説明

ワイパーアーム

【課題】アームヘッドとリテーナと軸支するリベットを廃止して、美観がよく耐食性能に優れたワイパーアームを提供する。
【解決手段】アームヘッド基端部11が駆動軸により軸支されたアームヘッド10と、先端側にワイパーブレードが装着されるリテーナ30とを備えたワイパーアームにおいて、リテーナ30の側壁に内側に向けて突出するよう設けられた軸支部34と、アームヘッド10の他端に嵌合固定されるアームヘッドカバー20と、アームヘッドカバー20がアームヘッド10の他端に嵌合固定されることで形成され、前記リテーナ30の軸支部34を軸受けするための軸受部15、25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(自動車・船舶・電車等を含む)のフロントウインドウガラスやリヤウインドウガラス或いはミラーやランプ類の表面を払拭するワイパー、特に、ワイパーアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車等の車両には、フロントウインドウガラスの表面に雨水等が降り掛かった場合、視界の確保のためにフロントウインドウガラスの表面を払拭するワイパーが取り付けされている(例えば、特開平9−193750号公報参照)。
【0003】
図8は、このような従来に係る車両用ワイパーアームを模式的に示した外観図である。車両用ワイパーアーム100は、車体に固定の駆動モータに装着された摺動可能な駆動軸(図示せず)にアームヘッド基端部111が固定されたアームヘッド110と、先端部にワイパーブレード(図示せず)を取り付けるブレード取付部131を有したリテーナ130とを、備えている。
【0004】
リテーナ130は、リテーナ130のリテーナ基端部132がアームヘッド110のアームヘッド先端部112においてリベット120にて摺動可能に軸支されており、リベット120を軸として、リテーナ130を起倒可能にしている。リテーナ130を起立させることで、ユーザがワイパーブレード(図示せず)を交換する際に、容易にリテーナ130のブレード取付部131にワイパーブレードを取り付けることができる。
【0005】
図9は、従来に係る車両用ワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。リテーナ130のリテーナ基端部132の断面は、コの字状になっており、リテーナ130のコの字状の中にアームヘッド110のアームヘッド先端部112が入り込んでいる。更に、リテーナ130のリテーナ基端部132の側面には貫通孔133を設けている。また、アームヘッド110のアームヘッド先端部112にも、同じ位置の側面に貫通孔113を設けている。リベット120を外側からリベット120の連結軸121を貫通孔133及び貫通孔113に挿入して貫通させることで、リベット120の連結軸121を軸として、アームヘッド110に対してリテーナ130を軸動することができる。
【0006】
尚、リテーナ130の軸動をスムーズに行うために、アームヘッド110の貫通孔113の全周に乾燥潤滑膜140を設けたものも有る。また、ワイパーアームには、アームヘッド110とリテーナ130とを接合するスプリング(図示せず)が設けられている。スプリングは、アームヘッド110とリテーナ130の内側(車内側)に設けられていて、図9に示す軸支部においては、スプリングがアームヘッドに干渉しないように、アームヘッドの内側にスプリング溝部117が設けられている。
【0007】
ワイパーアームは、効率よくウインドウガラスの表面を払拭するために、様々な技術が提案されているが、例えば、特許文献1では、リベットはワイパー軸に固定される固定ヘッドとワイパーアームを担持して固定ヘッドに対して回動可能な回動ヘッドとを有して、両ヘッドを一体に結合することで、ワイパーを起倒可能にするシンプルな構成が提供されている。
【0008】
また、特許文献2では、アームヘッドに設けた連結軸と、リテーナに設けた連結孔を係合させる連結部において、リテーナの側面に付着した水滴を誘導する案内リブを設けて、連結部に水滴が侵入することを防止して、低温環境下において回動部の凍結を予防して、良好な払拭性能を得る技術が提供されている。
【特許文献1】実開昭59−110260号公報
【特許文献2】特開2005−193786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図8及び図9に示すように、リベット120はリテーナ130の側面から挿入することから、ワイパーアームに突起状の形状を生じてしまい、ワイパーアームの美観を損なうという問題点があった。
【0010】
また、リベット120が突起状の形状を成すため、降雨後の雨滴等が表面張力によりリベット120の突起に残ってしまいリベット120やリベット120周辺のヒンジ部における耐食性能を著しく劣化させる問題点があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、アームヘッドとリテーナと軸支するリベットを廃止して、美観がよく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るワイパーアームは、基端側が駆動軸により軸支されたアームヘッドと、先端側にワイパーブレードが装着されるリテーナとを備えたワイパーアームにおいて、前記リテーナの側壁に内側に向けて突出するよう設けられた軸支部と、前記アームヘッドの他端に嵌合固定されるアームヘッドカバーと、前記アームヘッドカバーが前記アームヘッドの他端に嵌合固定されることで形成され、前記リテーナの軸支部を軸受けするための軸受部と、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、アームヘッドカバーがアームヘッドの他端に嵌合固定されることで形成される軸受部によってリテーナの軸支部を軸受けし、リテーナを起倒可能に軸動させることができる。また、リテーナの軸支部は、リテーナの内側に突出するように設けていることから、アームヘッド及びアームヘッドカバーから成る軸受部をリテーナの端部で覆うことで、リテーナ及びアームヘッドの外観上に軸受部や軸支部が見えない美観の良いワイパーアームを提供することができる。そのため、アームヘッドとリテーナと軸支するリベットを用いることなく平滑面で構成した、水滴残りがなく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することができる。
【0014】
上述の発明に加えて、前記リテーナの軸支部の外周に設けられ、摩擦低減処理が施された円筒部材を備え、前記円筒部材は、前記リテーナの軸支部と前記軸受部との間に介在することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、円筒部材は、アームヘッドとアームヘッドカバーとで形成される軸受部と、リテーナの軸支部との直接の干渉を防止している。そこで、円筒部材に摩擦低減処理を行うことで、軸受部及び軸支部の金属疲労や劣化を緩和させることができる。また、軸受部とリテーナの軸支部とが干渉しリテーナを軸動することで生じる異音を未然に防止することができる。
【0016】
また、上述の発明に加えて、前記軸支部は、前記リテーナの側壁を押し出し成形することにより形成され、前記リテーナの側壁部に押し出し成形することにより形成された凹に挿入されるピースを更に有し、前記リテーナの表面には前記ピースの上から塗装が施されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、リテーナの軸支部を成形する際に、外側側壁に筒状の押し型を当てて、内側側面に突出した筒形の突出部を生成し、これを軸支部とすることができる。この成形方法は、内側側面に円筒形の突出部を溶着させる方法や、円筒形の突出部の型を作成してリテーナを成形する方法に比べて成形コストを抑えることができる。更に、リテーナの側壁部外面側にできた筒状の凹の形状に対応したピースを埋没させて、その上からリテーナを防錆塗装することにより、リテーナの外表面に凹凸が無い平滑面を形成することができる。そのため、美観が良く、又、水滴残りがなく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リテーナの内側側面に設けた軸支部をアームヘッドカバーがアームヘッドに嵌合固定されることで形成される軸受部で軸受けすることで、リテーナとアームヘッドとを軸支するリベットを廃止して、美観がよく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1から図7は本発明の実施形態として示す車両用ワイパーアームを示すもので、図1から図3はその第1実施形態を、図4及び図5はその第2実施形態を、図6及び図7はその第3実施形態を示す。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用ワイパーアームを模式的に示した外観図である。図1に示すように、ワイパーアーム1は、車体に固定の駆動モータに装着された摺動可能な駆動軸(図示せず)にアームヘッド基端部11が固定されたアームヘッド10と、先端部にワイパーブレード(図示せず)を取り付けるブレード取付部31を有したリテーナ30とを、備えている。
【0021】
リテーナ30は、リテーナ基端部32がアームヘッド10のアームヘッド先端部12に係合しており、リベットを用いなくともリテーナ30を軸支して起倒可能にしている。この軸支している部分を軸支部と呼称する。尚、軸支部の詳細の構成については、図2以降で説明する。
【0022】
この軸支部におけるリテーナ30のリテーナ基端部32の断面は、コの字状になっており、リテーナ30のコの字状の中にアームヘッド10のアームヘッド先端部12が入り込んでいる。リベットを用いてないため、リテーナ30のリテーナ基端部32に突起部が生じていない。そのため、ワイパーアームは、外観を平滑面のみで構成することができる。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。図2に示すように、アームヘッド10は、アームヘッド先端部12にアームヘッド挟合部13と、半円形筒状の軸受部15とを設けている。また、アームヘッド挟合部13は、先方側へ突出した位置決めピン16と、略中央に取付孔14を配設している。また、アームヘッド10は、例えば、鉄等で成形されている。
【0024】
アームヘッド10の先端に設けられたアームヘッドカバー20は、アームヘッド10の取付面であるカバー挟合部23と、アームヘッド軸受部15と同じ半円形筒状で向かい合わせになるように配設されたカバー軸受部25とを設けている。また、カバー挟合部23には、アームヘッド10の位置決めピン16に嵌合する位置決め孔26と、アームヘッド10の取付孔14と同じ径とネジ切りを有する取付貫通孔24を配設している。また、アームヘッドカバー20は、アームヘッド10と同じ材質で成形されている。
【0025】
アームヘッド10の位置決めピン16は、アームヘッドカバー20の位置決め孔26に挿入して、カバー挟合部23とアームヘッド挟合部13とを合わせると、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで、一体の円筒状溝である軸受部を形成する。また、アームヘッド10の取付孔14と、アームヘッドカバー20の取付貫通孔24とで、一体の取付孔を形成する。
【0026】
リテーナ30のリテーナ基端部32の断面はコの字状となっており、更に、リテーナ基端部32のリテーナ内側壁面33には、円筒状の軸支部34が設けられている。この軸支部34は、リテーナ30の外側側壁に円筒状の押し型を当てて、円筒状の円筒溝35を設けることで、内側側面には円筒形の突出部を成形することで、形成することができる。この円筒状の軸支部34の形状は、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで形成する円筒状溝と同一の形状である。また、リテーナ30は、例えば、アルミ等で成形されている。
【0027】
また、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25との間には、金属製のブッシング40を挟み込む。このブッシング40は中空の円筒であり、ブッシング内側面41を摩擦抵抗が少なくするコーティング処理42(図3参照)を施している。このブッシング40のブッシング内側面41にリテーナ30の軸支部34を差し込んで、次に、その状態のまま、金属製のブッシング40の外側面をアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで挟合する。その際に、アームヘッド10の位置決めピン16がアームヘッドカバー20の位置決め孔26に挿入して、隙間なくカバー挟合部23とアームヘッド挟合部13とを合わせる。
【0028】
次に、固定ビス50をアームヘッドカバー20の固定用溝28から取付貫通孔24を貫通させて、アームヘッド10の取付孔14で固定する。これにより、アームヘッドカバー20とアームヘッド10が固定される。尚、アームヘッド10の位置決めピン16とアームヘッドカバー20の位置決め孔26により、縦方向及び横方向を規制している。最後に、円筒溝35に円筒状のピース60を埋め込むことで、リテーナ30の外観面は平滑となり、美観を向上させることができる。
【0029】
図3は、本発明の第1実施形態に係るワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。図3は、図2の構成部品を組み合わせた状態においての軸支部の断面である。図3で示すように、リテーナ30の基端側32の断面は、コの字状になっており、リテーナ30のコの字状の中にアームヘッド10のアームヘッド先端部112が入り込んでいる。更に、リテーナ30の基端側32の両側面に、外側から押し込んで成形された軸支部34が形成されている。この軸支部34を覆うようにブッシング内側面41にコーティング処理42を施したブッシング40が配設されている。これにより、軸支部34にかかる摩擦抵抗を低くしてスムーズにリテーナ30を回動可能にしている。また、ブッシング40は、アームヘッド10のアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25によって挟み込まれているため、ブッシング40を保持し、軸支部34の軸動に対して追従して回転せずに固定することができる。
【0030】
また、アームヘッド10の略中央には取付孔14が設けられ、固定ビス50がアームヘッドカバー20を貫通して、この取付孔14で固定される。また、ワイパーアームには、アームヘッド10とリテーナ30とを接合するスプリング(図示せず)が設けられている。スプリングは、アームヘッド10とリテーナ30の内側(車内側)に設けられていて、スプリングがアームヘッド10に干渉しないように、アームヘッド10の内側にスプリング溝部17が設けられている。また、リテーナ30の外側側面にできた円筒溝35の形状と同一のピース60が、リテーナ30の外側から押し込まれ、リテーナ30の外観表面を平滑にしている。又、リテーナ30の外観表面を平滑であるため、水滴残りがなく耐食性能が向上する。
【0031】
よって、本実施形態によれば、アームヘッドカバー20がアームヘッド10の他端に嵌合固定されることで形成される軸受部15、25によってリテーナ30の軸支部34を軸受けし、リテーナ30を起倒可能に軸動させることができる。また、リテーナ30の軸支部34は、リテーナ30の内側に突出するように設けていることから、アームヘッド10及びアームヘッドカバー20から成る軸受部15、25をリテーナ基端部32で覆うことで、リテーナ30及びアームヘッド10の外観上に軸受部15、25や軸支部34が見えない美観の良いワイパーアームを提供することができる。そのため、アームヘッド10とリテーナ30と軸支するリベットを用いることなく平滑面で構成した、水滴残りがなく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ブッシング40は、アームヘッド10とアームヘッドカバー20とで形成される軸受部15、25と、リテーナ30の軸支部34との直接の干渉を防止している。そこで、ブッシング40に摩擦低減処理を行うことで、軸受部15、25及び軸支部34の金属疲労や劣化を緩和させることができる。また、軸受部15、25とリテーナ30の軸支部とが干渉しリテーナ30を軸動することで生じる異音を未然に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、リテーナ30の軸支部34を成形する際に、外側側壁に筒状の押し型を当てて、内側側面に突出した筒形の突出部を生成し、これを軸支部34とすることができる。この成形方法は、内側側面に円筒形の突出部を溶着させる方法や、円筒形の突出部の型を作成してリテーナ30を成形する方法に比べて成形コストを抑えることができる。更に、リテーナ30の側壁部外面側にできた筒状の円筒溝35の形状に対応したピース60を埋没させて、その上からリテーナ30を防錆塗装することにより、リテーナ30の外表面に凹凸が無い平滑面を形成することができる。そのため、美観が良く、又、水滴残りがなく耐食性能に優れたワイパーアームを提供することができる。
【0034】
このように、本発明の第1実施形態によれば、リテーナ30の内側側面に設けた軸支部をアームヘッド10とアームヘッドカバー20で挟合することで、リテーナ30とアームヘッド10とを軸支するリベットを廃止して、美観がよく耐食性能に優れたワイパーアーム1を提供することができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、本発明の第1実施形態と同じ構成である点については、説明を省略する。
【0036】
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態の図2と対応している。
【0037】
図4では、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25との間には、金属製のブッシング40を用いず、直接、リテーナ30の軸支部34をアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで挟合する。但し、リテーナ30の軸支部34の表面に摩擦抵抗が少なくするコーティング処理36を施している。
【0038】
本発明の第1実施形態と同様に、アームヘッド10の位置決めピン16がアームヘッドカバー20の位置決め孔26に挿入して、隙間なくカバー挟合部23とアームヘッド挟合部13とを合わせながら、リテーナ30の軸支部34をアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで挟合する。次に、固定ビス50をアームヘッドカバー20の固定用溝28から取付貫通孔24を貫通させて、アームヘッド10の取付孔14で固定する。これにより、アームヘッドカバー20とアームヘッド10が固定される。尚、アームヘッド10の位置決めピン16とアームヘッドカバー20の位置決め孔26により、縦方向及び横方向を規制している。最後に、円筒溝35に円筒状のピース60を埋め込むことで、リテーナ30の外観面は平滑となり、美観を向上させることができる。
【0039】
図5は、本発明の第2実施形態に係るワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。図5は、図4の構成部品を組み合わせた状態においての軸支部の断面である。尚、図5は、本発明の第1実施形態の図3と対応している。
【0040】
図5で示すように、リテーナ30の基端側32の断面は、コの字状になっており、リテーナ30のコの字状の中にアームヘッド10のアームヘッド先端部112が入り込んでいる。更に、リテーナ30の基端側32の両側面に、外側から押し込んで成形された軸支部34が形成されている。この軸支部34の表面を覆うようにコーティング処理36を施している。これにより、軸支部34にかかる摩擦抵抗を低くしてスムーズにリテーナ30を回動可能にしている。
【0041】
また、アームヘッド10の略中央には取付孔14が設けられ、固定ビス50がアームヘッドカバー20を貫通して、この取付孔14で固定される。また、ワイパーアームには、アームヘッド10とリテーナ30とを接合するスプリング(図示せず)が設けられている。スプリングは、アームヘッド10とリテーナ30の内側(車内側)に設けられていて、スプリングがアームヘッド10に干渉しないように、アームヘッド10の内側にスプリング溝部17が設けられている。また、リテーナ30の外側側面にできた円筒溝35の形状と同一のピース60が、リテーナ30の外側から押し込まれ、リテーナ30の外観表面を平滑にしている。又、リテーナ30の外観表面を平滑であるため、水滴残りがなく耐食性能が向上する。
【0042】
このように、本発明の第2実施形態に係るワイパーアームにおいて、リテーナ30は、軸支部34の外周に摩擦低減処理が施されることを特徴とする。
【0043】
この構成によれば、リテーナ30の軸支部34摩擦低減処理を行うことで、軸受部15、25及び軸支部34の金属疲労や劣化を緩和させることができる。また、軸受部15、25とリテーナ30の軸支部34とが干渉しリテーナ30を軸動することで生じる異音を未然に防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。尚、本発明の第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成である点については、説明を省略する。
【0045】
図6は、本発明の第3実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。図6は、本発明の第1実施形態の図2、及び本発明の第2実施形態の図4と対応している。
【0046】
図6では、本発明の第1実施形態と同様に、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25との間には、金属製のブッシング40を挟み込んでいる。このブッシング40は中空の円筒であり、ブッシング内側面41を摩擦抵抗が少なくするコーティング処理42(図7参照)を施している。このブッシング40のブッシング内側面41にリテーナ30の軸支部34を差し込んで、次に、その状態のまま、金属製のブッシング40の外側面をアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25とで挟合する。その際に、アームヘッド10の位置決めピン16がアームヘッドカバー20の位置決め孔26に挿入して、隙間なくカバー挟合部23とアームヘッド挟合部13とを合わせる。
【0047】
次に、固定ビス50をアームヘッドカバー20の固定用溝28から取付貫通孔24を貫通させて、アームヘッド10の取付孔14で固定する。これにより、アームヘッドカバー20とアームヘッド10が固定される。尚、アームヘッド10の位置決めピン16とアームヘッドカバー20の位置決め孔26により、縦方向及び横方向を規制している。
【0048】
リテーナ30の軸支部34を形成する際に、リテーナ30の内側側面に円筒形状のボスを溶着させている。このとき、リテーナ30の外観面は平滑のままであり、ワイパーアームの美観を向上させることができる。また、本発明の第1実施形態にあるピース60(図2参照)を円形溝35(図2参照)に押し込む作業を省略することができる。
【0049】
図7は、本発明の第3実施形態に係るワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。図7は、図6の構成部品を組み合わせた状態においての軸支部の断面である。尚、図5は、本発明の第1実施形態の図3及び本発明の第2実施形態の図5と対応している。
【0050】
図7で示すように、リテーナ30の基端側32の断面は、コの字状になっており、リテーナ30のコの字状の中にアームヘッド10のアームヘッド先端部112が入り込んでいる。更に、リテーナ30の基端側32の両側面に、外側から押し込んで成形された軸支部34が形成されている。この軸支部34を覆うようにブッシング内側面41にコーティング処理42を施したブッシング40が配設されている。これにより、軸支部34にかかる摩擦抵抗を低くしてスムーズにリテーナ30を回動可能にしている。貫通孔133を設けている。また、ブッシング40は、アームヘッド10のアームヘッド軸受部15とカバー軸受部25によって挟み込まれているため、ブッシング40を保持し、軸支部34の軸動に対して追従して回転せずに固定することができる。
【0051】
また、アームヘッド10の略中央には取付孔14が設けられ、固定ビス50がアームヘッドカバー20を貫通して、この取付孔14で固定される。また、ワイパーアーム1には、アームヘッド10とリテーナ30とを接合するスプリング(図示せず)が設けられている。スプリングは、アームヘッド10とリテーナ30の内側(車内側)に設けられていて、スプリングがアームヘッド10に干渉しないように、アームヘッドの内側にスプリング溝部17が設けられている。また、本発明の第1実施形態におけるリテーナ30の円形溝35(図3参照)が無いために、リテーナ30の外観面は平滑であり、ワイパーアームの美観を向上させることができる。又、リテーナ30の外観表面を平滑であるため、水滴残りがなく耐食性能が向上する。
【0052】
このように、本発明の第2実施形態及び第3実施形態によれば、本発明の第1実施形態と同じ効果を得ることができて、リテーナ30の内側側面に設けた軸支部をアームヘッド10とアームヘッドカバー20で挟合することで、リテーナ30とアームヘッド10とを軸支するリベットを廃止して、美観がよく耐食性能に優れたワイパーアーム1を提供することができる。
【0053】
本実施形態は、コーティング処理は、ブッシング40のブッシング内側面41やリテーナ30の軸支部34の表面に設けたが、特に限定していない。例えば、アームヘッド軸受部15とカバー軸受部25に設けてもよい。
【0054】
また、本実施形態は、車両用ワイパーアームに適用した例として説明したが、特に限定はしていない。例えば、自動車・船舶・電車等のフロントウインドウガラスやリヤウインドウガラス或いはミラーやランプ類の表面を払拭するワイパーに適用する。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ワイパーアームを模式的に示した外観図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両用ワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両用ワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る車両用ワイパーアームのアームヘッドとリテーナとの軸支部を示した分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車両用ワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。
【図8】従来に係る車両用ワイパーアームを模式的に示した外観図である。
【図9】従来に係る車両用ワイパーアームの軸支部を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ワイパーアーム
10 アームヘッド
11 アームヘッド基端部
12 アームヘッド先端部
13 アームヘッド挟合部
14 取付孔
15 軸受部
16 位置決めピン
17 スプリング溝部
20 アームヘッドカバー
23 カバー挟合部
24 取付貫通孔
25 軸受部
26 位置決め孔
28 固定用溝
30 リテーナ
31 ブレード取付部
32 リテーナ基端部
33 リテーナ内側壁面
34 軸支部
35 円筒溝
36 コーディング処理
40 ブッシング
41 ブッシング内側面
50 固定ビス
60 ピース
100 ワイパーアーム
110 アームヘッド
111 アームヘッド基端部
112 アームヘッド先端部
113 貫通孔
117 スプリング溝部
120 リベット
121 連結軸
130 リテーナ
131 ブレード取付部
132 リテーナ基端部
133 貫通孔
140 乾燥潤滑膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側が駆動軸により軸支されたアームヘッドと、先端側にワイパーブレードが装着されるリテーナとを備えたワイパーアームにおいて、
前記リテーナの側壁に内側に向けて突出するよう設けられた軸支部と、
前記アームヘッドの他端に嵌合固定されるアームヘッドカバーと、
前記アームヘッドカバーが前記アームヘッドの他端に嵌合固定されることで形成され、前記リテーナの軸支部を軸受けするための軸受部と、
を有することを特徴とするワイパーアーム。
【請求項2】
前記リテーナの軸支部の外周に設けられ、摩擦低減処理が施された円筒部材を備え、前記円筒部材は、前記リテーナの軸支部と前記軸受部との間に介在することを特徴とする請求項1に記載のワイパーアーム。
【請求項3】
前記軸支部は、前記リテーナの側壁を押し出し成形することにより形成され、
前記リテーナの側壁部に押し出し成形することにより形成された凹に挿入されるピースを更に有し、
前記リテーナの表面には前記ピースの上から塗装が施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイパーアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−262589(P2009−262589A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110772(P2008−110772)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】