸部としてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、バッキング42a,42b側に係止凹部42c,42dを形成し、ブレードラバー14(取付溝50a,50b)側に係止凸部41e,41fを形成したが、凹凸関係は逆であってもよい。
【0050】
・上記実施形態では、キャップ43に係止される係止突起52をブレードラバー14の基部41の上面41bに設けたが、これ以外に例えば、ブレードラバー14の幅方向側部に設けてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、キャップ装着部51の上面51aが凹む形状としたが、これ以外に例えば、キャップ装着部51の上面51aと基部41の長手方向中間部の上面41bとが同一平面に位置するように構成してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、一方のバッキング42aの係止凹部42cと、他方のバッキング42bの係止凹部42dとで、バッキング42a,42bの長手方向端部からの距離を異ならせて誤組付けを防止する構成としたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、各係止凹部42c,42dのバッキング42a,42bの長手方向端部からの距離を等しく構成してもよい。また、係止凸部41e,41fをブレードラバー14の取付溝50a,50bの長手方向両端部にそれぞれ設けたが、どちらか一方の端部のみに設けてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、保持部31a,31bを2つ設けたが、これに特に限定されるものではなく、3つ以上設けてもよい。
・上記実施形態では、ホルダ部材13が1つの部材から構成されたが、これに特に限定されるものではなく、複数の部材から構成してもよい。
【0054】
・上記実施形態におけるホルダ部材13、ブレードラバー14、バッキング42a,42b及びキャップ43の形状は、構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、車両のフロントガラスを払拭する車両用ワイパ10に適用したが、これ以外に例えば、車両のリヤガラスを払拭するワイパに適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…車両用ワイパ、11…ワイパアーム、12…ワイパブレード、13…ホルダ部材、14…ブレードラバー、31a…第1保持部、31b…第2保持部、41…基部、41b…基部の上面、41e,41f…係止凸部(第2係止部)、42a,42b…バッキング、42c,42d…係止凹部(バッキング側係止部)、43…キャップ、43c…貫通孔(キャップ側係止部)、44…払拭部、50a,50b…取付溝、51…キャップ装着部、52…係止突起(第1係止部)、G…払拭面、X…追従端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭面を払拭するブレードラバーと、
所定の剛性を有するとともに中央部が前記払拭面とは反対側に向けて凸状に湾曲形成され、前記ブレードラバーの基部の幅方向両側に長手方向に沿って形成された取付溝にそれぞれ嵌入されたバネ材からなるバッキングと、
前記バッキングの前記取付溝からの抜けを防止すべく前記ブレードラバーの前記基部の長手方向両端部にそれぞれ装着されたキャップと、
ワイパアームの先端部に長手方向中央が連結されるとともに、長手方向に複数並設された保持部にて前記ブレードラバーの前記基部を保持する長尺状のホルダ部材と
を備え、前記ブレードラバーを前記ホルダ部材の前記保持部よりも長手方向外側に突出させて前記払拭面の湾曲に追従させる追従端部が構成されたワイパブレードであって、
前記ブレードラバーの端部には、前記キャップに設けられたキャップ側係止部に係止する第1係止部と、前記バッキングに設けられたバッキング側係止部に長手方向に係止する第2係止部とが設けられ、
前記第1係止部は、その少なくとも一部が前記第2係止部に対して長手方向にラップする、若しくは前記第2係止部よりも長手方向内側に位置するように配置されたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパブレードにおいて、
前記第2係止部は、前記ブレードラバーの両端部にそれぞれ設けられたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、
一対の前記バッキングは、一方の前記バッキングと他方の前記バッキングとで長手方向端部からの距離が異なる位置にそれぞれ前記バッキング側係止部を有しており、該各バッキング側係止部は、前記取付溝に対する一対の前記バッキングの正規装着状態においてのみ前記第2係止部に係止されることを特徴とするワイパブレード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記キャップが装着される前記基部の長手方向両端部は、その上面が凹んでいることを特徴とするワイパブレード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、
前記第1係止部は、前記ブレードラバーの前記基部の上面に設けられたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項6】
請求項5に記載のワイパブレードにおいて、
前記第1係止部は、前記基部の上面に突出形成された突起であり、該第1係止部に係止される前記キャップ側係止部は上下方向に貫通する貫通孔であることを特徴とするワイパブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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